説明

樹脂組成物

【課題】 芳香族ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂を配合して、耐熱性、溶融流動性、強度及び靱性に優れた材料を提供する。
【解決手段】 (A)芳香族トリカルボン酸無水物、または芳香族トリカルボン酸無水物および芳香族テトラカルボン酸無水物と、ジイソシアネート化合物とを反応させるに際し、アミド化反応が70%以上終了してから、イミド基の生成反応を行わせて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂と、(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂及び(C)無水フタル酸基を含有したポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性、溶融時の流動性、強度及び靭性に優れた新規な樹脂組成物に係わる。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、機械的強度、電気特性、耐薬品性に優れたプラスチック材料である。しかしながら、ワニス、フィルム用途以外は、溶融流動性に劣り、ほとんどのものは射出成形が困難な場合が多い。そのため、コンプレッションモールド法による成形を行っているのが現状である。
【0003】一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、耐熱性、電気特性、耐溶剤性に優れ、特に溶融流動性が優れているの特徴である。しかし、溶融時の耐酸化性に劣り、高温下の状態で対流すると架橋反応が進行し溶融流動性が大幅に低下する。甚だしい場合は、成形困難になるといった欠点を有している。
【0004】芳香族ポリアミドイミド樹脂の溶融流動性を改良する技術として、既にポリフェニレンスルフィド樹脂を配合する技術が提案されている(特公昭57−9754)。しかしながら、この技術では、芳香族ポリアミドイミド樹脂の高い耐熱性は、保持されるものの、芳香族ポリアミドイミドの劣った溶融流動性のためにポリフェニレンスルフィド樹脂の優れた溶融流動性がほとんど反映されず、組成物としての溶融流動性は改良が望まれる水準である。また、耐熱性と溶融流動性を改良する技術も提案されている(特開平6−200154)。この技術により芳香族ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物は優れた耐熱性と溶融流動性を併せ持った材料を得ることが出来る。しかしながら、この技術では、相溶性が不十分であるため、脆いという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする問題点は、芳香族ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂を配合して、耐熱性、溶融流動性、強度及び靭性に優れた材料を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々研究した結果、芳香族ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂に、無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂を添加すると、靭性が発現することを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
【発明の実施の形態】即ち、本発明は、(A)芳香族トリカルボン酸無水物、または芳香族トリカルボン酸無水物および芳香族テトラカルボン酸無水物と、ジイソシアネート化合物とを反応させるに際し、アミド化反応が70%以上終了してから、イミド基の生成反応を行わせて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂と、(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂及び(C)無水フタル酸基を含有したポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物である。
【0008】本発明を構成する樹脂組成物に使用する芳香族ポリアミドイミド樹脂を製造するために使用する芳香族トリカルボン酸は、下記一般式で示される化合物である。
【化1】


(式中のArは、少なくとも1つの炭素6員環を含む3価の芳香族基を示す。)
【0009】芳香族トリカルボン酸無水物の具体例としては、以下のものが例示されるが、2種以上の化合物を混合して使用することもできる。
【化2】


【0010】これらのうち、芳香族トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物が好ましい。
【0011】上記芳香族トリカルボン酸無水物の0〜50モル%を芳香族テトラカルボン酸無水物に代えることも可能である。しかし、上記範囲より、芳香族テトラカルボン酸無水物が多いと、得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂が脆くなる傾向がある。芳香族テトラカルボン酸無水物は、下記一般式で表される化合物である。
【化3】


(式中、Ar1は、少なくとも1つの炭素6員環を含む3価の芳香族基を示す。)
【0012】芳香族テトラカルボン酸無水物の具体例としては、以下のものである。
【化4】


【0013】本発明を構成する樹脂組成物に用いられる芳香族ポリアミドイミド樹脂を製造するために使用するジイソシアネート化合物とは下記一般式で示される化合物である。
【化5】O=C=N−R−N=C=O(式中、Rは、2価の芳香族及び/または脂肪族基)
【0014】その具体例としては、以下のものが上げられるが、2種以上の化合物を混合して用いることもできる。
【化6】


【0015】これらのうち好ましいものは、次のものが挙げられる。
【化7】


【0016】また、特に好ましいものは、次のものが挙げられる。
【化8】


【0017】最も好ましいものとして、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、メチレンジ(4-フェニルイソシアネート)を挙げることが出来る。
【0018】本発明に用いる樹脂組成物に好適な芳香族ポリアミドイミド樹脂を製造するためには、芳香族トリカルボン酸無水物成分(前述のジカルボン酸、テトラカルボン酸無水物を含むことが出来る)とジイソシアネート成分は、それぞれのモル数をA、Bとしたとき両者のモル比は、0.9 <A/B<1.1 に保たれることが望ましく、より好ましくは、0.99<A/B<1.01に保たれることである。
【0019】本発明においては、芳香族ポリアミドイミド樹脂を円滑に製造するため、溶媒が使用される。使用される溶媒は、ジイソシアネート化合物に対して、不活性なものであれば、特に限定無く、具体的には、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等の生成する芳香族ポリアミドイミドに相溶性を有する溶媒及びニトロベンゼン、ニトロトルエン等の生成する芳香族ポリアミドイミドと相溶性を有しない極性溶媒を挙げることが出来る。これらは単独で使用しても、混合して使用しても差し支えない。好ましいものは、ポリアミドイミドと相溶性を有するN-チルピロリドン、ジメチルホルムアミド等の溶媒である。また、これらの溶媒は、モノマー原料の溶媒に対する割合で、0.1 〜4 モル/リットルで使用する。
【0020】本発明に用いる樹脂組成物を構成する芳香族ポリアミドイミド樹脂の製造には、各種触媒を使用できるが、溶融時の成形加工性を損なわないためには、その使用量は最小限に止めるべきであり、重合速度が十分な水準にある限りは、使用しないことが望ましい。触媒の具体例を例示するならば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、トリメチルアミン、N,N-ジエチルアミン、トリエチルアミン、等の第3級アミン、酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の弱酸の金属塩、重金属塩、アルカリ金属塩等を挙げることが出来る。
【0021】また、溶媒、モノマー等から構成される重合系の含有水分は、500PPM以下に保つことが望ましく、より好ましくは、100PPM以下、最も好ましくは、50PPM以下に保たれる。系内の含有水分量がこれらより多いと、溶融成形性を損なう。
【0022】本発明の樹脂組成物に使用される(A)成分の芳香族ポリアミドイミド樹脂の製造は、一般には、重合温度、反応時間、触媒添加方法を適切に行うことによりアミド化反応とイミド化反応を制御することにより行うことが出来るが、基本的にはアミド基の生成反応が実質的に終了するまでイミド基の生成反応が起こらない条件でアミド化反応を行い、ついでイミド化反応を行う条件で実施するのであれば差し支えない。
【0023】本発明で使用される芳香族ポリアミドイミド樹脂を得るため、アミド化反応終了後、イミド化反応をさせる方法としては、重合温度を制御する方法が簡便である。即ち、芳香族トリカルボン酸無水物(一部芳香族テトラカルボン酸無水物を含む場合も含む)とジイソシアネート化合物を溶媒中650〜100℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは、80〜100℃の温度範囲で反応させ、アミド化反応が70%以上、好ましくは80%、更に好ましくは90%、最も好ましくは、95%以上終了してから、通常100〜200℃、好ましくは、105〜180℃、更に好ましくは110〜180℃の温度範囲でイミド化反応を行わせる方法である。
【0024】芳香族トリカルボン酸無水物(一部、芳香族テトラカルボン酸無水物を含む場合も含む。)とジイソシアネート化合物との反応温度は、重要な条件であり、これを制御することにより、本発明に使用される樹脂組成物を構成する芳香族ポリアミドイミド樹脂を製造することが出来る。各段における温度は、その温度範囲内であれば、いかように設定しても構わない。例えば、昇温させても、一定温度に保っても、またこの組み合わせであっても構わないが、一定温度に保つのが望ましい。各段の温度がこの範囲より低い場合は、アミド及び、イミド基の生成反応が完結せず、その結果、得られた芳香族ポリアミドイミド樹脂の重合度があがらないため、本発明の樹脂組成物が脆いものとなる。アミド化の温度が上記範囲より高い場合は、アミド基の生成反応とイミド基の生成反応が同時期に起こるため、得られた芳香族ポリアミドイミド樹脂は溶融流動性及び滞留安定性の劣ったものになる。
【0025】芳香族トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物との反応時間は、アミド化反応は30分〜5時間、好ましくは、30分から2時間であり、イミド化反応は、30分から10時間、好ましくは1時間から8時間である。反応時間がこれよりも短すぎると、得られた芳香族ポリアミドイミドの重合度があがらないため、本発明の樹脂組成物が脆いものとなる。一方、反応時間が長すぎると、得られた芳香族ポリアミドイミド樹脂は溶融流動性の劣ったものとなる。アミド基の成分とイミド基の成分を重合反応の間、追跡する必要があるが、公知の赤外分光法、ガスクロマトグラム法等により可能である。
【0026】本発明に用いる樹脂組成物に好適な芳香族ポリアミドイミド樹脂の重合度は、ジメチルホルムアミド中30℃で濃度1g/dlで測定した還元粘度で表示するならば、0.15dl/g〜1.0 dl/gが好適に用いいられ、より好ましくは、0.2 dl/g〜0.6 dl/gが、最も好ましくは、0.2 〜0.5 dl/gである。
【0027】本発明の樹脂組成物を構成する芳香族ポリアミドイミド樹脂は、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘプタン、トルエン等の脂肪族、芳香族炭化水素類により沈殿、洗浄することにより粉末として回収されるが、重合溶媒を直接濃縮することも可能である。更に、ある程度まで濃縮した後、押し出し機等で減圧下に溶媒を除去しペレット化する方法を行うこともできる。
【0028】また、本発明の樹脂組成物に使用される(B)成分であるポリフェニレンスルフィド樹脂とは、以下で示される繰り返し単位を70モル%以上、好ましくは90モル%以上、最も好ましくは、実質的に100モル%含む重合体である。
【0029】
【化9】


【0030】上記繰り返し単位が70モル%未満では特有の性質を有する本発明の樹脂組成物は得難い。この重合体を得る重合方法としては公知の方法を採用し得るが、硫化ナトリウムとp-ジクロルベンゼンをN-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルフォラン等のスルフォン系溶媒中で反応させる方法が好適である。この際に重合度を調製するために酢酸ナトリウム、酢酸リチウム等のアルカリ金属カルボン酸塩を添加することは好ましい方法である。ポリフェニレンスルフィド樹脂は、製法により比較的低分子量のもの(特公昭45−3368)と線状の高分子量のもの(特公昭52−12240)が存在するが、比較的低分子量のものは、酸素雰囲気下、あるいは、過酸化物等の架橋剤の存在下に加熱することにより、高分子量化して使用することも可能である。本発明に使用される樹脂組成物には、何れのポリフェニレンスルフィド樹脂を使用しても構わない。
【0031】本発明の樹脂組成物の(B)成分であるポリフェニレンスルフィド樹脂は、共重合成分として30モル%未満であって重合体の結晶に大きな影響を与えない範囲で、メタ結合、エーテル結合、スルフォン結合、ビフェニル結合、等を含有しても良いが、好ましくは共重合成分は10モル%未満が良好である。
【0032】本発明の樹脂組成物の(C)成分である無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂は、無水フタル酸基が十分に化学結合していることが必要である。本発明で使用する無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィドは、極性有機溶媒中でジハロゲン置換芳香族化合物とアルカリ金属硫化物を重合させてポリフェニレンスルフィドを製造する方法において、重合系にモノハロゲン置換フタル酸化合物を添加する方法で得られる。
【0033】モノハロゲン置換フタル酸化合物としては、4−ハロフタル酸、3−ハロフタル酸、及びフタル酸にハロフェニル基、ハロフェノキシ基等を置換したフタル酸誘導体を挙げることが出来る。またモノハロゲン置換フタル酸化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩として用いることもできる。好ましく用いられるのは、クロロフタル酸水素ナトリウム、クロロフタル酸ジナトリウム及びクロロフタル酸である。
【0034】重合反応は、通常窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、150〜300℃、好ましくは、180〜280℃の温度範囲で1〜20時間で行われる。重合終了後、フタル酸基を有するポリフェニレンスルフィドが得られるが、フタル酸金属塩の形として存在する場合には、酸性水で処理してフタル酸の形にする。洗浄後、乾燥して脱水反応が生じて無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド得られる。
【0035】無水フタル酸含有ポリフェニレンスルフィド中に含有される無水フタル酸基の量は、赤外吸収スペクトルにおいて、無水フタル酸基の特性吸収帯である1850cm-1の吸光度をCH面外変角倍音吸収帯である1900cm-1の吸光度で割った値をIR指標と定めた場合、通常0.1以上、好ましくは0.3以上である。この値が、0.1未満の場合、効果がみられない。
【0036】本発明に使用される樹脂組成物の樹脂部全体を100重量%とすると、(A)芳香族ポリアミドイミド樹脂、(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂及び(C)無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィドの割合は、次のようである。
(A)芳香族ポリアミドイミド樹脂は、通常10〜99重量%、好ましくは20〜97重量%である。
(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、通常0〜89重量%、好ましくは0〜80重量%。
(C)無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂は、通常1〜90重量%、好ましくは3〜80重量%。
【0037】本発明に使用する樹脂組成物は、芳香族ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンサルファイド樹脂及び無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィドを溶融混練りして製造される。溶融混練り温度は250〜400℃、好ましくは280〜360℃である。混練り方法は、押し出し機、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールその他で行うことが出来るが、好ましい方法は、2軸押し出し機による方法である。
【0038】本発明に使用される樹脂組成物には、所望に応じて、充填材、顔料、滑剤、可塑剤、安定剤、紫外線剤、難燃剤、難燃助剤の添加剤、他の樹脂などその他の成分が適宣配合され得る。
【0039】充填材の例としては、としては、ガラスビーズ、ウオラストナイト、マイカ、タルク、カオリン、二酸化珪素、クレー、アスベスト、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、ケイソウ土、グラファイト、カーボランダム、二硫化モリブデンに代表される鉱物質充填材;ガラス繊維、ミルドファイバー、チタン酸カリウム繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、等を挙げることが出来る。充填材は、樹脂組成物の1〜70重量%使用することが出来る。好ましい充填材は、ガラス繊維、ミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維であり、ウレタン、アミノ系等のシランカップリング剤で処理したものも好適に使用できる。
【0040】顔料としては、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛等が例示できる。
【0041】滑剤としては、鉱物油、シリコン油、エチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ステアリン酸ナトリウムなどの金属塩、モンタン酸ナトリウム等の金属塩、モンタン酸アミドなどが代表的なものとして例示される。
【0042】難燃剤としては、トリフェニルフォスフェートのようなリン酸エステル類、デカブロモビフェニル、ペンタブロモトルエン、ブロモ化エポキシ樹脂、等の臭化化合物;メラミン誘導体などの含窒素リン化合物等が挙げられる。難燃助剤を使用しても良く、その例としては、アンチモン、ほう素、亜鉛等の化合物等が挙げられる。
【0043】他樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、4フッ化エチレンをはじめとするフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の芳香族樹脂が挙げられる。
【0044】本発明においては、上記のような(A)芳香族ポリアミドイミド樹脂と(B)ポリフェニレンサルファイド樹脂及び(C)無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物を得るが、成形は、通常の射出成形法によって行われる。シリンダー温度は、290〜360℃の範囲で行い、金型は十分な耐熱性を得るために120〜160℃にすることが望ましい。また、耐熱性を改良し、且つ残留応力を取り除く目的で成形後に熱処理することが望ましい。特に、金型温度が120℃より低い温度で成形した場合は熱処理するのが好ましい。熱処理の方法は、特に限定されるものではないく、例えば通常の熱風式オーブン、電子レンジまたはオーブンレンジを用いられる。熱処理温度は、150〜300、好ましくは、200〜280℃、最も好ましくは、220〜260℃で30秒〜48時間、好ましくは1時間〜36時間常圧もしくは減圧で行うこともできる。
【0045】
【実施例】本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例に用いる物質は下記のもの及び合成例で製造したものである。
【0046】合成例1含水量15ppmのN-メチルピロリドン、3リットルを5リットルの撹拌機、温度計、先端に塩化カルシウムを充填した乾燥管を装着した環流冷却管を備えた反応器に仕込んだ。ここに無水トリメリット酸555g(50モル%)、続いて2,4-トリレンジイソシアネート503.3g(50モル%)を加えた。無水トリメリット酸添加時の系内の水分は、30ppmであった。最初、室温から20分を要して内容物温度を90℃とし、この温度で50分間重合を行った。重合を行いながら、2,4-トリレンジイソシアネートのイソシアネート基の減少量とイミド基の生成量をを測定した。測定方法は、少量の反応液を注射器でサンプリングし赤外分光法でイソシアネート基の2276cm-1の吸収を定量することにより行った。50分間重合を行ったところイソシアネート基の量は、50モル%に減少した。この時のイミド基の吸収は全く認められなかった。これによりイミド化の反応が起こるまでにアミド化反応が終了したことを確認した。この後、15分を要して115℃に昇温し、この温度に保ったまま重合を8時間継続した。重合終了後、ポリマー溶液を6リットルのメタノール中に強力な撹拌下に滴下した。析出したポリマーを吸引濾別し、さらにメタノール中に再分散させて良く洗浄し濾別後、135℃で6時間乾燥を行いポリアミドイミド粉末を得た。ジメチルホルムアミド溶液(濃度1.0 g/dl)でこのものの30℃における還元粘度を測定したところ0.25dl/gであった。
【0047】合成例2オートクレーブにNMP300mlと含水硫化ナトリウム135gを仕込み、窒素置換後200℃まで昇温した。続いて、p-ジクロロベンゼン112g及びNMP150ml及び水3gを添加した。220℃で5時間反応させた後、水30g、4-クロロフタル酸水素ナトリウム18g及び水酸化ナトリウム3gを圧入し240℃で5時間反応した。析出した顆粒状ポリマーを濾別した後、アセトン及び水でで洗浄し、脱水、乾燥を経て無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィドを得た。得られた無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィドを300℃で溶融プレスした後、赤外分光法で測定した。得られたスペクトルから、無水フタル酸基の特性吸収である1850cm-1の吸光度をCH面外変角倍音吸収である1900cm-1の吸光度で除した吸光度比を測定したところ0.30であった。ここでは、この値をIR指標と定めた。
【0048】実施例1合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂50重量%とポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業(株)製:W−205)25重量%及び合成例2で製造した無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂25重量%をブレンドし、2軸押し出し機を用いて330℃で溶融混錬りしてペレット化し、樹脂組成物を製造した。このペレットを射出成形し、1/8インチ厚の抗折試験片を得た。この試験片を用いて、曲げ強度、曲げ歪み(島津製作所(株)製オートグラフ:AG5000B)を測定した。熱変形温度(18.6kg/cm2 荷重)もこの試験片を用いて窒素雰囲気下で測定(安田精機(株)製:HD−500−PC)した。また、溶融時の流動性は、350℃、60kg/cm2 応力(島津製作所(株)製:フローテスターCFT−500C)で、流れ値を測定した。結果は、表1に示した。
【0049】比較例1合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂50重量%とポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業(株)製:W−205)50重量%をブレンドし、2軸押し出し機を用いて330℃で溶融混錬りしてペレット化し、樹脂組成物を製造した。射出成形及び物性の測定は、実施例1と同様に行った。
【0050】実施例2合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂30重量%とポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業(株)製:W−205)5重量%と合成例2で製造した無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂25重量%及びグラスファイバー(旭ファイバーグラス(株)製:CS03JAFT523)40重量%をブレンドし、2軸押し出し機を用いて330℃で溶融混錬りしてペレット化し、樹脂組成物を製造した。射出成形及び物性測定は、実施例1と同様に行った。
【0051】比較例2合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂30重量%とポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業 製W−205)30重量%及びグラスファイバー(旭ファイバーグラス(株)製:CS03JAFT523)40重量%をブレンドし、2軸押し出し機を用いて330℃で溶融混錬りしてペレット化し、樹脂組成物を製造した。射出成形及び物性測定は、実施例1と同様に行った。
【0052】
【表1】
PAI PPS M-PPS フィラー 曲げ強度 曲げ歪 流れ値 DTUL (wt%) (wt%) (wt%) (wt%) (MPa ) (%) (cc/sec) (℃) ───────────────────────────────────実施例1 合1 合2 50 25 25 0 120 2.7 8.2 ×10-2 235───────────────────────────────────比較例1 合1 50 50 0 0 80 0.8 5.1 ×10-2 230───────────────────────────────────実施例2 合1 合2 GF 30 5 25 40 260 2.2 7.2 ×10-2 278───────────────────────────────────比較例2 合1 GF 30 30 0 40 200 1.2 5.4 ×10-2 275───────────────────────────────────
【0053】(略号説明)
PAI:芳香族ポリアミドイミド樹脂PPS:ポリフェニレンスルフィド樹脂M−PPS:無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂GF:グラスファイバーDTUL:熱変形温度
【0054】
【発明の効果】本発明は、上記のように(A)芳香族ポリアミドイミド樹脂と(B)ポリフェニレンサルファイド樹脂及び(C)無水フタル酸基含有ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物を提供するものである。この樹脂組成物は、高い耐熱性、良好な溶融流動性、高い強度、靭性を有し、特に、従来の技術で得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物の靭性、強度を大幅に改良した。これは、芳香族ポリアミドイミドとポリフェニレンスルフィド樹脂からなる樹脂組成物の相溶性を改良したためと考えられる。特に、強度と靭性の改良は、本発明の樹脂組成物において特異的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)芳香族トリカルボン酸無水物、または芳香族トリカルボン酸無水物および芳香族テトラカルボン酸無水物と、ジイソシアネート化合物とを反応させるに際し、アミド化反応が70%以上終了してから、イミド基の生成反応を行わせて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂10〜99重量%と、(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂0〜89重量%及び(C)無水フタル酸基を含有したポリフェニレンスルフィド樹脂1〜90重量%からなり、(A)、(B)及び(C)の合計量が100重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】 (A)芳香族ポリアミドイミド樹脂が、アミド化反応を50〜100℃、イミド化反応を100〜200℃で行って得られたものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】 (A)が20〜97重量%、(B)が0〜80重量%及び(C)が3〜80重量%であり、(A)、(B)及び(C)の合計量が100重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。