説明

樹脂組成物及び熱収縮性フィルム

【課題】透明性、熱収縮性、自然収縮性、低温伸び、耐溶剤性に優れ、かつ物性バランスも良好で、さらにはリサイクル性をも有する熱収縮性フィルムを得る。
【解決手段】下記(1)〜(6)を満たすブロック共重合体の水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)とを、重量比(I)/(II)=75/25〜60/40で含有し、比重が0.97以下である樹脂組成物。
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜80質量%、共役ジエンの含有量が40〜20質量%。
(2)共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)を含有する。
(3)ブロック重合体(A)の水添前のビニル結合量が75質量%以上。
(4)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)を含有する。
(5)ランダム共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素の含有量が85〜98質量%。
(6)ブロック共重合体の水添物(I)の水添率が60%以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高い、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体は、透明性、耐衝撃性等に関して優れた特性を有しているため、射出成形用途、押出し成形用途の各種成形体、例えばシート、フィルム等に使用されている。
特に、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体樹脂を用いた熱収縮性フィルムは、従来使用されている塩化ビニル樹脂製のフィルムにおける残留モノマーや可塑剤の残留、焼却時の塩化水素の発生の問題も無いため、食品包装用途、キャップシール、ラベル等に利用されている。
【0003】
ところで、熱収縮フィルムに要求される特性として、自然収縮性、低温収縮性、透明性、機械強度、包装機械適性等が挙げられる。従来から、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るため種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、室温での自然収縮性を改良するため、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素からなるブロック共重合体と、スチレン系炭化水素を含有する特定Tgのランダム共重合体との組成物からなるポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、自然収縮性、耐熱融着性、透明性、収縮仕上がり性の、いずれかの特性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体とを組み合わせた配合物を中間層とし、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなるブロック共重合体を主成分とした混合重合体を表裏層とする熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムが開示されている。
【0006】
下記特許文献3には、仕上がり性、剛性、自然収縮性に優れる熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素のブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとを含有する、特定の粘弾性挙動を示す熱収縮性ポリスチレンフィルムが開示されている。
【0007】
下記特許文献4には、耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性及び伸び等の物性を得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体水添物とポリオレフィン系重合体との組成物、及び当該組成物よりなる熱収縮性フィルムが開示されている。
【0008】
下記特許文献5には、剛性、低温伸び、低温収縮性及び耐溶剤性等の物性バランスが良好な、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体水添物とポリオレフィン系重合体との組成物よりなる熱収縮性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−52129号公報
【特許文献2】特開2000−6329号公報
【特許文献3】特開平11−349704号公報
【特許文献4】特開2007−39662号公報
【特許文献5】特開2008−133315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、近年の環境に対する配慮の観点から、リサイクル化の促進を図るため、容器とラベルとを容易に分別できる特性が要求されているが、上述した従来提案されているフィルムを用いたラベルは、いずれも比重が1.0以上であるため、水で分離することができない。
水で分離する特性を得るためには、組成物の段階で比重が0.97以下であることが要求されるため、組成物の原料そのものに低比重のものを用いることが要求される。
このような低比重の原料としては、ポリオレフィン系重合体が挙げられるが、スチレン系の原料を用いた組成物と比較すると、最終的に得られるフィルムにおいて、収縮性、印刷性の点で劣るという問題を有している。
【0011】
また、従来提案されているビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体とその水添物を含有する組成物からなるフィルムは、いずれも、低比重化と自然収縮性、低温収縮性、透明性及び耐溶剤性等の物性バランスに関して、未だ改善すべき余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した従来技術の問題を解決するために、鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体水添物とポリプロピレン系樹脂との組成物よりなり、印刷前の比重が0.97以下であるフィルムが、印刷後の比重を1.0未満にでき、被着体から水を用いて分離することが可能であり、良好なリサイクル性を有し、熱収縮性フィルムとして好適な透明性、熱収縮性、自然収縮性、低温伸び、耐溶剤性等を有し、かつこれらの物性バランスに優れているフィルムであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
〔1〕
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とを含有し、下記(1)〜(6)を満たすブロック共重合体の水添物(I)と、
ポリプロピレン系樹脂(II)と、
を、重量比が、(I)/(II)=75/25〜60/40で含有し、
比重が0.97以下である樹脂組成物。
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜80質量%、共役ジエンの含有量が40〜20質量%である。
(2)少なくとも1つの共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)を含有する。
(3)前記ブロック重合体(A)の水添前のビニル結合量が75質量%以上である。
(4)少なくとも1つの、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)を含有する。
(5)前記ランダム共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素の含有量は85〜98質量%である。
(6)前記ブロック共重合体の水添物(I)の水添率が60%以上である。
〔2〕
脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂及び脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の滑剤を、前記成分(I)及び(II)の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらに含有する前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダード・アミン系光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤又は光安定剤を、前記成分(I)及び成分(II)の合計100質量部に対して、0.05〜3質量部、さらに含有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の樹脂組成物からなる層を、少なくとも1層有し、比重が1.0未満である熱収縮性フィルム。
〔5〕
前記〔4〕に記載の熱収縮性フィルムに印刷を施した、比重が1.0未満である熱収縮性フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱収縮性フィルムとして好適な、透明性、熱収縮性、自然収縮性、低温伸び、耐溶剤性等を有し、かつこれらの物性バランスにも優れ、さらには水で分離可能なリサイクル性をも達成できる熱収縮性フィルムに好適な樹脂組成物、及び当該樹脂組成物からなる熱収縮性フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とを含有し下記(1)〜(6)を満たすブロック共重合体の水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)とを、重量比が、(I)/(II)=75/25〜60/40で含有し、比重が0.97以下である樹脂組成物である。
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜80質量%、共役ジエンの含有量が40〜20質量%である。
(2)少なくとも1つの共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)を含有する。
(3)前記ブロック重合体(A)の水添前のビニル結合量が75質量%以上である。
(4)少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)を含有する。
(5)前記ランダム共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素の含有量が85〜98質量%である。
(6)前記ブロック共重合体の水添物(I)の水添率が60%以上である。
【0017】
(ブロック共重合体の水添物(I))
ブロック共重合体の水添物(I)(以下、成分(I)と称する場合もある。)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとを含有するブロック共重合体の水添物であり、ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜80質量%、共役ジエンの含有量が40〜20質量%である。
ビニル芳香族炭化水素の含有量は、好ましくは65〜75質量%であり、共役ジエンの含有量は好ましくは35〜25質量%である。
ビニル芳香族炭化水素の含有量は、後述する実施例において記載した方法により測定でき、共役ジエンの含有量は、前記ビニル芳香族炭化水素含有量の値から算出できる。
【0018】
ブロック共重合体の水添物(I)は、少なくとも1つの共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)を含有している。
少なくとも1つの共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)とは、共役ジエン単独、又は共役ジエンを90質量%以上含有する、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロックを示す。
なお、ブロック共重合体の水添物の共役ジエンの含有量は、水添前のブロック共重合体の共役ジエンの含有量で把握することができる。
【0019】
前記ブロック重合体(A)は、水添前のビニル結合量が75質量%以上であり、好ましくは80質量%以上ある。
75質量%未満であると、後述するポリオレフィン系樹脂との相溶性が下がり透明性が悪くなる。
75質量%以上であると、透明性は改善され、その他の物性バランスも良好な熱収縮性フィルムを得ることができる。
ブロック重合体(A)の水添前のビニル結合量は、後述する実施例に示す方法により測定できる。
【0020】
ブロック共重合体の水添物(I)は、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)を含有している。
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)とは、ビニル芳香族炭化水素を85〜98質量%含有する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロックである。ビニル芳香族炭化水素の含有量は、87〜96質量%であることが好ましく、89〜94質量%であることがより好ましい。
前記範囲にあると、自然収縮性が良好で、その他の物性バランスも良好な熱収縮性フィルムを得ることができる。
ビニル芳香族炭化水素の含有量が、85質量%未満であると自然収縮率が低下し、透明性も低下する。また、98質量%を超えると、熱収縮率が低下する。
ランダム共重合体ブロック(B)は、共重合されているビニル芳香族炭化水素はランダム共重合体ブロック中に均一に分布していても、テーパー(漸減)状、階段状に分布していてもよい。
また、当該共重合体ブロック(B)はビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分が複数個存在していてもよい。
【0021】
ブロック共重合体の水添物(I)は、水添率が60%以上である。
すなわち共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率(水添率)は、重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の60%以上であり、好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上である。
水添率が60%以上であると、耐溶剤性に優れ、後述するポリオレフィン系重合体との相溶性が良好なものとなり、透明性が向上する。
なお、ブロック共重合体の水添物(I)は、ビニル芳香族炭化水素に基づく芳香環の二重結合の水添率については特に制限はないが、50%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
水添率は、後述する実施例に記載する核磁気共鳴装置(NMR)を用いた測定方法により知ることができる。
【0022】
ブロック共重合体の水添物(I)は、ビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック重合体(C)、例えばスチレンブロックを含んでいてもよい。
ビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック重合体(C)は、ビニル芳香族炭化水素単独の重合体ブロック、又はビニル芳香族炭化水素を90質量%以上含有する、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロックを示す。
ブロック重合体(C)のビニル芳香族炭化水素の含有量は、ブロック共重合体の水添物(I)を水添する前の状態において把握することができる。
【0023】
(ブロック共重合体の水添物(I)のポリマー構造)
ブロック共重合体の水添物(I)のポリマー構造としては、例えば、下記(a)〜(c)のような構造が挙げられる。
(A−B)・・・(a)
(B−A)・・・(b)
C−(A−B)−C・・・(b)
C−(B−A)−C・・・(c)
Aは、共役ジエンを主体とする重合体ブロック(A)である。
Bは、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)である。
Cは、ビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック重合体(C)である。
AブロックとBブロックとCブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
nは1以上の整数であり、一般的には1〜5である。
【0024】
また、ブロック共重合体の水添物(I)のポリマー構造としては、上記の他、下記(d)〜(g)のようなラジアルブロック共重合体が挙げられる。
[(A−B)−X・・・(d)
[(B−A)−X・・・(e)
[C−(A−B)−C]−X・・・(f)
[C−(B−A)−C]−X・・・(g)
ここで、A、B、Cは前記(a)〜(c)と同義である。
kは1以上の整数であり、mは3以上の整数であり、一般的には3〜5である。
mが3〜5の重合体には、mが1及び/又は2の重合体を含んでいても構わない。
Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。
【0025】
ブロック共重合体の水添物(I)を構成するビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられ、特に、反応性が良好で、高強度となる傾向にあるため、スチレンが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
ブロック共重合体の水添物(I)を構成する共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
共役ジエンとして、1,3−ブタジエンとイソプレンを併用する場合、1,3−ブタジエンとイソプレンの全質量に対してイソプレンの割合は10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。
イソプレンが10質量%以上であると、高温での成形加工時等に熱分解を起こし難く、分子量が低下しないため、外観特性や機械的強度のバランス性能の良好な変性ブロック共重合体やその組成物が得られる傾向にある。
【0026】
(ブロック共重合体の水添物(I)の製造方法)
先ず、ブロック共重合体を作製し、その後、水添反応を行う。
水添前のブロック共重合体は、基本的には、従来公知の方法により合成できる。
例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49567号公報、特公昭58−11446号公報等に開示されているように、炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン開始剤を用いて、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素をブロック共重合する方法により合成することができる。
なお、本実施形態においては、各構成ポリマーの製造条件を後述のように設定するものとする。
【0027】
ブロック共重合体の水添物(I)の水添前の状態であるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体(I)と表記することがある。)は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを重合することにより得られる。
【0028】
炭化水素溶媒としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
重合開始剤としては、一般的に、共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対し、アニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等が挙げられる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。
具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。
さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上混合使用してもよい。
【0030】
ブロック共重合体(I)を合成する工程においては、重合度の調整、重合した共役ジエン部のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素の反応比の調整等の目的で、極性化合物やランダム化剤を使用することができる。
ブロック共重合体(I)においては、ミクロ構造はビニル結合量が40質量%以上であることが好ましい。このため、第3級アミン化合物を添加することが好ましい。
ブロック共重合体(I)のビニル結合量は、後述する実施例に記載の方法により測定、算出できる。
【0031】
前記第3級アミン化合物は、一般式:R123N(R1、R2、R3は、炭素数1〜20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基である。)で示される化合物であるものとする。
例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等である。
特に、N,N,N’,N−テトラメチルエチレンジアミンが好ましい。
【0032】
前記第3級アミン化合物は、共役ジエンブロック部分のビニル結合量を高くするために使用し、その使用量は、目的とする共役ジエン部のビニル結合量によって調整することができる。
本実施形態の樹脂組成物を構成するブロック共重合体の水添物(I)は、少なくとも1つの共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)を含有し、当該ブロック重合体(A)の水添前のビニル結合量が75質量%以上である。これを達成するために、第3級アミン化合物の使用量は、リチウム重合開始剤に対して0.1〜4(モル/Li)とする。
【0033】
また、併せてナトリウムアルコキシドを用いることによって、よりビニル結合量が高く、ランダム性も向上し、ビニル芳香族ブロック部分を含めて分子量分布が狭く、高強度の重合体を、高い生産性で生成することができる。
ナトリウムアルコキシドの一般式は、NaOR(式中Rは炭素数2〜12のアルキル基である。)で示される化合物である。
この中でも炭素原子数3〜6のアルキル基を有するナトリウムアルコキシドが好ましく、ナトリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ペントキシドがより好ましい。
ナトリウムアルコキシドの量は、第3級アミン化合物に対して0.01以上0.1未満(モル比)である。
【0034】
水添前のブロック共重合体(I)を製造する際の重合温度は、一般的に−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃である。
重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。
また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスなどをもって置換するのが好ましい。
重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。
さらに、重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意する必要がある。
【0035】
ブロック共重合体(I)を生成した後、水添反応を行う。
水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。
例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、例えば、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。
また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0036】
水添反応は、一般的に0〜200℃、好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施する。
水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、より好ましくは0.3〜7MPaであるものとする。
また、水添反応時間は、通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。
水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
この範囲にあっては、後述するポリプロピレン系樹脂(II)と組み合わせて組成物にした時に相溶性が優れたものとなり、透明性、熱収縮性、剛性、低温伸びのバランスが良く、低比重化(0.97以下)した熱収縮性フィルムが得られる。
【0037】
(ポリプロピレン系樹脂(II))
本実施形態の樹脂組成物を構成するポリプロピレン系樹脂(II)(以下、単に成分(II)と言う場合もある。)としては、アイソタクチックポリプロピレン等のプロピレンの単独重合体や、プロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
前記共重合体に使用されるα−オレフィン成分としては、例えば、エチレン、ブテン−1,ペンテン−1,3−メチル−1−ブテン、ヘキセン−1,3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、へプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもプロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体が好ましく、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0038】
ポリプロピレン樹脂(II)のメルトフローインデックス(以下、「MI」と略する。)は、温度230℃、荷重2.16kgで0.5〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜10g/10分、さらに好ましくは3〜7g/10分の範囲にある。
MIが0.5g/10分以上であると、溶融押出時に押出負荷が過大になることを防止でき、20g/10分以下であると、延伸安定性が良好なものとなる。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂(II)とブロック共重合体の水添物(I)との比率は、重量比で(I)/(II)=75/25〜60/40とする。好ましくは73/27〜62/38とし、より好ましくは71/29〜64/36とする。
これにより、相溶性が優れ、透明性、収縮性、剛性、低温伸びのバランスが良く、低比重化(0.97以下)した熱収縮性フィルムを得ることができる。
【0040】
(その他の成分)
<滑剤>
本実施形態の樹脂組成物は、滑剤が含有されていてもよい。
滑剤としては、脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂及び脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
滑剤の含有量は、上述したブロック共重合体の水添物(I)及びポリプロピレン系樹脂(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜4質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。滑剤を添加することによって、耐ブロッキング性が良好となる。
脂肪酸アミドとしては、ステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、ベヘンアミド、高級脂肪酸アミドとしてはビスアミド、エチレンビスステアロアミド、ステアリルオレイルアミド、N−ステアリルエルクアミド等が挙げられる。
パラフィン及び炭化水素系樹脂としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、パラフィン系合成ワックス、ポリエチレンワックス、複合ワックス、モンタンワックス、炭化水素系ワックス、シリコーンオイル等が挙げられる。
また、脂肪酸としては飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等が挙げられる。
すなわち、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
上述した滑剤は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0041】
<紫外線吸収剤、光安定剤>
本実施形態の樹脂組成物には、紫外線吸収剤及び光安定剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤及び光安定剤を含有することができる。
紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量は、上述したブロック共重合体の水添物(I)及びポリプロピレン系樹脂(II)の合計100質量部に対して好ましくは0.05〜3質量部、より好ましくは0.05〜2.5質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部であり、これによって、耐光性が向上する。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル酸,n−ヘクサデシルエステル、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’,4’,5’,6’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、ビス(1,2,6,6,6,−ペンメチル−4−ピペリジル)セパケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアサスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチレン)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物が挙げられる。
また、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4-ピペリジル]イミノ]]、ポリ[6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキジベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジル)、テトラキシ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキシ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボシ酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物が挙げられる。
さらにまた、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシル−1,6−ヘキサメチレンジアミン−N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシル−メタクリレート等が挙げられる。
【0042】
<安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤>
また、本実施形態の樹脂組成物には、各種の安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等も添加できる。
ブロッキング防止剤、帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、エチレンビスステアロアミド、ソルビタンモノステアレート、脂肪酸アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリストール脂肪酸エステル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,5−ビス−[5’−t−ブチルベンゾオキサゾリル−(2)]チオフェン等、「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」(化学工業社)に記載された化合物が使用できる。
これらは、本実施形態の樹脂組成物中、一般的に0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%の範囲で用いられる。
【0043】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、上述したブロック共重合体の水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)と、所定の添加剤を、例えば2軸押出機でコンパウンドすることにより作製できる。ブロック共重合体の水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)との配合比は、重量比で(I)/(II)=75/25〜60/40であるものとする。
本実施形態の樹脂組成物は、比重が0.97以下となるように調製する。
【0044】
〔熱可塑性フィルム〕
本実施形態の熱可塑性フィルムは、上述した本実施形態の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有しており、比重が1.0未満のフィルムである。
本実施形態の熱可塑性フィルムは、単層構造であっても、多層構造であってもよく、多層構造である場合、本実施形態の樹脂組成物からなる層を、中間層、外層のいずれに適用してもよい。
【0045】
本実施形態の熱可塑性フィルムは、実用上の所定の印刷を施した場合においても、比重が1.0未満であるものとする。これにより、貼付対象、例えばペットボトル等から水を用いて分離することが可能となり、優れたリサイクル性が得られる。
【0046】
本実施形態の熱収縮性フィルムを多層フィルムとする場合、本実施形態の樹脂組成物を用いて形成した層以外の層に関しては、特に限定されるものではなく、構成成分や組成等に関しては適宜調整が可能である。
本実施形態の熱収縮性フィルム及び熱収縮性多層フィルムの厚さは10〜300μmが好ましく、より好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
多層フィルムの両外層と中間層の厚みの割合は5/95〜45/55であることが好ましく、より好ましくは10/90〜35/65である。
【0047】
(熱可塑性フィルムの製造方法)
本実施形態の熱可塑性フィルムの製造方法については、特に限定されるものではないが、上述した本実施形態の樹脂組成物を押出機によって溶融させ、押出す製造方法が一般的である。
押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法等の既存のどの方法を採用してもよい。
溶融押出された樹脂組成物は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、1軸または2軸に延伸される。
延伸温度は、フィルムを構成している樹脂の軟化温度や、熱収縮性フィルムの要求用途によって変える必要があるが、概ね60〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲で制御する。
延伸倍率は、フィルム構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて1.5〜6倍の範囲で適宜決定される。
また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは目的の製品の用途によって決定される。
また、延伸した後フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに、当フィルムの冷却を行うことも、収縮性を付与して保持する上で重要な技術である。
【0048】
本実施形態の熱可塑性フィルムは、80℃×10秒の熱収縮率が、少なくとも一方向において20%以上であることが好ましい。
熱収縮率が20%以上であると、収縮フィルムとして実用上良好な機能を発現する。
また、90℃×10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において50%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
〔評価方法〕
後述する実施例及び比較例のフィルムの物性の評価方法、及び当該フィルムを構成する材料の構造の測定方法について、下記に示す。ここで、フィルムの流れ方向をMD、その直交方向をTDと記載した。
【0051】
<(1)スチレン含有量>
ブロック共重合体(I)のスチレン含有量を、紫外分光光度計(装置名:UV−2450;島津製作所)を用いて測定した。
【0052】
<(2)ビニル結合量>
共役ジエンを主体とするブロック重合体の水添前のビニル結合量を、赤外分光光度計(装置名:FT/IR4100;日本分光社製)を用いて測定した。ビニル結合量はハンプトン法により算出した。
なお、表1中、「共役ジエンブロックビニル結合量」として示した。
【0053】
<(3)水添率>
核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定した。
【0054】
<(4)比重>
電子比重計(装置名:MD−200S;A&D社製)で測定した。
【0055】
<(5)熱収縮率>
80℃収縮率:延伸フィルムを80℃の温水中に10秒間浸漬し、以下の式より算出した。
90℃収縮率:延伸フィルムを90℃の温水中に10秒間浸漬し、以下の式より算出した。
熱収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100
L1:収縮前の長さ(延伸方向)
L2:収縮後の長さ(延伸方向)
【0056】
<(6)自然収縮率>
延伸フィルムを35℃で、3日間放置し、次式より算出した。
自然収縮率(%)=(L3−L4)/L3×100
L3:放置前の長さ(延伸方向)
L4:放置後の長さ(延伸方向)
【0057】
<(7)引張弾性率>
引張速度10mm/min、試験片幅10mm、チャック間100mm、測定温度23℃で行い、MD、TDの平均値であらわした。
【0058】
<(8)低温伸び>
引張速度100mm/min、試験片幅15mm、チャック間60mm、測定温度0℃で行い、MD方向で測定した。
【0059】
<(9)Haze>
延伸フィルムの表面に流動パラフィンを塗布し、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0060】
<(10)耐溶剤性>
酢酸エチルとイソプロピルアルコールの比率が40/60の23℃の溶剤中に4cm×4cm(タテ×ヨコ)の延伸フィルムを浸漬し、収縮開始までの時間を目視で計測した。
5秒以上を○、5秒未満を×として、判定した。
【0061】
〔ブロック共重合体水添物又はブロック共重合体〕
次に、実施例及び比較例のフィルムに含有されている構成材料である、(I)ブロック共重合体水添物又は非水添物である(I)ブロック共重合体の製造例について示す。
水添前のブロック共重合体は、シクロヘキサン中、n−ブチルリチウムを開始剤、テトラメチルエチレンジアミンとナトリウムt−ペントキシドをビニル化剤及びランダム化剤として、濃度24質量%でスチレンとブタジエンを重合することにより製造した。
水添触媒は、窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させることにより製造した。
個々の詳細の製造例は以下に記載する。
【0062】
<ブロック共重合体水添物I−1>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.095質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン12質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、15分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン60質量部と、1,3−ブタジエン8質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で65分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−1を得た。
なお、水添率は96%に達した。
【0063】
<ブロック共重合体水添物I−2>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.100質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、30分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン50質量部と、1,3−ブタジエン6質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で50分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−2を得た。
なお、水添率は98%に達した。
【0064】
<ブロック共重合体水添物I−3>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.105質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン35質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、45分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン40質量部と、1,3−ブタジエン5質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で40分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−3を得た。
なお、水添率は95%に達した。
【0065】
<ブロック共重合体水添物I−4>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.090質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、30分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン50質量部と、1,3−ブタジエン6質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で50分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−4を得た。
なお、水添率は62%に達した。
【0066】
<ブロック共重合体水添物I−5>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.100質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン29質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、40分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン50質量部と、1,3−ブタジエン1質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で40分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−5を得た。
なお、水添率は95%に達した。
【0067】
<ブロック共重合体水添物I−6>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.095質量部を添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に1,3−ブタジエン12質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、15分間連続供給して重合を行った。
次に、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、スチレン60質量部と、1,3−ブタジエン8質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃65分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−6を得た。
なお、水添率は96%に達した。
【0068】
<ブロック共重合体I−7>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.069質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン12質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、15分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン60質量部と、1,3−ブタジエン8質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で65分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体I−7を得た。
なお、水添作業は行わなかった。
【0069】
<ブロック共重合体水添物I−8>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.085質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、30分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン50質量部と、1,3−ブタジエン6質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で50分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−8を得た。
なお、水添率は55%に達した。
【0070】
<ブロック共重合体水添物I−9>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.100質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液を、50℃〜60℃で温度範囲をコントロールし、30分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン50質量部と、1,3−ブタジエン6質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で50分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−9を得た。
なお、水添率は96%に達した。
【0071】
<ブロック共重合体水添物I−10>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.100質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン18質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、25分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン50質量部と、1,3−ブタジエン12質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で55分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−10を得た。
なお、水添率は95%に達した。
【0072】
<ブロック共重合体水添物I−11>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.092質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン6質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、8分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン65質量部と、1,3−ブタジエン9質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で72分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−11を得た。
なお、水添率は95%に達した。
【0073】
<ブロック共重合体水添物I−12>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.108質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、50分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン35質量部と、1,3−ブタジエン5質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で35分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で6分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−12を得た。
なお、水添率は96%に達した。
【0074】
<ブロック共重合体I−13>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン19質量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.075質量部添加し、50℃で15分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン20質量部と、1,3−ブタジエン30質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で50分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン31質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で25分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.6質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体I−13を得た。
なお、水添作業は行わなかった。
【0075】
<ブロック共重合体水添物I−14>
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.100質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して1.8倍モル添加し、ナトリウムt−ペントキシドをn−ブチルリチウムに対して0.07倍モル添加し、50℃で6分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン30質量部を含むシクロヘキサン溶液を、45℃〜55℃で温度範囲をコントロールし、40分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で40分間連続供給して重合を行った。
その後、メタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加した。
その後、水添触媒をブロック共重合体100質量部当たり、チタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
次に、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体水添物100質量部に対して0.4質量部添加した。
その後、脱溶媒してブロック共重合体水添物I−14を得た。
なお、水添率は98%に達した。
【0076】
上述のようにして作製したブロック共重合体又はブロック共重合体の水添物(I−1)〜(I−14)の構造、スチレン含有量、共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)のビニル結合量、ランダム共重合体ブロック(B)中のスチレン含有量、ブロック共重合体又はブロック共重合体の水添物(I−1)〜(I−14)の水添率について、下記表1に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1中、Sはスチレン部、Bはポリブタジエン部、S/Bは共重合体部を表す。
【0079】
〔ポリプロピレン系樹脂〕
次に、実施例及び比較例のフィルムに含有されている構成材料である、(II)ポリプロピレン系樹脂、及びそのメルトインデックス(MI)を下記表2に示す。
なお、表2中、MIの測定条件は、II−1については230℃、2.16kg荷重とし、II−2については190℃、2.16kg荷重とした。
【0080】
【表2】

【0081】
〔実施例1〜8〕、〔比較例1〜13〕
これらの例においては、単層フィルムを作製した。
ブロック共重合体水添物、又は非水素添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)とを、 重量比で、(I)/(II)=80/20〜50/50に配合し、200℃の2軸押出機でコンパウンドし、樹脂組成物を得た。
200℃のTダイ押出機で厚み250μmのシートを作製し、このシートを85℃雰囲気のテンター延伸設備内でTD方向に5倍延伸して、約50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0082】
〔実施例9〕
この例においては、単層フィルムを作製した。
ブロック共重合体水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)とを、重量比で、(I)/(II)=70/30に配合し、ポリマー100質量部に対して、脂肪酸アミドを0.1質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.2質量部添加し、200℃の2軸押出機でコンパウンドし、樹脂組成物を得た。
200℃のTダイ押出機で厚み250μmのシートを作製し、このシートを85℃雰囲気のテンター延伸設備内でTD方向に5倍延伸して、約50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0083】
〔実施例10〜12〕
これらの例においては、多層フィルムを作製した。
ブロック共重合体水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)とを重量比で、(I)/(II)=70/30〜60/40に配合し、200℃の2軸押出機でコンパウンドし、樹脂組成物を得た。
200℃の多層押出機で、表層/中間層/裏層、10/80/10の比率で押出し、厚み250μmのシートを作製し、このシートを85℃雰囲気のテンター延伸設備内でTD方向に5倍延伸して、約50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0084】
〔実施例13〕
この例においては、多層フィルムを作製した。
ブロック共重合体水添物(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)とを重量比で、(I)/(II)=70/30に配合し、表層材、中層材共に、ポリマー100質量部に対して、脂肪酸アミドを0.1質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.2質量部添加し、200℃の2軸押出機でコンパウンドし、樹脂組成物を得た。
200℃の多層押出機で、表層/中間層/裏層、10/80/10の比率で押出し、厚み250μmのシートを作製し、このシートを85℃雰囲気のテンター延伸設備内でTD方向に5倍延伸して、約50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0085】
実施例及び比較例の熱収縮性フィルムの物性値、及び評価を下記表3〜表5に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
表3に示すように、実施例1〜9は、熱収縮性単層フィルムとして、透明性、収縮性のバランスが良好であり、また、ブロック共重合体水添物とポリプロピレン系樹脂とを使用することにより、耐溶剤性も格段に改良されていることが分かった。
表5に示すように、実施例10〜13は、熱収縮性多層フィルムとして、透明性、収縮性のバランスが良好であり、また、ブロック共重合体水添物とポリプロピレン系樹脂とを使用することにより、耐溶剤性も格段に改良されていることが分かった。
また、実施例1〜13は、いずれも比重が1.0未満であることから、水を用いて容易に貼付対象物から分離でき、リサイクル性も良好であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂組成物は、飲料容器包装やキャップシール及び各種ラベル等として、産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とを含有し、下記(1)〜(6)を満たすブロック共重合体の水添物(I)と、
ポリプロピレン系樹脂(II)と、
を、重量比が、(I)/(II)=75/25〜60/40で含有し、
比重が0.97以下である樹脂組成物。
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜80質量%、共役ジエンの含有量が40〜20質量%である。
(2)少なくとも1つの共役ジエンを主体とするブロック重合体(A)を含有する。
(3)前記ブロック重合体(A)の水添前のビニル結合量が75質量%以上である。
(4)少なくとも1つの、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)を含有する。
(5)前記ランダム共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素の含有量が85〜98質量%である。
(6)前記ブロック共重合体の水添物(I)の水添率が60%以上である。
【請求項2】
脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂及び脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の滑剤を、前記成分(I)及び(II)の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらに含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダード・アミン系光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤又は光安定剤を、前記成分(I)及び成分(II)の合計100質量部に対して、0.05〜3質量部、さらに含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層を、少なくとも1層有し、 比重が1.0未満である熱収縮性フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の熱収縮性フィルムに印刷を施した、比重が1.0未満である熱収縮性フィルム。

【公開番号】特開2012−162696(P2012−162696A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26144(P2011−26144)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】