説明

樹脂組成物

【課題】機械的強度及び接着性に優れた樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)ゴム状重合体、(B)熱可塑性樹脂、(C)熱可塑性樹脂単位とポリエーテル単位との共重合体および(D)架橋剤を含む樹脂組成物組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは、接着剤による接着性、あるいはポリウレタンに対する接着性に優れた樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル架橋性エラストマーとPP等のラジカル架橋性のない樹脂とをラジカル開始剤の存在下、押出機中で溶融混練させながら架橋する、いわゆる動的架橋による熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このような熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とオレフィン系樹脂との動的架橋技術により製造されたオレフィン系エラストマー(例えば、特許文献1及び2参照。)が知られているが、接着性に乏しく、他のプラスチックス材料と接着剤を介して接着させるグリップ等の用途、あるいは、自動車内装用途等のポリウレタンに接着が必要な分野等には、必ずしも満足されていない。
【0003】
一方、ゴムとオレフィン系プラスチックと不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体との動的架橋技術で製造された熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献3参照。)が開示されているが、機械的強度、接着性が必ずしも充分でない。
また芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロックを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる熱可塑性ブロックと、熱可塑性ポリウレタンブロックからなるブロック共重合体またはそれを含有した熱可塑性重合体(例えば、特許文献4〜6参照。)が開示されているが、熱可塑性エラストマー組成物への適用による接着性改良技術については開示されていない。
【0004】
これら接着性を改良した、ポリプロピレン樹脂、水素添加スチレンブタジエンランダム共重合体ゴム、プロセスオイル、エチレン・オクテン共重合体、接着改良剤として酸変性ポリプロピレンや水酸基含有ポリプロピレンなどからなる熱可塑性エラストマー組成物(例えば、特許文献7参照。)、あるいは、結晶性プロピレン系重合体、フィラー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸または水酸基含有無水マレイン酸誘導体がグラフトした変性プロピレン系樹脂、末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物からなるプロピレン系樹脂組成物(例えば、特許文献8参照。)が開示されているが、架橋された熱可塑性エラストマーに関する接着改良技術については開示されていない。
【特許文献1】特開平8−120127号公報
【特許文献2】特開平9−137001号公報
【特許文献3】特公平8−5999号公報
【特許文献4】特開平11−302495号公報
【特許文献5】特開2002−105278号公報
【特許文献6】特開2002−179906号公報
【特許文献7】特開2000−204207号公報
【特許文献8】特開平8−3394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち機械的強度及び接着性に優れた架橋された樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は架橋された樹脂組成物の改良を鋭意検討した結果、特定の構造を含有するブロック共重合体を用いることにより、驚くべきことに機械的強度及び接着性が飛躍的に向上する事を見出した。
即ち本発明は、
1. (A)ゴム状重合体、(B)熱可塑性樹脂、(C)熱可塑性樹脂単位とポリエーテル単位との共重合体および(D)架橋剤を含むことを特徴とする樹脂組成物、
2. (A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、(A)成分が1〜99重量部であり、さらに(C)成分1〜100重量かつ(D)成分0.001〜10重量部である上記1に記載の樹脂組成物、
3. (A)成分が、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有するエチレン・α−オレフィン共重合体及び/または共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、あるいは共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムである上記1または2に記載の樹脂組成物、
4. (A)成分の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム及び/または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムの全二重結合の水素添加率が、50%以上である水素添加ゴムである上記3に記載の樹脂組成物、
5. (A)成分のエチレン・α−オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造されたものである上記3または4に記載の樹脂組成物、
6. (B)成分が、オレフィン系樹脂である上記1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物、
7. (C)成分の熱可塑性樹脂単位がオレフィン系樹脂であり、ポリエーテル単位がポリアルキレンエーテルである上記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物、
8. (C)成分の熱可塑性樹脂単位がポリプロピレン系樹脂であり、ポリエーテル単位がポリエチレングリコールである上記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物、
9. (C)成分の共重合体が、ブロック共重合体である上記1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物、
10. (A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、さらに(E)軟化剤5〜500重量部を含有する上記1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
11. (A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、さらに(F)ポリオルガノシロキサン0.01〜20重量部を含有する上記1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はポリウレタンとの接着性に優れる樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
(A)成分
本発明において、(A)成分であるゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましく、このようなゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム及びエチレン−プロピレ共重合体ゴム、エチレン−プロピレンン−ジエンモノマー三元共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−オクテン共重合体ゴム等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
また(A)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50から120である。
【0009】
本発明において(A)成分のゴム状重合体の中で好ましい共重合体の一つはエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。また(A)成分は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が好ましく、とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
【0010】
本発明において(A)成分のエチレン・α−オレフィン共重合体は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
本発明において用いられる(A)成分の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率が60重量%を越えると、組成物の硬度、引張強度等の低下が大きく、一方、1重量%未満では柔軟性、機械的強度が低下する。
【0011】
(A)成分の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するオレフィン系エラストマーを用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低いエラストマー組成物を得ることができる。
本発明にて用いられる(A)成分の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエラストマーを得ることができる。長鎖分岐を有するオレフィン系エラストマーとしては、USP5278272等に記載されている。
【0012】
また、(A)成分の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、室温以上にDSCの融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明にて用いられる(A)成分のメルトインデックスは、流動性および加工性の観点から0.01g/10分以上、組成物の架橋性の観点から100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212Pa))以下の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。
本発明において、(A)成分のもう一つの好ましい上記水素添加共重合体は、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムである。さらに、ランダム共重合体の全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加ゴムが好ましく、とりわけ主鎖および側鎖に二重結合を有する重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴムであることが特に好ましい。
【0013】
上記水素添加ゴムにおいて、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体を共重合することができる。
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
【0014】
また前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
(A)成分としての水素添加共重合体において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、またはビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体または前記共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を含む場合は、上記共役ジエン単量体部分の中でランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体またはその他の単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
【0015】
上記水素添加ゴム中の全オレフィン性二重結合は50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下であることが好ましい。このようなゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0016】
このような水素添加ゴムは、上述のゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hung Yu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルト−有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケル−有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
【0017】
また、水素添加ゴムの25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
そして、水素添加ゴムは結晶性を有することが好ましく、その結晶性の指標である吸熱ピーク熱量の制御は、テトラヒドロフラン等の極性化合物の添加または重合温度の制御により行う。吸熱ピーク熱量の低下は、極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させて、1,2−ビニル結合を増大させることにより達成される。
本発明にて用いられる(A)成分は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0018】
本発明において、(A)成分中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
本発明において(A)成分中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
【0019】
(B)成分
本発明において、(B)成分の熱可塑性樹脂は(A)成分と分散し得るものであればとくに制限はない。たとえば、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。特に熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂が好ましい。
本発明において、上記(B)成分はエチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂であり、特にプロピレン系樹脂が好ましい。
【0020】
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む)等が挙げられる。
本発明において、(B)成分の中でも、(B−1a)架橋型オレフィン系樹脂であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂単独または、(B−1a)と(B−1b)分解型オレフィン系樹脂であるプロピレン系ブロック共重合樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
【0021】
(B−1a)成分として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B−1b)成分はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B)は複数個の(B−1a)成分および(B−1b)成分の組み合わせでも良い。(B−1a)成分の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler−Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0022】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1号明細書または米国特許5198401号明細書に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、流動性および成形加工性の観点から0.1以上、組成物の耐熱性および機械的強度の観点から100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))以下の範囲のものが好ましく用いられる。 本発明において、(A)と(B)からなるゴム組成物100重量部中の(A)は組成物の機械的強度、柔軟性の観点から1重量%以上、組成物の熱可塑性の観点から99重量%以下が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%、最も好ましくは20〜80重量%である。
【0023】
(C)成分
(C)成分は熱可塑性樹脂単位とポリエーテル単位とからなる共重合体である。熱可塑性樹脂単位は(A)及び(B)成分と相溶し、ポリエーテル単位はポリウレタンとの接着性するための成分であり、それぞれを単独で用いた場合には、ポリウレタンとの接着また(A)及び(B)成分とは相溶せず、本願の目的は達成されない。
(C)成分は熱可塑性樹脂単位とポリエーテル単位とが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。
熱可塑性樹脂単位としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体およびスチレン−メタクリル 酸メチル−アクリロニトリル共重合体、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリウレタンなどが挙げられる。
これらのうち、オレフィン系樹脂、ポリアミドが好ましく、とりわけオレフィン系樹脂が好ましい。
【0024】
(C)成分を構成するオレフィン系樹脂としては、カルボニル基や水酸基、またはアミノ基をポリマーの両末端あるいは片末端に有するオレフィン系樹脂が使用できる。変性のし易さからカルボニル基を有するオレフィン系樹脂が好ましい。
(C)成分を構成するポリエーテル単位としては、ポリエーテル、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン及びこれらの変性物が使用できる。
ポリエーテルジオールの場合は、ジオールにアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造することができる。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド (エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が用いられるが、必要 により他のアルキレンオキサイド又は置換アルキレンオキサイドが用いられる。アルキレンオキサイドとして好ましいものは、エチレンオキサイド単独及びエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用(ブロック及び/又はランダム付加)である。アルキレンオキサイドの付加は、公知の方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の 温度で行なうことができる。
【0025】
ポリエーテルのMnは、通常150〜20,000であり、耐熱性の観点から、好ましくは300〜20,000、さらに好ましくは1,000〜15,000、特に好ましくは 1,200〜8,000である。
また、(C)成分の熱可塑性樹脂単位がポリアミドであるポリエーテルエステルアミドでもよい。この場合には、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミドと数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキシド付加物から誘導される。
(C)成分の中でも好ましい共重合体は熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、ポリエーテルがポリエチレングリコールである。
【0026】
本発明における(C)成分の製造法は、特に制限はされないが、熱可塑性樹脂単位がオレフィン系樹脂の場合には、特開2001−278985号公報、特開2003−048990号公報に開示されている。例えば、酸変性ポリプロピレンとポリエチレングリコールとを重合することにより製造することができる。また、熱可塑性樹脂単位がポリアミドの場合には、特開平5−140541号公報、特開平7−10989などに開示されている。例えば、ポリアミドオリゴマーとビスフェノールAエチレンオキサイド付加物とを減圧下の条件で5時間重合することで製造することができる。
(C)成分は、1〜100重量部が好ましく、更に好ましくは1〜50重量部、最も好ましくは2〜30重量部である。
本発明の樹脂組成物を構成する(C)成分の熱可塑性樹脂単位は(D)成分により架橋された(B)成分の熱可塑性樹脂と分散・相溶し、また(C)成分のポリエーテル単位はポリウレタンと化学的に結合し、ポリウレタンに対して優れた接着力を示す。
【0027】
(D)成分
本発明の組成物は(D)成分の架橋剤で架橋される。(D)成分は(D−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(D−2)多官能単量体、(D−3)単官能単量体を含有する。上記(D)成分の添加量は(A)と(B)成分の合計100重量部に対し、架橋性の観点から0.001重量部以上、組成物の外観及び機械的強度の点から10重量部以下、好ましくは0.005〜3重量部である。
ここで、(D−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、の具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類が挙げられる。
【0028】
また、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類が挙げられる。
【0029】
さらにまた、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
【0030】
上記(D−1)成分は、(D)成分中で好ましくは架橋性の観点から1重量%以上、機械的強度の点から80重量%以下、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。
本発明において、(D−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基がこのましい。官能基の数は2以上であるが、(D−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0031】
上記(D−2)成分は(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。
本発明において用いられる前記(D−3)成分は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
上記(D−3)成分は(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。
本発明において、最も好ましい(D)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン( 商品名パーヘキサ25B)または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の(E)軟化剤が存在するときの軟化剤の保持性が優れている。
【0032】
(E)成分
上記(E)軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
これらの(E)成分は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)と(B)成分100重量部に対して、柔軟性、加工性の点から5重量部以上、オイルのブリードの難点から500重量部以下、好ましくは10〜150重量部用いる。
【0033】
本発明において、耐磨耗性が要求される場合は、必要に応じて、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3/sec)以上であるポリオルガノシロキサンを添加することができる。
上記(F)ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
本発明に用いられる(F)ポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10−3/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10−2/sec)以上1000万(10m/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m/sec)以上200万(2m/sec)未満である。
【0034】
本発明において、(F)成分の添加量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッキング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)と(B)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
【0035】
本発明の組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。本発明の組成物の好ましい製造法は、(A)、(B)及び(D)をよく混合して押出し機のホッパーに投入し溶融混合し、(C)を押出し機の途中から添加する方法、(D)を(A)、(B)とは別に押出機の途中から添加してもよい。また(E)を押出機の途中から添加してもよいし、最初と途中とに分けて添加してもよい。(A)と(D)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練する際に、前記(A)と(D)とが架橋反応し、さらに(E)軟化剤を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
【0036】
溶融押出機については、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィ−ド部とサイドフィ−ド部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニ−ディング部分を有し、上記ニ−ディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
また、本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、同方向回転押出機でも、異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いづれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
【0037】
具体的な製造方法として、例えば以下の混練度を満足する方法が好ましい。
M=(π/2)(L/D)D(N/Q)
10×10≦M≦1000×10
(但し、L:原料添加部を基点としてダイ方向の押出機長(mm)、D:押出機バレル内径(mm)、Q:吐出量(kg/h)、N:スクリュー回転数(rpm))
本発明において、もう一つの具体的な製造方法として、例えば以下の関係式の溶融温度を満足することが好ましい。即ち、溶融温度T2(℃)で、まず溶融混練し、次いで溶融温度T3(℃)で溶融混練し、とりわけ原料添加口を基点としてダイ方向に長さLを有する溶融押出機において、原料添加口から0.1L〜0.5Lの長さの押出機ゾーンを溶融温度T2(℃)で、まず溶融混練し、次いでその後の押出機ゾーンを溶融温度T3(℃)で溶融混練する。
【0038】
ここで、特にT1が150〜250℃であることが好ましく、溶融押出機の各ゾーンのT1またはT2は均一温度であっても良いし、または温度勾配を有していても良い。
T1:(D−1)の1分間半減期温度(℃)
T1−100<T2<T1+40
T2+1<T3<T2+200
また、先端部からの距離を異にする一箇所のメインフィ−ド部と複数箇所のサイドフィード可能な供給用部を有する押出機を用い、(A)、(B)、(D)を溶融混練して動的架橋する際に、(D)を複数箇所のフィード供給用部に分割してフィードすることが好ましい。
こうして得られた樹脂組成物は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、発泡成形等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
1.引張破断強度[MPa]
JIS K6251に準じ、23℃にて評価する。
2.硬度(JIS A)
JIS K6301に準じ、23℃にて評価する。
3.折り曲げ白化
熱可塑性エラストマー組成物を射出成形機にて成形し2mm厚みのプレートを作成する。これを手で折り曲げて白化の程度を観察する。白化しないものを○、白化したものを×とした。
【0040】
4.ポリウレタンに対する接着性
イソシアネート(三井武田ケミカル(株)コスモネ−ト、登録商標)とポリオール(三井武田ケミカル(株)アクトコール、登録商標)を、定法に従って計量・混合・攪拌後、本発明の樹脂組成物からなるプレートが配置された金型に投入し金型を閉じる。イソシアネートとポリオールとの重付加が充分に行われポリウレタンが生成すると同時に、ポリウレタンとプレートとが密着した試験片が得られる。これを金型から取り出し、1昼夜放置した後にプレートを剥離させて接着性を判断する。剥離後のプレート表面にポリウレタンが残ったものを接着性が良好と判断した。接着性が良好を○、不良を×とした。
【0041】
5.接着剤による接着性
市販のシアノアクリレート系接着剤を本発明の組成物からなるシートに塗布し、ABS製射出成形プレートを張り合わせる。1昼夜後、両者を剥離させ、材料破壊をしたものを接着性良好と判断した。接着性が良好を○、不良を×とした。
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いる。
A成分 (ゴム状重合体)
1)市販品のSEBSを使用した。旭化成ケミカルズ(株)製タフテック(SEBS)。
2)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−1)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)である。(TPE−1と称する)
3)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−2)
通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)である。(TPE−2と称する)
4)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)である。(TPE−3と称する)
【0042】
B成分 (熱可塑性樹脂)
市販のポリプロピレン樹脂を用いる。サンアロマー株式会社製PM900A
C成分 (ブロック共重合体)
改質剤−1:ペレスタット300(登録商標、三洋化成工業(株))
改質剤−2:ペレスタットNC6321(登録商標、三洋化成工業(株))
D成分 (架橋剤)
1)架橋開始剤(D−1)
日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン( 商品名パーヘキサ25B)(POXと称する)
2)多官能単量体(D−2)
日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
E成分 (パラフィン系オイル)
出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイル PW−90(MOと称する)
【0043】
[実施例1〜6および比較例1〜2]
表1に記載の組成物を、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機(40mmφ、L/D=47)を用いて200℃の温度条件で、下記の製造法で製造する。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いる。
このようにして得られた組成物から射出成形機を用いて、200℃で2mm厚のプレートを作製し、各種評価を行い、結果を表1に示す。
製造法(1):(A)(B)(D)の3成分をホッパーに投入後、押出機前段で溶融混練した後に、(C)と(E)をサイドフィードして組成物を得る。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の樹脂組成物は、優れた機械的強度及び接着性を有している。本発明の組成物は、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴム状重合体、(B)熱可塑性樹脂、(C)熱可塑性樹脂単位とポリエーテル単位との共重合体および(D)架橋剤を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、(A)成分が1〜99重量部であり、さらに(C)成分1〜100重量かつ(D)成分0.001〜10重量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有するエチレン・α−オレフィン共重合体及び/または共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、あるいは共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム及び/または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムの全二重結合の水素添加率が、50%以上である水素添加ゴムである請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分のエチレン・α−オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造されたものである請求項3または4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が、オレフィン系樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
(C)成分の熱可塑性樹脂単位がオレフィン系樹脂であり、ポリエーテル単位がポリアルキレンエーテルである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の熱可塑性樹脂単位がポリプロピレン系樹脂であり、ポリエーテル単位がポリエチレングリコールである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(C)成分の共重合体が、ブロック共重合体である請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、さらに(E)軟化剤5〜500重量部を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、さらに(F)ポリオルガノシロキサン0.01〜20重量部を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−8742(P2006−8742A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183821(P2004−183821)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】