説明

樹脂組成物及び樹脂成形体

【課題】アニオン系難燃剤とカチオン成分を含む高分子化合物とのイオンコンプレックスと、マトリクス樹脂と、を溶融混合してなる混練物を含む樹脂組成物に比べて、機械強度の向上された樹脂組成物及び樹脂成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】アニオン系難燃剤及びマトリクス樹脂を溶融混合してなる第1の混練物と、カチオン成分を含む高分子化合物と、を溶融混合してなる第2の混練物を含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、生分解性樹脂中に、尿素、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、及びグアニジン系の化合物から選択される化学物質を少なくとも1種類含む難燃性生分解性樹脂組成物が提案されている。
【0003】
引用文献2には、生分解性を有する有機高分子化合物と、難燃系添加剤と、生分解性を有する高分子化合物の加水分解抑制剤と、を含有した組成物が提案されている。
【0004】
引用文献3には、ポリ乳酸樹脂、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、及びその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも2種の難燃剤を含有してなる樹脂組成物が提案されている。
【0005】
引用文献4には、生分解性樹脂の強度不足を補うために、充填材として、高強度繊維を充填することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−27079号公報
【特許文献2】特開2003−192929号公報
【特許文献3】特開2004−190025号公報
【特許文献4】特許第2979158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アニオン系難燃剤とカチオン成分を含む高分子化合物とのイオンコンプレックスと、マトリクス樹脂と、を溶融混合してなる混練物を含む樹脂組成物に比べて、機械強度の向上された樹脂組成物及び樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、アニオン系難燃剤及びマトリクス樹脂を溶融混合してなる第1の混練物と、カチオン成分を含む高分子化合物と、を溶融混合してなる第2の混練物を含む樹脂組成物である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の樹脂組成物を含む樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、アニオン系難燃剤とカチオン成分を含む高分子化合物とのイオンコンプレックスと、マトリクス樹脂と、を溶融混合してなる混練物を含む樹脂組成物に比べて、機械強度の向上された樹脂組成物が提供される、という効果を奏する。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、アニオン系難燃剤とカチオン成分を含む高分子化合物とのイオンコンプレックスと、マトリクス樹脂と、を溶融混合してなる混練物を含む樹脂組成物に比べて、機械強度の向上された樹脂成形体が提供される、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る樹脂成形体を用いて構成された筐体及び事務機器部品を備えた画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
―樹脂組成物―
本実施の形態の樹脂組成物は、アニオン系難燃剤及びマトリクス樹脂を溶融混合してなる第1の混練物と、カチオン成分を含む高分子化合物と、を混合溶融してなる第2の混合物を含んでいる。
【0015】
本実施の形態の樹脂組成物は、上記構成であることにより、難燃性を維持しつつ、且つ優れた機械強度が得られると考えられる。
【0016】
上記効果が奏される理由は明らかとなっていないが、以下のように推測される。しかしながら、下記推測によって本発明は限定されない。
【0017】
本実施の形態の樹脂組成物に含まれる第2の混練物は、アニオン系難燃剤をマトリクス樹脂中において溶融混合してなる第1の混練物に、カチオン成分を含む高分子化合物を添加してさらに混合溶融してなる。このため、カチオン成分を含む高分子化合物は、マトリクス樹脂中に分散された状態のアニオン系難燃剤とイオン結合を形成してイオンコンプレックスを形成すると考えられる。
このように、マトリクス樹脂中に分散した状態とされたアニオン系難燃剤と、カチオン成分を含む高分子化合物と、がイオン結合形成してイオンコンプレックスを形成するので、マトリクス樹脂中にイオンコンプレックスの凝集体が形成されることが抑制されると考えられる。そして、このイオンコンプレックスの凝集体の形成が抑制されるので、この第2の混練物を含む樹脂組成物及び樹脂組成物を含む樹脂成形体では、機械強度が向上すると考えられる。
また、アニオン系難燃剤として、マトリクス樹脂を可塑化させやすい難燃剤を用いるために、アニオン系難燃剤の添加量を抑制した場合であっても、マトリクス樹脂中に分散された状態のアニオン系難燃剤と、カチオン成分を含む高分子化合物と、がイオン結合を形成するので、難燃性を維持しつつ、且つ良好な機械強度が得られると考えられる。
【0018】
一方、アニオン系難燃剤とカチオン成分を含む高分子化合物とがイオン結合を形成することにより得られたイオンコンプレックス(以下、比較イオンコンプレックスと称する)を、マトリクス樹脂中に分散させて溶融混合した場合には、比較イオンコンプレックスはマトリックス樹脂中において溶融しにくいことから、マトリックス樹脂中において比較イオンコンプレックスの凝集体を形成しやすくなると考えられる。このため、マトリクス樹脂中において、比較イオンコンプレックスによる凝集体の領域が、他の領域より硬い状態となり、結果的に本実施の形態の樹脂組成物に比べて機械強度に劣ると考えられる。
【0019】
以下、各成分の詳細を説明する。
【0020】
―第1の混練物―
(アニオン系難燃剤)
本実施の形態において用いられるアニオン系難燃剤とは、アニオン成分を有する難燃剤である。このアニオン系難燃剤としては、具体的には、リン系難燃剤、スルホン酸系難燃剤等が挙げられる。
【0021】
なお、上記に挙げたアニオン系難燃剤なかでも、とくに、リン酸エステル、縮合リン酸エステル等のリン系難燃剤は、マトリクス樹脂への添加量が多くなるほどマトリクス樹脂が可塑化すると考えられる。しかし、本実施の形態の樹脂組成物は、上述の構成とされているため、マトリクス樹脂の可塑化を抑制するために難燃剤の添加量を抑制した場合であっても、樹脂組成物の難燃剤を維持しつつ機械強度の向上が図れると考えられる。
【0022】
リン系難燃剤としては、特に限定されないが、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどの低分子のリン酸エステルや、リン酸トリス(2,6−ジメチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジエチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−n−プロピルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジイソプロピルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)、リン酸トリス〔(2,3,6−、2,4,6−)トリメチルフェニル〕、リン酸トリス〔(2,3,6−、2,4,6−)トリエチルフェニル〕およびリン酸トリス〔(2,3,6−、2,4,6−)トリ−n−プロピルフェニル〕、ならびにこれらのリン酸エステル単量体の縮合物であるレゾルシンビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、レゾルシンビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、レゾルシンビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ヒドロキノンビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ヒドロキノンビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、ヒドロキノンビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ビスフェノールAビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ビスフェノールAビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、ビスフェノールAビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ビスフェノールSビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ビスフェノールSビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、ビスフェノールSビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ビフェノールビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ビフェノールビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕およびビフェノールビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕などの芳香族リン酸エステル等が挙げられる。
【0023】
なお、本実施の形態において、「難燃剤」とは、樹脂に添加して得られる樹脂組成物の、UL−94で規定される難燃性を樹脂単独の場合に比べて向上させるものをいう。
なお難燃度(UL規格)は、米国のUNDERWRITERS LABORATORIES INC.社が制定、認可している電気機器に関する安全性の規格であり、UL燃焼試験法による垂直燃焼試験により規定された規格である。難燃性の程度によりV−0、V−1、V−2がありV−0に近づくほど高難燃性材料であることを示している。燃焼時間が10秒以下から30秒以下で燃焼しながら落ちる溶融物がない場合でV−0以上V−1以下のレベル、及び燃焼しながら落下する溶融物のある場合はV−2である。
【0024】
(マトリクス樹脂)
マトリクス樹脂としては、高分子化合物であれば特に限定されるものではなく、具体的には、生分解性樹脂、ABS樹脂、ACS樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ASA樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、エルロールプラスチック樹脂、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、FRP、アイオノマー、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、ニトリル樹脂、ポリエステル、オレフィンビニルアルコール共重合体、石油樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアリルスルフォン、ポリベンゾイミダゾール、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリケトン、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリスチレン(PS)、SAN樹脂、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、キシレン樹脂、熱可塑性エラストマー、EPDM、CR、BR、ニトリルゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
これらの中でも、特に、生分解性樹脂やポリカーボネート等にアニオン系難燃剤を添加すると、アニオン系難燃剤の種類や添加量によって、これらのマトリクス樹脂が可塑化して機械強度が著しく低下する場合があったが、本実施の形態の樹脂組成物によれば、上記構成とされているため、難燃性を実現しつつ、且つ機械強度の向上が図れると考えられる。
【0026】
(第1の混練物)
第1の混練物は、上記アニオン系難燃剤と、上記マトリクス樹脂と、を混合溶融することによって得られる。アニオン系難燃剤は、マトリクス樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下の範囲で混合されることが望ましく、0.5質量部以上80質量部以下の範囲で混合されることが望ましい。
第1の混練物における、アニオン系難燃剤の含有量が上記範囲内とされていると、十分な難燃性が得られ混練や成形性に悪影響を与えない。
【0027】
アニオン系難燃剤と、マトリクス樹脂と、の混合溶融は、混練機を用いて行われる。この混練機としては、特に制限されないが、例えば、1軸押出機や、2軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0028】
混合溶融時における溶融温度は、マトリクス樹脂が溶融する温度であればよく、マトリクス樹脂の種類や、アニオン系難燃剤の混合量(添加量)等によって異なるが、具体的には、150℃以上300℃以下の範囲が挙げられる。
【0029】
なお、第1の混練物は、上記アニオン系難燃剤と、上記マトリクス樹脂と、を混合溶融することによって得られるので、第1の混練物に含まれるアニオン系難燃剤は、マトリクス樹脂中に分散された状態となる。
【0030】
―第2の混練物―
第2の混練物は、マトリクス樹脂中にアニオン系難燃剤の分散された第1の混練物に、カチオン成分を含む高分子化合物を添加して混合溶融することによって得られる。
【0031】
(カチオン成分を含む高分子化合物)
カチオン成分を含む高分子化合物は、混合溶融対象の第1の混練物に含まれるアニオン系難燃剤のアニオン成分と、イオン結合を形成するカチオン成分を含む高分子化合物であればよい。
【0032】
アニオン系難燃剤のアニオン成分とイオン結合を形成するカチオン成分を含む高分子化合物としては、窒素原子、を含む高分子化合物が挙げられる。これらの中でも、主骨格に窒素原子を有する高分子化合物、窒素を含む置換基を有する高分子化合物等が挙げられる。そして、この置換基(カチオン性基)としては、第1級〜第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基等が挙げられる。
【0033】
カチオン成分を含む高分子化合物として、窒素原子を含む高分子化合物を用いることで、マトリクス樹脂への親和性が向上することから、樹脂組成物の機械強度の更なる向上が図れると考えられる。
【0034】
窒素原子を含む高分子化合物としては、具体的には、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンなどのポリアルキレンイミン;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン;ジアミノシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環族アミン;ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミン;等が挙げられる。またアミノ基を有するアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のモノマーを含む高分子化合物が挙げられる。
【0035】
(第2の混練物)
上述のように、第2の混練物は、マトリクス樹脂中にアニオン系難燃剤の分散された第1の混練物に、カチオン成分を含む高分子化合物を添加して混合溶融することによって得られる。
カチオン成分を含む高分子化合物は、アニオン系難燃剤 100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下の範囲で添加されることが望ましく、80質量部以上120質量部以下の範囲で添加されることが望ましい。
第2の混練物における、カチオン成分を含む高分子化合物の添加量が上記範囲内とされていると、難燃性が十分で且つ良好な機械的強度が得られると考えられる。
【0036】
第1の混練物と、カチオン成分を含む高分子化合物と、の混合溶融は、混練機を用いて行われる。この混練機としては、上述した混練機が挙げられる。
【0037】
第1の混練物と、カチオン成分と、の混合溶融時における溶融温度は、第1の混練物とカチオン成分を含む高分子化合物が溶融する温度であればよく、マトリクス樹脂の種類、マトリクス樹脂の含有率、アニオン系難燃剤の含有率、カチオン成分を含む高分子化合物の種類、及びカチオン成分を含む高分子化合物の含有率等によって異なるが、具体的には、150℃以上300℃以下の範囲が挙げられる。
【0038】
―その他の成分―
本実施の形態の樹脂組成物には、必要に応じて、上述した成分の他に、酸化防止剤、強化剤、相溶化剤、耐候剤、及び加水分解防止剤等の添加剤や、触媒等を更に添加してもよい。なお、これらの添加剤や触媒の含有量は、樹脂組成物の全固形分全量を基準として、各々5質量%以下であることが望ましい。
【0039】
−樹脂成形体−
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を含んで構成される。
即ち、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られるものである。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る樹脂組成物を成形し、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。
【0040】
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行う。
この際、シリンダ温度としては、220℃以上280℃以下とすることが望ましく、230℃以上270℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、40℃以上80℃以下とすることが望ましく、50℃以上70℃以下とすることがより望ましい。
【0041】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
【0042】
図1は、本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0043】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0044】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0045】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
【0046】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
【0047】
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152に、本実施形態に係る樹脂成形体が用いられている。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に基準を示さない限り質量基準である。
【0049】
<実施例1>
―第1の混練物の調整―
アニオン系難燃剤として、りん系難燃剤(商品名:CR741,大八化学社製)20質量部を、マトリクス樹脂としてのエチルセルロース100質量部に添加し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM35)を用いて200℃で8分溶融混合し、第1の混練物を調整した。
【0050】
次に、この第1の混練物に、カチオン成分を高分子化合物としてポリエチレンイミン10質量部を添加し、再度、二軸押出機(東芝機械社製、TEM35)を用いて200℃で8分溶融混合し、第2の混練物(樹脂組成物A1)を調整した。
【0051】
調整した樹脂組成物A1を用いて、下記評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
<強度の評価>
(機械強度の評価(フラットワイズシャルピー試験(ノッチ無しシャルピー試験)))
燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)について、JIS K7111−1 に従って、試験片を平らに設置することによって、シャルピー衝撃強さの測定を行った。
【0053】
―機械的強度評価基準―
・G1:シャルピー衝撃強さ測定結果がマトリックス樹脂の測定結果の40%以上である場合。
・G2:シャルピー衝撃強さ測定結果がマトリックス樹脂の測定結果の25%以上40%未満である場合。
・G3:シャルピー衝撃強さ測定結果がマトリックス樹脂の測定結果の25%未満である場合。
【0054】
(ノッチ付シャルピー試験)
JIS K7111−1に従って、試験片の両端を固定してノッチの付いている背面方向から打撃することによって、ノッチ付シャルピー衝撃強さの測定を行った。
【0055】
―機械的強度評価基準―
・G1:ノッチ付シャルピー衝撃強さ測定結果がマトリックス樹脂の測定結果の40%以上である場合。
・G2:ノッチ付シャルピー衝撃強さ測定結果がマトリックス樹脂の測定結果の25%以上 40%未満である場合。
・G3:ノッチ付シャルピー衝撃強さ測定結果がマトリックス樹脂の測定結果の25%未満である場合。
【0056】
<難燃性の評価>
前記燃焼試験用試験片を用いて、UL−94の垂直燃焼試験を行い、UL−94規格の判定基準に従って、HB、V−0、V−1、V−2及び延焼の5つのランクで判定した。結果を表1に示した。
【0057】
<耐熱性の評価>
前記燃焼試験用試験片を用いて、板厚4mmにおけるJIS K 7191−2に準拠した加重たわみ温度を測定し、以下の基準により耐熱性評価を行った。評価結果を表1に示した。
・G1:マトリクス樹脂のたわみ温度−30℃以上
・G2:マトリクス樹脂のたわみ温度−30℃未満
【0058】
<分散性評価>
調整した樹脂組成物A1中における難燃剤の分散性を評価した。
分散性の評価方法としては、作製した樹脂組成物を200℃でプレスして厚み500μmのフィルムを作製し、電子顕微鏡による観察を行った。評価結果を表1に示した。
【0059】
−分散性の評価基準−
・G1:難燃剤が均一に分散しており、分散性良好。
・G2:難燃剤が凝集は確認されないが難燃剤が粒子状に確認でき不均一に分散している。
・G3:難燃剤の凝集部分が多数確認され不均一に分散しており、分散性不良。
【0060】
<ブリード評価>
調整した樹脂組成物A1を200℃でプレスにより溶融成形し、樹脂成形体(UL−94燃焼試験用試験片:幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0061】
作製した燃焼試験用試験片を温度60℃、相対湿度85%で400時間放置し、以下の基準によりブリード評価を行った。結果を表1に示した。
・G1:試験片表面上に、特に変質、変色等は認められない。
・G2:試験片表面上に、特に変質、変色等が目視で観察された。
・G3:試験片表面がベトツキ内部から難燃剤が染みだした(ブリードした)状態が目視で観察された。
【0062】
<実施例2〜実施例8>
実施例1で調整した樹脂組成物の組成を、表1に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物及び樹脂成形体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0063】
<比較例1〜比較例7>
実施例1で調整した樹脂組成物の組成を、表2に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして比較樹脂組成物及び比較樹脂成形体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例では、比較例に比べて、機械強度の向上がみられた。また、難燃性についても良好な結果が得られた。一方、比較例では、実施例に比べて機械強度が劣っていた。
【符号の説明】
【0067】
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン系難燃剤及びマトリクス樹脂を溶融混合してなる第1の混練物と、カチオン成分を含む高分子化合物と、を溶融混合してなる第2の混練物を含む樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を含む樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−190365(P2011−190365A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58164(P2010−58164)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】