説明

樹脂組成物

【課題】シリコーン系の消泡剤を用いることなく、印刷時の消泡性、レベリング性に優れ、基材との密着性、低反り性、可とう性、耐めっき性、はんだ耐熱性、高温高湿時の長期信頼性の優れた保護膜を与える熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱硬化性樹脂 20〜90質量%、(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子10〜80質量%、及び(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%を含む熱硬化性樹脂組成物であり、フッ素含有ポリエーテルが、フッ素化アルキルポリオキセタン構造のいずれかを含むポリマー、または該フッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むモノマーと炭素数2〜6の酸素原子を含むモノマーからなるコポリマーを含む組成物である熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系の消泡剤を用いることなく、印刷時の消泡性、レベリング性に優れ、基材との密着性、低反り性、可とう性、耐めっき性、はんだ耐熱性、高温高湿時の長期信頼性に優れたフレキシブル回路基板を与えるオーバーコート用ペースト状熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いたオーバーコート剤、該オーバーコート剤からなる表面保護膜、永久絶縁用保護膜用インキ、その硬化物、及び該硬化物を含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル配線回路の表面保護膜は、パターンに合わせた金型に、カバーレイフィルムと呼ばれる絶縁性の保護膜(ポリイミドフィルムなど)を接着剤を用いて張り付けるタイプや、可とう性を持たせた紫外線硬化型又は熱硬化型のオーバーコート剤をスクリーン印刷法により塗布するタイプのものが用いられており、特に後者の熱硬化型オーバーコート剤は作業性の点で優れている。
【0003】
このような熱硬化型のオーバーコート剤としては、主にエポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、あるいはこれらの複合系からなる樹脂組成物が知られている。これらは、特にブタジエン骨格、シロキサン骨格、ポリカーボネートジオール骨格、長鎖脂肪族骨格等を導入するなどして変成を行った樹脂組成物を主成分とすることが多く、これにより、表面保護膜が本来備えている耐熱性や、耐薬品性、電気絶縁性の低下をなるべく抑えながら、柔軟性を向上させ、硬化収縮による反りの発生を抑制することができる。
【0004】
しかしながら、近年は電子機器の軽量小型化に伴うフレキシブル基板の軽薄化に伴い、オーバーコートする樹脂組成物の柔軟性や硬化収縮の影響がより顕著に現れるようになってきている。このため、従来の硬化タイプのオーバーコート剤では、柔軟性や硬化収縮による反りの点で、要求性能を満足できなくなっているのが現状である。
【0005】
このような表面保護膜用のペースト状樹脂組成物を調製する際に空気が巻き込まれると、ペーストに微細な泡(気泡)が発生してボイドあるいはピンホールが発生する原因となる。これを防止するために、ペースト状樹脂組成物には少量のシリコーン系消泡剤を配合するのが一般的である。こうしたシリコーン系消泡剤は優れた消泡作用を有しており、保護膜用ペースト状樹脂組成物中に含まれる気泡量を非常に少なくすることができるため、ボイドあるいはピンホールの生成を防止するためには極めて有効である。
【0006】
しかし、シリコーン系消泡剤は、他の樹脂との相溶性が低く、しかも耐熱性が高い。このため、フレキシブル基板にデバイスを実装し、全体を樹脂で封止して加熱硬化させる際に、保護膜用樹脂表面にシリコーン系消泡剤が滲み出し、封止樹脂がはじかれてしまうことがあり、ボンディングされたデバイスを完全に封止できないという問題点があった。
【0007】
また、保護膜用ペースト状樹脂組成物を硬化させる際にシリコーン系消泡剤が滲み出してインナーリード表面などに付着すると、除去が極めて困難であるばかりでなく、インナーリードとデバイスのバンプとの間で接続不良が生じやすくなる。
【0008】
これらの問題を解決するために、特開2001−59071号公報(特許文献1)では、自転公転型撹拌装置を使用することにより、シリコーン系の消泡剤を使用しなくてもピンホール等ができにくいソルダーレジスト塗布液を開示している。ただし、この技術では、条件が少しでもずれると気泡が残り、工業的に実施する上では障害が大きい。
【0009】
実際には、シリコーン系の消泡剤を用いずにペースト状樹脂組成物中の気泡を消泡させることは極めて困難であり、特開2003−327913号公報(特許文献2)又は特開2004−124015号公報(特許文献3)に記載されているような、シリコーン系の消泡剤の量を如何に低減するかについての研究が行われているが、これらは抜本的な改善策とはなっていない。
【0010】
【特許文献1】特開2001−59071号公報
【特許文献2】特開2003−327913号公報
【特許文献3】特開2004−124015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、シリコーン系の消泡剤を用いることなく、印刷時の消泡性、レベリング性に優れ、基材との密着性、低反り性、可とう性、耐めっき性、はんだ耐熱性、高温高湿時の長期信頼性に優れたペースト状熱硬化性樹脂組成物、オーバーコート剤及び表面保護膜に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の種々の問題を解決するため鋭意研究した結果、特定のフッ素を含む界面活性剤をペースト状樹脂組成物に含有させることにより、上記問題が解決できることを見出した。特に、熱硬化性樹脂として特定のカルボキシル基含有ウレタン樹脂とエポキシ系樹脂を組み合わせることにより、非常に柔軟で電気絶縁性能の良い保護膜用ペースト状樹脂組成物が得られる。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の[1]から[29]に関する。
1.以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物。
(A)熱硬化性樹脂、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル。
2.成分(A)熱硬化性樹脂、成分(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子及び成分(C)フッ素含有ポリエーテルが、熱硬化性樹脂組成物全体の量に対して
(A)熱硬化性樹脂 20〜90質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜80質量%、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
の割合で配合される前記1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
3.成分(A)熱硬化性樹脂、成分(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子及び成分(C)フッ素含有ポリエーテルが、熱硬化性樹脂組成物全体の量に対して
(A)熱硬化性樹脂 40〜90質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜60質量%、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
の割合で配合される前記2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
4.(C)フッ素含有ポリエーテルが、下記一般式(1)又は(2)
【化1】

【化2】

(式中、mは1〜100の整数を表し、nは1〜6の整数を表し、R1は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。ただし、該アルキル基中の水素原子の少なくとも50%がフッ素原子で置換され、残りは水素原子もしくはヨウ素原子、塩素原子又は臭素原子で置換されている。)
で表されるフッ素化アルキルポリオキセタン構造のいずれかを含むポリマー、又は該フッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むモノマーと炭素数2〜6の酸素原子を含むモノマーからなるコポリマーを含む組成物である、前記1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
5.前記4中の一般式(1)及び(2)中のmが2〜30の整数を表す、前記1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
6.前記4中の一般式(1)及び(2)中のR2及びR3で示される炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基中の水素原子のうち、少なくとも75%がフッ素原子で置換されている前記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
7.前記4中の一般式(1)及び(2)中、mは2〜30の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、R1はメチル基又はエチル基を表し、R2及びR3は直鎖又は分岐状の炭素数1〜7のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子の少なくとも95%がフッ素で置換されている、前記1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
8.(C)フッ素含有ポリエーテルの数平均分子量が300〜10000である前記1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
9.熱硬化性樹脂(A)が、エポキシ系樹脂、エポキシ系樹脂のエラストマー変性物、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂のエラストマー変性物、ポリイミド樹脂及びポリイミド樹脂のエラストマー変性物及びそれらのアクリル酸変性物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の樹脂成分を含有する前記1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
10.熱硬化性樹脂(A)が、以下の原料を反応させて得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂を含有する前記1〜9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(a)ポリイソシアネート化合物、
(b)ポリオール化合物、
(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物、
更に必要に応じて
(d)モノヒドロキシ化合物、及び
(e)モノイソシアネート化合物。
11.成分(a)ジイソシアネート化合物、成分(b)ポリカーボネートジオール、成分(c)ジヒドロキシ化合物、成分(d)モノヒドロキシ化合物及び成分(e)モノイソシアネート化合物の仕込みモル比が、
(a):((b)+(c))=0.5〜1.5:1であり、
(b):(c)=1:0.1〜30であり、
更に、(d)を用いる場合には、((b)+(c))≦(a)、好ましくは(d)をNCO基の過剰モル数に対して0.5〜1.5倍モル量とし、
(e)を用いる場合には、(a)<((b)+(c))、かつ水酸基の過剰モル数に対して0.5〜1.5倍モル量とする前記10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
12.成分(a)ジイソシアネート化合物、成分(b)ポリカーボネートジオール、成分(c)ジヒドロキシ化合物、成分(d)モノヒドロキシ化合物及び成分(e)モノイソシアネート化合物の仕込みモル比が、
(a):((b)+(c))=0.8〜1.2:1であり、
(b):(c)=1:0.3〜10であり、
更に、(d)を用いる場合には、((b)+(c))≦(a)、好ましくは(d)をNCO基の過剰モル数に対して、0.8〜1.2倍モル量とし、
(e)を用いる場合には、(a)<((b)+(c))、かつ水酸基の過剰モル数に対して、0.8〜1.2倍モル量とする前記11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
13.前記10記載のカルボキシル基含有ウレタン樹脂のポリイソシアネート化合物(a)が、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート及びシクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記10〜12のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
14.前記10記載のポリオール化合物(b)が、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、両末端水酸基化ポリシリコーン、水酸基中以外は酸素を含まず構成成分の炭素数が18〜72であるポリオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である前記10〜13のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
15.前記10記載のカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(c)が、2,2−ジメチロールプロピオン酸又は2,2−ジメチロールブタン酸である前記10〜14のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
16.前記10記載のモノヒドロキシ化合物(d)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(以下両者を合わせて2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと記す。)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシエチルプロピオン酸、ヒドロキシイソ酪酸もしくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール及びt−ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記10〜15のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
17.前記10記載のモノイソシアネート化合物(e)が、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、ジイソシアネート化合物に対する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノールのモノ付加体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記10〜16のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
18.カルボキシル基含有ウレタン樹脂の数平均分子量が1000〜100000であり、かつ、酸価が5〜120mg−KOH/gである前記10〜17のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
19.カルボキシル基含有ウレタン樹脂の数平均分子量が3000〜50000であり、かつ、酸価が10〜70mg−KOH/gである前記18に記載の熱硬化性樹脂組成物。
20.カルボキシル基含有ウレタン樹脂に対して、硬化剤としてポリエポキシ化合物を含有させる前記10〜19のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
21.硬化剤が、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F及び/又はその水添タイプのエポキシ樹脂である前記20に記載の熱硬化性樹脂組成物。
22.硬化剤が、脂環式エポキシ化合物である前記21に記載の熱硬化性樹脂組成物。
23.前記1に記載の(B)無機及び/又は有機微粒子が、無機微粒子としてはシリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉、及び、有機微粒子としてはエポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、シリコーンパウダーからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、熱硬化性樹脂組成物全体に対して5〜40質量%の割合で配合する前記1〜22のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
24.前記1に記載の(C)フッ素含有ポリエーテルが、エポキシ化合物、オキセタン化合物及び/又はテトラヒドロフラン誘導体とフルオロオキセタンとの共重合体である前記1〜23のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
25.前記1〜24のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有するフレキシブル基板用のオーバーコート剤。
26.前記25に記載のオーバーコート剤からなるフレキシブル基板用の表面保護膜。
27.前記1〜26のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する永久絶縁保護膜用インキ。
28.前記27に記載の永久絶縁保護膜用インキを硬化させてなる硬化物。
29.前記28に記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、シリコーン系の消泡剤を用いずとも、印刷時の消泡性、レベリング性に優れ、基材との密着性、低反り性、可とう性、耐めっき性、はんだ耐熱性、高温高湿時の長期信頼性に優れたペースト状熱硬化性樹脂組成物、オーバーコート剤及び表面保護膜を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び保護膜形成材料についてさらに詳細に説明する。
本発明は以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有するペースト状の熱硬化性樹脂組成物である。
(A)熱硬化性樹脂、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル。
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂(A)、必要に応じて溶剤、充填剤として無機及び/又は有機の微粒子(B)、及び界面活性剤としてフッ素含有ポリエーテル(C)、消泡剤、硬化促進剤等をさらに配合して混練し、そこに硬化剤を加えて被膜形成材料を調製することが好ましい。それをスクリーン印刷等で塗布した後に乾燥・加熱する等の硬化方法を用いて保護膜を得ることができる。
【0017】
(A)熱硬化性樹脂
本発明で使用できる熱硬化性樹脂(A)としては、一般に保護膜用樹脂組成物に使用できる熱硬化性樹脂なら全て使用することができる。例えばエポキシ系樹脂、エポキシ系樹脂のエラストマー変性物、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂のエラストマー変性物、ポリイミド樹脂及びポリイミド樹脂のエラストマー変性物及びそれらのアクリル酸変性物等が挙げられ、それらを単独又は組み合わせて使用することもできる。
【0018】
エポキシ系樹脂としては、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせが一般的である。
エポキシ樹脂として代表的なものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等の1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
硬化剤としては、アミン類、イミダゾール類、酸無水物類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類、メチロール基含有化合物等が挙げられる。
【0019】
ウレタン系樹脂としては、例えば特開2000−186248号公報及び特開平11−071551号公報に示されるような、ポリブタジエンジオールをベースとしたポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0020】
また、ポリイミド系樹脂としては、特開2001−302795号公報、特開2004−137370号公報及び特開2004−211055号公報等に示されるようなポリアミドイミド樹脂、特開2004−169042号公報及び特開2004−211064号公報等に示されるようなポリイミドシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0021】
また、熱硬化性樹脂として、以下に示す特定のカルボキシル基含有ウレタンを用いた場合には、特に硬化後に電気特性と柔軟性のバランスの取れた保護膜用樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
このようなカルボシキル基含有ウレタンとしては、以下の原料を後述する仕込みモル比にて反応させることにより合成される。
(a)ポリイソシアネート化合物、
(b)ポリオール化合物、
(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物、
更に必要に応じて
(d)モノヒドロキシ化合物、ならびに
(e)モノイソシアネート化合物。
【0023】
(a)ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物(a)としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2'−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、(o,m,又はp)−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−メチレンジトリレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
前記したポリイソシアネート化合物(a)の1分子当たりのイソシアネート基は通常2個であるが、本発明のポリウレタンがゲル化をしない範囲内ならばトリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートも少量使用することができる。具体的には、例えば、使用するイソシアネート化合物のうちの5mol%以下で使用することができる。
【0025】
これらのポリイソシアネート化合物の中でも、特にイソシアネート基(NCO基)を除いた炭素原子数が6〜30個の脂環式化合物を用いた場合に、本発明の硬化物は、最も優れた高温高湿時の長期絶縁信頼性能を発現する。
【0026】
これらの脂環式化合物は、前記ポリイソシアネート化合物(a)の総量(100mol%)に対して、10mol%以上、好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上含まれることが望ましい。これらの脂環式化合物の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート及びシクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0027】
(b)ポリオール化合物
ポリオール化合物(b)については、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、両末端水酸基化ポリシリコーン、水酸基中以外は酸素を含まず構成成分の炭素数が18〜72であるポリオール化合物の中から1つ以上を選んで原料とする。
【0028】
ポリカーボネートポリオールは、炭素数4〜18のジオールを原料として、炭酸エステル又はホスゲンと反応させることにより得ることができる。具体的には以下の構造式で表される。
【化3】

(式中、Rは対応するジオールから水酸基を除いたものであり、nは繰返し単位数である。)
【0029】
原料となるジオールとしては、具体的には、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカメチレングリコール又は1,2−テトラデカンジオールなどを用いることができる。
【0030】
ポリカーボネートポリオールとしては、特にポリカーボネートジオールが好ましく用いられる。ポリカーボネートジオールとしては、その骨格中に複数種のアルキレン基を有するポリカーボネートジオール(共重合ポリカーボネートジオール)であってもよく、共重合ポリカーボネートジオールの使用は、生成したポリウレタンの結晶化防止の観点から有利な場合が多い。また、溶媒への溶解性を考慮すると、側鎖置換基を有するポリカーボネートジオールを一部併用することが好ましい。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、炭素数2〜12のジオールを脱水縮合、又は炭素数2〜12のオキシラン化合物、オキセタン化合物又はテトラヒドロフラン化合物を開環重合して得られたものが用いられる。具体的には以下の構造式で表される。
【化4】

(式中のRは対応するジオールから水酸基を除いたものであり、nは繰返し単位数である。)
具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ−1,2−ブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ−3−メチルテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、相溶性、疎水性を向上する目的でこれらの共重合体も用いることができる。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、下記のジカルボン酸及びジオールを脱水縮合するか、又はジカルボン酸の低級アルコールのエステル化物とジオールをエステル交換反応に付することにより得られるものが用いられる。具体的には以下の構造式で表される。
【化5】

(式中、R1は対応するジオールから水酸基を除いたものであり、R2は対応するジカルボン酸からカルボキシル基を除いたものであり、nは繰返し単位数である。)
【0033】
ポリエステルポリオールの合成に用いられる具体的なジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカメチレングリコール又は1,2−テトラデカンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,3−キシリレングリコール、1,4−キシリレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
また、ポリエステルポリオールの合成に用いられるジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ブラシル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0035】
ポリラクトンポリオールは、ジオールとラクトン化合物との開環重合、又はジオールとヒドロキシアルカン酸との縮合反応により得られるものであり、以下の構造式により表される。
【化6】

(式中、R1は対応するヒドロキシアルカン酸から水酸基とカルボキシル基を除いたものであり、R2は対応するジオールから水酸基を除いたものであり、nは繰返し単位数である。)
具体的には、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシヘキサン酸(ε−カプロラクトン)等が挙げられる。
【0036】
ポリブタジエンポリオールとしては、ブタジエンやイソプレンをアニオン重合により重合し、末端処理により両末端に水酸基を導入したものを用いることができ、更にそれらの二重結合を水素還元したものも使用できる。
具体的には、1,4−繰り返し単位を主に有する水酸基化ポリブタジエン(例えば、Poly bd R-45HT、Poly bd R-15HT(出光興産株式会社製))、水酸基化水素化ポリブタジエン(例えば、ポリテールH、ポリテールHA(三菱化学株式会社製))、1,2−繰り返し単位を主に有する水酸基化ポリブタジエン(例えば、G−1000、G−2000,G−3000(日本曹達株式会社製))、水酸基化水素化ポリブタジエン(例えば、GI−1000、GI−2000、GI−3000(日本曹達株式会社製))、水酸基末端ポリイソプレン(例えば、Poly IP(出光興産株式会社製))、水素化ポリイソプレン(例えば、エポール(出光興産株式会社製))が挙げられる。
【0037】
両末端水酸基化ポリシリコーンは、以下の構造式で表される。
【化7】

(式中、R1は炭素数2〜50の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、エーテル基を含んでいてもよく;R2及びR3は、それぞれ独立して炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、nは繰返し単位数である。)
市販品としては、例えば信越化学工業株式会社製「X-22-160AS、KF6001、KF6002、KF-6003」などが挙げられる。
【0038】
水酸基以外は酸素を含まず、構成成分の炭素数が18〜72であるポリオール化合物としては、具体的にはダイマー酸を水素化した骨格を有するジオール化合物であり、市販品としては、例えば、コグニス社製「Sovermol908」などが挙げられる。
【0039】
また、その他のポリオール化合物(b)としては、物性を損なわない範囲で、分子量300以下のジオールを用いることもできる。このような低分子量ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカメチレングリコール、1,2−テトラデカンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,3−キシリレングリコール、1,4−キシリレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0040】
(c)カルボキシル基を含有するジヒドロキシ化合物
カルボキシル基を含有するジヒドロキシ化合物(c)としては、具体的には2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン等が挙げられ、この中でも溶媒への溶解度から2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が特に好ましい。これらのカルボキシル基を含有するジヒドロキシ化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明のカルボキシル基含有ポリウレタンは、上記の3成分(a)、(b)及び(c)からのみでも合成が可能であるが、更に、このポリウレタンにラジカル重合性やカチオン重合性を付与する目的、あるいはポリウレタン末端のイソシアネート残基や水酸基の影響を無くす目的で、モノヒドロキシ化合物(d)及び/又はモノイソシアネート化合物(e)を反応させて合成することもできる。
【0042】
(d)モノヒドロキシ化合物
ラジカル重合性やカチオン重合性を付与する目的で用いられるモノヒドロキシ化合物(d)としてはラジカル重合性二重結合を有する化合物、あるいはカチオン重合性官能基を有する化合物であればよく、前者のラジカル重合性二重結合を有する化合物の例としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。また、後者のカチオン重合性官能基を有する化合物としては水酸基とカルボキシル基を有する化合物が挙げられ、具体的にはグリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシエチルプロピオン酸、ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられる。
【0043】
これらのモノヒドロキシ化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物の中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0044】
ポリウレタンの末端のイソシアネート残基の影響を無くす目的で用いられるモノヒドロキシ化合物(d)としては、上記のモノヒドロキシ化合物の他に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等の低分子量のアルコールも用いることができる。
【0045】
(e)モノイソシアネート化合物
モノイソシアネート化合物(e)としては、ラジカル性二重結合を持つものとして、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、ジイソシアネート化合物に対する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノールのモノ付加体等が挙げられる。
【0046】
また、末端の水酸基残基の影響を無くす目的で用いるモノイソシアネートヒドロキシ化合物としては、フェニルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
本発明のカルボキシル基含有ポリウレタンは、数平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、3000〜50000であると更に好ましい。ここで、分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。分子量が1000未満では、硬化膜の伸度、可とう性、並びに強度を損なうことがあり、100000を超えると溶媒への溶解性が低くなる上に、溶解しても粘度が高くなりすぎるために、使用面で制約が大きくなることがある。
【0048】
本明細書においては、特に断りのない限り、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
装置名:日本分光株式会社製HPLCユニット HSS−2000、
カラム:ShodexカラムLF−804、
移動相:テトラヒドロフラン、
流速:1.0mL/min、
検出器:日本分光株式会社製 RI−2031Plus、
温度:40.0℃、
試料量:サンプルループ 100μl、
試料濃度:0.1wt%前後に調整。
【0049】
本発明のカルボキシル基含有ポリウレタンの酸価は5〜120mg−KOH/gであることが好ましく、10〜70mg−KOH/gであると更に好ましい。酸価が5mg−KOH/g未満の場合は、エポキシ樹脂等の他の硬化性樹脂との反応性が低下し耐熱性を損ねることがある。また、120mg−KOH/gを超えると硬化膜が硬く脆くなりすぎることがある。
【0050】
なお、本明細書中における樹脂の酸価は以下の方法により測定した。
100ml三角フラスコに試料約0.2gを精密天秤にて精秤し、これにエタノール/トルエン=1/2(質量比)の混合溶媒10mlを加えて溶解させた。更に、指示薬としてフェノールフタレインエタノール溶液を1〜3滴添加し、試料が均一になるまで十分に撹拌する。これを、0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いた所で中和の終点とする。その結果から下記の計算式を用いて得た値を、樹脂の酸価とする。
酸価(mg−KOH/g)=〔B×f×5.611〕/S
B:0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液の使用量(ml)、
f:0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液のファクターであり、このケースでは1、
S:試料の採取量(g)。
【0051】
本発明のカルボキシル基含有ポリウレタンは、ジブチル錫ジラウリレートのような公知のウレタン化触媒の存在下又は非存在下で、適切な有機溶媒を用いて、ポリイソシアネート(a)、ポリカーボネートジオール(b)、ジヒドロキシ化合物(c)、及び必要に応じてモノヒドロキシ化合物(d)、モノイソシアネート化合物(e)を反応させることにより合成することができるが、無触媒で反応させたほうが、最終的に硬化膜を作成して実際に使用する際に物性値が向上するので好ましい。
【0052】
前記有機溶媒としては、イソシアネートと反応性が低いものであれば使用でき、かつアミン等の塩基性官能基を含まず、沸点が110℃以上、好ましくは200℃以上である溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。
【0053】
なお、生成するカルボキシル基含有ポリウレタンの溶解性が低い有機溶媒は好ましくないこと、及び電子材料用途においてポリウレタンをインキの原料にすることを考えると、これらの中でも、特に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0054】
原料の仕込を行う順番については特に制約はないが、通常はポリカーボネートジオール(b)及びジヒドロキシ化合物(c)を先に仕込み、溶媒に溶解させた後、20〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、ジイソシアネート化合物(a)を滴下しながら加え、その後、30〜160℃、より好ましくは50〜130℃でこれらを反応させる。
【0055】
原料の仕込みモル比は、合成するポリウレタンの分子量及び酸価に応じて調節するが、ポリウレタンにモノヒドロキシ化合物(d)を導入する場合には、ポリウレタン分子の末端がイソシアネート基になるように、ポリカーボネートジオール(b)及びジヒドロキシ化合物(c)よりもジイソシアネート化合物(a)を同量もしくは過剰に(水酸基の合計よりもイソシアネート基が過剰になるように)用いる必要がある。
【0056】
具体的には、これらの仕込みモル比は、ジイソシアネート化合物(a):(ポリカーボネートジオール(b)+ジヒドロキシ化合物(c))が、0.5〜1.5:1であることが好ましく、0.8〜1.2:1がさらに好ましい。
また、ポリカーボネートジオール(b):ジヒドロキシ化合物(c)が、1:0.1〜30であることが好ましく、1:0.3〜10がさらに好ましい。
【0057】
モノヒドロキシ化合物(d)を用いる場合には、(ポリカーボネートジオール(b)+ジヒドロキシ化合物(c))のモル数よりもジイソシアネート化合物(a)のモル数を同量もしくは過剰とし、モノヒドロキシ化合物(d)を、NCO基の過剰モル数に対して、0.5〜1.5倍モル量、好ましくは0.8〜1.2倍モル量で用いることが好ましい。
【0058】
モノイソシアネート化合物(e)を用いる場合には、ジイソシアネート化合物(a)のモル数よりも(ポリカーボネートジオール(b)+ジヒドロキシ化合物(c))のモル数を過剰とし、水酸基の過剰モル数に対して、0.5〜1.5倍モル量、好ましくは0.8〜1.2倍モル量で用いることが好ましい。
【0059】
前記モノヒドロキシ化合物(d)をポリウレタンに導入するためには、前記ポリカーボネートジオール(b)及び前記ジヒドロキシ化合物(c)と前記ジイソシアネート(a)との反応がほぼ終了した時点で、ポリウレタンの両末端に残存しているイソシアネート基と前記モノヒドロキシ化合物(d)とを反応させるために、ポリウレタンの溶液中にモノヒドロキシ化合物(d)を20〜150℃、より好ましくは70〜120℃で滴下し、その後同温度で保持して反応を完結させる。
【0060】
前記モノイソシアネート化合物(e)をポリウレタンに導入するためには、前記ポリカーボネートジオール(b)及び前記ジヒドロキシ化合物(c)と前記ジイソシアネート(a)との反応がほぼ終了した時点で、ポリウレタンの両末端に残存している水酸基と前記モノイソシアネート化合物(e)とを反応させるために、ポリウレタンの溶液中にモノイソシアネート化合物(e)を20〜150℃、より好ましくは50〜120℃で滴下し、その後同温度で保持して反応を完結させる。
【0061】
(B)無機又は有機微粒子(充填剤)
無機又は有機微粒子は公知のものを使用できる。配合比としては、使用する熱硬化性樹脂によって異なるが、添加する場合には樹脂組成物全体に対して10〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
有機フィラーとしてはエポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、シリコーンパウダー等が挙げられ、無機フィラーとしてはシリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉等を挙げる事ができる。
【0062】
(C)フッ素含有ポリエーテル(界面活性剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、以下の一般式(1)又は(2)で表されるフッ素化アルキルポリオキセタン構造のいずれかを含むポリマー、又は該フッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むモノマーと炭素数2〜6の酸素原子を含むモノマーからなるコポリマーを界面活性剤として含む組成物である。
【0063】
【化8】

【化9】

(式中、mは1〜100の整数を表し、nは1〜6の整数を表し、R1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。ただし、該アルキル基中の水素原子の少なくとも50%がフッ素原子で置換され、残りは水素原子、もしくはヨウ素原子、塩素原子、又は臭素原子で置換されている。)
【0064】
なお、式中のR2、R3で表されるアルキル基中の水素原子のうち、少なくとも50%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは95%以上がフッ素原子に置換されていることが望ましい。フッ素原子の置換量が少ないと、所望のレベリング性、消泡性を得ることが出来ない。
【0065】
また、R2、R3で表されるアルキル基があまりに長鎖であると所望の消泡効果が出ないことがあるので、R2、R3で表されるアルキル基の炭素数としては20以下、好ましくは7以下、より好ましくは3以下が望ましい。同様の理由により、式中のnについても6以下、好ましくは3以下、より好ましくは1が望ましい。
【0066】
また、式中のmとしては2〜100、より好ましくは2〜30が好ましい。ポリエーテルの分子量が小さいと、界面活性剤としての性能が発現しないばかりか、ブリーディング等が起こる場合があり、また、分子量があまりに大きくても界面活性剤の性能が発現しない上に、塊状の異物となる原因となってしまう。
【0067】
また、フッ素含有ポリエーテル(C)の数平均分子量としては、約300〜約10000が好ましく、1000〜8000が更に好ましい。
【0068】
[フッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むポリマーについて]
一般式(1)又は(2)で表されるフッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むポリマーは、市販品を用いてもよいし、ポリエーテル化合物について既知の方法で合成することができる。
市販品の例としては、PolyFOX PF656(オムノバ・ソリューションズ・インコーポレーティッド製)(一般式(1)においてm=6、n=1、R1=CH3、R2=C25である化合物)、PolyFOX PF636(同社製)(一般式(1)において、m=6、n=1、R1=R2=CH3である化合物)、PolyFOX PF6320(同社製)(一般式(1)において、m=20、n=1、R1=R2=CH3である化合物)及びPolyFOX PF6520(同社製)(一般式(1)においてm=20、n=1、R1=CH3、R2=C25である化合物)等が挙げられる。
【0069】
また、例えば、
【化10】

又は
【化11】

(式中、n及びR1〜R3の符号の意味は前記に示した通り。)で表される環状エーテルを、ルイス触媒、例えば、三フッ化ホウ素錯体(例えば、三フッ化ホウ素エテレート、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン(THF))、ホスホラスペンタフルオライド、アンチモンペンタフルオライド、塩化亜鉛、臭化アルミニウムなどの存在下、不活性溶媒の存在下で重合させることにより得ることもできる。不活性溶媒は、通常、1〜約6個の炭素原子を含む炭化水素又はハロゲン化溶媒であり、具体例としては塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロエタンなどが挙げられる(例えば、特表2004−535485号公報参照)。
【0070】
一般式(1)又は(2)で表されるフッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むポリマーは、いずれかの繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、これらが混在するコポリマーでもよい。また、これらのいずれかの繰返し単位と炭素数2〜6の酸素原子を含むモノマーからなるコポリマーでもよい。例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物及び/又はテトラヒドロフラン誘導体とフルオロオキセタンとの共重合体が挙げられる。
【0071】
炭素数2〜6の酸素原子を含むモノマーの例としては、分子中に2〜6の炭素原子を含むモノ又はポリヒドロキシルアルコール、環状エーテルが挙げられる。モノ又はポリヒドロキシルアルコールの具体例としては、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、プロピレングリコール、イソブタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパンなど、又はエタノールなどが挙げられる。これらのモノマーはオリゴマー又はポリマーとして前記コポリマー中に含まれていてもよく、そうしたオリゴマー又はポリマーの例としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。また、環状エーテルの例としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、テトラヒドロフラン誘導体等が挙げられる。これらは環を構成する炭素原子上にアルキル、フッ素その他のハロゲン等の置換基を有してもよい。
【0072】
[配合比]
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、成分(A)熱硬化性樹脂、成分(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子及び成分(C)フッ素含有ポリエーテルが、熱硬化性樹脂組成物全体の量に対して
(A)熱硬化性樹脂 20〜90質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜80質量%、
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
好ましくは
(A)熱硬化性樹脂 40〜90質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜60質量%、
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
特に好ましくは
(A)熱硬化性樹脂 60〜85質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜40質量%、
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
の割合で配合されることを特徴とする。
【0073】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物はフレキシブル基板用のオーバーコート剤以外の種々の用途に利用することも可能であり、例えば放熱部品に使用する場合は、
(A)熱硬化性樹脂 20〜50質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 50〜80質量%、
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
の割合で配合することが好ましい。
【0074】
[硬化剤]
硬化剤としては、カルボキシル基含有ポリウレタンを硬化させるものが選択されるが、中でも、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。中でも特に脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0075】
また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンやリン等の原子を構造中に導入したものを使用してもよい。さらに、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂及びテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂等を使用してもよい。
エポキシ樹脂としては、2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が含有されることが好ましい。ただし、1つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有してもよい。
【0076】
[溶剤]
本発明の熱硬化性樹脂組成物中には溶媒を含んでいることが好ましい。さらに好ましくは、熱硬化性樹脂を溶剤に溶解させた形態をとることが好ましく、合成に使用した溶剤中に熱硬化性樹脂が溶解した状態であることが特に好ましい。
合成後、固形物として熱硬化性樹脂組成物を得ようとした場合には、溶剤を用いないと熱硬化性樹脂の分散が困難であること、また合成後の固形物を溶剤で溶解させる工程が必要で経済的に好ましくない。
溶剤としては、熱硬化性樹脂が溶解するものであれば特に限定はないが、沸点は30〜400℃であることが好ましく、110〜300℃がさらに好ましい。
【0077】
溶剤の種類としては、具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレンなどを例示することができる。
【0078】
溶剤の使用量としては、この熱硬化性樹脂組成物中のカルボキシル基含有ポリウレタン濃度(固形分濃度)が、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは30〜80質量%となる量を加える。
【0079】
[消泡剤]
消泡剤としては、フッ素系の界面活性剤を補完する意味で、他の非シリコーン系消泡剤を用いることができる。これらは1種だけでなく数種類併用してもよく、配合量や配合比率も特に制限はなくスクリーン印刷時の泡巻込み性や泡抜け性を考慮して適時変更できる。このような非シリコーン系消泡剤としては、BYK−A500(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A501(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A515(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A555(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)等が好適に使用される。
【0080】
[硬化促進剤]
硬化促進剤としては、イミダゾール誘導体(例えば、四国化成工業株式会社製、2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、1B2MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN,C11Z−CN、2PZ−CN、2PHZ−CN、2MZ−CNS、2E4MZ−CNS、2PZ−CNS、2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK、2P4MHZ、2PHZ、2P4BHZ等);アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン,2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、チバ・ガイギー社製、イルガキュアー261、旭電化株式会社製、オプトマ−SP−170等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等の公知慣用である硬化剤類あるいは硬化促進剤類が挙げられる。
【0081】
[その他の添加剤]
また、上記熱硬化性樹脂組成物には、さらに公知の各種添加剤、例えばガラス繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維等の繊維強化材、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、有機顔料、有機染料等の着色剤、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0082】
また、用途に合わせて粘度調整剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤などを添加・混合することができる。
上記混練方法としては、混合機、例えばディスパー、ニーダー、3本ロールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等を用いて、溶解又は分散する。
このようにして得られる本発明の硬化物は、シリコーン系の消泡剤を用いることなく消泡性、レベリング性がよい上に低反り性、可とう性、耐めっき性、はんだ耐熱性、電気絶縁の長期信頼性に優れている。
【0083】
また、本発明は、上述した熱硬化性樹脂組成物を含有するフレキシブル基板用のオーバーコート剤、該オーバーコート剤からなる表面保護膜、永久絶縁保護膜用インキ、該永久絶縁保護膜用インキを硬化させてなることを特徴とする硬化物、該硬化物を含む電子部品を含む。
【実施例】
【0084】
以下に合成例及び実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0085】
合成例1:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、
(b)ポリオール化合物としてC−1015N(株式会社クラレ製、ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85、分子量964)660.6g(0.69mol)、G−1000(日本曹達株式会社製、両末端水酸基化1,2−ポリブタジエン、分子量1548)73.39g、(0.05mol)(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)138.4g(0.93mol)、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)1303gを仕込み、90℃で2,2−ジメチロールブタン酸を溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、滴下漏斗により、(a)ポリイソシアネートとしてデスモジュール−W(住化バイエルウレタン株式会社製)437.3g(1.67mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で2時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、(d)モノヒドロキシ化合物としてイソブタノール(和光純薬工業株式会社製)5g(0.07mol)を滴下し、更に120℃にて1.5時間反応を行った。
得られたカルボキシル基含有ポリウレタンは、数平均分子量は13800、固形分の酸価は40.2mg−KOH/gであった。
【0086】
合成例2:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、(b)ポリオール化合物としてG−1000(前記と同じ)1172g(0.76mol)、(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)172g(1.16mol)、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)1744gを仕込み、90℃ですべての原料を溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、滴下漏斗により、(a)ポリイソシアネートとしてデスモジュール−W(住化バイエルウレタン株式会社製)504g(1.92mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で3時間、90℃で3時間、100℃で3時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、(d)モノヒドロキシ化合物としてイソブタノール(和光純薬工業株式会社製)4.4g(0.06mol)を滴下し、更に100℃にて1.5時間反応を行った。
得られたカルボキシル基含有ポリウレタンは、数平均分子量は7800、固形分の酸価は35.0mg−KOH/gであった。
【0087】
合成例3:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、(b)ポリオール化合物としてC−1065N(株式会社クラレ製、ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=65:35、分子量991)70.7g(0.07mol)、(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)13.5g(0.09mol)、溶媒としてγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)128.9gを仕込み、90℃ですべての原料を溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、滴下漏斗により、(a)ポリイソシアネートとしてデスモジュール−W(住化バイエルウレタン株式会社製)42.4g(0.16mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で2時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、(d)モノヒドロキシ化合物としてイソブタノール(和光純薬工業株式会社製)1.46g(0.015mol)を滴下し、更に105℃にて1.5時間反応を行った。
得られたカルボキシル基含有ポリウレタンは、数平均分子量は6800、固形分の酸価は39.9mg−KOH/gであった。
【0088】
合成例4:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、(b)ポリカーボネートジオールとしてC−2015N(株式会社クラレ製、ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85、分子量1945)305.0g(0.16mol)、(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)52.4g(0.35mol)、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)494.9gを仕込み、90℃ですべての原料を溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、滴下漏斗により、(a)ポリイソシアネートとしてデスモジュール−W(住化バイエルウレタン株式会社製)133.8g(0.51mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で1.5時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、(d)モノヒドロキシ化合物としてイソブタノール(和光純薬工業株式会社製)3.92g(0.05mol)を滴下し、更に105℃にて2時間反応を行った。
得られたカルボキシル基含有ウレタンの数平均分子量は9080、固形分酸価は40.1mg−KOH/gであった。
【0089】
合成例5:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、(b)ポリカーボネートジオールとしてC−1015N(株式会社クラレ製、ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85、分子量964)805.4g(0.84mol)、(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)104.2g(0.70mol)、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)1307gを仕込み、90℃ですべての原料を溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、滴下漏斗により、(a)ポリイソシアネートとしてデスモジュール−W(住化バイエルウレタン株式会社製)403.6g(1.54mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で2時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、(d)モノヒドロキシ化合物としてイソブタノール(和光純薬工業株式会社製)5.7g(0.08mol)を滴下し、更に125℃にて1.5時間反応を行った。
得られたカルボキシル基含有ポリウレタンは、数平均分子量は12100、固形分の酸価は30.1mg−KOH/gであった。
【0090】
合成例6:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、トリメチロールプロパン(OH当量=44.72g/eq.)33g、溶剤としてエチルジグリコールアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)165gを仕込み、60℃に昇温し(a)ポリイソシアネートとしてトルエン−2,4−ジイソシアネート(NCO当量=87.08g/eq.)132gを滴下した後、徐々に80℃まで昇温し以後2時間その温度で反応を続けた。続いてこれに、溶剤としてエチルジグリコールアセテート79.8gに(b)ポリカーボネートジオールとして「GI−1000」(OH末端水添ポリブタジエン、Mn=約1500、OH当量=801g/eq.、固形分=100w%:日本曹達株式会社製)139gを溶解させた溶液を、80℃で1時間かけて滴下し、以後80℃で4時間付加反応を行った。この生成物のイソシアネート基含量は4.7%(NCO当量=894g/eq.)であった。更に80℃に保持しながら、ブロッキング剤としてメチルエチルケトオキシム(分子量87.12)63.2gを2時間かけて滴下し、更に1時間反応を続けた。FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)によりNCOピークの消失が確認されたところで降温し、末端ブロックポリウレタン樹脂を得た。数平均分子量は16000、ブロックNCO当量(溶剤含)=1013g/eq.であった。
【0091】
合成例7:
撹拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、(b)ポリカーボネートジオールとしてPLACCEL CD−220(ダイセル化学工業株式会社製1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50mol)、(a)ポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00mol)と、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)833.51gを仕込み、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、両末端ジイソシアネートオリゴマーを得た。
更に、この反応液に無水トリメリット酸288.20g(1.50mol)、(a)ポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50mol)及びγ−ブチロラクトン1361.14gを仕込み、160℃まで昇温した後、6時間反応させて、得られた樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈し、粘度160Pa・s、不揮発分52質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。この樹脂の数平均分子量は18000であった。
【0092】
合成例8:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.84g(0.2mol)、溶媒としてトリグライム(以下、TGと略記することもある。)120gを仕込み、窒素雰囲気下、180℃で加熱撹拌した。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(NH2当量=455g/eq.)154.7g(0.17mol)、TG70gを加え、180℃で60分加熱撹拌した。さらにこの反応溶液にビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)メタン8.59g(0.03mol)及びTG23.4gを加え、180℃で5時間加熱撹拌した後、ろ過を行った。得られたポリイミドシロキサン反応溶液は、ポリマー固形分濃度50質量%、ηinh(インヘレント粘度;相対粘度の自然対数/ポリマーの質量濃度)0.18の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。
【0093】
実施例1〜9及び比較例1〜3:
[オーバーコート用熱硬化性組成物としての評価]
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
合成例1〜8の樹脂を用いて、界面活性剤とレベリング剤以外の成分を、表1に示す組成で適宜配合した。粘度調整剤としてカルビトールアセテートを配合ごとに適量加えて混合し、3本ロールを用いて混練りした。その後、界面活性剤とレベリング剤を加えて、レジンミキサーにて混合し、試料を調製した。
【0094】
[硬化物の評価]
実施例1〜9及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物を、スクリーン版ST250−30、印刷スピード100mm/秒、印刷版と基材とのクリアランス2.0mm、スキージ高度80度、スキージ角度70度の条件で、基材に印刷塗布したものについて、以下の条件で、密着性、シリコーン成分及び長期信頼性について評価を行った結果を表1に示した。
【0095】
〔消泡性〕
基材として38μm厚のポリイミドフィルム〔カプトン(登録商標)150EN、東レ・デュポン株式会社製〕を用い、その上に実施例1〜7及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物を印刷塗布し、30秒後に50×50mm範囲内に残存する泡の数を数え、以下の基準で評価した。
○;泡の数が2個以下、
×;泡の数が3個以上。
【0096】
〔シリコーン成分〕
基材として38μm厚のポリイミドフィルム〔カプトン(登録商標)150EN、東レ・デュポン株式会社製〕を用い、その上に実施例1〜7及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物を印刷塗布し、80℃で30分乾燥した後、150℃で24時間熱硬化させた。その印刷部分の端面から1mmの部分をSEM−EDS(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置)にて元素分析を行い、以下の基準で評価した。
○;Si成分の質量%が0.1%未満、
×;Si成分の質量%が0.1%以上。
【0097】
〔電気絶縁の長期信頼性〕
基材として市販の基板(IPC規格)のIPC−C(櫛型パターン)を用い、その上に実施例1〜7及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物を印刷塗布し、80℃で30分間乾燥した後、150℃で1時間熱硬化した。その基板を85℃、相対湿度85%の雰囲気下において100Vのバイアス電圧を印加して1000時間放置した後、以下の基準で電気絶縁性を評価した。
○:マイグレーション、絶縁抵抗値の低下ともになし、
×:1000時間以下でマイグレーション又は絶縁抵抗値の低下あり。
【0098】
〔密着性〕
基材として38μm厚のポリイミドフィルム〔カプトン(登録商標)150EN、東レ・デュポン株式会社製〕を用い、その上に実施例1〜7及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物を印刷塗布し、80℃で30分乾燥した後、150℃で1時間熱硬化した。2mm厚のガラス板に異方性導電膜(ソニーケミカル製、CP9420IS)を介して試験片の硬化膜面と熱圧着した。引張試験機を用いて熱圧着した試験片を90度剥離試験し、硬化膜とポリイミドフィルムとの密着強度を測定し、以下の基準で評価した。
○:密着強度が10N/cm以上、
△:密着強度が8N/cm以上10N/cm未満、
×:密着強度が8N/cm未満。
【0099】
これらの結果をまとめて次表1に示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明によれば、シリコーン系の消泡剤を用いることなく、印刷時の消泡性、レベリング性に優れ、基材との密着性、低反り性、可とう性、耐めっき性、はんだ耐熱性、高温高湿時の長期信頼性も優れた熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、柔軟性の点で優れた熱硬化性のフレキシブル回路オーバーコート用樹脂、絶縁特性の優れた熱硬化性のソルダーレジストや層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板等の分野への利用が可能となる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物をオーバーコート剤として用いる場合は、従来使用されている液状ポリイミド材料と比較して安価に生産可能である。
さらに、従来の保護膜は、シリコーン化合物由来の低分子量環状シロキサンがアウトガスとして発生する問題を抱えていたが、本発明ではシリコーン系の消泡剤を用いていないので、実装工程でのトラブルを発生させずに、硬化後に良好な接着性と、低反りと電気絶縁の長期信頼性のバランスの優れた保護膜を与える樹脂組成物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物。
(A)熱硬化性樹脂、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル。
【請求項2】
成分(A)熱硬化性樹脂、成分(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子及び成分(C)フッ素含有ポリエーテルが、熱硬化性樹脂組成物全体の量に対して
(A)熱硬化性樹脂 20〜90質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜80質量%、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
の割合で配合される請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)熱硬化性樹脂、成分(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子及び成分(C)フッ素含有ポリエーテルが、熱硬化性樹脂組成物全体の量に対して
(A)熱硬化性樹脂 40〜90質量%、
(B)無機微粒子及び/又は有機微粒子 10〜60質量%、及び
(C)フッ素含有ポリエーテル 0.1〜5質量%、
の割合で配合される請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)フッ素含有ポリエーテルが、下記一般式(1)又は(2)
【化1】

【化2】

(式中、mは1〜100の整数を表し、nは1〜6の整数を表し、R1は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。ただし、該アルキル基中の水素原子の少なくとも50%がフッ素原子で置換され、残りは水素原子もしくはヨウ素原子、塩素原子又は臭素原子で置換されている。)
で表されるフッ素化アルキルポリオキセタン構造のいずれかを含むポリマー、又は該フッ素化アルキルポリオキセタン構造を含むモノマーと炭素数2〜6の酸素原子を含むモノマーからなるコポリマーを含む組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4中の一般式(1)及び(2)中のmが2〜30の整数を表す、請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4中の一般式(1)及び(2)中のR2及びR3で示される炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基中の水素原子のうち、少なくとも75%がフッ素原子で置換されている請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4中の一般式(1)及び(2)中、mは2〜30の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、R1はメチル基又はエチル基を表し、R2及びR3は直鎖又は分岐状の炭素数1〜7のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子の少なくとも95%がフッ素で置換されている、請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(C)フッ素含有ポリエーテルの数平均分子量が300〜10000である請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
熱硬化性樹脂(A)が、エポキシ系樹脂、エポキシ系樹脂のエラストマー変性物、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂のエラストマー変性物、ポリイミド樹脂及びポリイミド樹脂のエラストマー変性物及びそれらのアクリル酸変性物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の樹脂成分を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
熱硬化性樹脂(A)が、以下の原料を反応させて得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(a)ポリイソシアネート化合物、
(b)ポリオール化合物、
(c)カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物、
更に必要に応じて
(d)モノヒドロキシ化合物、及び
(e)モノイソシアネート化合物。
【請求項11】
成分(a)ジイソシアネート化合物、成分(b)ポリカーボネートジオール、成分(c)ジヒドロキシ化合物、成分(d)モノヒドロキシ化合物及び成分(e)モノイソシアネート化合物の仕込みモル比が、
(a):((b)+(c))=0.5〜1.5:1であり、
(b):(c)=1:0.1〜30であり、
更に、(d)を用いる場合には、((b)+(c))≦(a)、好ましくは(d)をNCO基の過剰モル数に対して0.5〜1.5倍モル量とし、
(e)を用いる場合には、(a)<((b)+(c))、かつ水酸基の過剰モル数に対して0.5〜1.5倍モル量とする請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
成分(a)ジイソシアネート化合物、成分(b)ポリカーボネートジオール、成分(c)ジヒドロキシ化合物、成分(d)モノヒドロキシ化合物及び成分(e)モノイソシアネート化合物の仕込みモル比が、
(a):((b)+(c))=0.8〜1.2:1であり、
(b):(c)=1:0.3〜10であり、
更に、(d)を用いる場合には、((b)+(c))≦(a)、好ましくは(d)をNCO基の過剰モル数に対して、0.8〜1.2倍モル量とし、
(e)を用いる場合には、(a)<((b)+(c))、かつ水酸基の過剰モル数に対して、0.8〜1.2倍モル量とする請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項10記載のカルボキシル基含有ウレタン樹脂のポリイソシアネート化合物(a)が、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート及びシクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項10〜12のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項10記載のポリオール化合物(b)が、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、両末端水酸基化ポリシリコーン、水酸基中以外は酸素を含まず構成成分の炭素数が18〜72であるポリオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項10〜13のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項10記載のカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(c)が、2,2−ジメチロールプロピオン酸又は2,2−ジメチロールブタン酸である請求項10〜14のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項10記載のモノヒドロキシ化合物(d)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(以下両者を合わせて2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと記す。)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシエチルプロピオン酸、ヒドロキシイソ酪酸もしくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール及びt−ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項10〜15のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項10記載のモノイソシアネート化合物(e)が、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、ジイソシアネート化合物に対する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノールのモノ付加体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項10〜16のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂の数平均分子量が1000〜100000であり、かつ、酸価が5〜120mg−KOH/gである請求項10〜17のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂の数平均分子量が3000〜50000であり、かつ、酸価が10〜70mg−KOH/gである請求項18に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂に対して、硬化剤としてポリエポキシ化合物を含有させる請求項10〜19のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
硬化剤が、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F及び/又はその水添タイプのエポキシ樹脂である請求項20に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項22】
硬化剤が、脂環式エポキシ化合物である請求項21に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の(B)無機及び/又は有機微粒子が、無機微粒子としてはシリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉、及び、有機微粒子としてはエポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、シリコーンパウダーからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、熱硬化性樹脂組成物全体に対して5〜40質量%の割合で配合する請求項1〜22のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の(C)フッ素含有ポリエーテルが、エポキシ化合物、オキセタン化合物及び/又はテトラヒドロフラン誘導体とフルオロオキセタンとの共重合体である請求項1〜23のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有するフレキシブル基板用のオーバーコート剤。
【請求項26】
請求項25に記載のオーバーコート剤からなるフレキシブル基板用の表面保護膜。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する永久絶縁保護膜用インキ。
【請求項28】
請求項27に記載の永久絶縁保護膜用インキを硬化させてなる硬化物。
【請求項29】
請求項28に記載の硬化物を含む電子部品。

【公開番号】特開2007−277540(P2007−277540A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68051(P2007−68051)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】