説明

樹脂組成物

【課題】 懸濁重合で得られたポリマー粒子を溶融混練するにあたりそのまま押出機に供することができ、しかも押出機のスクリューに樹脂が食い込み、かつ単軸押出機において安定した押出加工ができるポリマー粒子を用いた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 重合性単量体を、重合開始剤と、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩および/または水溶性過硫酸塩の存在下、水性媒体中で懸濁重合し、重合転化率が50〜80%の時点でアニオン系活性剤を添加するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子を加熱溶融した後、所定の形状に加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は懸濁重合法によって得られる非球状ポリマー粒子を加工した樹脂組成物及びその製造方法に関するもので、非球状ポリマー粒子について粉砕等の処理を施すこと無く、単軸押出機で安定した押出加工が可能となるポリマー粒子を用いた樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン系ポリマーは成形性、剛性、寸法安定性に優れ、廉価であることから成形用途に広く使用されている。近年、スチレン系ポリマーに新たな機能を付与するため、様々な添加剤をスチレン系ポリマーと混合、溶融混練する試みがなされている。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、コニーダ等を用いる方法で行われている。
従来、この種のポリマーと混合、溶融混練する樹脂組成物のペレットとしては種々提供されている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献1は、EVOH組成物を単軸押出機に供給してストランド状に押出しEVOH組成物のペレットを得ることが記載されている。
特許文献2は、押出機内部に設けられたスクリューの回転駆動により熱可塑性樹脂を溶融混練し、この溶融混練した熱可塑性樹脂をダイプレートのダイノズルから吐出させて回転カッタのカッタブレードによりペレット(チップ)にホットカット(切断)することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−105428号公報
【特許文献2】特開平8−155954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、いずれの特許文献にも、押出機に投入するポリマー形状について記載がない。
また、一般的に懸濁重合法により得られたスチレン系ポリマーは球状であり、押出機、特に単軸押出機では、樹脂原料が押出機内に食い込み難く、安定した押出ができないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、懸濁重合で得られたポリマー粒子を溶融混練するにあたりそのまま押出機に供することができ、しかも押出機のスクリューに樹脂が食い込み、かつ単軸押出機において安定した押出加工ができるポリマー粒子を用いた樹脂組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重合性単量体を、重合開始剤と、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩および/または水溶性過硫酸塩の存在下、水性媒体中で懸濁重合し、重合転化率が50〜80%の時点でアニオン系活性剤を添加するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子を加熱溶融した後、所定の形状に加工した樹脂組成物である。
なお、本発明は、難水溶性無機化合物を、アニオン系活性剤を添加する前の時点で、且つ重合転化率が45〜70%の時点で添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
このポリマー粒子を用いると、粉砕等の処理を施すこと無く、そのままポリマー粒子を用いて溶融混練して、単軸押出機で安定した押出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明のポリマー粒子の概略を示す図であり、図1−1は前記ポリマー粒子の概略正面図、図1−2は前記ポリマー粒子の短軸方向に対して直交する方向から光を照射して得られる投影図、図1−3は前記ポリマー粒子の長軸方向に対して直交する方向から光を照射して得られる投影図である。
【図2】図2は本発明の実際の一具体例であるポリマー粒子を示す12倍の走査型電子顕微鏡(SEM)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物を得るには、重合性単量体を、重合開始剤と、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩および/または水溶性過硫酸塩の存在下、水性媒体中で懸濁重合し、重合転化率が50〜80%の時点でアニオン系活性剤を添加するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子を加熱溶融した後、所定の形状に加工した点に特徴がある。
【0010】
ここで、本発明における重合性単量体は、不飽和二重結合を有する疎水性の単量体が挙げられる。例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−nオクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレンおよびその誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールなどが挙げられる。
これらの内、スチレンおよびその誘導体、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類が好ましい。これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組合せて使用することができる。
【0011】
本発明における重合開始剤としては、一般に使用されるラジカル発生型重合開始剤を用いることができ、例えば過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2、2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ3、3、5トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができるが、通常は分子量を調整し、残存単量体を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50〜80℃の範囲にある重合開始剤と、分解温度が80〜120℃の範囲にある異なる重合開始剤とが併用される。上記の重合開始剤は、液体、固形どちらの場合でも少量の重合性単量体に溶解して反応器へ投入すればよい。
【0012】
本発明における非球状粒子を得る場合は、難水溶性リン酸塩の存在下、水性媒体中で、反応初期では活性剤を使用せずに水溶性過硫酸塩および/または水溶性亜硫酸塩を添加し、スチレン系単量体を重合させる方法(いわゆるソープフリー重合法)が好ましい。
難水溶性リン酸塩としては、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム等があり、粉末又は水性スラリーの状態で使用され、リン酸三カルシウムが好ましい。その使用量はスチレン系単量体に対して、固形分換算で0.03重量%以上添加される。0.03重量%より少ないと分散状態が維持できず、1重量%以上でも反応は可能であるがさらなる効果がないと共に経済的ではない。これらの難水溶性リン酸塩は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
水溶性亜硫酸塩は亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム等があげられる。さらに水に溶解及び重合反応系内で反応して亜硫酸塩となる物質も使用できる。これらの前駆物質としては水溶性のピロ亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜二チオン酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシル酸塩、硫酸塩等があげられる。これらの中で特に亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラートが好ましい。これらの水溶性亜硫酸塩またはこれらの前駆物質は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
更に、本発明において水溶性過硫酸塩も必要に応じて使用することができる。水溶性過硫酸塩として過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。ただし、これらの中で特に過硫酸カリウムが好ましい。これらの水溶性過硫酸塩は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0013】
本発明の懸濁重合法では重合中の一定粘度となったポリマー粒子にアニオン系界面活性剤を添加し、このポリマー粒子の界面張力を低下させ、攪拌のせん断力によって非球状ポリマー粒子としている。この粘度の指標として重合転化率を用いる。すなわち、重合転化率が50〜80%の時点でアニオン系界面活性剤を添加する。好ましい重合転化率は55〜75%であり、より好ましくは65〜75%である。重合転化率が50%未満の場合、ポリマー粒子同士が結合し数cm大の塊が発生してしまう。また80%を超えた場合、ポリマー粒子の粘度が高くなっており、攪拌のせん断力によって非球状にはできなくなる。また、アニオン系界面活性剤は純水で希釈して添加する方が好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。これらのアニオン系界面活性剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0014】
本発明の懸濁重合法では重合初期の低粘度ポリマーの状態では水性媒体中で粒子同士の合着、分裂を繰り返しており、粒子径を揃えている。そして、一定粘度となったポリマー粒子に難水溶性無機化合物を添加し、合着、分裂を停止させている。この粘度の指標として重合転化率を用いる。すなわち、重合転化率が45〜70%の時点で難水溶性無機化合物を添加する。好ましい重合転化率は55〜65%である。重合転化率が45%未満の場合、ポリマー粒子の粒子径が揃う前に添加することとなり、粒子径分布がブロードとなり好ましくない。また、70%を超えた場合、それ以前の段階でポリマー粒子の粘度上昇、粒子同士の合着により、数cm大の塊が発生してしまう虞がある。また、難水溶性無機化合物は純水に分散させて添加する方が好ましい。
また、難水溶性無機化合物はアニオン系活性剤を添加する前の時点で添加することが重要である。難水溶性無機化合物としては、前述の難水溶性リン酸塩の他、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムが好ましい。これらの難水溶性無機化合物は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0015】
本発明のポリマー粒子は、このようにして懸濁重合法によって得られるポリマー粒子であって、粒子の長軸方向と直交する方向からそれぞれ光を照射して得られる投影二次元図の長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.3以上であり、平均粒子径が300μm以上である非球状粒子である。また好ましくは、L/Dが1.5以上、2.5以下であり、平均粒子径が500μm以上、2000μm以下である非球状粒子である。
換言すれば、本発明におけるL/Dは1.3以上であり、1.3以上、4.0以下が好ましく、1.5以上、2.5以下がより好ましい。L/Dが1.3未満の場合、すなわち真球形状に近い場合、この粒子をホッパーを通じて押出機のバレル内へ供給した場合、粒子が押出機のスクリューフライトに引っ掛かりにくく、スクリューとこれに対向するバレル内面との間において粒子が滑りを生じて押出方向に規則的に進まずにホッパー付近に滞留する。その結果、押出機の押出量が変動して安定性が低下してしまう虞がある。
ここでL/Dは下記の要領で測定されたものをいう。すなわち、平均粒子径の測定において重量分布の最も大きい篩上から20粒子をランダムにピックアップし、図1中のLn(μm)とDn(μm)をノギスで測定し、20粒子のLn/Dn を測定し、相加平均値をL/Dとした。図2は本発明の実際の一具体例であるポリマー粒子を示す12倍の走査型電子顕微鏡(SEM)の図である。
また本発明の平均粒子径は300μm以上であり、300μm以上、3000μm以下が好ましく、500μm以上、2000μm以下がより好ましい。平均気泡径が300μm未満の場合、スクリューとバレル内面との間において粒子が滑りを生じて押出方向に規則的に進まずに押出機の安定性が低下してしまう虞がある。
本発明は平均粒子径が300μm以上、好ましくは500μm以上、2000μm以下である樹脂粒子であるが、平均粒子径は以下の方法で測定した。すなわち、JIS標準ふるい目開き2360μm(7.5メッシュ)、目開き2000μm(8.6メッシュ)、目開き1700μm(10メッシュ)、目開き1400μm(12メッシュ)、目開き1180μm(14メッシュ)、目開き1000μm(16メッシュ)、目開き850μm(18.5メッシュ)、目開き710μm(22メッシュ)、目開き600μm(26メッシュ)、目開き500μm(30メッシュ)、目開き425μm(36メッシュ)、目開き355μm(42メッシュ)、目開き300μm(50メッシュ)、目開き250μm(60メッシュ)、目開き212μm(70メッシュ)、目開き180μm(83メッシュ)、で振動ふるいによって分級し、累積重量分布曲線を基にして累積重量が50%となる粒子径(メジアン径)を平均粒子径とした。 本発明における非球状粒子は図1中のdに応じてほぼ分級されることとなる。
【0016】
〈重量平均分子量の測定方法〉
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により、下記の条件でポリマー粒子の重量平均分子量の測定を行った。
GPCの測定条件
機種:HLC−8320GPC(東ソー社製)
ガードカラム:TSKguardcolum SuperHZ-H 4.6mmI.D.×2cmL 1本 (東ソー社製)
カラム:TSKgel
SuperHZM-H 4.6mmI.D.×15cmL 2本 (東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:試薬1級テトラヒドロフラン
流量:0.175ml/min.
試料濃度:0.03wt%
注入量:50μl
【0017】
〈重合転化率の測定方法〉
重合転化率は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、重合中のポリマー粒子を反応液中から取り出し、ポリマー粒子の表面に付着した水分をガーゼを用いて拭き取り除去する。そして、そのポリマー粒子を0.08g精秤し、トルエン25ミリリットル中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ミリリットル、5重量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1重量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して試料の滴定数(ml)を求める。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素8.7g及び三塩化ヨウ素7.9gを溶解してなるものである。
一方、ポリマー粒子を溶解させることなく、上記同様に滴定を行いブランクの滴定数(ml)を求める。
重合転化率は下記式に基づいて算出することができる。
(式1)

【0018】
本発明における樹脂組成物は前述の懸濁重合によって得られるポリマー粒子と添加剤を混合して押出加工してもよい。添加剤としてはフェノール系化合物、リン系化合物などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸フェニルなどの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、臭素系化合物、リン系化合物などの難燃剤、流動パラフィンなどの可塑剤、高級脂肪酸金属塩や高級脂肪酸アミドなどの滑剤や離型剤、帯電防止剤、染料、顔料などの着色剤、炭酸カルシウム、硫酸バルウム、酸化亜鉛、タルクなどの無機化合物が挙げられる。これらの添加剤は単独でまたは2種以上併用して用いることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブ(以下、反応器ともいう)に純分10%であるリン酸三カルシウム(大平化学産業(株)製)1344gと亜硫酸水素ナトリウム(関東化学(株)製)0.22g及び純分74.2%であるリン酸(米山化学工業(株)製)1.5gを加え、更に重合開始剤として純分75%である過酸化ベンゾイル(日油(株)製「ナイパーBW」)130g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油(株)製「パーブチルE」)22g、イオン交換水37kg及びスチレン単量体44kgを投入した後、攪拌下で溶解及び分散させ懸濁液を形成した。
次に、200rpmの攪拌下で90℃に昇温した。90℃に昇温後4時間目に炭酸カルシウム(白石工業(株)製「赤玉」)22gのイオン交換水500g分散液を反応器に添加した。更に90℃昇温後、4時間45分目に純分25%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日油(株)製「NR−R−25」)3gのイオン交換水1250g溶解液を反応器に添加し、引き続き90℃で1時間45分継続した。更に125℃に昇温し、2時間30分重合反応させた後、25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級してポリスチレン系ポリマー非球状粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は1560μmであり、L/Dは2.17であった。また重量平均分子量は34.1万であった。
得られた粒子をホッパーに充填し、単軸押出機(大阪精機工作(株)製「75VSE−65−25N」に供給して以下の条件で、ストランド状組成物(直径3mm)を押出した。
[押出条件]
スクリュー内径 65mm
L/D 25
ダイ 18穴ストランドダイ
ダイノズル 直径3.0mm
押出温度 C1:180℃ D:210℃
C2:200℃
C3:210℃
C4:210℃
次いで、押出されたストランド状組成物を水温50℃の水槽を通過させて冷却した後、ペレタイザーを用いて切断して、長さ3mm、直径3mmの円柱状ペレットを得た。上記の条件で1時間の連続運転を行い、押出安定性を以下の要領で評価した。
1時間の連続運転中の単軸押出機のモーター電流値を記録計に記録し、最大値、最小値を求め、その中心値±5%以内に最大値、最小値が含まれる場合を○、それ以外を×、電流値が低下し1時間の連続運転ができなかった場合を××とした。
本実施例1では単軸押出機のモーター電流値は122〜127Aであり、押出安定性の評価は○であった。
【0020】
(比較例1)
内容積100リットルの攪拌機付反応器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gのイオン交換水1250g溶解液、純分10%であるリン酸三カルシウム1344gを加え、更に重合開始剤として純分75%である過酸化ベンゾイル130g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート22g、イオン交換水37kg及びスチレン単量体44kgを投入した後、攪拌下で溶解及び分散させ懸濁液を形成した。
次に、200rpmの攪拌下で90℃に昇温した。90℃に昇温後4時間目に炭酸カルシウム22gのイオン交換水500g分散液を反応器に添加し、引き続き90℃で2時間30分継続した。更に125℃に昇温し、2時間30分重合反応させた後、25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級してポリスチレン系ポリマー球状粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は280μmであり、L/Dは1.0であった。また重量平均分子量は34.2万であった。
得られた粒子を実施例1と同様に単軸押出機に供給した。しかし、単軸押出機のモーター電流値は120〜140Aと不安定となり、ストランドの直径が変動し、安定した押出ができなかった。押出安定性の評価は×であった。
【0021】
(比較例2)
内容積100リットルの攪拌機付反応器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gのイオン交換水1250g溶解液、純分10%であるリン酸三カルシウム1344gを加え、更に重合開始剤として純分75%である過酸化ベンゾイル130g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート22g、イオン交換水37kg及びスチレン単量体44kgを投入した後、攪拌下で溶解及び分散させ懸濁液を形成した。
次に、200rpmの攪拌下で90℃に昇温した。90℃に昇温後4時間目に炭酸カルシウム22gのイオン交換水500g分散液を反応器に添加し、引き続き90℃で2時間30分継続した。更に125℃に昇温し、2時間30分重合反応させた後、25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級してポリスチレン系ポリマー球状粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は280μmであり、L/Dは1.0であった。また重量平均分子量は34.2万であった。
得られた粒子を実施例1と同様に単軸押出機に供給した。しかし供給開始して直ぐに電流値が低下して、5時間の連続運転はできなかった。押出安定性の評価は××であった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の樹脂組成物は、そのまま押出機に供することができ、しかも押出機のスクリューに樹脂が食い込み、かつ100重量%配合しても単軸押出機において安定した押出ができる。従って、各種樹脂組成物に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体を、重合開始剤と、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩および/または水溶性過硫酸塩の存在下、水性媒体中で懸濁重合し、重合転化率が50〜80%の時点でアニオン系活性剤を添加するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子を加熱溶融した後、所定の形状に加工した樹脂組成物。
【請求項2】
難水溶性無機化合物を、アニオン系活性剤を添加する前の時点で、且つ重合転化率が45〜70%の時点で添加することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合性単量体がスチレン系単量体であることを特徴とする請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
懸濁重合法によって得られるポリマー粒子であって、粒子の長軸方向と直交する方向からそれぞれ光を照射して得られる投影二次元図の長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.3以上であり、平均粒子径が300μm以上である非球状ポリマー粒子を加熱溶融した後、所定の形状に加工した、請求項1乃至3のいずれかの項に記載の樹脂組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208000(P2011−208000A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76897(P2010−76897)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】