説明

樹脂組成物及び成形体

【課題】 柔軟性に優れ、透明性の良好な脂環式ポリエステル系樹脂組成物を提供する。また、その特性を維持したまま芳香族ポリカーボネート樹脂等と融着することが可能である脂環式ポリエステル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 下記の成分(A)及び成分(B)を、成分(A)/成分(B)の重量比が95/5〜35/65の割合で含有することを特徴とする樹脂組成物。
成分(A):1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の単位を主な構成単位とするセグメントとポリアルキレンポリオールセグメントを有し、ポリアルキレンポリオールを7〜25重量%有する、融点が160℃以上210℃以下の脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂
成分(B):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも二個の重合体ブロックPと、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも一個の重合体ブロックQからなり、重合体ブロックPが23〜40重量%を占めるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂を含有する樹脂組成物及びその成形体に関する。特に、本発明は、透明性と耐熱性、衛生性及び芳香族ポリカーボネートとの二色成形性を兼ね備えた、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂を含有する樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位と1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位からなる脂環式ポリエステル系樹脂(以下、「PCC樹脂」と略記することがある)は、優れた全光線透過率及びヘーズ値を有し、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して高い親和性を発現するため、芳香族ポリカーボネート樹脂の屈折率や流動性等を、透明性を阻害することなく調整する改質材等として活用されている。また、該PCC樹脂中のジオール成分の一部をポリアルキレングリコールに由来する構成単位に置き換えたブロック共重合体(以下、「PCCP樹脂」と略記することがある)は、PCC樹脂が有する透明性及び芳香族ポリカーボネート樹脂への親和性に加え、耐熱性やヒートシール性に優れることから、輸液バッグ等の医療分野を中心に使用されている。
【0003】
PCCP樹脂を多層フィルムやシートに適応、またはエンジニアリングプラスチックとの二色成形に適応するに当り、層構成の自由度を上げるという点において、PCCP樹脂の特徴である透明性やポリカーボネートへの親和性を維持したまま、幅広い硬さの材料設計が可能であることが望ましい。これに対し、PCCP樹脂中に含まれるポリアルキレングリコール由来の構成単位含有量を増やすことによって柔軟性を向上させることが可能であるが、一方で樹脂の融点が低下することから、耐熱性が劣ることとなる。また、ポリアルキレングリコール由来の成分が増えることによって、衛生性や熱的安定性、色相等も悪化する傾向にあることから、必要最低限の含有量に留めることが望ましい。従って、PCCP樹脂と他の柔軟な樹脂成分とのアロイによって、PCCP樹脂の特徴である透明性を損なわないまま柔軟性を向上させることが求められている。
【0004】
過去、PCCP樹脂に対して他樹脂を添加することで柔軟性を増すという試みは行われていないが、PCC樹脂にメタクリル酸メチルを含むコア−シェル型アクリルゴムやABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)系改質剤などを添加して、耐衝撃性及び引張り特性を向上させる試みが行われている(特許文献1)。しかしながら、この方法は剛性をある程度維持した状態での耐衝撃性改良を目的としているため、十分な軟質効果が得られていない。また、タルクや顔料が配合されることが一般的であるため、PCC樹脂の透明性は十分活用されていない。
一方、PCC樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物に、エポキシ化ジエン系ブロック共重合体を添加することで、透明性と耐衝撃性とを両立させる技術が開示されている(特許文献2)。但し、この方法は芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とした硬質樹脂の耐衝撃性改良を目的としており、柔軟性の向上については配慮されていない。
以上の通り、優れた全光線透過率及びヘーズ値を有し、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して高い親和性を発現し、耐熱性やヒートシール性に優れ、かつ柔軟な樹脂または樹脂組成物は従来達成されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−287182号公報
【特許文献2】特開2008−222775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、柔軟性を有し、透明性に優れ、芳香族ポリカーボネート樹脂等との親和性が高い樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定のPCCP樹脂と特定の構造を有するブロック共重合体とを含有する樹脂組成物とすることにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[7]を要旨とする。
[1] 下記の成分(A)及び成分(B)を、成分(A)/成分(B)の重量比が95/5〜35/65の割合で含有することを特徴とする樹脂組成物。
成分(A):1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の単位を主な構成単位とするセグメントとポリアルキレンポリオールセグメントを有し、ポリアルキレンポリオールを7〜30重量%有する、融点が160℃以上210℃以下の脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂
成分(B):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQからなり、重合体ブロックPが23〜40重量%を占めるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体
【0008】
[2] [1]において、重合体ブロックQにおけるブタジエンおよび/またはイソプレン中の1,2−ミクロ付加構造が30〜100重量%である樹脂組成物。
[3] [1]または[2]において、成分(A)に含まれるポリアルキレンポリオール成分が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールである樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]の何れかにおいて、JIS−K7105に基づき測定した全光線透過率の値が75以上である樹脂組成物。
[5] [1]〜[4]の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
[6] [1]〜[4]の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる携帯電話用ジャックカバー。
[7] [1]〜[4]の何れかに記載の樹脂組成物を含有する層と、芳香族ポリカーボネート又はアクリロニトリル−スチレン共重合体を含有する層とを積層してなる積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性や柔軟性に優れ、透明性の良好な脂環式ポリエステル系の樹脂組成物が提供される。これを用いることにより、医療用バッグ、包装材、容器、ラベル、建材、電気・電子機器用部材、情報記録用フィルム、粘着テープ基材等として好適なフィルムやシート、射出成形品等が提供可能となる。また、本発明の樹脂組成物は、耐熱性や柔軟性等の特性を維持したまま芳香族ポリカーボネート樹脂やアクリロニトリル−スチレン共重合体等と相溶・融着することが可能であり、家電機器等の多様な用途に適用する樹脂材料が提供可能となる。このような特性から、特に携帯電話用ジャックカバーとして好適に使用できる樹脂材料が提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、以下の成分(A)及び成分(B)を含有してなるものである。
成分(A):1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の単位を主な構成単位とするセグメントとポリアルキレンポリオールセグメントを有し、ポリアルキレンポリオールを7〜30重量%有する、融点が160℃以上210℃以下の脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂
成分(B):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも二個の重合体ブロックPと、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも一個の重合体ブロックQからなり、重合体ブロックPが23〜40重量%を占めるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体
【0012】
<成分(A):脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂>
本発明における成分(A)は、ジカルボン酸成分として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを主な構成単位とするハードセグメントと、ポリアルキレンポリオールからなるソフトセグメントを有し、該ポリアルキレンポリオールを7〜30重量%有する脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂である。
ここで、「主な」とは、ハードセグメント中の全ジカルボン酸構成単位中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位の割合、又は該ハードセグメント中の全ジオール成分由来の構成単位中の1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位の割合が、それぞれ50モル%以上、好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%であることを言う。なお、その上限は100モル%である。
【0013】
脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂中のハードセグメントにおける全ジカルボン酸構成単位中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合が高いほど、成形体の耐熱性の点で好ましい。
本発明に使用する脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂に用いることができる、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒド
ロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
上記のジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸が好ましく用いられる。
【0014】
なお、ジカルボン酸成分が脂環式ジカルボン酸である場合、該ジカルボン酸中のトランス体の割合は任意であり、本発明の樹脂組成物の耐熱性の点では多い方が望ましいが、一方、脆性の抑制の点では、低い方が好ましい。具体的には、脂環式ジカルボン酸のトランス体の割合は、60モル%以上であるのが好ましく、70モル%以上であるのが更に好ましく、また、一方、98モル%以下であるのが好ましい。
また、本発明において、上記のジカルボン酸は脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂製造に際して、炭素数1〜4のアルキルエステル及びこれらのハロゲン化物等として使用してもよい。
【0015】
本発明に使用する脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂に用いることができる、1,4−シクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分としては、例えば、1,2−シク
ロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジメタノールビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、1,3−シクロペンタンジメタノールビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−CHDM)、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−CHDM)、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環ジオール;エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオール;キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール等が挙げられる。これらのジオール成分は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0016】
これらの内、柔軟性付与の観点から、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオールが好ましい。
ジオール成分が脂環式ジオールである場合、該ジオール中のトランス体の割合は任意であるが、上述の脂環式ジカルボン酸成分に含まれるトランス体の割合と同様な理由により、トランス体の割合としては、60モル%以上であるのが好ましく、70モル%以上であるのが更に好ましく、また、一方、98モル%以下であるのが好ましい。
【0017】
本発明において、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂のソフトセグメントを構成するポリアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び/又は1,3)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。中でもポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂中のポリアルキレンポリオールの量は、樹脂組成物の柔軟性の点では多い方が好ましいが、一方、ポリアルキレンポリオールが過度に多くなると、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂の融点が低くなるため、樹脂組成物の耐熱性や透明性が損なわれる可能性がある。また、ポリアルキレンポリオールの量が過度に少ない場合、成形時の微小結晶の成長が阻害されることから、耐熱試験で白化する可能性がある。
【0018】
具体的には、成分(A)の脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂中にソフトセグメントとして含まれるポリアルキレンポリオールの含有量が7重量%以上であり、9重量%以上であるのが好ましい。一方、その含有量は30重量%以下であり、25重量%以下であるのが好ましい。なお、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂中のポリアルキレンポリオールの含有量は、製造時の仕込割合から算出するか、又はH−NMRスペクトル分析法のような機器分析法により定量することができる。
ポリアルキレンポリオールの分子量は限定されないが、靭性や耐衝撃性の観点から数平均分子量が200以上であるのが好ましく、一方、重合反応性の観点からは数平均分子量が3000以下であるのが好ましい。
【0019】
本発明に用いる脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂の融点は、160℃以上であり、より望ましくは180℃以上である。脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂の融点が前記下限値未満であると、耐熱性に劣るため好ましくない。また、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂の融点は、加熱変形率や加熱試験後の透明性の点から210℃以
下であり、好ましくは205℃以下である。融点が前記上限値を超える場合、結晶化速度が遅くなることから成形品の結晶化度が低くなり、結果として加熱変形率や加熱試験後の透明性に劣る。なお、融点は例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いることにより常法にて測定でき、通常は10℃/minの昇温速度で測定した際の融解ピークトップの温度を意味する。
本発明に用いる脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂の固有粘度(IV)は任意であるが、低い方が溶融粘度も低くなるため、成形加工し易い点で好ましい。具体的には、脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂をフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)混合液を溶媒として、ウベローデ型粘度計を用いて、30℃で測定することにより求められる固有粘度(IV)が1.5dl/g以下であるのが好ましい。一方、本発明の樹脂組成物から得られる成形品の強度等の物性の点からは、0.5dl/g以上であるのが好ましい。
【0020】
<成分(B):ブロック共重合体>
本発明における成分(B)は、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQを有するブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である(以下、重合体ブロックPを「ブロックP」、重合体ブロックQを「ブロックQ」と略記することがある)。
ここで、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体」とは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体を重合したものを意味し、「ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする重合体」とは、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする単量体を重合したものを意味する。また、ここで「主体とする」とは、50モル%以上であることを意味する。
【0021】
ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は限定されないが、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体が好ましい。中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。なお、ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
【0022】
ブロックQは、より好ましくは、ブタジエン単独、イソプレン単独、ブタジエン及びイソプレン、のいずれかである。なお、ブロックQには、ブタジエン及びイソプレン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
ブロックQは、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体であってもよい。ブロックQの水素添加率は限定されないが、50〜100重量%が好ましく、80〜100%が好ましい。ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、得られる樹脂組成物の熱安定性が向上する傾向にある。なお、ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
【0023】
成分(B)中のブロックPの重量割合は23重量%以上であり、25重量%以上であるのが好ましく、27重量%以上であるのがより好ましく、一方、40重量%以下であり、38重量%以下であるのが好ましく、35重量%以下であるのがより好ましい。成分(B)中のブロックPの重量割合が前記範囲であることにより、本発明の樹脂組成物のヘーズおよび全光線透過率が良好となる。
【0024】
ブロックQが水素添加誘導体であり、ブタジエンを主体として構成される場合は、ブロックQのミクロ構造中のブタジエンの1,2−付加構造が30重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは50重量%以上であり、最も好ましくは65重量%以上である。また、上限は100重量%である。同様に、ブロックQがイソプレンから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中のイソプレンの1,2−付加構造が30重量%以上であること
が好ましく、より好ましくは50重量%以上であり、最も好ましくは65重量%以上である。また、上限は100重量%である。何れの場合も、1,2−付加構造の比率を前記の範囲とすることにより、得られた樹脂組成物の透明性をより高く得ることが可能である。
【0025】
本発明における成分(B)は、重合体ブロックPを少なくとも2個と、重合体ブロックQを少なくとも1個有する構造であれば限定されず、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。さらに、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体は、水素添加誘導体(以下、水添ブロック共重合体と略記する場合がある)が更に好ましい。下記式(1)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、熱安定性が良好になる。P−(Q−P) (1)
(P−Q) (2)
(式中Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ表し、mは1〜5の整数を表し、nは2〜5の整数を表す)
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
【0026】
成分(B)が式(1)又は(2)で表される水添ブロック共重合体であり、ブロックQがブタジエンから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中のブタジエンの1,2−付加構造が30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上であり、最も好ましくは65重量%以上である。また、上限は100重量%である。同様に、ブロックQがイソプレンから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中のイソプレンの1,2−付加構造が30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上であり、最も好ましくは65重量%以上である。また、上限は100重量%である。何れの場合も、1,2−付加構造の比率を前記の範囲とすることにより、得られた樹脂組成物の透明性をより高く得ることが可能である。
ブロック共重合体または水添ブロック共重合体(以下、まとめて「(水添)ブロック共重合体」と記す)としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(1)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、mが3以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましい。
【0027】
本発明における成分(B)の数平均分子量が限定されないが、通常30,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは80,000以上であり、通常500,000以下、好ましくは400,000以下、より好ましくは300,000以下であるのが望ましい。成分(B)の数平均分子量が前記範囲内であると、成形性と耐熱性が良好であるので望ましい。
本発明における成分(B)の質量平均分子量が限定されないが、通常60,000以上、好ましくは80,000以上、より好ましくは100,000以上であり、通常550,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下であるのが望ましい。成分(B)の質量平均分子量が前記範囲内であると、成形性と耐熱性が良好であるので望ましい。
【0028】
なお、成分(B)の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する場合がある)により、以下の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
機 器:日本ミリポア株式会社製「150C ALC /GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「AD80M/S」3本
検出器:FOXBORO社製赤外分光光度計「MIRANIA」測定
波長3.42μm
溶 媒:o−ジクロロベンゼン
温 度:140℃
流 速:1cm/分
注入量:200マイクロリットル
濃 度:2mg/cm
酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−フェノール0.2重量%添加。
【0029】
本発明における成分(B)の製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されない。具体的には、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法によりリチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。
また、ブロック共重合体の水素添加(水添)は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報及び特開昭60―79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行うことができる。
【0030】
このような水添ブロック共重合体の市販品としては、シェルケミカルズジャパン株式会社製「KRATON−G」、株式会社クラレ製「セプトン」、「ハイブラー」、旭化成株式会社製「タフテック」等が挙げられる。
非水添型のブロック共重合体の市販品としては、シェルケミカルズジャパン株式会社製「KRATON−A」、株式会社クラレ製「ハイブラー」の一部グレード、旭化成株式会社製「タフプレン」等が挙げられる。
【0031】
<配合割合>
本発明における成分(A)と成分(B)との配合割合は、成分(A)/成分(B)として、95/5〜35/65(重量比)の範囲であり、90/10〜40/60であるのが好ましく、より好ましくは85/15〜45/55である。成分(B)の配合割合が前記下限値未満の場合は、耐熱性や耐薬品性が大きく劣ることとなるため好ましくなく、一方、成分(B)の配合割合が前記上限値を超える場合は、耐衝撃性の向上や柔軟性の向上が不十分となるため好ましくない。
【0032】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)、成分(B)以外の樹脂や添加剤等を用いてもよい。
成分(A)、成分(B)以外の樹脂としては、具体的には、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂;等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。また、成分(A)、成分(B)以外の各種熱可塑性エラストマーを用いてもよい。
【0033】
また、添加剤等としては、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、造核剤、可塑剤、光安定剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、相溶化剤、ゴム用軟化剤等が挙げられる。これらのその他の樹脂や添加剤等は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用しても良い。
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0034】
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が環境面で好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0035】
造核剤としては、ソルビトール化合物及びその金属塩;安息香酸及びその金属塩;燐酸エステル金属塩;エチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N’,N’’−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等アミド化合物等が挙げられる。また、無機結晶核剤としては、タルク、カオリン、シリカ等が挙げられる。
【0036】
ゴム用軟化剤としてはパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、炭素原子芳香族系オイル、ポリブテン及び低分子量ポリブタジエン等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物の製造に、成分(A)と成分(B)以外の樹脂や成分を用いる場合でも、本発明の樹脂組成物の原料中における成分(A)と成分(B)の合計量は、本発明の優れた効果の発現のしやすさ等の点から、60重量%以上であるのが好ましく、80重量%以上であるのが更に好ましい。なお、ここでの上限は、通常100重量%である。
【0037】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。
混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した組成物を得ることができる。
より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を、溶融混合することが好ましく、例えば、本発明の樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合しても良いし、各原料成分等の混合物をペレット化したり目的成形品を製造する際の成形時に溶融混合してもよい。
【0038】
混合方法や混合条件は、各原料成分等が均一に混合されれば特に制限は無いが、生産性の点からは、単軸押出機や2軸押出機のような連続混練機及びミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機等の公知の溶融混練方法が好ましい。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行う例が多い。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、透明性が高いことが望ましい。透明性はヘーズ及び全光線透過率で評価され、具体的には、具体的には、JIS K7105に従って測定した全光線透過率が75以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。また、ヘーズは45以下が好ましく、40以下が特に好ましく、30以下が最も好ましい。
本発明の樹脂組成物は、柔軟性及び透明性が良好である。特に芳香族ポリカーボネート樹脂と併用すると、本発明の樹脂組成物と芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が良好であるので、透明性が良好な成形品を得ることが可能である。
【0040】
<成形体>
本発明の成形体は、上述の本発明の樹脂組成物を成形することにより得ることができる。ここで、本発明の成形体の製造方法は、本発明の樹脂組成物を成形できれば特に制限はない。具体的には、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形及びシート成形後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の各種成形方法が挙げられる。これらのうち、グリップ部材やフィルム等を製造することを考慮すると、射出成形又は押出成形が好ましい。
【0041】
成形時のシリンダー及びダイスの温度は、未溶融物の表面析出等による外観不良が起こり難い点では、高温であることが好ましく、溶融樹脂中に含まれる成分の中で最も融点が高い成分の融点より高温であることが更に好ましく、最も融点が高い成分の融点より10℃以上高いことが特に好ましく、最も融点が高い成分の融点より20℃以上高いことが最も好ましい。また、一方、含有成分の熱分解による変色や物性低下を起こさないためには、成形時のシリンダー及びダイスの温度は、低い方が好ましい。具体的には、成分(A)の融点が一般的に160℃〜240℃であることから、170℃以上であることが好ましく、190℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。成形時のシリンダー及びダイス温度の上限は250℃以下であることが好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。また、射出成形を行う場合の金型温度は、60℃以下であるのが好ましく、45℃以下であるのが更に好ましい。
【0042】
<成形体の形状>
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体であれば、どのような形状でも構わないが、特に、チューブ、フィルムやシート、容器状、ヒレ(フィン)状、グリップ状、ジャックカバー状等の形状を有する成形品が本発明の樹脂組成物の特徴の一つである柔軟性や透明性を活かしやすいので好ましい。
本発明の成形体の厚さは、透明性を活用する点では薄い方が好ましいが、柔軟性の利点を生かして良好な触感を得られる点では厚い方が好ましい。本発明の成形体は、透明性に優れるので、ある程度の厚さがあっても実用上十分な透明性を確保しやすい。
【0043】
また、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を含有する層と他の層との積層体としてもよい。この場合、それぞれ個別に成形した層を積層してもよいし、予め成形しておいた層に他層を積層してもよいし、複数の層を同時に成形して積層体としてもよい。積層体とする場合の成形方法としては、具体的には、例えば、単軸又は二軸の押出機を用いた多層の共押出成形、予め成形しておいた層に溶融樹脂を射出する二色成形、ラミネート成形、多層インフレーション成形等が挙げられる。
また、前記の他の層としては、例えば、芳香族ポリカーボネートやアクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体等から形成される層が挙げられる。中でも、芳香族ポリカーボネート又はアクリルニトリル−スチレン共重合体を含有する層とを積層してなる積層体が好適である。
本発明の樹脂組成物は、特に芳香族ポリカーボネート樹脂やアクリロニトリル−スチレン共重合体に対して優れた相溶性を有することから、これらの樹脂層との積層体とした場合に、高い層間接着性を得ることができる。
【0044】
本発明の成形品は、柔軟性及び透明性に優れるため、輸液バッグ等の医療用容器、包各種包装容器、ラベル、建材、電気・電子機器用部材、情報記録用等のフィルム、粘着テープ等の基材等として好適に用いることができる。また、本発明の樹脂組成物は、耐熱性や柔軟性等の特性を維持したまま芳香族ポリカーボネート樹脂やアクリロニトリル−スチレン共重合体等と融着することが可能であるので、これら樹脂との積層体や樹脂組成物として家電機器等の多様な用途に好適に用いることができる。特に携帯電話用ジャックカバーに関しては、携帯電話の色調が多様化される中において透明化の気運が高まっており、芳香族ポリカーボネートやアクリロニトリル−スチレン共重合体などと融着が可能であり、かつ透明な本発明品は好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例では、以下の原料を用いた。
<成分(A)>
(A−1)PCCP−1
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレンエーテルグリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルブロック共重合体。
H−NMRで定量化したポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有量:15重量%。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス率:88%。1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス率:69%。示差走査熱測定器(DSC)を用い、10℃/minの昇温速度で測定した融点は200℃。JIS規格K7210の試験条件4に従って230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したメルトフローレートは35g/10min。)
(A−2)PCCP−2
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレンエーテルグリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルブロック共重合体。
H−NMRで定量化したポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有量:6重量%。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス率:88%。1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス率:69%。示差走査熱測定器(DSC)を用い、10℃/minの昇温速度で測定した融点は208℃。JIS規格K7210の試験条件4に従って230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したメルトフローレートは25g/10min。)
【0046】
<成分(B)>
(B−1) シェル・ケミカル株式会社製「クレイトンG−1641」:スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
(スチレン(ブロックP)含量:32重量%、重合体ブロックQの1,2−ミクロ構造比70%)
(B−2) 株式会社クラレ製「ハイブラーKL−7135」:スチレン−イソプレン−
スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
(スチレン(ブロックP)含量:33重量%(カタログ値)、重合体ブロックQの1,2−ミクロ構造比100%)
(B−3) 旭化成株式会社製「タフテックH1041」:スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
(スチレン(ブロックP)含量:30重量%(カタログ値)、重合体ブロックQの1,2−ミクロ構造比30%)
【0047】
(B−4) 旭化成株式会社製「タフテックH1051」:スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
(スチレン(ブロックP)含量:42重量%(カタログ値)、重合体ブロックQの1,2−ミクロ構造比:30%)
(B−5) シェル・ケミカル株式会社製「クレイトンG1642」:スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
(スチレン(ブロックP)含量:20重量%(カタログ値)、重合体ブロックQの1,2−ミクロ構造比:70%)
(B−6) シェル・ケミカル株式会社製「クレイトンRP6935」:スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
(スチレン(ブロックP)含量:58重量%(カタログ値)、重合体ブロックQの1,2−ミクロ構造比:30%)
【0048】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
表−1に示す配合割合(重量部)に基づき、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30αII」、シリンダー口径30mm)によって、設定温度180℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを用い、射出成形機(東芝機械株式会社製「IS−130t」)で80mm×120mm×2mmのプレートと80mm×10mm×4mmの試験片を成形した。射出成形の条件は、樹脂温度:180〜240℃、射出時間:2〜20秒、金型温度:20〜60℃、冷却時間:10〜40秒とした。
【0049】
<成形体の評価>
(1)ヘーズ及び全光線透過率
JIS K7105に従い、80mm×120mm×2mmのプレートを用いてヘーズ及び全光線透過率を測定した。
【0050】
(2)加熱変形率
JIS C3005に準拠し、80mm×120mm×2mmのプレートから15mm×30mm×2mmの成形体を切り出し、120℃の恒温槽に平面を水平にして設置した状態で1kg荷重を1時間かけ、加熱前後の試験片の厚みから加熱変形率を測定した。
【0051】
(3)ポリカーボネート融着性
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ノバレックス7020A)を100mm×100mm×2mmの形状に予め射出成形したプレートを金型内にインサートし、樹脂組成物との積層体が100mm×100mm×3mmとなるように射出成形機(東芝機械株式会社製「IS−100t」)で成形した。射出成形の条件は、樹脂温度:180〜240℃、射出時間:2〜20秒、金型温度:40〜60℃、冷却時間:10〜40秒とした。
インサート成形で得られた100mm×100×3mmの積層体が十分に冷却した後、熱可塑性樹脂層とポリカーボネート層の剥離を試み、以下の基準から、融着性を評価した。
○:2層が十分に融着している
△:力を加えると2層を剥離することができる
×:簡単に剥離することができる
【0052】
(4)引張特性
JIS規格K6251に従って、射出成形で得られた80mm×120mm×2mmのプレートを打ち抜いて得られる3号ダンベルの試験片を、オートグラフを用いて500mm/minの速度で引張って、破断するまでの伸び率(引張り伸び率)及び破断時の強度(引張り破断強度)を測定した。また、100%の伸び率を示したときに得られる応力(100%モデュラス)及び300%の伸び率を示したときに得られる応力(300%モデュラス)も併せて測定した。
【0053】
(5)曲げ特性
JIS−K7171に従い、射出成形で得られた80mm×10mm×4mmの試験片を、オートグラフを用いて2mm/minの速度で垂直の変位を加え、0.1〜0.5mm変位における応力から曲げ弾性率を、得られた最大応力から最大曲げ強度を各々測定した。
<成形体の評価>
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られた樹脂組成物及び成形体について、前記の方法によって評価した結果を表−1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の樹脂組成物は、柔軟性と透明性を兼ね備えており、当該組成物から直接得られ
るフィルム、シート、射出成形品等の成形品の物性が優れているだけでなく、本発明の樹脂組成物と芳香族ポリカーボネート樹脂やアクリロニトリル−スチレン共重合体との相溶性を生かした、積層体やポリマーブレンド系の成形品や携帯用ジャックカバー等の二色成形品を製造することも可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び成分(B)を、成分(A)/成分(B)の重量比が95/5〜35/65の割合で含有することを特徴とする樹脂組成物。
成分(A):1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の単位を主な構成単位とするセグメントとポリアルキレンポリオールセグメントを有し、ポリアルキレンポリオールを7〜30重量%有する、融点が160℃以上210℃以下の脂環式ポリエステル系ブロック共重合樹脂
成分(B):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQからなり、重合体ブロックPが23〜40重量%を占めるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体
【請求項2】
重合体ブロックQにおけるブタジエンおよび/またはイソプレン中の1,2−ミクロ付加構造が30〜100重量%であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)に含まれるポリアルキレンポリオール成分が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
JIS−K7105に基づき測定した全光線透過率の値が75以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる携帯電話用ジャックカバー。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物を含有する層と、芳香族ポリカーボネート又はアクリロニトリル−スチレン共重合体を含有する層とを積層してなる積層体。




【公開番号】特開2012−52058(P2012−52058A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197490(P2010−197490)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】