説明

樹脂組成物及び使用方法

【課題】止水性を確保できる樹脂組成物の提供。
【解決手段】分子中に少なくとも1個以上のフェニル基を有してなり、かつ、硬化物のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー(A)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(B)、石油樹脂(C)、充填材(D)、重合開始剤(E)及び金属石鹸(F)を含有する樹脂組成物を、(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分けてなる樹脂組成物。使用時に(O)剤と(R)剤を混合する。(R)剤が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分からなる群のうちの1種又は2種以上を含有しても良い。半乾性油及び/又は乾性油(G)を含有しても良い。(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1が好ましい。使用時に(O)剤と(R)剤を混合する樹脂組成物の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物を提供することを目的とする。更には本樹脂組成物で構造物を接着する作業に適した樹脂組成物を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル系樹脂は、耐久性が良く、いろいろな被着体に対する接着性が優れ、環境に優しいこと等から、成形材料、塗料、一般用接着剤、金属用接着剤、コンクリート用接着剤等に幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、従来から知られているアクリル系樹脂は、一般にその硬化物が硬く、水膨張性も小さいためコンクリート構造物又は金属構造物の充填接着剤として使用する際に、以下の問題があった。即ち、長期間水に接触する場合には必要な止水性が確保できないという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、低弾性接着剤組成物を用いてコンクリート構造物を接着することが提案されている(特許文献1〜2参照)。これらの樹脂組成物をコンクリート構造物用接着剤として使用した場合、コンクリートに対する接着性が優れ、冬季の屋外等といった低温においても短時間で硬化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−226791号公報
【特許文献2】特開2002−249726号公報
【発明の開示】
【0006】
本願発明のように、水圧の高い状態で長期間水に接触しても、止水性が保てることについて記載はない。本願発明のように、金属製埋設型枠等の充填接着剤として使用した場合、同様に水圧の高い状態で長期間水に接触しても、止水性が保てることについて記載はない。
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、水圧の高い状態で長期間水に接触していても止水性が完全に保たれ、更に、コンクリート構造物等を接着する施工現場での作業に適した樹脂組成物を見いだし本発明に至った。
【0008】
本発明は、分子中に少なくとも1個以上のフェニル基を有してなり、かつ、硬化物のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー(A)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(B)、石油樹脂(C)、充填材(D)、重合開始剤(E)及び金属石鹸(F)を含有する樹脂組成物を、(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分けてなる樹脂組成物であり、(R)剤が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分からなる群のうちの1種又は2種以上を含有する該樹脂組成物であり、半乾性油及び/又は乾性油(G)を含有する該樹脂組成物であり、石油樹脂(C)が臭素価2〜30(g/100g)の石油樹脂である該樹脂組成物であり、充填材(D)が無機充填材及び/又は有機充填材である該樹脂組成物であり、重合開始剤(E)がクメンハイドロパーオキサイドである該樹脂組成物であり、硬化物の水膨張率が10〜300%以下であり、かつ、引張弾性率が0.05〜5N/mmである該樹脂組成物であり、(O)剤と(R)剤の質量比が、(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1である該樹脂組成物であり、該樹脂組成物からなる止水性樹脂組成物であり、分子中に少なくとも1個以上のフェニル基を有してなり、かつ、硬化物のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー(A)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(B)、石油樹脂(C)、充填材(D)、重合開始剤(E)及び金属石鹸(F)を含有する樹脂組成物を、(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分け、使用時に(O)剤と(R)剤を混合する樹脂組成物の使用方法であり、(R)剤が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分からなる群のうちの1種又は2種以上を含有する該樹脂組成物の使用方法であり、半乾性油及び/又は乾性油(G)を含有する該樹脂組成物の使用方法であり、石油樹脂(C)が臭素価2〜30(g/100g)の石油樹脂である該樹脂組成物の使用方法であり、充填材(D)が無機充填材及び/又は有機充填材である該樹脂組成物の使用方法であり、重合開始剤(E)がクメンハイドロパーオキサイドである該樹脂組成物の使用方法であり、硬化物の水膨張率が10〜300%以下であり、かつ、引張弾性率が0.05〜5N/mmである該樹脂組成物の使用方法であり、(O)剤と(R)剤の質量比が、(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1である該樹脂組成物の使用方法であり、該樹脂組成物からなる止水性樹脂組成物の使用方法である。
【0009】
本発明に用いる樹脂組成物は、止水性を確保できる。更に、コンクリート構造物等を接着する施工現場での作業に適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(測定方法7)の止水性試験の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いる(A)成分は、分子中に少なくとも1個以上のフェニル基を有してなり、かつ、硬化物のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、例えば、硬化物の引張弾性率を下げ、硬化物を柔軟にし、かつ、高度な伸び特性を付与させる。
【0012】
(A)成分の例としては、フェノール(エチレンオキサイド)2モル変性アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)アクリレート等が挙げられ、これらは、それぞれアロニックス#M−101A、#M−102、#M−113、#M−117(東亞合成社製)の商品名で市販されているものがあるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
これらは、硬化物の物性を調整する目的で、単独で用いても良いし2種類以上混合して使用しても良い。
【0014】
本発明に用いる(B)成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであり、炭素数1〜12個のヒドロキシ(メタ)アクリレートが好ましい。(B)成分の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
これらは、硬化物の性質の調整を目的として単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
【0016】
本発明に用いる(B)成分は、例えば、接着性及び水膨張性を付与させる成分であり、(A)成分100質量部に対して5〜100質量部の範囲で用いることが好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。5質量部未満では接着性及び水膨張性が不十分となり、水圧の高い状態で長期間水に接触していると止水性が完全には保たれなくなる場合がある。100質量部を超えると水膨張性が大きくなりすぎ、却って接着性及び止水性が低下する場合がある。(A)成分と(B)成分の量は、(O)剤中と(R)剤中に含有する、(A)成分と(B)成分の合計の量である。
【0017】
本発明に用いる(C)成分である石油樹脂の例としては、C9系石油樹脂、水添石油樹脂、C5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等が挙げられる。低弾性を確保するには臭素価2〜40(g/100g)のC9系石油樹脂及び/又は水添石油樹脂が特に好ましい。C9系石油樹脂の例としては、臭素価15〜30(g/100g)のネオポリマー#L−90、#120、#E−100、#S等(新日本石油社製)が市販されている。水添石油樹脂の例としては、臭素価2〜6(g/100g)のアイマーブ#S−110、#Y−100、#P−140等(出光興産社製)が市販されている。
【0018】
C5系石油樹脂の例としては、臭素価50〜55(g/100g)のクイントン#1325、#1500、#1700等(日本ゼオン社製)が、ジシクロペンタジエン系石油樹脂の例としては臭素価120(g/100g)のマルカレッツ#M−890A、#M−845A等(丸善石油化学社製)が市販されている。本発明はこれらの商品に限定されるものではない。
【0019】
本発明に用いる(C)成分である石油樹脂は、例えば、ラジカル重合において、ラジカルが、分子中に存在する不飽和炭化水素結合の第3級水素へ、容易に連鎖移動して、グラフト化が起こり、生成する高分子中に取り込まれる。その他にも空気の作用で、パーオキサイドを形成する。パーオキサイドは、例えば、金属石鹸により、分解されてフリーラジカルとなり、モノマーを重合させる作用、所謂、空気硬化性を発現するものである。
【0020】
例えば、この空気硬化性は、パラフィン等の空気遮断効果とは本質的に異なり、遅速はあるにしても温度に依存しにくい反応である。例えば、空気硬化性を発現させることにより、樹脂組成物の表面硬化性を向上させるだけでなく、コンクリート等の多孔質体に対する接着力が向上するという効果がある。
【0021】
この空気硬化特性を有する化合物の例として、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート系モノマー、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート系モノマー、アクリル変性ポリブタジエン等のアリル基を有するアクリル系モノマー及びオリゴマー等が挙げられるが、何れも、例えば、空気乾燥作用が発現できる量まで添加すると弾性率を激しく上昇させるため、低弾性を有しにくい。
【0022】
本発明に用いる(C)成分である石油樹脂は、硬化物の物性を調整する目的で単独にて用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
【0023】
本発明に用いる(C)成分である石油樹脂は、例えば、硬化物の柔軟性を損なわず表面の乾燥性を付与させる成分であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、1〜40質量部の範囲で用いることが好ましく、10〜30質量部の範囲で用いることが特に好ましい。1質量部未満では表面乾燥効果が不十分である場合があり、40質量部を超えると、主として引張弾性率が大きくなり、止水性が低下する場合がある。(A)成分と(B)成分の量は、(O)剤中と(R)剤中に含有する、(A)成分と(B)成分の合計の量である。
【0024】
本発明に用いる(D)成分である充填材の例としては、無機充填材や有機充填材等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いる(D)成分である無機充填材の例としては、結晶シリカ粉、溶融シリカ粉、球状シリカ粉及びヒュームドシリカ等のシリカ粉、珪砂、カーボンブラック、フォラストナイト、クレー、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、ベントナイト、マイカ、ニッケルスラグ、水酸化アルミニウム、球状のものを含むアルミナ粉、ステンレス粉、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化硼素粉、タルク粉、炭酸カルシウム粉、ガラスビーズ、シラスバルーン、アルミニウム粉、並びに、チタン粉等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いる(D)成分である有機充填材の例としては、ポリエチレン粉末、ウレタン樹脂粉、(メタ)アクリル樹脂粉、シリコーン樹脂粉、フッ素樹脂粉、フェノール樹脂粉、木粉及び再生ゴム粉等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いる(D)成分である充填材は、(A)成分及び(B)成分に溶解せず、分散又は膨潤するものが好ましく、平均粒径は0.01〜200μmが好ましく、0.1〜5μmが特に好ましい。
【0028】
本発明に用いる(D)成分である充填材は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、20〜300質量部の範囲で用いることが好ましく、50〜150質量部の範囲で用いることがより好ましい。20質量部未満では硬化物の引張弾性率が小さくなる場合があり、300質量部を超えると硬化物の引張弾性率が著しく大きくなる場合がある。(A)成分と(B)成分の量は、(O)剤中と(R)剤中に含有する、(A)成分と(B)成分の合計の量である。
【0029】
次に、本発明に用いる(E)成分である重合開始剤としては、例えば、自然分解性が小さく、(F)成分である金属石鹸と酸化還元反応、所謂、レドックス反応を惹起して本発明の(A)成分と(B)成分であるアクリル酸エステルモノマーをラジカル重合させる、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤の例としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0030】
本発明に用いる(E)成分である重合開始剤は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.5〜8質量部の範囲で用いることが好ましく、1〜3質量部が特に好ましい。0.5質量部未満では硬化不良が発生する場合があり、8質量部を超えると保存安定性が著しく低下する場合がある。(A)成分と(B)成分の量は、(O)剤中と(R)剤中に含有する、(A)成分と(B)成分の合計の量である。
【0031】
本発明に用いる(F)成分である金属石鹸の例としては、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクテン酸マンガン、ナフテン酸ニッケル、オクテン酸ニッケル、ナフテン酸バナジウム、オクテン酸銅等が挙げられる。
【0032】
これらの金属石鹸は、金属含有率が1〜20質量%程度の範囲にあるものが一般に市販されている。金属含有率が8〜17質量%程度の範囲にあるものが好ましい。使用に際しては有効な金属含有率を換算し、含有金属換算で使用する。
【0033】
本発明に用いる(F)成分である金属石鹸は、単独で用いても良く、複数組み合わせて用いても良い。
【0034】
本発明に用いる(F)成分である金属石鹸は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、含有金属換算で0.01〜1.0質量部の範囲で用いることが好ましく、0.03〜0.7質量部の範囲で用いることが特に好ましい。0.01質量部では硬化不良を発生する場合があり、1.0質量部を超えると高価なものになり、硬化物の着色が顕著となる場合がある。(A)成分と(B)成分の量は、(O)剤中と(R)剤中に含有する、(A)成分と(B)成分を含有する。
【0035】
本発明に用いる(E)成分と酸化還元反応、所謂、レドックス反応を惹起して本発明の(A)成分と(B)成分であるアクリル酸エステルモノマーをラジカル重合させる効果のあるものの例として、エチレンチオ尿素、モノベンゾイルチオ尿素等のチオ尿素類が挙げられる。しかしながら、金属を含有しないこれらのものは、(C)成分である石油樹脂の空気硬化性を促進する効果が小さいので、使用できない。
【0036】
本発明に用いる(G)成分である半乾性油及び/又は乾性油は、本発明の(F)成分である金属石鹸の作用により、空気硬化する不飽和炭化水素結合を分子中に有する油脂類の総称である。ヨウ素価100〜130(g/100g)の半乾性油の例としては、大豆油、綿実油、なたね油等が挙げられる。ヨウ素価130(g/100g)以上の乾性油の例としては、亜麻仁油、ボイル油、魚油等から変性した乾性油等が挙げられる。ヨウ素価の上限値は、300(g/100g)が好ましく、200(g/100g)が特に好ましい。
【0037】
本発明に用いる(G)成分である半乾性油及び/又は乾性油は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲で用いることが好ましく、1〜10質量部の範囲で用いることが特に好ましい。0.2質量部未満では低弾性率化の効果が乏しくなる場合があり、20質量部を超えると弾性率の低下が著しくなる場合がある。(A)成分と(B)成分の量は、(O)剤中と(R)剤中に含有する、(A)成分と(B)成分の合計の量である。
【0038】
この空気硬化性は、例えば、パラフィン等の空気遮断効果とは本質的に異なり、遅速はあるにしても温度に依存しにくい反応である。例えば、空気硬化性を発現させることにより、樹脂組成物の表面硬化性を向上させるだけでなく、コンクリート等の多孔質体に対する接着力が向上するという効果がある。
【0039】
本発明の樹脂組成物には、貯蔵安定性向上又は硬化速度調整のために、少量の重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤の例としてはメチルハイドロキノン、ハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール等が挙げられる。
【0040】
本発明の樹脂組成物には、短時間での硬化性を更に上げる目的で、例えば、トリエタノールアミン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アニリン等の第3級アミン類を促進剤として、単独又は組み合わせて用いることもできる。
【0041】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されている各種エラストマー、溶剤、補強材、可塑剤、キレート化剤、染料、顔料、難燃剤、界面活性剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤等の添加剤を添加しても良い。
【0042】
本発明の樹脂組成物を用いる接着方法の例としては、コンクリート構造物や金属構造物に、スプレー、刷毛、ローラー塗布等といった通常の塗布方法により樹脂組成物を塗布し、構造物同士を接着する方法や、構造物間に樹脂組成物を注入充填して構造物同士を接着する方法等が挙げられる。これらの方法により、コンクリート構造物又は金属構造物を得ることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、作業性の点で、(O)剤と(R)剤の2剤に分けることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分けることが好ましい。保存安定性を確保するために、(C)成分は、(O)剤側に添加することが好ましい。(O)剤は、(F)成分を含有しないことが好ましい。(R)剤は、(E)成分を含有しないことが好ましい。(O)剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分けることが特に好ましい。(G)成分は、(O)剤に含有することが好ましい。
【0044】
本発明は、(O)剤や(R)剤の保存容器として、(O)剤や(R)剤が保存された状態のところに、(R)剤や(O)剤を添加して混合できる容器を用いることが好ましい。即ち、保存容器と混合容器を兼ねる容器を用いれば、接着作業の現場で容器を用意する必要がなくなるので、実用上有益である。
【0045】
(R)剤は、作業性や混合性の点で、(A)成分、(B)成分及び(D)成分からなる群のうちの1種又は2種以上を含有することが好ましい。(R)剤中の(A)成分の使用量は、(F)成分中の金属100質量部に対して、50〜940000質量部が好ましく、500〜400000質量部が特に好ましい。(R)剤中の(B)成分の使用量は、(F)成分中の金属100質量部に対して、95〜3000000質量部が好ましく、500〜200000質量部が特に好ましい。(R)剤中の(D)成分の使用量は、(F)成分中の金属100質量部に対して、2000〜3000000質量部が好ましく、4000〜600000質量部が特に好ましい。
【0046】
(O)剤と(R)剤の質量比は、(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1の範囲が好ましく、(0.05〜100)/1の範囲が特に好ましく、(3〜30)/1の範囲が最も好ましい。この比が0.02より小さい場合、又は、350より大きい場合には、(O)剤と(R)剤を均一に混合することが困難になり、樹脂組成物の硬化反応が不良となって、所定の物性の樹脂組成物の硬化体が得られずに、接着性能や止水性が確保できなくなる場合もある。
【0047】
又、(O)剤と(R)剤の質量比を調整するために、例えばトルエンやアセトンなどの溶剤で希釈すると、所定の物性の樹脂組成物の硬化体が得られず、接着性能や止水性が確保できない場合がある。(R)剤中の溶剤の使用量は、(F)成分100質量部に対して、100000質量部以下が好ましく、50000質量部以下がより好ましく、20000質量部が特に好ましく、0質量部が最も好ましい。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例の樹脂組成物を実施例組成物、比較例の樹脂組成物を比較例組成物ということもある。
【0049】
(実施例1)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)1.6g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート5g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)0.525gを添加、攪拌し、実施例組成物1(O)剤を得た。これに、(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃,東亞合成社製)98.4g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)0.0875gを添加混合して得た実施例組成物1(R)剤を添加混合し、実施例硬化体1を形成した。実施例組成物1は25℃条件下、180分で硬化した。
【0050】
(実施例2)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃,東亞合成社製)99g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)2.2gを添加、攪拌し、実施例組成物2(O)剤を得た。これに、(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)1g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート100g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)16.6gを添加混合して得た実施例組成物2(R)剤を添加混合し、実施例硬化体2を形成した。実施例組成物2は25℃条件下、30分で硬化した。
【0051】
(実施例3)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)100g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)2.2gを添加、攪拌し、実施例組成物3(O)剤を得た。これに、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート100g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)0.1667gを添加混合して得た実施例組成物3(R)剤を添加混合し、実施例硬化体3を形成した。実施例組成物3は25℃条件下、90分で硬化した。
【0052】
(実施例4)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)100g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート4g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)1.16gを添加、攪拌し、実施例組成物4(O)剤を得た。これに、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート1g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)8.75gを添加混合して得た実施例組成物4(R)剤を添加混合し、実施例硬化体4を形成した。実施例組成物4は25℃条件下、30分で硬化した。
【0053】
(実施例5)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)12.5g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)2gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)1gを添加、攪拌し、実施例組成物5(O)剤を得た。これに、(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃,東亞合成社製)87.5g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート100g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)600gを用い、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)0.1667gを添加混合して得た実施例組成物5(R)剤を添加混合し、実施例硬化体5を形成した。実施例組成物5は25℃条件下、180分で硬化した。
【0054】
(実施例6)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)100g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート4g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)1.1gを添加、攪拌し、実施例組成物6(O)剤を得た。これに、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート1g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)21gを用い、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)8.75gを添加混合して得た実施例組成物6(R)剤を添加混合し、実施例硬化体6を形成した。実施例組成物6は25℃条件下、30分で硬化した。
【0055】
(実施例7)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)100g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート99g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)80g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)600gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。加熱溶解、混合時に(G)成分として亜麻仁油(ヨウ素価178(g/100g)、関東化学社製)40gを添加した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)15.9gを添加、攪拌し、実施例組成物7(O)剤を得た。これに、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート1g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)1.67gを添加混合して得た実施例組成物7(R)剤を添加混合し、実施例硬化体7を形成した。実施例組成物7は25℃条件下、30分で硬化した。
【0056】
(実施例8)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃,東亞合成社製)80g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート20g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。加熱溶解、混合時に(G)成分として亜麻仁油(ヨウ素価178(g/100g)、関東化学社製)10gを添加した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)2.2gを添加、攪拌し、実施例組成物8(O)剤を得た。これに、(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)20g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)0.5gを添加混合して得た実施例組成物8(R)剤を添加混合し、実施例硬化体8を形成した。実施例組成物8は25℃条件下、70分で硬化した。
【0057】
(実施例9)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)80g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート20g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)2.2gを添加、攪拌し、実施例組成物9(O)剤を得た。これに、(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)20g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)0.5gを添加混合して得た実施例組成物9(R)剤を添加混合し、実施例硬化体9を形成した。実施例組成物9は25℃条件下、60分で硬化した。
【0058】
(実施例10)(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)80g、(B)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート20g、(C)成分として日石ネオポリマー#120(芳香族系石油樹脂、臭素化25(g/100g)、新日本石油化学社製)25g、(D)成分として炭酸カルシウム粉(商品名「#NS400」、平均粒径1.71μm、日東粉化社製)130gを用い、60℃で加熱溶解し、混合後に室温まで冷却した。更に、(E)成分としてパークミルH(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイド80%含有液)2.2gを添加、攪拌し、実施例組成物10(O)剤を得た。これに、(A)成分としてアロニックスM113(ノニルフェノールエチレンオキサイド4モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度−20℃、東亞合成社製)20g、(F)成分としてオクトライフCo12(シントーファイン社製、金属石鹸コバルト含有量12%オクテン酸コバルト)0.5g、トルエン10gからなる実施例組成物10(R)剤を添加混合し、実施例硬化体10を形成した。実施例組成物10は25℃条件下、120分で硬化した。
【0059】
以下に、比較例を示す。
【0060】
(比較例1)(A)成分としてアロニックスM111(ノニルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート、硬化物のガラス転移温度17℃、東亞合成社製)100gを用いた以外は実施例1と同様の方法で比較例組成物1を得た。比較例組成物1は25℃条件下、60分で硬化し、比較例硬化体1を形成した。
【0061】
(比較例2)(F)成分の代わりにモノベンゾイルチオ尿素2.2部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で比較例組成物2を得た。比較例組成物2は25℃条件下、60分で硬化し、比較例硬化体2を形成した。
【0062】
測定方法は以下の通りである。
【0063】
(測定方法1):ガラス転移温度
ガラス転移温度の測定はJIS K 7121「プラスチックの転移温度測定法」によって測定した。
【0064】
(測定方法2):ヨウ素価
ヨウ素化の測定はJIS K 0070「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化価物の試験方法」によって測定した。
【0065】
(測定方法3):臭素化
臭素化の測定はJIS K 2605「石油製品−臭素価試験方法−電気滴定法」によって測定した。
【0066】
(測定方法4):硬化時間
硬化時間の測定は以下に従った。樹脂組成物100gを容器に入れ混合し、発泡スチロール系断熱材で覆った。樹脂組成物にK型熱伝対(0.3×1PK−S、二宮電線工業(株)製)を挿入し、温度変化を測定し、樹脂組成物を容器に加えてから発熱ピークを示すまでの時間を硬化時間とした。
【0067】
(測定方法5):硬化物の水膨張率
硬化物の水膨張率は寸法20×5×50mmの実施例硬化体又は比較例硬化体試験片を作製し、次式によって硬化物の水膨張率を求めた。
硬化物の水膨張率(%)=[(水浸漬後の試験片の体積−水浸漬前の試験片の体積)/(水浸漬前の試験片の体積)]×100
ここで、水浸漬前の試験片の体積(cm)は温度23℃、湿度60%RHで1週間硬化養生した後の試験片の体積であり、水浸漬後の試験片の体積(cm)は上記試験片を50±5℃の水中に1週間浸漬した後の試験片の体積である。
【0068】
(測定方法6):硬化物の引張弾性率
硬化物の引張弾性率はJIS K 7113「プラスチックの引張試験方法」によって測定した。試験片の種類は1(1/2)号形とし、温度23℃、湿度60%RHで1週間硬化養生した後の実施例硬化体又は比較例硬化体試験片を用い、試験速度H(200mm/min±10%)で測定した。
【0069】
(測定方法7):止水性試験
試験体の作製:JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」のI類、舗装用平板、略号N(寸法300×300×60mm)を寸法150×300×60mmに切断し、切断面の両端に厚み5mmのスペーサーを配置した後、5mmの空隙を実施例組成物又は比較例組成物で充填接着し、試験体とした。樹脂組成物の硬化養生は温度23℃、湿度60%RHで1週間とした。
止水性試験:社団法人日本道路協会「道路床版防水便覧(平成19年3月)」の防水性試験Iの方法に準じて実施し、試験時間30分間における減水量0.2ml以下を初期の止水性試験の合格判定とした。但し、長期止水性試験の試験時間は1週間、4週間、12週間とした。漏水の有無を目視で観察し、漏水が認められない場合を合格判定とした。防水性試験Iの方法は、以下(1)〜(5)の順序に従った方法である(図1参照)。
(1)舗装用平板1を実施例組成物又は比較例組成物の硬化体2で接着し、試験体を作製する。試験体を取り付け治具3により止水性試験装置に取り付ける。
(2)水注入口4から水を入れ、目盛り5の数値を読む(0分時)。
(3)エアーコンプレッサー7で0.1MPaの圧力を掛ける。圧力は圧力計8により確認する。3分後と33分後の水位6の数値を読み、減水量を0.1ml単位まで測定する。
(4)30分間減水量を下式により求める。
30分間減水量(ml)=33分後の減水量(ml)−3分後の減水量(ml)
(5)試験を継続して、1週間後、4週間後、12週間後の舗装用平板接着部の下部からの漏水の有無を目視で確認する。
【0070】
(測定方法8):接着強さ試験
試験体の作製: JIS R 5201の9.4に規定する方法によって調整したモルタルを用い、寸法70×70×20mmのモルタル試験片を作製した。このモルタルとJIS A 5548にて規定する寸法40×40×10mmの鉄片を実施例組成物又は比較例組成物で接着し試験体とした。
組成物の膜厚はスペーサーで1mmとなるように調整し、養生条件は標準条件(温度20℃、湿度65%RH、168時間)とした。処理条件は温水浸漬処理(標準条件で養生後、50℃温水中、24時間)とした。
接着強さ試験:JIS A 5548に規定する接着強さ試験により、接着強さ及び破断状態を測定した。本発明では、凝集破壊が好ましい。凝集破壊は、樹脂組成物と被着体(試験片)との界面の接着力があるからである。界面破壊は、樹脂組成物と被着体(試験片)との界面の接着力が不足しており、好ましくない。
【0071】
(測定方法9):平均粒径:レーザー回折法により平均粒径を測定。機種は、LA−920(堀場製作所)を使用した。
【0072】
(実施例測定結果)実施例の測定結果を表1に示す。
【0073】
【表1】



【0074】
(比較例測定結果)比較例の測定結果を表2に示す。
【0075】
【表2】



【0076】
表1〜2から、本発明に用いる樹脂組成物は、以下の傾向を示す。
(1)水膨張率が大きく、コンクリート構造物や金属構造物等といった構造物の接着部が長期間水に接触していても止水性を確保することができる。
(2)弾性率が低いので硬化物が柔軟であり、地震等で構造物が振動しても、接着部から構造物が破壊することがない。
(3)樹脂組成物と被着体(試験片)との界面の接着力が大きく、破壊状態は凝集破壊である。
(4)石油樹脂を使用したため、止水性が大きい。
(5)(O)剤と(R)剤の質量比が、(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1の範囲外であったり、(O)剤と(R)剤の質量比を調整するために、例えばトルエンなどの溶剤で希釈したりすると、所定の物性の樹脂組成物の硬化体が得られず、接着性能や止水性が小さい場合がある。
【0077】
(発明の実施の形態1)
全国プレホール工業会の組立マンホールの0号マンホール底版と高さ600mmの直壁を実施例組成物8で、又、比較として比較例組成物2で接着した。接着した組立マンホールの内部に水を張り、漏水の有無を観察した結果、実施例組成物8で接着したマンホールは3ヶ月経過後でも漏水はないが、比較例組成物2で接着したマンホールは1週間後に漏水が認められた。
【0078】
(発明の実施の形態2)
漏水の認められるP−T型鋼管矢板継手の継手部に実施例組成物8を圧力0.5MPaで注入し、充填硬化させた。充填硬化後は1ヶ月後でも漏水は認められない結果であった。比較として比較例1組成物を同様の漏水状態の継手部に注入し充填硬化させた結果、充填硬化直後は漏水が止まったが、1週間後に再び漏水が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
例えば、硬化物の水膨張率が10〜300%以下であり、かつ、引張弾性率が0.05〜5N/mmである樹脂組成物は、コンクリート構造物又は金属構造物といった構造物の接着材として使用した場合、水圧の高い状態で長期間水に接触しても、必要な止水性を確保できる。本発明の樹脂組成物で接着した構造物は、止水性に優れる。本発明の樹脂組成物は、止水性樹脂組成物として、産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0080】
1 舗装用平板
2 実施例組成物又は比較例組成物の硬化体
3 取り付け治具
4 水注入口
5 目盛り
6 水位
7 エアーコンプレッサー
8 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に少なくとも1個以上のフェニル基を有してなり、かつ、硬化物のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー(A)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(B)、石油樹脂(C)、充填材(D)、重合開始剤(E)及び金属石鹸(F)を含有する樹脂組成物を、(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分けてなる樹脂組成物。
【請求項2】
(R)剤が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分からなる群のうちの1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
半乾性油及び/又は乾性油(G)を含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
石油樹脂(C)が臭素価2〜30(g/100g)の石油樹脂である請求項1〜3のうちの一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
充填材(D)が無機充填材及び/又は有機充填材である請求項1〜4のうちの一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
重合開始剤(E)がクメンハイドロパーオキサイドである請求項1〜5のうちの一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
硬化物の水膨張率が10〜300%以下であり、かつ、引張弾性率が0.05〜5N/mmである請求項1〜6のうちの一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(O)剤と(R)剤の質量比が、(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1である請求項1〜7のうちの一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のうちの一項に記載の樹脂組成物からなる止水性樹脂組成物。
【請求項10】
分子中に少なくとも1個以上のフェニル基を有してなり、かつ、硬化物のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー(A)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(B)、石油樹脂(C)、充填材(D)、重合開始剤(E)及び金属石鹸(F)を含有する樹脂組成物を、(E)成分を少なくとも含有する(O)剤と、(F)成分を少なくとも含有する(R)剤との2剤に分け、使用時に(O)剤と(R)剤を混合する樹脂組成物の使用方法。
【請求項11】
(R)剤が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分からなる群のうちの1種又は2種以上を含有する請求項10に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項12】
半乾性油及び/又は乾性油(G)を含有する請求項10又は11に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項13】
石油樹脂(C)が臭素価2〜30(g/100g)の石油樹脂である請求項10〜12のうちの一項に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項14】
充填材(D)が無機充填材及び/又は有機充填材である請求項10〜13のうちの一項に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項15】
重合開始剤(E)がクメンハイドロパーオキサイドである請求項10〜14のうちの一項に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項16】
硬化物の水膨張率が10〜300%以下であり、かつ、引張弾性率が0.05〜5N/mmである請求項10〜15のうちの一項に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項17】
(O)剤と(R)剤の質量比が、(O)剤/(R)剤=(0.02〜350)/1である請求項10〜16のうちの一項に記載の樹脂組成物の使用方法。
【請求項18】
請求項10〜17のうちの一項に記載の樹脂組成物からなる止水性樹脂組成物の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−12170(P2011−12170A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157337(P2009−157337)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】