説明

樹脂組成物及び塗膜

【課題】ポリアミド素材に対する優れた付着性を有し、特に、自動車内外装用途又は家電用途で求められる外観性、付着性、耐湿性、耐熱性、耐水性、耐油性、耐アルコール性、発色性(主に輝度感)などの塗膜性能を有する樹脂組成物及び塗膜を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物を含有し、かつ、ポリイソシアネート化合物と混合すると反応して硬化する樹脂組成物において、前記ポリオール化合物が、共重合させる原料の一つとしてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いてなるアクリル系共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関し、特には、ポリアミド系素材に対して優れた付着性を有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド素材は、ガラスフィラー、カーボンフィラーなどの補強材との親和性が高く、耐薬品性、耐衝撃性及び機械特性に優れた特性を有するため、金属素材の代替のエンジニアプラスチックとして、自動車内装部品、エンジンルーム内部品などの自動車部品、家電製品などの様々な産業の用途に使用されている。
【0003】
しかし、ポリアミド素材は、吸湿性が非常に高いため、保護目的で、表面に塗装が施されることが多い。この保護目的の塗装に用いる塗料は、従来、主剤としてのポリオール化合物と硬化剤としてのポリイソシアネート化合物とを反応させる2液反応型ウレタン塗料が主流である(例えば、特許文献1を参照。)。また、プライマーとして軟質タイプのポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を主体とした塗料を塗装し、そのプライマー層上に2液反応型ウレタン塗料を塗装する2層コート仕様がある。
【0004】
ポリアミド樹脂を含有するアロイ材に、メタクリル酸‐ブタジエン‐スチレンのグラフト重合樹脂を全体に対して5質量%以上20質量%未満配合した熱可塑性樹脂組成物の樹脂成形品へのポリエステルメラミン系塗料又はアクリルメラミン系塗料の付着性を向上させることを目的として、樹脂成形品を予め150℃〜250℃の範囲で熱処理をし、その後、熱処理面部に塗料を用いて塗装する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
塗膜を形成する基材をプラスチックフィルムとする発明であるが、ナイロンフィルムへの接着性を良好とする塗料組成物として、有機イソシアネートと重合脂肪酸類とからなるポリアミドプレポリマーと、高分子ジオールと、鎖延長剤と、必要により末端停止剤とから形成された数平均分子量が2000〜100000であるポリウレタンウレアを含有する一液型の塗料組成物が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−253021号公報
【特許文献2】特開2004−91607号公報
【特許文献3】特開平8−20621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2液反応型ウレタン塗料は、主剤と硬化剤との反応に伴う硬化収縮は、基材との付着性を大きく低下させる要因となる。したがって、主剤と硬化剤との架橋密度を低く設定する必要があり、これは、薬品耐性などの塗膜性能を制約するものであった。特許文献1に記載の塗料では、使用するアクリル樹脂が水酸基を含有することは記載されているが、アミド基を有することについての記載がなく、形成される塗膜のポリアミド基材に対する付着力が、自動車内外装用途又は家電用途で求められる付着性能を満足できるとはいえず、同基材特有の成型性起因による付着性のばらつきに十分対応できない。
【0008】
特許文献2に記載の方法では、基材の熱処理工程にかかる時間及びコストが多大で、工業用途で広く活用するのに実用的ではない。
【0009】
特許文献3に記載の塗料組成物を含む塗料を用いても、金属代替のエンジニアプラスチック用途に要求される硬度及び塗膜強度が得られない。また、自動車用途又は家電用途では、高い発色性が求められることがあるが、特許文献3に記載の塗料組成物を含む塗料では、発色性(主に輝度感)に乏しい。さらには、自動車用途又は家電用途で必要とされる薬品耐性を満足できるものではない。
【0010】
本発明の目的は、ポリアミド素材に対する優れた付着性を有し、特に、自動車内外装用途又は家電用途で求められる付着性能を有する樹脂組成物及び塗膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る樹脂組成物は、ポリオール化合物を含有し、かつ、ポリイソシアネート化合物と混合すると反応して硬化する樹脂組成物において、前記ポリオール化合物が、共重合させる原料の一つとしてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る樹脂組成物では、前記アクリル系共重合体のガラス転移点が、−20〜60℃であることが好ましい。ポリアミド系基材との付着性に優れた塗膜を得ることができる。また、耐薬品性又は耐油性に優れた塗膜を得ることができる。
【0013】
本発明に係る樹脂組成物では、前記アクリル系共重合体の水酸基価が、10〜50mg/KOHであることが好ましい。ポリアミド系基材との付着性に優れた塗膜を得ることができる。
【0014】
本発明に係る樹脂組成物では、前記アクリル系共重合体中の水酸基とアミド基とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜2.0であることが好ましい。ポリアミド系基材の表面状態のばらつきに影響されず、高い付着性を安定的に発揮することができる。
【0015】
本発明に係る樹脂組成物では、前記アクリル系共重合体が、共重合させる原料中の水酸基の合計モル数とアミド基の合計モル数とのモル比率(アミド基/水酸基)を1.0〜2.0で配合して、共重合したものであることが好ましい。ポリアミド系基材の表面状態のばらつきに影響されず、高い付着性を安定的に発揮することができる。
【0016】
本発明に係る塗膜は、本発明に係る記載の樹脂組成物とポリイソシアネート化合物とを含有し、かつ、ポリアミド系基材上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ポリアミド素材に対する優れた付着性を有し、特に、自動車内外装用途又は家電用途で求められる付着性能を有する樹脂組成物及び塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0019】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオール化合物を含有し、かつ、ポリイソシアネート化合物と混合すると反応して硬化する樹脂組成物において、前記ポリオール化合物が、共重合させる原料の一つとしてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする。
【0020】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオール化合物を含有する。ポリオール化合物が、共重合させる原料の一つとしてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いてなるアクリル系共重合体である。
【0021】
共重合させる原料は、アルキロールアクリルアミドモノマー以外に、アルキロールアクリルアミドモノマーと共重合するエチレン性不飽和モノマーを用いる。アルキロールアクリルアミドモノマーと共重合するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであることが好ましい。アクリル酸エステルは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n‐アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n‐ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート(CHA)、ベンジルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、n‐オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、イソボルニルアクリレート(IBXA)である。メタクリル酸エステルは、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート(i‐BMA)、n‐アミルメタクリレート、n‐ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、ベンジルメタクリレート、n‐オクチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート(SMA)、ベヘニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)である。これらは、適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0022】
また、共重合させる原料としては、前記したアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル以外に、次のものを使用できる。例えば、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、4‐ヒドロキシブチルメタクリレートなどの水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(水酸基含有エチレン性不飽和モノマー)、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートへのγ‐ブチロラクトンの開環付加物、2‐ヒドロキシエチルアクリレートへのε‐カプロラクトンの開環付加物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸2‐メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2‐メタクリロイルオキシエチルなどのカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレートなどの燐酸基含有エチレン性不飽和モノマー、スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルモノマー、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリルアミド、メタクリロニトリル、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド(DEAA)、イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミドプロピルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド(NBMA)などの窒素含有ビニル系モノマー(アミド基含有ビニル系モノマー)である。これらは適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0023】
アルキロールアクリルアミドモノマーは、1分子中に水酸基とアミド基とを1つずつ有するアクリルモノマーである。アルキロールアクリルアミドモノマーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルアクリルアミド(HPAA)、ヒドロキシブチルアクリルアミド(HBAA)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、ヒドロキシメチルアクリルアミド(HMAA=メチロールアクリルアミド/N−MAM)である。これらは、単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中で、ヒドロキシエチルアクリルアミドが特に好ましい。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0024】
アクリル系共重合体は、側鎖にアルキロールアミド構造を有する。なお、本発明は、アクリル系共重合体の立体構造に制限されない。
【0025】
アクリル系共重合体の重合方法は、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合法で重合することによって得られる。ラジカル重合法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法である。これらの重合法は単独又は組み合わせて行うことができる。
【0026】
重合において、アルキロールアクリルアミドモノマーの配合量は、共重合させる原料の合計量100質量部に対して、3〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは、4〜8質量部である。3質量部未満では、ポリアミド系基材との付着性が劣る場合がある。また、耐薬品性が劣る場合がある。10質量部を超えると、塗膜形成時の硬化収縮によってポリアミド系基材との付着性が劣る場合がある。
【0027】
重合には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、例えば、2,2’‐アゾビス‐(2‐メチルブチロニトリル)(ABN‐N)、2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)(ABN‐V)などのアゾ系開始剤、ベンジルペルオキシド、t‐ブチルペルオキシベンゾエート、t‐ブチルペルオキシド、t‐ブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエートなどのパーオキサイド系開始剤である。これらは、単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
重合における重合温度、重合時間などの重合条件は、特に限定されず、例えば、用いる共重合の原料の種類、量などに応じて適宜調整すればよい。例えば、重合温度は、一般的には、80〜140℃である。また、重合時間は、重合方法、重合開始剤の種類又は量、重合温度などによって異なり、一般的に、1〜10時間である。
【0029】
アクリル系共重合体の重合においては、顔料分散性又はイソシアネート樹脂硬化剤との反応促進作用を目的として、前記のカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー又は燐酸基含有エチレン性不飽和モノマーを配合することが好ましい。カルボキシル基含有エチレン性モノマー又は燐酸基含有エチレン性モノマーの酸価は、0.3〜3.0mg/KOHであることが好ましい。より好ましくは、1.0〜3.0mg/KOHである。0.3mg/KOH未満であると顔料分散性又は硬化性が低下する場合がある。3.0mg/KOHを超えると耐薬品性が低下する場合がある。
【0030】
本実施形態に係る樹脂組成物では、アクリル系共重合体のガラス転移点が、−20〜60℃であることが好ましい。より好ましくは、0〜50℃である。−20℃未満では、耐薬品性又は耐油性が劣る場合がある。60℃を超えると、ポリアミド系基材との付着性が不足する場合がある。
【0031】
本実施形態に係る樹脂組成物では、アクリル系共重合体の水酸基価が、10〜50mg/KOHであることが好ましい。より好ましくは、20〜40mg/KOHである。10mg/KOH未満では、架橋密度が不足して、耐薬品性が低下する場合があり、加えてポリアミド系基材との付着性が劣る場合がある。50mg/KOHを超えると、架橋反応による硬化収縮が大きく、ポリアミド系基材との付着性が劣る場合がある。
【0032】
本実施形態では、アクリル系共重合体の質量平均分子量は、特に限定されないが、20000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、25000〜80000である。
【0033】
本実施形態に係る樹脂組成物では、アクリル系共重合体中の水酸基とアミド基とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜2.0であることが好ましい。より好ましくは、アクリル系共重合体中の水酸基とアミド基とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜1.8である。特に好ましくは、アクリル系共重合体中の水酸基とアミド基とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜1.5である。これによって、アミド基の作用によって、ポリアミドとの親和性を高めて高い付着性を発揮し、かつ、架橋密度が適度になるため、必要な塗膜強度を維持しつつ、ウレタン結合形成部の収縮を緩和することができる。
【0034】
本実施形態に係る樹脂組成物では、アクリル系共重合体が、共重合させる原料中の水酸基の合計モル数とアミド基の合計モル数とのモル比率(アミド基/水酸基)を1.0〜2.0で配合して、共重合したものであることが好ましい。より好ましくは、共重合させる原料中の水酸基の合計モル数とアミド基の合計モル数とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜1.8である。特に好ましくは、共重合させる原料中の水酸基の合計モル数とアミド基の合計モル数とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜1.5である。これによって、アミド基の作用によって、ポリアミドとの親和性を高めて高い付着性を発揮し、かつ、架橋密度が適度になるため、必要な塗膜強度を維持しつつ、ウレタン結合形成部の収縮を緩和することができる。
【0035】
アクリル系共重合体は、重合方法が乳化重合法又は懸濁重合法である場合には、水中に分散又は沈殿した状態で得られる。また、アクリル系共重合体は、重合方法が溶液重合法である場合には、溶剤中に溶解、分散又は沈殿した状態で得られる。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類、イソプロピルアルコールなどのアルコール類である。これらは、単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態では、アクリル系共重合体は、水又は溶剤から単離して用いるか、又は水若しくは溶剤に分散若しくは溶解した状態のまま用いてもよい。また、樹脂組成物は、アクリル系共重合体以外にその他の成分を含有しうる。その他の成分は、例えば、安定化剤、表面活性剤、顔料、染料である。
【0036】
本実施形態に係る塗膜は、本実施形態に係る樹脂組成物とポリイソシアネート化合物とを含有し、かつ、ポリアミド系基材上に設けられている。
【0037】
本実施形態に係る塗膜は、樹脂組成物中のアクリル系共重合体が有する水酸基(OH基)とポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO基)とが縮合反応することで形成される。
【0038】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、2,4‐トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン‐4,4’‐ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n‐ペンタン‐1,4‐ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートである。これらは、単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0039】
樹脂組成物とポリイソシアネート化合物との割合は、樹脂組成物が有する水酸基のモル当量とポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル当量との比(NCO基/OH基)が0.5〜3.0となるようにすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜2.0である。ここで樹脂組成物が有する水酸基のモル当量は、アクリル系共重合体が有する水酸基のモル当量と等しいことが好ましい。樹脂組成物中の水酸基のモル当量1に対するイソシアネート基のモル当量の比が0.5未満では、耐薬品性などの塗膜性能が劣る場合がある。また、塗膜の耐水性が不十分となる場合がある。3.0を超えると、ポリアミド系基材との付着性が劣る場合がある。
【0040】
本実施形態に係る塗膜は、更に、光輝材、繊維素系樹脂などを含有することができる。これらは、樹脂組成物、ポリイソシアネート化合物又は樹脂組成物とポリイソシアネート化合物とを混合した塗料に配合することができるが、作業性の点で、樹脂組成物に配合することがより好ましい。なお、光輝材の配合量は、固形換算で、樹脂組成物100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、45質量部以下である。繊維素系樹脂の配合量は、固形換算で、樹脂組成物100質量部に対して60質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量部以下である。
【0041】
光輝材は、塗膜にメタリック感、パール感などの輝度感を付与し、意匠性の高い塗膜とする役割をもつ。光輝材としては、例えば、アルミニウム粉、アルミフレーク、蒸着フレーク、パールマイカ、ガラスフレークである。これらは、単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
繊維素系樹脂は、塗装ムラを改善する役割をもつ。また、光輝材の配向性を改善する役割をもつ。塗料に繊維素系樹脂を配合すると、基材との付着性が低下することがあるが、本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオール化合物として、前述のアクリル系共重合体を含有するため、ポリアミドとの親和性が高く、塗料に繊維系樹脂を配合しても、基材との付着性を維持することができる。また、本実施形態に係る樹脂組成物のポリアミド系基材に対する付着性は、成形条件などの違いによって生じるポリアミド系基材表面状態にばらつきに影響されず、優れた付着性を安定的に発揮することができる。繊維素系樹脂としては、例えば、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ニトロセルロース、セルロールアセテート、セルロースプロピオネートなどである。これらは、セルロースの変性化合物であり、変性方法により一定の性状範囲を有するが、特に規定はなく、単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
基材は、ポリアミド樹脂を主体とする。本実施形態において、ポリアミド樹脂は、例えば、ポリアミド樹脂、繊維強化ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂とその他の樹脂とを混合したポリマーアロイ(以降、ポリアミド系ポリマーアロイという。)を包含する。なお、本明細書では、ポリマーアロイは、2種以上の高分子が混じりあったものであり、例えば、2種以上の高分子が物理的に混合したもの(ポリマーブレンド)、網目構造が絡み合ったもの(IPN:Interpenetrated Polymer Network)を包含する。
【0044】
ポリアミド樹脂は、例えば、一般的にナイロンと呼ばれる脂肪族ポリアミド又は芳香族含有ポリアミド、アラミドと呼ばれる全芳香族ポリアミドである。脂肪族ポリアミドは、例えば、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,T、ナイロン6,Iである。芳香族含有ポリアミドは、例えば、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD‐6)である。全芳香族ポリアミドは、例えば、p‐フェニレンジアミンとテレフタル酸との共重合体である登録商標ケブラー(Kevlar)、m‐フェニレンジアミンとイソフタル酸との共重合体である登録商標ノーメックス(Nomex)である。
【0045】
繊維強化ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂に繊維を混入させた複合材料である。繊維は、例えば、ガラス繊維、ガラス長繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維である。
【0046】
ポリアミド系ポリマーアロイは、例えば、ポリアミド樹脂とABS樹脂とのアロイ、ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とのアロイである。
【0047】
基材の製造方法は、特に限定されないが、例えば一軸押出機、二軸押出機などの溶融混練機を用いて製造できる。混練する方法も制限されず、例えば、原料の全てを一括して溶融混練する方法、原料の一部を予め混練し、その後、残りの原料と合わせて溶融混練する方法である。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、顔料、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、加水分解防止剤などを添加してもよい。
【0048】
基材の成形方法は、特に限定されないが、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、トランスファー成形、プレス成形である。基材の形状は、特に限定されないが、例えば、ハンドル、ドアノブ、ボタン、ダッシュボード、エンジンカバー、ホイールキャップなどの自動車内外装部品、筐体、ボタン、パネル、キーボードなどの家電製品の部品である。塗膜は、これらの外表面若しくは内表面又は全表面に形成される。
【0049】
塗膜は、前述の樹脂組成物とポリイソシアネート化合物とを混合し、必要に応じて液状媒体で塗装に適した固形分濃度又は粘度に希釈した塗料を、基材上に塗装し、乾燥させて得られる。なお、当該塗料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、顔料、染料などの着色剤又は可塑剤、顔料分散剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、乳化剤、表面調整剤、流動性調整剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0050】
塗料に用いる液状媒体は、例えば、有機溶剤である。有機溶剤は、例えば、ジエチルケトン(3‐ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2‐ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4‐メチル‐2‐ペンタノン)、2‐ヘキサノン、5‐メチル‐2‐ヘキサノン、2‐へプタノン、3‐へプタノン、4‐へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸‐n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸‐3‐メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ‐ブチロラクトンなどのエステル類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類である。さらに、環境負荷をさらに低減させるために、液状媒体として、水及び親水性のある有機溶剤の混合物を用いることが好ましい。親水性のある有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、1‐エチル‐1‐プロパノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、n‐ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N‐エチル‐2‐ピロリドンなどの窒素含有溶剤、N,N‐ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミドなどのアミド基含有溶剤、テトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸‐n‐プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチルなどのエステル類である。液状媒体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合させて使用してもよい。本発明は、液状媒体の種類に制限されるものではない。
【0051】
塗料の塗装方法は、特に限定されず、例えば、ロールコート方式、スプレー方式、ディップ方式、はけ塗り方式などの公知の塗布方法である。塗膜の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmとすることが好ましい。より好ましくは、10〜30μmである。5μm未満では、効果が発揮できない場合がある。50μmを超えると、作業性が悪くなり、経済的にも好ましくない。また、1回の塗布で所望の厚さを塗装するか、又は複数回塗装することで所望の厚さとしてもよい。
【0052】
乾燥方法は、特に限定されず、例えば、自然乾燥、強制乾燥である。
【0053】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアミドに対する高い付着性を有し、かつ、ポリイソシアネート化合物と縮合反応して、適度に硬化するから、塗料の他に、例えば、接着剤に適用することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。
【0055】
(重合反応)
攪拌機、冷却機、窒素封入機、温度計及びモノマー滴下装置を備えた1リットルの4つ口フラスコにメチルイソブチルケトンを200g仕込み、内部温度が90℃になるまで加温した。そこへ、表1に示す実施例1〜実施例9、比較例1又は比較例2の混合溶液を1時間にわたって滴下し、90℃で4時間保持し、反応を終了して、樹脂組成物を得た。表1に、実施例1〜実施例9、比較例1及び比較例2の混合溶液の組成と得られた共重合体のガラス転移点、水酸基価及び質量平均分子量とを示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(塗料の調製)
得られた樹脂組成物60部と、繊維素系樹脂としてセルロースアセテートブチレート(CAB)の10%溶液(EASTMAN社製、CAB381−2)30部と、アルミニウム顔料(東洋アルミニウム社製、FZ−5660、44%品)12部と、酢酸エチル12部とを混合した混合溶液を酢酸イソブチルで希釈して粘度調整した後、ポリイソシアネート化合物(住化バイエルウレタン社製、スミジュールN-3200)を樹脂組成物中の水酸基のモル当量(アクリル系共重合体が有する水酸基のモル当量)とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル当量との比(NCO/OH)が、1.2となるように配合して塗料を得た。
【0058】
(塗膜の形成)
得られた塗料をポリアミド系基材(東レ社製、アミラン(登録商標))上にスプレーコート法で、塗装後の厚さが20±5μmとなるように塗装し、90℃で60分強制乾燥を行い、塗膜を形成した。
【0059】
得られた実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて塗膜を形成後、室温で72時間放置した塗装品を用いて、次の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
(外観性)
塗膜の表面を目視で観察し、次のとおり評価した。
○:塗装ムラがなく、輝度感がある(実用レベル)。
×:塗装ムラがあり、輝度感がない(実用不適)。
【0062】
(初期付着性)
JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に準じて、1mm×1mmの碁盤目状の切込みを100個入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準についても同規格に準じて評価を行った。
○:剥離なし(実用レベル)。
×:1升以上の剥離(実用不適)。
【0063】
(耐湿付着性)
雰囲気温度50℃及び雰囲気湿度95%RHの恒温恒湿槽中に500時間静置後、粘着テープによる剥離試験を行った。試験方法並びに判定基準は初期付着性と同様である。
【0064】
(耐熱付着性)
雰囲気温度80℃の恒温槽中に300時間静置後、粘着テープによる剥離試験を行った。試験方法並びに判定基準は初期付着性と同様である。
【0065】
(耐水付着性)
40℃の温水に500時間浸漬後、粘着テープによる剥離試験を行った。試験方法並びに判定基準は初期付着性と同様である。
【0066】
(耐油付着性)
動物性脂を1g/m塗布し、雰囲気温度50℃の恒温槽中に72時間静置後、粘着テープによる剥離試験を行った。試験方法並びに判定基準は初期付着性と同様である。
【0067】
(耐アルコール性)
平面摩耗試験機(東洋精機製作所社製 摺動式摩耗試験機)を用いて、エタノールを染み込ませたガーゼを、塗膜上を2.0Nで10往復ラビング後、塗膜の表面状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。
○:塗膜表面状態に大きな変化なし(実用レベル)。
×:塗膜の一部又は全部が剥離して、基材が露出した(実用不適)。
【0068】
実施例の樹脂組成物は、いずれも塗装ムラがなく、作業性に優れ、更にポリアミド系基材との付着性に優れていた。さらに、実施例の樹脂組成物は、繊維素系樹脂を配合しても、高い付着性を維持していた。そして、光輝材及び繊維素系樹脂を配合することで、光輝材の配向性が良好で、輝度感に優れた塗膜を得ることができた。アルキロールアクリルアミドモノマーとしてのヒドロキシエチルアクリルアミド又はヒドロキシブチルアクリルアミドのいずれについても、自動車内外装用途又は家電用途で求められる外観性、付着性、耐湿性、耐熱性、耐水性、耐油性、耐アルコール性、発色性(主に輝度感)などの塗膜性能を有する樹脂組成物及び塗膜を形成できることが確認できた。
【0069】
比較例1は、共重合の原料としてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いず、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーである2‐ヒドロキシエチルメタクリレートを用いて重合したため、得られた共重合体はアミド基を含有しないものとなった。結果、ポリアミド系基材との付着性に劣った。比較例2は、共重合の原料としてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いず、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーである2‐ヒドロキシエチルメタクリレートとアミド基含有ビニル系モノマーであるブトキシメチルアクリルアミドとを配合して、共重合体に水酸基及びアミド基を導入し、アミド基の作用によってポリアミド基材との親和性を得ようとしたが、ウレタン結合形成部分の硬化収縮に関して、近傍にアミド基を有するアルキロールアクリルアミドモノマーを用いて重合した共重合体とは異なり収縮を緩和することができず、結果、付着性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る樹脂組成物は、ポリアミド素材に適用可能な塗料、接着剤に適用することができる。また、本発明に係る塗膜は、自動車、家電などの高い意匠性が求められる用途に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物を含有し、かつ、ポリイソシアネート化合物と混合すると反応して硬化する樹脂組成物において、
前記ポリオール化合物が、共重合させる原料の一つとしてアルキロールアクリルアミドモノマーを用いてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体のガラス転移点が、−20〜60℃であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体の水酸基価が、10〜50mg/KOHであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体中の水酸基とアミド基とのモル比率(アミド基/水酸基)が、1.0〜2.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体が、共重合させる原料中の水酸基の合計モル数とアミド基の合計モル数とのモル比率(アミド基/水酸基)を1.0〜2.0で配合して、共重合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の樹脂組成物とポリイソシアネート化合物とを含有し、かつ、ポリアミド系基材上に設けられていることを特徴とする塗膜。

【公開番号】特開2013−6889(P2013−6889A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138303(P2011−138303)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】