説明

樹脂組成物

【課題】 成形性が良く熱変形温度の高い成形品が得られる樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (a)ポリ乳酸100質量部に対して、(b)セルロース繊維0.01〜160質量部、(c)結晶核剤0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物。(b)成分のセルロース繊維が、セルロース繊維集合体が回転羽根を有するミキサーで解繊されたものが好ましく、(c)成分の結晶核剤はフェニルホスホン酸塩が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性が良く、成形品の熱変形温度が向上される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、土壌や海水中等の湿潤状態に放置された場合には、数週間程度で強度が著しく低下し、約1年から数年程度で原形を留めずに消滅することが知られている。さらにポリ乳酸の分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水になるという特徴を有している。
【0003】
このため、ポリ乳酸をベースポリマーとした樹脂組成物とその成形品が開発されているが、ポリ乳酸は既存の熱可塑性樹脂と比較して結晶化速度が著しく遅く、既存の成形方法では成形サイクルが非常に長くなり、事実上製品化できない。また、非常に長い時間をかけて成形したとしても、成形品の耐熱性(熱変形温度)が低いという点で用途が制限されるため、改善の余地がある。
【0004】
上記の課題に対し、特許文献1の乳酸系ポリマー組成物の発明は、乳酸系ポリマー(ポリ乳酸)に対して有機珪素化合物と結晶核剤を添加して解決を図っているが、結晶核剤として開示されているタルクは、それ単独では結晶核剤としての効果が十分ではなく、依然として実用には適さない。特許文献2では、ポリ乳酸樹脂に対して、有機充填剤として古紙粉末、結晶化促進剤(結晶核剤)や無機充填剤としてタルクを添加できることが記載されているが、結晶化促進剤として可塑剤を添加しているため剛性が下がる。特許文献3では、同じく可塑剤と結晶核剤を添加して結晶化速度の向上を図っているが、剛性が下がるため、シート以外の射出成形体としては実用には適さない。
【特許文献1】特開2004−352908号公報
【特許文献2】特開2005−2174号公報
【特許文献3】特許第3410075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、射出成形時の成形サイクルが短く、成形品にした場合の強度と熱変形温度が向上されることから、新たな用途への適用もできるようになる、樹脂組成物とその成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、セルロース繊維と結晶核剤の組み合わせたものをポリ乳酸に含有させることで、セルロース繊維と結晶核剤の相乗作用により、上記課題を解決しうることを見出した。
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、(a)ポリ乳酸100質量部に対して、(b)セルロース繊維0.01〜160質量部、(c)結晶核剤0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物とその成形品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、成形サイクルが短縮され、得られた成形品の剛性が良く、熱変形温度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<(a)ポリ乳酸>
(a)成分のポリ乳酸は、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであり、前記乳酸と共重合可能な他のモノマーとの共重合体(好ましくは、共重合体中の他のモノマー単位が30モル%以下)でもよい。(a)成分のポリ乳酸は公知のものを用いることができ、例えば、特許文献1、2、3に記載のものを用いることができる。
【0010】
<(b)セルロース繊維>
(b)成分のセルロース繊維としては、麻繊維、竹繊維、綿繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等を挙げることができる。セルロース繊維は、熱安定性が高い点から、αセルロース含有量が高いものが好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0011】
セルロース繊維の平均繊維径は、0.1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、5〜200μmが更に好ましく、10〜50μmが特に好ましい。
【0012】
セルロース繊維の平均繊維長さは、0.01〜100mmが好ましく、0.01〜50mmがより好ましく、0.1〜10mmが更に好ましく、0.1〜5mmが特に好ましい。
【0013】
セルロース繊維のアスペクト比(長さ/径)は、2〜1000が好ましく、3〜500がより好ましく、5〜200が更に好ましく、5〜100が特に好ましい。
【0014】
セルロース繊維は、カップリング剤(アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基、グリシジル基等の官能基を有するシランカップリング剤)で表面処理されていてもよい
(b)成分のセルロース繊維は、セルロース繊維集合体が回転羽根を有するミキサーで解繊されたものが好ましい。
【0015】
組成物中の(b)成分のセルロース繊維の含有量は、(a)成分のポリ乳酸100質量部に対して0.01〜160質量部であり、好ましくは0.1〜150質量部であり、より好ましくは1〜140質量部である。
【0016】
<(c)結晶核剤>
(c)成分の結晶核剤は、公知の有機系結晶核剤や無機系結晶核剤を用いることができる。
【0017】
無機系結晶核剤としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸カルシウム及びフェニルホスホネートの金属塩等を挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
【0018】
有機系結晶核剤としては、フェニルホスホン酸(塩)又はその誘導体、例えば、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸ジクロライド、フェニルホスホン酸ジメチル、リン酸メラミン、ビス(p-メチルペンジリデン)ソルビトール,ビス(p-トルイリデン)ソルビトール等が好ましい。
【0019】
その他の有機系結晶核剤としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレート等の有機カルボン酸金属塩、
p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸塩、
ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド、
低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸等のポリマー、
エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩等のカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩又はカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、
ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等のリン化合物金属塩、及び2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を挙げることができる。
【0020】
組成物中の(c)成分の結晶核剤の含有量は、(a)成分のポリ乳酸100質量部に対して0.01〜20質量部であり、好ましくは0.05〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0021】
本発明の組成物には、必要に応じて、カーボンブラック、無機顔料、有機顔料、染料、助色剤、分散剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤又は光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤及び耐衝撃性改良用のエラストマー等を配合することができる。
【0022】
本発明の組成物は、含有されるセルロースが繊維状を保持している限りにおいて、その製造方法に制限はなく、例えば、(a)成分のポリ乳酸に対して、(b)成分のセルロース繊維と(c)成分の結晶核剤を配合し、押出機による溶融混練など公知の方法を適用して製造することができる。(b)成分のセルロース繊維は、市販品を含めた公知ものののほか、例えば、以下に示す製造方法の第1工程を適用して得られたものを用いることができる。
【0023】
本発明の組成物は、以下に示す第1工程〜第3工程を有する製造方法を適用して得ることもできる。
【0024】
〔第1工程〕
第1工程において、攪拌手段として回転羽根を有するミキサー中にセルロース繊維集合体を入れ、高速攪拌することにより、前記セルロース繊維集合体を解繊する。
【0025】
ミキサーは、攪拌手段として回転羽根を有するものであればよく、好ましくは加温手段を有しているものであり、例えば、三井鉱山(株)製ヘンシェルミキサー、FM20C/I(容量20L)や(株)カワタ製スーパーミキサー、SMV−20(容量20L)を用いることができる。
【0026】
回転羽根は、通常、上羽根と下羽根の2枚構成、あるいは上羽根、中間羽根、下羽根の3枚構成であるが、その枚数に制約はない。また、羽根の形状に制約はないが、例えば上羽根には混練用タイプ、下羽根には高循環・高負荷用、中間羽根を使用する場合は溶融液用を用いる。
【0027】
第1工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更に好ましくは平均周速が10〜80m/秒で攪拌する。
【0028】
第1工程における処理は、セルロース繊維集合体の解繊を充分に行うことができればよく、例えば、セルロース繊維集合体が綿状に変化したことが目視にて確認できた時点を第1工程の処理の終了とすることができる。回転羽根の平均周速と攪拌時間は、セルロース繊維集合体の種類、形状、大きさ、投入量等により変化するものであるため、前記したように綿状に変化した時点を基準とすることが好適である。
【0029】
セルロース繊維集合体は、多数のセルロース繊維が結合一体化されたものであり、天然物でも工業製品でもよく、麻繊維、竹繊維、綿繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の集合体を用いることができる。
【0030】
セルロース繊維は、熱安定性が高い点から、αセルロース含有量が高いものが好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0031】
セルロース繊維集合体としては、パルプシート又はその切断物が好ましい。パルプシート又はその切断物の厚み、形状、大きさは特に制限されず、ミキサーへの投入作業や攪拌作業が円滑にできる範囲で選択することができる。
【0032】
セルロース繊維集合体がシートの場合は、例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmで、幅1〜50cmで、長さ3〜100cm程度のものを用いることができる。
【0033】
セルロース繊維集合体がシートの切断物の場合は、例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmで、幅2mm〜1cmで、長さ3mm〜3cm程度の短冊状のもの、又は一辺が2mm〜1cm程度の四角形状のものが好ましい。
【0034】
セルロース繊維集合体の水分含有率は、20質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。水分含有率が20質量%以下であると、次工程において摩擦熱の発生による昇温が容易になり、セルロース繊維集合体が解繊され易く凝集物が残らないので好ましい。なお、水分含有率は、カールフッシャー法による水分測定等により求める。
【0035】
必要に応じて、セルロース繊維以外の有機繊維を使用することができるが、セルロース繊維と有機繊維の合計量中、セルロース繊維の割合が50質量%以上になるようにすることが好ましく、より好ましくは55質量%以上である。セルロース繊維以外の有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等を用いることができる。
【0036】
〔第2工程〕
第2工程において、前記ミキサー内に(a)成分のポリ乳酸を入れた後に攪拌することで、発生した摩擦熱によりポリ乳酸を溶融させて、解繊されたセルロース繊維にポリ乳酸が付着した混合物を得る。第1工程と第2工程は、ミキサーの攪拌を停止することなく、連続した1つの工程にすることができる。
【0037】
第1工程において、ミキサー内にてセルロース繊維集合体が解繊されているため、そこに所要量のポリ乳酸を投入し、高速攪拌する。この高速攪拌により、摩擦熱が発生してミキサー内が昇温するため、ポリ乳酸が溶融し、解繊されたセルロース繊維に付着して、セルロース繊維とポリ乳酸との混合物が得られる。
【0038】
第2工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更に好ましくは平均周速が10〜80m/秒で攪拌する。攪拌を継続するとミキサー内の温度が上昇し続け、モーターの動力が上昇する。この動力の上昇及びミキサー内の温度に応じて攪拌速度を徐々にあるいは一気に減速して回転数を低下させることが好ましく、平均周速が前記範囲になるようにする。
【0039】
この状態で撹拌を継続した場合、再び動力が上昇するので、連結する次の第3工程で使用する冷却ミキサーに混合物を排出する。このとき、この混合物では、解繊されたセルロース繊維がポリ乳酸中にほぼ均一に付着している。
【0040】
第2工程では、ミキサー内の昇温を補助して、セルロース繊維とポリ乳酸との混合物の製造を容易にするため、加温手段により、ミキサーを加温することもできる。このときの温度は120〜140℃程度が好ましい。
【0041】
〔第3工程〕
第3工程において、第2工程で得られた混合物を冷却しながら低速攪拌する。この工程の処理により、前記混合物を固化する(固化により造粒する)。第3工程では、ミキサーの冷却効率を高めるため、第1工程と第2工程で用いたミキサーとは別のミキサー(好ましくは冷却手段を有しているもの)を用いることが好ましい。
【0042】
第3工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が1〜30m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が2〜25m/秒、更に好ましくは平均周速が3〜25m/秒で攪拌する。第3工程の攪拌速度は、第1工程及び第2工程の攪拌速度よりも小さい。
【0043】
第3工程における処理は、ポリ乳酸とセルロース繊維との混合物が、成形用の材料として取り扱いできる程度に固化された時点を第3工程の処理の終了とすることができる。なお、摩擦熱の発生により、ミキサー内の温度が上がりすぎると一旦固化されたポリ乳酸が再溶融してしまうため、第3工程においても、ミキサー内の温度を管理することが好ましい。
【0044】
〔第4工程〕
このような処理により、ポリ乳酸とセルロース繊維を含む固化物(造粒物)が得られる。前記造粒物に対して、(c)成分の結晶核剤と必要に応じて任意成分を配合して、本発明の組成物を得ることができる。
【0045】
本発明の組成物は、射出成形法等の公知の成形方法を適用して、所望形状の成形品にすることができる。本発明の成形品は、また、本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、およびブロー成形品などが挙げられ、シート、フイルム、繊維などとしても利用することができる。また、これらの成形品は、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギアなど)、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装・外装部品など)および日用品など各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0046】
実施例及び比較例
〔第1工程〕
ヒーターミキサー(上羽根:混練用タイプ、下羽根:高循環・高負荷用,ヒーター及び温度計付き,容量20L,品名ヘンシェルミキサーFM20C/I,三井鉱山(株)製)を140℃に加温し、表1に示す各種セルロース繊維品を投入し、平均周速50m/秒で攪拌した。約2分経過時点において、セルロース繊維品が綿状に変化した。
【0047】
〔第2工程〕
引き続き、ヒーターミキサー内にポリ乳酸を投入した後、平均周速50m/秒で攪拌を続けた。このときのモーターの動力は2.5kWであった。ミキサーの温度が120℃に達した時に、MPPを投入し攪拌を続けた。
【0048】
約10分経過時点において、動力が上がり始めた。更に1分後、動力は4kWに上昇したので、周速を25m/secの低速に落とした。更に、低速の撹拌の継続により、動力が再度上昇し始めた。低速回転開始1分30行後、電流値は5kWに達したので、ミキサーの排出口をあけ、接続する冷却ミキサーに排出した。
【0049】
〔第3工程〕
冷却ミキサー〔回転羽根:冷却用標準羽根,水冷手段(20℃)及び温度計付き,容量45L,品名クーラーミキサーFD20C/K,三井鉱山(株)製)平均周速10m/秒で攪拌を開始し、ミキサー内の温度が80℃になった時点で攪拌を終了した。第3工程の処理により、セルロース繊維とポリ乳酸の混合物は固化して、直径が数mmから2cm程度の造粒物が得られた。
【0050】
〔第4工程〕
得られた造粒物に対して、表1に示す量の結晶核剤(フェニルスルホン酸亜鉛)を添加して、表1に示す組成物を得た。得られた組成物を用いて下記の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
〔使用成分〕
表1に示す実施例及び比較例で使用した成分の詳細は、以下のとおりである。
【0052】
(a)成分
ポリ乳酸:LACEA H440 三井化学社製
(b)成分
セルロース繊維(集合体):LDPR 日本製紙社製
(c)成分
フェニルスルホン酸亜鉛塩:PPA−Zn,日産化学社製
リン酸メラミン:melapur200/70
第3リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)
ビス(p-メチルペンジリデン)ソルビトール,ビス(p-トルイリデン)ソルビトール:ゲルオールMD-LM30,新日本理化製
(その他の成分)
酸化防止剤1:イルガノックス1010,チバ・スペシャル社製
酸化防止剤2:IRGAFOS 168,チバ・スペシャル社製。
【0053】
〔試験方法〕
(1)曲げ弾性率:ISO178に準じ測定。
【0054】
(2)シャルピー衝撃強さ
ISO179に準じ測定した。サンプルは、射出成形した試験片を、成形後1日23℃の部屋に放置したものと、アニールしたものの両方を用いた。アニールは熱風循環式乾燥機にて試験片を100℃雰囲気中に3時間置き、その後23℃の部屋にて24時間状態調節したのち、試験した。
【0055】
(3)荷重たわみ温度(HDT)
ISO75に準じ測定した。サンプルは、射出成形した試験片を、成形後1日23℃の部屋に放置したものと、アニールしたものの両方を用いた。アニールは熱風循環式乾燥機にて試験片を100℃雰囲気中に3時間置き、その後23℃の部屋にて24時間状態調節したのち、試験した。
【0056】
(4)成形サイクル(秒)
成形温度200℃、金型温度40℃、射出工程20秒、100トン成形機で、下記の形状の金型で成形し、金型から離型できる最少時間(秒)を測定した。10回成形して、その平均値を表示した。
【0057】
金型形状:ISO標準金型を使用。長さ17cm×平行部幅1cm×厚み4mm。サイドゲートから充填した。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ乳酸100質量部に対して、(b)セルロース繊維0.01〜160質量部、(c)結晶核剤0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
(b)成分のセルロース繊維が、セルロース繊維集合体が回転羽根を有するミキサーで解繊されたものである、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(c)成分の結晶核剤が、フェニルホスホン酸(塩)又はその誘導体を含むものである、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる成形品。



【公開番号】特開2008−150492(P2008−150492A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339869(P2006−339869)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】