説明

樹脂組成物

【課題】耐衝撃性にも優れ、更に押出加工時のダイ付近での目ヤニを大幅に抑制することが可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマー及び平均粒子径1μm以下の無機フィラーを含み、ポリアミドが相対粘度の異なる2種以上のポリアミド混合物である樹脂組成物であって、樹脂組成物中のすべてのポリアミドのうち、相対粘度の高いポリアミドの量が相対粘度の低いポリアミドの量より多いことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐衝撃性と押出性に優れ、且つ押出加工時のダイにおける目ヤニの発生が大幅に抑制できるポリフェニレンエーテル、ポリアミド、エラストマー及び無機フィラーを含む樹脂組成物に関する。また本発明はそれからなるシート及び成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されている。しかしながら、単独では成形加工性に劣っており、これを改良するためにポリアミドを配合する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
ポリフェニレンエーテルにポリアミドを配合してなるポリアミド/ポリフェニレネーテルアロイ系樹脂組成物は優れた流動性や高い耐衝撃性を有するため、非常に幅広い用途で使用されており、近年では、射出成形用途に限らず、押出成形用途にも使用される事が多くなってきている。
【0003】
押出成形用ポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイの従来の技術としては、高い分子量のポリフェニレンエーテルと高い分子量のポリアミドとの組み合わせを使用することによって、押出成形に適した組成物を得る技術等の開示がある(例えば、特許文献2参照。)。
熱可塑性樹脂、特にエンジニアリングプラスチックの押出においては、現在もなお、種々の問題点を有している。
例えば、押出加工時のダイのノズル付近に発生する「目ヤニ」と呼ばれる炭化物がその一つである。ノズル部に発生する目ヤニは、押出量とともに成長し、所定時間後にノズルから脱離して製品中に混入する。混入した炭化物は成形品中にまで混入し、成形品の外観を大きく悪化させるため、根本的な解決が望まれていた。
【0004】
この現象を抑制する為には、押出加工における溶融樹脂温度を低下させ、押出加工時に分解物等の発生を抑制することが重要である。そのためには、通常、押出機のスクリュー回転数を落とす等という対応がとられる。
この現象は、ポリアミド/ポリフェニレンエーテル樹脂組成物においても同様であり、特に押出品がそのまま製品となるシート押出成形やブロー押出成形等においてより大きな問題点となっている。
更に、ポリアミド/ポリフェニレンエーテル組成物の場合は、反応系ポリマーアロイであるため、上述したような押出時のスクリュー回転数をおとすという対応をとると樹脂組成物の耐衝撃性が低下するという別の問題点が発生する。
すなわち、特に押出成形を行う用途において、耐衝撃性と目ヤニの生成の抑制が非常に重要であり、特許文献2に示したような技術では解決し得ないのが実状であった。
【特許文献1】特公昭45−997号公報
【特許文献2】特開平8−034917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐衝撃性を維持しつつ、押出加工時の目ヤニの生成を大幅に抑制した組成物を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、相対粘度の異なる複数のポリアミドを用い、かつ該ポリアミド混合物中におけるポリアミド混合比率を最適にし、粘度上昇剤としての無機フィラーを使用することにより上述した課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマー及び平均粒子径が1μm以下の無機フィラーを含み、ポリアミドが相対粘度の異なる2種以上のポリアミド混合物である樹脂組成物であって、樹脂組成物中のすべてのポリアミドのうち、相対粘度の高いポリアミドの量が相対粘度の低いポリアミドの量より多いことを特徴とする樹脂組成物に関する。また、本発明は該樹脂組成物よりなるシート及び成形体にも関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性を維持しつつ、押出加工時の目ヤニの生成を大幅に抑制した樹脂組成物、並びにそれからなるシート及び成形体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、上述の通り、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマー及び平均粒子径が1μm以下の無機フィラーを含み、ポリアミドが相対粘度の異なる2種以上のポリアミド混合物である樹脂組成物であって、樹脂組成物中のすべてのポリアミドのうち、相対粘度の高いポリアミドの量が相対粘度の低いポリアミドの量より多いことを特徴とする樹脂組成物に関するものである。
以下、本発明で使用することのできる各成分について詳細に説明する。
本発明においては、ポリアミドは、相対粘度(ηr)の異なる2種以上のポリアミド混合物である必要があり、更には、樹脂組成物中のすべてのポリアミドのうち、ηrの高いポリアミドの量がηrの低いポリアミドの量より多い事が必要である。
【0009】
本発明でいうηrとは、JIS K6920−1:2000に準拠して測定した値である。具体的には、98%濃硫酸に、1g/100cmの濃度でポリアミドを溶解し、オストワルド型粘度計により25℃で測定した流下時間をt、98%濃硫酸単体の25℃での流下時間をtとして、
ηr=t/t
で示される値である。
更に、本発明においては、ポリアミド混合物のηrは、3.3〜5.0の範囲内であることが望ましい。より好ましくは3.8〜4.8であり、最も好ましくは4.0〜4.5である。
【0010】
樹脂組成物の生産性を落とさない為には、ポリアミド混合物のηrは5.0を超えないことが望ましく、衝撃性を低下させない為には3.3を下回らないことが望ましい。
本発明におけるポリアミド混合物のηrは、組成物中に含まれるポリアミド成分を分離して測定する方法、もしくは、原料とするポリアミド成分をηrを測定する濃度(1g/100cm)の溶液として、それらを配合比に応じて混合した混合溶液を実測する方法で知ることができる。
本発明においては、ηrの低いポリアミドとηrの高いポリアミドを特定量比で混合することが重要である。
【0011】
こうすることにより得られるポリアミド混合物のηrと同じηrを有するポリアミドを単独で使用する場合に比較して、明らかな効果を有する。具体的には、同条件で押出加工する際の樹脂温度を大幅に抑制でき、加工時の目ヤニの生成を大幅に抑制し、組成物の耐衝撃性を飛躍的に向上させることができるようになる。
本発明のポリアミド混合物を形成しうる2種以上のポリアミドのうちηrの高いポリアミドの好ましいηrは、3.5を超え6.0以下であることが望ましい。より好ましくは4.0以上6.0以下の範囲内であり、更には、4.0以上5.0以下の範囲内が最も好ましい。また、ηrの低いポリアミドの好ましいηrは2.0以上3.5以下の範囲内である事が望ましく、より好ましくは、2.0以上3.0以下の範囲であり、更には2.5以上3.0以下の範囲である。
【0012】
本発明における、ηrの低いポリアミドとηrの高いポリアミドの配合比は、ηrの高いポリアミドの量がηrの低いポリアミドの量より多ければ特に制限はないが、好ましくはηrの高いポリアミド量に対するηrの低いポリアミドの量の比が1を下回ることが望ましい。より好ましくは、0.1〜0.9の比であり、更に好ましくは0.2〜0.7の範囲である。
また、ポリアミド混合物として3種以上を用いた場合は、ηr3.5を境として3.5未満のものを低ηrポリアミド、3.5を超えるものを高ηrポリアミドに分類する。
本発明で使用することのできるポリアミドの種類は、ポリマー繰り返し単位中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
【0013】
一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
上記ジアミンとしては大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンが挙げられる。
【0014】
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、1,1,3−トリデカンニ酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
ラクタム類としては、具体的にはε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
【0015】
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸は、単独あるいはニ種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。
特に本発明で有用に用いることのできるポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン),6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6・6/6・T、ポリアミド6・6/6・I、ポリアミド6/6・T/6・I、ポリアミド6・6/6・T/6・I、ポリアミド6/12/6・T、ポリアミド6・6/12/6・T、ポリアミド6/12/6・I、ポリアミド6・6/12/6・Iなどが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/6・6及び、それらの混合物であり、最も好ましくはポリアミド6である。
【0016】
ポリアミドの末端基は、官能化ポリフェニレンエーテルとの反応に関与する。ポリアミド樹脂は末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、一般的にカルボキシル基濃度が高くなると、耐衝撃性が低下し、流動性が向上し、逆にアミノ基濃度が高くなると耐衝撃性が向上し、流動性が低下する。
本発明においては、アミノ基/カルボキシル基濃度比で、1.0〜0.1の範囲内のものが好ましく使用可能である。より好ましいアミノ基/カルボキシル基濃度比は0.8〜0.2の範囲内であり、更に好ましくは0.6〜0.3の範囲内である。
加工条件による粘度の変化を抑制するためには、アミノ基/カルボキシル基濃度比が実質的に1.0を超えないようにすることが望ましい。また、耐衝撃性の低下を抑制するためには、アミノ基/カルボキシル基濃度比を0.1以上とすることが望ましい。
【0017】
また、本発明において、ポリアミドとしてポリアミド混合物を用いる場合は、用いるポリアミドの全ての末端基濃度比が上述の範囲内であることが好ましい。
これらポリアミド樹脂の末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
また、本発明においては、ポリアミド樹脂の耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
【0018】
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl 、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルカリ金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤および、又はアルカリ金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、合計量としてポリアミド樹脂の100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
これらの添加方法は、特に制限はないが、重合時にモノマーと共存させて重合しても、押出加工時に固体あるいは、水等に溶解した液体として加えても構わない。
【0019】
また、本発明においては、上述した金属系安定剤の他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。有機安定剤の例としては、イルガノックス1098等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
これら有機安定剤の中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用がより好ましい。これら有機安定剤の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂の100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
さらに、上記の他にポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等もポリアミド100質量部に対して10質量部以下の量で添加してもかまわない。
本発明で使用できるポリフェニレンエーテルとは、式(1)の構造単位からなる、ホモ重合体及び/または共重合体である。
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、Oは酸素原子、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第ニ級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
【0022】
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
【0023】
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
【0024】
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
本発明においては、ポリフェニレンエーテルの一部又は全部が変性したものであっても構わない。ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素ニ重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指し、国際公開特許WO02/094936号公報に記載されてある変性されたポリフェニレンエーテルはすべて使用可能である。
【0025】
この場合における混合されたポリフェニレンエーテルにおける変性されたポリフェニレンエーテルの量比に特に制限はないが、好ましくは、10〜95質量%(すべてのポリフェニレンエーテルを100%とした場合)であり、より好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは45〜85質量%である。
また、本発明では、スチレン系熱可塑性樹脂をポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対し、50質量部未満の量であれば配合しても構わない。
本発明でいうスチレン系熱可塑性樹脂とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
【0026】
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部以下である。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部以下の量で添加しても構わない。
本発明で用いることができるエラストマーに関しては特に制限はないが、好ましく使用できるものとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体と略記)である。
【0027】
ここでいう芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0028】
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(a)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(b)がa−b型、a−b−a型、a−b−a−b型のから選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
これらの中でもa−b−a型、a−b−a−b型がより好ましく、更にはa−b−a型が最も好ましい。
【0029】
結合形式の異なるブロック共重合体混合物の好ましい混合形態は、a−b−a型ブロック共重合体とa−b型ブロック共重合体の混合物、a−b−a型とa−b−a−b型ブロック共重合体の混合物、a−b−a−b型とa−b型のブロック共重合体の混合物等が挙げられる。
また、本発明で使用することのできるブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族ニ重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上であり、より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0030】
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
また、本発明においては、国際公開特許WO02/094936号明細書に記載されてあるような、全部又は一部が変性されたブロック共重合体や、オイルがあらかじめ混合されたブロック共重合体も好適に使用することができる。
本発明において、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルおよびエラストマーの各量比は、これら3成分の合計を100質量部とした際に、ポリアミド30〜60質量部、ポリフェニレンエーテル30〜60質量部およびエラストマー5〜30質量部の範囲であることが望ましい。より好ましくは、ポリアミド35〜60質量部、ポリフェニレンエーテル35〜60質量部およびエラストマー5〜20質量部の範囲であり、最も好ましくは、ポリアミド40〜60質量部、ポリフェニレンエーテル40〜60質量部およびエラストマー5〜20質量部の範囲である。
【0031】
さらに、本発明においては、平均粒子径が1μm以下の微粒子の無機フィラーを添加することが必須である。本発明における微粒子無機フィラーを添加する主たる目的は、機械的特性の向上ではなく、樹脂組成物の溶融粘度の向上である。
好ましい無機フィラーの種類としては、チタン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびケイ素から選ばれる金属の酸化物又は硫化物の少なくとも1種以上である無機フィラーが挙げられる。更に詳しくは、ニ酸化チタン、酸化ケイ素、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛および硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1種以上である無機フィラーである。これらの中でも好ましいものとしては、二酸化チタンおよび酸化亜鉛が挙げられ、最も好ましくはニ酸化チタンである。ニ酸化チタンは、アルミナ・シリコン化合物及びまたはポリシロキサンで表面処理された処理済みニ酸化チタンでもよく、この場合の二酸化チタンとしての含有量は、90〜99質量%の範囲であり、より好ましくは93〜98質量%の範囲内である。この場合、表面処理剤は、二酸化チタン量として含めない。
【0032】
無機フィラーの平均粒子径は、1μ以下である必要がある。下限値は特にないが、好ましくは100nm以上である。更に好ましくは平均粒子径として100〜500nmの範囲内であり、最も好ましくは200nm〜400nmの範囲内である。平均粒子径が1μmを超えると、樹脂組成物の溶融粘度の向上効果が低くなる。
本発明でいう平均粒子径とは、遠心沈降法で得られた測定値であり、重量メディアン径のことを指す。このときの無機フィラーを分散させる溶媒は、無機フィラーの種類により適宜選択されるべきであるが、たとえばニ酸化チタンの場合では、ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を用いる。
【0033】
本発明においては、無機フィラーの好ましい添加量は、樹脂組成物の溶融粘度を上昇させるのに充分な量である。溶融粘度は、例えばシート等を真空成形する際に必要となる特性で、射出成形用途等と異なり、比較的高い溶融粘度のものが真空成形性に優れる傾向にある。すなわち、真空成形等の用途に用いる場合は、溶融粘度は高い方が好ましい。
ここでいう樹脂組成物の溶融粘度とは、例えばキャピラリーフローテスターを用いて樹脂組成物の融点以上の温度で、せん断速度30(秒−1)で測定した溶融粘度[η]のことを指し、溶融粘度の上昇とは、無機フィラーを配合しない樹脂組成物の[η]を100%とした場合、無機フィラーを配合した後の[η]が10%上昇する事を言う。
【0034】
具体的な無機フィラーの添加量としては、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマーの合計100質量部に対して、約1〜約20質量部の範囲である。より好ましくは1.5〜15質量部、更に好ましくは2〜10質量部であり、最も好ましくは3〜6質量部である。溶融粘度を向上させる効果を示す為には少なくとも1質量部以上程度の添加量が望ましく、良好な衝撃特性を維持するには20質量部以下程度の添加量が望ましい。
また、本発明においては、相溶化剤を使用しても構わない。本発明で、使用することが可能な相溶化剤は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良するものであれば特に制限はない。本発明で使用できる相溶化剤とは、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドまたはこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指すものである。この相互作用は化学的(たとえばグラフト化)であっても、または物理的(たとえば分散相の表面特性の変化)であってもよい。
いずれにしても得られるポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物は改良された相溶性を示す。
【0035】
本発明において使用することのできる相溶化剤の例としては、特開平8−8869号公報及び特開平9−124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、マレイン酸またはその誘導体、クエン酸またはその誘導体、フマル酸またはその誘導体、及びこれらによりあらかじめ変性されたポリフェニレンエーテルペレットが挙げられる。
本発明における相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100質量部に対して0.01〜25質量部である。より好ましくは、0.05から10質量部、最も好ましくは、0.1〜5質量部である。
【0036】
本発明では、上記した成分のほかに、本成分の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。これら付加的成分の添加量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマー及び無機フィラーを合計量を100質量部としたとき、15質量部を超えない範囲であることが望ましい。
付加的成分の例としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂、無機フィラーと樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック等の着色剤、カーボンファイバー、帯電防止剤、導電性フィラー、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
【0037】
本発明の樹脂組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が最も好ましい。
具体的な樹脂組成物の製造方法としては、上流側に1カ所及び下流側に少なくとも1カ所の供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口よりポリフェニレンエーテル及び/または官能化ポリフェニレンエーテル、エラストマー、必要に応じて相溶化剤、ポリスチレン等を供給し、溶融混練した後、下流側供給口よりポリアミド、必要に応じてエラストマーを添加し、溶融混練する方法等が挙げられる。
【0038】
この際の押出機のスクリュー径としては特に制限はないが、好ましいのは約20mm以上約200mm以下である。より好ましくは、約40mm以上約125mm以下であり、最も好ましいのは約50mm以上約100mm未満である。
また、押出機のL/Dは約20以上約60未満が好ましく、約30以上約60未満がより好ましく、約40以上約60未満が最も好ましい。ここでいうL/Dとは、押出機のスクリューの長さ[L]をスクリューの直径[D]で除した値である。
押出機における下流側供給口の好ましい位置は、第一の下流側供給口が押出機の上流側供給口の位置を起点とし、シリンダー長さを100とした際に、約30〜約70の範囲内の位置である。
【0039】
溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常約260〜約340℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。好ましくは約270℃〜約330℃の範囲内であり、特に下流側供給口までを約300℃〜約330℃とし、下流側供給口以降を約270〜約300℃の範囲内とする事が望ましい。しかしながら、これら設定温度は、スクリューデザインによって設定を変更する必要がある。混練の弱いスクリューデザインにおいては、上述の設定温度よりも若干高めに設定される場合があり、一方混練の強いスクリューデザインの場合は若干低めに設定されることがある。本発明においてはシリンダー設定温度は参考値であり、シリンダー設定温度よりは樹脂温度で管理した方が望ましい。
【0040】
組成物の押出時における樹脂温度は、シリンダー設定温度・スクリュー回転数・樹脂の供給量・スクリューデザイン等々の因子による影響を受ける。
しかし、本発明の樹脂組成物のように、ηrの異なる2種以上のポリアミドを用いて、かつ、ηrの高いポリアミドの量がηrの低いポリアミドの量より多い組み合わせを採用する事により、樹脂温度を低減することが可能となる。
本発明においては、好ましい樹脂温度は300〜340℃の範囲内であり、より好ましくは320〜335℃である。押出加工時の目ヤニの発生を抑制するためには、組成物の溶融混練時の樹脂温度が340℃を超えないように調整することが望ましい。ここでいう樹脂温度とは、押出加工時において、ダイ等から押出されてくる溶融樹脂の温度を接触式熱電対等の温度計で実測した温度である。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、射出成形・押出成形・ブロー成形・インフレーション成形等の2次加工に使用することができる。これらの中でも、特に射出成形及び押出成形に適する。
押出成形の中でも、特にシート押出やフィルム押出に適する。これらシート押出やフィルム押出に使用される押出機等に特に制限がなく、単軸押出機や二軸押出機でも構わない。また、複数の押出機を使用する、2層から7層程度の多層ラミネートフィルム押出にも適する。
【0042】
これら押出成形におけるシリンダー設定温度は、樹脂の溶融温度以上であれば、特に問題はないが、具体的には、220℃〜320℃の範囲内である。より好ましくは、250℃〜300℃の範囲内である。生産性を保つ為には220℃以上の設定温度で押出加工することが望ましく、フィルムやシートの外観悪化を抑制する為には、320℃以下の設定温度で押出加工することが望ましい。
本発明の樹脂組成物を用いてシート・フィルムを作成する場合の好ましいシート・フィルム厚みは50μm〜3mmである。より好ましくは100μm〜1mm、更に好ましくは、200μm〜700μmである。
【0043】
また本発明の樹脂組成物より作成されたフィルム・シートは、真空成形、圧空成形、プレス成形等により、種々の形状に加工することが可能である。
これら真空成形・圧空成形・プレス成形等により得られる成形体は、各種用途に使用可能である。具体的には各種機械やコンピューター等の電子機器のハウジング、車両内外装部品(フロントグリル、ヘッドライトハウジング、リアスポイラー、サイドスポイラー、ダッシュボード等)、エンジンルーム内部品(バッテリーカバー等)、塗装用マスキング部品、産業用トレー、電子部品搬送用トレー、自動販売機対応トレー、スライドブリスター等が挙げられる。これらの中でも、車両内外装部品(フロントグリル、ヘッドライトハウジング、リアスポイラー、サイドスポイラー、ダッシュボード等)、エンジンルーム内部品(バッテリーカバー等)、塗装用マスキング部品に特に適している。
以下、本発明を実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0044】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[例1〜3(本発明)及び例A〜C(比較例)]
上流側供給口に1箇所と下流側に1箇所の供給口を有するL/Dが48のZSK40SC[コペリオン社製(ドイツ国)バレル数:12バレル(1バレルあたりのL/Dは4)、上流側供給口:第1バレル、下流側供給口:第8レル、減圧吸引で揮発成分除去を行う為のベントポート:第5バレル及び第10バレル]の最高シリンダー温度を320℃に設定した。
【0045】
上流側供給口よりポリフェニレンエーテル[S201A:旭化成ケミカルズ(株)製](以下、単にPPEと略記)、エラストマー[クレイトンG1651:クレイトンポリマーズ(株)製](以下、単にSEBSと略記)及び、相溶化剤[無水マレイン酸:三菱化学(株)製](以下、単にMAHと略記)を供給し、第一下流側供給口よりポリアミド6[ηr=2.71のPA6,(末端アミノ基濃度[NH])/(末端カルボキシル基濃度[COOH])=0.61](以下、単にPA6aと略記)、ポリアミド6[ηr=4.9のPA6,(末端アミノ基濃度[NH])/(末端カルボキシル基濃度[COOH])=0.93](以下、単にPA6bと略記)及び、ポリアミド6[ηr=4.30のPA6,(末端アミノ基濃度[NH])/(末端カルボキシル基濃度[COOH])=1.09](以下、単にPA6cと略記)と無機フィラーとしてのニ酸化チタン[ヘキサキサメタリン酸ナトリウム0.05質量%水溶液中に0.02g/cm濃度でニ酸化チタンを分散させ、遠心沈降法により測定した重量メディアン径が240nmであるルチル型二酸化チタン](以下、単にフィラー1と略記)、及び無機フィラーとしてのタルク[ヘキサキサメタリン酸ナトリウム0.05質量%水溶液中に0.02g/cm濃度でタルクを分散させ、遠心沈降法により測定した重量メディアン径が3.2μmであるタルク](以下、単にフィラー2と略記)を、それぞれ表1に示す割合で供給し、溶融混練し、ストランドを水冷し、ペレタイズした。
【0046】
この時、スクリュー回転数は300rpm、供給樹脂量は45kg/hであり、第5バレル及び第10バレルからは揮発成分を除去するため減圧吸引を実施した。
この時、ダイから出てきた溶融樹脂の温度を、接触式熱伝対を用いて測定し、押出時のモーターのトルクを記録した。それぞれモータートルクは、モーター定格能力を100%とした相対値で表した。同じ吐出量で比較した時のモータートルクが低いほど、時間あたりの生産量を大きくする事が可能となる。この時得られた樹脂温度とモータートルクを、それぞれ、「押出時の樹脂温度」及び「押出時のトルク」として、表1に記載した。
得られたペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製:IS80EPN)を用いて、溶融樹脂温度290℃、金型温度90℃で、ISO294−1に記載されている多目的試験片及び、150mm×150mm×2mmの平板状成形片を成形し、アルミ防湿袋中にて23℃で48時間静置した。
【0047】
次に、多目的試験片の両端を切り取った試験片を用いて、ISO179−1993に従いエッジワイズ方向のアイゾッド衝撃強さを測定した。
また、多目的試験片の一部を使い、レオメーターを用いて1ラジアン/秒の周波数で、280℃における線形領域内での複素粘度[η*]を測定した。この時、用いたジオメトリーは、25mm直径のパラレルプレートである。表1には「溶融粘度」としてその値を記載した。
また、押出開始から10分後の押出機ダイのノズル部分に生成した「目ヤニ」の発生量を目視で確認し、以下の判定基準に基づき評価した。表1には「目ヤニ発生状況」として結果を記載した。
【0048】
A:目ヤニの生成が全く見られない。
B:ノズル部に目ヤニの発生は見られるが、脱離した目ヤニはない。
C:多量に目ヤニが発生しており、一部はペレット中に混入した。
本発明の樹脂組成物である例1(実施例)と例B(比較例)は、ポリアミドのηrはほぼ同じであるが、目ヤニの発生状況及び耐衝撃性に明確な違いが見られる。また、押出時の樹脂温度も約30℃も異なり、本発明の組成物が生産性と物性に優れていることが判る。
一方、例1と例A(比較例)の対比では、無機フィラーの有無のみの違いであるが、無機フィラーがないことにより溶融粘度が大幅に低下していることが判る。
例C(比較例)は、無機フィラーを変更したものである。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性と押出性に優れ、且つ押出加工時のダイにおける目ヤニの発生が大幅に抑制できる樹脂組成物であるため、種々の用途への展開可能である。特に押出成形に適しており、押出成形の中でも、シート押出やフィルム押出に適する為、得られたシート等は各種成形方法(真空成形・圧空成形等)を経て、様々な部品に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマー及び平均粒子径1μm以下の無機フィラーを含み、ポリアミドが相対粘度の異なる2種以上のポリアミド混合物である樹脂組成物であって、樹脂組成物中のすべてのポリアミドのうち、相対粘度の高いポリアミドの量が相対粘度の低いポリアミドの量より多いことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド、ポリフェニレンエーテルおよびエラストマーの量比が、これら3成分の合計を100質量部とした際に、ポリアミド30〜60質量部、ポリフェニレンエーテル30〜60質量部およびエラストマー5〜30質量部であり、無機フィラーが樹脂組成物の溶融粘度を上昇させるのに充分な量である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
無機フィラーの量が、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルおよびエラストマーの合計100質量部に対して、1〜20質量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
無機フィラーの量が、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、およびエラストマーの合計100質量部に対して、3〜6質量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
無機フィラーが、チタン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびケイ素から選ばれる金属の酸化物又は硫化物の少なくとも1種以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
無機フィラーが、酸化チタン、酸化ケイ素、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛および硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
無機フィラーの平均粒子径が、100〜500nmの範囲内である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ポリアミド混合物の相対粘度が、3.3〜5.0である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
相対粘度の高いポリアミドの相対粘度が、3.5を超え6.0以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
相対粘度の低いポリアミドの相対粘度が、2.0以上3.5以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
押出成形用樹脂組成物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
シート押出用樹脂組成物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の樹脂組成物よりなるシート。
【請求項14】
請求項1に記載の樹脂組成物よりなる、厚みが100μm〜1000μmのシート
【請求項15】
請求項1に記載の樹脂組成物を、シート押出する事により得られるシート。
【請求項16】
請求項13〜15に記載のシートを、真空成形してなる成形品。
【請求項17】
請求項13〜15に記載のシートを、真空成形してなる自動車塗装マスキング用途成形体。

【公開番号】特開2006−152019(P2006−152019A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340395(P2004−340395)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】