説明

樹脂組成物

【課題】セルロース系繊維を良好に分散することができ、高い機械的強度と衝撃強度とを有し、かつ成形性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、成分(a)樹脂と成分(b)セルロース系繊維と成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤とを含有し、好ましくは、成分(a):50〜90質量%、成分(b):5〜45質量%、成分(c):2〜10質量%、(ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関するものであり、詳しくは、セルロース系繊維を良好に分散することができ、高い機械的強度と衝撃強度とを有し、かつ成形性に優れた樹脂組成物に関する。
また本発明は、該樹脂組成物からなる自動車用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維径が小さい微小繊維は、種々の添加剤、例えば、樹脂成形体の強度を向上させるためのフィラーとして、また、不織布状シートの強度を改善するための強化剤、濾過性能を向上させるための濾過助剤、食品添加物などに広く利用されている。
【0003】
また、微小繊維は、表面積の大きさ、均一分散性、絡み合い、粉体保持性などの特性を利用して、物質強度の向上以外にも、隠蔽性、絶縁性、軽量化などの改善において、広く実用化されている。
【0004】
しかし、微小繊維を、ベース樹脂に混合する場合、ベース樹脂および/または微小繊維の種類によっては、微小繊維を、ベース樹脂に均一に分散するのが困難であり、併用効果を十分に得られない場合がある。特に、セルロース系繊維は、親水性基を有するため、樹脂に対する分散性は低い。
【0005】
例えば、特表平9−509694号公報(特許文献1)には、熱可塑性ポリマーマトリックスとセルロース充填材とを含む組成物において、セルロース充填材が個別化されたミクロフィブリルセルロースを含むことが開示されている。この文献には、ポリマーマトリックスとしてポリマー粒子を含むポリマーラテックスが記載され、ポリマーラテックスとミクロフィブリルセルロースの水溶性懸濁液とを撹拌下で混合して水溶性組成物を得ることが記載されている。しかし、この技術では、樹脂の種類が親水性または水分散性樹脂に制限され、用途が著しく限定される。また、コスト面においても有用でない。
【0006】
また、特開2008−179922号公報(特許文献2)には、相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を叩解処理により分割して得られるフィブリル化繊維が記載されており、このようなフィブリル化繊維が水に対して高い分散性を有することが開示されている。しかし、特許文献2には、マトリックス樹脂に対するフィブリル化繊維の分散性および補強性については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平9−509694号公報
【特許文献2】特開2008−179922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、セルロース系繊維を良好に分散することができ、高い機械的強度と衝撃強度とを有し、かつ成形性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
また本発明の別の目的は、該樹脂組成物からなる自動車内外装用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂およびセルロース系繊維の中に、特定の分散剤配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.成分(a)樹脂と成分(b)セルロース系繊維と成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤とを含有する樹脂組成物。
2.前記成分(c)の酸価が20mgKOH/g以下であることを特徴とする前記1に記載の樹脂組成物。
3.前記成分(c)の分散剤はポリエステルポリオールであることを特徴とする前記1または2に記載の樹脂組成物。
4.前記成分(b)が、セルロース繊維であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物
5.前記成分(b)が、半合成セルロース繊維であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記成分(b)のアスペクト比(L/D)が1〜2,000であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.前記成分(b)のアスペクト比(L/D)が5〜1,000であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記成分(b)の平均繊維径(D)が1nm〜100μmであることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
9. 前記成分(b)のアスペクト比が5−50、平均繊維径が5−20μmの半合成セルロース繊維であることを特徴とする前記1〜3ないしは5〜8のいずれかに記載の樹脂組成物
10.前記成分(a)樹脂が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする前記1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
11.前記成分(a)樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする前記1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
12.前記成分(a)樹脂が50〜90質量%、前記成分(b)セルロース系繊維が5〜45質量%、 前記成分(c)分散剤が2〜10質量% (ただし前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)であることを特徴とする前記1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.前記1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物からなる自動車用部材。
【0010】
また本発明の好適な形態によれば、下記の熱可塑性樹脂組成物が提供される。
14.成分(a)熱可塑性樹脂:50〜90質量%
成分(b)セルロース系繊維:5〜45質量%
成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤:2〜10質量%
(ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)
を含有する熱可塑性樹脂組成物。
15.前記成分(c)の酸価が20mgKOH/g以下であり、かつ水酸基価が30mgKOH/g以上であることを特徴とする前記14に記載の熱可塑性樹脂組成物。
16.前記成分(b)が、セルロース繊維であることを特徴とする前記14〜15のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
17.前記成分(b)が、半合成セルロース繊維であることを特徴とする前記14〜15のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
18.前記成分(b)のアスペクト比(L/D)が1〜2,000であることを特徴とする前記14〜17のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
19.前記成分(b)のアスペクト比(L/D)が5〜1,000であることを特徴とする前記14〜18のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
20.前記成分(b)の平均繊維径(D)が1nm〜100μmであることを特徴とする前記14〜19のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
21. 前記成分(b)のアスペクト比が5−50、平均繊維径が5−20μmの半合成セルロース繊維であることを特徴とする前記14〜15ないしは17〜20のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物
22.前記成分(a)熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであることを特徴とする前記14〜21に記載の熱可塑性樹脂組成物。
23.成形体のシャルピー衝撃強度(ノッチ付き)が3kJ/m2以上であることを特徴とする前記14〜22のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
24.前記14〜23のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる自動車内外装用部材用熱可塑性樹脂組成物。
25.前記24に記載の自動車内外装用部材用熱可塑性樹脂組成物を用いてなる自動車内外装用部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂およびセルロース系繊維の中に、特定の分散剤を配合することにより、セルロース系繊維を良好に分散することができ、高い機械的強度と衝撃強度とを有し、かつ成形性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
また本発明の樹脂組成物は、とくに自動車用部材用として有用であり、上記特性に優れた自動車用部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
成分(a)樹脂
本発明の成分(a)として使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好適であり、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂またはその誘導体、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0014】
これらの樹脂のうち、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂などが好ましい。
【0015】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド;脂環族ポリアミド;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド;これらのポリアミドのうち少なくとも二種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドなどが挙げられる。なお、ポリアミド系樹脂には、ポリアミドエラストマーも含まれる。
【0016】
飽和ポリエステル系樹脂としては、芳香族ポリエステル(テレフタル酸単位を含むポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート;ナフタレン酸単位を含むポリエステル、例えば、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレートなど);脂肪族ポリエステル(アジピン酸単位を含むポリエステル、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどのポリアルキレンアジペート;ポリ乳酸など)、ポリアリレート、液晶性ポリエステルなどが挙げられる。これらのポリエステルは、通常、結晶性を有している。なお、結晶性ポリエステルは、構成成分以外のジカルボン酸成分および/またはグリコール成分により変性されていてもよい。また、前記ポリエステル系樹脂には、ポリエステルエラストマーも含まれる。
【0017】
ポリフェニレンオキシド系樹脂としては、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)オキシドなどの単独重合体、これらの単独重合体をベースとして構成された変性ポリフェニレンオキシド共重合体、ポリフェニレンオキシドまたはその共重合体にスチレン系重合体がグラフトしている変性グラフト共重合体などが挙げられる。
【0018】
ポリフェニレンスルフィド系樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどが挙げられる。
【0019】
オレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体の単独重合体の他、オレフィン系単量体の共重合体、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン系単量体としては、例えば、鎖状オレフィン類[エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−C2−20オレフィン(好ましくはα−C2−10オレフィン、さらに好ましくはα−C2−4オレフィン)など]、環状オレフィン類[例えば、シクロペンテンなどのシクロアルケン(C4−10シクロアルケンなど);シクロペンタジエンなどのシクロアルカジエン(C4−10シクロアルカジエンなど);ノルボルネン、ノルボルナジエンなどのビシクロアルケンまたはビシクロアルカジエン(C8−20ビシクロアルケンまたはビシクロアルカジエンなど);ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのトリシクロアルケンまたはトリシクロアルカジエン(C10−25トリシクロアルケンまたはトリシクロアルカジエンなど)など]などが挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。上記オレフィン系単量体のうち、エチレン、プロピレンなどのα−C2−4オレフィンなどの鎖状オレフィン類が好ましい。
【0020】
他の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)など];ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
前記オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1などの三元共重合体などの鎖状オレフィン類(特にα−C2−4オレフィン)の共重合体などが挙げられる。また、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン類(特に、エチレン、プロピレンなどのα−C2−4オレフィン)と脂肪酸ビニルエステル単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンープロピオン酸ビニル共重合体など);鎖状オレフィン類と(メタ)アクリル系単量体との共重合体[鎖状オレフィン類(特にα−C2−4オレフィン)と(メタ)アクリル酸との共重合体(例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなど);鎖状オレフィン類(特にα−C2−4オレフィン)とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体など);など];鎖状オレフィン類(特にα−C2−4オレフィン)とジエン類との共重合体(例えば、エチレン−ブタジエン共重合体など);エポキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)、カルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体)、エポキシおよびカルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−無水マレイン酸−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)などの変性ポリオレフィン;オレフィン系エラストマー(エチレンプロピレンゴムなど)などが挙げられる。オレフィン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど]、アクリロニトリルなどのアクリル系モノマーの単独重合体または共重合体;アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0023】
前記アクリル系単独重合体または共重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0024】
ビニル系樹脂としては、塩化ビニル系樹脂[塩化ビニル系モノマーの単独重合体(ポリ塩化ビニル系樹脂など)、塩化ビニル系モノマーと他のモノマーとの共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)など]、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系モノマーの単独重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系モノマーと他のモノマーとの共重合体など)、ポリビニルホルマールなどのポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。これらのビニル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
上記の中でも、本発明の成分(a)として使用する樹脂としては、比重、強度、成形加工性、価格のバランスの観点から、ポリプロピレンがとくに好ましい。
【0026】
成分(b)セルロース系繊維
本発明の成分(b)として使用するセルロース系繊維としては、高等植物由来のセルロース繊維[例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然セルロース繊維(パルプ繊維)など]、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース繊維、半合成セルロース繊維[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル;硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロースなど);カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロースなど);アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロースなど);再生セルロース(レーヨン、セロファンなど)などのセルロース誘導体など]などが挙げられる。これらのセルロース系繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0027】
なお、セルロース系繊維として、パルプを用いる場合、パルプは、機械的方法で得られたパルプ(砕木パルプ、リファイナ・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプなど)、または化学的方法で得られたパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプなど)などであってもよく、必要に応じて叩解(予備叩解)処理された叩解繊維(叩解パルプなど)であってもよい。なお、セルロース系繊維は、慣用の精製処理、例えば、脱脂処理などが施された繊維(例えば、脱脂綿など)であってもよい。
【0028】
セルロース系繊維の平均繊維長(L)は、例えば2〜100μm、好ましくは4〜80μmである。
セルロース系繊維の平均繊維径(D)は、例えば1nm〜100μmである。
また、アスペクト比(L/D)は、1〜2,000、好ましくは5〜1,000である。
【0029】
本発明の成分(b)として使用するセルロース系繊維としては、成分(c)との相互作用の観点から、高等天然物由来のセルロース繊維、もしくは半合成セルロース繊維が好ましい。高等天然物由来のセルロース繊維としては安価なパルプを原料とし、解繊処理を行って得られるセルロース繊維が得に好ましい。半合成セルロース繊維としては大量生産性の観点から、食品用途で使用量の多く、量産法が確立されているカルボキシメチルセルロース繊維または、アスペクト比の制御(L/Dの調整、L/Dのばらつき品質)の合成手法が確立している、再生セルロース繊維が好ましい。とくに半合成セルロース繊維はアスペクト比が5−50、平均繊維径が5−20μmの形態のものが樹脂中での凝集が少なく、かつ物性の向上を期待できるためとくに好ましい。
【0030】
成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤
本発明の成分(c)として使用する水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤(以下、単に分散剤ということがある)は、当該水酸基価の要件を満たせばとくに制限されない。水酸基価が30mgKOH/g以上であることにより、セルロース系繊維とエステル交換反応のような相互作用が生じ、セルロース系繊維同士の分散性向上と熱可塑性樹脂中へのセルロース系繊維の分散性が良好となると推測される。水酸基価が30mgKOH/g未満では、当該効果が奏されない。
本発明では、とくに、水酸基価が30mgKOH/g以上の、ポリオール(c−1)、ヒマシ油水添物(c−2)およびリシノール酸誘導体(c−3)が好ましいものとして挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を併用することもできる。
成分(c)の水酸基価は、セルロース系繊維同士の分散性向上と熱可塑性樹脂中へのセルロース系繊維の分散性(以下、単に分散性ということがある)向上に寄与する。成分(c)の水酸基価は、30〜360mgKOH/gであるのがさらに好ましく、90〜350mgKOH/gであるのがとくに好ましい。
なお、分散性向上の観点から、本発明の成分(c)は、水酸基価が30mgKOH/g以上であるとともに、酸価が20mgKOH/g以下であることが好ましい。成分(c)の酸価は、3mgKOH/g以下であるのがさらに好ましく、0.2〜3mgKOH/gであるのがとくに好ましい。
酸価が20mgKOH/g以下であることにより、セルロース系繊維と中和反応のような相互作用が生じ、セルロース系繊維同士の分散性向上と熱可塑性樹脂中へのセルロース系繊維の分散性が良好となると推測される。
以下、各成分について説明する。
【0031】
ポリオール(c−1)
ポリオール(c−1)としては、分散性の観点から、ヒマシ油由来ポリオール(c−1−1)、ポリブタジエン系ポリオール(c−1−2)、エポキシポリオール樹脂(c−1−3)、ポリイソプレン系ポリオールまたはその水素添加物(c−1−4)がさらに好ましい。
【0032】
ヒマシ油由来ポリオール(c−1−1)
ヒマシ油由来ポリオールとしては、芳香族ヒマシ油系ポリオール(c−1−1−1)、ヒマシ油由来ポリオールとリン酸エステル系化合物からなるポリオール(c−1−1−2)、ポリエステルポリオール、とくにセバシン酸系ポリエステルポリオール(c−1−1−3)などが好ましい。
【0033】
前記「ヒマシ油」は、リシノレイン酸とグリセリンとのトリエステル化合物を含む油脂である。通常、天然油脂または天然油脂加工物であるが、上記化合物を含めば合成油脂であってもよい。このヒマシ油に含まれるトリエステル化合物を構成するリシノレイン酸は、トリエステル化合物全体を構成する脂肪酸のうちの90モル%以上含有されることが好ましい。
【0034】
芳香族ヒマシ油系ポリオール(c−1−1−1)は、芳香族骨格(例えばビスフェノールA等)を有する、ヒマシ油から誘導された変性ポリオールである。当該成分(c−1−1−1)は、市販されており、例えば「URIC ACシリーズ」(伊藤製油(株))等が挙げられる。中でも、リシノレイン酸にポリアルキレングリコールとビスフェノールAを付加させた付加物が好ましく、例えば、次の式(1)で表すことができる。
【0035】
【化1】

【0036】
式(1)中、mは平均2〜5の数を表し、nは平均2〜5の数を表す。
【0037】
前記式(1)で表されるヒマシ油から誘導された変性ポリオールは、例えば商品名URIC AC―005(水酸基価194〜214mgKOH/mg、粘度700〜1500mPa・s/25℃)、AC−006(水酸基価168〜187mgKOH/g、粘度3000〜5000mPa・s/25℃)、AC−008(水酸基価180mgKOH/g、粘度1600mPa・s/25℃)、AC−009(水酸基価225mgKOH/g、粘度1500mPa・s/25℃)として伊藤製油(株)から入手できる。
【0038】
ヒマシ油由来ポリオールとリン酸エステル系化合物からなるポリオール(c−1−1−2)は、例えば、特開2005−89712号公報に開示されているように、リシノレイン酸から誘導されたヒマシ油系ポリオールと、全炭素数が12以上の酸性リン酸エステル化合物と、必要に応じてテルペンフェノール類を含有するポリオール組成物も使用することができる。
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油より誘導されるポリオール、ヒマシ油を変性して得られるポリオールが挙げられる。
ヒマシ油より誘導されるポリオールとは、このグリセリンエステルのリシノレイン酸の一部をオレイン酸に置換したもの、ヒマシ油を鹸化して得られるリシノレイン酸をトリメチロールプロパンその他の短分子ポリオールとエステル化したもの、これらとヒマシ油との混合物等、ヒマシ油由来の脂肪酸エステル系ポリオールである。
ヒマシ油を変性して得られるポリオールとしては、例えば植物油変性ポリオール、芳香族骨格(例えばビスフェノールA等)を有する変性ポリオール等が挙げられる。植物油変性ポリオールは、グリセリンエステルのリシノレイン酸の一部を、他の植物より得られる脂肪酸、例えば大豆油、なたね油、オリーブ油等より得られるリノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸に置換して得られるものである。
【0039】
ヒマシ油由来ポリオールとリン酸エステル系化合物からなるポリオール(c−1−1−2)は、例えば商品名URIC H−1262、H2151Uとして伊藤製油(株)から入手できる。
【0040】
上記伊藤製油 URIC H−1262は、ヒマシ油系ポリオールと全炭素数が12以上の酸性リン酸エステル化合物を含むポリオール(粘度:3,500〜8,500mPa・s/25℃、水酸基価:240〜290(単位mgKOH/g)、酸価:4〜15(単位mgKOH/g))であり、セルロース系繊維同士の分散性向上と熱可塑性樹脂中へのセルロース系繊維の分散性向上に有利であり、とくにセルロース系繊維同士の分散性向上に有利である。
また、上記伊藤製油 URIC H−2151Uは、ヒマシ油系ポリオールと全炭素数が12以上の酸性リン酸エステル化合物とテルペンフェノール類を含有するポリオール(粘度:3,500〜8,500mPa・s/25℃、水酸基価:240〜290(単位mgKOH/g)、酸価:4〜15(単位mgKOH/g))であり、セルロース系繊維同士の分散性向上と熱可塑性樹脂中へのセルロース系繊維の分散性向上に有利であり、とくにセルロース系繊維同士の分散性向上に有利である。
【0041】
セバシン酸系ポリエステルポリオール(c−1−1−3)は、例えばヒマシ油を苛性アルカリで処理することによってセバシン酸と2−オクタノールが得られ、例えば商品名URIC SE−1006として伊藤製油(株)から入手できる。URIC SE−1006の水酸基価は110mgKOH/gであり、酸価は0.2mgKOH/gである。
【0042】
ポリブタジエン系ポリオール(c−1−2)としては、例えば、1,2−ポリブタジエンポリオール、1,4−ポリブタジエンポリオール等のホモポリマー、ポリ(ペンタジエン・ブタジエン)ポリオール、ポリ(ブタジエン・スチレン)ポリオール、ポリ(ブタジエン・アクリロニトリル)ポリオール等のコポリマー、それらポリオールに水素を付加した水素添加ポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは市販されており、例えば、出光興産(株)製の「Poly bd R−15HT(水酸基価102.7mgKOH/mg、Mw1200)」、「Poly bd R−45HT(水酸基価46.6mgKOH/mg、Mw2800)」等が挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオール(c−1−2)の質量平均分子量(GPC法)は、50〜3000であるのが好ましく、800〜1500であるのがさらに好ましい。
【0043】
エポキシポリオール樹脂(c−1−3)は、エポキシ樹脂に活性水素化合物を反応させて得られるものである。
ここで使用されるエポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラック、テルペンジフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;上記単核多価フェノール化合物あるいは多核多価フェノール化合物のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテル化合物;上記単核多価フェノール化合物の水添物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものでもよい。
【0044】
これらのエポキシ樹脂の中でも、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(ビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)等のポリグリシジルエーテル化合物等のビスフェノール型エポキシ樹脂を使用すると、本発明の効果の点から好ましい。
【0045】
エポキシポリオール樹脂(c−1−3)は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と、カルボン酸化合物、ポリオール、アミノ化合物等の活性水素化合物とを反応して得られる。
【0046】
上記カルボン酸化合物としては、酢酸、プロピオン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、乳酸、酪酸、オクチル酸、リシノール酸、ラウリン酸、安息香酸、トルイル酸、桂皮酸、フェニル酢酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂肪族、芳香族または脂環式モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ酸、ヒドロキシポリカルボン酸等が挙げられる。
【0047】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールが挙げられる。
【0048】
上記アミノ化合物としては、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等のジアルキルアミン化合物;メチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルアミノプロピルエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物;モルホリン、ピペリジン、4−メチルピペラジン等の複素環式アミン化合物が挙げられる。
【0049】
上記活性水素化合物の中でも、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物が好ましい。
【0050】
また、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等の活性水素基を2個以上有する化合物で、エポキシ樹脂を鎖延長することもできる。
【0051】
上記エポキシ樹脂に上記活性水素化合物を反応させる際には、エポキシ樹脂に活性水素化合物を付加させる通常の方法を採用することができ、例えば、三級アミン化合物、ホスホニウム塩等の周知の触媒の存在下に、両者を60〜200℃に加熱し、3〜10時間反応させる方法を用いることができる。
【0052】
エポキシポリオール樹脂(c−1−3)は、市販されているものを利用でき、例えばDIC株式会社製EPICLON U−125−60BT(水酸基価100〜140mgKOH/g)が挙げられる。
【0053】
(c−1−4)ポリイソプレン系ポリオールまたはその水素添加物について説明する。
このような成分(c−1−4)としては、例えば出光社のPoly ip(登録商標)(水酸基末端液状ポリイソプレン)が挙げられる。「Poly ip(登録商標)」(水酸基価46.6mgKOH/mg、Mn2500)は、分子末端に反応性の高い水酸基を備えたポリイソプレンタイプの液状ポリマーである。
水素添加物としては、出光社のエポール(登録商標)(水酸基末端液状ポリオレフィン)が挙げられる。「エポール(登録商標)」(水酸基価50.5mgKOH/mg、Mn2500)は、「Poly ip(登録商標)」に水添して得られる液状のポリオレフィンである。分子内に二重結合はほとんど残っていない。
【0054】
ヒマシ油水添物(c−2)
本発明で用いられるヒマシ油水添物(c−2)は、前記ヒマシ油を水素添加した化合物であり、硬化ヒマシ油とも言われる。
ヒマシ油水添物(c−2)は市販されているものを利用でき、例えば伊藤製油(株)製ヒマシ硬化油(ヒマシ油の水素添加物、水酸基価158mgKOH/g、酸価1mgKOH/g)が挙げられる。
【0055】
リシノール酸誘導体(c−3)
本発明で用いられるリシノール酸誘導体(c−3)は、例えば、ヒマシ油の加水分解で得られ、具体的には、ソルビタンモノリシノレート(c−3−1)、12−ヒドロキシステアリン酸エステル(c−3−2)、12−ヒドロキシステアリルアミド(c−3−3)が例示される。
【0056】
ソルビタンモノリシノレート(c−3−1)は、ソルビタンと(例えばヒマシ油から得られる)リシノール酸から得られるソルビタン脂肪酸エステルである。ソルビタンは、グルコースやフルクトースなどを還元して得られるソルビトール(別名:グルシトール)を分子内脱水して5 角形や6 角形の環状タイプの分子構造としたものである。脂肪酸とソルビタンのエステルがソルビタン脂肪酸エステルであり、ソルビタンを[sorbitan]とすると分子式はR−COO−[sorbitan]となる。
ソルビタンモノリシノレート(c−3−1)は、市販されているものを利用でき、例えば伊藤製油(株)製SURFRIC #310(ノニオン系界面活性剤、ソルビタンモノリシノレート、水酸基価288mgKOH/g、酸価7mgKOH/g、HLB6〜7)が挙げられる。
【0057】
12−ヒドロキシステアリン酸エステル(c−3−2)は例えば、ヒマシ油の加水分解物であるリシノール酸を水素添加し、得られた12−ヒドロキシステアリン酸をエステル化して得られる。
【0058】
ここで用いる12−ヒドロキシステアリン酸エステルの製法としては、従来公知の方法、例えば12−ヒドロキシステアリン酸と一価アルコールとを、オルトチタン酸アルキルエステルやp−トルエンスルホン酸等を触媒として、水と共沸混合物を作る芳香族炭化水素、例えばトルエンやキシレンと加熱還流し、生成した水を系外に分離除去するのが好適であり、反応の進行度合は、例えば酸価の測定から判断できる。
【0059】
一価アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、 sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、アリルアルコール、オレイルアルコールの様な脂肪族一価アルコール;シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノールの様な脂肪式一価アルコール;ベンジルアルコール、β−フェネチルアルコールの様なアリルアルカノール;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの様なポリオキシアルキレングリコールエーテル誘導体等をその例として挙げることができ、なかでも脂肪族一価アルコールおよびポリオキシアルキレングリコールエーテル誘導体が好ましい。
【0060】
12−ヒドロキシステアリン酸エステル(c−3−2)は、本発明の効果の点から、ヒマシ油由来のメチル-12-ヒドロキシステアレートが好ましい。メチル-12-ヒドロキシステアレートは、市販されているものを利用でき、例えば伊藤製油(株)製ITOHWAX E-210(メチル-12-ヒドロキシステアレート、水酸基価160mgKOH/g、酸価1.6mgKOH/g)、伊藤製油(株)製ITOHWAX E-70G(12-ヒドロキシステアリン酸エステル、融点69℃、水酸基価349mgKOH/g、酸価1.3mgKOH/g)が挙げられる。
【0061】
12−ヒドロキシステアリルアミド(c−3−3)は、例えば、(i)12−ヒドロキシステアリン酸と、ヘキサメチレンジアミンの様な1級ジアミンとを反応させることによって12−ヒドロキシステアリルアミドを得る方法、(ii)12−ヒドロキシステアリン酸のアルキルエステルと、ヘキサメチレンジアミンの様な1級ジアミンとを反応させることによって12−ヒドロキシステアリルアミドを得る方法、(iii)12−ヒドロキシステアリン酸および12−ヒドロキシステアリン酸のアルキルエステルの混合物と、ヘキサメチレンジアミンの様な1級ジアミンとを反応させることによって上記12−ヒドロキシステアリルアミドを得る方法、(iv)12−ヒドロキシステアリン酸クロライドと、ヘキサメチレンジアミンの様な1級ジアミンとを反応させることによって上記12−ヒドロキシステアリルアミドを得る方法、等が挙げられる。
【0062】
上記1級ジアミンとしては、炭素数が2〜12であることが好ましく、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのうち、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミンおよび1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
特にヘキサメチレンジアミンがセルロース系繊維同士の分散性向上と熱可塑性樹脂中へのセルロース系繊維の分散性の点で好ましい。
また、これらの1級ジアミンは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
12−ヒドロキシステアリルアミド(c−3−3)は、本発明の効果の点から、ヒマシ油由来のN.N'-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミドが好ましく、例えば市販品として、伊藤製油(株)製ITOHWAX J-630(N.N'-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、水酸基価150 mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、全アミン価3mgKOH/g)を利用できる。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、成分(a)樹脂:50〜90質量%、成分(b)セルロース系繊維:5〜45質量%、および成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤:2〜10質量%(ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)を含有するのが好ましい。
成分(a)樹脂が50質量%未満であると、製造が困難となり、成形品の外観が悪化する恐れがある。また、耐摩耗性も悪化することがある。逆に90質量%を超えると本発明の効果が発現しにくくなる。
成分(b)セルロース系繊維が5質量%未満であると、添加量が少な過ぎて所望の効果が奏されない恐れがある。逆に45質量%を超えると製造が困難となり、成形品の外観が悪化する恐れがある。また、耐摩耗性も悪化する場合もある。
成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤が2質量%未満であると、添加量が少な過ぎて所望の効果が奏されない恐れがある。逆に10質量%を超えると製造が困難となり、射出成形性及び成形品の外観が悪化する恐れがある。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、成分(a)樹脂:60〜80質量%、成分(b)セルロース系繊維:10〜40質量%、および成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤:3〜8質量%を含有するのがさらに好ましい。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、前記(a)〜(c)成分以外の任意成分を適宜添加できる。
例えば、成形加工性、セルロース系繊維の分散性の観点から金属石鹸を添加するのが好ましい。金属石鹸としては、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導される金属石鹸が挙げられる。金属石鹸の配合量は、(a)〜(c)の合計100質量%に対し、例えば0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜0.7質量%である。
また、酸化防止剤、充填剤、ガラス繊維等の補強材、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、上記成分を溶融混練することにより得られる。溶融混練の方法は特に制限がなく、通常公知の方法を使用することができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種ニーダー等を使用することができる。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、所望の成形方法を行なうことにより所望の形状の成形体が製造可能である。成形方法としては、射出成形法、押出成形法等が好適である。
得られる成形体は、高い機械的強度と衝撃強度とを有するものであり、とくにJIS K 6758に準拠して測定したシャルピー衝撃強度(ノッチ付き)が3kJ/m2以上であることが好ましい。このような成形体は、とくに自動車用部材として有用である。
自動車用部材として、具体的には内装用部材としてインストルメントパネル、インストルメントロアカバー(ニーボルスター)、各種フィニッシャー類(インストルメントパネル、ドアインナートリム)、サイドトリム、ドアトリム、フロントトリム、センターコンソール、外装用部材としてドアアウターパネル、エンジンフードパネル、トランクリッドパネル、ルーフパネル、フロントフェンダー、バンパーフェイシア、カウルトップ、シルスポイラー、エンジンルーム内部材としてラジエターファン、ファンシェラウド、チェーンカバー、エアエレメントカバー、インテークパイプ、バッテリートレイ、ヒューズボックスカバー、ウォッシャタンク等が挙げられ、とくに本発明の樹脂組成物は高い機械強度と耐衝撃性が求められるインストルメントパネル、ドアトリム、外装用部材全般が好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0069】
実施例および比較例で使用した材料は以下の通りである。
成分(a)樹脂
(i):ポリプロピレン1(プライムポリマー(株)製J139)
(ii):ポリプロピレン2(サンアロマー(株)製PMB60A)
【0070】
成分(b)セルロース系繊維
(b−1)以下の製造方により作成したセルロース繊維
旭化成せんい株式会社製セルロースナノファイバー不織布のシートをシュレッダーを用いて約5mm角の切片に切り分けた。5質量%に調整した塩酸水溶液の中に前記切片の濃度が0.5質量%になるように加えた。次いで、この水溶液を高圧乳化装置(たとえば株式会社美粒製NANO3000−1BT)を用いて100MPaの水圧で10回溶液を処理した。高圧乳化処理後、得られた溶液に対し、pHメーターを見ながら、かつ良く攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を加えることで中和した。得られた溶液を吸引濾過器を用いて濾過し、濾別された固形物状のセルロースファイバーを良く純水で洗い、中和生成物である塩化ナトリウムを除去した。さらに洗ったセルロースを純水に0.1質量%になるように懸濁分散させ、高圧乳化装置を用いて同様の条件にて5回処理した。得られたセルロース分散液に対し、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥処理を施すことにより目的のセルロース繊維を得た。平均繊維径(D):4nm、アスペクト比(L/D)50〜1000、表面処理状態:−COONa。
(b−2)セルロース繊維
日本製紙ケミカル製NPファイバー、平均繊維径(D)10μm、アスペクト比(L/D)1〜2、表面処理状態:未処理(-OH)、製造方法:機械粉砕
(b−3)カルボキシメチルセルロース繊維(半合成セルロース繊維)
日本製紙ケミカル製サンローズ、平均繊維径(D)50μm、アスペクト比(L/D)2〜10、表面処理状態:−OCHCOONa、製造方法:エステル化
(b−4)レーヨン繊維(半合成セルロース繊維)
Lenzing社製Tencel FCP 10/490A、平均繊維径(D)10μm、アスペクト比(L/D)40、表面処理状態:(-OH)、製造方法:リヨセル製法
【0071】
(c−1−1−1)芳香族系ヒマシ油系ポリオール
伊藤製油社製、URIC(商標)AC−006、前記式(1)で表されるヒマシ油由来のポリオール、粘度:0.7〜1.5Pa・s/25℃、水酸基価:194〜214mgKOH/g
(c−1−1−2)ヒマシ油由来ポリオールとリン酸エステル系化合物からなるポリオール
伊藤製油 URIC H−1262、ヒマシ油系ポリオールと全炭素数が12以上の酸性リン酸エステル化合物を含むポリオール 粘度:3,500〜8,500Pa・s/25℃、酸価:4〜15(単位mgKOH/g)、水酸基価:240〜290(単位mgKOH/g)
(c−1−1−2)ヒマシ油由来ポリオールとリン酸エステル系化合物からなるポリオール
伊藤製油 URIC H−2151U、ヒマシ油系ポリオールと全炭素数が12以上の酸性リン酸エステル化合物とテルペンフェノール類を含有するポリオール 粘度:3,500〜8,500Pa・s/25℃、酸価:4〜15(単位mgKOH/g)、水酸基価:240〜290(単位mgKOH/g)
(c−1−1−3)セバシン酸系ポリエステルポリオール
伊藤製油(株)製URIC SE−1006(水酸基価110mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g)
成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤
(c−1−2)ポリブタジエン系ポリオール
出光興産社製、Poly bd R-15HT
粘度:1.5Pa・s/30℃、水酸基価:102.7mgKOH/g
(c−1−3)エポキシポリオール樹脂
DIC株式会社 EPICLON(商標)U-125-60BT
(粘度(Pa・s/30℃)70、水酸基価(mgKOH/g) 120)
(c−1−4)ポリイソプレン系ポリオール
出光興産社製Poly ip(登録商標)分子末端に反応性の高い水酸基を備えたポリイソプレンタイプの液状ポリマー(水酸基価46.6mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、数平均分子量Mn=2500)
(c−2)ヒマシ油水添物
伊藤製油(株)製ヒマシ硬化油(ヒマシ油の水素添加物、水酸基価158mgKOH/g、酸価1mgKOH/g)
(c−3−1)ソルビタンモノリシノレート
伊藤製油(株)製SURFRIC #310(ノニオン系界面活性剤、ソルビタンモノリシノレート、水酸基価288mgKOH/g、酸価7mgKOH/g、HLB6〜7)
(c−3−2)12−ヒドロキシステアリン酸エステル
伊藤製油(株)製ITOHWAX E-70G、融点69℃、水酸基価349mgKOH/g、酸価1.3mgKOH/g)
(c−3−2)12−ヒドロキシステアリン酸エステル
伊藤製油(株)製ITOHWAX E-210(メチル-12-ヒドロキシステアレート、水酸基価160mgKOH/g、酸価1.6mgKOH/g)
(c−3−3)12−ヒドロキシステアリルアミド
伊藤製油(株)製ITOHWAX J-630(N.N'-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、水酸基価150mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、全アミン価3mgKOH/g)
【0072】
(比較成分(c))旭硝子社製EXCENOL 510(登録商標)アルキレンオキシド付加反応で得られるポリエーテルポリオール(水酸基価28mgKOH/g、酸価<0.05mgKOH/g、数平均分子量Mn=4000)
【0073】
(d)Ca-St:日東化成工業(株)製ステアリン酸Ca
(d)Zn-St:日東化成工業(株)製ステアリン酸Zn
(d)Mg-St:日東化成工業(株)製ステアリン酸Mg
(d)CS-6:日東化成工業(株)製12-ヒドロキシステアリン酸Ca
(d)ZS-6:日東化成工業(株)製12-ヒドロキシステアリン酸Zn
(d)MS-6:日東化成工業(株)製12-ヒドロキシステアリン酸Mg
(d)CS-8:日東化成工業(株)製モンタン酸Ca
(d)CS-7:日東化成工業(株)製ベヘン酸Ca
(d)CS-3:日東化成工業(株)製ラウリン酸Ca
【0074】
(e)ガラス短繊維強化PP:ダイセルPP PG8N1(ガラス短繊維40質量%含有、ダイセルポリマー(株)製)
(e)タルク:クラウンタルクPP松村産業(株)製)
【0075】
なお、粘度、水酸基価、酸価は、次のようにして測定した。
・粘度測定方法
粘度計は、JIS K7117-1に従って、単一円筒型回転粘度計(B形TVC--5)を用いて測定。
1.測定器に500mlビーカ(標準)を使用。
2.標準ロータは、低・中粘度用としてのM1〜M4ロータ、中・高粘度用としてのH1〜H7ロータの2種から選択
・水酸基価測定方法
水酸基価とは、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数である。JIS K 1557-1に準じて、無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定する。
【0076】
【数1】

【0077】
A:空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
B:滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:ファクター
【0078】
・酸価測定方法
試料油1gに含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表す。JIS K 1557-5に準じて、
(1)終点pHの測定
200mLビーカに緩衝貯蔵液Bを10mL採取し、滴定溶剤を100mL加えて電極を浸け、30秒間で0.1pH以内の変化となったpHを緩衝の終点とする。
(2)酸価の測定
1.試料20gを200mLビーカに正確に秤量する。
2.トルエン・2-プロパノール・純水混合溶剤125mLを加え、0.1mol/L水酸化カリウム滴定液で滴定する。
(1)の結果 11.72 pHを終点として設定し、次式で酸価を求める。また、同手順でブランクを求める。
酸価(mgKOH/g)=(D−B)×K×F×M/S
D:滴定値(mL)
B:ブランク(0.085mL)
K:KOHの分子量(56.1)
F:滴定液のファクタ(1.000)
M:滴定液のモル濃度(0.1mol/L)
S:試料採取量(g)
【0079】
実施例1〜47、比較例1〜3
下記表に示す配合割合(質量部)において、成分(a)〜(c)、任意成分を二軸押出機に投入し、溶融混練し、ペレット化し、下記の評価を行なった。
【0080】
[射出成形品の評価]
曲げ弾性率、曲げ強度、引張強度、ノッチ付シャルピー衝撃強度(kJ/m2)および比重は、JIS K 6758に準拠して測定した。硬度はJIS K 6758に準拠してロックウエル硬度を測定した。
【0081】
射出成形性:
120トンの射出成形機で8.5mm×5mm×3mm厚さシートを所定の条件で成形し、以下の基準で目視評価を行った。
○:デラミネーションや変形がなく、著しく外観を悪化させるようなフローマークがない
△:部分的にデラミネーションが認められるが、変形、外観を悪化させるようなフローマークがない
×:デラミネーション、変形、外観を悪化させるようなフローマークの何れかが認められる
【0082】
射出成形品を得るための射出条件は、
射出成形機:日精樹脂工業社製 FS−120
成形温度:180℃
射出速度:55mm/秒
射出圧力:1400kg/cm
保圧圧力:400kg/cm
射出時間:6秒
冷却時間:45秒
である。
【0083】
射出成形品外観:
得られた射出成形品表面について、以下の基準で目視評価を行った。
○:0.1mm以上のブツ(セルロース繊維の分散不良)が認められない
△:0.1〜0.3mmのブツが認められる
×:0.3mm以上のブツが認められる
【0084】
結果を表に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
表の結果から、本発明の実施例の樹脂組成物は、樹脂およびセルロース系繊維の中に、特定の分散剤を配合しているので、セルロース系繊維を良好に分散することができ、高い機械的強度と衝撃強度とを有し、かつ成形性に優れている。したがって、本発明の樹脂組成物は、とくに自動車内外装用部材用として有用であり、上記特性に優れた自動車内外装用部材を提供することができる。
なお、実施例42は、(a)および(b)の配合量が本発明の好ましい範囲外である例であり、実施例43〜44は、成分(c)の配合量が本発明の好ましい範囲外である例である。
比較例1は、成分(b)を使用していない例であり、機械的強度が悪化している。
比較例2は、成分(c)の水酸基価が本発明の好ましい範囲外であるので、機械的強度、衝撃強度および成形性をすべて満たすことができなかった。
実施例45〜47はセルロース繊維として、半合成セルロース繊維である再生セルロース(TENCEL)を用いた例である。他の実施例と同じように優れた性能を示した。
比較例3は、半合成セルロース繊維(TENCEL)を用い、成分(c)の水酸基価が本発明の好ましい範囲外であるので、機械的強度、衝撃強度および成形性をすべて満たすことができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)樹脂と成分(b)セルロース系繊維と成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤とを含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(c)の酸価が20mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(c)の分散剤はポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(b)が、セルロース繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物
【請求項5】
前記成分(b)が、半合成セルロース繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分(b)のアスペクト比(L/D)が1〜2,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分(b)のアスペクト比(L/D)が5〜1,000であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記成分(b)の平均繊維径(D)が1nm〜100μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記成分(b)のアスペクト比が5−50、平均繊維径が5−20μmの半合成セルロース繊維であることを特徴とする請求項1〜3ないしは請求項5〜8のいずれかに記載の樹脂組成物
【請求項10】
前記成分(a)樹脂が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記成分(a)樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記成分(a)樹脂が50〜90質量%、前記成分(b)セルロース系繊維が5〜45質量%、前記成分(c)分散剤が2〜10質量%(ただし前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物からなる自動車用部材。

【公開番号】特開2012−102324(P2012−102324A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226038(P2011−226038)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】