樹脂組成物
【課題】 環境への低負荷化を考慮して植物材料であるポリ乳酸を用いながら、耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることのできる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、(a)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、(b)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーと、(c)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部が修飾された金属酸化物微粒子と、(d)成分として重合開始剤と、を含む。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、(a)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、(b)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーと、(c)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部が修飾された金属酸化物微粒子と、(d)成分として重合開始剤と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機のハイブリッド型の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂の機械的特性、耐熱性等を向上させる目的で、樹脂中に無機微粒子を配合させた有機−無機のハイブリッド型の樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。また、近年では環境への低負荷化を目的とし、このような有機−無機のハイブリッド型の樹脂組成物においても、石油などの化石資源の使用を抑制し、ポリ乳酸等の植物材料を用いた有機−無機のハイブリッド型樹脂組成物が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−131702号公報
【特許文献2】特開2008−239715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の樹脂組成物は、ゾル−ゲル法を用いてポリ乳酸樹脂中に金属微粒子を均一に分散させることにより、耐熱性、成形性、力学強度を改善しようとするものであり、金属微粒子とポリ乳酸樹脂との化学的な結合がなく、十分な樹脂性能の向上が得られにくい。
【0005】
上記従来技術の問題点に鑑み、環境への低負荷化を考慮して植物材料であるポリ乳酸を用いながら、耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることのできる樹脂組成物を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 本発明の樹脂組成物は、(a)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、(b)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーと、(c)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部が修飾された金属酸化物微粒子と、(d)成分として重合開始剤と、を含むことを特徴とする。
(2) (1)の樹脂組成物において、前記(a)成分のポリ乳酸は直鎖あるいは多分岐構造であることを特徴とする。
(3) (2)の樹脂組成物において、前記(a)成分,(b)成分,(c)成分の重合可能な基はメタクリロイル基またはアクリロイル基であることを特徴とする。
(4) 熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部を修飾された前記(c)成分の金属酸化物微粒子について、その表面の修飾率は1から100%である(1)乃至(3)に記載の樹脂組成物。
(5) (1)乃至(4)に何れか記載の樹脂組成物はハードコート用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物によれば、環境への低負荷化を考慮して植物材料であるポリ乳酸を用いながら、耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、熱または紫外線により重合可能な官能基を持つモノマー、オリゴマー、ポリマーと、熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部を修飾された金属酸化物微粒子と、熱または紫外線によりポリ乳酸と金属酸化物粒子、モノマー、オリゴマー、ポリマーを重合させるための重合開始剤を含むことを特徴とする。本発明の樹脂組成物は、紫外線または加熱によって重合反応することによって、重合可能な基を有するポリ乳酸と、重合可能な基で修飾された金属酸化物微粒子とが化学的に結合し、好適な耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性が得られるものである。
【0010】
本実施形態にて用いることのできるポリ乳酸の原料モノマーとしては、L−乳酸、D−乳が挙げられる。本実施形態で使用されるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されないがL−乳酸、またはD−乳酸を直接脱水縮合して得たり、ラクチド(乳酸の環状二量体)を用いて開環重合させる方法等、既知の高分子化方法を用いて製造することができる。
【0011】
またポリ乳酸は、適当な開始剤(通常は多価アルコール)を用いることで多分岐構造を得られることが知られている。多分岐構造のポリ乳酸は側鎖を多く持つことから末端に多くの反応性基を導入することが可能になる。多分岐構造をもたらす多価アルコールとしてはジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンなどを挙げることができる
また、重合可能な基を有するポリ乳酸を得るために使用される材料は、一旦にアクリロイル基、またはメタクリロイル基(以下、単に(メタ)アクリロイル基と略す)を有し、酸ハライド類、イソシアネート類、エポキシ類などのポリ乳酸の他端が持つ水酸基と共有結合出来る基を持つ重合性モノマーを使用することができる。(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ハライド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル、等を挙げることができる。なお、本実施形態にて得られる樹脂組成物を熱または紫外線にて重合された重合物の全重量に対してポリ乳酸が25wt%以上40wt%以下となることが好ましい。
【0012】
なお、本発明は樹脂組成物の一成分として、生分解性高分子材料である上述したポリ乳酸を用いるものであり、このような樹脂組成物はバイオマスプラスチックとして考えることができる。「日本バイオプラスチック協会」の定義するところによれば、バイオマスプラスチックとは「原料として再生可能な有機資源由来の物質(バイオマス)を含み、化学的又は生物学的に合成することにより得られる分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう(化学的に未修飾な非熱可塑性天然有機高分子材料は除く)」と定めている。バイオマスプラスチックは原料にバイオマスを利用することに特長があり、原料の種類等は多岐に渡り得る。分類としては、バイオマスを全面的に使うか部分的に使うかによって分けられ、ポリ乳酸の共重合物は部分的バイオマス原料プラスチックに分類される。「バイオマスプラスチック度」として原材料、製品に含まれるバイオマスプラスチック組成中のバイオマス由来成分の全体量に対する割合(重量%)が提唱されている。本発明では、原料にバイオマス由来成分になるポリ乳酸を使用し、熱または紫外線にて重合された重合物の全重量の25wt%以上40wt%以下がポリ乳酸になる樹脂組成物によるものである。
【0013】
また、本実施形態に用いる金属酸化物微粒子としては、平均粒径がサブミクロンオーダのものが好適に使用可能である。好ましくは100nm以下であり、物理的な大きさを有していれば、その下限は特に限定されない。入手可能な金属酸化物微粒子の粒径によって定められることとなる。使用可能な金属酸化物微粒子としては、表面修飾可能な金属酸化物ゾルを挙げることができる。例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、ITO(スズドープ酸化インジウム)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb2O3、Sb2O5等)、及びこれらの複合微粒子等を挙げることができる。なお、このような金属酸化物微粒子は表面に水酸基を有するものである。
【0014】
金属酸化物微粒子を重合可能な基で修飾するための重合性モノマーとしては、一端に(メタ)アクリロイル基を持ち、他端に金属酸化物微粒子が持つ水酸基と結合可能な反応基を有する重合性モノマーを用いることができる。
【0015】
重合性の修飾基はシラノール結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合などにより無機粒子(金属酸化物微粒子)表面と共有結合しているとすることができる。このような重合性官能基修飾無機粒子は、無機粒子と重合性の官能基を有する上記化合物とを反応させることによって、容易に得ることができる。
【0016】
このような重合性モノマーとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基と(メタ)アクリル基を同一分子内に併せ持つシランカップリング材、他にも、(メタ)アクリル酸ハライド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等、金属酸化物微粒子の表面にある水酸基と反応できる官能基を持った化合物を挙げることができる。
【0017】
本発明ではシリカ粒子の表面の水酸基数を1.68mmol/gとして、シリカ粒子の表面の水酸基が何%、修飾剤(水酸基と結合可能な反応基を有する重合性モノマー重合性モノマー)と反応したかを計算し、表面修飾率とした。本発明では表面修飾率が1〜100%、より好ましくは40〜80%の範囲が好ましい。
【0018】
本発明に使用可能な熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−アクリロイロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブテン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、ウレタンアクリレート類等を挙げることができ、3官能以上の(メタ)(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等の分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、又はウレタンアクリレート類等を挙げることができ、ここに挙げるものに限るものではない。またこれらを1種類または複数組み合せて使用することができる。
【0019】
アクリル系モノマーを高分子化させるための熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(BPO)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-2-メチルシクロヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤や2,2'−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤等の一般的な重合開始剤を使用することができる。
【0020】
また、得られたハードコート用の樹脂組成物を紫外線にて硬化させるための光重合開始剤の例として、トリス(クロロメチル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどのトリアジン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾイン系化合物、ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシジクロロラセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノンなどのアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、アシルフォスヒンオキサイド等が挙げられ、これらを1種類または2種類以上を併用して用いてもよい。
【0021】
添加量は(メタ)アクリレートモノマーに対して10重量%以下で、好ましくは0.5〜5重量%で使用する。
【0022】
また、重合可能な基を有するポリ乳酸とを重合可能な基で修飾された金属酸化物微粒子,または表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子とを重合させる際に用いる有機溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、これらを混合して使用することも可能である。
【0023】
その他の添加剤として、さらにハードコート剤を希釈するための希釈剤(有機溶剤や単官能又は2官能の(メタ)アクリレート及びそれらの混合物)、塗膜の塗れ性向上のための界面活性剤、泡消しのための消泡剤、紫外線が及ぼす塗膜への影響を削減し耐候性向上のための紫外線吸収剤や光安定剤、塗膜の表面滑り性又は撥水性を付与するためのフッ素系のアクリル樹脂の添加を行い、更なる機能性の付与や塗料の調整を行うことも可能である。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物は、製造プロセスも簡単であり、安価に製造することが可能である。この樹脂組成物を光学部材の表面にスピンコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、キャップコート、ナイフコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート法等を用いて所定の厚みだけ塗布した後硬化させることにより、表面硬度や耐擦傷性を向上させる効果を有するコーティングを行えることとなる。上記塗工方法にて基材に塗布、溶剤乾燥、UV照射或いは加熱により成膜することとなるが、このときの膜厚は1〜50μm、好ましくは1〜20μmとなるようにする。UV照射は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、LEDランプ、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を照射し硬化させて成膜する。熱重合させる場合には、赤外光を照射するランプ等を用いて塗布面を加熱すればよい。
【0025】
このようにして得られたハードコート膜はポリ乳酸、金属酸化物粒子を含みながらも透過率の低下がみられず90%以上の高い透過率を維持でき、透明な基材(アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PETフィルム、TACシートなど)へのもその透明性を損ねることなく表面にハードコートを施すことができる。
【0026】
また、本実施形態の樹脂組成物を射出成型機や押出成型機等を用いて機械的物性が優れたフィルム状、シート状の樹脂成型物を得ることができる。特にこのような樹脂成形物は光学用途に好適に用いることができる。
【0027】
次に、本発明に関する実施例及び比較例を挙げ、説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<直鎖ポリ乳酸の合成>
L-ラクチド4.00gと1,12−ドデカンジオール0.16gを乾燥させた試験管に入れ、70℃のオイルバス中でさらに2時間真空乾燥させた。トルエンで0.1Nにしたオクチル酸スズ225μlを加え、130℃のオイルバスで重合を開始した。1時間重合し、生成物を室温まで冷却させ無色透明の固体を得た。これをクロロホルムに溶解しメタノール中に滴下させ、ポリマーを精製した。吸引ろ過後、80℃で一晩真空乾燥させポリマー3.28gを得た。得られたポリ乳酸の分子量(Mw)はプロトン核磁気共鳴(1H NMR)から4,752 (g/mol)と計算された。
<ポリ乳酸へのアクリル基の導入>
上記ポリ乳酸 2.00 g をクロロホルムに溶解させ、メタクリロイルクロリド0.84gを加えて室温で攪拌した。トリエチルアミン0.85gを滴下し、室温で30分間攪拌、50℃で20時間還流した。反応溶液をエタノール中に滴下し、吸引ろ過した後、再度クロロホルムに溶解、メタノール中に滴下し精製した。吸引ろ過し後、80℃で8時間真空乾燥させ白色の固体を得た。
【0028】
ポリ乳酸末端のアクリル化を確認するために1H NMRスペクトルを測定した。測定結果をからポリ乳酸の末端はすべてアクリル化されたことが確認された。
<シリカ粒子の修飾>
シリカ粒子分散メチルエチルケトン溶液(日産化学工業株式会社製、MEK−ST、SiO2 30wt%、平均粒子径10~20nm)300gに同量の1,4‐ジオキサンを加え70℃に加温しながらエバポレーターで減圧し、MEKを留去した。全体の液量が半分になったところでさらに1,4‐ジオキサンを加え、再度減圧でMEKを留去した。最後に1,4‐ジオキサンを加えて20wt%に調製した。
【0029】
得られたシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液450gに3−メトキシアクリロイルプロピルトリメトキシシラン(以下MPSと記す)6.26gを加え一晩攪拌し、MPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を得た。なおシリカ粒子の表面の水酸基数を1.68mmol/gとして計算した。
<目的の樹脂組成物の作成>
上記のように作製した末端アクリル化ポリ乳酸を2.00gと、MPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を8.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E(サートマー・ジャパン株式会社製)を4.40g、光ラジカル重合開始剤Irgcure184(BASFジャパン株式会社製)(モノマーに対して3wt%)を0.13g、テトラヒドロフラン(THF)32.0gを加え攪拌し、目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。コート液の組成を表1に示す。
<UV硬化>
上記ハードコート液をスピンコーターで透明アクリル板に塗布し、40℃で3分間乾燥後、小型UVランプHandy UV Lamp SLUV−4(254nm、アズワン株式会社製)を用いて5分間UV照射し硬化を行った。硬化後40℃で5時間真空乾燥させた。
<鉛筆硬度試験>
ハードコート層表面についてJIS−K−5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例2)
<多分岐構造ポリ乳酸の合成>
L-ラクチド20.00g とジペンタエリスリトール0.34gを乾燥させた試験管に入れ、70℃のオイルバス中でさらに2時間真空乾燥させた。トルエンで0.1Nにしたオクチル酸スズ562.5μlを加え、130℃のオイルバスで重合を開始した。1時間重合し、生成物を室温まで冷却して、粘性の高い無色透明の液体を得た。これをクロロホルムに溶解しメタノール中に滴下させ、ポリマーを精製した。吸引ろ過後40℃で一晩真空乾燥させポリマー17.83gが得られた。
得られたポリ乳酸の分子量は1H NMRから14,429 (g/mol)と計算され、ジペンタエリスリトールを開始剤に使用したことから側鎖が6個ある多分岐ポリ乳酸が得られた。
<ポリ乳酸へのアクリル基の導入>
上記多分岐ポリ乳酸10.00 g をクロロホルムに溶解させ、メタクリロイルクロリド0.43gを加えて室温で攪拌した。トリエチルアミン0.43gを滴下し、室温で30分間攪拌、50℃で20時間還流した。反応溶液をエタノール中に滴下し、吸引ろ過した後、再度クロロホルムに溶解、メタノール中に滴下して精製した。吸引ろ過後40℃で8時間真空乾燥させ白色の固体を得た
ポリ乳酸末端のアクリル化を確認するために1H NMRスペクトルを測定した。測定結果をからPLLAの末端はすべてアクリル化されたことが確認された。
<シリカ粒子の修飾>
実施例1と同様にMPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液(シリカ固形分20wt%)を得た。
<目的の樹脂組成物の作成>
上記末端アクリル化多分岐ポリ乳酸2.00gとMPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液8.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E4.40g、光ラジカル重合開始剤Irgcure184(モノマーに対して3wt%)0.13g、THF32.0gを加え攪拌し、目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。
<UV硬化>
実施例1と同様にアクリル板に塗布しハードコート膜を得た。
<鉛筆硬度試験>
実施例1と同様にハードコート層表面についてJIS−K−5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3)
<直鎖ポリ乳酸の合成>
実施例1と同様に直鎖のポリ乳酸を合成した。
<ポリ乳酸へのアクリル基の導入>
上記ポリ乳酸2.00g をクロロホルムに溶解させ、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート1.24gを加えて室温で攪拌した。触媒としてジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ1滴加さらに一晩攪拌した。反応溶液をエタノール中に滴下し、吸引ろ過した後、再度クロロホルムに溶解、メタノール中に滴下して精製した。吸引ろ過後、80℃で8時間真空乾燥させ白色の固体を得た
ポリ乳酸末端のアクリル化を確認するために1H NMRスペクトルを測定した。測定結果をからPLLAの末端はすべてアクリル化されたことが確認された。
<シリカ粒子の修飾>
実施例1と同様にシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液(SiO2 20wt%)を得た。
【0032】
得られたシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液450gに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下MOI)11.73g、触媒としてジラウリル酸ジ−n−ブチルスズを加え室温で一晩攪拌し、MOI50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を得た。なおシリカ粒子の表面の水酸基数を1.68mmol/gとして計算した。
<目的の樹脂組成物の作成>
上記のように作製した末端アクリル化ポリ乳酸2.00gとMOI50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液8.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E4.40g、光ラジカル重合開始剤Irgcure184(モノマーに対して3wt%)0.13g、THF32.0gを加え攪拌し、目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。
<UV硬化>
実施例1と同様にアクリル板に塗布しハードコート膜を得た。
<鉛筆硬度試験>
実施例1と同様にハードコート層表面についてJIS‐K‐5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1において光ラジカル重合開始剤Irgcure184の代わりに過酸化ベンゾイルを用いて目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。
得られたハードコート液を実施例1と同様にアクリル板にスピンコーターにて塗布し70℃で熱重合し硬化した。その後40℃で5時間真空乾燥させた。
<鉛筆硬度試験>
実施例1と同様にハードコート層表面についてJIS‐K‐5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)
末端アクリル化ポリ乳酸3.20g、多官能性アクリレートモノマーSR399E3.20gを用いた以外は実施例1と同様にハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例6)
末端アクリル化多分岐ポリ乳酸3.20g、多官能性アクリレートモノマーSR399E3.20gを用いた以外は実施例2と同様にハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同じ材料を用い、合成したポリ乳酸の末端をアクリル化しないこととシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液をそのまま使用したこと以外は実施例1と同様な条件でハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例2)
実施例2においてシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を配合せず、多官能性アクリレートモノマーSR399E6.00gを用いた以外は実施例2と同様な条件でハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例3)
末端アクリル化ポリ乳酸4.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E2.80gを用いた以外は実施例1と同様な条件でハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例4)
末端アクリル化多分岐ポリ乳酸4.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E2.40gを用いた以外は実施例2と同様にハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
<結果>
透過率に関しては実施例、比較例ともに良好であったが、鉛筆硬度においては実施例1乃至実施例6の結果に対して比較例1乃至比較例4の結果が悪く、実施例1乃至実施例6の樹脂組成物がより実用的であることが示された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機のハイブリッド型の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂の機械的特性、耐熱性等を向上させる目的で、樹脂中に無機微粒子を配合させた有機−無機のハイブリッド型の樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。また、近年では環境への低負荷化を目的とし、このような有機−無機のハイブリッド型の樹脂組成物においても、石油などの化石資源の使用を抑制し、ポリ乳酸等の植物材料を用いた有機−無機のハイブリッド型樹脂組成物が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−131702号公報
【特許文献2】特開2008−239715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の樹脂組成物は、ゾル−ゲル法を用いてポリ乳酸樹脂中に金属微粒子を均一に分散させることにより、耐熱性、成形性、力学強度を改善しようとするものであり、金属微粒子とポリ乳酸樹脂との化学的な結合がなく、十分な樹脂性能の向上が得られにくい。
【0005】
上記従来技術の問題点に鑑み、環境への低負荷化を考慮して植物材料であるポリ乳酸を用いながら、耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることのできる樹脂組成物を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 本発明の樹脂組成物は、(a)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、(b)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーと、(c)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部が修飾された金属酸化物微粒子と、(d)成分として重合開始剤と、を含むことを特徴とする。
(2) (1)の樹脂組成物において、前記(a)成分のポリ乳酸は直鎖あるいは多分岐構造であることを特徴とする。
(3) (2)の樹脂組成物において、前記(a)成分,(b)成分,(c)成分の重合可能な基はメタクリロイル基またはアクリロイル基であることを特徴とする。
(4) 熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部を修飾された前記(c)成分の金属酸化物微粒子について、その表面の修飾率は1から100%である(1)乃至(3)に記載の樹脂組成物。
(5) (1)乃至(4)に何れか記載の樹脂組成物はハードコート用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物によれば、環境への低負荷化を考慮して植物材料であるポリ乳酸を用いながら、耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、熱または紫外線により重合可能な官能基を持つモノマー、オリゴマー、ポリマーと、熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部を修飾された金属酸化物微粒子と、熱または紫外線によりポリ乳酸と金属酸化物粒子、モノマー、オリゴマー、ポリマーを重合させるための重合開始剤を含むことを特徴とする。本発明の樹脂組成物は、紫外線または加熱によって重合反応することによって、重合可能な基を有するポリ乳酸と、重合可能な基で修飾された金属酸化物微粒子とが化学的に結合し、好適な耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性が得られるものである。
【0010】
本実施形態にて用いることのできるポリ乳酸の原料モノマーとしては、L−乳酸、D−乳が挙げられる。本実施形態で使用されるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されないがL−乳酸、またはD−乳酸を直接脱水縮合して得たり、ラクチド(乳酸の環状二量体)を用いて開環重合させる方法等、既知の高分子化方法を用いて製造することができる。
【0011】
またポリ乳酸は、適当な開始剤(通常は多価アルコール)を用いることで多分岐構造を得られることが知られている。多分岐構造のポリ乳酸は側鎖を多く持つことから末端に多くの反応性基を導入することが可能になる。多分岐構造をもたらす多価アルコールとしてはジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンなどを挙げることができる
また、重合可能な基を有するポリ乳酸を得るために使用される材料は、一旦にアクリロイル基、またはメタクリロイル基(以下、単に(メタ)アクリロイル基と略す)を有し、酸ハライド類、イソシアネート類、エポキシ類などのポリ乳酸の他端が持つ水酸基と共有結合出来る基を持つ重合性モノマーを使用することができる。(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ハライド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル、等を挙げることができる。なお、本実施形態にて得られる樹脂組成物を熱または紫外線にて重合された重合物の全重量に対してポリ乳酸が25wt%以上40wt%以下となることが好ましい。
【0012】
なお、本発明は樹脂組成物の一成分として、生分解性高分子材料である上述したポリ乳酸を用いるものであり、このような樹脂組成物はバイオマスプラスチックとして考えることができる。「日本バイオプラスチック協会」の定義するところによれば、バイオマスプラスチックとは「原料として再生可能な有機資源由来の物質(バイオマス)を含み、化学的又は生物学的に合成することにより得られる分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう(化学的に未修飾な非熱可塑性天然有機高分子材料は除く)」と定めている。バイオマスプラスチックは原料にバイオマスを利用することに特長があり、原料の種類等は多岐に渡り得る。分類としては、バイオマスを全面的に使うか部分的に使うかによって分けられ、ポリ乳酸の共重合物は部分的バイオマス原料プラスチックに分類される。「バイオマスプラスチック度」として原材料、製品に含まれるバイオマスプラスチック組成中のバイオマス由来成分の全体量に対する割合(重量%)が提唱されている。本発明では、原料にバイオマス由来成分になるポリ乳酸を使用し、熱または紫外線にて重合された重合物の全重量の25wt%以上40wt%以下がポリ乳酸になる樹脂組成物によるものである。
【0013】
また、本実施形態に用いる金属酸化物微粒子としては、平均粒径がサブミクロンオーダのものが好適に使用可能である。好ましくは100nm以下であり、物理的な大きさを有していれば、その下限は特に限定されない。入手可能な金属酸化物微粒子の粒径によって定められることとなる。使用可能な金属酸化物微粒子としては、表面修飾可能な金属酸化物ゾルを挙げることができる。例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、ITO(スズドープ酸化インジウム)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb2O3、Sb2O5等)、及びこれらの複合微粒子等を挙げることができる。なお、このような金属酸化物微粒子は表面に水酸基を有するものである。
【0014】
金属酸化物微粒子を重合可能な基で修飾するための重合性モノマーとしては、一端に(メタ)アクリロイル基を持ち、他端に金属酸化物微粒子が持つ水酸基と結合可能な反応基を有する重合性モノマーを用いることができる。
【0015】
重合性の修飾基はシラノール結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合などにより無機粒子(金属酸化物微粒子)表面と共有結合しているとすることができる。このような重合性官能基修飾無機粒子は、無機粒子と重合性の官能基を有する上記化合物とを反応させることによって、容易に得ることができる。
【0016】
このような重合性モノマーとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基と(メタ)アクリル基を同一分子内に併せ持つシランカップリング材、他にも、(メタ)アクリル酸ハライド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等、金属酸化物微粒子の表面にある水酸基と反応できる官能基を持った化合物を挙げることができる。
【0017】
本発明ではシリカ粒子の表面の水酸基数を1.68mmol/gとして、シリカ粒子の表面の水酸基が何%、修飾剤(水酸基と結合可能な反応基を有する重合性モノマー重合性モノマー)と反応したかを計算し、表面修飾率とした。本発明では表面修飾率が1〜100%、より好ましくは40〜80%の範囲が好ましい。
【0018】
本発明に使用可能な熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−アクリロイロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブテン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、ウレタンアクリレート類等を挙げることができ、3官能以上の(メタ)(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等の分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、又はウレタンアクリレート類等を挙げることができ、ここに挙げるものに限るものではない。またこれらを1種類または複数組み合せて使用することができる。
【0019】
アクリル系モノマーを高分子化させるための熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(BPO)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-2-メチルシクロヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤や2,2'−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤等の一般的な重合開始剤を使用することができる。
【0020】
また、得られたハードコート用の樹脂組成物を紫外線にて硬化させるための光重合開始剤の例として、トリス(クロロメチル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどのトリアジン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾイン系化合物、ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシジクロロラセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノンなどのアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、アシルフォスヒンオキサイド等が挙げられ、これらを1種類または2種類以上を併用して用いてもよい。
【0021】
添加量は(メタ)アクリレートモノマーに対して10重量%以下で、好ましくは0.5〜5重量%で使用する。
【0022】
また、重合可能な基を有するポリ乳酸とを重合可能な基で修飾された金属酸化物微粒子,または表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子とを重合させる際に用いる有機溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、これらを混合して使用することも可能である。
【0023】
その他の添加剤として、さらにハードコート剤を希釈するための希釈剤(有機溶剤や単官能又は2官能の(メタ)アクリレート及びそれらの混合物)、塗膜の塗れ性向上のための界面活性剤、泡消しのための消泡剤、紫外線が及ぼす塗膜への影響を削減し耐候性向上のための紫外線吸収剤や光安定剤、塗膜の表面滑り性又は撥水性を付与するためのフッ素系のアクリル樹脂の添加を行い、更なる機能性の付与や塗料の調整を行うことも可能である。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物は、製造プロセスも簡単であり、安価に製造することが可能である。この樹脂組成物を光学部材の表面にスピンコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、キャップコート、ナイフコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート法等を用いて所定の厚みだけ塗布した後硬化させることにより、表面硬度や耐擦傷性を向上させる効果を有するコーティングを行えることとなる。上記塗工方法にて基材に塗布、溶剤乾燥、UV照射或いは加熱により成膜することとなるが、このときの膜厚は1〜50μm、好ましくは1〜20μmとなるようにする。UV照射は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、LEDランプ、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を照射し硬化させて成膜する。熱重合させる場合には、赤外光を照射するランプ等を用いて塗布面を加熱すればよい。
【0025】
このようにして得られたハードコート膜はポリ乳酸、金属酸化物粒子を含みながらも透過率の低下がみられず90%以上の高い透過率を維持でき、透明な基材(アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PETフィルム、TACシートなど)へのもその透明性を損ねることなく表面にハードコートを施すことができる。
【0026】
また、本実施形態の樹脂組成物を射出成型機や押出成型機等を用いて機械的物性が優れたフィルム状、シート状の樹脂成型物を得ることができる。特にこのような樹脂成形物は光学用途に好適に用いることができる。
【0027】
次に、本発明に関する実施例及び比較例を挙げ、説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<直鎖ポリ乳酸の合成>
L-ラクチド4.00gと1,12−ドデカンジオール0.16gを乾燥させた試験管に入れ、70℃のオイルバス中でさらに2時間真空乾燥させた。トルエンで0.1Nにしたオクチル酸スズ225μlを加え、130℃のオイルバスで重合を開始した。1時間重合し、生成物を室温まで冷却させ無色透明の固体を得た。これをクロロホルムに溶解しメタノール中に滴下させ、ポリマーを精製した。吸引ろ過後、80℃で一晩真空乾燥させポリマー3.28gを得た。得られたポリ乳酸の分子量(Mw)はプロトン核磁気共鳴(1H NMR)から4,752 (g/mol)と計算された。
<ポリ乳酸へのアクリル基の導入>
上記ポリ乳酸 2.00 g をクロロホルムに溶解させ、メタクリロイルクロリド0.84gを加えて室温で攪拌した。トリエチルアミン0.85gを滴下し、室温で30分間攪拌、50℃で20時間還流した。反応溶液をエタノール中に滴下し、吸引ろ過した後、再度クロロホルムに溶解、メタノール中に滴下し精製した。吸引ろ過し後、80℃で8時間真空乾燥させ白色の固体を得た。
【0028】
ポリ乳酸末端のアクリル化を確認するために1H NMRスペクトルを測定した。測定結果をからポリ乳酸の末端はすべてアクリル化されたことが確認された。
<シリカ粒子の修飾>
シリカ粒子分散メチルエチルケトン溶液(日産化学工業株式会社製、MEK−ST、SiO2 30wt%、平均粒子径10~20nm)300gに同量の1,4‐ジオキサンを加え70℃に加温しながらエバポレーターで減圧し、MEKを留去した。全体の液量が半分になったところでさらに1,4‐ジオキサンを加え、再度減圧でMEKを留去した。最後に1,4‐ジオキサンを加えて20wt%に調製した。
【0029】
得られたシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液450gに3−メトキシアクリロイルプロピルトリメトキシシラン(以下MPSと記す)6.26gを加え一晩攪拌し、MPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を得た。なおシリカ粒子の表面の水酸基数を1.68mmol/gとして計算した。
<目的の樹脂組成物の作成>
上記のように作製した末端アクリル化ポリ乳酸を2.00gと、MPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を8.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E(サートマー・ジャパン株式会社製)を4.40g、光ラジカル重合開始剤Irgcure184(BASFジャパン株式会社製)(モノマーに対して3wt%)を0.13g、テトラヒドロフラン(THF)32.0gを加え攪拌し、目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。コート液の組成を表1に示す。
<UV硬化>
上記ハードコート液をスピンコーターで透明アクリル板に塗布し、40℃で3分間乾燥後、小型UVランプHandy UV Lamp SLUV−4(254nm、アズワン株式会社製)を用いて5分間UV照射し硬化を行った。硬化後40℃で5時間真空乾燥させた。
<鉛筆硬度試験>
ハードコート層表面についてJIS−K−5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例2)
<多分岐構造ポリ乳酸の合成>
L-ラクチド20.00g とジペンタエリスリトール0.34gを乾燥させた試験管に入れ、70℃のオイルバス中でさらに2時間真空乾燥させた。トルエンで0.1Nにしたオクチル酸スズ562.5μlを加え、130℃のオイルバスで重合を開始した。1時間重合し、生成物を室温まで冷却して、粘性の高い無色透明の液体を得た。これをクロロホルムに溶解しメタノール中に滴下させ、ポリマーを精製した。吸引ろ過後40℃で一晩真空乾燥させポリマー17.83gが得られた。
得られたポリ乳酸の分子量は1H NMRから14,429 (g/mol)と計算され、ジペンタエリスリトールを開始剤に使用したことから側鎖が6個ある多分岐ポリ乳酸が得られた。
<ポリ乳酸へのアクリル基の導入>
上記多分岐ポリ乳酸10.00 g をクロロホルムに溶解させ、メタクリロイルクロリド0.43gを加えて室温で攪拌した。トリエチルアミン0.43gを滴下し、室温で30分間攪拌、50℃で20時間還流した。反応溶液をエタノール中に滴下し、吸引ろ過した後、再度クロロホルムに溶解、メタノール中に滴下して精製した。吸引ろ過後40℃で8時間真空乾燥させ白色の固体を得た
ポリ乳酸末端のアクリル化を確認するために1H NMRスペクトルを測定した。測定結果をからPLLAの末端はすべてアクリル化されたことが確認された。
<シリカ粒子の修飾>
実施例1と同様にMPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液(シリカ固形分20wt%)を得た。
<目的の樹脂組成物の作成>
上記末端アクリル化多分岐ポリ乳酸2.00gとMPS50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液8.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E4.40g、光ラジカル重合開始剤Irgcure184(モノマーに対して3wt%)0.13g、THF32.0gを加え攪拌し、目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。
<UV硬化>
実施例1と同様にアクリル板に塗布しハードコート膜を得た。
<鉛筆硬度試験>
実施例1と同様にハードコート層表面についてJIS−K−5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3)
<直鎖ポリ乳酸の合成>
実施例1と同様に直鎖のポリ乳酸を合成した。
<ポリ乳酸へのアクリル基の導入>
上記ポリ乳酸2.00g をクロロホルムに溶解させ、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート1.24gを加えて室温で攪拌した。触媒としてジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ1滴加さらに一晩攪拌した。反応溶液をエタノール中に滴下し、吸引ろ過した後、再度クロロホルムに溶解、メタノール中に滴下して精製した。吸引ろ過後、80℃で8時間真空乾燥させ白色の固体を得た
ポリ乳酸末端のアクリル化を確認するために1H NMRスペクトルを測定した。測定結果をからPLLAの末端はすべてアクリル化されたことが確認された。
<シリカ粒子の修飾>
実施例1と同様にシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液(SiO2 20wt%)を得た。
【0032】
得られたシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液450gに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下MOI)11.73g、触媒としてジラウリル酸ジ−n−ブチルスズを加え室温で一晩攪拌し、MOI50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を得た。なおシリカ粒子の表面の水酸基数を1.68mmol/gとして計算した。
<目的の樹脂組成物の作成>
上記のように作製した末端アクリル化ポリ乳酸2.00gとMOI50%修飾シリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液8.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E4.40g、光ラジカル重合開始剤Irgcure184(モノマーに対して3wt%)0.13g、THF32.0gを加え攪拌し、目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。
<UV硬化>
実施例1と同様にアクリル板に塗布しハードコート膜を得た。
<鉛筆硬度試験>
実施例1と同様にハードコート層表面についてJIS‐K‐5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1において光ラジカル重合開始剤Irgcure184の代わりに過酸化ベンゾイルを用いて目的のハードコート用樹脂組成物(ハードコート液)を得た。
得られたハードコート液を実施例1と同様にアクリル板にスピンコーターにて塗布し70℃で熱重合し硬化した。その後40℃で5時間真空乾燥させた。
<鉛筆硬度試験>
実施例1と同様にハードコート層表面についてJIS‐K‐5600に従い鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
<透過率>
ハードコートをしたアクリル板についてJIS K7361−1に従い透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)
末端アクリル化ポリ乳酸3.20g、多官能性アクリレートモノマーSR399E3.20gを用いた以外は実施例1と同様にハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例6)
末端アクリル化多分岐ポリ乳酸3.20g、多官能性アクリレートモノマーSR399E3.20gを用いた以外は実施例2と同様にハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同じ材料を用い、合成したポリ乳酸の末端をアクリル化しないこととシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液をそのまま使用したこと以外は実施例1と同様な条件でハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例2)
実施例2においてシリカ粒子分散1,4‐ジオキサン溶液を配合せず、多官能性アクリレートモノマーSR399E6.00gを用いた以外は実施例2と同様な条件でハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例3)
末端アクリル化ポリ乳酸4.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E2.80gを用いた以外は実施例1と同様な条件でハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例4)
末端アクリル化多分岐ポリ乳酸4.00g、多官能性アクリレートモノマーSR399E2.40gを用いた以外は実施例2と同様にハードコートを作製し、アクリル板に塗布、硬化させた後、鉛筆硬度、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
<結果>
透過率に関しては実施例、比較例ともに良好であったが、鉛筆硬度においては実施例1乃至実施例6の結果に対して比較例1乃至比較例4の結果が悪く、実施例1乃至実施例6の樹脂組成物がより実用的であることが示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、
(b)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーと、
(c)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部が修飾された金属酸化物微粒子と、
(d)成分として重合開始剤と、
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1の樹脂組成物において、前記(a)成分のポリ乳酸は直鎖あるいは多分岐構造であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2の樹脂組成物において、前記(a)成分,(b)成分,(c)成分の重合可能な基はメタクリロイル基またはアクリロイル基であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部を修飾された前記(c)成分の金属酸化物微粒子について、その表面の修飾率は1から100%である請求項1乃至請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に何れか記載の樹脂組成物はハードコート用であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項1】
(a)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を有するポリ乳酸と、
(b)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーと、
(c)成分として熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部が修飾された金属酸化物微粒子と、
(d)成分として重合開始剤と、
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1の樹脂組成物において、前記(a)成分のポリ乳酸は直鎖あるいは多分岐構造であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2の樹脂組成物において、前記(a)成分,(b)成分,(c)成分の重合可能な基はメタクリロイル基またはアクリロイル基であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
熱または紫外線にて重合可能な官能基を持つよう表面の一部を修飾された前記(c)成分の金属酸化物微粒子について、その表面の修飾率は1から100%である請求項1乃至請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に何れか記載の樹脂組成物はハードコート用であることを特徴とする樹脂組成物。
【公開番号】特開2012−67157(P2012−67157A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211688(P2010−211688)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]