説明

樹脂組成物添加用無機粉末及び樹脂組成物

【課題】流動性と成形性とを高い次元で両立できる樹脂組成物の提供。
【解決手段】体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であることを特徴とする無機粉末を樹脂中に分散した樹脂組成物。特に、0.1μm以上2μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の5〜15体積%であり、20μm以上70μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の50体積%以上であることが望ましい。更に、2〜20μmの範囲に極大値が存在しないことが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉末を分散し半導体封止材などに用いることが可能な樹脂組成物に用いられる無機粉末として添加するための樹脂組成物添加用無機粉末及びその無機粉末を用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化、高機能化、小型軽量化に伴い、搭載される半導体パッケージの形態も、高集積化、小型化、薄型化が進んでいる。このような半導体パッケージの実用化には、ICチップの開発とともに、封止材の開発が必要不可欠となる。現在の封止材としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をマトリックスとし、その中に、無機粉末を配合した樹脂組成物が開発されている。このような封止材には、半導体素子の各種信頼性を確保する目的で高い性能が要求されている。
【0003】
例えば、高い接着性、耐熱性、耐湿性などが要求される結果、封止材中に大量の無機粉末が充填されることになった。大量の無機粉末が充填されることで、封止材の流動性が低下する問題が生じるので、封止材の流動性の改善が為されているが、単純に流動性を向上するのみではバリが生じるなど成形性に不都合が生じることがあった。
【0004】
このような不都合を解決する目的で提案させる従来技術としては、頻度粒度分布の尖度が2.9以下、15μm以上30μm未満の領域に極小径を、3μm以上15μm未満および30μm以上70μm未満の領域に極大径を有し、かつ平均粒径が7〜40μmであることを特徴とする無機質粉末がある(特許文献1)。特に、0.2μm以上1.5μm未満の領域に極大径を更に有することが好ましいことが開示されている。
【0005】
そして、頻度粒度分布の歪度が0.6〜1.8、少なくとも3〜10μmの領域および30〜70μmの領域に極大径を有し、かつ最頻径が30〜70μm、中位径が5〜40μmであることを特徴とする球状無機質粉末が開示されている(特許文献2)。特に、0.2〜1.2の領域に極大径を有することが好ましく、BET法により測定した比表面積SBと粒度分布により計算した理論比表面積SCとの比(SB/SC)が2.5以下であることが好ましいことが開示されている。そして、50nm未満の粒子を実質的に含有しないことが好ましく、球状無機質粉末が非晶質シリカであることが好ましいことが述べられている。
【0006】
また、少なくとも2〜10μmおよび20〜50μmの粒度域に極大値を示す多峰性の頻度粒度分布を有し、平均粒径5〜35μm、最大粒径60μm以下であり、かつ(d99/最頻径)が2.2以下であることを特徴とする球状無機質粉末が開示されている(特許文献3)。特にBET法比表面積SBと粒度分布により計算した理論比表面積SCとの比(SB/SC)が2.5以下であることが好ましく、50nm未満の粒子を実質的に含有しないことが好ましいことが言及されている。また、d75未満の粒子径を持つ粒子の平均球形度が0.90以上、d75以上の粒子径を持つ粒子の平均球形度が0.85以上であることが好ましいことが開示されている。
【0007】
そしてまた、0.3μm超0.85μmの領域、3〜10μmの領域および20〜70μmの領域に極大値を示す頻度粒度分布を有し、BET法により測定した比表面積SBと粒度分布により計算した理論比表面積SCとの比(SB/SC)が2.5以下であり、50nm未満の粒子を実質的に含有しないことを特徴とする球状無機質粉末が開示されている(特許文献4)。
【0008】
更に、頻度粒度分布において、20〜70μmの領域、3.0〜10μmの領域、0.20〜1.0μmの領域に極大値を有することを特徴とする球状無機質粉末。及びエポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、及び上記球状無機質粉末を含有してなることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物が開示されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開2004−59343号公報
【特許文献2】特開2003−146648号公報
【特許文献3】特開2003−110065号公報
【特許文献4】特許第3571009号公報
【特許文献5】特開2001−158614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年の技術の発達により、従来技術の封止材にて用いられる樹脂組成物よりも更に高い性能をもつ樹脂組成物が求められるようになった。このように流動性及び成形性が高い性能を持つ樹脂組成物は半導体の封止材としての用途以外でも高い性能を発揮できる場合が多い。
【0010】
本発明は、このような実状を鑑みてなされたものであり、流動性と成形性とを高い次元で両立できる樹脂組成物が実現できる樹脂組成物添加用無機粉末並びにその樹脂組成物添加用無機粉末を用いた樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
(1)上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意検討を行った結果、樹脂組成物に添加する無機粉末として特定の粒度分布を持つものを採用することで流動性と成形性とが両立できることを発見した。具体的には体積基準の粒度分布において所定範囲内に2つ以上の極大値をもつ無機粉末を採用することで高い性能が両立できることを見出し、以下の発明を完成した。
【0012】
(1−1)すなわち、上記課題を解決する本発明の樹脂組成物添加用無機粉末は、体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、
該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であることを特徴とする。
【0013】
特に、0.1μm以上2μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の5〜15体積%であり、20μm以上70μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の50体積%以上であることが望ましい。
【0014】
ここで、「0.1μm以上2μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子」に含まれるか否かの判断は以下の通りに行う。まず、基本的には、0.1μm以上2μm以下の範囲に極大値をもつピークに属する粒子が「0.1μm以上2μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子」に含まれるものとする。
【0015】
このピークに含まれるか否かは、粒度分布における極大値から、粒径の小さい方向及び大きい方向の双方における極小値に至るまでの粒子がすべてこのピークに含まれるものとする。つまり、極小値が「0.1μm以上2μm以下」の範囲から外れたとしてもその粒径をもつ粒子まで含むようにする。
【0016】
極小値が表れない場合には、その極小値が表れない側の粒子はすべてそのピークに含まれるとする(例えば、極大値から粒径が大きくなる(小さくなる)方向において極小値がない場合には極大値以上(以下)の粒径をもつ粒子はすべてそのピークに含むものとする。)。また、「0.1μm以上2μm以下」の範囲に2以上の極大値がある場合にはそれぞれについて上述した手法にて「0.1μm以上2μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子」に含まれるか否かの判断を行う。
【0017】
以上の説明は「20μm以上70μm以下」の範囲、(1−2)にて述べる「15μm以上70μm以下」の範囲についても妥当する。
【0018】
更に、2〜20μmの範囲に極大値が存在しないことが望ましい。
【0019】
(1−2)また 上記課題を解決する本発明の他の樹脂組成物添加用無機粉末は、体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの2つである第1極大値及び第2極大値が15μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であることを特徴とする。
【0020】
特に、15μm以上70μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の体積を基準にして60%以上を占めることが望ましい。
【0021】
(1−3)上述した(1−1)及び(1−2)にて述べた樹脂組成物添加用無機粉末としては、前記粒度分布がもつ極大値が2つであることが望ましい。
【0022】
更に、BET法により測定した比表面積が1.5〜3.5m2/gであることが望ましい。
【0023】
そして、結晶化率が2%未満のシリカ粉末であることが望ましい。
【0024】
(2)上記課題を解決する本発明の樹脂組成物は、(1)にて説明した樹脂組成物添加用無機粉末からなるフィラーと、該フィラーを分散する分散用の樹脂組成物とを有することを特徴とする。上述の粒度分布をもつ無機粉末を採用することで流動性と成形性とが両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の樹脂組成物添加用無機粉末は樹脂中に分散・添加することで本発明の樹脂組成物を調製することができる。調製した樹脂組成物は半導体素子の封止に用いることができるほか、基板材料、無機ペースト、接着剤、コーティング剤、精密成形樹脂、プリプレグなどに用いることができる。詳しくは後述する。
【0026】
〈樹脂組成物添加用無機粉末〉
本発明の樹脂組成物添加用無機粉末について、以下、実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態の樹脂組成物添加用無機粉末は粒度分布に特徴を有する。まず、粒度分布に2以上の極大値をもつ。以下に示すような値に2つ以上の極大値をもつことで流動性と成形性とが両立できる。
【0027】
後述する所定の範囲に2以上の極大値をもつようにする方法としては特に限定しない。例えば、篩い分けにより目的の極大値をもち且つ粒径の範囲が狭い粒子を必要な極大値の数だけ選別した後に混合する方法、粒径の範囲が狭い粒子が得られる粒子製造方法(VMC法など)により所定の極大値をもつ粒子を必要な極大値の数だけ製造した後に混合する方法が挙げられる。
【0028】
極大値の数としては2つ以上であれば幾つでも良いが、2つであることが望ましい。複数の極大値のうちの2つ(第1極大値及び第2極大値)が示す粒径が後述する範囲にあることが要求される。なお、便宜的に第1極大値及び第2極大値と称しているが、第1極大値と第2極大値との間でピークの高さの大小は限定しない。
【0029】
ここで粒度分布は体積基準で測定されるものである。具体的な測定方法としてはレーザー回折光散乱法にて測定したものである。測定機器としてはベックマンコールター社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置(型番:LS 13 320)を用いて測定したものである。測定条件は、溶媒として水を採用し、分散媒屈折率を1.33、サンプル屈折率を1.5(シリカの場合)、PIDS(Polarizatuon Intensity Differential Scattering)濃度を45〜55%、相対濃度を5〜15%とし、前処理として超音波ホモジナイザーで分散させた後に測定した。この測定結果を用いて評価した場合に極大値の有無を判断するものである。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物添加用無機粉末としては2種類ある。
【0031】
(a)1つ目としては、2つ以上ある極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であること、第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であることが要求される。特に第1極大値としては0.1μm以上1μm以下であることが望ましい。第2極大値としては20μm以上60μm以下であることが望ましい。
【0032】
そして、全体を基準とした体積平均粒径並びにd50(累積体積が50%になる粒径)が6μm以上50μm未満である。そして、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上である。体積平均粒径並びにd50としては10μm以上40μm以下であることが望ましい。そして、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度としては0.970以上であることが望ましい。
【0033】
体積平均粒径及びd50は前述した粒度分布の測定と同時に測定した値である。平均円形度は画像解析装置(シスメックス社製:フロー式粒子像解析装置:FPIA3000)を用い溶媒としてシース液(PSE−900A,シスメックス社製)を採用して測定した円形度の値である(以下同じ)。具体的には(円形度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。100個の粒子について測定した平均値を平均円形度として採用する。
【0034】
特に、0.1μm以上2μm以下の粒径をもつ粒子が全体の体積を基準として5〜15体積%であり、20μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子が全体の体積を基準として50体積%以上であることが望ましい。この粒径及び体積は前述の粒度分布と同時に測定できる値である。
【0035】
更に、粒度分布が2〜20μmの範囲に極大値を有さないことが望ましい。
【0036】
(b)2つ目としては、2つ以上ある極大値のうちの1つである第1極大値と第1極大値以外の1つである第2極大値とのそれぞれが15μm以上70μm以下であることが要求される。特に第1極大値としては15μm以上30μm以下であることが望ましい。第2極大値としては30μm以上60μm以下であることが望ましい。
【0037】
そして、全体を基準とした体積平均粒径並びにd50(累積体積が50%になる粒径)が6μm以上50μm未満である。そして、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上である。体積平均粒径並びにd50としては10μm以上40μm以下であることが望ましい。そして、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度としては0.970以上であることが望ましい。
【0038】
特に、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子が全体の体積を基準として60%以上であることが望ましい。この粒径及び体積は前述の粒度分布と同時に測定できる値である。
【0039】
上述した(a)及び(b)のいずれであってもBET法により測定した比表面積が1.5〜3.5m2/gであることが望ましい。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物添加用無機粉末の組成は無機物が主体であること以外は特に限定しない。ここで、「無機物が主体である」とは無機物からなる粒子の表面に有機物からなる被膜が形成されているものを含む趣旨である。例えば、無機物からなる粉末の表面をシランカップリング剤にて処理したものが挙げられる。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物添加用無機粉末を組成できる無機物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、また、これらの複合酸化物、窒化アルミニウム、窒化炭素が例示できる。特に結晶化率が2%未満の無機物(特にシリカ)を採用することが望ましい。
【0042】
樹脂組成物添加用無機粉末を得る方法としては特に限定しない。無機物に対応する金属を酸素と反応させて酸化物微粒子とする方法及び対応する無機物を熱により溶融して酸化物微粒子にする方法などのアモルファスシリカ微粒子を製造する方法や、シリカを破砕してシリカ微粒子とする方法が挙げられる。
【0043】
〈樹脂組成物〉
本実施形態の樹脂組成物は前述の本実施形態の樹脂組成物添加用無機粉末とその樹脂組成物添加用無機粉末を分散する分散用樹脂組成物とから構成される。樹脂組成物添加用無機粉末については前述の通りなので記載を省略する。樹脂組成物添加用無機粉末は全体の質量を基準として70質量%以上含有することが望ましい。更に、その他の添加剤として、離型剤(カルナバワックスなど)などを添加することができる。
【0044】
分散用樹脂組成物は特に限定しないが、熱硬化性樹脂(の前駆体)を採用することが望ましい。例えば、カチオン重合性化合物を採用することができる。カチオン重合性化合物としては、エポキシ樹脂、オキシラン樹脂、オキセタン化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニル化合物などが挙げられ、これらの化合物を単独で、又は複数種類混合して用いることができる。
【0045】
特に、エポキシ樹脂が入手性、取扱性などの観点から好ましい。エポキシ樹脂は特に限定されないが、1分子中に2以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられる。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂が挙げられる。
【0046】
エポキシ樹脂以外の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、エピクロロヒドリンなどのオキシラン化合物;トリメチレンオキサイド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタンなどのオキセタン化合物;テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフラン、トリオキサン、1,3−ジオキソフラン、1,3,6−トリオキサシクロオクタンなどの環状エーテル化合物;β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物;エチレンスルフィド、3,3−ジメチルチイランなどのチイラン化合物;1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなどのチエタン化合物;テトラヒドロチオフェン誘導体などの環状チオエーテル化合物;エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物;スピロオルトカルボナート化合物;環状カルボナート化合物;エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどのビニル化合物;スチレン、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物が例示できる。カチオン重合性化合物としては、エポキシ樹脂及びこれらの化合物を単独で、又は複数種類混合して用いることができる。
【0047】
更に上記カチオン重合性化合物を硬化させるために、硬化剤及び硬化触媒を混合させることができる。硬化剤としては1級アミン、2級アミン、フェノール樹脂、酸無水物を用いることができる。硬化触媒としてはリン系イミダゾール化合物、3級アミンなどが用いられ、その他、ルイス酸も3級アミン、オニウム塩などで錯体にして潜在的加熱触媒として使用することができる。具体的には硬化剤として、ジアミノジフェニルメタン、無水ヘキサヒドロフタル酸、フェノール樹脂(ノボラック)が挙げられる。また、硬化触媒として、2−メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【実施例】
【0048】
〈試験試料の調製〉
天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得た。火炎投入前の粒度分布、火炎条件、分級操作、配合により表1及び2に示す粒度分布になるように調製し各試験例の試験試料(樹脂組成物添加用無機粉末)とした。いずれのシリカ粉末についても結晶化率は1%未満(非晶質率は99%以上)であり、平均円形度は0.9以上であった。
【0049】
各試験例の試験試料についてそれぞれ試験を行った。各試験例の試験試料のそれぞれ160質量部に対して、軟化点70℃のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂33質量部、軟化点80℃のフェノールノボラック型エポキシ樹脂17質量部、トリフェニルフォスフィン1質量部、親水性シランカップリング剤(KBM−403、信越化学工業社製)を1質量部、成形型からの離型剤として作用させるカルナバワックス1質量部、流動性向上を目的としてシリカ粉末(アドマファインSO−25R,体積平均粒径0.5μm、アドマテックス製)40質量部、シリカ粉末(アドマファインSO−32R,体積平均粒径1.5μm、アドマテックス製)40質量部を混合した後、ヘンシェルミキサーで予備混合した。得られた混合物を二軸式押出混練機で加熱・混練した。(パドル回転数120rpm、吐出量15kg/h、混練機内温度70℃)。得られた混練物を乳鉢を用いて粉砕し各試験例に対応する樹脂組成物を得た。
【0050】
〈試験〉
各試験例の樹脂組成物を用いて流動性試験と成形性試験とを行った。
【0051】
流動性試験はEMMI 1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用い、トランスファー成形機によって、温度、圧力を加えスパイラルフロー測定試験を行った。成形条件は温度175℃、圧力1.96MPa(20kgf/cm2)、成形時間180秒とした。
【0052】
成形性試験は所定の成形条件において生成するバリの形成の程度を測定することで行った。ベント深さ5μm、10μm、20μm、30μm、50μmのスリットを有する評価用金型を用いて各試験例の樹脂組成物を成形した。成形性にて問題になるバリが形成される長さに関連する値としてベント深さ5μmに流れた樹脂組成物の長さ測定し成形性の指標とした。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表より明らかなように、試験例1〜6の樹脂組成物は流動性がいずれも100cmを超えていると共にバリの長さが1.0mm以下と短く、流動性と成形性とが両立していることが明らかになった。
【0056】
試験例7及び8では要求される2つの極大値のうちの1つしかないので流動性が低いものと考えられる。特に試験例7では成形性も充分ではなかった。
【0057】
試験例9ではバリ長さが3.5mmで比較的長いバリが生成した。これは比表面積が0.9m2/gであって、他の試験例の試験試料よりも小さいことから、相対的に微細な粉末の含有量が少なくなったことに起因するものと推測できる。すなわち、バリ生成の原因は隙間内での流動性の高さにあるが、微細な粉末の存在は隙間における流動性を抑制する効果があることが分かった。
【0058】
試験例10〜12では要求される極大値を2つとも有しているものの、平均円形度が0.950未満であることから流動性が100cm未満で充分ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、
該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であることを特徴とする樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項2】
0.1μm以上2μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の5〜15体積%であり、
20μm以上70μm以下に形成される粒度分布の極大値を構成する粒子が全体の50体積%以上である請求項1に記載の樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項3】
2〜20μmの範囲に極大値が存在しない請求項1又は2に記載の樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項4】
体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの2つである第1極大値及び第2極大値が15μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であることを特徴とする樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項5】
15μm以上70μm以下に存在する2つの極大値を構成する粒子が全体の体積を基準にして60%以上を占める請求項4に記載の樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項6】
前記粒度分布がもつ極大値は2つである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項7】
BET法により測定した比表面積が1.5〜3.5m2/gである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項8】
結晶化率が2%未満の非晶質シリカ粉末である請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物添加用無機粉末。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物添加用無機粉末からなるフィラーと、該フィラーを分散する分散用樹脂組成物とを有することを特徴とする樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−248004(P2008−248004A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88701(P2007−88701)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】