説明

樹脂組成物

【課題】200℃以下の低温焼成時においても機械特性に優れた硬化膜を得ることのできる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)アルコキシメチル基またはメチロール基を有するポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体またはそれらの共重合体、および(b)アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物を含有する樹脂組成物。さらに(c)熱酸発生剤を含有する樹脂組成物。さらに(d)光酸発生剤を含有させることにより、ポジ型またはネガ型のパターン形成が可能となり、あるいは(e)不飽和結合を有する化合物と(f)光重合開始剤を含有させることで、ネガ型のパターン形成が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに好適に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜などには、耐熱性や機械特性などに優れたポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂が広く使用されている。ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド前駆体の塗膜を熱的に脱水閉環させて耐熱性、機械特性に優れた薄膜を得る場合、通常350℃前後の高温焼成を必要とする。ところが、例えば、次世代メモリとして有望なMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory;磁気抵抗メモリ)などは高温プロセスに弱いため、表面保護膜においても、約250℃以下、さらに望ましくは200℃以下の低温での焼成で硬化可能であり、従来の350℃前後の高温で焼成したものと遜色ない性能が得られるポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂が求められている。
【0003】
低温硬化可能な樹脂組成物としては、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾールなどの樹脂100重量部および熱架橋剤10〜100重量部を含有する樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、アルカリ可溶性ポリアミドイミド、光酸発生剤、溶剤および架橋剤を含有するポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)などが知られている。これらの樹脂組成物は前駆体ではなく既閉環型の樹脂を用いることで、低温焼成においても耐薬品性に優れ、硬化時の熱収縮を抑えることが可能であった。ところが、これらの樹脂組成物は既閉環型の樹脂に限定されるため、樹脂設計の自由度の高い組成物が求められていた。
【0004】
一方、低温焼成時においても機械特性の優れた薄膜が得られる樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂、光酸発生剤および酸の作用によりアルカリ可溶性樹脂の末端基と架橋し得る化合物を含有する感光性樹脂組成物(例えば、特許文献3〜4参照)が提案されている。しかし、この方法では特に200℃以下の低温で焼成した場合、膜の硬化が不充分なため機械特性が著しく低下する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−16214号公報(第1−4頁)
【特許文献2】特開2007−240554号公報(第1−3頁)
【特許文献3】特開2007−256525号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開2008−33158号公報(第1−3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、200℃以下の低温焼成時においても機械特性に優れた硬化膜を得ることのできる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂組成物は下記の構成からなる。すなわち、(a)アルコキシメチル基またはメチロール基を有するポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体またはそれらの共重合体、および(b)アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物を含有する樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物によって、200℃以下の低温焼成によって機械強度に優れた硬化膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、(a)アルコキシメチル基またはメチロール基を有するポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体またはそれらの共重合体、および(b)アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物を含有する。アルコキシメチル基およびメチロール基は、200℃以下の低温焼成でも、例えばフェノール骨格などに含まれるベンゼン環上の活性オルト・パラ位との反応や同種官能基同士の自己縮合反応を起こし、分子間を架橋する。一般的に行なわれている300℃以上の焼成プロセスから焼成温度の低温化を図る場合、架橋効率の低下によって硬化膜の機械強度が著しく低下する課題があるが、本発明においては、(a)成分と(b)成分の両方にアルコキシメチル基またはメチロール基を有することで、200℃以下の低温焼成においても架橋反応が効率的に進行するため、機械特性に優れた硬化膜を得ることができる。
【0010】
本発明に用いられる(a)成分は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体またはそれらの共重合体であり、アルコキシメチル基またはメチロール基を有する。以下、アルコキシメチル基とメチロール基を合わせて「メチロール系基」と呼ぶ。(a)成分は、メチロール系基を2つ以上有してもよく、2種以上のメチロール系基を有してもよい。また、本発明の樹脂組成物は(a)成分を2種以上含有してもよく、異なるメチロール系基を有する2種以上の(a)成分を含有してもよい。
【0011】
メチロール系基は、下記一般式(1)で表される。ただし、下記一般式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基は炭素数1〜10であることが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0012】
【化1】

【0013】
また、メチロール系基は、架橋反応性の観点から、炭素環式および/または複素環式芳香族環や、窒素原子と共有結合していることが好ましい。以下、窒素原子とメチロール系基が共有結合している基を「N−メチロール系基」と呼ぶ。
【0014】
N−メチロール系基は、下記一般式で表されることが好ましい。ただし、下記一般式(2)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアルキル基を表す。アルキル基は炭素数1〜10であることが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数を表し、p+q=2である。
【0015】
【化2】

【0016】
本発明に用いられる(a)成分は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体またはそれらの共重合体である。
【0017】
本発明に好ましく用いられるポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができる。例えば、ポリアミド酸は、テトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどとジアミン、対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンを反応させて得ることができる。ポリイミドは、例えば、上記の方法で得たポリアミド酸を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
【0018】
本発明に好ましく用いられるポリベンゾオキサゾール前駆体としては、ポリヒドロキシアミドを挙げることができる。例えば、ポリヒドロキシアミドは、ビスアミノフェノールとジカルボン酸、対応するジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができる。ポリベンゾオキサゾールは、例えば、上記の方法で得たポリヒドロキシアミドを、加熱あるいは無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
【0019】
本発明に好ましく用いられるポリアミドイミド前駆体は、例えば、トリカルボン酸、対応するトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物ハライドなどとジアミンやジイソシアネートを反応させて得ることができる。ポリアミドイミドは、例えば、上記の方法で得た前駆体を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0020】
本発明に用いられる(a)成分は、一般式(3)〜(6)のいずれかで表される構造単位を有することが好ましい。これらの構造単位を有する2種以上の樹脂を含有してもよいし、2種以上の構造単位を共重合してもよい。本発明における(a)成分の樹脂は、一般式(3)〜(6)のいずれかで表される構造単位を3〜1000有するものが好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(3)〜(6)中、RおよびRは4価の有機基、R、RおよびRは2価の有機基、Rは3価の有機基、Rは2〜4価の有機基、R10は2〜12価の有機基を表す。R〜R10はいずれも芳香族環および/または脂肪族環を有するものが好ましい。R11は水素原子または炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表す。rは0〜2の整数、sは0〜10の整数を表す。
【0023】
一般式(3)〜(6)中、Rはテトラカルボン酸誘導体残基、Rはジカルボン酸誘導体残基、Rはトリカルボン酸誘導体残基、Rはジ−、トリ−またはテトラ−カルボン酸誘導体残基を表す。R、R、R、Rを構成する酸成分としては、ジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸など、トリカルボン酸の例として、トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、テトラカルボン酸の例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。また、上に例示したジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の水素原子の1〜10個、好ましくは1〜4個を、メチロール系基、水酸基、アルコキシル基、スルホン酸基またはチオール基で置換したものを挙げることができる。これらのうち、一般式(6)においては、トリカルボン酸、テトラカルボン酸のそれぞれ1つまたは2つのカルボキシル基がCOOR11基に相当する。これらの酸成分は、そのまま、あるいは酸無水物、活性エステルなどとして使用できる。また、これら2種以上の酸成分を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
一般式(3)〜(6)中、R、R、RおよびR10はジアミン誘導体残基を表す。R、R、R、R10(OH)を構成するジアミン成分の例としては、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3−スルホン酸−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環の水素原子の一部を、メチロール系基、炭素数1〜10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミンなどを挙げることができる。これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。耐熱性が要求される用途では、芳香族ジアミンをジアミン全体の50モル%以上使用することが好ましい。
【0025】
一般式(3)〜(6)のR〜R10は、その骨格中にメチロール系基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などを含むことができる。この中でも、メチロール系基を有することによって、200℃以下の低温焼成における架橋効率がより向上するため好ましい。一方、アルカリ可溶性の観点から、フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基が好ましい。フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を適度に有する樹脂を含有する樹脂組成物はアルカリ可溶性を有し、ポジ型またはネガ型の感光性樹脂組成物として好適に用いられる。
【0026】
本発明の樹脂組成物をアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物として用いる場合、構造単位中にフッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子により、アルカリ現像の際に膜の表面に撥水性が付与され、表面からのしみこみなどを抑えることができる。(a)成分中のフッ素原子含有量は、界面のしみこみ防止効果を充分得るために10重量%以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20重量%以下が好ましい。
【0027】
また、耐熱性を低下させない範囲で、R、RまたはR10にシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよく、基板との接着性を向上させることができる。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0028】
また、樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、(a)成分の樹脂は主鎖末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。末端封止剤として用いられるモノアミンの導入割合は、全アミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物の導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0029】
モノアミンとしては、アニリン、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0030】
酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0031】
また、メチロール系基を有する末端封止剤で封止することにより、樹脂末端にメチロール系基を導入することができる。末端基導入の容易さおよび設計の自由度の高さの観点から、本発明において、(a)成分のメチロール系基を末端基として導入することが好ましい。
【0032】
メチロール系基を有する末端封止剤は特に構造は限定されないが、メチロール系基の架橋反応性の観点から、炭素環式または複素環式芳香族環にメチロール系基、N−メチロール化アミノ基またはN−アルコキシメチル化アミノ基が共有結合した構造、N−メチロール化アミド構造、N−アルコキシメチル化アミド構造、N−メチロール化尿素構造、またはN−アルコキシメチル化尿素構造を含有することが好ましい。これらの中でも特に好ましいものとして、芳香環上の位置異性体も含めて、モノアミンとして、アミノベンジルアルコール、メトキシメチルアニリン、ビス(ヒドロキシメチル)アニリン、ビス(メトキシメチル)アニリン、(N,N−ビス(ヒドロキシメチル)アミノ)アニリン、(N,N−ビス(メトキシメチル)アミノ)アニリン、酸無水物として、ヒドロキシメチル無水フタル酸、メトキシメチル無水フタル酸、ビス(ヒドロキシメチル)無水フタル酸、ビス(メトキシメチル)無水フタル酸、(N,N−ビス(ヒドロキシメチル)アミノ)無水フタル酸、(N,N−ビス(メトキシメチル)アミノ)無水フタル酸やこれらの芳香環の水素原子の一部を炭素数1〜4のアルキル基やフルオロアルキル基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシル基などで置換したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
メチロール系基を末端基として導入する場合、多官能のメチロール系基含有末端封止剤を用いることで、1つの末端に2つ以上のメチロール系基を導入することができる。末端にこれらの基を複数有することで200℃以下の低温焼成においても架橋反応が効率的に進行し、より機械特性に優れた硬化膜を得ることができる。
【0034】
本発明において(a)成分へのメチロール系基の導入方法に制限はない。例えば、上記のように酸成分、ジアミン成分、末端封止剤にメチロール系基を有するモノマーを用いて重合する方法、樹脂を酸性または塩基性条件下でホルムアルデヒドと反応させてメチロール基を導入する方法、樹脂を2つ以上のメチロール系基を有する化合物と反応を制御した上で一部のメチロール系基と反応させる方法などが挙げられる。
【0035】
また、(a)成分の樹脂に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を、酸性溶液に溶解し、構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、本発明に使用の末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂成分を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C−NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出可能である。
【0036】
一般式(3)〜(5)のいずれかで表される構造単位を有する樹脂において、構造単位の繰り返し数は3以上200以下が好ましい。また、一般式(6)で表される構造単位を有する樹脂において、構造単位の繰り返し数は10以上1000以下が好ましい。この範囲であれば、厚膜を容易に形成することができる。
【0037】
本発明に用いられる(a)成分は、一般式(3)〜(6)のいずれかで表される構造単位のみからなるものであってもよいし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。その際、一般式(3)〜(6)のいずれかで表される構造単位を樹脂全体の10重量%以上含有することが好ましく、30重量%以上がより好ましい。共重合あるいは混合に用いられる構造単位の種類および量は、最終加熱処理によって得られる薄膜の機械特性を損なわない範囲で選択することが好ましい。このような主鎖骨格としては例えば、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0038】
本発明に用いられる(a)成分は、フェノール性水酸基を(a)1kg中1〜4モル含有することが好ましい。フェノール性水酸基量をこの範囲にすることで、樹脂および(b)成分の架橋性化合物に含まれるメチロール系基と効率的に架橋反応を起こして、硬化膜の機械特性をより向上させることができる。また、樹脂の溶剤溶解性が向上することで、重合反応中の樹脂の析出およびゲル化の抑制や樹脂組成物の保存安定性の向上、また感光性樹脂組成物として用いる場合のアルカリ可溶性を適切にすることができる。1.5〜3モル/kgがより好ましい。フェノール性水酸基の導入箇所は側鎖でも末端でもよいが、少なくとも側鎖に含まれることが好ましく、その導入数は一般式(3)〜(6)のいずれかで表される構造単位当たり0.5以上が好ましい。
【0039】
(a)成分中のフェノール性水酸基量は、重合時のモノマー組成がわかる場合は、各モノマーの分子量およびフェノール性水酸基数と、理論的に生成するポリマー構造とから計算によって求めることができるし、以下の方法で測定によって求めることもできる。(a)成分の樹脂を例えばジメチルスルホキシド−dなどの適当な重溶媒に溶解させ、H−NMR測定を行なう。フェノール性水酸基由来のピークは、トリエチルアミンなどの塩基を少量添加することで同定できる。フェノール性水酸基量は、例えば、芳香環由来のピークや適当な内部標準のピークとの積分比から求めることができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、(b)アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物を含有する。これらメチロール系基を少なくとも2つ有することで、樹脂および同種分子と縮合反応して架橋構造体とすることができる。本発明の樹脂組成物は(a)成分と(b)成分を用いることで200℃以下の低温焼成時においても架橋反応が効率的に進行し、機械特性に優れた硬化膜を得ることができる。
【0041】
このような化合物の好ましい例としては、例えば、DML−PC、DML−PEP、DML−OC、DML−OEP、DML−34X、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−OCHP、DML−PFP、DML−PSBP、DML−POP、DML−MBOC、DML−MBPC、DML−MTrisPC、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BPC、DML−BisOC−P、DMOM−PC、DMOM−PTBP、DMOM−MBPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−HQ、TML−BP、TML−pp−BPF、TML−BPE、TML−BPA、TML−BPAF、TML−BPAP、TMOM−BP、TMOM−BPE、TMOM−BPA、TMOM−BPAF、TMOM−BPAP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“NIKALAC(登録商標)”MX−290、“NIKALAC”MX−280、“NIKALAC”MX−270、“NIKALAC”MX−279、“NIKALAC”MW−100LM、“NIKALAC”MX−750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。以下にこれらの構造を示す。
【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
(b)メチロール系基を少なくとも2つ有する化合物の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、より好ましくは30重量部以上であり、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下である。(b)成分の含有量をこの範囲にすることで、低温でも充分な架橋が進行して硬化膜の機械特性がより向上する。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、(c)熱酸発生剤を含有することが好ましい。(c)熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、(a)成分の樹脂および(b)成分に含まれるメチロール系基の架橋反応を促進する他、未閉環のイミド環、オキサゾール環の環化を促進し、硬化膜の機械特性をより向上させることができる。
【0048】
(c)熱酸発生剤の熱分解開始温度は、50℃〜270℃が好ましく、200℃以下がより好ましい。また、本発明の樹脂組成物を感光性樹脂組成物として用いる場合には、樹脂組成物を基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70〜140℃)時には酸を発生せず、その後の露光、現像でパターニングした後の最終加熱(キュア:約100〜400℃)時に酸を発生するものを選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。
【0049】
(c)成分から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸やトリフルオロメチルスルホン酸などのハロアルキルスルホン酸などが好ましい。これらはオニウム塩のような塩として、またはイミドスルホナートのような共有結合化合物として用いられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0050】
(c)熱酸発生剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。0.01重量部以上含有することで、架橋反応および樹脂の未閉環構造の環化が促進されるため、硬化膜の機械特性および耐薬品性をより向上させることができる。また、硬化膜の電気絶縁性の観点から、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、10重量部以下がより好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、さらに(d)光酸発生剤を含有してもよい。(d)光酸発生剤を含有することにより、ポジ型またはネガ型のパターン形成が可能になる。紫外線露光部に酸が発生し、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するため、特にポジ型感光性樹脂組成物として好ましく用いられる。
【0052】
本発明に用いられる(d)光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。中でも優れた溶解抑止効果を発現し、高感度かつ低膜減りの感光性樹脂組成物を得られるという点から、キノンジアジド化合物が好ましく用いられる。また、光酸発生剤を2種以上含有してもよい。これにより、露光部と未露光部の溶解速度の比をより大きくすることができ、高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくても良いが、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0054】
本発明において、キノンジアジド化合物は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。同一分子中にこれらの基を両方有する化合物を用いてもよいし、異なる基を用いた化合物を併用してもよい。
【0055】
本発明に用いられるキノンジアジド化合物は、特定のフェノール化合物から、次の方法により合成される。例えば5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール化合物をトリエチルアミン存在下で反応させる方法が挙げられる。フェノール化合物の合成方法は、酸触媒下で、α−(ヒドロキシフェニル)スチレン誘導体を多価フェノール化合物と反応させる方法などが挙げられる。
【0056】
(d)光酸発生剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは3〜40重量部である。光酸発生剤の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができる。さらに増感剤などを必要に応じて含有してもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、さらに(e)不飽和結合を有する重合性化合物および(f)光重合開始剤を含有してもよい。(e)不飽和結合を有する重合性化合物および(f)光重合開始剤を含有することにより、紫外線露光およびその後の加熱処理によって露光部がアルカリまたは有機の現像液に不溶化するため、ネガ型のパターン形成が可能になる。
【0058】
(e)不飽和結合を有する重合性化合物において、不飽和結合を含む基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの不飽和二重結合官能基、プロパルギル基などの不飽和三重結合官能基が挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、共役型のビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基が重合性の面で好ましい。また、安定性の点から、これらの不飽和結合を有する基を1分子中に1〜4個有することが好ましい。
【0059】
(e)不飽和結合を有する重合性化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレートなどが挙げられる。
【0060】
(e)不飽和結合を有する重合性化合物の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは5〜200重量部であり、相溶性の点から5〜150重量部がより好ましい。
【0061】
(f)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類や3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドンなどのベンジリデン類、7−ジエチルアミノ−3−テノニルクマリン、4,6−ジメチル−3−エチルアミノクマリン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、7−ジエチルアミノ−3−(1−メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン類、2−t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノンなどのアントラキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのメルカプト類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−(p−クロロフェニル)グリシン、N−(4−シアノフェニル)グリシンなどのグリシン類、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(o−ベンゾイルオキシム)、OXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)などのオキシム類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどのα−アミノアルキルフェノン類、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0062】
(f)光重合開始剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、1種類につき0.1〜40重量部が好ましい。2種以上を組み合わせる場合は、総量で0.2〜60重量部とすることが好ましい。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性および耐薬品性を低下させない範囲で、ノボラックまたはポリヒドロキシスチレンなどのフェノール性水酸基を有する樹脂を含有してもよい。これらの樹脂を含有することにより、感度を向上させることができる。
【0064】
ノボラック樹脂は、フェノール類をホルマリンなどのアルデヒド類で公知の方法で重縮合することにより得られる。
【0065】
フェノール類としては、例えば、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、メチレンビスフェノール、メチレンビス(p−クレゾール)、レゾルシン、カテコール、2−メチルレゾルシン、4−メチルレゾルシン、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、2,3−ジクロロフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、p−ブトキシフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0066】
また、アルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒドなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0067】
ポリヒドロキシスチレン樹脂としては、ビニルフェノールのホモポリマーまたはスチレンとの共重合体が挙げられる。
【0068】
これらの樹脂の好ましい重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算で2000〜50000、より好ましくは3000〜40000である。
【0069】
ノボラック樹脂および/またはポリヒドロキシスチレン樹脂の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましい。
【0070】
また、必要に応じて、キュア後の収縮残膜率を小さくしない範囲でフェノール性水酸基を有する低分子化合物を含有してもよい。これにより、現像時間を短縮することができる。
【0071】
これらの化合物としては、例えば、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA(テトラキスP−DO−BPA)、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0072】
フェノール性水酸基を有する低分子化合物の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部である。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。溶媒の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、100〜1500重量部が好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物の粘度は、2〜5000mPa・sが好ましい。粘度が2mPa・s以上となるように固形分濃度を調整することにより、所望の膜厚を得ることが容易になる。一方粘度が5000mPa・s以下であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。このような粘度を有する樹脂組成物は、例えば固形分濃度を5〜60重量%にすることで容易に得ることができる。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ−テル類を含有してもよい。
【0076】
また、本発明の樹脂組成物は無機粒子を含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら無機粒子の一次粒子径は100nm以下、より好ましくは60nm以下が好ましい。
【0077】
また、基板との接着性を高めるために、保存安定性を損なわない範囲で本発明の樹脂組成物にシリコン成分として、トリメトキシアミノプロピルシラン、トリメトキシエポキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシチオールプロピルシランなどのシランカップリング剤を含有してもよい。好ましい含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0078】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について例を挙げて説明するが、以下の方法に限定されない。
【0079】
(a)成分を有機溶剤に撹拌溶解し、あるいは(a)成分を得るために重合反応して得られた樹脂溶液をそのまま用い、この樹脂溶液に(b)成分を所定の割合で混合することで、均一な溶液とする。必要に応じて、製造過程の適当な段階でその他添加剤を混合する。添加剤が無機粒子の場合は、撹拌もしくは分散機を使用して分散液とする。このようにして得られた樹脂組成物を、孔径が0.2〜5μm程度のフィルターで濾過することが好ましい。
【0080】
次に、本発明の樹脂組成物の加工例としてパターンを形成する方法について説明するが、本発明の加工例、用途はこれによって限定されない。まず、樹脂組成物を基板上に塗布する。基板としてはシリコン、セラミックス類、ガリウムヒ素などのウェハー、または、その上に金属材料、例えば銅、金、チタン系金属からなる電極および/または配線が形成されているものが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としては、スピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布する。
【0081】
次に樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、樹脂被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分間〜数時間行うことが好ましい。必要に応じて、80℃で2分間加熱した後120℃で2分間加熱するなど、2段あるいはそれ以上の多段で乾燥することもできる。
【0082】
樹脂組成物に感光性が付与されていない場合はさらにこの上にフォトレジスト薬液を塗布する。塗布方法としては、スピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布する。
【0083】
次に、フォトレジストを塗布した基板を乾燥して、フォトレジストと本発明の樹脂の2層被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分間〜数時間行うことが好ましい。必要に応じて、80℃で2分間加熱した後120℃で2分間加熱するなど、2段あるいはそれ以上の多段で乾燥することもできる。
【0084】
次に、この2層被膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0085】
樹脂組成物に感光性が付与されている場合は、フォトレジストの塗布なしに直接化学線を所望のパターンを有するマスクを通して照射し、露光することができる。
【0086】
樹脂組成物に感光性が付与されている場合は、現像時のパターンの解像度が向上したり、現像条件の許容幅が増大する場合には、現像前にベーク処理をする工程を取り入れても差し支えない。この温度としては50〜180℃の範囲が好ましく、60〜150℃の範囲がより好ましい。時間は10秒間〜数時間が好ましい。この範囲内であると反応が良好に進行し、現像時間も短くて済むという利点がある。
【0087】
樹脂パターンを形成するには、露光後、現像液を用いてポジ型の場合は露光部を、ネガ型の場合は未露光部を除去する。現像液は、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種または2種以上組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0088】
現像後、100℃〜400℃の温度を加えて(a)成分と(b)成分の架橋反応を促進させる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間〜5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、300℃で各30分間ずつ熱処理する。あるいは室温より300℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明においての焼成温度としては150℃以上350℃以下が好ましいが、本発明は特に低温硬化性において優れた硬化膜を提供するものであるため、180℃以上250℃以下がより好ましい。
【0089】
本発明の樹脂組成物により形成した被膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられる。本発明の樹脂組成物を使用して得られる表面保護膜や層間絶縁膜などを有する電子デバイスとしては、例えば、耐熱性の低いMRAMが好ましい。すなわち、本発明の樹脂組成物は、MRAMの表面保護膜用として好適である。また、MRAM以外にも次世代メモリとして有望なポリマーメモリ(PolymerFerroelectric RAM:PFRAM)や相変化メモリ(Phase Change RAM:PCRAM、あるいはOvonics Unified Memory:OUM)も、従来のメモリに比べて耐熱性の低い新材料を用いる可能性が高い。したがって、本発明の樹脂組成物は、これらの表面保護膜用としても好適である。また、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、LCD、ECD、ELD、有機電界発光素子を用いた表示装置(有機電界発光装置)などの絶縁層に用いることができる。特に、近年の半導体素子の電極や多層配線、回路基板の配線は、構造のさらなる微細化に伴い、銅電極、銅配線が主流となっており、本発明の樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜をそのような電極、配線の保護膜として用いると、下地の銅電極や銅配線を腐食することなく高感度でパターン形成できるため、特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における硬化膜の機械特性評価方法について説明する。
【0091】
6インチのシリコンウェハー上に、1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過した樹脂組成物を、120℃で3分間のプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布現像装置Mark−7(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークした後、イナートオーブンCLH−21CD−S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で200℃まで昇温し、200℃で1時間加熱処理を行なった。温度が50℃以下になったところでウェハーを取り出し、45重量%のフッ化水素酸に5分間浸漬することで、ウェハーより樹脂組成物の膜を剥がした。この膜を幅1cm、長さ9cmの短冊状に切断し、テンシロンRTM−100((株)オリエンテック製)を用いて、室温23.0℃、湿度45.0%RH下で引張速度50mm/分で引っ張り、破断点伸度の測定を行なった。測定は1検体につき10枚の短冊について行ない、結果から上位5点の平均値を求めた。破断点伸度の値が10%以上の条件を満たすときを合格、満たさないときを不合格とした。
【0092】
(a)成分の樹脂中のフェノール性水酸基量は、各モノマーの分子量およびフェノール性水酸基数と、理論的に生成するポリマー構造とから計算によって求めた。
【0093】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0094】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0095】
【化8】

【0096】
合成例2 キノンジアジド化合物の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロリド(NAC−5、東洋合成(株)製)26.86g(0.10モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1重量%塩酸1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、Qのうち平均して2個が5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化された下記式で表されるキノンジアジド化合物を得た。
【0097】
【化9】

【0098】
各実施例、比較例に使用した(b)アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物を以下に示す。
【0099】
【化10】

【0100】
実施例に使用した(c)熱酸発生剤PAG−103(熱分解開始温度155℃;示差走査熱量測定法)を以下に示す。
【0101】
【化11】

【0102】
実施例に使用した(e)不飽和結合を有する重合性化合物を以下に示す。
【0103】
【化12】

【0104】
実施例に使用した(f)光重合開始剤を以下に示す。
【0105】
【化13】

【0106】
実施例1
乾燥窒素気流下、BAHF29.30g(0.08モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)120gに溶解させた。ここにビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(以降ODPAと呼ぶ、マナック(株)製)21.72g(0.07モル)をNMP10gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。その後、1時間かけて50℃まで冷却し、ODPA9.31g(0.03モル)をNMP10gとともに追加して50℃で1時間撹拌し、さらに末端封止剤として4−アミノベンジルアルコール3.69g(0.03モル)をNMP5gとともに加えて50℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、末端にメチロール基を有するポリイミド樹脂(A−1、フェノール性水酸基量2.6mol/kg)の粉末を得た。
【0107】
得られた樹脂(A−1)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてγ−ブチロラクトン(以降GBLと呼ぶ)を10g加えて樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)(W−1)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0108】
実施例2
実施例1で得られた樹脂(A−1)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を5g、溶剤としてGBLを17g加えてワニス(W−2)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0109】
実施例3
乾燥窒素気流下、BAHF1.47g(0.004モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.25g(0.001モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA4.34g(0.014モル)をNMP10gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、キシレンを10g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。その後、1時間かけて50℃まで冷却し、ODPA1.86g(0.006モル)をNMP10gとともに追加して50℃で1時間撹拌し、さらに末端封止剤として4−アミノベンジルアルコール0.74g(0.006モル)をNMP5gとともに加えて50℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水1Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、末端にメチロール基を有するポリイミド樹脂(A−2、フェノール性水酸基量0.8mol/kg)の粉末を得た。
【0110】
得られた樹脂(A−2)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−3)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0111】
実施例4
実施例1で得られた樹脂(A−1)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、熱酸発生剤としてPAG−103(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を0.25g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−4)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0112】
実施例5
乾燥窒素気流下、ODPA6.20g(0.02モル)をNMP100gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物9.07g(0.015モル)と1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.25g(0.001モル)をNMP25gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として4−アミノベンジルアルコール0.99g(0.008モル)をNMP5gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.15g(0.06モル)をNMP10gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水1Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、末端にメチロール基を有するポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体構造を含む樹脂(A−3、フェノール性水酸基量1.8mol/kg)の粉末を得た。
【0113】
得られた樹脂(A−3)5gに(b)成分としてNIKALAC MW−100LMを1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−5)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0114】
実施例6
ジアミンを4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.60g(0.013モル)と3,5−ジアミノベンジルアルコール0.28g(0.002モル)と1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.25g(0.001モル)に、末端封止剤を4−アミノフェノール0.87g(0.008モル)に変更する以外は実施例5と同様の方法で重合反応を行ない、側鎖にメチロール基を有するポリイミド前駆体樹脂(A−4、フェノール性水酸基量0.7mol/kg)の粉末を得た。
【0115】
得られた樹脂(A−4)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−6)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0116】
実施例7
乾燥窒素気流下、BAHF5.86g(0.016モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.25g(0.001モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA4.34g(0.014モル)をNMP10gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、キシレンを10g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。その後、1時間かけて50℃まで冷却し、ODPA1.86g(0.006モル)をNMP10gとともに追加して50℃で1時間撹拌し、さらに末端封止剤として4−メトキシメチルアニリン0.82g(0.006モル)をNMP5gとともに加えて50℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水1Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、末端にメトキシメチル基を有するポリイミド樹脂(A−5、フェノール性水酸基量2.6mol/kg)の粉末を得た。
【0117】
得られた樹脂(A−5)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−7)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0118】
実施例8
末端封止剤を3,5−ビス(ヒドロキシメチル)アニリン0.92g(0.006モル)に変更する以外は実施例7と同様の方法で重合反応を行ない、1つの末端にメチロール基を2つずつ有するポリイミド樹脂(A−6、フェノール性水酸基量2.6mol/kg)の粉末を得た。
【0119】
得られた樹脂(A−6)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−8)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0120】
実施例9
実施例1で得られた樹脂(A−1)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、光酸発生剤として合成例2で得られたキノンジアジド化合物0.5g、接着改良剤としてビニルトリメトキシシラン0.05g、および溶剤としてGBLを12g加えてポジ型感光性のワニス(W−9)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0121】
得られたワニス(W−9)を、6インチのシリコンウェハー上に120℃で4分間のベーク後の膜厚が10μmになるように、塗布現像装置Mark−7を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行なった。膜厚は光干渉式膜厚測定装置ラムダエースSTM−602(大日本スクリーン製造(株)製)を使用して、屈折率1.629で測定した。露光機i線ステッパーDSW−8000(GCA社製)にパターンの切られたレチクルをセットし、50〜1000mJ/cmの露光量で50mJ/cmステップで露光した。露光後、Mark−7の現像装置を用いて、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM−D)を用いてパドル法で現像液の吐出時間10秒、パドル時間50秒の現像を2回繰り返し、その後純水でリンス後、振り切り乾燥し、ポジ型のパターンを得た。パターンを光学顕微鏡で観察したところ、450mJ/cm以上のところで5μmのパターンが解像していた。また、現像後の膜厚は8.9μmであった。
【0122】
実施例10
実施例1で得られた樹脂(A−1)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、不飽和結合を有する重合性化合物としてPDBE−200(商品名、(株)日本油脂製)2.0g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名DPHA、日本化薬(株)製)0.5g、光重合開始剤としてOXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)0.6g、接着改良剤としてビニルトリメトキシシラン0.05g、および溶剤としてGBLを16g加えてネガ型感光性のワニス(W−10)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0123】
得られたワニス(W−10)を、6インチのシリコンウェハー上に100℃で3分間のベーク後の膜厚が10μmになるように、塗布現像装置Mark−7を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行なった。膜厚はラムダエースSTM−602を使用して、屈折率1.629で測定した。全波長露光機(ウルトラテック(株)製、全波長ステッパーSpectrum 3e)にパターンの切られたレチクルをセットし、露光量500mJ/cm(i線換算)で全波長露光を行なった。露光後の被膜に対して、Mark−7のホットプレートを用いて100℃で1分間熱処理を行なった。Mark−7の現像装置を用いて、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液を用いてパドル法で現像液の吐出時間10秒、パドル時間80秒の現像を行ない、その後純水でリンス後、振り切り乾燥し、ネガ型のパターンを得た。パターンを光学顕微鏡で観察したところ、10μmのパターンが解像していた。また、現像後の膜厚は8.3μmであった。
【0124】
比較例1
末端封止剤を4−アミノフェノール0.65g(0.006モル)に変更する以外は実施例7と同様の方法で重合反応を行ない、メチロール系基をもたないポリイミド樹脂(A−7、フェノール性水酸基量3.1mol/kg)の粉末を得た。
【0125】
得られた樹脂(A−7)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−11)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0126】
比較例2
末端封止剤を4−エチニルアニリン0.94g(0.008モル)に変更する以外は実施例5と同様の方法で重合反応を行ない、メチロール系基をもたないポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体構造を含む樹脂(A−8、フェノール性水酸基量1.8mol/kg)の粉末を得た。
【0127】
得られた樹脂(A−8)5gに(b)成分としてNIKALAC MX−270を1g、溶剤としてGBLを10g加えてワニス(W−12)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0128】
比較例3
実施例1で得られた樹脂(A−1)5gに溶剤としてGBLを8g加えてワニス(W−13)を作製し、上記の方法で機械特性の評価を行なった。
【0129】
比較例4
乾燥窒素気流下、BAHF0.73g(0.002モル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.80g(0.014モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.25g(0.001モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA4.34g(0.014モル)をNMP10gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、キシレンを10g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら150℃で撹拌したところ、約3時間後にフラスコ内で樹脂がゲル化しており、目的のポリイミド樹脂粉末は得られなかった。高温重合中の系中のフェノール性水酸基量は樹脂を粉末に換算して0.4mol/kgであった。
【0130】
上記の評価結果を表1に示す。なお、表1中、「PI」はポリイミドを、「PBO」はポリベンゾオキサゾールを示し、「nd」とは膜が脆いため測定不可であることを示す。
【0131】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルコキシメチル基またはメチロール基を有するポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体またはそれらの共重合体、および(b)アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)成分中のアルコキシメチル基またはメチロール基の少なくとも1つが樹脂の末端にあることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(a)成分がフェノール性水酸基を(a)1kg中1〜4モル含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(c)熱酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(d)光酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(e)不飽和結合を有する化合物および(f)光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−229210(P2010−229210A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75881(P2009−75881)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】