説明

樹脂組成物

【課題】25℃における粘度が5000mPa・s以上であるにもかかわらず、泡が生じ難く、かつ印刷や塗工時のハジキが生じ難い、樹脂組成物を提供する。
【解決手段】重合性炭化水素単量体及び重合性炭化水素重合体の少なくとも一方からなる重合性炭化水素化合物と、片末端もしくは両末端に親水性官能基を有するシリコーンオイルとを含有し、E型粘度計で測定した25℃及び10rpmにおける粘度が5000mPa・s以上である、樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばソルダーレジストなどに用いられる樹脂組成物に関し、特に、消泡性に優れ、かつ基板などへの印刷や塗工時にいわゆるハジキが生じ難い高粘度の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板を高温の半田から保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。この種のソルダーレジスト膜を形成する材料として、感光性組成物が用いられている。感光性組成物を基板上に塗布した後、選択的に光を照射し、硬化部分以外を除去することにより、パターニングする。しかる後、パターニングされた材料をさらに加熱により硬化させ、ソルダーレジスト膜を得る。
【0003】
上記のような感光性組成物の一例が、下記の特許文献1,2に開示されている。特許文献1,2に開示されているソルダーレジスト膜用の感光性組成物は、アクリル系樹脂と、シリカなどの無機フィラーと、ジメチル変性シリコーンオイルとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3190251号
【特許文献2】特許第3290295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような感光性組成物では、基板等に印刷や塗工するに際し、所望の形状に正確に印刷する必要がある。そのため、印刷や塗工後に、付与された感光性組成物が濡れ広がらないことが必要である。従って、上記感光性組成物はある程度の粘度を有することが望ましい。しかしながら、感光性組成物の粘度を高めた場合、泡が生じやすくなる。そこで、特許文献1に記載の感光性組成物では、消泡剤として上記ジメチル変性シリコーンオイルなどが添加されている。
【0006】
しかしながら、ジメチル変性シリコーンオイルなどの消泡剤を含有させた場合、基板等に印刷や塗工した際に、基板表面から端部がはじかれるという問題があった。そのため、所望の形状にかつ高精度に感光性組成物を印刷したり塗工したりすることができなかった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、粘度が高く、所望の形状に印刷したり、塗工したりすることが容易であり、泡が生じ難く、かつ基板などの被塗工物表面に対するハジキが生じ難い、樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂組成物は、重合性炭化水素単量体及び重合性炭化水素重合体の少なくとも一方からなる重合性炭化水素化合物と、片末端もしくは両末端に親水性官能基を有するシリコーンオイルとを含有し、E型粘度計で測定した25℃及び10rpmにおける粘度が5000mPa・s以上である。
【0009】
本発明に係る樹脂組成物では、好ましくは、前記シリコーンオイルに含有されている前記親水性官能基が、アルキレンオキシド基、環状エーテル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、脂肪酸エステル基、脂肪酸アミド基及びフェノール基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基である。この場合には、基板に印刷または塗工した後のハジキをより確実に抑制することができる。より好ましくは、上記親水性官能基はカルビノール基である。
【0010】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記樹脂組成物100重量部中に、前記親水性官能基としての前記カルビノール基を有するシリコーンオイルが0.1〜3重量部の割合で含有されている。この場合には、上記ハジキをより一層確実に抑制し、かつ消泡性も効果的に高められる。
【0011】
本発明に係る樹脂組成物は、無機フィラーを含有していてもよい。それによって、樹脂組成物の粘度を高めることができる。好ましくは、無機フィラーとして、疎水性ヒュームドシリカが好適に用いられる。疎水性ヒュームドシリカを用いた場合には、少量で粘度を高めることができる。
【0012】
本発明に係る樹脂組成物において、上記重合性炭化水素化合物としては、好ましくは、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマー及び1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素ポリマーのうち少なくとも一方の重合性炭化水素化合物が用いられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る樹脂組成物は、上記重合性炭化水素化合物と、片末端もしくは両末端に親水性官能基を有するシリコーンオイルとを含有し、E型粘度計で測定した25℃及び10rpmにおける粘度が5000mPa・s以上とされているため、すなわち充分高い粘度を有するため、基板上に印刷したり、塗工したりした場合に、所望の形状に正確に印刷または塗工することができる。しかも、上記シリコーンオイルを含有しているため、泡が生じ難い。さらに、上記親水性官能基を有するシリコーンオイルを含有しているため、基板等に印刷したり塗工した場合のハジキも生じ難い。
【0014】
よって、本発明によれば、例えばソルダーレジスト膜を本発明の樹脂組成物を用いて形成する場合、様々なパターンのソルダーレジスト膜を高精度に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜を備えるLEDデバイスを模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0018】
〔重合性炭化水素化合物(A)〕
本発明に係る樹脂組成物は、上記特定の重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方からなる重合性炭化水素化合物(A)を含む。すなわち、本発明に係る樹脂組成物は、上記化合物(A)として、重合性炭化水素モノマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素ポリマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの双方を含んでいてもよい。また、上記重合性炭化水素モノマーとしては、1種の重合性炭化水素モノマーのみが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素モノマーが用いられてもよい。同様に、上記重合性炭化水素ポリマーとしても、1種の重合性炭化水素ポリマーなどが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素ポリマーが用いられてもよい。
【0019】
上記重合性炭化水素モノマーとしては、重合性不飽和基を有するモノマー、または重合性環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。上記重合性炭化水素ポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはオレフィン樹脂などが挙げられる。なお、本明細書における「樹脂」なる用語は、固形の樹脂だけでなく、液状樹脂及びオリゴマーをも含む。
【0020】
重合性不飽和基を有するモノマーは、(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリル基を有する化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレートや、多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレートや、フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートや、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
多価アルコールとしては、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。フェノールの(メタ)アクリレートとしては、フェノキシ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0023】
上記重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含むことが好ましく、より好ましくは、重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーである。重合性不飽和基を有するモノマーが、2個以上の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含む場合には、最終的に得られたレジスト膜の架橋密度を高めることができ、従って、高温に晒されたとしてもレジスト膜が変色し難い。
【0024】
上記重合性炭化水素ポリマーは、下記の(i)〜(iv)で挙げられるカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0025】
(i)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合とを有する化合物を共重合させた樹脂
【0026】
(ii)カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基とを有する化合物(b2)を反応させた樹脂
【0027】
(iii)1分子中に1個のエポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、反応により生成した第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた樹脂
【0028】
(iv)水酸基を有するポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、反応により生成したカルボン酸基に、1分子中に1個のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる、水酸基とカルボキシル基とを有する樹脂
【0029】
なお、レジスト膜の高温下における黄変性をより一層高めることができるので、上記重合性炭化水素ポリマーは、上記(ii)カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0030】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(b11)と、1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)とを共重合させることにより得られる。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルやグリコール変性(メタ)アクリレートが挙げられる。1種の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が用いられてもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が併用されてもよい。
【0032】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリコール変性(メタ)アクリレートとして、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)としては、(メタ)アクリル酸、不飽和基とカルボン酸との間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性などによりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。1種の上記化合物(b12)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b12)が用いられてもよい。
【0034】
1分子中にオキシラン環及びエチレン性不飽和基を有する化合物(b2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレートが挙げられる。なかでも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。1種の化合物(b2)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b2)が用いられてもよい。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂(i)〜(iv)の酸価は50〜150mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。酸価が50〜150mgKOH/gの範囲内にあると、現像の際の解像度を高めることができる。
【0036】
なお、化合物(i)は、1個以上の不飽和二重結合基および2個以上のカルボキシル基または酸無水物基を有する重合性炭化水素ポリマーを含有し、酸価が50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。現像の際の解像度を高めることができる。
【0037】
なお、ここでいう「酸価」は、具体的には、化合物を溶剤(トルエン/2−プロパノール/水(体積比で5/5/0.05))に溶かして水酸化カリウムを用いて中和滴定することにより算出できる。中和滴定法としては、P−ナフトールベンゼイン指示薬法や電位差滴定法が挙げられる。
【0038】
また、上記重合性炭化水素化合物として、さらにエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。1種のエポキシ樹脂が用いられてもよく、2種以上のエポキシ樹脂が組み合わせて用いられてもよい。
【0039】
〔シリコーンオイル〕
本発明に係る感光性樹脂組成物は、片末端もしくは両末端に親水性官能基を有するシリコーンオイルを含有している。該シリコーンオイルを含有しているため、消泡性が高められている。加えて、上記シリコーンオイルは、親水性官能基を片末端または両末端に有するため、上記重合性炭化水素化合物との相溶性に優れており、基板等に樹脂組成物を塗工した際のハジキを確実に抑制することができる。
【0040】
上記親水性官能基としては、特に限定されないが、アルキレンオキシド基、環状エーテル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、脂肪酸エステル基、脂肪酸アミド基及びフェノール基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を挙げることができる。上記親水性官能基の中でも、カルビノール基がより好ましく、その場合には、上記ハジキをより確実に抑制することができる。
【0041】
上記カルビノール含有シリコーンオイルの配合割合については、樹脂組成物100重量部中、0.1〜3重量部の割合であることが望ましい。この範囲内であれば、消泡性を高め、かつ上記ハジキをより一層確実に抑制することができる。
【0042】
上記親水性官能基を片末端または両末端に有するシリコーンオイルの具体的な例としては、信越化学社製、品番:KF−8010(両末端アミノ変性シリコーンオイル)、KF−6001 ( 両末端カルビノール変性シリコーンオイル)、X−22−163(両末端エポキシ変性シリコーンオイル)、X−22−4952(プロピレングリコール変性シリコーンオイル)、X−22−170BX(片末端カルビノール変性シリコーンオイル)などが挙げられる。
【0043】
〔無機フィラー〕
本発明に係る樹脂組成物では、粘度を調整するために、無機フィラーが含有されていてもよい。このような無機フィラーとしては、特に限定されず、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド粉末、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、タルク、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、雲母粉、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、窒化チタン、フッ化セリウム又は酸化セリウムなどが挙げられる。好ましくは、上記無機フィラーとして、疎水性ヒュームドシリカが用いられる。疎水性ヒュームドシリカを含有させた場合、ハジキ性をより一層高めることができる。
【0044】
上記無機フィラーの含有割合については、上記重合性炭化水素化合物100重量部に対し、1〜100重量部の割合であることが好ましく、この範囲内であれば、消泡性を損なうことなく、樹脂組成物の粘度を効果的に高めることができる。
【0045】
また、本発明に係る樹脂組成物は、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0046】
〔粘度〕
本発明に係る樹脂組成物は、E型粘度計で測定した25℃及び10rpmにおける粘度が5000mPa・s以上であり、このような高粘度であるため、基板などに印刷したり、塗工した際に、濡れ広がりが生じ難い。従って、基板上に、所望の形状となるように、樹脂組成物を印刷または塗工することができる。
【0047】
本発明の特徴は、このような高粘度の樹脂組成物であるにもかかわらず、泡が生じ難く、かつ上記ハジキが抑制されることにある。前述したように、シリコーンオイルなどの消泡剤を添加した場合、泡は生じ難くなるものの、高粘度の樹脂組成物ではハジキが生じやすくなるという欠点がある。これに対して、本発明では、上記のような高粘度であり、かつシリコーンオイルを含有させることにより消泡性を高めているだけでなく、上記親水性官能基を有する特定のシリコーンオイルを用いることにより上記ハジキを抑制したことに特徴を有する。
【0048】
従って、上記粘度5000mPa・s以上である粘度範囲は、本発明の樹脂組成物の前提となる粘度範囲を規定したものであることを指摘しておく。
【0049】
〔製造方法及び用途〕
本発明に係る樹脂組成物は前述した各成分を適宜の方法で混練することにより得ることができる。この場合、各成分に加え、溶剤をさらに添加してもよい。このような溶剤としては、光重合性モノマーなどの反応性希釈剤又は公知慣用の溶剤を使用できる。該溶剤としては、有機溶剤及び水等が挙げられる。
【0050】
上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。上記有機溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
溶剤の含有量は特に限定されない。樹脂組成物の塗工性を考慮して、溶剤は適宜の含有量で用いられる。
【0052】
本発明に係る樹脂組成物は、基板等に印刷または塗工した後、光を照射することにより硬化させることができる。従って、本発明に係る樹脂組成物は感光性組成物として好適に用いられる。樹脂組成物を硬化させるために用いられる光源としては、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源としては、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ又はエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、樹脂組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は樹脂組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3,000mJ/cmの範囲内である。
【0053】
(LEDデバイス)
本発明に係る樹脂組成物は、LEDデバイスのレジスト膜を形成するのに好適に用いられ、ソルダーレジスト膜を形成するのにより好適に用いられる。
【0054】
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を備えるLEDデバイスを模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0055】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2aに、樹脂組成物により形成されたレジスト膜3が積層されている。レジスト膜3は、パターン膜である。よって、基板2の上面2aの一部の領域では、レジスト膜3は形成されていない。レジスト膜3が形成されていない部分の基板2の上面2aには、電極4a,4bが設けられている。基板2は、プリント配線板であることが好ましい。
【0056】
レジスト膜3の上面3aに、LEDチップ7が積層されている。レジスト膜3を介して、基板2上にLEDチップ7が積層されている。LEDチップ7の下面7aの外周縁には、端子8a,8bが設けられている。はんだ9a,9bにより、端子8a,8bが電極4a,4bと電気的に接続されている。この電気的な接続により、LEDチップ7に電力を供給できる。
【0057】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0058】
(合成例1)
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒としてジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量210、軟化点80℃のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「エポトートYDCN−704」、東都化成社製)210重量部と、アクリル酸50重量部と、酢酸18重量部とを反応させて、エポキシアクリレートを得た。得られたエポキシアクリレート278重量部と、テトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシアクリレートの水酸基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、重量平均分子量9000、固形分酸価が52mgKOH/gの1個以上の重合性不飽和基及び2個以上のカルボキシル基を含有する重合性炭化水素重合体を65重量%含む溶液を得た。
【0059】
(合成例2)
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶剤としてエチルカルビトールアセテートと、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルとを入れ、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートとを30:70のモル比で混合したモノマーを2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、温度を120℃に上げた。その後、冷却した。得られた樹脂の全てのモノマー単位の総量のモル量に対するモル比が10となる量のグリシジルアクリレートを加え、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い100℃で30時間加熱して、グリシジルアクリレートとカルボキシル基とを付加反応させた。冷却後、フラスコから取り出して、重量平均分子量21000、固形分酸価60mgKOH/gの1個以上の重合性不飽和基及び2個以上のカルボキシル基を含有する重合性炭化水素重合体を50重量%含む溶液を得た。
【0060】
(実施例1)
合成例1で用意した重合性炭化水素重合体100重量部(合成例1で得た溶液としては154重量部)と、下記の表1に示す両末端アミノ変性シリコーンオイル(信越化学社製、品番:KF−8010)1.0重量部とを3本ロールにより混合し、混合物を得た。
【0061】
(実施例2〜実施例17及び比較例1,2)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表2または表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
(評価)
(1)消泡性
実施例または比較例で得られた液状の樹脂組成物溶液を50回手動攪拌した。直後に、表面に銅箔が張り付けられている、100×100mmのFR−4基板の銅箔が張り付けられている面に、スクリーン印刷により塗布した。しかる後、室温で1分間放置した後、印刷された樹脂組成物層上に、直径0.5mm以上の泡が発生しているか否かを目視により調査した。発生した泡の個数に応じて、下記の要領で評価した。結果を下記の表2及び表3に示す。
【0066】
○○・・・泡が確認されない
○・・・泡が1〜10個確認できる
△・・・泡が11〜30個確認できる
×・・・泡が31個以上確認できる
【0067】
(2)ハジキ性
上記消泡性評価において用いた銅箔付FR−4基板に、離型フィルムとしてのPETフィルムを貼り付け、該PETフィルム上に、50回手動攪拌された直後の液状樹脂組成物をスクリーン印刷により印刷した。印刷後、室温で1時間放置し、樹脂組成物のPETフィルム表面に対するハジキの状態を目視により確認した。すなわち、印刷領域の端縁から、外側に広がっている場合、あるいは端縁から外側に液状樹脂組成物の液滴が分離している場合、ハジキが生じているものとみなした。このハジキの状態について、上記印刷領域の端縁から外側に広がっている液状樹脂組成物の最外側端縁までの距離、または上記印刷領域の端縁から外側に位置している樹脂組成物液滴までの距離をハジキ距離とした。ハジキ距離を、以下の3段階で評価した。結果を下記の表2及び表3に示す。
【0068】
○○・・・ハジキ距離が10mm未満
○・・・ハジキ距離が10mm以上20mm未満
×・・・ハジキ距離が20mm以上
【0069】
また、実施例1〜17及び比較例1,2で用意した樹脂組成物の粘度を、E型粘度計で25℃及び10rpmの条件で測定した。結果を下記の表2及び表3に併せて示す。
【0070】
表2及び表3から明らかなように、比較例1では、シリコーンオイルが含有されていないため、多数の泡が印刷領域中に認められた。また、比較例2では、ポリジメチルシリコーンオイル(信越化学社製、品番:KF−96)、すなわち疎水性官能基を有するシリコーンオイルを用いたため、ハジキ距離が20mm以上と大きかった。
【0071】
これに対して、実施例1〜17では、本発明に従った、片末端または両末端に親水性官能基を有するシリコーンオイルを用いたため、粘度が5000mPa・s以上と高いにもかかわらず、消泡性に優れ、かつ印刷後のハジキも生じ難いことがわかる。特に、実施例12に比べ、実施例2,6,10では、シリコーンオイル含有割合が0.1重量部以上であるため、消泡性がより一層高められている。
【0072】
また、実施例13に比べ、実施例2,6,7,8,9,10,11,12では、シリコーンオイルの含有割合が3.0重量部以下であるため、上記ハジキがより一層生じ難い。
【0073】
さらに、疎水性ヒュームドシリカを配合している実施例6によれば、実施例2に比べ、ハジキ性をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…レジスト膜
3a…上面
4a,4b…電極
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性炭化水素単量体及び重合性炭化水素重合体の少なくとも一方からなる重合性炭化水素化合物と、片末端もしくは両末端に親水性官能基を有するシリコーンオイルとを含有し、E型粘度計で測定した25℃及び10rpmにおける粘度が5000mPa・s以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリコーンオイルに含有されている前記親水性官能基が、アルキレンオキシド基、環状エーテル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、脂肪酸エステル基、脂肪酸アミド基及びフェノール基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記親水性官能基がカルビノール基である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物100重量部中に、前記親水性官能基としての前記カルビノール基を有するシリコーンオイルが0.1〜3重量部の割合で含有されている、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
無機フィラーをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機フィラーが疎水性ヒュームドシリカである、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性炭化水素化合物が、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマー及び1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素ポリマーのうち少なくとも一方である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記重合性炭化水素化合物として、エポキシ樹脂をさらに含む、請求項7に記載の樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67269(P2012−67269A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215748(P2010−215748)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】