説明

樹脂組成物及び該樹脂組成物を利用した熱線吸収材

【課題】熱線吸収能は維持しつつ透明性に優れる樹脂組成物および該樹脂組成物を利用した熱線吸収材を提供することを目的とする。
【解決手段】フタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物であって、フタロシアニン骨格中、中心金属がバナジル(VO)であり、かつ、特定の置換基が導入されているフタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物が優れた熱線吸収効果を有することを見出した。さらに本発明の樹脂組成物は、塗膜を形成したり、または樹脂組成物を成形することにより熱線吸収材として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン含有樹脂組成物を利用した熱線吸収材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの熱線吸収/遮蔽用として建築物や車両の窓等に使用する場合には、大面積への適用が必要であり、また、十分な透明性が確保される必要がある。熱線とは一般的に700nm以上、特に750nm以上の波長域の光線を言い、このような領域(特に、900〜1000nm)の光を選択的に吸収することが熱線吸収効果の点で重要である。
【0003】
従来、熱線吸収/遮蔽ガラスとしては、板ガラスの表面に反射率の高い金属酸化物の膜をコーティングしたものが知られている。また熱線吸収/遮蔽ガラスには、通常のガラス原料に微量の鉄、ニッケル、コバルト等の金属を加えて着色し、波長による光の選択透過性を持たせたものである。しかしながら、従来の熱線吸収/遮蔽剤として使用されている金属酸化物には、このような特定波長域を選択的に吸収できるものはなく、当該波長域の光を十分吸収するためには、添加量を増やす必要がある。しかし、このような場合には、ガラスの透明性の低下を引き起こす場合があり、また、コスト的にも好ましくない。
【0004】
一方で、特定の波長域の光を選択的に吸収する近赤外吸収色素が種々開発されている。特に、フタロシアニン化合物は、可視光透過率が高く、近赤外線光の吸収効率が高く、かつ近赤外域の選択吸収能に優れ、かつ溶媒溶解性に優れ、樹脂との相溶性に優れ、かつ耐熱性、耐光性、耐候性にも優れる等、諸特性に優れている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2664630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の実施例に記載のフタロシアニン樹脂組成物の可視光透過率は、建築物や車両の窓用の熱線吸収材に使用されても、透明性を十分確保できなかったり、太陽光のうち、900nm以上の波長域の光を効率よく吸収(カット)できなかったりする場合があった。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、フタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物であって、熱線吸収能は維持しつつ透明性に優れる(可視光透過率の高い)樹脂組成物および該樹脂組成物を利用した熱線吸収材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、フタロシアニン骨格中、中心金属がバナジル(VO)であり、かつ、Z〜Z16のうち4〜8個に、特定の置換基が導入されているフタロシアニン化合物は、熱線吸収能は維持しつつ透明性に優れ(可視光透過率の高い)、かつ、光や熱に対して耐久性を有し、結晶性にも優れることから、該フタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物が優れた熱線吸収効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、上記目的は、下記式(1)示されるフタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物を提供することによって、達成される。
下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
式中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、下記式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
で示される基または下記式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
で示される基であり、Rは、置換または非置換のアリール基であり、かつ、mは1〜3の整数であり、Rは、炭素数4〜10の環状アルキル基であり、かつ、nは0〜3の整数であり、Z〜Z16のうち4〜8個が、式(2)または式(3)で示される基であり、Mは、バナジル(VO)である。
【0016】
さらに本発明の樹脂組成物は、塗膜を形成したもの、または樹脂組成物を成形したものを熱線吸収材として利用することができ、さらに金属酸化物を含有することによっても本発明の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱線吸収能は維持しつつ透明性に優れ(可視光透過率の高い)、かつ光や熱に対して耐久性を有する熱線吸収効果を有する樹脂組成物を提供することができる。本発明のフタロシアニン化合物は、吸収係数が大きいため、必要な吸収を得るためのフタロシアニン化合物の使用量が少なくて済むため、コストおよび工程面で有利である。
【0018】
したがって、本発明の樹脂組成物および該樹脂を利用した熱線吸収材は、熱線吸収用に建築物や車輌用のウインドーフィルム、熱線吸収ガラス、熱線吸収樹脂グレージング等に用いることができ、また、PETボトルの成型加工時のプレヒーティング助剤、感熱転写、感熱孔版等の光熱交換剤、感熱式のリライタブル記録の光熱交換剤、プラスチックのレーザー透過溶着法(LTW:Laser Transmission Welding)用の光熱交換剤等に対して好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、フタロシアニン化合物と樹脂とを含有する樹脂組成物である。
本発明のフタロシアニン化合物は、下記式(1):
【0020】
【化4】

【0021】
式中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、下記式(2):
【0022】
【化5】

【0023】
で示される基または下記式(3):
【0024】
【化6】

【0025】
で示される基であり、Rは、置換または非置換のアリール基であり、かつ、mは1〜3の整数であり、Rは、炭素数4〜10の環状アルキル基であり、かつ、nは0〜3の整数であり、Z〜Z16のうち4〜8個が、式(2)または式(3)で示される基であり、Mは、バナジル(VO)である。
【0026】
上記フタロシアニン化合物は、最大吸収波長が900nm以上、好ましくは900〜1000nm、より好ましくは910〜980nm、さらに好ましくは915〜960nmの波長域に調整することができ、このような波長領域の近赤外線光を選択的に吸収できる。このため、本発明に係るフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材は、900nm以上、好ましくは910〜980nm、より好ましくは915〜960nmの波長域の光を選択的に吸収(カット)することができる。よって、本発明に係るフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材を、例えば、建築物や車両用の窓の熱線吸収ガラスに使用すると、車内や室内の温度の上昇を有効に抑制することができる。
【0027】
また、このような構造を有するフタロシアニン化合物は、最大吸収波長での透過率が10%になるような溶液での可視光透過率、特に400〜800nmの領域での、JIS R 3106(1988年)に準じて計算した可視光透過率が55%以上、好ましくは60%以上である。このため、本発明に係るフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材は、非常に透明性に優れるため、建築物や車両の窓の熱線吸収ガラスに使用されても、十分な視認性を確保できる。
【0028】
上記フタロシアニン化合物は、光や熱に対して耐久性を有し、結晶性に優れる。つまり、容易に結晶化することができるため、製造プロセスの観点から見ても好都合である。すなわち、製造しやすく、高い収率で得ることが可能である。さらに、本発明のフタロシアニン化合物は、吸収係数が大きいため、必要な吸収を得るためのフタロシアニン化合物の使用量が少なくて済むため、コストおよび工程面で有利である。
【0029】
加えて、本発明に係るフタロシアニン化合物は、溶媒溶解性や樹脂との相溶性に優れ、耐熱性、耐光性、耐候性等の諸特性に優れる。このため、プラスチックフィルム等への成形性に優れ、工業的に大面積への塗布(大量生産)が可能であると共に、また、窓ガラスに使用されても、光や熱に対して耐久性に優れる。
【0030】
したがって、本発明のフタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物は、熱線吸収用に建築物や車両の窓等に用いることができ、また、PETボトルの成型加工時のプレヒーティング助剤、感熱転写、感熱孔版等の光熱交換剤、感熱式のリライタブル記録の光熱交換剤、プラスチックのレーザー透過溶着法(LTW:Laser Transmission Welding)用の光熱交換剤等に対して好適に使用することができる。
【0031】
本発明に係るフタロシアニン化合物は、上記式(1)で示される。本明細書中上記式(1)で示されるフタロシアニン化合物を単に「フタロシアニン化合物」とも称する。また上記式(1)における、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15の置換基の位置を「β位」とも称する。同様にして、上記式(1)中、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16の置換基の位置を「α位」とも称する。
【0032】
上記式(1)において、Mは、バナジル(VO)である。このように中心金属をバナジルとすることによって、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)を900〜1000nm、より好ましくは910〜980nm、さらに好ましくは915〜960nmの波長域に調節することができ、上記波長域での近赤外線光吸収の選択性を向上でき、かつ、光や熱に対して耐久性のあるものとすることができる。
【0033】
このため、フタロシアニン化合物を含む樹脂組成物は優れた熱線吸収性を発揮できる。一方で、Mとしてバナジル(VO)ではないもの(例えば、Cu、Zn、Ni等)を採用すると、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)を900〜1000nmの波長域に調節することが困難であり、また、光や熱に対して十分な耐久性を持たせることが難しい。
【0034】
上記式(1)において、Z〜Z16は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、式(2)で示される基または式(3)で示される基であり、Rは、置換または非置換のアリール基であり、かつ、mは1〜3であり、Rは、炭素数4〜10の環状アルキル基であり、かつ、nは0〜3であり、Z〜Z16のうち4〜8個が、式(2)または式(3)で示される基である。ここで、好ましくは、式(2)または式(3)で示される基がZ〜Z16のうち5個以上に導入され、より好ましくは6個以上、さらに好ましくは7個以上、特に好ましくは8個導入されている。このように、これらの基が8個に近づくほどフタロシアニン化合物の最大吸収波長を900〜1000nm、より好ましくは910〜980nm、さらに好ましくは915〜960nmの波長域に調節でき、吸収スペクトルがシャープになるため、熱線吸収能は維持しつつ可視光透過率の高い、かつ、光や熱に対して耐久性を有し、結晶性を向上させることができる。さらに、本発明のフタロシアニン化合物は、吸収係数が大きいため、必要な吸収を得るためのフタロシアニン化合物の使用量が少なくて済むため、コストおよび工程面で有利である。さらに、結晶化しやすいため、純度の高いものを高い収率で製造することが可能である。
【0035】
上記式(2)または式(3)で示される基が導入されている部位は、α位のみであっても、β位のみであっても、α位およびβ位の両方であってもよい。ただし、反応性の点から、一般にβ位に優先的に導入する方が容易であり、よりシャープな吸収を得るためにはβ位に高い選択率で導入されていることが好ましい。
【0036】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、耐熱性や重量当たりの吸収性能等を考慮すると、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0037】
式(2)におけるRの置換または非置換のアリール基としては、好ましくは置換または非置換のフェニル基、ナフチル基等であり、好ましくは置換または非置換のフェニル基であり、より好ましくは非置換のフェニル基である。このような場合には、可視光透過率が高まり、900〜1000nm(より好ましくは910〜980nm、さらに好ましくは915〜960nm)の波長域での光を選択的に吸収できる。
【0038】
特に、Z〜Z16のうち8個がこのようであると、この効果は顕著である。なお、Rが複数個存在する際には、複数のRは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
【0039】
上記置換のアリール基および置換フェニル基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、オキシアルキルエーテル基、シアノ基等が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基の種類も、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。上記置換基よりその一部をより具体的な例を挙げて以下に示す。
【0040】
まず、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
また、アシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、p−t−ブチルベンゾイル基等が挙げられる。
【0042】
また、アルキル基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0043】
また、アルコキシル基としては、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基等が挙げられる。
【0044】
また、ハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものである。具体的には、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基等が挙げられる。
【0045】
また、ハロゲン化アルコキシル基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基の一部がハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基の一部がハロゲン化されたものである。具体的には、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ブロモエトキシ基、クロロプロポキシ基、ブロモプロポキシ基等が挙げられる。
【0046】
また、アルキルアミノ基とは、炭素原子数1〜20個のアルキル部位を有するアルキルアミノ基、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル部位を有するアルキルアミノ基である。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
また、アルコキシカルボニル基としては、アルコキシル基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜5個のアルコキシカルボニル、またはヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数3〜8個、好ましくは5〜8個の環状アルコキシカルボニルを示す。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0048】
上記のように、式(2)において、mは1〜3の整数であるが、特に好ましくは、mは1または2である。ここで、mは0であると、可視光透過率が低く、また、900〜1000nmの波長域での光を選択的に吸収できないため、可視光透過率が低くなる。一方で、mが4以上であると、結晶化しにくく簡単に製造できなかったり高い純度で得られないため可視光透過率が低下したりする虞がある。さらに、高い純度で得られないため、可視光透過率が低下したり、吸収係数が小さくなったりする虞がある。
【0049】
以上より、式(2)で示される基は、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基または3−フェニルプロピルアミノ基であることが好ましく、2−フェニルエチルアミノ基、ベンジルアミノ基であることが特に好ましい。
【0050】
式(3)におけるRにおける環状アルキル基の炭素数は4〜10であるが、好ましくは5〜8であり、より好ましくは5〜7であり、特に好ましくは6である。炭素数4〜10の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基等が挙げられる。中でも、可視光透過率および吸収係数の観点からシクロヘキシル基が特に好ましい。
【0051】
ここで、Rとして環状アルキル基ではなく、直鎖状のアルキル基であると、吸収特性が悪くなったり、結晶性が悪いため、きれいな結晶を得ることが難しく、オイル状のものしか得られなかったり、収率が極めて低くなったりする場合がある。
【0052】
nは0〜3の整数であると熱線吸収能は維持しつつ透明性に優れ、可視光透過率の高い、かつ、光や熱に対して耐久性を有し、結晶性にも優れた熱線吸収材に用いられるフタロシアニン化合物およびそれを含む熱線吸収材を提供することができる。さらに、本発明のフタロシアニン化合物は、吸収係数が大きいため、必要な吸収を得るための樹脂組成物とする際にフタロシアニン化合物の使用量が少なくて済むため、コストおよび工程面で有利である。好ましくは、nは0である。一方で、nが4以上であると、結晶化しにくく簡単に製造できなかったり高い純度で得られないため可視光透過率が低下したりする虞がある。
【0053】
以上より、式(3)で示される基は、シクロヘキシルアミノ基、2−メチルシクロヘキシルアミノ基またはシクロペンチルアミノ基であると好ましく、シクロヘキシルアミノ基であることが特に好ましい。
【0054】
上記の説明のように本発明に係るフタロシアニン化合物は、具体的には、オクタフルオロ−オクタ(ベンジルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニン、オクタフルオロ−オクタキス(2−フェニルエチルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニン、オクタフルオロ−オクタ(シクロヘキシルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニンであると好ましい。
【0055】
本発明に係るフタロシアニン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を単独であるいは適宜組み合わせて適用することができるが、好ましくは、式(V):
【0056】
【化7】

【0057】
で示されるフタロニトリル化合物と、酸化バナジウム、塩化バナジウム等のバナジウムのハロゲン化物、カルボニルバナジウムまたはバナジウムの有機酸/塩(本明細書中では、一括して「バナジウム化合物」とも称する)とを環化反応した後、得られたフタロシアニン化合物を、下記式(2’):
【0058】
【化8】

【0059】
で示される化合物または下記式(3’):
【0060】
【化9】

【0061】
で示される化合物とを求核置換反応させる方法が使用できる。
【0062】
ここで、上記式中X〜Xはハロゲン原子であり、同一であっても互いに異なっていてもよい。R、R、mおよびnは、上記式(2)および式(3)と同じである。
【0063】
フタロニトリル化合物の環化反応は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を単独であるいは適宜修飾して適用することができる。上記式(V)で示されるフタロニトリル化合物と、バナジウム化合物を無溶媒で溶融状態にて反応させることもできるが、有機溶媒中で反応させることが好ましい。
【0064】
有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒がよく、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトリル等が好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0065】
上記式(V)で示されるフタロニトリル化合物と、バナジウム化合物の反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではないが、反応温度は通常100〜240℃、好ましくは130〜200℃である。上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、乾燥を行ってもよい。
【0066】
上記環化反応によって得られたフタロシアニン化合物は単離、精製してもよく、また、単離、精製せずに、環化反応後の反応液をそのまま、化合物(2’)または化合物(3’)との反応に用いてもよい。
【0067】
通常、フタロニトリル化合物と、化合物(2’)または化合物(3’)とを混合して室温〜200℃、好ましくは50〜180℃で反応させて行うことができる。反応時間も特に制限はないが、通常2〜24時間、好ましくは3〜12時間である。
反応に用いる化合物(2’)または化合物(3’)自体が溶媒としても働くが、反応活性の低い溶媒を添加してもよい。溶媒は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトリル等が好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、混合して用いてもよい。
また、このフタロシアニン化合物と化合物(2’)または式(3’)との反応は、反応中に発生するハロゲン化水素(例えば、フッ化水素)等を除去するために、これらのトラップ剤を使用することもできる。トラップ剤を使用する際の具体的なトラップ剤の例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム及び炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらのうち、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムが好ましい。反応後は、晶析、濾過、洗浄、乾燥等、従来公知の方法によってフタロシアニン化合物を効率よく、しかも高純度で得ることができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、上記フタロシアニン化合物と樹脂を必須に含んでいればよく、溶剤や添加剤を含んでいてもよい。ここで、本発明の樹脂組成物では、上記フタロシアニン化合物が2種以上の混合物の形で使用されていてもよい。当該フタロシアニン化合物は、特に上記特定範囲の光強度の高い近赤外域の光を選択的に吸収し、可視光波長域での透過率を高くして、太陽光からの熱の吸収/遮断を効果的に行う作用効果を樹脂組成物に与えることができる。これは、上記フタロシアニン化合物が、特定の構造を有することにより、特定波長域での優れた選択吸収能や可視光波長域での高い透過率に加えて、樹脂との相溶性に優れ、かつ耐熱性、耐光性、耐候性に優れた特性を有するためである。よって、本発明に係る樹脂組成物は、種々の熱線吸収用途に幅広く用いることのできるものである。
【0069】
上記樹脂組成物におけるフタロシアニン化合物の配合量は、用途または樹脂の厚みによって適宜選択することが出来るが、樹脂の固形分100質量部に対して、0.0005〜20質量部、好ましくは0.001〜10質量部である。このような範囲で配合することにより、可視光透過率の高い熱線吸収材として好ましい樹脂組成物とすることができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物における樹脂としては、一般に光学材料に使用しうるものであれば特に制限されないが、出来るだけ透明性の高いものが好ましく、より具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリル酸エステル系ポリマー、メタクリル酸エステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポバール等のビニル系ポリマー、ナイロン等のポリアミド系、ポリウレタン系、PET等のポリエステル系、ポリカーボネート系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系等が挙げられる。これらのうち、溶融または溶液化が可能であるものが好ましく使用される。この際、溶融が可能な樹脂を使用し、フタロシアニン化合物を練りこむことで成形加工が可能な樹脂組成物が得られる。このような樹脂として好適なものはポリメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル共重合体等の(メタ)アクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ブチラール樹脂、シクロポリオレフィンポリマー、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)、スミペックス(住友化学製)、オプトレッツ(日立化成工業製)が挙げられる。
【0071】
また、溶液化が可能な樹脂に、フタロシアニン化合物を溶液化することで、コーティング可能な樹脂組成物とすることができる。このような樹脂として好適なものはメタクリル酸エステル系ポリマー、ポリエステル、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)、が挙げられる。特に好ましくはメチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、脂環式、多環性脂環式アルキル基を有するメタクリル酸エステルを共重合したポリマーである。これは1種のメタクリル酸エステル単量体からなるポリマーであってもよいし、複数のメタクリル酸エステル単量体からなる共重合体であってもよい。また、上記のメタクリル酸エステル以外の単量体と共重合したポリマーであってもよい。他の単量体としてはスチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、(メタ)アクリル酸酸等のカルボキシル基を有する単量体、炭素数1〜15のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体等も使用できる。上記の(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体の使用量は50重量%未満、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。具体的には、スミペックス(住友化学製)、オプトレッツ(日立化成工業製)、ハルスハイブリッドIR(日本触媒製)等が挙げられる。
【0072】
上記樹脂の分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量が5万以上、さらに好ましくは10万以上が好ましい。ポリマー構造に制限はなく、直鎖型または分岐型であってもよいが、直鎖型よりも分岐型の方が樹脂は割れにくくなり耐久性が高くなるため好ましい。分岐構造にすると高分子量化した場合でも樹脂の粘度が低く、取り扱いが容易になる。分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエスエルEG、ライトエスエル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学製)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも化薬アクゾ製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)(いずれも堺化学製)等が使用できる。分岐構造の樹脂を得るためには多官能開始剤を使用するのが重合が容易で特に好ましい。分岐数が多く、マイルドな温度で反応するパーテトラA、パーカドックス12−XL25が特に好ましい。
【0073】
一方、上記樹脂は、粘着剤若しくは接着剤、またはこれらの混合物であってもよい。粘着剤や接着剤を用いた本発明の樹脂組成物は、他の機能性フィルムと貼りあわせることができるため、簡便かつ経済的に熱線吸収材を製造することができる。
【0074】
上記の粘着剤として好適な樹脂には、アクリル系、シリコン系、SBR系等が挙げられる。特に好ましくはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等を主成分として重合したポリマーであり、具体的にはアクリセットAST(日本触媒製)等が挙げられる。Tgは−80℃以上0℃以下が好ましい。さらに、好適な粘着剤は、シクロヘキシル基、イソボルニル基等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合したアクリル系樹脂である。脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合する際の当該エステルの使用量は、特に制限されないが、樹脂のTgが−80℃以上0℃以下となるような量であることが好ましい。また、カルボキシル基等の酸性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合することも可能であるが、このような場合には、耐湿性の向上を目的として、(メタ)アクリル酸エステルの共重合量は、樹脂の酸価が好ましくは30以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは5以下となるような量であることが好ましい。本明細書において、「酸価」とは、樹脂固形分1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg量をいう。
【0075】
上記の接着剤として好適な樹脂としては、一般的なシリコン系、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等のポリオレフィン系が挙げられる。
【0076】
本発明の樹脂組成物に含んでいてもよい溶剤としては、フタロシアニン化合物および樹脂を溶かす溶剤であれば限定されない。この際使用できる溶剤としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系、トルエン、キシレン等の芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、アセトニトリル等のニトリル系、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系が使用できる。これらを単独で使用しても混合して使用してもよい。色素の耐久性を向上させるためにはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶媒が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させるためにはトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等沸点が100〜150℃の溶媒が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させるにはブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶媒が好適である。
【0077】
本発明の樹脂組成物には上記フタロシアニン化合物に加えて、他の可視吸収色素、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤を含んでもよい。可視吸収色素としては、シアニン系、テトラアザポルフィリン系、アズレニウム系、スクアリリウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯塩系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、金属チオール錯体系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系等従来公知の色素を広く使用することができる。例えば、アデカアークルズTW−1367、アデカアークルズSG−1574、アデカアークルズTW1317、アデカアークルズFD−3351、アデカアークルズY944(いずれもADEKA製)、NK−5451、NK−5532、NK−5450(いずれも林原生物化学研究所製)等が挙げられる。また、近赤外線吸収色素としては、特に制限されず、用途によって所望される最大吸収波長によって公知の近赤外線吸収剤が適宜選択されうる。例えば、800〜1000nmに最大吸収波長を有する近赤外吸収色素等が挙げられる。また、使用されてもよい紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤が使用できる。具体的には、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系の化合物が好適に使用される。これらは単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されても良く、用途によって適宜選択することが出来るが、樹脂の固形分100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜8質量部である。
【0078】
更に、本発明の樹脂組成物には、その性能を失わない範囲でイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等の樹脂硬化剤を使用してもよい。ただし、硬化剤を使用しない樹脂組成物の方が、コーティング液のポットライフが長くエージングが不要になるため、より好ましい。
【0079】
また、本発明の樹脂組成物にはフィルムやコーティング剤等に使用される公知の添加剤を用いることができ、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、消光剤、硬化剤、ブロッキング防止剤、滑り剤等が挙げられる。
【0080】
本発明の熱線吸収材は、上記した樹脂組成物からなる塗膜が形成されたものでもよいし、上記樹脂組成物を成形したものでもよい。好ましくは(A)樹脂組成物を透明基材に塗布したもの、(B)樹脂組成物で2枚の透明基材を接着したもの、(C)樹脂組成物を成形したものが挙げられる。
【0081】
本発明の熱線吸収材の厚みに制限はないが、目的、用途に応じて適宜決定される。好ましくは0.1μmから20mmである。また熱線吸収材に含まれるフタロシアニン化合物の含有量も目的、用途に応じて、適宜決定される。熱線吸収材の厚みに関係なくフタロシアニン化合物の含有量を表示するとすれば、上方からの投影面積中の質量と考えて、0.01〜2.0g/mの配合量が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.0g/mである。この範囲であると、可視光線の透過率が高く、日射透過率は小さくなり、熱線吸収効果は高くなるので好ましい。好ましい可視光線の透過率としては、55%以上である。より好ましくは60%以上である。また、日射透過率は65%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0082】
透明基材は一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としてはガラス、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー、ポリスチレン等のビニル系ポリマー、ポリカーボネート、PETやPAR等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合にはアルカリ成分が少ないものが色素の耐久性の観点から好ましい。
【0083】
透明基材として樹脂系材料を使用する場合には、樹脂に公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができ、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法等で所望の形状に成形される。かかる透明基材は、必要に応じて延伸したり、他の樹脂と積層してもよい。また、透明基材は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
【0084】
本発明の樹脂組成物を透明基材に塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥、硬化方法としは熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥、硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0085】
樹脂組成物を塗布する場合、その塗膜の厚みに制限はないが、目的に応じて適宜決定される。好ましくは0.1μmから10mmである。また塗膜に含まれるフタロシアニン化合物の含有量も目的や用途に応じて適宜決定される。塗膜の厚みに関係なくフタロシアニン化合物の配合量を表示するとすれば、上方からの投影面積中の質量と考えて、0.01〜2.0g/mの配合量が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.0g/mである。この範囲であると、熱線吸収材として、可視光線の透過率が高く、日射透過率は低くなり、熱線吸収効果が高くなるので好ましい。
【0086】
本発明の熱線吸収材がフィルム形態のときには、透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。
【0087】
上記したフィルム形態である場合は、本発明の樹脂組成物に使用する樹脂は粘着剤樹脂またはUV硬化樹脂が好ましい。粘着剤樹脂またはUV硬化樹脂を使用した樹脂組成物の塗膜はフィルムの片面に形成してもよいし、両面に形成してもよいが、好ましくは片面に塗布する。フィルムに塗膜を形成する場合は、樹脂組成物の塗工液を透明基材上に直接塗布してもよいし、離型性のある基材上に塗布した樹脂組成物の塗膜を透明基材上に転写してもよい。また、フィルムの反対面にUV硬化性の塗膜を形成してもよい。その場合は、上記フタロシアニン化合物、UV硬化性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤を含む塗工液を透明基材上に塗布するのがよい。また、フィルムの反対面に粘着剤を塗布してもよい。
【0088】
熱線吸収材が、上記樹脂組成物で2枚の透明基材を接着させた熱線吸収材である場合、透明基材としてはガラスが好ましい。ガラス基材は着色が少なく、可視光線の透過率が高いものであれば特に制限はない。紫外線吸収能を有するものやアルカリ成分が少ないものが色素の耐久性の観点から好ましい。2枚のガラス基材を接着する際の樹脂組成物としては、接着性の観点から樹脂としてポリビニルブチラールを使用するものが好ましい。
【0089】
本発明の樹脂組成物を成形した熱線吸収材を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、(ア)樹脂組成物を混練、加熱成形する方法、(イ)フタロシアニン化合物と、硬化性モノマーあるいはオリゴマーおよび重合開始剤とともに型枠の中で重合し、成形する方法が利用できる。
【0090】
樹脂組成物を混練、加熱成形する際の成形条件は樹脂の種類により異なるが、通常、フタロシアニン化合物を熱可塑性樹脂の粉体に溶融し混練後にペレット化してフタロシアニン化合物濃度の高いマスターバッチとする。このマスターバッチをさらに該熱可塑性樹脂で希釈、溶融、混練、成形する方法が挙げられる。
【0091】
上記した熱可塑性樹脂としては、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー、ポリスチレン等のビニル系ポリマー、ポリカーボネート、PETやPAR等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。
【0092】
また、フタロシアニン化合物と、硬化性モノマーあるいはオリゴマー、および重合開始剤とともに型枠の中で重合し成形する方法で用いられる硬化性モノマーあるいはオリゴマーとしては、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド等を生成するモノマー又はオリゴマー等が挙げられる。重合開始剤はモノマーやオリゴマーに応じて好適なものが使用できる。
【0093】
上記熱線吸収材は形状に制限はなく、用途に応じて適宜形成できる。平板状、フィルム状、波板状、球面状、ドーム状等様々な形状のものが含有される。厚みは、特に制限されないが、0.05〜20mmが好ましい。このような範囲であれば、熱線吸収材として十分な強度や安全性が得られる。
【0094】
本発明の熱線吸収材は、透明基材に上記樹脂組成物からなる塗膜が形成されたものでもよいし、上記樹脂組成物を成形したものでもよいが、さらに金属酸化物が含まれていてもよい。金属酸化物は、フタロシアニン化合物を含む樹脂組成物中に添加して成形または塗膜を形成してもよい。また金属酸化物を含む透明基材を用いて本発明の熱線吸収材と複合化してもよいし、成形または塗布された熱線吸収材の表面に金属酸化物を含む塗料を塗布してもよい。すなわち、上記熱線吸収材にさらに金属酸化物を含むものも本発明の実施形態の1つである。
【0095】
上記金属酸化物としては、熱線吸収能または紫外線吸収能を有するものが好ましい。具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化タングステン、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。熱線吸収能を有する金属酸化物は上記フタロシアニン化合物や有機色素では吸収することのできない波長域である1100nm以上、好ましくは1200nm以上を吸収することができ、可視光製の透過率を維持したまま日射透過率を下げることができる。より好ましくは、酸化インジウムスズまたはアンチモンドープ酸化スズである。具体的には、酸化インジウムスズとしてはPI−3(三菱マテリアル製)、アンチモンドープ酸化スズとしては、SNS−10M、SNS−10T、SN100P、SN−100D、FS−10P、FS−10D(いずれも石原産業製)等がある。金属酸化物は微粒子状であり、平均分散粒子径は0.001〜0.2μmである。好ましくは0.005〜0.15μmである。この範囲であると透明性を損なわないので好ましい。
上記金属酸化物は、熱線吸収材中のフタロシアニン化合物100質量部に対して20〜5000質量部であることが好ましく、50〜2000質量部であることがより好ましい。この範囲であれば、可視光線の透過率に影響することなく、日射透過率を下げることができる。好ましい可視光線の透過率としては、55%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、日射透過率は60%以下が好ましく、55%以下がより好ましい。50%以下が更に好ましい。
本発明の熱線吸収材は建築物や車輌用のウインドーフィルム、熱線吸収ガラス、熱線吸収樹脂グレージング等に好適である。フィルム状の透明基材上に本発明の樹脂組成物の塗膜を形成させた熱線吸収材はウインドーフィルムとして使用できる。ウインドーフィルムは建築物の内側に貼っても外側に貼ってもよい。また、ウインドーフィルムとして使用する場合は上記フタロシアニン化合物を含む層の日射側に紫外線吸収層を設けることが好ましい。
【実施例】
【0096】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0097】
(合成例1)
(ヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニンの合成)
300mLの三つ口フラスコに、テトラフルオロフタロニトリル48.02g(240mmol)、三塩化バナジウム11.33g(72.0mmol)、1,2,4−トリメチルベンゼン83.7g、およびベンゾニトリル9.3gを入れ、混合ガス(酸素6.8%/窒素バランス)を8mL/minの流量で液面近くにバブリングして流しながら、150℃で12時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、メタノール80gを加えて1時間撹拌してから濾過した。濾紙上に得られた結晶にメタノール60gをかけて洗ってから減圧乾燥し、ヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニン46.57gが得ら
れた。収率は89.5%であった。
【0098】
(合成例2)
(オクタフルオロ−オクタ(シクロヘキシルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニンの合成)
100mLの三つ口フラスコに、合成例1で得られたヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニン8.76g(10.0mmol)、炭酸カルシウム4.80g(48.0mmol)、シクロヘキシルアミン31.7g(320mmol)、および2−クロロトルエン25.0gを入れ、130℃で9時間反応させた。反応終了後40℃まで冷却し、濾過して残さを2−クロロトルエン10gで洗った。得られた濾液を500mLのセパラブルフラスコに入れ、室温で攪拌しながら、メタノール300gを40分間で滴下し、滴下後さらに30分間攪拌してから得られた結晶を濾過し、メタノール10gをかけて洗った。得られた結晶を再び500mLのセパラブルフラスコに入れ、メタノール200g中、室温60分間攪拌してから濾過し、メタノール10gをかけて洗った。濾過性は良好であった。得られた結晶を減圧乾燥し、オクタフルオロ−オクタ(シクロヘキシルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニン13.35gが得られた。収率は、ヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニンに対して、89.0%であった。
【0099】
(合成例3)
(オクタフルオロ−オクタ(ベンジルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニンの合成)
100mLの三つ口フラスコに、合成例1で得られたヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニン8.76g(10.0mmol)、炭酸カルシウム4.80g(48.0mmol)、およびベンジルアミン34.3g(320mmol)を入れ、150℃で5時間反応させた。反応終了後トルエンを10g加えてから40℃まで冷却し、濾過して残さをトルエン10gで洗った。得られた濾液を500mLのセパラブルフラスコに入れ、室温で攪拌しながら、メタノール220gを40分間で滴下し、滴下後さらに30分間攪拌してから得られた結晶を濾過し、メタノール10gをかけて洗った。得られた結晶を再び500mLのセパラブルフラスコに入れ、メタノール200g中、室温で60分間攪拌してから濾過し、メタノール10gをかけて洗った。濾過性は良好であった。得られた結晶を減圧乾燥し、オクタフルオロ−オクタ(ベンジルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニン13.53gが得られた。収率は、ヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニンに対して、86.5%であった。
【0100】
(比較合成例1)
(テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルヘキシルアミノ)−オクタキス(フェニルチオ)オキシバナジウムフタロシアニンの合成)
100mLの三つ口フラスコに、3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(フェニルチオ)−6−フルオロフタロニトリル13.51g(28.0mmol)、三塩化バナジウム1.43g(9.1mmol)、1,2,4−トリメチルベンゼン19.8g、およびベンゾニトリル2.2gを仕込んだ。混合ガス(酸素6.8%/窒素バランス)を液中に毎分2mLの流量で吹き込みながら、160℃で8時間撹拌して環化反応させた。環化反応終了後、1,2,4−トリメチルベンゼン20gを加え、混合ガスの流通を止め、内温を80℃にした。次に、2−エチルヘキシルアミン29.0g(224mmol)を加え、80℃で4時間撹拌して求核置換反応を行った。
反応液を40℃まで冷却し、不溶分除去するために直径40mmの桐山濾紙(No.4)を用いて濾過し、1,2,4−トリメチルベンゼン10gをかけて洗った。結果的に、濾紙上の残渣はほとんどなかった。洗液は始めのろ液に加えた。
1Lのセパラブルフラスコにメタノール540gを入れ、35℃で撹拌しながら、上記で得られた反応液を30分間で滴下した。滴下終了後さらに1時間35℃で撹拌してから、析出した結晶を濾過した。得られた濾紙上の結晶にメタノール20gをかけて洗った。
得られた結晶を再び1Lのセパラブルフラスコに入れ、メタノール200g中、35℃で1時間撹拌して洗浄した。結晶を濾過し、濾紙上の結晶にメタノール20gをかけて洗った。得られた結晶を60℃で真空乾燥し、テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルヘキシルアミノ)−オクタキス(フェニルチオ)オキシバナジウムフタロシアニン13.8gが得られた。3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(フェニルチオ)−6−フルオロフタロニトリルに対する収率は81.0%であった。
【0101】
(比較合成例2)
(オクタフルオロ−オクタキスアニリノオキシバナジウムフタロシアニンの合成)
100mlの四ツ口フラスコ中に合成例1で得られたヘキサデカフルオロオキシバナジウムフタロシアニン5.19g(6ミリモル)、アニリン26.82g(288ミリモル)を仕込み還流温度で4時間反応させた。反応終了後、不溶分を濾別したのちアニリンを留去し得られた固形分をn−ヘキサン300mlで洗浄することにより目的物の黒色ケーキ6.72gを得た(収率77.1%)。
【0102】
(実施例1)
合成例2で得られたフタロシアニン化合物を2−ブタノン(MEK)に溶解させて5質量%溶液とする。また、架橋剤コロネートL−55E(日本ポリウレタン製)1.0gをMEK15.0g中に溶解させておく。上記調製したフタロシアニン化合物の溶液0.37g、架橋剤溶液0.23g、粘着剤PTI−067(日本触媒製)5.0g、およびMEK1.9gを混合し、ペイントシェーカーで15分間撹拌して、樹脂組成物溶液を得る。
こうして得られた樹脂組成物溶液を易接着処理PETフィルム(コスモシャインA4300;東洋紡績製)上にアプリケーター(6.3ミル)を用いて塗工し、100℃の熱風乾燥器中で2分間乾燥させて試験片を得る。試験片は約2cmx2cmに切り、ローラーを用いてガラスに貼ってテスト用サンプルとした。
(吸収性能の評価)
分光光度計UV−3100(島津製作所製)を使用して可視−近赤外スペクトルを300〜2500nmの範囲で測定した。近赤外領域の最も透過率が低い極大吸収波長、その波長での透過率および、JIS A 5759に基づいて計算した日射透過率を近赤外吸収能の指標とした。また、可視光線(380〜780nm)の透過率を、JIS A 5759に基づいて計算した。
(耐光性の評価)
テストサンプルに試験片を貼った側から光を照射して耐光性をテストした。耐光性試験機はキセノンウェザーメーターX75SC(スガ試験機製)を用い、63℃、湿度50%、照射強度60W/mの条件でUVカットフィルターを通してテストした。UVカットフィルターはポリカーボネート試験板(2×70×150mm;日本テストパネル製)を用いた。光照射は100時間行った。
試験後の可視−近赤外領域のスペクトルを試験前と測定同様にして測定した。
上記で得られた測定結果を下記表1に示す。
【0103】
(実施例2)
実施例1における、フタロシアニン化合物の変わりに合成例3で得られたフタロシアニン化合物を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例1)
実施例1における、フタロシアニン化合物の変わりに比較合成例1で得られたフタロシアニン化合物を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例2)
実施例1における、フタロシアニン化合物の変わりに比較合成例2で得られたフタロシアニン化合物を用い、フタロシアニンン化合物のMEK溶液濃度を6質量%に変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1より、本発明の樹脂組成物を透明基材に塗布した熱線吸収材は、最大吸収波長は900nm以上、可視光線の透過率は60%以上、日射透過率は60%以下であることがわかる。これらの結果から本発明の熱線吸収材は、太陽光のうち、光強度の高い900nm以上の波長域の光を効率よく吸収することができ、かつ透明性を確保できる。また耐光性においてもその変化率は5%以下であり優れている。
一方、従来知られているフタロシアニン化合物を使った比較例1では、最大吸収波長が900nm以上であり、可視光透過率は高く透明性は高いものの、吸収波長範囲が狭い為、日射透過率は高く、耐光性も劣る。比較例2では、耐光性に優れているものの、最大吸収波長が900nm以下であり、可視光透過率が低く透明性が低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるフタロシアニン化合物と樹脂を含有する樹脂組成物。
【化1】

式中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、下記式(2):
【化2】

で示される基または下記式(3):
【化3】

で示される基であり、Rは、置換または非置換のアリール基であり、かつ、mは1〜3であり、Rは、炭素数4〜10の環状アルキル基であり、かつ、nは0〜3であり、Z〜Z16のうち4〜8個が、式(2)または式(3)で示される基であり、Mは、バナジル(VO)である。
【請求項2】
前記フタロシアニン化合物の含有量が樹脂100質量部に対して0.0005〜20質量部の範囲である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン原子が、塩素原子またはフッ素原子である、請求項1または2に記載のフタロシアニン樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(2)で示される基が、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基または
3−フェニルプロピルアミノ基であり、
前記式(3)で示される基が、シクロヘキシルアミノ基、2−メチルシクロヘキシルア
ミノ基またはシクロペンチルアミノ基である、請求項1〜3のいずれかに記載のフタロシアニン樹脂組成物。
【請求項5】
基材上に請求項1〜4のいずれか1項に記載された樹脂組成物を用いた塗膜が形成されていることを特徴とする熱線吸収材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された樹脂組成物を用いて成形されたものであることを特徴とする熱線吸収材。
【請求項7】
さらに金属酸化物を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の熱線吸収材。
【請求項8】
前記金属酸化物が酸化インジウムスズまたはアンチモンドープ酸化スズであることを特徴とする請求項7記載の熱線吸収材。

【公開番号】特開2013−1785(P2013−1785A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133577(P2011−133577)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】