説明

樹脂組成物及び樹脂組成物を使用して作製した半導体装置

【課題】220℃以上という高温環境下においても半導体装置の反りが少なく、半田接続信頼性に優れ、かつ剥離、クラック等の不具合が生じず、優れた信頼性を半導体装置に付与することができる熱硬化性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示されるマレイミド誘導体(A)と官能基を2個以上有する熱硬化性樹脂(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。


(式中、R1は炭素原子数1以上の直鎖又は分枝アルキレン基、R2は炭素原子数5以上の直鎖又は分枝アルキル基、また、R1とR2の炭素原子数の和が10以下。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂組成物を使用して作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高機能化の市場動向において、半導体装置の高集積化、表面実装化が年々進んでいる。例えば、従来QFP、SOPに代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・薄型化への要求に対応するため、リードフレーム−チップスケールパッケージ(LF−CSP)やボールグリッドアレイ(BGA)等のエリア実装型半導体装置が次世代半導体装置として新規に開発されている。(特許文献1)
【0003】
エリア実装型半導体装置は以下の工程で組み立てられる。まず、金属あるいは有機基板の片面上に半導体素子をダイアタッチペースト等によって搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみをエポキシ樹脂組成物等で成形・封止する。その後、基板の半導体素子を搭載していない面にバンプ電極(半田ボール)を付ける処理(リフロー処理)を行う。さらに、このエリア実装型半導体装置をマザーボードに実装する処理(2次実装処理)により電子機器が製造される。
【0004】
また、更なる高密度の実装を実現する半導体装置として、パッケージオンパッケージ(POP)構造が提案されている(非特許文献1)。POPでは、半導体素子が搭載された実装基板にバンプ電極を設けたボールグリッドアレイ等の半導体装置(上段パッケージ)が、別の基板に搭載された半導体チップ(下段パッケージ)上に積層される。その後、リフロー処理を行い半田付けされることにより、2つの半導体素子が、それぞれ電気的に接続される。
【0005】
一方でPOP構造の課題としてリフロー炉の中でのパッケージが反ることによって発生する不接合がある(非特許文献2)。一般にPOP構造では積層しても背高にならないように、用いられるパッケージは薄型のものが多い。それゆえにリフロー時のパッケージの反りが大きくなりやすく、半田が接合面から浮いた状態で固化してしまうことによる不接合が発生しやすい。また異なる熱膨張係数を有する部材が層状に存在し温度変化に伴う各部材の熱膨張、熱収縮が半導体装置内部で応力として発現し、しばしば剥離、クラックの原因となっている。
【0006】
このパッケージの反りを抑えるためには、低熱膨張係数の封止樹脂を用いる手法(特許文献2)などが提案されている。また、剥離を抑えるためには、ダイパッドを封止樹脂と物理的密着性の良い構造とすることで、ダイパッドと封止樹脂との密着強度を向上させる手法(特許文献3)、封止樹脂のガラス転移点(Tg)を高め、高温での弾性率を下げるなどの手法が提言されている(特許文献4)。しかしながら、これらの手法だけでは上記半導体装置に生じる不具合を十分に解決できるものではない。
【0007】
また近年、環境対応の一環として半導体装置を基板に搭載する際に使用する半田からの鉛成分の除去撤廃が進められている。鉛成分を含まない半田(以下鉛フリー半田という)としては、日本電子情報技術産業協会(JEITA)が推奨するSn−Ag−Cu半田(融点約220℃)が幅広く使用されているが、従来のSn−Pb半田(融点約200℃)に比べ融点が高いため、上述の半導体装置実装時におけるパッケージの反りによる不接合という問題がより顕著になってきている。このため半導体素子を回路基板等に接着するために用いられる熱硬化性接着剤組成物には半田の融点温度の上昇に対するパッケージの反りの抑制がより一層求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−109983号公報
【0009】
【特許文献2】特開2000−216299号公報
【0010】
【特許文献3】特許第3007632号
【0011】
【特許文献4】特開2000−72851号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】エレクトロ実装技術 Vol.23(2007)p.42−47
【0013】
【非特許文献2】14th Symposium on “Microjoining and Assembly Technology in Electronics”(2008)p.165−168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、220℃以上という高温環境下においても半導体装置の反りが少なく、半田接続信頼性に優れ、かつ剥離、クラック等の不具合が生じず、優れた信頼性を半導体装置に付与することができる熱硬化性接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、以下の[1]〜[6]の本発明により達成される。
[1] 一般式(1)で示されるマレイミド誘導体(A)と官能基を2個以上有する熱硬化性樹脂(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1は炭素原子数1以上の直鎖又は分枝アルキレン基、R2は炭素原子数5以上の直鎖又は分枝アルキル基、また、R1とR2の炭素原子数の和が10以下。)
[2]前記熱硬化性樹脂(B)がシアネート樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、マレイミド環を有する化合物、アリルエステル系化合物等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物、アリル基を有するトリアリルイソシアヌレート及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる1以上の樹脂である前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]更に充填剤を含む前記[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]更に低応力剤を含む前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記低応力剤がブタジエン化合物の重合体または共重合体である前記[3]に記載の樹脂組成物。
[6]前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製した半導体装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、220℃以上という高温環境下においても半導体装置の反りが少なく、半田接続信頼性に優れ、かつ剥離、クラック等の不具合が生じず、優れた信頼性を半導体装置に付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の樹脂組成物は、所定の化学式で示されるマレイミド誘導体(A)と官能基を2個以上有する熱硬化性樹脂(B)とを含むことを特徴とする。
(式中、R1は炭素原子数1以上の直鎖又は分枝アルキレン基、R2は炭素原子数5以上の直鎖又は分枝アルキル基、また、R1とR2の炭素原子数の和が10以下。)
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明では、マレイミド誘導体(A)として一般式(1)で示される化合物を使用する。なお本明細書ではアクリロイル基のα位及び/又はβ位に置換基を有する官能基を含めアクリル基とする。
【0020】
一般的に反応性希釈剤としてアクリル基を1つ有する化合物が用いられ、なかでもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートといった炭素数の少ないアルキル(メタ)アクリレートの場合、揮発性が高いため樹脂組成物硬化時の揮発によってボンディングパッドが汚染され、Auワイヤー等との接着強度が低下する問題や、樹脂組成物を支持体に塗布した後被着体を搭載するまでに時間を要する場合には樹脂組成物の広がり性が悪くなり十分な接着力を得られない等の問題がある。またラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等比較的炭素数の多い脂肪族アクリレートの場合、揮発性は抑えられるが希釈効果が十分でなく樹脂組成物は高粘度で作業性の悪化が問題となる場合がある。一方フェニル基を有する(メタ)アクリレート化合物は、揮発性は抑えられるが希釈効果が十分でなくまた硬化物の弾性率が高くなるという欠点がある。
【0021】
これに対し、本発明で用いる一般式(1)で示されるマレイミド誘導体(A)は、樹脂組成物に良好な希釈効果、低揮発性を付与することができる。更にこの樹脂組成物が有する嵩高いマレイミド基によって、樹脂組成物の硬化温度が高温側にシフトする。そのため、この樹脂組成物を用いて作製した半導体装置の実装時の反りを少なくすることができ、パッケージの反りによる半田ボールの不接合を防ぐことができる。
【0022】
マレイミド誘導体(A)の構造としては、R1は炭素原子数1以上の直鎖又は分枝アルキレン基、R2は炭素原子数5以上の直鎖又は分枝アルキル基、また、R1とR2の炭素原子数の和が10以下であることが好ましい。この構造により、良好な希釈効果と半導体装置の高温時の反りを少なくすることが可能となる。一方で、これよりも炭素数が少ない場合、希釈効果は良くなるが、揮発性が高くなり過ぎるため、樹脂組成物硬化時の揮発によってボンディングパッドが汚染され、Auワイヤー等との接着強度が低下する問題や、樹脂組成物を支持体に塗布した後被着体を搭載するまでに時間を要する場合には樹脂組成物の広がり性が悪くなり十分な接着力を得られない等の問題がある。また炭素数が多い場合又は芳香族環を有するような場合は、揮発性は抑えられるが希釈効果が十分でなく、また硬化物の弾性率が高くなるという欠点がある。
【0023】
一般式(1)で示されるマレイミド誘導体(A)としては、例えばマレイミド酢酸n−ペンチル、マレイミド酢酸n−ヘキシル、マレイミド酢酸n−ヘプチル、マレイミド酢酸n−オクチル、マレイミド酢酸n−ノニル、マレイミド酢酸1−メチルブチル、マレイミド酢酸2−メチルブチル、マレイミド酢酸2,2−ジメチルプロピル、マレイミド酢酸2−エチルブチル、マレイミド酢酸3,3−ジメチルブチル、マレイミド酢酸4−メチルヘキシル、マレイミド酢酸1−プロピルブチル、マレイミド酢酸5−メチルヘプチル、マレイミド酢酸1−エチルヘキシル、マレイミド酢酸6−メチルオクチル、マレイミド酢酸1−エチルヘプチル、マレイミド酢酸3−iso−プロピルヘキシル、マレイミドプロピオン酸n−ペンチル、マレイミドプロピオン酸n−ヘキシル、マレイミドプロピオン酸n−ヘプチル、マレイミドプロピオン酸n−オクチル、マレイミドプロピオン酸1−エチルプロピル、マレイミドプロピオン酸3−メチルブチル、マレイミドプロピオン酸4−メチルヘキシル、マレイミドプロピオン酸3−iso−プロピルブチル、マレイミドプロピオン酸2−エチルブチル、マレイミドプロピオン酸1−メチルヘプチル、マレイミド酪酸n−ペンチル、マレイミド酪酸n−ヘキシル、マレイミド酪酸n−ヘプチル、マレイミド酪酸2,2−ジメチルプロピル、マレイミド酪酸1−エチルプロピル、マレイミド酪酸3−メチルブチル、マレイミド酪酸2−エチルブチル、マレイミド酪酸3,3−ジメチルブチル、マレイミド酪酸2−メチルペンチル、マレイミド酪酸1,2,2−トリメチルプロピル、マレイミド酪酸1,3−ジメチルブチル、マレイミド酪酸4−メチルヘキシル、マレイミド酪酸1−メチルヘキシル、マレイミド酪酸1−プロピルブチル、マレイミド酪酸3−メチルヘキシル、マレイミド吉草酸n−ペンチル、マレイミド吉草酸n−ヘキシル、マレイミド吉草酸3−メチルブチル、マレイミド吉草酸2,2−ジメチルプロピル、マレイミド吉草酸1−エチルプロピル、マレイミド吉草酸2−メチルペンチル、マレイミド吉草酸3−メチルペンチル、マレイミド吉草酸3,3−ジメチルブチル、マレイミド吉草酸1,2−ジメチルブチル、マレイミド吉草酸1−エチルブチル、マレイミド吉草酸1−エチル−1−メチルプロピル、マレイミドカプロン酸n−ペンチル、マレイミドカプロン酸2−メチルブチル、マレイミドカプロン酸2,2−ジメチルプロピル、マレイミドカプロン酸3−メチルブチル、マレイミドカプロン酸1,2−ジメチルプロピル、マレイミドカプロン酸1−エチルプロピルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独でも複数種を併用しても差し支えない。
【0024】
ここでマレイミド誘導体(A)は、樹脂組成物全体に対して1重量%以上、10重量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは1重量%以上、6重量%以下である。前記範囲であれば樹脂組成物に良好な希釈効果、低揮発性を付与することができ、更にこの樹脂組成物を用いることで半導体装置の高温時の反りを少なくすることができるからである。
【0025】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂(B)としては、公知の種々の熱硬化性樹脂を用いることが可能である。熱硬化性樹脂としては、加熱により3次元的網目構造を形成する一般的な熱硬化性樹脂である。例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、ユリア樹脂、熱硬化性ポリイミド、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂、アリルエステル系化合物及びアリル基を有するトリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。この熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではないが、作業性の観点から液状樹脂組成物を形成する材料であることが好ましく、室温(25℃)で液状であるものが望ましい。また、これらの中でも硬化性や接着性の観点から、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂及びアリルエステル系化合物等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物が好ましい。
【0026】
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0027】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種または2種以上混合して用いることができる。また、シアネート樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂及びアリルエステル系化合物等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0028】
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましいが、これはグリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0030】
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、イミダゾール類、トリフェニルホスフィンまたはテトラフェニルホスフィンの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物およびその塩類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種または2種以上混合して用いることができる。また、エポキシ樹脂は、シアネート樹脂、フェノール樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂及びアリルエステル系化合物等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0031】
フェノール樹脂は、フェノール性水酸基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりフェノール性水酸基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。フェノール性水酸基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましいが、これはフェノール性水酸基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。フェノール性水酸基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロヘキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのもの及びその誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂(B)は、硬化後に接着性や弾性率など半導体装置の組立てに十分な特性を得られ、かつポストモールドキュア時に好適な変形を生じさせるためにはラジカル重合可能な官能基を有する熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。また成形加工性と言う観点からは、硬化性の良いラジカル重合可能な官能基が不飽和炭素−炭素結合である熱硬化性樹脂を含んでいることが好ましい。また本発明の目的を達成することが可能な範囲で、また硬化性、作業性、信頼性等に影響を与えない範囲でラジカル重合性樹脂と、例えばシアネート樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂等とを併用することも可能である。
【0033】
ラジカル重合性のアクリル樹脂とは、分子内に不飽和炭素−炭素結合からなる官能基である(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。このような(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては一般に公知のものを使用できるが、(メタ)アクリロイル基は分子内に1つ以上有する必要があり、硬化性の観点から2つ以上含まれていることが好ましい。特に好ましいアクリル樹脂は分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートで(メタ)アクリル基を有する化合物である。ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0034】
例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルメチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルメチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルテトラヒドロフタル酸、2−ヒドロキシ1,3ジ(メタ)アクリロキシプロパン、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4―シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、2−(メタ)アクリロイロキシエチル、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体、(メタ)アクリル変性ポリブタジエンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、前記アクリル樹脂は、硬化性、作業性、接着性、信頼性等の点より2種類以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を併用してもかまわない。また、前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、1分子に官能基を2つ以上含む多官能の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であっても構わない。
【0036】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、樹脂組成物の常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。
【0037】
これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。また、ラジカル重合性のアクリル樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂及びアリルエステル系化合物等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0038】
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、6,7−メチレンジオキシ−4−メチルー3−マレイミドクマリン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N−(1−フェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−アミノフェニル)マレイミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ブロモメチル−2,3−ジクロロマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−スクシンイミジル3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル3−マレイミドプロピレート、N−スクシンイミジル3−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル3−マレイミドヘキサノアート、N−[4−(2−ベンズイミドリル)フェニル]マレイミド、炭酸9−フルオレニルメチルN−スクシンイミジル、炭酸2−ブロモベンジルスクシンイミジル 、3,3’−ジチオジプロピオン酸ジ(N−スクシンイミジル)、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)こはく酸イミド、N−(2−クロロカルボベンゾキシオキシ)こはく酸イミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジル−L−セリンN−スクシンイミジル、N−アミノこはく酸イミド塩酸塩、N−ブロモこはく酸イミド、N−カルボベンゾキシオキシこはく酸イミド、N−クロロこはく酸イミド、N−エチルこはく酸イミド、N−ヒドロキシこはく酸イミド、N−ユードこはく酸イミド、N−フェニルこはく酸イミド、N−サクシニミジル6−(2,4−ジニトロアニリノ)ヘキサノエート、N−サクシニミジル6−マレイミドヘキサノアートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも1分子中に2つのマレイミド環をもつビスマレイミドが硬化性という観点からは好ましい。その2つのマレイミド環を脂肪族や芳香族の炭化水素やそれらの炭化水素からなるアルキレン基をエーテルやエステルなどを介し結合していても構わない。
【0039】
アリルエステル系化合物としては、一般に公知のものが使用できる。例えばジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリート、ジアリルマレート、アリルメタクリレート、アリルアセトアセタートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
アリルエステル系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、500以上10000以下であることが好ましく、特に500以上8000以下であることが好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、硬化収縮を特に小さくすることができ、密着性の低下を防止することができる。
【0041】
上述したような数平均分子量を有するアリルエステル系化合物としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸、1,4−ジシクロジカルボン酸、アジピン酸等のジカルボン酸やそのメチルエステル誘導体と炭素数2〜8であるアルキレンジオールにより合成されたポリエステルの末端にアリルアルコールをエステル化により付加した両末端アリルエステル系化合物等が挙げられる。
【0042】
前記マレイミド環を有する化合物やアリルエステル系化合物は、芳香族環を有さないことが好ましい。芳香族環は剛直な構造であり、その存在により硬化物の剛性が上がりすぎ硬化物が脆くなり、その結果半導体装置にクラックの発生が起こりやすくなるためである。この様な問題を解決するという観点では、ポリアルキレンオキサイドを主骨格に有することが好ましい。ポリアルキレンオキサイドを用いることにより260℃環境温度下において高弾性率でありながら脆さが抑制された樹脂組成物となり、半導体装置のクラック等の発生が抑制されると考えられる。
【0043】
また本発明の樹脂組成物の諸特性を調整するために以下の化合物を化合物(A)及び熱硬化性樹脂(B)の効果を損なわない範囲で使用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0044】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0045】
本発明においてその他、充填剤を添加することも可能である。これにより、粘度やチキソ性の調整、樹脂組成物の強靭化などが可能であり、支持体もしくは、半導体素子への塗布作業等の取り扱いが容易なものとなる。
【0046】
本発明に用いられる充填剤には導電性を付与するために銀、白金、金、ニッケル、鉄、錫、銅、パラジウム等の金属粉、銀コート粉等の表面に導電層を有する金属コート粉、カーボンブラック、グラファイト等のカーボン粉など一般に公知な導電性充填剤を用いることができる。中でも、導電性の観点から銀を使用することが好ましい。
【0047】
また、絶縁性を付与するためには例えばシリカ、アルミナのようなセラミック粒子または熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の粒子を使用することができる。
【0048】
一般的に充填剤として使用されている粒子の形状には鱗状、球状、樹脂状、粉状等の種々の形状を有するものがあるが、本発明では形状については特に限定するものではない。
【0049】
前記充填剤の含有量は、例えば銀の場合であれば本発明に係る熱硬化性接着剤組成物全体の60重量%以上90重量%以下であることが好ましく、特に70重量%以上85重量%以下であることが好ましい。含有量を前記範囲内とすることにより粘度やチキソ性を好適なものとすることができ、作業性を向上させることができる。
【0050】
前記充填剤の平均粒子径は、1μm以上10μm以下であることが好ましく、特に2μm以上7μm以下であることが好ましい。平均粒子径を前記下限値以上とすることにより接着剤組成物の粘度を好適なものとすることができる。また、前記上限値以下とすることによりノズルのつまり等の成形時の問題を低減することができる。なお、前記平均粒子径は、例えばレーザー回析・散乱法を用いた粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0051】
また本発明では低応力剤として、ブタジエン化合物の重合体または共重合体を使用することができる。ブタジエン化合物の重合体または共重合体を使用することで樹脂組成物の硬化物に低応力性を付与することができる。この低応力性の付与により半導体素子と支持体との密着性が向上し剥離が生じにくいものとなる。また、他の樹脂との相溶性を高くする目的としては、官能基を有しているポリブタジエンを用いることがより好ましい。ポリブタジエンが有する具体的な官能基としては、ビニル基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基またはマレイン酸基などが挙げられる。これらの官能基の中でも、マレイン酸基を有するポリブタジエンがより好ましく、他の樹脂との相溶性が高くなり、層分離を防ぐことができる。
【0052】
また、ブタジエン化合物の重合体または共重合体は高粘度であるため、樹脂組成物の作業性が低下する場合がある。このことから、好適な作業性を得るためには反応性希釈剤等を併用することが好ましく、良好な希釈効果、低揮発性および半導体装置の高温時の反り抑制などの観点から、本発明におけるマレイミド誘導体の併用がより好ましい。
【0053】
本発明ではカップリング剤を使用することが可能である。一般的に使用されるシランカップリング剤、チタン系カップリング剤を使用することができるが、特にS−S結合を有するシランカップリング剤は無機充填材として銀粉を用いた場合には銀粉表面との結合も生じるため、被着体表面との接着力向上のみならず硬化物の凝集力も向上するため好適に使用することが可能である。S−S結合を有するシランカップリング剤としては、ビス(トリメトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられ、これらS−S結合を有するシランカップリング剤は1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
【0054】
またS−S結合を有するシランカップリング剤とS−S結合を有するシランカップリング剤以外との併用も好ましい。好ましく用いられるS−S結合を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤としては、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、アクリル酸 3−(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリメトキシフェニルシランなどが挙げられる。さらに必要に応じ、チタン系カップリング剤、アルミ系カップリング剤を使用することも可能である。
【0055】
本発明の樹脂組成物には、必要により、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などの添加剤を用いることができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物を用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームの所定の部位に樹脂組成物をディスペンス塗布した後、チップをマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を製作する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどの使用方法も可能である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例および比較例ともに下記原材料を表1に示す重量部で配合した上で3本ロールを用いて混練、脱泡することで樹脂組成物を得た。
【0059】
(化合物(A))
マレイミド誘導体(A)(A1〜A6)の合成例を下記に示す。合成方法は以下の方法に限定されるものではなく、種々公知の方法を用いることができる。
【0060】
(合成例1)
(化合物A1:マレイミド酢酸n−ペンチルの合成)
ディーンスタークトラップを備えたセパラブルフラスコに、マレイミド酢酸(試薬)31.0(0.2mol)、p−トルエンスルホン酸(試薬)5.2g(0.03mol)、トルエン(試薬)300mlを仕込んだ後、n−ペンタノール(試薬)17.6g(0.2mol)を滴下しながら減圧下80℃で1時間、攪拌しながら反応させた。滴下後、更に4時間攪拌をし、反応を続けた。その間、生成した水はディーンスタークトラップにて除去した。反応後、トルエン300mlを加え、イオン交換水100mlで3回洗浄後、得られた有機相をエバポレータ及び真空乾燥機を用いてトルエンを留去し、マレイミド酢酸n−ペンチル43.5gを得た。(収率約91%。GPC測定にてマレイミド酢酸、n−ペンタノールが残存していないことを確認した。DMSO−d6を用いたHNMRの測定によりマレイミド酢酸n−ペンチルの存在を確認した。以下化合物A1)
なお、化合物A1は、R1は炭素原子数1のアルキレン基、R2は炭素原子数5の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の和は6である。
【0061】
(化合物A1の物性値)
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):6.9ppm(2H,−CH=CH−)、4.0ppm(2H,−CH−COO−)、3.8ppm(2H,−O−CH−)
【0062】
(合成例2)
(化合物A2:マレイミド酢酸2−エチルブチルの合成)
合成例2において、n−ペンタノール17.6gの代わりに2−エチルブタノール(試薬)20.0gを用いた以外は、合成例1と同様にして、マレイミド酢酸2−エチルブチル47.3gを得た。(収率約88%。GPC測定にてマレイミド酢酸、2−エチルブタノールが残存していないことを確認した。DMSO−d6を用いたHNMRの測定によりマレイミド酢酸2−エチルブチルの存在を確認した。以下化合物A2)
なお、化合物A2は、R1は炭素原子数1のアルキレン基、R2は炭素原子数6の分枝アルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の和は7である。
【0063】
(化合物A2の物性値)
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):6.9ppm(2H,−CH=CH−)、4.0ppm(2H,−CH−COO−)、3.8ppm(2H,−O−CH−)
【0064】
(合成例3)
(化合物A3:マレイミドカプロン酸n−ペンチルの合成)
合成例1において、マレイミド酢酸31.0gの代わりにマレイミドカプロン酸(試薬)38.6gを用いた以外は、合成例1と同様にして、マレイミドカプロン酸n−ペンチル45.2gを得た。(収率約86%。GPC測定にてマレイミド酢酸、n−ペンタノールが残存していないことを確認した。DMSO−d6を用いたHNMRの測定によりマレイミドカプロン酸n−ペンチルの存在を確認した。以下化合物A3)
なお、化合物A3は、R1は炭素原子数5の直鎖アルキレン基、R2は炭素原子数5の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の和は10である。
【0065】
(化合物A3の物性値)
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):6.9ppm(2H,−CH=CH−)、2.3ppm(2H,−CH−COO−)、3.7ppm(2H,−O−CH−)
【0066】
(合成例4)
(化合物A4:マレイミド酢酸エチルの合成)
セパラブルフラスコで、無水酢酸(試薬)800mlにグリシンエチル塩酸塩(試薬)279g(2mol)を混合させた後、室温で撹拌しながら無水酢酸600mlに無水マレイン酸(試薬)196g(2mol)を溶解させたものを3時間かけて滴下した。滴下後、更に1時間撹拌して生じた沈殿を吸引ろ過により採取し、イオン交換水で洗浄、乾燥させた。この得られた生成物382g、トリエチルアミン(試薬)404g(4mol)、トルエン1200mlを、ディーンスタークトラップを備えたセパラブルフラスコに仕込んだ後、120℃で2時間、撹拌しながら反応させた。その間、生成した水はディーンスタークトラップにて除去した。反応後、トルエン300mlを加え、イオン交換水で3回洗浄後、得られた有機相をエバポレータ及び真空乾燥機を用いてトルエンを留去し、マレイミド酢酸エチル165gを得た。(収率約38%。GPC測定にてマレイミド酢酸エチルの生成を確認した。DMSO−d6を用いたHNMRの測定によりマレイミド酢酸エチルの存在を確認した。以下化合物A4)
なお、化合物A4は、R1は炭素原子数1のアルキレン基、R2は炭素原子数2の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の和は3である。
【0067】
(化合物A4の物性値)
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):6.9ppm(2H,−CH=CH−)、4.0ppm(2H,−CH−COO−)、3.8ppm(2H,−O−CH−)
【0068】
(合成例5)
(化合物A5:マレイミド酢酸tert−ブチルの合成)
合成例1において、n−ペンタノール17.6gの代わりにtert−ブタノール(試薬)3.7gを用いた以外は、合成例1と同様にして、マレイミド酢酸tert−ブチル35.0gを得た。(収率約83%。GPC測定にてマレイミド酢酸、tert−ブタノールが残存していないことを確認した。DMSO−d6を用いたHNMRの測定によりマレイミド酢酸tert−ブチルの存在を確認した。以下化合物A5)
なお、化合物A5は、R1は炭素原子数1のアルキレン基、R2は炭素原子数4の分枝アルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の和は5である。
【0069】
(化合物A5の物性値)
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):6.9ppm(2H,−CH=CH−)、4.1ppm(2H,−CH−COO−)、1.5ppm(9H,−O−C(CH
【0070】
(合成例6)
(化合物A6:マレイミド安息香酸2−エチルブチルの合成)
合成例3において、マレイミド酢酸31.0gの代わりにマレイミド安息香酸43.4gを用いた以外は、合成例1と同様にして、マレイミド安息香酸2−エチルブチル50.4gを得た。(収率約80%。GPC測定にてマレイミド安息香酸、2−エチルブタノールが残存していないことを確認した。DMSO−d6を用いたHNMRの測定によりマレイミド安息香酸2−エチルブチルの存在を確認した。以下化合物A6)
なお、化合物A6は、R1は炭素原子数6の芳香族環を有するフェニレン基、R2は炭素原子数6の分枝アルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の和は12である。
【0071】
(化合物A6の物性値)
H−NMR(400MHz,DMSO−d6):7.5〜8.0ppm(4H,−C−)、7.0ppm(2H,−CH=CH−)、3.8ppm(2H,−O−CH−)
【0072】
(熱硬化性樹脂として用いる化合物)
化合物B1:ポリカーボネートジメタクリレート(宇部興産(株)製、UM−90(3/1)DM、分子量1000、以下化合物B1)
化合物B2:ポリエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル4EG、以下化合物B2)
化合物B3:ポリアルキレンエステル含有アリルエステル(昭和電工(株)製、DA101、以下化合物B3)
化合物B4:1,6ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1.6HX、以下化合物B4)
化合物B5:ポリアルキレンマレイミド酢酸エステル(DIC(株)製、ルミキュアMIA−200、以下化合物B5)
化合物B6:ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルエーテル(日本化薬(株)製、RE−403S、以下化合物B6)
【0073】
(硬化剤)
硬化剤:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(四国化成工業(株)製、キュアゾール2MZA−PW、以下硬化剤)
【0074】
(低応力剤)
低応力剤:無水マレイン酸変性ポリブタジエン(Satomer社製、Ricobond1731、以下低応力剤)
【0075】
(反応性希釈剤)
反応性希釈剤:テトラヒドロフルフリルアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルTHF−A、以下反応性希釈剤)
【0076】
(開始剤)
ラジカル重合開始剤:1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、パーヘキサCS、以下開始剤)
【0077】
(充填材)
充填材:平均粒径3μm、最大粒径20μmのフレーク状銀粉
【0078】
(添加剤)
上記化合物、充填材の他に下記添加剤を用いた。
カップリング剤1:γ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下カップリング剤1)
カップリング剤2:ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス4、以下カップリング剤2)
【0079】
(評価試験)
上記より得られた実施例および比較例の樹脂組成物及び半導体装置について以下の評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
(反り評価1)
(半導体装置の製造)
厚み0.3mmのBT基板を支持体とし、実施例及び比較例の樹脂組成物を用いてシリコンチップ(10×10mm、厚み0.20mm)を接着し、175℃、30分間オーブン内で硬化して接着した。その後175℃にて半導体封止用エポキシ樹脂組成物(住友ベークライト社製、EME−G760)を用いて、1パネル49×53mm、BT基板を含めた1パネルの厚みが700μmのパネル状に封止し、その後175℃、4時間ポストモールドキュアを行い、吸水しない状態でIRリフローを1度通す。その後ボディサイズ:14×14mmにダイシングソーを用いて個片化することにより試験用半導体装置(MAPBGA)を得た。この試験用半導体装置の220℃加熱後の反りを反り量1とした。
【0081】
(反り測定方法)
前記の通り定義した反り量1は以下の方法で測定、算出した。
反り量1:温度可変レーザー三次元測定機(日立エンジニアリングアンドサービス社製、LSI−150)を用いて上述の試験用半導体装置端部の高さHE1および試験用半導体装置中央部の高さHC1を測定し、前記HE1と前記HC1の差すなわち下記式1により得られる数値を反り量1とした。
式1:反り量1=HE1−HC1
【0082】
(接続信頼性)
厚み0.3mmのBT基板を支持体とし、実施例及び比較例の樹脂組成物を用いてシリコンチップ(10×10mm、厚み0.20mm)を接着し、175℃、30分間オーブン内で硬化して接着した。その後175℃にて半導体封止用エポキシ樹脂組成物(住友ベークライト社製、EME−G760)を用いて、1パネル49×53mm、BT基板を含めた1パネルの厚みが700μmのパネル状に封止し、その後175℃、4時間ポストモールドキュアを行った。パネル状のパッケージのランド部分に鉛フリー半田ボールSn−3Ag−0.5Cu(千住金属社製、融点約217℃)を搭載後、ボディサイズ:14×14mmにダイシングソーを用いて個片化することにより半田バンブ電極224個を有する試験用半導体装置(MAPBGA)を得た。銅配線パッドが224個開口(基板側電極)した厚み1mmのFR−4ガラスエポキシ製配線回路基板の63Sn−37Pb半田ペーストが塗布されている銅配線パッド(基板側電極)と、上記試験用半導体装置の半田バンプ電極とが対向するように位置合わせして基板に試験用半導体装置を搭載した後、これをIRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)にて2次実装した。光学顕微鏡による半田接合部の断面観察を行い、接続信頼性を評価した。表1における各符号は、以下の通りである。
○:半田接合部での半田ボールの不接合が見られない場合(合格)。
×:半田接合部での半田ボールの不接合が見られた場合(不良)。
【0083】
(密着強度1)
上述した実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて、4×4mmシリコンチップ(厚み525μm)を支持体ニッケル−パラジウムメッキされた銅フレーム上にマウントし、オーブンを用いて175℃15分(25℃から175℃まで昇温速度5℃/分)の硬化温度プロファイルにて硬化した後、250℃環境下における熱時ダイシェア強度を測定した。得られた強度を密着強度1とした(単位:N/チップ)。通常30N以上の密着強度が出れば、ワイヤーボンディング時や封止時に剥がれてしまうことはないため、30Nを超えるかどうかを判断基準とした。
【0084】
(密着強度2)
支持体としてガラス−エポキシ積層板(FR−4、ガラスクロス2層、表面太陽インキ PSR−4000AUS308、ガラス転移温度120−140℃)を用いた以外は密着強度1と同様に評価し、得られた熱時ダイシェア強度を密着強度2とした(単位:N/チップ)。
【0085】
(作業性)
E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、2.5rpmでの値を実施例及び比較例の樹脂組成物作製直後に測定した。粘度が15〜30Pa・sの場合を合格とした。粘度の単位はPa・sである。
【0086】
(ワイヤー密着強度)
上述した実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて、Al−1%Si−0.5%Cuの組成の電極を有するシリコンチップを、Agメッキを施した42アロイ製リードフレームに接着し、Auワイヤーをボンディングした。このボンディングしたワイヤーにフックをかけて引張り試験を行った。その際、ワイヤーの密着強度が十分な場合はワイヤー部分で破断するが、密着強度が不十分な場合はワイヤーとボンディングパッドの接合部で剥離する。表1における各符号は、以下の通りである。
○:接合部での剥離が全体の10%未満(合格)。
×:接合部での剥離が全体の10%以上(不良)。
【0087】
(耐リフロー性1)
支持体として封止樹脂のにじみ防止のために裏面にカプトンテープを貼り付けたニッケル−パラジウムメッキされた銅フレーム(ダイパッドサイズ:6×6mm、厚み220μm、1パネルあたりダイパッドが4列×6段)と、表面にSiN層を持つ半導体素子(4×4mm、厚さ350μm)とを上述した実施例及び比較例の樹脂組成物で接着し、175℃、30分間オーブン内で硬化して接着した。次に、半導体封止用エポキシ樹脂組成物(住友ベークライト社製、EME−G630)を用いて、1パネル44mm×62mm、リードフレームを含めた1パネルの厚みが850μmに封止し、175℃、4時間ポストモールドキュアを行い、その後ダイシングソーなどで個片化し、試験用半導体装置(48LQFN、サイズ8x8mm、封止樹脂厚み850μm)を得た。この試験用半導体装置を85℃、相対湿度60%の条件下で168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行い、処理後のパッケージを超音波深傷装置(透過型)により剥離面積の割合を測定し、10%未満の場合を合格とした。
【0088】
(耐リフロー性2)
試験用半導体装置は反り評価1と同様に作製し、この試験用半導体装置を用いた以外は耐リフロー性1と同様に評価を行った。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂組成物は、220℃以上という高温環境下においても半導体装置の反りが少なく、半田接続信頼性に優れ、かつ剥離、クラック等の不具合が生じず、優れた信頼性を半導体装置に付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるマレイミド誘導体(A)と官能基を2個以上有する熱硬化性樹脂(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1は炭素原子数1以上の直鎖又は分枝アルキレン基、R2は炭素原子数5以上の直鎖又は分枝アルキル基、また、R1とR2の炭素原子数の和が10以下。)
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂(B)がシアネート樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、マレイミド環を有する化合物、アリルエステル系化合物等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物、アリル基を有するトリアリルイソシアヌレート及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる1以上の樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
更に充填剤を含む請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に低応力剤を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記低応力剤がブタジエン化合物の重合体または共重合体である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製した半導体装置。

【公開番号】特開2011−241343(P2011−241343A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116593(P2010−116593)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】