説明

樹脂組成物

【課題】炭酸カルシウムをポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂または熱硬化性樹脂に含有させた樹脂組成物において、良好な成形性を得る。
【解決手段】pHが6.0〜8.5の範囲内であり、かつ1N酢酸不溶分が30質量%以上である炭酸カルシウムを、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、または熱硬化性樹脂に含有させたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、または熱硬化性樹脂に含有させた樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱安定性、耐摩耗性、剛性、耐衝撃性、アンカー効果付与などの種々の目的で、合成樹脂に炭酸カルシウムが配合されている。
【0003】
特許文献1においては、液晶ポリエステル樹脂に対し、リン酸で表面処理した炭酸カルシウムを配合することが提案されている。具体的には、オルトリン酸やポリリン酸を、炭酸カルシウムを攪拌しながら滴下する乾式法により、表面処理された炭酸カルシウムが用いられ、良好なメッキ剥離強度や良好な機械強度が得られることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、炭酸カルシウムの水懸濁液に縮合リン酸を添加して炭酸カルシウムを表面処理する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及び熱硬化性樹脂に含有させるのに適した炭酸カルシウムについては、従来より十分に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−4252号公報
【特許文献2】特開昭54−35897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、炭酸カルシウムをポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂または熱硬化性樹脂に含有させた樹脂組成物において、良好な成形性を得ることができる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、pHが6.0〜8.5の範囲内であり、かつ1N酢酸不溶分が30質量%以上である炭酸カルシウムを、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、または熱硬化性樹脂に含有させたことを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、炭酸カルシウムをポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂または熱硬化性樹脂に含有させた樹脂組成物において、良好な成形性を得ることができる。
【0010】
本発明において、炭酸カルシウムの含有量は、0.1〜80質量%の範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明において用いる炭酸カルシウムのBET比表面積は、0.5〜100m/gの範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明において用いる炭酸カルシウムのレーザー回折式粒度分布測定装置により測定される平均粒子径は、0.01〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な成形性を有する樹脂組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
<炭酸カルシウム>
本発明において用いる炭酸カルシウムは、pHが6.0〜8.5の範囲内であり、かつ1N酢酸不溶分が30質量%以上である。炭酸カルシウムのpHについては、蒸留水に炭酸カルシウム粉体が5質量%となるように添加して分散させ、得られた炭酸カルシウムスラリーのpH値を炭酸カルシウム粉体のpH値としている。
【0016】
また、1N酢酸不溶分は、炭酸カルシウム3gを、1N(規定)の酢酸水溶液100mlに添加し、溶解しなかった不溶分を測定することにより求めることができる。
【0017】
本発明に従い、pHが6.0〜8.5の範囲内であり、かつ1N酢酸不溶分が30質量%以上である炭酸カルシウムを、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂または熱硬化性樹脂に含有させた樹脂組成物は、押出成形や射出成形などの成形において良好な成形性を示す。
【0018】
本発明において用いる炭酸カルシウムのpHは、さらに好ましくは6.5〜8.0の範囲内であり、さらに好ましくは6.7〜7.8の範囲内である。
【0019】
また、本発明において用いる炭酸カルシウムの1N酢酸不溶分は、さらに好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。1N酢酸不溶分の上限値は特に限定されるものではないが、一般には、95質量%以下である。
【0020】
上記のpH値及び1N酢酸不溶分を有する炭酸カルシウムは、例えば、炭酸カルシウムの表面を改質することにより得ることができる。例えば、炭酸カルシウムの水懸濁液に、ピロリン酸やメタリン酸などの縮合リン酸を添加し、表面処理条件を制御することにより、上記のpH値及び1N酢酸不溶分を示す炭酸カルシウムを製造することができる。しかしながら、本発明において用いる炭酸カルシウムは、このような縮合リン酸を湿式法で処理した炭酸カルシウムに限定されるものではない。
【0021】
本発明において用いる炭酸カルシウムのBET比表面積は、0.5〜100m/gの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜30m/gの範囲内であり、さらに好ましくは0.5〜15m/gの範囲内である。
【0022】
本発明において用いる炭酸カルシウムは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される平均粒子径が、0.01〜30μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.05〜20μmの範囲内であり、さらに好ましくは0.1〜10μmの範囲内である。
【0023】
本発明において用いる炭酸カルシウムは、石灰石を機械的に粉砕・分級することにより製造される重質炭酸カルシウムであってもよいし、水酸化カルシウムスラリーに炭酸ガスを反応させることによって製造することができる合成炭酸カルシウムであってもよい。
【0024】
<ポリエステル樹脂>
本発明において用いるポリエステル樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、液晶ポリエステル、ポリカーボ
ネートなどが挙げられる。
【0025】
<ポリアミド樹脂>
本発明において用いるポリアミド樹脂としては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、芳香族ナイロン、4Tナイロン、6Tナイロン、9Tナイロンなどが挙げられる。
【0026】
<熱硬化性樹脂>
本発明において用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性イミド樹脂などが挙げられる。
【0027】
<樹脂組成物>
本発明における樹脂組成物は、上記炭酸カルシウムを、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、または熱硬化性樹脂に含有させたものである。炭酸カルシウムの含有量としては、0.1〜80質量%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1〜70質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜60質量%の範囲内である。
【0028】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、上記樹脂に上記炭酸カルシウム粉体を添加混合し、加熱硬化する方法、上記樹脂を溶媒に溶解させた後、上記炭酸カルシウム粉体を添加混合し、その後溶媒を除去する方法、上記樹脂の加熱溶融物に上記炭酸カルシウム粉体を添加混合する方法、上記炭酸カルシウム粉体をマスターバッチとして上記樹脂に添加する方法などが挙げられ、本発明においては特に限定されるものではない。
【0029】
本発明の樹脂組成物を溶融混練法により製造する場合、その装置としては、一般に用いられている混練機を用いることができる。例えば、一軸または多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー等を用いることができ、これらの中でも、サイドフィーダー設備を装備した二軸押出機が最も好ましく用いられる。混練条件は、特に限定されるものではないが、混練温度は、JIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点または軟化点より1〜100℃高い温度であることが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。このような添加剤としては、具体的には、酸化防止剤、熱安定剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤、結晶核剤、無機充填剤、導電剤、熱可塑性樹脂、及び熱可塑性エラストマー、顔料などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0032】
<炭酸カルシウムの製造例>
(製造例1)
重質炭酸カルシウムを10質量%含有するように水に添加し、温度20℃に調整しながら、10分間攪拌して、炭酸カルシウムスラリーを調製した。この炭酸カルシウムスラリーに対し、ピロリン酸を5質量%含有する水溶液を、ピロリン酸の量が炭酸カルシウム100質量部に対し5質量部となるように添加し、10分間攪拌した後、脱水、乾燥、解砕して炭酸カルシウム粉体を得た。
【0033】
得られた炭酸カルシウムについて、1N酢酸不溶分、pH、BET比表面積、及び平均粒子径を測定した。
【0034】
1N酢酸不溶分及びpHについては、上述の測定方法により測定した。
【0035】
BET比表面積は、島津製作所製のフローソーブ2200を用いて、1点法により測定した。
【0036】
平均粒子径については、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000Jによって湿式法で測定し、D50の値を平均粒子径とした。平均粒子径算出の際に使用した屈折率は、1.60−0.00iとした。また、炭酸カルシウム粉体の分散方法は、試料0.5gを0.2質量%のリグニンスルホン酸ナトリウム水溶液50mlに加え、十分に分散させ、測定試料とした。また、測定前に超音波を1分間照射し、超音波停止1分後に測定を行った。
【0037】
1N酢酸不溶分及びpHは、表1に示す通りである。BET比表面積は、2.8m/gであり、平均粒子径は1.8μmであった。
【0038】
(製造例2)
重質炭酸カルシウムに代えて、合成炭酸カルシウム(BET比表面積:11.1m/g、平均粒子径:0.6μm)を用い、炭酸カルシウム100質量部に対し、ピロリン酸を6質量部となるようにピロリン酸水溶液を添加する以外は、製造例1と同様にして炭酸カルシウム粉体を得た。
【0039】
1N酢酸不溶分及びpHは表1に示す通りである。BET比表面積は、11.9m/gであり、平均粒子径は0.6μmであった。
【0040】
(製造例3)
炭酸カルシウム100質量部に対し、ピロリン酸を2質量部となるように、ピロリン酸水溶液を添加する以外は、製造例1と同様にして炭酸カルシウム粉体を得た。
【0041】
1N酢酸不溶分及びpHは表1に示す通りである。BET比表面積は、2.8m/gであり、平均粒子径は1.9μmであった。
【0042】
(製造例4)
ピロリン酸に代えて、メタリン酸を用いる以外は、製造例1と同様にして、炭酸カルシウム粉体を得た。
【0043】
1N酢酸不溶分及びpHは表1に示す通りである。BET比表面積は、2.8m/gであり、平均粒子径は2.1μmであった。
【0044】
(製造例5)
製造例1で用いた重質炭酸カルシウムをヘンシェルミキサーにて1000rpmで攪拌しながら、製造例1で用いたピロリン酸を、炭酸カルシウム100質量部に対し、ピロリン酸が5質量部となる量滴下した。
【0045】
ミキサーから取り出した後、110℃で2時間乾燥し、分級して炭酸カルシウム粉体を得た。
【0046】
1N酢酸不溶分及びpHは、表1に示す通りである。
【0047】
(製造例6)
ピロリン酸に代えて、オルトリン酸(正リン酸)を用いた以外は、製造例1と同様にして炭酸カルシウム粉体を得た。
【0048】
1N酢酸不溶分及びpHは表1に示す通りである。BET比表面積は2.8m/gであり、平均粒子径は2.0μmであった。
【0049】
(製造例7)
ピロリン酸に代えて、オルトリン酸(正リン酸)を用いる以外は、製造例5と同様にして乾式処理により、炭酸カルシウム粉体を得た。
【0050】
1N酢酸不溶分及びpHは表1に示す通りである。
【0051】
(無処理重質炭酸カルシウム)
製造例1で用いた重質炭酸カルシウムの1N酢酸不溶分及びpHは表1に示す通りである。また、BET比表面積は2.8m/gであり、平均粒子径は1.8μmであった。
【0052】
製造例1〜7の炭酸カルシウム粉体及び無処理重質炭酸カルシウムの1N酢酸不溶分及びpHを表1にまとめて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示す結果から明らかなように、製造例1〜4の炭酸カルシウムは、pHが6.0〜8.5の範囲内であり、1N酢酸不溶分が30質量%以上であるので、本発明に従う炭酸カルシウムであることがわかる。ピロリン酸を乾式法で処理した製造例5の炭酸カルシウムは、1N酢酸不溶分が30質量%以上であるが、pHが5.8であり、本発明の範囲外となっている。pHが低い理由として、炭酸カルシウムと反応しなかったピロリン酸が含まれているためであると考えられる。
【0055】
<実験1>
<樹脂組成物の調製>
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
製造例1〜7の炭酸カルシウム及び無処理重質炭酸カルシウムを、以下のようにして各種樹脂に配合し、以下のようにして成形性を評価した。
【0056】
〔液晶ポリエステル樹脂組成物〕
液晶ポリエステル樹脂(II型)60質量%と、炭酸カルシウム粉体40質量%とを、それぞれ計量し、二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を用いて、押出機のサイドフィーダーからこれらを供給し、溶融混練して、液晶ポリエステル樹脂組成物のストランドを得た。得られた樹脂組成物のストランドを切断してチップを作製し、このチップを
用いて射出成形し樹脂成形品を得た。押出成形及び射出成形は以下の条件で成形性を評価した。
【0057】
・押出成形:混練成形条件は、温度340℃、回転数280rpm、吐出量15kg/hrとし、得られたストランドの状態を評価した。
・射出成形:射出成形条件は、シリンダー温度330℃、金型温度150℃とし、射出成形品の状態を評価した。
【0058】
〔ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂組成物〕
液晶ポリエステル樹脂に代えて、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス社製、商品名「ジュラネックス 2002」)を用い、押出成形及び射出成形を下記とする以外は、上記と同様にして、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形し樹脂成形品を得た。
【0059】
・押出成形:混練成形条件は、温度230℃、回転数300rpm、吐出量15kg/hrとし、得られたストランドの状態を評価した。
・射出成形:射出成形条件は、シリンダー温度230℃、金型温度70℃とし、射出成形品の状態を評価した。
【0060】
〔芳香族ポリアミド樹脂組成物〕
液晶ポリエステル樹脂に代えて、芳香族ポリアミド樹脂(6T系ナイロン)を用い、押出成形及び射出成形を下記とする以外は、上記と同様にして、芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形し樹脂成形品を得た。
【0061】
・押出成形:混練成形条件は、温度300℃、回転数300rpm、吐出量15kg/hrとし、得られたストランドの状態を評価した。
・射出成形:射出成形条件は、シリンダー温度310℃、金型温度70℃とし、射出成形品の状態を評価した。
【0062】
〔不飽和ポリエステル樹脂組成物〕
不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、商品名「ユピカ7123」)60質量%と、炭酸カルシウム粉体40質量%とを、それぞれ計量し、加圧式ニーダーを用いて、25〜30℃で混練して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をトランスファー成形を行い、樹脂成形品を得た。トランスファー成形は以下の条件で成形性を評価した。
【0063】
・トランスファー成形:金型温度150℃、注入圧力5MPa、注入時間30秒、型締め圧力15MPa、硬化時間120秒とし、トランスファー成形品の状態を評価した。
【0064】
〔ポリエチレン樹脂組成物〕
液晶ポリエステル樹脂に代えて、ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LJ803」)を用い、押出成形及び射出成形を下記とする以外は、上記と同様にして、芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形し樹脂成形品を得た。
【0065】
・押出成形:混練成形条件は、温度180℃、回転数300rpm、吐出量15kg/hrとし、得られたストランドの状態を評価した。
・射出成形:射出成形条件は、シリンダー温度190℃、金型温度40℃とし、射出成形品の状態を評価した。
【0066】
〔押出成形性の評価基準〕
押出成形性については、以下のような基準で評価した。
【0067】
○:特に問題なく押出成形ができた
×:ストランドに発泡や表面荒れ等の不具合が生じた
××:押出すことができなかった
【0068】
〔射出成形性の評価基準〕
射出成形性については、以下のような基準で評価した。
【0069】
○:外観上特に問題が生じなかった
×:成形品にひび割れや表面荒れ等の不具合が生じた
××:射出できなかった
【0070】
〔トランスファー成形性の評価基準〕
トランスファー成形性については、以下のような基準で評価した。
【0071】
○:外観上特に問題が生じなかった
×:成形品にひび割れや表面荒れ等の不具合が生じた
××:押出すことができなかった
【0072】
評価結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示す結果から明らかなように、本発明に従う炭酸カルシウムである製造例1〜4
の炭酸カルシウムを含有した実施例1〜4の各種樹脂組成物は、比較例1〜4の樹脂組成物に比べ、良好な成形性を有している。
【0075】
また、比較例1〜4のポリエチレン系樹脂組成物は、良好な成形性を有していることから、本発明の作用効果は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及び熱硬化性樹脂を用いた場合に認められる顕著な効果であることがわかる。
【0076】
<実験2>
(実施例5〜8)
製造例1〜4の炭酸カルシウムを用いて、上記実験1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂に炭酸カルシウムを配合し、実施例5〜8の樹脂組成物を得た。
【0077】
得られた樹脂組成物を、射出成形して、評価用ダンベルを作製し、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度、及び荷重たわみ温度(HDT)を測定した。
【0078】
曲げ弾性率(MPa)及び曲げ強度(MPa)については、ASTM D790に準じて測定した。
【0079】
引張強度(MPa)については、ASTM D638に準じて測定した。
【0080】
衝撃強度(J/m)については、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度を、ASTM D256に準じて測定した。
【0081】
HDTについては、1.8MPaの荷重で、ASTM D648に準じて測定した。
【0082】
(比較例5)
製造例6の炭酸カルシウムを、上記と同様にして、液晶ポリエステル樹脂に配合し、上記と同様にして、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度、及びHDTを測定した。
【0083】
(実施例9)
製造例1の炭酸カルシウムを、上記と同様にして、PBT樹脂に配合し、押出成形により、評価用ダンベルを成形し、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTを測定した。
【0084】
(実施例10)
製造例1の炭酸カルシウムを、上記と同様にして、芳香族ポリアミド樹脂に配合し、押出成形により、評価用ダンベルを成形し、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTを測定した。
【0085】
(比較例6)
無処理重質炭酸カルシウムを、上記と同様にして液晶ポリエステル樹脂に配合し、評価用ダンベルを射出成形して、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTを測定した。
【0086】
(比較例7)
無処理合成炭酸カルシウムを、上記と同様にして液晶ポリエステル樹脂に配合し、評価用ダンベルを射出成形して、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTを測定した。
【0087】
(比較例8)
無処理重質炭酸カルシウムを、上記と同様にしてPBT樹脂に配合し、評価用ダンベルを射出成形して、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTを測定した。
【0088】
(比較例9)
無処理重質炭酸カルシウムを、上記と同様にして芳香族ポリアミド樹脂に配合し、評価用ダンベルを射出成形して、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTを測定した。
【0089】
以上のようにして測定した曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTの値を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3に示すように、本発明に従う炭酸カルシウムである製造例1〜4を配合した液晶ポリエステル樹脂、PBT樹脂、及び芳香族ポリアミド樹脂は、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度及びHDTにおいて、比較例5〜9の対応する樹脂組成物に比べ、高い値が得られている。従って、本発明に従う炭酸カルシウムを用いることにより、機械的強度の向上も図ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが6.0〜8.5の範囲内であり、かつ1N酢酸不溶分が30質量%以上である炭酸カルシウムを、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、または熱硬化性樹脂に含有させたことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
炭酸カルシウムの含有量が、0.1〜80質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
炭酸カルシウムのBET比表面積が、0.5〜100m/gの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
炭酸カルシウムのレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された平均粒子径が、0.01〜30μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
1N酢酸不溶分が40質量%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−116930(P2012−116930A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267182(P2010−267182)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(391009187)株式会社白石中央研究所 (9)
【Fターム(参考)】