説明

樹脂組成物

【課題】可塑剤の性能を維持しつつ、揮発性有機化合物(VOC)の発生が抑制されるエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを含有する樹脂組成物、該組成物からなる成形体、及び該組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物と、脂肪族ポリエステルとを含有してなる、樹脂組成物。
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、例えば、可塑剤として好適に用いられるエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを含有する樹脂組成物、該組成物からなる成形体、及び該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂は、土壌、海水中、あるいは動物の体内などに置かれた場合、自然界に生息する微生物の産出する酵素の働きによって、例えば、数週間で分解が始まり1年から数年の間に消滅する。従って、近年、環境意識の高まりから、その利用が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、二価アルコールの繰り返し単位を有し、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、かつ酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤を用いることにより、乳酸系ポリマーの透明性を維持したまま、耐水性及び柔軟性に優れる樹脂組成物が得られている。
【0004】
また、特許文献2では、キレート剤及び/又は酸性リン酸エステルで重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステルに、可塑剤を溶融混練することにより、柔軟性及び貯蔵安定性に優れる樹脂組成物が得られ、該組成物を成形して結晶化させることにより、耐熱性や耐溶剤性に優れる成形物が得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−118513号公報
【特許文献2】特開平10−36651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境意識が高まり、生分解性樹脂組成物の自動車用途への適用が期待されている。しかしながら、例えば、真夏の炎天下に放置された自動車内部は60℃以上の高温になるため、従来の生分解性樹脂組成物は有害な揮発性ガスを発生し自動車用途へは適用することができないことが判明した。
【0007】
本発明の課題は、可塑剤の性能を維持しつつ、揮発性有機化合物(VOC)の発生が抑制されるエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを含有する樹脂組成物、該組成物からなる成形体、及び該組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕 下記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物と、脂肪族ポリエステルとを含有してなる樹脂組成物、
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
〔2〕 前記〔1〕記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体、
〔3〕 以下の工程を含む前記〔1〕記載の樹脂組成物の製造方法、
(工程1−1) 前記〔1〕に記載のジカルボン酸と前記〔1〕に記載の一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する工程
(工程1−2) 工程1−1で得られたジカルボン酸エステルと前記〔1〕に記載の二価アルコールとのエステル交換反応を行って、カルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物を得る工程
(工程1−3) 工程1−2で得られたエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程
〔4〕 以下の工程を含む前記〔1〕記載の樹脂組成物の製造方法
(工程2−1) 前記〔1〕に記載の一価アルコール、前記〔1〕に記載のジカルボン酸、及び前記〔1〕に記載の二価アルコールを一括反応させて、カルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物を得る工程
(工程2−2) 工程2−1で得られたエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、可塑性に優れ、かつ、高温においても、揮発性有機化合物(VOC)の発生が抑制されたものであるため、自動車用途等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、下記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物と、脂肪族ポリエステルとを含有する。
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
【0011】
(エステル化合物)
本発明におけるエステル化合物は次のカルボン酸エステルを含む。カルボン酸エステルは、(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール、(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸、及び(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコールを用いて得られ、可塑剤として働くものである。
【0012】
一般に、ポリエステル樹脂用可塑剤は、酸価や水酸基価が高いポリマー化合物が多い。かかる化合物がポリエステル樹脂に配合されると、ポリエステル樹脂用可塑剤が酸基(例えば、カルボキシル基)や水酸基を有するために、ポリエステル樹脂と反応し、ポリエステル樹脂が分解して揮発性有機化合物(VOC)が発生しやすくなる。また、これらのポリマー化合物はブリードしやすく、樹脂表面で空気酸化を受けて、やはり、揮発性有機化合物(VOC)を発生しやすくなる。そこで、本発明では、酸価や水酸基価が低い化合物を用いることにより、脂肪族ポリエステルの分解による揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑制するとともに、脂肪族ポリエステルとの相溶性を高めて耐ブリード性を向上させ、脂肪族ポリエステル表面での空気酸化を低減させることで揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑制することができる。以上の観点から、前記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含む、特定のエステル化合物を用いる。カルボン酸エステルの具体例としては、下記式(I):
O−CO−R−CO−〔(OR)O−CO−R−CO−〕OR (I)
(式中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基、Rは炭素数が2〜6のアルキレン基であり、mは1〜6の数、nは1〜6の数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよく、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が挙げられる。よって、本発明の樹脂組成物は、好ましくは、前記(1)〜(3)を用いて得られる式(I)で表されるカルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物と、脂肪族ポリエステルとを含有する。式(I)で表されるカルボン酸エステルと脂肪族ポリエステルは、いずれも鎖状化合物であるために適度な相互作用が得られ、脂肪族ポリエステルとの相溶性が向上して可塑性が向上すると推定される。本明細書において、可塑剤の性能は、成形体の曲げ弾性率(G/Pa)、耐熱性(熱変形温度、℃)、及び耐ブリード性により確認できる。なお、本明細書において、式(I)における〔(OR)O−CO−R−CO−〕を、式(I)における繰り返し単位とも言う。
【0013】
また、式(I)で表されるカルボン酸エステルを含むエステル化合物は酸価や水酸基価が低い、即ち、酸価が1.00mgKOH/g以下、好ましくは0.90mgKOH/g以下であり、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、好ましくは4.0mgKOH/g以下であることに加えて、式(I)で表されるカルボン酸エステルは化合物の末端が封止(capping)されていることから、脂肪族ポリエステルとの反応性が低く、脂肪族ポリエステルの分解が低減されるために、揮発性有機化合物の発生がより抑制されると推定される。本明細書において、エステル化合物の酸価及び水酸基価は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0014】
式(I)で表されるカルボン酸エステルを含むエステル化合物は、酸価が1.00mgKOH/g以下、好ましくは0.90mgKOH/g以下であり、好ましくは0.05mgKOH/g以上、より好ましくは0.1mgKOH/g以上である。また、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、好ましくは4.0mgKOH/g以下であり、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.2mgKOH/g以上である。
【0015】
式(I)におけるRは、炭素数が1〜4のアルキル基を示し、1分子中に2個存在して、分子の両末端に存在する。Rは炭素数が1〜4であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基の炭素数としては、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基が挙げられ、なかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0016】
式(I)におけるRは、炭素数が2〜4のアルキレン基を示し、直鎖のアルキレン基が好適例として挙げられる。具体的には、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が挙げられ、なかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、エチレン基、1,3−プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましく、可塑化効果を発現させる観点及び経済性の観点から、エチレン基、1,4−ブチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
【0017】
式(I)におけるRは、炭素数が2〜6のアルキレン基を示し、オキシアルキレン基として、繰り返し単位中に存在する。Rは炭素数が2〜6であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキレン基の炭素数としては、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましい。具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,2−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、2,5−ヘキシレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基が挙げられ、なかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
【0018】
mはオキシアルキレン基の平均の繰り返し数を示し、1〜6の数である。mが大きくなると、式(I)で表されるカルボン酸エステルのエーテル基価が上がり、酸化されやすくなり安定性が低下するためVOCが発生しやすくなる。脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させる観点及びVOC発生を抑制する観点から、1〜4の数が好ましく、1〜3の数がより好ましい。
【0019】
nは繰り返し単位の平均の繰り返し数(平均重合度)を示し、1〜6の数である。脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果及び可塑化効率を向上させる観点から、1〜4の数が好ましい。なお、本明細書において、平均重合度は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
【0020】
式(I)で表される化合物の具体例としては、Rがメチル基、Rがエチレン基、Rがエチレン基であって、mが2、nが1.5のエステル、Rがエチル基、Rが1,4−ブチレン基、Rが1,3−プロピレン基であって、mが1、nが2のエステル、Rがブチル基、Rが1,3−プロピレン基、Rがエチレン基であって、mが3、nが1.5のエステル、Rがメチル基、Rがエチレン基、Rが1,6−ヘキシレン基であって、mが1、nが3のエステル等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上含有されていてもよい。これらのなかでも、Rが全てメチル基、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であって、mが1〜3の数、nが1〜4の数である化合物が好ましく、Rが全てメチル基、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であって、mが1〜3の数、nが1〜3の数である化合物がより好ましい。
【0021】
次に、前記エステル化合物の原料となる(1)〜(3)について説明する。
【0022】
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコールとしては、前記Rを含むアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1,1−ジメチル−1−エタノールが挙げられる。なかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点の他、エステル交換反応の効率を上げる観点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールがさらにより好ましい。
【0023】
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸としては、前記Rを含むジカルボン酸であり、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体(例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル)が挙げられる。なかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、コハク酸、グルタル酸、及びそれらの誘導体(例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジメチル)が好ましく、コハク酸及びその誘導体(例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル)がより好ましく、可塑化効果を発現させる観点及び経済性の観点から、コハク酸、アジピン酸及びそれらの誘導体(例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジメチル)が好ましく、コハク酸及びその誘導体(例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル)がより好ましい。
【0024】
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコールとしては、前記Rを含む二価アルコールであり、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。なかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールがより好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオールがさらに好ましい。
【0025】
よって、前記(1)〜(3)としては、
(1)一価アルコールがメタノール、エタノール、1−プロパノール、及び1−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(2)ジカルボン酸がコハク酸、グルタル酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、
(1)一価アルコールがメタノール及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(2)ジカルボン酸がコハク酸、グルタル酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、
(1)一価アルコールがメタノールであり、(2)ジカルボン酸がコハク酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0026】
前記(1)〜(3)を用いてエステル化合物を得る方法としては、特に限定はないが、例えば、以下の態様1及び態様2の方法が挙げられる。
態様1:(2)ジカルボン酸と(1)一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する工程(工程1)と、得られたジカルボン酸エステルと(3)二価アルコールをエステル化反応させる工程(工程2)を含む方法
態様2:(1)一価アルコール、(2)ジカルボン酸、及び(3)二価アルコールを一括反応させる工程を含む方法
【0027】
これらのなかでも、平均重合度を調整する観点から、脂肪族ポリエステルの加アルコール分解の生じ難い態様1の方法が好ましい。
【0028】
態様1の方法について、以下に説明する。
【0029】
態様1は、ジカルボン酸と一価アルコールとの反応物であるジカルボン酸エステルを二価アルコールとエステル交換反応させる方法であり、本明細書では、態様1の方法をエステル交換反応ともいう。
【0030】
具体的には、先ず、態様1の工程1で、(2)ジカルボン酸と(1)一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する。エステル化方法としては、例えば、(2)ジカルボン酸と触媒の混合物に(1)一価アルコールを添加して攪拌し、生成する水や一価アルコールを系外に除く、脱水エステル化方法が挙げられる。具体的には、
1)ジカルボン酸の中に一価アルコールの蒸気を吹き込んでエステル化反応を行うと共に、生成する水と未反応の一価アルコールを共に除く方法、
2)過剰の一価アルコールを用いてエステル化反応を行うと共に、生成する水と一価アルコールを共沸させて除く方法、
3)エステル化反応を行うと共に、水又は、水、一価アルコール等と共沸をする溶剤(例えばトルエン)を加えて水とアルコールを除く方法
等が挙げられる。
【0031】
触媒としては、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の無機酸、又は有機酸が挙げられるが、なかでも、パラトルエンスルホン酸が好ましい。触媒の使用量はジカルボン酸100モルに対して、0.05〜10モルが好ましく、0.10〜3モルがより好ましい。
【0032】
一価アルコールとジカルボン酸のモル比(一価アルコール/ジカルボン酸)は、反応率の向上と経済性の観点から、2/1〜20/1が好ましく、3/1〜12/1がより好ましい。なお、この場合「反応率」とは、ジカルボン酸を基準として、反応に供した原料が反応した割合を意味する。
【0033】
反応温度は、用いる一価アルコールの種類にもよるが、反応率の向上と副反応抑制の観点から、50〜200℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜15時間が好ましく、1.0〜5時間がより好ましい。なお、反応は減圧下で行ってもよく、好ましくは2.7〜101.3kPa、より好ましくは6.7〜101.3kPaに減圧してもよい。
【0034】
得られたジカルボン酸エステルは、2個の分子末端に対するアルキルエステル化率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。なお、本明細書において、アルキルエステル化率は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
【0035】
かくして得られたジカルボン酸エステルを工程2に供する。なお、本発明において、ジカルボン酸エステルは、前記のようにして得られた反応物を用いてもよいが、市販品を用いてもよく、市販品を工程2に供してもよい。好適な市販品としては、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)、アジピン酸ジメチル(和光純薬工業社製)が挙げられる。
【0036】
態様1の工程2では、ジカルボン酸エステルの(3)二価アルコールによるエステル交換反応を行う。
【0037】
具体的には、例えば、ジカルボン酸エステルと触媒の混合物に(3)二価アルコールを連続的に添加して、生成する一価アルコールを系外に除くエステル交換反応、又は、(3)二価アルコールと触媒の混合物にジカルボン酸エステルを連続的に添加して、生成する一価アルコールを系外に除くエステル交換反応が挙げられる。いずれにおいても、生成した一価アルコールを留去することにより平衡をずらして、反応を進行させることができる。また、触媒は段階的に添加してもよく、例えば、ジカルボン酸エステルに二価アルコールを投入、あるいは、二価アルコールにジカルボン酸エステルを投入する際に存在させ、かつ、生成する一価アルコールを系外に除く段階でさらに添加することができる。なお、エステル交換反応に用いるジカルボン酸エステルは前述のエステル化反応で得られた反応混合物又は市販品をそのまま使用することもできるし、蒸留単離した後、使用することもできる。
【0038】
触媒としては、前述の硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の無機酸、又は有機酸の他、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの有機金属化合物、ナトリウムメトキシドなどのアルカリアルコキシド等が挙げられる。なかでも、パラトルエンスルホン酸、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、ナトリウムメトキシドが好ましい。触媒の使用量は、例えば、パラトルエンスルホン酸、ナトリウムメトキシドでは、ジカルボン酸エステル100モルに対して、0.05〜10モルが好ましく、0.10〜5モルがより好ましく、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンでは0.0001〜0.1モルが好ましく、0.0005〜0.05モルがより好ましい。なお、ここでいう触媒の使用量とは、工程2で用いた触媒の総使用量を言う。
【0039】
ジカルボン酸エステルと二価アルコールのモル比(ジカルボン酸エステル/二価アルコール)は、本発明におけるエステル化合物の分子量を制御する観点から、1.1/1〜15/1が好ましく、1.5/1〜4/1がより好ましく、2.0/1〜4/1がさらに好ましい。
【0040】
反応温度は、反応率の向上と副反応抑制の観点から、50〜250℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。この場合、「反応率」とは、二価アルコールを基準として、反応に供した原料が反応した割合を意味する。反応時間は、0.1〜10時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。なお、反応は減圧下で行ってもよく、好ましくは0.7〜101.3kPaで、より好ましくは2.0〜101.3kPaに減圧してもよい。
【0041】
態様2の方法について、以下に説明する。
【0042】
態様2の方法は、(1)一価アルコール、(2)ジカルボン酸、及び(3)二価アルコールを、必要により、触媒の存在下で一括反応させる方法であり、本明細書では、態様2の方法を一括添加反応ともいう。
【0043】
原料は、一括又は分割して供給することができるが、一価アルコールは分割又は連続的に反応器内に導入してもよい。
【0044】
触媒としては、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の無機酸、又は有機酸が挙げられ、なかでも、パラトルエンスルホン酸が好ましい。触媒の使用量はジカルボン酸100モルに対して、0.05〜10モルが好ましく、0.10〜5モルがより好ましい。
【0045】
ジカルボン酸と、一価アルコール、二価アルコールのモル比(ジカルボン酸/一価アルコール/二価アルコール)は、本発明におけるエステル化合物の分子量を制御する観点から、1.1/1.1/1〜15/100/1が好ましく、1.5/3/1〜5/30/1がより好ましく、2.0/5/1〜5/20/1がさらに好ましい。
【0046】
また、本発明におけるエステル化合物の分子量を制御する観点から、ジカルボン酸と二価アルコールのモル比(ジカルボン酸/二価アルコール)は、1.5/1〜5/1が好ましい。
【0047】
反応温度は、用いるアルコールの種類にもよるが、50〜200℃が好ましく、反応時間は0.5〜15時間が好ましい。反応は減圧下で行ってもよく、6.7〜101.3kPa圧力下が好ましい。また、温度70〜140℃、常圧下(101.3kPa)で3〜5時間反応させて、生成する水と一価アルコールを除いた後に、温度70〜120℃、圧力0.7〜26.7kPaで0.5〜3時間熟成してもよい。
【0048】
また、本発明においては、態様3として、前記(2)ジカルボン酸と(3)二価アルコールのエステル化反応(脱水エステル化反応)を行ってジカルボン酸エステルを合成後に、得られたジカルボン酸エステルに、さらに(1)一価アルコールをエステル化反応(脱水エステル化反応)させてもよい。
【0049】
なお、得られた反応物は、公知の方法に従って、未反応原料や副生物を留去してもよい。
【0050】
かくして、前記エステル化方法により、式(I)で表されるカルボン酸エステルを含むエステル化合物が得られる。
【0051】
本発明におけるエステル化合物のケン化価は、樹脂との相溶性及び樹脂組成物からのVOC発生の抑制を両立する観点から、500〜800mgKOH/gが好ましく、600〜750mgKOH/gがより好ましい。なお、本明細書において、エステル化合物のケン化価は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0052】
本発明におけるエステル化合物の数平均分子量は、耐揮発性と可塑化効率を向上させる観点から、300〜700であり、300〜600が好ましく、350〜600がより好ましく、350〜500がさらに好ましい。数平均分子量が300以上であることで、樹脂組成物の耐揮発性が良好となり、樹脂組成物からのエステル化合物の揮発が抑制されるため、経時での樹脂組成物成形体の曲げ弾性率、耐熱性、耐ブリード性などの物性低下が少なくなる。なお、本明細書において、エステル化合物の分子量は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
【0053】
本発明におけるエステル化合物は、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ可塑化効果を発現させる観点及び可塑化効率を向上させる観点から、2個の分子末端に対するアルキルエステル化率(末端アルキルエステル化率)が、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
【0054】
本発明におけるエステル化合物のエーテル基価は、樹脂との相溶性及び樹脂組成物からのVOC発生の抑制を両立する観点から、0〜8mmol/gが好ましく、0〜6mmol/gがより好ましく、1〜6mmol/gがさらに好ましく、1〜5mmol/gがさらに好ましい。なお、本明細書において、エステル化合物のエーテル基価は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
【0055】
よって、本発明におけるエステル化合物の一つの態様としては、例えば、
前記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700、エーテル基価が0〜8mmol/gであるエステル化合物が好ましく、
前記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が0.05mgKOH/g以上、1.00mgKOH/g以下、水酸基価が0.1mgKOH/g以上、5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜600、エーテル基価が0〜8mmol/gであるエステル化合物がより好ましく。
前記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が0.05mgKOH/g以上、0.90mgKOH/g以下、水酸基価が0.1mgKOH/g以上、4.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜600、エーテル基価が0〜6mmol/gであるエステル化合物がさらに好ましく、
前記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が0.1mgKOH/g以上、0.90mgKOH/g以下、水酸基価が0.2mgKOH/g以上、4.0mgKOH/g以下、数平均分子量が350〜500、エーテル基価が1〜5mmol/gであるエステル化合物がよりさらに好ましい。
【0056】
本発明におけるエステル化合物は、可塑化効果にも優れながらも、揮発性有機化合物(VOC)の発生が抑制されていることから、脂肪族ポリエステルに配合して好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物における、前記エステル化合物の含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。
【0057】
(脂肪族ポリエステル)
本発明における脂肪族ポリエステルとしては、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等が挙げられ、生分解性を有していることが好ましい。これらのなかでも、加工性、経済性、入手性、及び物性に優れることから、ポリブチレンサクシネート及びポリ乳酸樹脂が好ましく、ポリ乳酸樹脂がより好ましい。なお、本発明においては、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等の天然高分子と前記脂肪族ポリエステルも好適に用いることができる。
【0058】
ポリ乳酸樹脂としては、自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解される生分解性を有していることが好ましく、原料モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させて得られるポリ乳酸、及び/又は、原料モノマーとして乳酸成分と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分(以下、単に、ヒドロキシカルボン酸成分ともいう)とを用い、それらを縮重合させて得られるポリ乳酸を含有する。なお、本明細書において「生分解性」とは、自然界において微生物によって低分子化合物に分解され得る性質のことであり、具体的には、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性のことを意味する。
【0059】
乳酸には、L−乳酸(L体)、D−乳酸(D体)の光学異性体が存在する。本発明では、乳酸成分として、いずれかの光学異性体のみ、又は双方を含有してもよいが、樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、いずれかの光学異性体を主成分とする光学純度が高い乳酸を用いることが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、乳酸成分中の含有量が50モル%以上である成分のことをいう。
【0060】
一方、ヒドロキシカルボン酸成分としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて利用することができる。これらのなかでも、樹脂組成物の耐熱性及び透明性を向上させる観点から、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
【0061】
また、本発明においては、前記乳酸及びヒドロキシカルボン酸化合物の2量体が、それぞれの成分に含有されてもよく、好適例としては、樹脂組成物の耐熱性及び透明性を向上させる観点から、D−ラクチド及びL−ラクチドが挙げられる。なお、乳酸の2量体は、乳酸成分のみを縮重合させる場合、及び乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させる場合のいずれの場合の乳酸成分に含有されていてもよい。
【0062】
乳酸の2量体の含有量は、樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から、乳酸成分中、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。
【0063】
ヒドロキシカルボン酸化合物の2量体の含有量は、樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から、ヒドロキシカルボン酸成分中、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。
【0064】
乳酸成分のみの縮重合反応、及び、乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分との縮重合反応は、特に限定はなく、公知の方法を用いて行うことができる。
【0065】
かくして、原料モノマーを選択することにより、例えば、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの成分85モル%以上100モル%未満とヒドロキシカルボン酸成分0モル%超15モル%以下からなるポリ乳酸が得られるが、なかでも、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトンを原料モノマーとして用いて得られるポリ乳酸が好ましい。なお、ポリ乳酸の光学純度は、樹脂組成物の耐熱性及び透明性を向上させる観点から、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。本明細書において、ポリ乳酸樹脂の光学純度は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準 第3版改訂版 2004年6月追補 第3部 衛生試験法 P12-13」記載のD体含有量の測定方法に従って求めることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0066】
また、本発明において、ポリ乳酸として、樹脂組成物の耐熱性及び透明性を向上させる観点から、異なる異性体を主成分とする乳酸成分を用いて得られた2種類のポリ乳酸からなるステレオコンプレックスポリ乳酸を用いてもよい。
【0067】
ステレオコンプレックスポリ乳酸を構成する一方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(A)と記載する〕は、L体90〜100モル%、D体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。他方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(B)と記載する〕は、D体90〜100モル%、L体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。なお、L体及びD体以外のその他の成分としては、2個以上のエステル結合を形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられ、また、未反応の前記官能基を分子内に2つ以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等であってもよい。
【0068】
ステレオコンプレックスポリ乳酸における、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)の重量比〔ポリ乳酸(A)/ポリ乳酸(B)〕は、樹脂組成物の耐熱性及び透明性を向上させる観点から、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。
【0069】
ポリ乳酸の融点(Tm)(℃)は、本発明におけるエステル化合物等の分散性を向上させる観点、ならびに樹脂組成物の曲げ強度を向上させる観点、劣化を低減させる観点、及び生産性を向上させる観点から、好ましくは140〜250℃、より好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは160〜230℃である。なお、本明細書において、樹脂の融点は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0070】
ポリ乳酸樹脂における、ポリ乳酸の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは実質的に100重量%であることが望ましい。
【0071】
また、ポリ乳酸樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。
【0072】
なお、ポリ乳酸は、前記方法により合成することができるが、市販の製品としては、例えば、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440等の「レイシアシリーズ」(三井化学社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D等の「Nature Works」(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17等の「エコプラスチックU'zシリーズ」(トヨタ自動車社製)が挙げられる。これらのなかでも、樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440(三井化学社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17(トヨタ自動車社製)が好ましい。
【0073】
また、本発明の樹脂組成物は、前記エステル化合物、脂肪族ポリエステル以外に、さらに、本発明におけるエステル化合物以外の可塑剤、結晶核剤、加水分解抑制剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、難燃剤、脂肪族ポリエステル樹脂以外の樹脂、相溶化剤等の添加剤を含有してもよい。
【0074】
(本発明におけるエステル化合物以外の可塑剤)
本発明においては、樹脂組成物の透明性及び成形性をさらに向上する観点から、前記エステル化合物と共に他の可塑剤を含有することができる。他の可塑剤としては、特に限定はないが、分子内に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物が好ましく、具体的には、特開2008−174718号公報及び特開2008−115372号公報に記載の可塑剤が例示される。
【0075】
可塑剤の含有量、すなわち、他の可塑剤と前記エステル化合物との総含有量としては、樹脂組成物からなる成形体の耐熱性、透明性、成形性を向上させる観点から、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部となるように含有される。
【0076】
(結晶核剤)
本発明においては、本発明の樹脂組成物の結晶化速度、該樹脂組成物からなる成形体の耐熱性及び成形性をさらに向上する観点から、結晶核剤を含有することが好ましい。よって、本発明の樹脂組成物としては、前記エステル化合物、脂肪族ポリエステル、及び結晶核剤を含有するものが好ましい。
【0077】
結晶核剤としては、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、芳香族カルボン酸アミド、ロジン酸アミド等のアミド類;ヒドロキシ脂肪酸エステル類;芳香族スルホン酸ジアルキルエステルの金属塩、フェニルホスホン酸金属塩、リン酸エステルの金属塩、ロジン酸類金属塩等の金属塩類;カルボヒドラジド類、N−置換尿素類、有機顔料類等が挙げられるが、樹脂組成物の強度と可撓性を両立し、成形性、耐熱性、耐衝撃性を向上させ、結晶核剤の耐ブルーム性を向上させる観点から、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、これらの少なくとも1種とフェニルホスホン酸金属塩とを併用することがより好ましく、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物とフェニルホスホン酸金属塩を併用することがさらに好ましい。
【0078】
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物の具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。これらのなかでも、脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させ、樹脂組成物の強度と可撓性の両立を図る観点から、水酸基を2つ以上有し、アミド基を2つ以上有する脂肪酸ビスアミドが好ましく、樹脂組成物の成形性、耐熱性、耐衝撃性を向上させ、結晶核剤の耐ブルーム性を向上させる観点から、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアルキレンビスヒドロキシステアリン酸アミドがより好ましく、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがさらに好ましい。
【0079】
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物の融点は、混練時の結晶核剤の分散性を向上させ、また樹脂組成物の結晶化速度を向上させる観点から、65℃以上が好ましく、70〜220℃がより好ましく、80〜190℃がさらに好ましい。
【0080】
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、フェニルホスホン酸金属塩とを併用する場合、これらの割合は、本発明の効果を発現する観点から、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種/フェニルホスホン酸金属塩(重量比)=20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。
【0081】
結晶核剤の含有量は、樹脂組成物の強度と可撓性の両立、及び耐衝撃性を得る観点から、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましく、0.10〜3重量部がより好ましく、0.20〜2重量部がさらに好ましく、0.20〜1重量部がさらにより好ましい。なお、ここでいう結晶核剤の含有量とは、樹脂組成物に配合される全ての結晶核剤の合計含有量を意味する。
【0082】
(加水分解抑制剤)
本発明の樹脂組成物は、耐久性、耐加水分解性を向上させる観点から、さらに加水分解抑制剤を含有することができる。よって、本発明の樹脂組成物としては、前記エステル化合物、脂肪族ポリエステル、及び加水分解抑制剤を含有するものが好ましく、前記エステル化合物、脂肪族ポリエステル、結晶核剤、及び加水分解抑制剤を含有するものがより好ましい。加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、樹脂組成物の耐久性、耐衝撃性を向上させる観点からポリカルボジイミド化合物が好ましく、樹脂組成物の耐久性、成形性(流動性)を向上させる観点から、モノカルボジイミド化合物が好ましい。また、樹脂組成物からなる成形体の耐久性、耐衝撃性、成形性をより向上させる観点から、モノカルボジイミドとポリカルボジイミドを併用することが好ましい。
【0083】
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
【0084】
前記カルボジイミド化合物は、樹脂組成物からなる成形体の耐久性、耐衝撃性及び成形性を満たすために、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)はカルボジライトLA−1(日清紡績社製)を、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドは、スタバクゾールP及びスタバクゾールP−100(Rhein Chemie社製)を、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドはスタバクゾールI(Rhein Chemie社製)をそれぞれ購入して使用することができる。
【0085】
加水分解抑制剤の含有量は、樹脂組成物からなる成形体の透明性、成形性を向上させる観点から、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
【0086】
(無機充填剤)
無機充填剤としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維などの繊維状無機充填剤、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、有機変性ベントナイト、有機変性モンモリロナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト及び白土などの板状や粒状の無機充填剤が挙げられる。これらの無機充填剤の中では、炭素繊維、ガラス繊維、ワラステナイト、マイカ、タルク及びカオリンが好ましい。また、繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
【0087】
前記無機充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆又は集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
【0088】
無機充填剤の含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましい。
【0089】
(有機充填剤)
有機充填剤としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられるチップ状、繊維状、板状、粉末状のものを用いることができる。具体例としては、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維及び絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、パルプ粉、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものが挙げられ、成形性の観点から、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉などの粉末状のものが好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末がより好ましい。また靱性向上の観点から、振動ロッドミル、ビーズミル等で、セルロースを非晶化した粉末の有機充填剤を用いることが好ましい。
【0090】
有機充填剤の含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましい。
【0091】
(難燃剤)
難燃剤としては、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂等の臭素又は塩素を含有するハロゲン系化合物、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛等の無機系難燃剤、シリコーン樹脂、シリコーンオイル等のシリコーン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機水和物(物性の観点からシランカップリング剤、なかでもイソシアネートシランで表面処理されていることが好ましい)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、縮合リン酸エステル、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ホスファーゼン化合物等のリン化合物、及びメラミンシアヌレート等の含窒素化合物などが挙げられる。安全性の観点から、無機水和物又はリン化合物が好ましく、物性の観点から無機水和物とリン化合物の併用が好ましい。難燃剤の含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、10〜60重量部が好ましく、15〜50重量部がより好ましい。
【0092】
(その他の樹脂及び添加剤)
本発明の樹脂組成物は、強度、耐熱性、耐衝撃性等の物性向上の観点から、高強度有機合成繊維を含有することができる。高強度有機合成繊維の具体例としては、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維等が挙げられ、耐熱性を向上させる観点からアラミド繊維が好ましい。高強度有機合成繊維の含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
【0093】
また、本発明の樹脂組成物は、剛性、柔軟性、耐熱性、耐久性等の物性向上の観点から、その他の樹脂を含んでもよい。その他の樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど、あるいはエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質熱可塑性樹脂などの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられるが、中でも脂肪族ポリエステルとの相溶性を向上させる観点から、アミド結合、エステル結合、カーボネート結合等のカルボニル基を含む結合を有する樹脂が構造的にポリ乳酸樹脂と親和性が高い傾向があるため好ましい。なお、前記樹脂を含有する場合、脂肪族ポリエステル樹脂と前記樹脂とのブレンドによるポリマーアロイを使用してもよい。
【0094】
本発明においては、脂肪族ポリエステル樹脂に加えて、前記高強度有機合成繊維やその他の樹脂を含有する場合、樹脂同士の相溶性を高めるために以下の相溶化剤を含有することができる。
相溶化剤(1):エチレン/酢酸ビニル共重合体
相溶化剤(2):エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体
相溶化剤(3):酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基(置換基)を有するポリオレフィン系樹脂
相溶化剤(4):酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基(置換基)を有するアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂
相溶化剤(5):ポリエステル系樹脂、ならびに
相溶化剤(6):アイオノマー樹脂
からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。具体的には、住友化学工業社製「ボンドファースト 7M、7B、2C」(エポキシ基を有するポリエチレン樹脂)、東亞合成社製「ARUFON」(エポキシ基を有するアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂)、DIC社製「プラメート PD−350」(PLA−脂肪族ポリエステル共重合体)等を好適に用いることができる。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性、靱性等の物性向上の観点から、コアシェル型ゴムを含有しても良い。具体例としては、(コア;シリコーン/アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)、(コア;シリコーン/アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル重合体)、(コア;ブタンジエン/スチレン重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)、(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)等が挙げられる。透明性を向上させる観点から、市販品として、三菱レイヨン社製;メタブレンS−2006、S−2100、S−2200、ローム・アンド・ハース社製;パラロイドBPM−500が好ましい。コアシェル型ゴムの含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、2〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。
【0096】
本発明の樹脂組成物は、前記以外に、更にヒンダードフェノール又はホスファイト系の酸化防止剤、又は脂肪族アミド類、脂肪酸金属塩、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤等を含有することができる。酸化防止剤、滑剤のそれぞれの含有量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
【0097】
また、本発明においては、前記添加剤以外に、安定剤(紫外線吸収剤、光安定剤等)、離形剤、染料及び顔料を含む着色剤、帯電防止剤、防曇剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等の添加剤を、本発明の目的達成を妨げない範囲で組成物原料として配合してもよい。
【0098】
本発明の樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル及び前記エステル化合物を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、脂肪族ポリエステル及び前記エステル化合物、さらに必要により各種添加剤(例えば、結晶核剤、加水分解抑制剤、無機充填剤)を含有する原料を、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練して調製することができる。なお、原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することが好ましい。
【0099】
溶融混練温度は、可塑剤、結晶核剤等の分散性を向上させる観点から、脂肪族ポリエステルの融点(Tm)以上であり、好ましくはTm〜Tm+100℃の範囲であり、より好ましくはTm〜Tm+50℃の範囲である。例えば、好ましくは170〜240℃であり、より好ましくは170〜220℃である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15〜900秒間が好ましい。なお、前記エステル化合物は、前記温度における溶融混練においても、揮発性有機化合物の発生が抑制される。
【0100】
得られた溶融混練物は、結晶化速度をより向上させる観点から、溶融混練後に、溶融混練物を冷却してもよい。冷却温度は、溶融混練温度より、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上低い温度であり、具体的には、20〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。冷却時間は、2〜90秒間が好ましく、5〜60秒間がより好ましい。なお、該冷却に際して、溶融混練物を公知の方法に従って成形してから冷却してもよい。
【0101】
またさらに、冷却後には、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃で、好ましくは30〜180秒、より好ましくは30〜120秒、さらに好ましくは30〜60秒保持してもよい。なお、保持温度は、冷却温度と同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、加工性が良好で、かつ、揮発性有機化合物の発生が抑制されているため、高温条件での使用が可能となり、各種用途、なかでも、自動車用途に好適に用いることができる。従って、本発明はまた、本発明の樹脂組成物を成形した樹脂成形体を提供する。
【0103】
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を成形したものであれば特に限定はなく、該成形方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明の樹脂組成物を、シリンダー温度を好ましくは180〜220℃、より好ましくは180〜210℃に設定した射出成形機を用いて射出成形することにより、本発明の樹脂成形体が得られる。
【0104】
本発明はまた、本発明の樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0105】
製造方法としては、前記エステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程を含む方法であればよいが、前記エステル化合物の製造方法によって以下の態様が例示される。
【0106】
例えば、エステル化合物をエステル交換反応により製造する工程を含む態様として、以下の工程を含む製造方法(態様A)が挙げられる。
(工程1−1) (2)ジカルボン酸と(1)一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する工程
(工程1−2) 工程1−1で得られたジカルボン酸エステルと(3)二価アルコールとのエステル交換反応を行って、カルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物を得る工程
(工程1−3) 工程1−2で得られたエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程
【0107】
また、エステル化合物を一括添加反応により製造する工程を含む態様として、以下の工程を含む製造方法(態様B)が挙げられる。
(工程2−1) (1)一価アルコール、(2)ジカルボン酸、及び(3)二価アルコールを一括反応させて、カルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物を得る工程
(工程2−2) 工程2−1で得られたエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程
【0108】
態様Aの製造方法におけるエステル化合物を得る工程、即ち、工程1−1と工程1−2は、エステル化合物を製造する方法として前述した態様1の方法を参照することができる。より具体的には、態様Aの工程1−1は態様1の工程1を、態様Aの工程1−2は態様1の工程2を参照することができる。
【0109】
例えば、工程1−1では態様1の工程1と同様に、(2)ジカルボン酸と(1)一価アルコールを、好ましくは2/1〜20/1、より好ましくは3/1〜12/1のモル比(一価アルコール/ジカルボン酸)で、必要により触媒の存在下で、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜140℃でエステル化反応させて、ジカルボン酸エステルを合成することができる。
【0110】
工程1−2では態様1の工程2と同様に、工程1−2で得られたジカルボン酸エステルと(3)二価アルコールとを、好ましくは1.1/1〜15/1、より好ましくは1.5/1〜4/1、さらに好ましくは2.0/1〜4/1のモル比(ジカルボン酸エステル/二価アルコール)で、必要により触媒の存在下で、好ましくは50〜250℃、より好ましくは60〜150℃でエステル交換反応させることができる。
【0111】
態様Bの製造方法におけるエステル化合物を得る工程、即ち、工程2−1は、エステル化合物を製造する方法として前述した態様2の方法を参照することができる。
【0112】
例えば、工程2−1では態様2と同様に、(1)一価アルコール、(2)ジカルボン酸、及び(3)二価アルコールを、必要により触媒の存在下で、モル比(ジカルボン酸/一価アルコール/二価アルコール)が好ましくは1.1/1.1/1〜15/100/1、より好ましくは1.5/3/1〜5/30/1、さらに好ましくは2.0/5/1〜5/20/1で、一括反応させることができる。
【0113】
また、態様A及び態様Bにおける溶融混練は特に限定はなく、例えば、態様Aの工程1−3及び態様Bの工程2−2は、得られたエステル化合物及び脂肪族ポリエステルに加えて、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、公知の混練機を用いて、好ましくは170〜240℃、より好ましくは170〜220℃で溶融混練することができる。
【0114】
態様A及び態様Bの製造方法は、得られる樹脂組成物の結晶化速度を向上させる観点から、溶融混練工程により得られた溶融混練物を冷却する工程をさらに含んでいてもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、例中の部は、特記しない限り重量部である。また、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは15〜25℃を示す。
【0116】
〔ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)〕
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記の測定条件で測定する。
<測定条件>
カラム:GMHHR−H+GMHHR−H
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶離液:クロロホルム
流速:1.0mL/min
サンプル濃度:1mg/mL
注入量:0.1mL
換算標準:ポリスチレン
【0117】
〔ポリ乳酸の光学純度〕
光学純度は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準 第3版改訂版 2004年6月追補 第3部 衛生試験法 P12−13」記載のD体含有量の測定方法に従って、下記の測定条件で測定する。具体的には、精秤したポリ乳酸に水酸化ナトリウム/メタノールを加え、65℃に設定した水浴振とう器にセットして、樹脂分が均一溶液になるまで加水分解を行い、さらに加水分解が完了したアルカリ溶液に希塩酸を加え中和し、その分解溶液を純水にて定容した後、一定容量をメスフラスコに分液して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)移動相溶液により希釈し、pHが3〜7の範囲になるように調整してメスフラスコに定容、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過し、この調整溶液をHPLCにてD−乳酸、L−乳酸を定量することによってポリ乳酸の光学純度を求める。
<HPLC測定条件>
カラム :光学分割カラム
スミキラルOA6100(46mmφ×150mm、5μm)、住化分析センター社製
プレカラム:光学分割カラム
スミキラルQA6100(4mmφ×10mm、5μm)、住化分析センター社製
カラム温度:25℃
移動相 :2.5%メタノール含有1.5mM硫酸銅水溶液
移動相流量:1.0mL/分
検出器 :紫外線検出器(UV254nm)
注入量 :20μL
【0118】
〔ポリ乳酸樹脂の融点〕
ポリ乳酸樹脂の融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC、パーキンエルマー社製、ダイアモンドDSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる。融点の測定は、昇温速度10℃/分で20℃から250℃まで昇温して行う。
【0119】
〔エステル化合物、可塑剤の酸価、水酸基価、及びケン化価〕
酸価:滴定溶媒としてトルエン/エタノール=2/1(体積比)を用いる他は、JIS K 0070の試験法に従って分析を行う。
水酸基価:アセチル化試薬として無水酢酸/ピリジン=1/4(体積比)を用い、添加量を3mLとする他は、JIS K 0070の試験法に従って分析を行う。
ケン化価:水浴の温度を95℃に、加熱温度を1時間にする他は、JIS K 0070の試験法に従って分析を行う。
【0120】
〔エステル化合物、可塑剤の分子量、末端アルキルエステル化率、及びエーテル基価〕
分子量:本明細書においてエステル化合物、可塑剤の分子量とは数平均分子量を意味し、酸価、水酸基価、及びケン化価から次式により算出する。
平均分子量 M=(M1+M2−M3×2)×n+M1−(M3−17.01)×2+(M3−17.01)×p+(M2−17.01)×q+1.01×(2−p−q)
q=水酸基価×M÷56110
2−p−q=酸価×M÷56110
平均重合度 n=ケン化価×M÷(2×56110)−1
末端アルキルエステル化率:分子末端のアルキルエステル化率(末端アルキルエステル化率)は以下の式より算出することができ、分子末端のアルキルエステル化率は数値が大きいほうが、遊離のカルボキシル基や水酸基が少なく、分子末端が十分にアルキルエステル化されていることを示す。
末端アルキルエステル化率(%)=(p÷2)×100
ただし、M1:ニ塩基酸エステルの分子量
M2:二価アルコールの分子量
M3:一価アルコールの分子量
p:一分子中の末端アルキルエステル基の数
q:一分子中の末端水酸基の数
エーテル基価:以下の式より、エステル化合物、可塑剤1g中のエーテル基のミリモル(mmol)数であるエーテル基価を算出する。
エーテル基価(mmol/g)=(m−1)×n×1000÷M
ただし、m:オキシアルキレン基の平均の繰り返し数(m−1は二価アルコール一分子中のエーテル基の数を表す)
【0121】
エステル化合物の製造例1
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジエチレングリコール999g(9.41モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液23.6g(ナトリウムメトキシド0.122モル)を入れ、常圧(101.3kPa)、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)4125g(28.2モル)を3時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却し、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液4.4g(ナトリウムメトキシド0.023モル)を添加して、100℃で、圧力を2時間かけて常圧から2.9kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)41gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を4時間かけて70℃から190℃に上げ、残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物A)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.51モルであった。
【0122】
エステル化合物の製造例2
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管付き)にコハク酸334g(2.83モル)、ジエチレングリコール100g(0.94モル)、メタノール242g(7.55モル)、及びパラトルエンスルホン酸一水和物6.8g(0.036モル)を入れ、1時間かけて72℃から140℃に昇温し、留分を除去した。得られた反応物を60℃に冷却してメタノール242g(7.55モル)を添加し、同様に留分を除去する操作を3回繰り返した後、圧力2.7kPa、103℃で留分7.8gを除去した。次いで、キョーワード500SH(協和化学工業社製)16gを添加し、圧力2.5kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を0.5時間かけて66℃から190℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温淡黄色の液体(エステル化合物B)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸100モルに対して1.27モルであった。
【0123】
エステル化合物の製造例3
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジエチレングリコール363g(3.42モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液6.6g(ナトリウムメトキシド0.034モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1000g(6.84モル)を3時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却し、圧力を1.5時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.8g(ナトリウムメトキシド0.030モル)を添加して、100℃で、圧力を2時間かけて常圧から2.9kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)18gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を1時間かけて70℃から190℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物C)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.94モルであった。
【0124】
エステル化合物の製造例4
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にトリエチレングリコール342g(2.28モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液4.4g(ナトリウムメトキシド0.023モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1000g(6.84モル)を3時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却して、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液3.8g(ナトリウムメトキシド0.020モル)を添加して、100℃で、圧力を3時間かけて常圧から2.9kPaまで徐々に下げて、メタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)12gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を1時間かけて70℃から165℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物D)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.63モルであった。
【0125】
エステル化合物の製造例5
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に1,3−プロパンジオール86.8g(1.14モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.2g(ナトリウムメトキシド0.011モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)500g(3.42モル)を2時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却し、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.0g(ナトリウムメトキシド0.010モル)を添加し、100℃で、圧力を3時間かけて常圧から2.9kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)6gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力4.5kPaで、温度を1時間かけて114℃から194℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物E)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.61モルであった。
【0126】
エステル化合物の製造例6
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に1,2−プロパンジオール260g(3.42モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液4.2g(ナトリウムメトキシド0.022モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1500g(10.26モル)を1時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却し、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液3.7g(ナトリウムメトキシド0.019モル)を添加して、115℃で、圧力を2時間かけて常圧から5.1kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)6gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.8kPaで、温度を2時間かけて95℃から133℃に上げて、残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物F)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.40モルであった。
【0127】
エステル化合物の製造例7
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジエチレングリコール203g(1.91モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.5g(ナトリウムメトキシド0.029モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、アジピン酸ジメチル(和光純薬工業社製)1000g(5.74モル)を2時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留出させた。次に、75℃に冷却し、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液3.7g(ナトリウムメトキシド0.019モル)を添加して、100℃で、圧力を2時間かけて常圧から2.4kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)14gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を1時間かけて70℃から190℃に上げて残存アジピン酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物G)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.84モルであった。
【0128】
エステル化合物の製造例8
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にネオペンチルグリコール263.5g(2.53モル)、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)1500g(4.05モル)、及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.6g(ナトリウムメトキシド0.029モル)を入れ、圧力3.7kPa、120℃で1.5時間反応させながら、反応により生じる2−エチルヘキサノールを留去させた。次に、75℃に冷却後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液3.0g(ナトリウムメトキシド0.016モル)を添加し、圧力0.4kPaで、温度を1時間かけて92℃から160℃に上げて、2−エチルヘキサノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)19gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を2時間かけて166℃から214℃に上げて残存アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)504gを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物H)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して1.11モルであった。
【0129】
エステル化合物の製造例9
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、ディーンスタルク装置、窒素吹き込み管付き)に2−エチルヘキサノール(関東化学社製)2515g(19.3モル)、コハク酸(和光純薬工業社製)877g(7.43モル)、及びパラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業社製)14.1g(0.0742モル)を入れ、圧力16kPa、80℃の状態から圧力12kPa、90℃の状態まで、7時間かけて反応を行い、水を留出させた。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)32gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に仕込み、圧力0.7kPa、95℃の状態から圧力0.5kPa、185℃の状態にして残存2−エチルヘキサノールを留去した後、再び、キョーワード500SHを16g添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行って、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)を得た。次に、4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に、このコハク酸ビス(2−エチルヘキシル)467g(1.36モル)、ジエチレングリコール250g(2.36モル)、及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.2g(ナトリウムメトキシド0.011モル)を入れ、110℃で、圧力を45分間かけて2.7kPaから0.9kPaに徐々に下げて、反応により生じる2−エチルヘキサノールを留去した。80℃まで冷却した後、再び、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)1953g(5.70モル)、28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.0g(ナトリウムメトキシド0.026モル)を添加し、5.5時間かけて110℃、0.8kPaの状態から158℃、0.4kPaの状態まで、昇温しながら圧力を徐々に下げて、反応により生じる2−エチルヘキサノールを留去した。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)10.5gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を4.5時間かけて178℃、0.3kPaの状態から220℃、0.1kPaの状態まで、昇温しながら圧力を徐々に下げて、残存コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)を留去し、常温黄色の液体(エステル化合物I)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.53モルであった。
【0130】
エステル化合物の製造例10
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、ディーンスタルク装置、窒素吹き込み管付き)に1−ブタノール(和光純薬工業社製)1700g(22.9モル)、コハク酸(和光純薬工業社製)1042g(8.82モル)、及びパラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業社製)16.8g(0.0882モル)を入れ、74℃で、圧力を6.5時間かけて15.2kPaから6.9kPaまで徐々に下げて水を留去した。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)28gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に仕込み、圧力4.9kPa、75℃の状態から圧力2.7kPa、159℃の状態まで1時間かけて残存1−ブタノールを留去した後、圧力2.7kPaで、159℃から162℃まで蒸留を行って、コハク酸ジブチルを得た。一方、4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジエチレングリコール461g(4.34モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液9.8g(ナトリウムメトキシド0.051モル)を入れ、圧力3.6kPa、84℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、圧力2.7kPa、90℃で前記コハク酸ジブチル3000g(13.0モル)を3時間かけて滴下し、反応により生じる1−ブタノールを留去した。次に、130℃に昇温し、圧力を1時間かけて常圧から0.4kPaまで徐々に下げて1−ブタノールを留去した後、常圧にもどして80℃まで冷却し、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.5g(ナトリウムメトキシド0.013モル)を添加して、130℃で、圧力を1時間かけて2.7kPaから0.4kPaまで徐々に下げて1−ブタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)18gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.3kPaで、温度を2時間かけて112℃から180℃に上げ、残存コハク酸ジブチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物J)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.49モルであった。
【0131】
エステル化合物の製造例11
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジエチレングリコール369g(3.47モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.6g(ナトリウムメトキシド0.029モル)を入れ、圧力3.6kPa、84℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、圧力2.7kPa、79℃で製造例10と同様にして得られたコハク酸ジブチル1600g(6.95モル)を2.5時間かけて滴下し、反応により生じる1−ブタノールを留去した。次に、常圧にもどした後、28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.1g(ナトリウムメトキシド0.011モル)を添加し、1.5時間かけて85℃、2.1kPaの状態から146℃、1.1kPaの状態まで、徐々に昇温、減圧して、反応により生じる1−ブタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)11gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行い、常温黄色の液体(エステル化合物K)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.58モルであった。
【0132】
エステル化合物の製造例12
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にテトラエチレングリコール665g(3.42モル)、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1000g(6.84モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液7.0g(ナトリウムメトキシド0.036モル)を入れ、1時間かけて、常圧、29℃の状態から16kPa、94℃の状態に、減圧、昇温して、メタノールを留去した。さらに、コハク酸ジメチル500g(3.42モル)を添加し、5kPa、90℃で15分間、メタノールを留去した。その後、28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液4.0g(ナトリウムメトキシド0.021モル)を入れ、2時間かけて、10kPa、79℃の状態から2kPa、85℃の状態に減圧、昇温し、メタノールを留去した。その後、キョーワード600S(協和化学工業社製)16gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.53kPaで、温度を2時間かけて85℃から198℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物L)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.55モルであった。
【0133】
エステル化合物の製造例13
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に1,4−ブタンジオール308g(3.42モル)、及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液7.2g(ナトリウムメトキシド0.037モル)を入れ、常圧(101.3kPa)、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1500g(10.26モル)を3時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却し、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.5g(ナトリウムメトキシド0.013モル)を添加して、100℃で、圧力を2時間かけて常圧から2.9kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、キョーワード600S(協和化学工業社製)14gを添加し、圧力4.0kPa、90℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.53kPaで、温度を2時間かけて85℃から180℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄白色の固体(エステル化合物M)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.49モルであった。
【0134】
エステル化合物の製造例14
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に1,3−プロパンジオール521g(6.84モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.9g(ナトリウムメトキシド0.031モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1500g(10.26モル)を1時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、60℃に冷却し、28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.6g(ナトリウムメトキシド0.029モル)を入れ、2時間かけて120℃に昇温した後、圧力を1時間かけて常圧から3.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)18gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.1kPaで、温度を2.5時間かけて85℃から194℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体(エステル化合物N)を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.58モルであった。
【0135】
得られた化合物の酸価、水酸基価、及びケン化価を測定し、前記式に基づき数平均分子量、末端アルキルエステル化率、平均重合度(n)、及びエーテル基価を算出した。結果を表1〜2に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
実施例1〜10、13〜16及び比較例1〜6(ポリ乳酸樹脂成形体)
ポリ乳酸樹脂組成物として、表3〜5に示す組成物原料を、2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−45)にて、回転数100r/min、溶融混練温度190℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットは、70℃減圧下で1日乾燥し、水分量を500ppm以下とした。このペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機(日本製鋼所製、J75E−D)を用いて、金型温度80℃、冷却時間45秒で射出成形して、成形体〔平板状試験片(70mm×40mm×3mm)、角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)〕を得た。
【0139】
実施例11(ポリブチレンサクシネート樹脂成形体)
実施例1において、ポリ乳酸樹脂の代わりにポリブチレンサクシネートを用いる以外は実施例1と同様にして、表4に示す組成物原料を用いて樹脂組成物のペレットを調製後、乾燥して水分量を500ppm以下とした。このペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機を用いて、金型温度30℃、冷却時間45秒で射出成形して、成形体〔平板状試験片(70mm×40mm×3mm)、角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)〕を得た。
【0140】
実施例12(ポリ乳酸−ポリプロピレンアロイ樹脂成形体)
実施例1で得られた溶融混練後のポリ乳酸樹脂組成物ペレットと、ポリプロピレン及び相溶化剤とを表4に示す組成比で、2軸押出機の回転数を100r/minから500r/minに変更する以外は、実施例1と同様にして溶融混練して、樹脂組成物のペレットを調製後、乾燥して水分量を500ppm以下とした。このペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機を用いて、金型温度80℃、冷却時間45秒で射出成形して、成形体〔平板状試験片(70mm×40mm×3mm)、角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)〕を得た。
【0141】
なお、表3〜5における原料は以下の通りである。
<脂肪族ポリエステル>
*1:ポリ乳酸樹脂、ネイチャーワークスLLC社製、ポリ−L−乳酸、NatureWorks 4032D、光学純度98.5%、融点160℃、重量平均分子量141000、残存モノマー1200ppm
*8:ポリブチレンサクシネート、昭和高分子社製、ビオノーレ 1001
<その他の樹脂>
*9:ポリプロピレン、日本ポリプロ社製、BC03B
<エステル化合物>
エステル化合物A〜N:表1〜2に記載のもの
<可塑剤>
*2:メトキシPEG−400、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、東邦化学社製、酸価0.08mgKOH/g、水酸基価142.4mgKOH/g、数平均分子量390、エーテル基価20.9mmol/g
*3:メトキシPEG−1000、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、東邦化学社製、酸価0.15mgKOH/g、水酸基価56.6mgKOH/g、数平均分子量990、エーテル基価22.0mmol/g
<結晶核剤>
*4:エコプロモート、無置換のフェニルホスホン酸亜鉛塩、日産化学工業社製
*5:スリパックスH、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成社製
<加水分解抑制剤>
*6:スタバクゾールI−LF、Rhein Chemie社製
<無機充填剤>
*7:ミクロンエースP−6、日本タルク社製
<相溶化剤>
*10:Bondfast 20C、住友化学社製
【0142】
得られた成形体の特性を、下記の試験例1〜4の方法に従って評価した。結果を表3〜5に示す。
【0143】
試験例1(アルデヒド類の測定)
ジーエルサイエンス社製の10Lサンプリングバッグ(洗浄済みテドラーバッグ)に樹脂組成物の平板状試験片(70mm×40mm×3mm)3枚を入れ、バッグ内の空気を窒素で3回置換した後、ガスメータを用いて正確に3Lの窒素を入れて密封し、65℃、2h恒温槽に保存した。室温(25℃)まで冷却した後、サンプリングポンプを用いて0.5L/minの速度で、内部の気体を和光純薬工業社製の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)含浸シリカゲルカートリッジ(Presep-C DNPH)に通過させた。次に、この内部の気体を含んだカートリッジを取り外し、アセトニトリルを1.5mL/minの速度で注入し、捕集した内容物を5mLメスフラスコに溶出させ、メスアップした。この溶出物を以下の条件で高速液体クロマトグラフ分析(HPLC)し、和光純薬工業社製の6種アルデヒド−DNPH混合標準溶液から予め作成しておいた検量線を適用して、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドを定量し、試験片から発生した各々のアルデヒドの量を算出した(μg/80cm2換算)。数値が低い方がアルデヒド発生量が少なく、優れている。
<HPLC測定条件>
HPLCカラム:Waters社製、Symmetry C18、4.6×150mm
温度:40℃
移動相:グラジエント分析 〔A液〕水
〔B液〕アセトニトリル
時間(min) %B
0 40
8 66
8.5 100
17 100
検出器:UV360nm
注入量:20μL
【0144】
試験例2(曲げ弾性率)
角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)について、JIS K7203に基づいて、テンシロン(オリエンテック社製、テンシロン万能試験機 RTC−1210A)を用いて、クロスヘッド速度を3mm/minに設定して曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。曲げ弾性率は、低いほうが柔軟性に優れていることを示す。
【0145】
試験例3(耐熱性)
角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)について、JIS K7191に基づいて、熱変形温度測定機(東洋精機製作所製、B-32)を使用して、荷重1.80MPaにおいて0.25mmたわむときの温度を熱変形温度(℃)として測定した。熱変形温度が高い方が耐熱性に優れていることを示す。
【0146】
試験例4(耐ブリード性)
樹脂組成物の平板状試験片(70mm×40mm×3mm)を25℃、相対湿度60%の部屋に28日間放置し、目視及び手触り感によりブリード性を以下の3段階で評価した。
3:ブリードが認められない
2:わずかにブリードが認められる
1:明らかにブリードが認められる
【0147】
【表3】

【0148】
【表4】

【0149】
【表5】

【0150】
表3〜5の結果から明らかなように、実施例の成形体は比較例の成形体に比べて、可撓性を維持しながら、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの発生が抑制され、さらには、耐熱性及び耐ブリード性にも優れることが分かる。よって、本発明のポリエステル樹脂用添加剤は、可塑化効率に優れ、かつ、揮発性化合物の発生が抑制されたものであることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の樹脂組成物は、揮発性化合物の発生が抑制されているため、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)を用いて得られるカルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物と、脂肪族ポリエステルとを含有してなる、樹脂組成物。
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
【請求項2】
エステル化合物の酸価が0.05mgKOH/g以上、1.00mgKOH/g以下であり、水酸基価が0.1mgKOH/g以上、5.0mgKOH/g以下である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
エステル化合物のエーテル基価が0〜8mmol/gである、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
エステル化合物の数平均分子量が300〜600である、請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項5】
炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコールが、メタノール及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる、請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項6】
炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる、請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項7】
炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコールが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる、請求項1〜6いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項8】
エステル化合物を脂肪族ポリエステル100重量部に対して1〜50重量部含有する、請求項1〜7いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項9】
脂肪族ポリエステルがポリ乳酸樹脂を含んでなる、請求項1〜8いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、結晶核剤を脂肪族ポリエステル100重量部に対して0.05〜5重量部含有する、請求項1〜9いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【請求項12】
以下の工程を含む、請求項1〜10いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
(工程1−1) 請求項1に記載のジカルボン酸と請求項1に記載の一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する工程
(工程1−2) 工程1−1で得られたジカルボン酸エステルと請求項1に記載の二価アルコールとのエステル交換反応を行って、カルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物を得る工程
(工程1−3) 工程1−2で得られたエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程
【請求項13】
工程1−1において、一価アルコールとジカルボン酸のモル比(一価アルコール/ジカルボン酸)が2/1〜20/1である、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
工程1−2において、ジカルボン酸エステルと二価アルコールのモル比(ジカルボン酸エステル/二価アルコール)が1.1/1〜15/1である、請求項12又は13記載の製造方法。
【請求項15】
以下の工程を含む、請求項1〜10いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
(工程2−1) 請求項1に記載の一価アルコール、請求項1に記載のジカルボン酸、及び請求項1に記載の二価アルコールを一括反応させて、カルボン酸エステルを含み、酸価が1.00mgKOH/g以下、水酸基価が5.0mgKOH/g以下、数平均分子量が300〜700であるエステル化合物を得る工程
(工程2−2) 工程2−1で得られたエステル化合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する工程
【請求項16】
工程2−1において、ジカルボン酸と、一価アルコール、二価アルコールのモル比(ジカルボン酸/一価アルコール/二価アルコール)が1.1/1.1/1〜15/100/1である、請求項15記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−62467(P2012−62467A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179177(P2011−179177)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】