説明

樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法

【課題】アルミニウムキャップ等の成型加工後における高い樹脂被覆膜密着性を示す樹脂被覆アルミニウム板を提供する。
【解決手段】アルミニウム基材と、その表面に形成した非クロム塗布型下地皮膜と、その上に形成した樹脂被覆膜とを備え、基材表面と下地皮膜との界面に存在するアルミニウム水和酸化物の量が50mg/m以下で、下地皮膜がフッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムの少なくともいすれかと、ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸とを含み、ジルコニウム化合物濃度が、基材側の面から下地皮膜表面に向けて連続的に減少し、かつ、ポリアクリル酸濃度が、基材側の面から下地皮膜表面に向けて連続的に増加しており、ジルコニウム化合物濃度及びポリアクリル酸濃度が1〜20mg/mである樹脂被覆アルミニウム板

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面に、樹脂塗料を塗装した又は樹脂フィルムをラミネートした非クロム塗布型下地皮膜を備える樹脂被覆アルミニウム板に関し、特にプレス成型などの成型加工後において樹脂被覆膜の密着性に優れたキャップ成型用の非クロム下地皮膜を備えるアルミニウム合金板に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム板又はアルミニウム合金板は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ美感、成型加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類、構造材、機械部品等に広く使用されている。特に、コイル状のアルミニウム合金板をプレス機に連続的に供給する方式の成型加工は生産性に優れるため、上記用途に多く採用されている。
【0003】
上記用途のアルミニウム板又はアルミニウム合金板は、耐食性や耐溶出性の更なる向上、外観の向上、ならびに、キズ付き防止性等のため、その表面に樹脂塗料の塗装や樹脂フィルムのラミネート加工が施されることも多い。この場合、アルミニウム板又はアルミニウム合金板には何らかの下地処理(例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸ジルコニウム等)が施されるのが一般的である。アルミニウム製キャップの場合、材料のアルミニウム板又はアルミニウム合金板に下地処理及び樹脂被覆を施してから成型加工する、いわゆるプレコート式が多く採用されている。
【0004】
キャップ成型用プレコートアルミニウム板又はアルミニウム合金板に対しては、成型加工において樹脂剥離が生じないための樹脂密着性や、腐食雰囲気に曝されても侵食されない耐食性が要求される。そのため、下地処理の方法に工夫を施すことによって、これらを向上させる手法が多く提案されている。特に、アルミニウム板又はアルミニウム合金板を脱脂した後に、水溶性の下地処理剤を塗布して乾燥させる塗布型下地処理は、樹脂被覆膜の密着性及び耐食性に優れ、化成型下地処理と比較して廃水処理の負荷が軽減されるため、工業的に広く用いられている。加えて、三価及び六価のクロムを含有しない、いわゆる非クロムタイプの塗布型下地処理薬剤は、人体への影響低減及び環境負荷の低減が図れるため好適に用いられている。
【0005】
例えば特許文献1には、以下の方法が記載されている。すなわち、アルミニウム製のキャップ材を印刷するための前処理方法として、まず脱脂処理を施し,次いで実質的に水溶性重合体物質及び水溶性ジルコニウム化合物からなる水性組成物を塗布する。塗布後に乾燥することにより、組成物中の水溶性ポリアクリル酸等を水溶性ジルコニウム化合物にて架橋硬化させてアルミニウム板材表面に所定の乾燥硬化皮膜を形成する。続いてこの皮膜上に、所定のアミノアルキルアルコキシシラン化合物の水溶液をコイルコ−ト法にて塗布し、乾燥すれば、金属用印刷インキに対して優れた密着性を有する表面処理がなされる。
【特許文献1】特開昭63−123474号公報
【0006】
また特許文献2には、張出成型時の印刷インキや樹脂被覆膜の剥がれのないアルミニウム材料が記載されている。すなわち、アルミニウム基材表面に、印刷用又は樹脂塗装用の下地皮膜として、一種又は二種以上の金属化合物を含有するポリアクリルアミド樹脂皮膜が被覆形成され、該下地皮膜に印刷又は樹脂塗装が施されて張出成型されたアルミニウム材料である。ここで、前記金属化合物(金属化合物が二種以上含まれる場合にはそのうちの少なくとも一種)の付着量は、0.1mg/m以上に規定されている。
【特許文献2】特公平8−22990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に示されるような従来技術には以下のような問題点がある。すなわち、近年、キャップの形状及びサイズがますます多様化し、小口径で絞り比が大きいタイプ等の厳しい成型を要求される場合が増加している。こうした要求に対し、従来技術に基づいたプレコート材は、加工成型後における樹脂被覆膜の密着性の不足から、キャップ成型後に樹脂被覆膜が剥離する不都合が生じることがある。加えて、内容物の充填後にレトルト処理が加わる場合には、この傾向が顕著となり、上記特許文献1、2に代表される密着性向上技術を用いても、このような不都合が必ずしも解決しきれていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルミニウム基材と非クロム塗布型下地皮膜の界面に存在するアルミニウム水和酸化物が非クロム塗布型下地皮膜の加工密着性を低下させる原因であることを突き止めた。また、前記非クロム塗布型下地皮膜にジルコニウム化合物と、ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸とを含有させ、非クロム塗布型下地皮膜中におけるジルコニウム化合物濃度を、基材側の面から下地皮膜表面に向けて連続的に減少させ、かつ、ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸濃度を、基材側の面から下地皮膜表面に向けて連続的に増加させる、いわゆる傾斜構造とすることにより、非クロム塗布型下地皮膜の密着性を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は請求項1において、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材と、当該基材の少なくとも一方の表面に形成した非クロム塗布型下地皮膜と、当該非クロム塗塗布型下地皮膜上に形成した樹脂被覆膜とを備えた樹脂被覆アルミニウム板であって、
前記基材表面と非クロム塗布型下地皮膜との界面に存在するアルミニウム水和酸化物の量が50mg/m以下であり、
前記非クロム塗布型下地皮膜が、フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムから成るジルコニウム化合物の少なくともいすれかと、ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸とを含み、前記非クロム塗布型下地皮膜中におけるジルコニウム化合物濃度が、前記基材側の面から非クロム塗布型下地皮膜表面に向けて連続的に減少し、かつ、前記ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸濃度が、前記基材側の面から非クロム塗布型下地皮膜表面に向けて連続的に増加しており、
前記ジルコニウム化合物濃度がジルコニウム換算で1〜20mg/mであり、かつ、前記ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸濃度が1〜20mg/mである樹脂被覆アルミニウム板とした。
【0010】
本発明は請求項2において、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面をアルカリ脱脂処理する工程と、アルカリ脱脂処理表面を洗浄処理する工程と、洗浄処理表面に非クロム塗布型下地処理を施す工程と、非クロム塗布型下地処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と、を含む樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、
前記洗浄処理工程が、前記アルカリ脱脂処理表面を20〜80℃の洗浄液で洗浄することを含み、
前記非クロム塗布型下地処理工程が、フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムの少なくともいすれかと、ポリアクリル酸とを含有する水溶性の非クロム塗布型下地処理剤を、前記洗浄処理表面に塗布することを含む樹脂被覆アルミニウム板の製造方法とした。
【0011】
本発明は請求項3において、前記非クロム塗布型下地処理工程が、前記洗浄処理表面に前記非クロム塗布型下地処理剤を塗布した後に前記非クロム塗布型下地処理表面を乾燥することを含み、前記非クロム塗布型下地処理表面の乾燥温度を100℃以下とし、80〜100℃である時間を20秒間以下(0〜20秒)とした。0秒の場合は、80℃未満の温度で乾燥される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板では、アルミニウム基材と非クロム塗布型下地皮膜との界面に存在するアルミニウム水和酸化物の量を低減されているため、アルミニウムキャップ等の成型加工後における樹脂被覆膜の高い密着性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板は、第2の本発明に係る製造方法、すなわち、アルミニウム基材の表面にアルカリ脱脂処理を施し、次いで、アルカリ脱脂処理表面に洗浄処理を施し、更に、洗浄処理表面に非クロム塗布型下地処理を施して下地皮膜を形成し、最後に、下地皮膜上に樹脂被覆膜を形成することによって得られる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
A.アルミニウム水和酸化物の形成
上述のアルミニウム水和酸化物は、非クロム塗布型下地処理に先立つ前処理の段階でまず形成される。一般に、下地処理の前処理としては、アルカリ脱脂剤を用いた脱脂・エッチング処理によって、アルミウム基材表面の圧延油、磨耗粉及び酸化皮膜等を除去するが、アルカリ脱脂処理終了後の洗浄処理工程においてアルミニウム水和酸化物が生成される。また、アルミニウム水和酸化物は下地皮膜の乾燥時においても生成することが判明した。したがって、洗浄処理工程及び下地皮膜の乾燥工程においてアルミニウム水和酸化物の形成を抑制することにより、アルミニウム基材と下地皮膜の界面に生成するアルミニウム水和酸化物を低減させることができる。
【0015】
B.アルミニウム基材
本発明で用いる樹脂被覆アルミニウム板の基材としては、純アルミニウム材及びアルミニウム合金材が用いられ、用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。アルミニウム合金材としては、1000系、3000系、5000系等が用いられるが、缶のキャップ用としては、強度と成型加工性に優れた5000系合金を使用することが好ましい。
なお、本発明では、「アルミニウム」の用語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意とし、「アルミニウム基材」の用語は、純アルミニウム基材及びアルミニウム合金基材の双方を含む意とし、「アルミニウム板」の用語は、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板の双方を含む意とする。
また、本発明では、基材とてアルミニウム材を用いるが、この他の基材として、アルミニウム以外の金属や合金、セラミックス、プラスチック等を用いることもできる。
【0016】
C.アルカリ脱脂処理工程
アルカリ脱脂処理は,従来技術に基づいた脱脂液及び脱脂方法をそのまま適用することができる。アルカリ脱脂液としては、アルカリ性脱脂剤を例えば0.5〜2.0重量%の濃度で水等の溶媒に溶解又は分散した溶液であって、エッチング性を有するpHが9〜13程度のものが用いられる。アルカリ性脱脂剤は、アルカリビルダー、界面活性剤及びキレート化剤等を含む。このようなアルカリ脱脂剤としては、例えば、日本パーカライジング社製の「FC−E3001」や日本ペイント社製の商品名「SC−EC370」を用いることができる。
【0017】
アルカリビルダーとしては、炭酸Na、炭酸K等の炭酸アルカリ金属塩;苛性Na等のアルカリ金属水酸化物;リン酸Naやリン酸水素Na等のアルカリ金属リン酸塩;ケイ酸Na等のアルカリ金属ケイ酸塩等;或いは、これらの混合物;が用いられる。
界面活性剤としては、HLB(親水性/親油性の比率)=8〜11程度のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシエチレン系界面活性剤や高級アルコール系界面活性剤等の界面活性剤が用いられる。
キレート化剤としては、EDTA・2Na塩やナフチルアミン等が用いられる。
【0018】
アルカリ脱脂処理によるアルミニウム基材表面のエッチング量は、60〜300mg/m程度が好ましい。圧延により生じるアルミニウム基材上の酸化皮膜の量は、数十〜数百mg/mの範囲なので、エッチング量が60mg/m未満では酸化皮膜除去が不十分となり、エッチング量が300mg/mを超えたのでは酸化皮膜除去の効果が向上しないだけでなく、スラッジ生成も加速されるので好ましくない。
【0019】
アルカリ脱脂処理は、例えば、50〜80℃のアルカリ脱脂液を1〜20秒間にわたってアルミニウム基材にスプレー噴霧するか、或いは、50〜90℃のアルカリ脱脂液に10〜60秒間にわたってアルミニウム基材を浸漬する方法が採用される。
【0020】
D.洗浄処理工程
上記アルカリ脱脂処理工程に続いて洗浄処理が行われる。上述のようにアルカリ脱脂剤のpHは9以上であり、アルカリ脱脂終了直後のアルミニウム基材の表面近傍におけるpHも当然9以上である。この時点においては、アルミニウムは基材表面に残存する脱脂液中に溶解しているだけである。ところが、洗浄処理工程が開始されて、アルミニウム基材表面に洗浄水が接触すると、アルミニウム基材の表面近傍におけるpHは8〜9の弱アルカリ領域となる。このような弱アルカリ領域のpHでのアルミニウムの溶解度は極めて低い。そこで、洗浄処理が開始されてアルミニウム基材の表面近傍におけるpHが8〜9の弱アルカリに低下すると、pH9以上の状態において溶解していたアルミニウムがアルミニウム水和酸化物として析出する。このようにして析出したアルミニウム水和酸化物は、アルミニウム基材の表面に新たな水和酸化物層を形成してしまう。この水和酸化物層が、非クロム下地処理工程において、アルミニウム基材表面と非クロム下地皮膜との界面に生成し、ひいては樹脂被覆アルミニウム板の加工後における樹脂被覆膜の密着性を低下させることになる。従って、アルミニウム水和酸化物層の形成を防止するには、水洗処理工程において、アルミニウム基材の表面近傍におけるpHを8以下に低下させる必要がある。
【0021】
洗浄処理工程において、アルカリ脱脂処理工程終了後のアルミニウム基材の表面近傍におけるpHを8以下に低下させるためには、所定温度の洗浄液でアルミニウム基材を洗浄する方法が採用される。具体的には、洗浄液をアルミニウム基材表面にスプレー噴射して洗浄する方法が好適に用いられる。
【0022】
洗浄液の温度については、20〜80℃の範囲で選択する必要がある。脱脂・エッチング工程を経た新鮮なアルミニウム基材表面に80℃を超える洗浄液が接触すると、アルミニウムと水が反応して新たに擬ベーマイト状アルミニウム水和酸化物が生成してしまい不適当だからである。また、洗浄液の温度が20℃未満では、十分な脱脂速度又はエッチング速度が得られない。20℃未満では脱脂剤の溶解速度が遅く、pH変化が緩慢になる上に、アルミニウム基材の温度が低下して、脱脂剤に溶存するアルミニウムの析出が生じてしまうからである。
【0023】
スプレー噴射方式を採用する場合には、スプレー噴射の条件として、毎秒当たり3〜50リットル/mのスプレー噴射量で、かつ、1.0〜3.5kgf/cmのスプレー噴射圧が好ましい。洗浄液の噴射量が毎秒当たり3リットル/m未満の場合や、スプレー噴射圧が1.0kgf/cm未満の場合には、アルミニウム基材表面の近傍におけるpHを迅速に8以下に低下できず、その結果、新たなアルミニウム水和酸化物の形成が促進される場合もあり好ましくない。一方、洗浄液の噴射量が50リットル/mを超えてもpH低下の効果は飽和してしまい、大量の水を消費するだけ生産コストが増加するので好ましくない。また、スプレー噴射圧が3.5kgf/cmを超える場合には、pH低下の効果が飽和するだけでなく高圧に耐えるための配管等の強化も必要となり、不経済となるので好ましくない。
【0024】
なお、洗浄処理方法としてはディップ(浸漬)方式も挙げられるが、アルミニウム基材上のpH低下速度が緩慢となることから、スプレー噴射方式のような迅速なpH低下効果が得られない。しかしながら、攪拌装置を備えた浸漬浴の使用、或いは、流水式の浸漬浴の使用によって、アルミニウム基材のアルカリ脱脂処理表面でのアルカリ成分の洗浄液への溶解、拡散を促進することにより、スプレー噴射方式のような迅速なpH低下効果を得ることが可能である。
【0025】
洗浄液としては、従来一般的に工業用水として用いられている水質を有していればよい。すなわち、蒸留水や純水(脱イオン水)を用いるのが好ましいが、軟水や電気伝導度が20mS/m以下の工業用水や水道水を用いることもできる。
【0026】
洗浄処理時間は製造ラインの構成によって適宜設定されるが、2秒以上であることが望ましい。洗浄処理時間が2秒未満の場合には、脱脂剤に含まれる界面活性剤が除去されきれずに残存し、下地処理工程で用いる下地処理液を汚染するおそれがある。界面活性剤をより確実に除去するためには、洗浄時間が4秒以上であることが好ましい。
一方、洗浄処理時間の上限は特に限定されないが、製造ラインの構成及び製造ラインの操作速度を勘案し、30秒以下とするのが好ましい。洗浄処理時間が30秒を超えると、非常に長い洗浄処理ラインが必要となったり、洗浄処理ラインの操作速度を極端に低下する必要があり、結果的に生産性を阻害することになるからである。
【0027】
ところで、アルカリ脱脂処理工程の終了後においてアルミニウム基材の表面近傍のpHが8を超えている時間が長時間となる程、アルミニウム基材表面でのアルミニウム水和酸化物層の形成が促進される。アルミニウム水和酸化物層の形成が促進されると、多量のアルミニウム水和酸化物が蓄積され、これを除去するのには多量の洗浄液と長時間を要することになる。したがって、アルカリ脱脂処理工程が終了したら、できるだけ急速にアルミニウム基材の表面近傍のpHを8以下に低下させるのが望ましい。具体的には、アルカリ脱脂処理工程の終了後3秒以内に、アルミニウム基材の表面近傍におけるpHを8以下に急速に低下させることにより、アルミニウム水和酸化物層の形成促進を抑制できる。アルカリ脱脂処理工程の終了と同時に洗浄処理を開始して、開始後3秒以内にpHを8以下に低下させるようにするのが好ましい。
【0028】
E.非クロム塗布型下地処理工程
洗浄処理工程に続いて非クロム塗布型下地処理が施される。
本発明の特徴の第一は、樹脂被覆膜形成工程後におけるアルミニウム基材と非クロム塗布型下地皮膜の界面に存在するアルミニウム水和酸化物を50mg/m以下とすることである。これは、アルミニウム基材表面にアルミニウム水和酸化物が多く存在する場合、非クロム塗布型下地処理剤の乾燥・焼付工程において、処理剤に含有されるジルコニウム化合物がアルミニウム水和酸化物と優先的に結合してしまい、非クロム塗布型下地皮膜による樹脂被覆膜の密着性が不十分となるためである。アルミニウム水和酸化物の少ないアルミニウム基材表面に、処理剤のジルコニウム化合物が反応することによって、アルミニウム基材/ジルコニウム化合物の結合層が生じ、これが樹脂被覆膜の密着性に寄与するのである。
本発明では、上述の洗浄処理工程において、アルミニウム水和酸化物の形成を抑制できるので、アルミニウム基材と非クロム塗布型下地皮膜との界面に存在するアルミニウム水和酸化物を50mg/m以下とすることができる。その結果、成型加工後の樹脂被覆膜の密着性に優れた樹脂被覆アルミニウム板を得ることが可能となる。
【0029】
非クロム塗布型下地皮膜は、クロムを含有せず、かつ、ジルコニウム化合物とポリアクリル酸を含有する非クロム塗布型下地処理液を用いた非クロム塗布型下地処理工程にて形成される。
このような非クロム塗布型下地処理液は、下地処理剤を水、アルコール水溶液等の溶媒に溶解又は分散した水溶性のものが用いられる。下地処理液が塗布されるアルミニウム基材表面は、上述のアルカリ脱脂に代表される前処理によって清浄にされており、親水性が高い。そのため、溶剤性の塗布型処理液では、塗布・乾燥にてハジキを生じる可能性が高いので、水溶性であることが必要である。処理剤は、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムのいずれか一方、ならびに、ポリアクリル酸を含有する。フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムは、アルミニウム基材表面と反応しバインダーとして機能すると共に樹脂成分の架橋剤としても機能する。これらのジルコニウム化合物は、バインダー及び架橋剤のどちらの機能も高い。そしてポリアクリル酸は、フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムによって適度に架橋され、本発明で用いる非クロム塗布型下地皮膜においては、後述する傾斜構造を形成し易い。
【0030】
非クロム塗布型下地処理液中のフッ化ジルコニウム酸と炭酸ジルコニウムアンモニウムの含有量、ならびに、アクリル酸の含有量は、形成された非クロム塗布型下地皮膜中におけるジルコニウム化合物濃度、ならびに、ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸濃度が、それぞれ1〜20mg/mとなるように適宜選択される。なお、非クロム塗布型下地処理液のpHは、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜9である。
【0031】
非クロム下地処理液は、スプレー噴霧、バーコーター塗工等によってアルミニウム基材表面に塗布される。このような塗布方式が好適に用いられるが、下地溶液に浸漬する浸漬方式を採用してもよい。塗布温度は、10〜50℃が好ましい。
上記の脱脂処理により表面を洗浄したアルミニウム基材表面に非クロム下地処理液を塗布後に、アルミニウム基材は加熱されつつ乾燥される。この乾燥工程においてアルミニウム基材上の非クロム下地処理皮膜の温度が80℃以上であると、下地処理剤に含有される水分とアルミニウムが反応して擬ベーマイト状アルミニウム水和酸化物が生成してしまう。したがって、通常、乾燥は30〜80℃の温度で行なわれる。ただし、乾燥温度が80℃以上となっても100℃以下であれば、80〜100℃である時間を1〜20秒以内とすることによりアルミニウム水和酸化物の生成量を50mg/m以下に抑制することが可能である。例えば、乾燥温度範囲を30〜100℃として80〜100℃である時間を1〜20秒間としたり、或いは、乾燥温度範囲を80〜100℃として1〜20秒間乾燥するものである。
【0032】
F.非クロム塗布型下地皮膜の性状
本発明の特徴の第二は、非クロム塗布型下地皮膜中におけるジルコニウム化合物濃度が、アルミニウム基材側の面から非クロム塗布型下地皮膜表面に向けて連続的に減少し、かつ、このジルコニウム化合物で架橋されたポリアクリル酸濃度が、アルミニウム基材側の面から非クロム塗布型下地皮膜表面に向けて連続的に増加していることである(このような濃度勾配を有する構造を、以下において「傾斜構造」と記す)。このような傾斜構造により、下地皮膜の厚さ方向においてはアルミニウム基材表面に向かって次第に、フッ化ジルコニウム酸及び/又は炭酸ジルコニウムアンモニウム成分に富む部分が形成され、一方、下地皮膜の厚さ方向の下地皮膜表面に向かって次第に、これらジルコニウム化合物によって架橋されたポリアクリル酸成分に富む部分が形成されている。このようなジルコニウム化合物の成分に富む部分は、アルミニウム基材と樹脂被覆膜との密着性に寄与し、架橋されたポリアクリル酸成分に富む部分は、絞り成型のような強加工への追従性に寄与する。
【0033】
なお、上記ジルコニウム化合物の濃度と、架橋されたポリアクリル酸濃度のいずれもが、下地皮膜の厚さ方向において「連続的に」変化しているとは、厚さ方向における濃度勾配に不連続な部分、具体的には、特定の深さで上記ジルコニウム化合物や架橋ポリアクリル酸の濃度が急激に増加又は減少するような部分がないことをいう。不連続な部分がある場合には、強加工を受けたときに応力がその部分に集中し、下地皮膜がアルミニウム基材から剥離するように破壊され、結果として樹脂被覆膜の密着性が低下する。
【0034】
非クロム塗布型下地皮膜では、上記ジルコニウム化合物、架橋ポリアクリル酸成分とも、下地皮膜中に一定程度以上の量が存在しないと、密着性が発揮されない。具体的には、上記ジルコニウム化合物が1〜20mg/mで、かつ、架橋ポリアクリル酸成分が1〜20mg/mであることが必要である。ジルコニウム化合物の濃度は、単独で用いられる場合には単独の濃度を示し、両方用いられる場合には両方合わせた濃度を示す。ジルコニウム化合物の濃度が1mg/m未満では、形成したジルコニウム化合物の殆どがアルミニウム基材との反応に消費され、ポリアクリル酸の架橋に費やされる分が不足して架橋反応が生起しない。ジルコニウム化合物の濃度が20mg/mを超えたのでは、架橋反応に必要な量を超えた分が不経済となる。また、ポリアクリル酸成分の濃度が1mg/m未満では、強加工に耐えるための柔軟性を備えた下地皮膜を形成するだけの厚みが得られない。ポリアクリル酸成分の濃度が20mg/mを超えたのでは、下地皮膜を形成するのに必要な量を超えた分が不経済となる。
なお、ジルコニウム化合物とポリアクリル酸成分の重量比は特に限定されるものではないが、所望の樹脂被覆膜の密着性を得るには、ジルコニウム化合物:ポリアクリル酸成分=1:4〜4:1程度が好ましく、1:2〜2:1程度がより好ましい。
【0035】
G.樹脂被覆膜の形成工程
上述の非クロム塗布型下地処理工程に続いて樹脂被覆膜が形成される。樹脂被覆膜の形成工程では、樹脂塗料の塗装、焼付による樹脂塗膜の形成、或いは、ラミネートによる樹脂フィルムの形成が行われる。
【0036】
樹脂塗料としては、エポキシ樹脂、エポキシ/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ/尿素樹脂、エポキシ/フェノール樹脂等の一般的な樹脂を、例えば、水等の水性溶媒又はシクロヘキサノン、ブチルセロソルブ等の有機溶媒に溶解又は分散した樹脂塗料が用いられる。また、塗装した樹脂塗料の焼付け条件は、150〜300℃で10〜60秒である。
ラミネートに用いる樹脂フィルムには、例えばポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系フィルム;ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム;ナイロンのようなポリアミド系フィルム等が用いられる。また、樹脂フィルムのラミネート条件は、150〜300℃である。
このようにして製造される樹脂被覆アルミニウム板は、プレス成型などの成型加工後においても樹脂被覆膜の密着性に優れている。従って、強加工により成型されるアルミニウムキャップが、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板によって好適に製造される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0038】
実施例1〜3及び比較例1、2、4、5〜7
アルミニウム基材として、板厚0.23mmの3105−H34合金板を使用した。まず、アルカリ脱脂剤「FC−E3001(日本パーカライジング)」を溶媒である水に溶解したアルカリ脱脂液を調製した。アルカリ脱脂液中のアルカリ脱脂剤の濃度は1.0重量%とした。スプレー噴霧圧1.5kgf/cm及びスプレー噴霧時間8秒で、60℃の温度のアルカリ脱脂液をアルミニウム基材の両面にスプレー噴霧した。アルミニウム基材のエッチング量は約100mg/mであった。
アルカリ脱脂処理の終了と同時に、毎秒当たりのスプレー噴射量5リットル/m、スプレー噴射圧1.0kgf/cm及びスプレー噴射時間6秒で、25℃の温度の水道水(洗浄水)をアルミニウム基材両面のアルカリ脱脂処理表面にスプレー噴射し、次いで水道水を脱イオン水で置換洗浄して、アルカリ脱脂処理したアルミニウム基材を洗浄処理した。
次いで、洗浄処理したアルミニウム基材両面に、所定の非クロム塗布型下地処理液をバーコーターによって塗布した。次いで、下地処理液を塗布したアルミニウム基材を、92℃で循環風速15m/秒に設定した炉内に30秒間保持して乾燥した。なお、この乾燥において、アルミニウム基材が80〜92℃の温度に曝された時間は17秒間であった。
更に、乾燥したアルミニウム基材の両面に、プライマー塗料(ポリエステル系樹脂)をバーコーターによって塗布(塗膜量1.5g/m)し、焼付(焼付温度180℃×10分)した後、トップコート(ポリエステル系樹脂)をバーコーターによって塗布(塗膜量8.5g/m)し、焼付(焼付温度180℃×10分)して樹脂被覆膜とし、樹脂被覆アルミニウム板を作製した。
【0039】
一方、上述のような樹脂被覆アルミニウム板の作製とは別に、同じ素材及び寸法のアルミニウム基材を用いてアルカリ脱脂処理工程の終了から3秒後における洗浄処理時点におけるアルカリ脱脂処理表面のpHを測定した。まず、アルミニウム基材に上記樹脂被覆アルミニウム板の作製におけるのと同じ条件でアルカリ脱脂処理を施した。次いで、洗浄液のスプレー噴射時間を3秒とした以外は、上記樹脂被覆アルミニウム板の作製におけるのと同じ条件でアルミニウム基材を洗浄処理した。次に、洗浄処理表面に、ストライプ式pH試験紙(pH範囲:7.2〜8.8、pH測定間隔:0.2)を接触させてpHを測定した。
【0040】
実施例4
水道水のスプレー噴射量を毎秒当たり10リットル/mとし、かつ、スプレー噴射圧を2.0kgf/cmにした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。
【0041】
比較例3
水道水のスプレー噴射量を毎秒当たり2リットル/mとし、かつ、スプレー噴射圧を0.5kgf/cmとし、更に、乾燥における炉内温度を105℃とし、かつ、乾燥において、アルミニウム基材が80〜105℃の温度に曝された時間を22秒間とした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆アルミニウム板を作製し、pHを測定した。
【0042】
以上の実施例1〜4及び比較例1〜7で作製した樹脂被覆アルミニウム板の作製条件、及び洗浄処理表面のpH値を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜4及び比較例1〜7の樹脂被覆アルミニウム板において、樹脂被覆膜形成工程後におけるアルミニウム基材と非クロム塗布型下地皮膜の界面に存在するアルミニウム水和酸化物量、下地皮膜中におけるジルコニウム化合物及び架橋ポリアクリル酸のそれぞれの濃度、ならびに、下地皮膜における傾斜構造の有無を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
アルミニウム水和酸化物量の測定
アルミニウム水和酸化物量は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)による簡易的な定量操作によって測定した。すなわち、偏光反射法(p波)FT−IRによるAl−OH振動(650cm1付近に現れるピーク)の吸収率にてアルミニウム水和酸化物量の検量線を作成することにより、簡便、迅速かつ非破壊的に、アルミニウム水和酸化物の量を決定した。ここで、アルミニウム水和酸化物量については、作製した樹脂被覆アルミニウム板を常温(25℃)の濃硫酸に2分間浸漬し、その後、流水中で洗浄することにより、樹脂被覆アルミニウム板から樹脂被覆膜を脱膜して、アルミニウム基材と下地皮膜の界面に存在する量を測定した。
【0047】
ジルコニウム化合物濃度の測定
非クロム塗布型下地皮膜中のジルコニウム化合物の濃度は、蛍光X線分析(XRF)によって測定した。測定には、リガク社製、3134M3型蛍光X線分析装置を用いた。50kVの管球電圧及び50mAの管球電流で、2θ=22.59°のピーク面積を測定し、予め作成しておいた検量線から濃度をZr量換算として決定した。
【0048】
架橋ポリアクリル酸濃度の測定
非クロム塗布型下地皮膜中の架橋ポリアクリル酸成分の濃度は、固体TOC(全有機炭素)分析によって、加熱温度900℃で測定した。測定には、島津製作所製、TOC−5000A型TOC計を用いた。予め作成しておいた検量線から濃度をポリアクリル酸量換算として決定した。なお、ポリアクリル酸がジルコニウム化合物で架橋されていることは、XPSによって確認した。
【0049】
傾斜構造の確認
非クロム塗布型下地皮膜の厚さ方向におけるジルコニウム化合物濃度を、GDOES(アルゴンガス使用、対象元素=Al、C、Zr)によって測定した。Zrの発光強度の厚さ方向分布に着目し、下地皮膜のアルミニウム基材側の表面でZrの濃度が最大になっているか否か、ならびに、下地皮膜の表面からアルミニウム基材側の表面に向かってZrの濃度が次第に、かつ連続的に増加しているか否かを確認した。一方、架橋ポリアクリル酸については、非クロム塗布型下地皮膜の厚さ方向における濃度をXPSによって測定し、下地皮膜のアルミニウム基材側の表面で架橋ポリアクリル酸の濃度が最小になっているか否か、ならびに、下地皮膜の表面からアルミニウム基材側の表面に向かって架橋ポリアクリル酸の濃度が次第に、かつ連続的に減少しているか否かを確認した。
表2において、ジルコニウム化合物濃度及び架橋ポリアクリル酸の濃度が共に上述のように変化して傾斜構造が形成されている場合を〇、形成されていない場合を×とした。
【0050】
樹脂被覆膜の密着性は、以下のようにして評価した。実施例1〜4及び比較例1〜7の樹脂被覆アルミニウム板を、キャップ成型機により絞り成型加工(キャップ径=38mm)を行い、ミシン目部及びエッジ部の剥離状態を、成型直後、ならびに、レトルト後(125℃×30分)にて目視観察により測定した。ミシン目部及びエッジ部の全長に対する剥離発生部位の長さを%単位で測定した。結果を表3に示す。剥離が発生しない場合を◎、全てにおいて10%以下のものを〇、それ以外を×とした。◎と〇を合格とした。
【0051】
【表3】

【0052】
表2及び3から明らかなように、実施例1〜4では、強加工に対する樹脂密着性が高いためキャップ成型試験で良好な結果を示した。一方、比較例1〜7は、強加工に対する樹脂被覆膜の密着性に劣り、特にレトルト実施後に塗膜剥離が顕著であった。具体的には、比較例1は、ジルコニウムで架橋されたポリアクリル酸が下地皮膜に含有されておらず、比較例2では、フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムのいすれも下地皮膜に含有されていないので、下地皮膜の傾斜構造が形成されなかった。比較例3は、アルミニウム基材と下地皮膜の界面に存在するアルミニウム水和酸化物が多過ぎたため、十分な塗膜密着性が得られなかった。比較例4は、下地皮膜中のジルコニウム化合物の濃度が不十分であるため、比較例5は、下地皮膜中の架橋ポリアクリル酸成分の濃度が不十分であるため、共に傾斜構造が形成されなかった。比較例6は、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムジルコニウム化合物ではなくリン酸ジルコニウムを用いたため、架橋剤としての作用が不十分であり傾斜構造が形成されなかった。比較例7は、アクリル系樹脂としてポリアクリル酸ではなくポリアクリル酸エステルを用いたため、ジルコニウム化合物との反応が不十分であり傾斜構造が形成されなかった。
【0053】
なお、比較例1では、傾斜構造が形成されていなかっただけでなく、フッ化ジルコニウム酸濃度がアルミニウム基材表面に向かって次第に増加していなかった。比較例2でも、傾斜構造が形成されていなかっただけでなく、架橋ポリアクリル酸濃度が下地皮膜表面に向かって次第に増加していなかった。比較例4〜7では、成分濃度の不連続変化により傾斜構造が形成されなかったものの、アルミニウム基材表面に向かってジルコニウム化合物濃度が次第に増加し、かつ、下地皮膜表面に向かってアクリル酸成分が次第に増加していた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
樹脂被覆アルミニウム板において、アルミニウム基材と非クロム塗布型下地皮膜との界面に存在するアルミニウム水和酸化物量を低減することにより、アルミニウムキャップの成型加工後における樹脂被覆膜の高い密着性が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材と、当該基材の少なくとも一方の表面に形成した非クロム塗布型下地皮膜と、当該非クロム塗布型下地皮膜上に形成した樹脂被覆膜とを備えた樹脂被覆アルミニウム板であって、
前記基材表面と非クロム塗布型下地皮膜との界面に存在するアルミニウム水和酸化物の量が50mg/m以下であり、
前記非クロム塗布型下地皮膜が、フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムから成るジルコニウム化合物の少なくともいずれかと、ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸とを含み、前記非クロム塗布型下地皮膜中における前記ジルコニウム化合物濃度が、前記基材側の面から非クロム塗布型下地皮膜表面に向けて連続的に減少し、かつ、前記ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸濃度が、前記基材側の面から非クロム塗布型下地皮膜表面に向けて連続的に増加しており、
前記ジルコニウム化合物濃度がジルコニウム換算で1〜20mg/mであり、かつ、前記ジルコニウム架橋されたポリアクリル酸濃度が1〜20mg/mであることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板。
【請求項2】
アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面をアルカリ脱脂処理する工程と、アルカリ脱脂処理表面を洗浄処理する工程と、洗浄処理表面に非クロム塗布型下地処理を施す工程と、非クロム塗布型下地処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と、を含む樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、
前記洗浄処理工程が、前記アルカリ脱脂処理表面を20〜80℃の洗浄液で洗浄することを含み、
前記非クロム塗布型下地処理工程が、フッ化ジルコニウム酸及び炭酸ジルコニウムアンモニウムの少なくともいすれかと、ポリアクリル酸とを含有する水溶性の非クロム塗布型下地処理剤を、前記洗浄処理表面に塗布することを含むことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
【請求項3】
前記非クロム塗布型下地処理工程が、前記洗浄処理表面に前記非クロム塗布型下地処理剤を塗布した後に前記非クロム塗布型下地処理表面を乾燥することを含み、前記非クロム塗布型下地処理表面の乾燥温度は100℃以下であって、80〜100℃である時間が20秒以内である、請求項2に記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。

【公開番号】特開2007−176072(P2007−176072A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378889(P2005−378889)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】