説明

樹脂組成物及びフェイスシート又は医療用軟膏シート

【課題】本発明は、油脂中の液状成分が保存中に分離することなく、皮膚への吸着性・貼付性に優れ、剥離する際の皮膚への残存を大幅に低減し、かつ容易に剥離することができるシートを形成できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】50℃で粘度5〜10000mPa・sである油脂(A)と、スチレン系ブロック共重合体(B)と、軟化点70〜160℃の粘着付与樹脂(C)とを含むことを特徴とする樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に貼付するシートに使用される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から化粧料を含浸したシートタイプ化粧品を用いて、目もとや顔面全体の肌の手入れを行う化粧料シートが市販されている。肌への湿潤作用を得るためには、吸水性を有するシート材に化粧料を充分に含ませることが必要である。このような目もと用、フェイス用等のシートタイプ化粧品として、スキンケア化粧料を含浸した不織布又は紙でなる吸水性の高いシート材を包装体内に積層して密封したパック型の商品が一般に提供されている。
【0003】
化粧水を含浸したフェイスマスクシートを折り畳まれた状態から顔形状に展開して顔に当てる際に手間と時間がかからないようにするため、該フェイスマスクシートは不織布の片面、両面又は内部にネット状樹脂フィルムを重ねて接合してなり、この接合されたものが顔形状に打ち抜かれてなるフェイスマスクシートが知られている。この構成により、化粧水を含浸して折り畳まれた状態から顔形状に展開する際に手間と時間がかからないフェイスマスクシートが得られる(特許文献1)。
【0004】
また、吸水性を有するシート材を所定のフェイスシート形状に打抜き成形してから化粧料を含浸して作製するフェイスシート化粧品において、フェイスシートの左右両側に、略半円形の耳掛け片を一体に成形したことを特徴とするフェイスシート化粧品が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−287751号公報
【特許文献2】特開2004−209143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のフェイスマスクシートは、長時間の使用により化粧料が蒸散しやすいため、スキンケア化粧料等を効率良く肌に浸透させることが難しいという問題がある。特にフェイスマスクシートの場合には、使用中にシート材が顔面から剥離しないようにするため、化粧料の成分中に予め顔面への吸着、接着効果のある薬剤を混入するか、シート材を構成する素材中又は該シート材の表面に顔面への吸着及び接着効果のある素材を混入もしくは塗布して対処しているが、フェイスシート化粧品を顔面に貼り付けた後に吸着、接着作用が低下してシート材が顔面から剥離して落下するケースが多い。顔面とともに首筋にも密着させて使用するタイプのフェイスシート化粧品の場合は、型抜きするシート材の寸法が大きくなって特に落下しやすく、利用者が使用中に会話をしたり、顔又は身体を動かしたりすると密着性が低下して落下しやすくなるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2のフェイスシート化粧品は、利用者がフェイスシート化粧品を顔面に貼り付けた後に会話をしたり、顔又は身体を動かしてもシート材が顔面から剥離することがなく、更に顔面とともに首筋にも密着させて使用する大きなタイプのフェイスシート化粧品の密着性を高めることができるが、耳に掛けなければならず扱う際に難点がある。
【0008】
本発明は、油脂中の液状成分が保存中に分離することなく、皮膚への吸着性・貼付性に優れ、剥離する際の皮膚への残存を大幅に低減し、かつ容易に剥離することができるシートを形成できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、50℃で粘度5〜10000mPa・sである油脂(A)と、
スチレン系ブロック共重合体(B)と、軟化点70〜160℃の粘着付与樹脂(C)を必須とする樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の本発明によれば、油脂(A)は、例えば50℃以上で液体になるため、製造時にスチレン系ブロック共重合体(B)と、軟化点70〜160℃の粘着付与樹脂(C)とを油脂(A)中へ均一に取り込むことができる。そして、常温でシートを様々な形状に加工する場合は、油脂(A)が固体であるため加工性が維持できる。さらに、シートを皮膚へ貼付するときは、温度が36℃前後であるため、油脂(A)が適度に軟化するため、シート中に取り込んだ成分を皮膚へ浸透することが容易になる。
【0011】
本発明により皮膚への貼付適性に優れ、剥離する際には皮膚に樹脂組成物が残ることなく、容易に剥離することができるシートを形成できる樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、50℃で粘度5〜10000mPa・sである油脂(A)と、スチレン系ブロック共重合体(B)と、
軟化点70〜160℃の粘着付与樹脂(C)を含むことが好ましい。
【0013】
油脂(A)は、50℃で粘度5〜10000mPa・sあるため、50℃では液状になる。液状になることでスチレン系ブロック共重合物(B)と粘着付与樹脂(C)を油脂(A)のマトリックス中に容易に取り込むことができる。
油脂(A)は、具体的には、例えばワセリン、パラフィン、スクワラン、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、イソステアリン酸、クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリト、サリチル酸エチレングリコール、鉱物油、流動パラフィンなどが好ましい。これらの油脂(A)は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、ワセリンが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物を構成する油脂(A)、スチレン系ブロック共重合物(B)、粘着付与樹脂(C)の合計を100重量部とした時、樹脂組成物に用いられる油脂(A)の配合量は、30〜98重量部が好ましく、35〜95重量部がより好ましい。油脂(A)の配合量が30重量部以上になることで加工性を維持できる。一方、配合量が98重量部以下になることで凝集力を維持できる。
【0015】
スチレン系ブロック共重合物(B)は、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物(以下、「SBS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEBS」とも略記する)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合物(以下、「SIS」とも略記する)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEPS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合物(以下、「SBIS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEEPS」とも略記する)が好ましい。また、スチレン系ブロック共重合物(B)は、カルボキシル変性されたものであってもよく、さらには、上記共重合物中のスチレンブロックは、スチレンと、α−メチルスチレン等のその他の芳香族系ビニル化合物との共重合体を含んでいてもよい。
【0016】
また、スチレン系ブロック共重合物(B)は、スチレンユニットの比率が10〜50重量%が好ましく、15〜45重量%がより好ましい。そしてトリブロック型の構造部を有するものがより好ましい。ただし、トリブロック型の構造部のみを有するものには限定されず、一部ジブロック型の構造部を有するものであってもよい。ジブロック型の含有量は70重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下である。70重量%を超えてしまうと凝集力が低下する恐れがある。このスチレン系ブロック共重合物(B)を使用することで、溶融時の耐熱性をより向上できる。
スチレン系ブロック共重合物(B)は、単独あるいは2種類以上を併用しても良い。
【0017】
本発明の樹脂組成物を構成する油脂(A)、スチレン系ブロック共重合物(B)、粘着付与樹脂(C)の合計を100重量部とした時、樹脂組成物に用いられるスチレン系ブロック共重合物(B)の配合量は、1〜60重量部が好ましく、3〜55重量部がより好ましい。スチレン系ブロック共重合物(B)の配合量が1重量部以上になることで、凝集力か維持することでき、液状成分の分離を防止できる。一方、配合量が60重量部以下になることで、混練加工による製造が容易になる。
【0018】
粘着付与樹脂(C)は、耐候性の観点から、例えば水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油系樹脂、テルペン系樹脂およびロジン系樹脂が好ましい。これらの中でもテルペン系が好ましい。また、粘着付与樹脂(C)の軟化点70〜160℃が好ましい。軟化点が70℃以上になることで凝集力を維持しやすくなり、剥離の際の凝集破壊を最小限に低減できる。一方、軟化点が160℃以下になることで、低温域もタックを維持できる。なお、本発明における軟化点とは、JIS K 6863に規定される方法により求められる温度である。すなわち、樹脂組成物を充填した規定の環を12時間以上静置させた後、熱媒体中に入れて規定の球を樹脂組成物を充填した規定の環の上に置き、一定の割合で熱媒体の温度を上昇させたとき、樹脂組成物の軟化により球が沈み環台の底板に触れたときの温度である。
【0019】
本発明の樹脂組成物には、発明の目的を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン、清涼化剤、香料、抗菌剤、消臭剤、殺菌剤、保湿剤、美白剤、シワ・くすみ防止剤、油分、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、止血剤、創傷治癒促進剤、鎮痒剤などの添加剤が添加されてもよい。
【0020】
上記の酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル]プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0021】
上記のフェノール系酸化防止剤は、自動酸化の連鎖成長過程で生じるROO・(パーオキシラジカル)に水素を供与して安定化し、自身はオルト位置換基によって保護された安定なフェノキシラジカルとなって連鎖反応を停止するラジカルトラップ剤としての機能を有し、そのことにより樹脂組成物の熱劣化を効果的に抑制する。特に、フェノール系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤よりラジカルトラップ反応の速いラクトン系酸化防止剤やビタミンE系酸化防止剤等とを併用することにより、より優れたものとなる。また、上記のリン系酸化防止剤は、過酸化物、ROOHを非ラジカル的に分解し、自動酸化過程の連鎖反応を停止する機能を有し、そのことにより樹脂組成物の熱劣化を効果的に抑制する。
【0022】
上記の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの通常使用されるものが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0023】
上記のビタミンとしては特に限定されず、酢酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール等が挙げられる。これらのビタミンは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記の清涼化剤としては特に限定されず、ユーカリ油、l−メントール、dl−カンフル、ハッカ油等が挙げられる。これらの清涼化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記の香料としては特に限定されず、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料などが挙げられる。これらの香料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記の抗菌剤としては特に限定されず、ブテナフィン及びその塩等のベンジルアミン系抗菌剤、ビフォナゾール、ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びこれらの塩等のイミダゾール系抗菌剤、テルビナフィン及びその塩などのアリルアミン系抗菌剤、アモロルフィン及びその塩等のモルホリン系抗菌剤、リラナフタート、トルナフテート及びトルシクラート等のチオカルバミン酸系抗菌剤、ナイスタチン、トリコマイシン、バリオチン、シッカニン、ピロールニトリン等の抗生物質等の抗菌剤などが挙げられる。これらの抗菌剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記の消臭剤としては特に限定されず、消臭効果を有するものであれば特に限定はないが、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロリネート、シトロネリルセネシオネート、テルペンアルデヒド類、ピルビン酸エステル類、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛などが挙げられる。これらの消臭剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記の殺菌剤としては特に限定されず、塩酸クロルヘキジン、硫酸フラジオマイシン、クマザサエキス等が挙げられる。これらの殺菌剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記の保湿剤としては特に限定されず、ポリオールやコハク酸などの有機酸やアミノ酸が挙げられる。これらの保湿剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記の美白剤としては特に限定されず、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体、コウジ酸及びその誘導体、動物胎盤抽出物、植物抽出物等が挙げられる。
【0031】
上記のシワ・くすみ防止剤としては特に限定されず、各種合成ビタミン、天然ビタミン及びそれらの誘導体、アミノ酸及びその誘導体などが使用できる。これらのシワ・くすみ防止剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記の油分としては、化粧料や美容料の原料として用いられる油分であれば特に限定されず、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、スクワラン、イソパラフィン、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ダイズステロール、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、セラミド、コレステロール、フィトステロール、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)、酢酸トコフェロール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらの油分は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記のステロイド系抗炎症剤としては特に限定されず、酢酸プレドニゾロン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメサゾン等が挙げられる。これらのステロイド系抗炎症剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記の非ステロイド系抗炎症剤としては特に限定されず、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、イブプロフェン、塩化リゾチーム、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリルな度が上げられる。これらの非ステロイド系抗炎症剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記の局所麻酔剤としては特に制限されず、リドカイン、アミノ安息香酸エチル等が挙げられる。これらの局所麻酔剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記の鎮痛剤としては特に限定されず、モルヒネ、ペンタゾシン等が挙げられる。これらの鎮痛剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記の止血剤としては特に限定されず、酸化亜鉛、塩酸メチルエフェドリン、タンニン酸等が挙げられる。これらの止血剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記の創傷治癒促進剤としては特に限定されず、アラントイン、アルミニウムジヒドロキシアラントイネート等が挙げられる。これらの創傷治癒促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記の鎮痒剤としては特に限定されず、塩酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。
【0040】
本発明の目的を損なわない範囲で添加できる酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン、清涼化剤、香料、抗菌剤、消臭剤、殺菌剤、保湿剤、美白剤、シワ・くすみ防止剤、油分、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、止血剤、創傷治癒促進剤、鎮痒剤などの添加剤の添加量は樹脂組成物100重量%中、30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは28重量%以下である。30重量%を超えてしまうとブリードアウトしてしまうことがある。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、例えば、フェイスシート用として使用する場合は、さらにシワ・くすみ防止剤等を含むことが好ましい。また、医療用軟膏シートとして使用する場合は、さらに創傷治癒促進剤等を含むことが好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されず、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、撹拌機を備えた溶融釜、一軸又は二軸の押し出し機などを用いて加熱混合するホットメルト法、適当な溶剤に溶解する溶剤法など、いずれの方法も用いることができるが、ホットメルト法が環境への影響が小さいため好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、過剰な熱を与えることにより起こる劣化を防ぐために100〜180℃で塗工することができ、低粘度での塗工が要求されるロールや溶融させる際の撹拌機を備えた溶融釜にも対応できる。そのような観点から、本発明の樹脂組成物は、120℃における粘度が100〜30000mPa・sであることが好ましい。
120℃における粘度が100mPa・sを下回る場合、塗布量を多くした際に樹脂組成物が垂れる現象が発生する可能性がある。120℃における粘度が30000mPa・sを上回る場合、塗工時に作業性が問題になる可能性がある。なお、樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(測定条件は、120℃、ローターNo.3、12rpm、30秒間)を使用し、測定した値である。
【0044】
本発明のシートは、基材と樹脂組成物を用いて製造できる。そして、基材上に樹脂層を有することが好ましい。またシートの別の形態として、基材に樹脂組成物が一部もしくは全部含浸したシートも好ましい。
【0045】
シートの製造方法は、樹脂組成物を加熱溶融したものを、或いはその溶液を、紙、樹脂等の基材に通常用いられる塗工機又はホットメルト塗工機、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、はんだごて、ヘラ、ローラー、割り箸、筆、スパチュラ、カッター等を用いて鏡面状、発泡状、ビード状、ドット状、スパイラル状などの様々なパターンで塗布し、必要に応じて加熱、冷却することによって、樹脂層を形成することができ、樹脂層が積層された各種積層体を得ることができる。樹脂組成物は、重ねて塗工することもでき、2種類の樹脂組成物を同一の基材に並列に塗り分けることも出来る。
【0046】
発泡を生成する方法としては、前記の塗工方法のほかに、化学発泡剤、物理発泡剤のいずれを用いてもよい。化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、N , N' − ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N , N ' − ジメチル− N , N ' − ジニトロテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p − トルエンスルホニルヒドラジド、p , p ' − オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルカルバジド、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩などが挙げられる。
加熱と圧力制御によりガス化する物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、メタノール、エタノール、水、空気、ヘリウム、窒素、アルゴン、炭酸ガス等が挙げられる。
【0047】
シートは、樹脂層が発泡状態であることが好ましい、発泡状態であることで、皮膚に貼り付けたときの密着性をより向上できる。そして樹脂層が発泡状態であるときの密度は0.1〜1g/cm3が好ましく、0.15〜0.95g/cm3○〜○がより好ましい。樹脂層が適度に発泡を有することで、クッション性がより良好になる。
【0048】
基材は、プラスチチックスや箔などの平滑なシートであっても良いが、含浸することを考慮すると、例えば繊維、不織布、発泡体などが好ましい。具体的には、例えば、レーヨン、アセテート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン、コットン、又はこれらを混合した繊維の不織布もしくは織布等が挙げられる。これら中でも天然繊維又は合成繊維の不織布が好ましい。基材の厚さは5〜2000μmが好ましい。
【0049】
また、基材へ樹脂組成物を含浸する場合は、含浸量は5〜2000g/m2が好ましく、10〜1950g/m2がより好ましい。5〜2000g/m2の範囲を含浸することで使用時の感触が良好になりやすい。含浸方法は上記塗工方法と同様の方法が好ましい。また、樹脂組成物を基材に含浸させる場合でも樹脂層を形成することが好ましい。
【0050】
本発明のシートは、フェイスシートや医療用軟膏シートとして使用することが好ましい。具体的には、例えば、ウェットシート、メイク落としシート、制汗シート、清拭シート、保湿シート、アイマスク等に適用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。
【0052】
本発明におけてGPCによる重量平均分子量とは、ゲル状の粒子を充填したカラムに希薄な樹脂の溶液を流し、分子の大きさによって流出するまでの異なる時間を測定することにより得られる、ポリスチレン換算された重量平均分子量である。
具体的な測定条件は、以下の通りである。
【0053】
装置:島津製作所社製 Prominence
カラム:TOSOH製 TSKgel GMH ×2本連結
検出器:RID-10A
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
カラム温度:40℃
流速:1mL/分
【0054】
(製造例1〜25)
表1に示した部数で、撹拌機を備えたニーダーに油脂(A)、スチレン系ブロック共重合物(B)、粘着付与樹脂(C)、必要に応じて(A)、(B)、(C)以外のその他の成分を添加し、140℃で3時間撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に記載の油脂(A)の略号を以下に示す。
ワセリン: 融点55℃ 粘度250mPa・s(50℃)
オクチルドデカノール: 2−オクチル−1−ドデカノール、流動点−13℃
ポリイソブチレン: 重量平均分子量670
流動パラフィン: 全炭素数中のパラフィン鎖炭素数:100%、重量平均分子量700、粘度250mPa・s(50℃)
鉱物油1: パラフィン系鉱物油軟化剤、全炭素数中のパラフィン鎖炭素数:73%、全炭素数中のナフテン環炭素数:27%、重量平均分子量1200、粘度250mPa・s(50℃)
鉱物油2: ナフテン系鉱物油軟化剤、全炭素数中のパラフィン鎖炭素数:40.7%、全炭素数中のナフテン環炭素数:47.2%、全炭素数中の芳香族環炭素数:12.1%、重量平均分子量1800、粘度220mPa・s(50℃)
【0057】
表1に記載のスチレン系ブロック共重合物(B)の略号を以下に示す。
SEPS1: SEPS、スチレンの比率22重量%、トリブロック含量100%
SEPS2: SEPS、スチレンの比率13重量%、トリブロック含量100%
SEBS1: SEBS、スチレンの比率33重量%、トリブロック含量100%
SEBS2: SEBS、スチレンの比率32重量%、トリブロック含量30%、ジブロック含量70%
SEBS3: SEBS、スチレンの比率31重量%、トリブロック含量100%
SEBS4: SEBS、スチレンの比率55重量%、トリブロック含量100%
SEEPS1: SEEPS、スチレンの比率32重量%、トリブロック含量100%
SEEPS2: SEEPS、スチレンの比率30重量%、トリブロック含量100%
SIS1: SIS、スチレンの比率19重量%、トリブロック含量73%、ジブロック含量27%
SIS2: SIS、スチレンの比率22重量%、トリブロック含量81%、ジブロック含量19%
【0058】
表1に記載の粘着付与樹脂(C)の略号を以下に示す。
粘着付与樹脂1: 水素添加された石油系粘着付与樹脂、軟化点100℃
粘着付与樹脂2: 水素添加されたテルペン系粘着付与樹脂、軟化点115℃
粘着付与樹脂3: 水素添加されたロジン系粘着付与樹脂、軟化点125℃
粘着付与樹脂4: 水素添加されていない石油系粘着付与樹脂、軟化点110℃
粘着付与樹脂5: 水素添加されていないテルペン系粘着付与樹脂、軟化点105℃
粘着付与樹脂6: 水素添加されていないロジン系粘着付与樹脂、軟化点95℃
粘着付与樹脂7: 水素添加された石油系粘着付与樹脂、軟化点165℃
【0059】
表1に記載のその他の成分の略号を以下示す。
酸化防止剤: ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
紫外線吸収剤: 2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール
ビタミン1: 酢酸トコフェロール
ビタミン2: パルミチン酸レチノール
清涼化剤: l−メントール
香料1: ピネン
香料2: リモネン
殺菌剤: 塩酸クロルヘキジン
保湿剤1: コハク酸
保湿剤2: ポリオール
美白剤1: ハイドロキノン誘導体
美白剤2: アスコルビン酸
シワ・くすみ防止剤: 天然ビタミン
油分: 馬油
ステロイド系抗炎症剤: 酢酸プレドニゾロン
非ステロイド系抗炎症剤: インドメタシン
創傷治癒促進剤: アルミニウムジヒドロキシアラントイネート
【0060】
(実施例1〜17、比較例1〜8)
上記製造例1〜25で得られた樹脂組成物をフォーミング装置付のアプリケーターにより、基材としての不織布シート(厚み300μm)上に塗布量が200g/m2になるように樹脂層を形成し、さらに離型性シートを貼り合せて、「離型性シート/樹脂層/不織布シート」という構成の積層体と「離型性シート/発泡樹脂層(発泡密度:0.7g/cm3)/不織布シート」という構成の積層体を得た。「離型性シート/樹脂層/不織布シート」を積層体(1)、「離型性シート/発泡樹脂層/不織布シート」を積層体(2)とする。
【0061】
[密着性]
長さ100mm、幅50mmに切り取った積層体(1)、積層体(2)を用意し、離型性シートを剥離した後、ボランティア5人の背中に貼付し、重さ1kgのローラーを1往復させて圧着した。3時間経過後、積層体を引き剥がして、その際の剥離力を測定した。測定には株式会社島津製作所製の引張試験機「オートグラフAGS−100D」を用い、温度23℃、相対湿度65%、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で行った(N/50mm)。剥離強度は、ボランティア5人の平均値で示した。剥離後の樹脂層の剥離状態が、凝集破壊または界面剥離のどちらであるかを目視にて確認した。
〔判定基準〕
◎:剥離強度は5N/50mm以上で、剥離時に樹脂組成物が残ることなく、剥離状態は界面剥離であった。
○:剥離強度は2N/50mm以上5N/50mm未満で、剥離時に樹脂組成物が残ることなく、剥離状態は界面剥離であった。
×:剥離強度は2N/50mm未満で、剥離時に樹脂組成物が残り、剥離状態は凝集破壊であった。
◎、○を使用可能と判断する。
【0062】
[液状成分の貯留]
実施例1〜17及び比較例1〜8で得られた樹脂組成物100gをガラス容器に取り、45℃、相対湿度85%環境下に保管した。24時間後、液状成分の貯留を目視で確認した。
〔判定基準〕
○:液状成分の貯留は確認されなかった。
×:液状成分の貯留が確認された。
○を使用可能と判断する。
【0063】
[高温保存性]
100mm×100mmに切り取った積層体(1)、積層体(2)を用意し、離型性シートを剥離した後、70℃雰囲気に48時間静置した後、23℃で1時間静置し、樹脂組成物の形状を目視で観察し、下記の評価基準にて判定した。
◎:形状に変化はなかった。
○:形状に一部変化があった。
×:形状が変形した。
◎、○を使用可能と判断する。
【0064】
[臭気]
100mm×100mmに切り取った積層体(1)、積層体(2)について、臭いの官能検査を行い、その不快臭の有無を判定した。
〔判定基準〕
○:不快臭無し
×:不快臭有り
○を使用可能と判断する。
【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の樹脂組成物は、皮膚への貼付適性に優れ、皮膚に貼付した際には密着性に優れ、剥離する際には容易に剥離することができるフェイスシート又は医療用軟膏シートを作製することが出来る。その特性として、密着性、高温保存性、低臭気が挙げられ、さらに油脂中の液状成分が保存中に分離することがない。近年の環境への取り組みを考えると、要求特性はますます厳しくなっていくものと考えられる。そこで、本発明の樹脂組成物は、上記の特性を発揮できるため、さらに有用になると考えられる。
また、本発明の樹脂組成物は、絆創膏、サージカルテープ、心電図測定用の電極固定用シート、湿布固定用粘着シート、粘着包帯、注射針固定用シート、磁気粒固定用シート等にも非常に有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃で粘度5〜10000mPa・sである油脂(A)と、
スチレン系ブロック共重合体(B)と、
軟化点70〜160℃の粘着付与樹脂(C)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系ブロック共重合体(B)が、スチレンユニットを10〜50重量%含み、かつトリブロック型構造であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
油脂(A)が、ワセリンであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
基材と、請求項1〜3いずれ記載の樹脂組成物から形成されてなる樹脂層とを備えたことを特徴とするシート。
【請求項5】
基材と、請求項1〜3いずれ記載の樹脂組成物から形成されてなる樹脂層とを備えたシートであって、
前記樹脂層が発泡状態であることを特徴とするシート。
【請求項6】
樹脂層の塗布量が、52000g/m2であることを特徴とする請求項4記載のシート。
【請求項7】
基材上に、樹脂組成物を、発泡発生装置付き塗工機を使用して樹脂層を形成する工程(1)、または、
発泡剤と樹脂組成物を混合し、塗工機を使用して、基材上に樹脂層を形成する工程(2)を含み、
前記樹脂組成物が、50℃で粘度5〜10000mPa・sである油脂(A)と、スチレン系ブロック共重合体(B)と、軟化点70〜160℃の粘着付与樹脂(C)とを含むシートの製造方法。
【請求項8】
樹脂層の塗布量が5〜2000g/m2であることを特徴とする請求項7記載のシートの製造方法。
【請求項9】
基材と、請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物から形成されてなる樹脂層とを備えたシートであって、
前記樹脂層が発泡状態であることを特徴とする皮膚用シート。
【請求項10】
基材と、請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物から形成されてなる樹脂層とを備えたシートであって、
前記樹脂層が発泡を有することを特徴とする医療用シート。
【請求項11】
請求項1〜3いずれ記載の樹脂組成物を、基材へ積層させてなることを特徴とするフェイスシート。
【請求項12】
樹脂層の塗布量が、5〜2000g/m2であることを特徴とする請求項4または5記載のフェイスシート。
【請求項13】
樹脂層が発泡状態であることを特徴とする請求項4または6記載のフェイスシート。
【請求項14】
樹脂層がスプレイ塗工により形成されてなることを特徴とする請求項4記載のフェイスシート。
【請求項15】
基材が、多孔質であることを特徴とする請求項4記載のシート。
【請求項16】
基材が、不織布であることを特徴とする請求項4記載のシート。
【請求項17】
請求項1〜3いずれ記載の樹脂組成物を、基材へ含浸させてなることを特徴とする化粧用シート。
【請求項18】
請求項1〜3いずれ記載の樹脂組成物を、基材へ含浸させてなることを特徴とする医療用シート。

【公開番号】特開2013−13705(P2013−13705A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178180(P2011−178180)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【出願人】(711004506)トーヨーケム株式会社 (17)