Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
樹脂被覆アルミニウム板の製造方法
説明

樹脂被覆アルミニウム板の製造方法

【課題】ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる熱硬化性粉体塗料を短時間で焼付硬化させ、塗装外観、耐溶剤性及び密着性が良好な樹脂被覆アルミニウム板の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム板の少なくとも一方の表面に、平均粒径20μm以上40μm以下のポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる熱硬化性粉体塗料を静電塗装し、これを0.8μm以上1.5μm以下の波長の近赤外線で、三段位階に分けて焼付乾燥させることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム板の上に静電塗装したポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる熱硬化性粉体塗料を、近赤外線で焼付乾燥する樹脂被覆アルミニウム板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の表面に意匠性や機能性を付与する処理方法の一つとして、塗料を塗装する方法がある。家電や鉄鋼構造物等の用途において、環境保護や省資源の観点から粉体塗料を利用する場合が増えてきている。粉体塗料は熱可塑性と熱硬化性に分類されるが、これらの用途では、熱硬化性粉体塗料を用いる例が多い。熱硬化性粉体塗料を金属材料の上に静電塗装した後に、焼付硬化するものである。市販の熱硬化性粉体塗料の焼付時間は10〜20分が標準であり、塗装材の生産性を向上させる為には焼付時間を短くすることが重要である。
【0003】
焼付装置としては、熱風炉、遠赤外線炉、近赤外線炉が知られている。熱風炉による焼付では、金属材料の板厚にもよるが通常は対流伝熱方式によって加熱するため、焼付時間に5〜20分を要する。遠赤外線炉による焼付は、輻射体を加熱して発生する遠赤外線を塗膜に吸収発熱させる方式であり3〜5分を要する。これらに対し、特許文献1や特許文献2に開示される近赤外線炉による焼付では、粉体塗料を塗布した金属板を10〜60秒間又は1〜30秒間で焼付けることが可能である。ここで用いる近赤外線の波長は、赤外線の中でも短波長側の0.72〜1.5μm又は0.75〜1.2μmであり、高エネルギーを有する電磁波である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−16571号公報
【特許文献2】特表2002−503747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2には、一定の出力で近赤外線を粉体塗料に一定時間照射する方法が開示されている。近赤外線を粉体塗料に照射すると、粉体塗料自体の温度が急激に上昇する為、塗料が未だ十分に流動しないうちに溶融と同時に硬化反応が進行する。そのため、短時間の焼付は可能であるが、塗装外観が劣るという問題が残った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は請求項1において、アルミニウム板の少なくとも一方の表面に熱硬化性粉体塗料を静電塗装する工程と、静電塗装した熱硬化性粉体塗料に近赤外線を照射することによって焼付乾燥する工程とを含み、
前記熱硬化性粉体塗料が、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなり20μm以上40μm以下の平均粒径を有し、
前記焼付乾燥工程が、塗装される表面とは反対側の表面から近赤外線を時間t1照射し、続いて時間t2時間照射しないことにより、塗装表面の到達温度T1を60℃以上70℃以下とする第一段階と、近赤外線を塗装面に時間t3照射することにより、塗装表面の到達温度T2を90℃以上100℃以下とする第二段階と、近赤外線を塗装面に時間t4照射することにより、塗装表面の到達温度T3を110℃以上120℃以下とする第三段階とを含み、
総焼付時間tを7秒以上60秒以下とし、t1が0.27t以上0.29t以下であり、t2が0.27t以上0.29t以下であり、t3が0.27t以上0.29t以下であり、t4が0.14t以上0.18t以下であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法とした。
本発明は請求項2において、静電塗装する工程の前に、前記アルミニウム板の少なくとも一方の表面を脱脂処理する工程と、脱脂処理した表面を化成処理する工程を更に含むものとした。本発明は請求項3において、焼付乾燥工程後における塗料の塗膜厚を40μm以上90μm以下とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、近赤外線を特定の照射条件で、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる熱硬化性粉体塗料を静電塗装したアルミニウム板に照射し、塗装表面の温度を制御して塗料を段階的に昇温させる。これにより、小径の粉体が流動して大径の粉体間の隙間を埋め、次いで大径の粉体が流動して樹脂皮膜表面が平滑となり塗膜内部構造も均一となる。このように、焼付硬化反応が同時に均一に完全に進行するので、塗装外観が良好となり、耐溶剤性や密着性も良好となる。近赤外線を用いる場合は熱風や遠赤外線と比較して、短時間で焼き付けることが出来、生産性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(A)被塗物
本発明に用いられる被塗物はアルミニウム板であり、これを脱脂後、化成処理したものが好適に用いられる。
【0009】
(A−1)アルミニウム板
本発明に用いられるアルミニウムは、圧延用合金であれば特に制限されるものではないが、非熱処理型合金のうち、特に1000系アルミニウム、3000系アルミニウム、5000系アルミニウムが好ましい。板厚は0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましい。用途により要求される機械的性質が異なる為、合金の種類、調質、板厚を適宜調整する。アルミニウム板は、一般的な圧延加工により製造される。直方体のスラブ(圧延用鋳塊)を面削し、均熱処理した後に、約400℃以上の高温で熱間圧延し、次いで室温で冷間圧延してアルミニウム板を製造する。
【0010】
(A−2)脱脂処理
冷間圧延後のアルミニウム板は、好ましくは脱脂処理される。脱脂処理としては、アルカリ脱脂処理液による処理が好ましい。アルカリ脱脂処理液は、界面活性剤とその脱脂性を確保するために添加されるアルカリビルダーを水に溶解又は分散させた溶液であり、pHが9〜13程度のものである。
【0011】
界面活性剤は冷間圧延後にアルミニウム板の表面に残留する油分を乳化分散させて除去し、乳化分散した油分のアルミニウム板表面への再付着を防止する効果を有する。これは、脱脂されたアルミニウム板表面に界面活性剤が単分子レベルで吸着するためと考えられている。このような界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシエチレン系界面活性剤や高級アルコール系界面活性剤などが挙げられる。
【0012】
アルカリビルダーは、硬水中に存在する、或いは、アルカリビルダー中に混入してくるカルシウムイオン、マグネシウムイオン等の多価カチオンをキレート化し、界面活性剤の不溶化を防ぐ効果を有する。アルカリビルダーとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、リン酸ナトリウムやリン酸水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩等が用いられる。
【0013】
アルカリ脱脂処理液は、スプレー法によって、50〜80℃の温度で1〜30秒間、冷間圧延後のアルミニウム板表面にスプレーするのが好ましい。アルカリ脱脂処理後、直ちに水による洗浄を行うことが好ましい。これは後工程での処理液の汚染や、アルミニウム板表面に残存するアルカリ成分、界面活性剤及び反応残渣等を除去するためである。通常、上水やイオン交換水をアルミニウム板表面にスプレーする方法が適用される。アルカリ脱脂処理には、このようなスプレー法の他に、アルカリ脱脂処理液中にアルミニウム板を浸漬する浸漬法を用いてもよい。なお、アルカリ脱脂処理又はその後の水洗処理を行った後に、必要に応じて、アルミニウム板表面を酸洗処理してもよい。
【0014】
(A−3)化成処理
脱脂処理されたアルミニウム板は、化成処理液によって化成処理されるのが好ましい。化成処理としては、りん酸クロメート処理液による処理が好ましい。りん酸クロメート処理液は、クロム酸、オルトリン酸を含有する主剤とフッ化物を含有する副剤との混合物を水で希釈した溶液であり、pHが1.5〜3.0程度のものである。フッ化物としては、フッ化水素酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロチタン酸、テトラフルオロホウ酸等が挙げられる。
【0015】
化成処理液は、スプレー法によって35〜55℃の温度で1〜30秒間、脱脂処理されたアルミニウム板表面にスプレーするのが好ましい。りん酸クロメート処理後、直ちに水による洗浄を行うことが好ましい。アルミニウム板表面に形成されるりん酸クロメート皮膜の皮膜量は、Cr量換算で10mg/m以上50mg/m以下が好ましい。Cr量は蛍光X線元素分析法により測定される。なお、化成処理においても、スプレー法の他に、化成処理液中にアルミニウム板を浸漬する浸漬法を用いてもよい。
【0016】
(B)熱硬化性粉体塗料
本発明に用いる熱硬化性粉体塗料は、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂を含み、20μm以上40μm以下の平均粒径を有する。
【0017】
(B−1)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂はエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等と比較して、加工性に優れている。ポリエステル系樹脂は、分子内に2個以上の水酸基を有する樹脂であり、カルボン酸化合物と、エチレングリコールを主体とする多価アルコール化合物とを直接エステル化反応させる方法等により得ることができる。前記カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、β−オキシプロピオン酸、シュウ酸、無水マレイン酸、無水トリメット酸、ピロメリット酸及びこれらの混合物等を挙げることができる。前記多価アルコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2’−ジエチレンプロパンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトット、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物等を挙げることができる。ポリエステル系樹脂の数平均分子量としては、400〜50000のものが用いられる。
【0018】
(B−2)ブロックイソシアネート樹脂
ブロックイソシアネート樹脂中のイソシアネート基が、ポリエステル樹脂中の水酸基と反応し、イソシアネート樹脂が架橋剤として作用してポリエステル系樹脂を架橋する。ここで、ブロックイソシアネート樹脂は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート樹脂であり、硬化前に架橋反応を生起させないために、イソシアネート基がブロック剤でブロックされている。イソシアネート樹脂としては、ポリイソシアネート化合物やポリイソシアネート化合物の多価アルコール付加体等が用いられる。ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の多価アルコール付加体の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2’−ジエチレンプロパンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタリトリット、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。ブロックイソシアネート樹脂の数平均分子量としては、140〜2000のものが用いられる。ブロック剤としては、メタノール、エタノール、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、アセトキシム、フェノール等が挙げられる。
【0019】
ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂との混合割合は重量比で、ポリエステル樹脂:ブロックイソシアネート樹脂=95:5〜50:50が好ましい。ポリエステル系樹脂の重量比が95を超えると硬化性が不足し、耐溶剤性が劣る場合があり、50未満ではイソシアネート樹脂が未反応物として残留し、耐食性等が劣る場合がある。なお、本発明の熱硬化性粉体塗料には、必要に応じて、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、シアニングリーン、シアニンブルー等の有機顔料、顔料分散剤、表面調整剤、潤滑剤等を配合してもよい。
【0020】
(B−3)粉体塗料の製造方法
上記ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂を必須成分とする原料粉末を、混合機を用いて均一に混合する。混合機としては、ヘンシェルミキサー、ボールミル、バンバリーミキサー等の一般的なものが用いられる。次に、加熱ロール、押出機等の溶融混練機を用いて、得られた混合物を加熱して成分を均一に分散させてペレット状などの形状に成形する。次に、ペレット状の成形体をアトマイザーやジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕する。
【0021】
(B−4)平均粒径
上記のようにして得られる粉体塗料の平均粒径は、20μm以上40μm以下である。平均粒径が20μm未満では、帯電し難くなり塗装外観が劣る。一方、平均粒径が40μmを超えると、塗膜表面の凹凸が顕著になり塗装外観が劣る。粒径はレーザー散乱による粒径測定装置により測定することができる。
【0022】
(C)塗装方法
本発明に用いる塗装方法は、静電塗装法である。静電塗装法は、塗装ガンで塗料を帯電させ、これをアースの取れた被塗物に付着させる方法である。帯電方式には、コロナ帯電とトリボ帯電の二種類の方式があるが、何れの方式を採用してもよい。コロナ帯電は、塗料をエアーで搬送しこれをガン先より吐出させ、電極から発生するイオンにより帯電させる方法である。トリボ帯電は、塗料をエアーで搬送し、これをガン内部に設置したテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)の筒で摩擦することにより帯電させる方法である。
【0023】
(D)焼付乾燥方法
本発明では、アルミニウム板に静電塗装した熱硬化性粉体塗料に近赤外線を照射することによって、この塗料を焼付乾燥させる。本発明で用いる近赤外線の波長帯は0.7μm以上5μm以下であり、好ましくは、0.8μm以上1.5μm以下である。近赤外線は赤外線領域の中でも、高いエネルギー密度で加熱することができる電磁波である。加熱によりまず、ブロックイソシアネート樹脂においては、ブロック剤でブロックされていたイソシアネート基のブロックが脱ブロックされる。次いで、脱ブロックしたイソシアネート樹脂中のイソシアネート基が、ポリエステル樹脂中の水酸基と架橋反応し、これによって熱硬化性粉体塗料が硬化して樹脂塗膜が形成される。このような近赤外線は塗料中を透過し、塗料に熱エネルギーを高速かつ均一に伝えることが出来る。近赤外線の照射により、塗料中又はアルミニウム中でエネルギーが共振吸収され、吸収されたエネルギーは分子(又は原子)を振動させ、振動させられた分子(又は原子)間で摩擦熱が発生し加熱するものである。
【0024】
近赤外線の照射に用いられる加熱装置としては、例えば、内部にフィラメントが配置されその周囲にハロゲン等の気体が存在する二つの近赤外線ヒーターを、アルミニウム板が通板される位置から上下それぞれ10cm離れた位置に配置したものが用いられる。主電源の電圧によっても異なるが、その出力は1〜5kWである。フィラメントは、アルミニウム板の通板方向に沿って15〜25mmの間隔で配置するのが好ましい。後述する焼付乾燥過程における段階毎にその出力と本数を適宜調整し、照射時間との兼ね合いで塗膜表面の到達温度が調整される。
【0025】
総焼付乾燥時間tは7秒以上60秒以下であり、好ましくは15秒以上55秒以下である。総焼付時間tが7秒未満では、粉体塗料が十分に溶融しない為に塗装外観が劣る。一方、総焼付時間tが60秒を超えると、生産性が低下しコスト増加になる。
【0026】
本発明では、熱エネルギーを効率良く塗料に均一に与えるために、焼付乾燥工程における昇温条件を十分に制御することが必要である。そのためには、粉体塗料が溶融して十分に流動する前に、硬化反応を開始させないことが重要である。このような観点から、本発明における焼付乾燥工程は三段階に分けられる。
【0027】
第一段階では、アルミニウム板の塗装面とは反対側の面から近赤外線を時間t1照射し、その後の時間t2は照射しない。時間t1は0.27t〜0.29tであり、時間t2は0.27t〜0.29tである。この段階での塗膜表面の到達温度T1は60℃以上70℃以下である。第一段階においては、粉体塗料の溶融が開始され粒径の小さい粉体が溶融する。それにより、溶融した粉体の粘度が低下し流動化が始まる。時間t1が0.27t未満又は時間t2が0.29tを超えると、塗膜表面の到達温度T1が60℃未満となり溶融開始が遅れる。その結果、後工程で必要な消費熱量が不足し、粉体塗料が十分に硬化しきれずに耐溶剤性や密着性が劣る。一方、時間t1が0.29tを超え又は時間t2が0.27t未満では、塗膜表面の到達温度T1が70℃を超えてしまう。そうすると、次の第二段階において、温度が上がり過ぎた状態で硬化反応が開始されるので、塗装外観が劣る。
【0028】
第二段階では、近赤外線を塗装面に時間t3照射する。時間t3は0.27t〜0.29tである。この段階での塗膜表面の到達温度T2は、90℃以上100℃以下である。第二段階では、大径の粉体も溶融し粘度が更に低下して流動化が進む。時間t3が0.27t未満では、塗膜表面の到達温度T2が90℃未満となる為に溶融が不十分となる。その結果、後工程で必要な消費熱量が不足し、粉体塗料が十分に硬化しきれずに耐溶剤性や密着性が劣る。時間t3が0.29tを超えると、塗膜表面の到達温度T2が100℃を超えるので塗装外観が劣る。
【0029】
第三段階では、近赤外線を塗装面に時間t4照射する。時間t4は0.14t〜0.18tである。この段階での塗膜表面の到達温度T3は、110℃以上120℃以下である。第三段階では、ブロックイソシアネート樹脂のイソシアネート基をブロックしていたブロック剤が脱ブロックする温度に達する。これにより、脱ブロックしたイソシアネート樹脂中のイソシアネート基が、ポリエステル樹脂中の水酸基と反応し、イソシアネート樹脂が架橋剤として作用してポリエステル系樹脂との間で架橋反応が進行する。このような架橋反応によって、焼付硬化が進行する。時間t4が0.14t未満では、塗膜表面の到達温度T3が110℃未満となり、硬化が不十分で耐溶剤性及び密着性が劣る。時間t4が0.18tを超えると、塗膜表面の到達温度T3が120℃を超え、硬化反応が急速に進み過ぎて塗装外観が劣る。
なお、時間t1、t2、t3及びt4の総和はtである。塗膜表面の温度は放射温度計で測定することができる。
【0030】
(E)焼付乾燥後の膜厚
焼付乾燥後の塗膜厚は、40μm以上90μm以下であるのが好ましい。40μm未満では、塗装後の凹凸が顕著になり塗装外観が劣る。90μmを超えると、粉体同士が静電反発して塗着効率が低下し、塗装外観が劣る。
【0031】
(F)冷却
焼付乾燥後のアルミニウム板は、エアブローにより2秒以上10秒以下、或いは、自然放冷により30秒以上120秒以下冷却するのが好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例1〜12及び比較例1〜12
アルミニウム板として、表1、2に示す厚さ0.5mmのアルミニウム材を用いた。このアルミニウム板の両面に、市販のアルカリ脱脂処理液(日本ペイント社製サーフクリーナー420N−2)を60℃の温度で5秒間スプレーして脱脂処理を行った。これを水洗後、その両面に市販のりん酸クロメート処理液(日本ペイント社製アルサーフ401/45)を40℃の温度で10秒間スプレーして化成処理を行った。りん酸クロメート皮膜の皮膜形成量は、Cr量換算で30mg/mであった。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
次に、ポリエステル系樹脂(大日本インキ化学工業製 FINEDIC M−8010)とブロックイソシアネート樹脂(ヒュルス社製B1530)とを主成分とし表1、2に示す平均粒径を有する熱硬化性粉体塗料を、コロナ帯電方式により化成処理面に静電塗装した。そして、波長帯が0.8μm以上1.5μm以下の近赤外線乾燥装置を用いて表1、2に記載の焼付条件で塗装面を焼付乾燥し、樹脂被覆アルミニウム板の試料を作製した。更に、焼付乾燥した樹脂被覆アルミニウム板を5秒間エアブローして冷却した。
なお、ポリエステル系樹脂:ブロックイソシアネート樹脂の混合割合は重量比で、89:11とした。また、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる原料粉末はボールミルで均一に混合し、95℃の加熱ロールで溶融混練してペレット状とした。次いで、アトマイザーを用いてペレットを所望の平均粒径の粉末に粉砕して、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる熱硬化性粉体塗料を得た。
比較例12では、ブロック剤でイソシアネート基がブロックされていないイソシアネート樹脂(イソホロンジイソシアネート)を用いた以外は他の実施例及び比較例と同様にして、熱硬化性粉体塗料を調製し、これを静電塗装し、焼付乾燥して樹脂被覆アルミニウム板試料を作製し、これを冷却した。
各試料について、下記のように塗装外観、耐溶剤性及び密着性を評価した。
【0036】
<塗装外観>
樹脂塗膜表面を目視で観察して、表面状態を評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:発泡は認められず、表面もざらついておらず、光沢がある。
△:発泡は認められず、表面もざらついていないが、光沢性が欠けている。
△×:発泡が認められ、表面もざらついている。
×:樹脂が溶融していない。
○と△を合格とし、△×と×を不合格とした。
【0037】
<耐溶剤性>
MEK(メチルエチルケトン)を含浸したガーゼを2ポンドハンマーに取り付け、樹脂塗膜表面を30回ラビングして、樹脂塗膜の溶解、剥離の状態を観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:アルミニウム板素地に達する樹脂塗膜の剥離なし。
×:樹脂塗膜の溶解及び/又は剥離あり。
○を合格とし、×を不合格とした。
【0038】
<密着性>
樹脂塗膜表面に1mm碁盤目を描いて、テープ剥離試験を行った。評価基準は、以下の通りである。
○:剥離なし
×:剥離あり
○を合格とし、×を不合格とした。
【0039】
実施例1〜12ではいずれも、塗装外観、耐溶剤性及び密着性が合格であった。これに対して比較例1〜12では、塗装外観、耐溶剤性及び密着性の少なくともいずれかが不合格であった。
具体的には、比較例1では、熱硬化性粉体塗料の平均粒径が40μmを超えた為に塗装外観が不合格であった。
比較例2では、熱硬化性粉体塗料の平均粒径が20μm未満の為に塗装外観が不合格であった。
比較例3では、t1が0.27t未満の為に耐溶剤性及び密着性が不合格であった。
比較例4では、t2が0.29tを超えた為に耐溶剤性及び密着性が不合格であった。
比較例5では、t3が0.27t未満の為に耐溶剤性及び密着性が不合格であった。
比較例6では、t1が0.29tを超えた為に塗装外観が不合格であった。
比較例7では、t2が0.26t未満の為に塗装外観が不合格であった。
比較例8では、t3が0.29tを超えた為に塗装外観が不合格であった。
比較例9では、t4が0.14t未満の為に耐溶剤性及び密着性が不合格であった。
比較例10では、t4が0.18tを超えた為に塗装外観が不合格であった。
比較例11では、tが7秒未満の為に塗装外観が不合格であった。
比較例12では、ブロックイソシアネート樹脂を用いていない為に塗装外観、耐溶剤性、密着性が不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなる熱硬化性粉体塗料を短時間で焼付硬化させ、塗装外観と耐溶剤性、密着性が良好な樹脂被覆アルミニウム塗装材の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板の少なくとも一方の表面に熱硬化性粉体塗料を静電塗装する工程と、静電塗装した熱硬化性粉体塗料に近赤外線を照射することによって焼付乾燥する工程とを含み、
前記熱硬化性粉体塗料が、ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート樹脂からなり20μm以上40μm以下の平均粒径を有し、
前記焼付乾燥工程が、塗装される表面とは反対側の表面から近赤外線を時間t1照射し、続いて時間t2時間照射しないことにより、塗装表面の到達温度T1を60℃以上70℃以下とする第一段階と、近赤外線を塗装面に時間t3照射することにより、塗装表面の到達温度T2を90℃以上100℃以下とする第二段階と、近赤外線を塗装面に時間t4照射することにより、塗装表面の到達温度T3を110℃以上120℃以下とする第三段階とを含み、
総焼付時間tを7秒以上60秒以下とし、t1が0.27t以上0.29t以下であり、t2が0.27t以上0.29t以下であり、t3が0.27t以上0.29t以下であり、t4が0.14t以上0.18t以下であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
【請求項2】
静電塗装する工程の前に、前記アルミニウム板の少なくとも一方の表面を脱脂処理する工程と、脱脂処理した表面を化成処理する工程を更に含む、請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
【請求項3】
前記焼付乾燥工程後における塗料の塗膜厚が40μm以上90μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。

【公開番号】特開2012−239988(P2012−239988A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112935(P2011−112935)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】