説明

樹脂被覆金属板及びその製造方法

【課題】高速プレス機で連続成形するような場合にも耐えうる十分な成形性と、良好な耐摩耗性とを兼ね備えた樹脂被覆金属板を提供する。
【解決手段】ワックスとベース樹脂とを含む塗料が金属板の少なくとも片面に被覆されて樹脂被覆層を形成してなる樹脂被覆金属板において、前記樹脂被覆層の表面に現われるワックス粒の表面占有率が20〜90%であり、前記樹脂被覆層の厚さ方向に沿った任意の断面に現われるワックス粒の断面占有率が0.5%以上で10%未満であり、かつ、前記任意の断面における任意の500μm長さの範囲に一個以上のワックス粒が存在することを特徴とする樹脂被覆金属板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶エンド材、缶ボディ材、電気電子機器部材、自動車用ボディ材、建材等に使用される樹脂被覆金属板に関し、特に、高速連続プレス加工により成形を施される樹脂被覆金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂被覆金属板の成形加工時には、成形加工を容易にするために金属板表面に潤滑性が付与される。これは、通常、潤滑剤を金属板に塗布することにより行われるが、この方法では、潤滑剤が飛散するので取扱いが容易でなく、更に成形加工後に潤滑剤を除去する必要があるので工程やコストの増大を招いていた。また、金属板に塗料を塗布し、焼付け後にワックスを塗布する方法も提案されているが、成形加工時にワックス汚れが生じるなどの問題があった。
【0003】
このような問題に対して、さまざまな提案がなされている。例えば、金属板に塗装を施す際に、固体潤滑剤(ワックス)を添加した塗料を塗布して金属表面に樹脂被覆層を形成し、金属板表面自体の潤滑性を向上させる方法が種々提案されている。これらには、ワックスの粒径を規定したもの(下記特許文献1〜3)、大粒径と小粒径の2種類のワックスを用いるもの(下記特許文献4、5)、塗膜表面におけるワックス粒子の面積率等を規定したもの(下記特許文献6〜8)、ワックスを含有する塗料を塗布後、焼付けを行う際の焼付け条件を規定したもの(下記特許文献9)等がある。
【特許文献1】特開平6−305074号公報
【特許文献2】特開2000−265111号公報
【特許文献3】特許第3133607号公報
【特許文献4】特開平5−237449号公報
【特許文献5】特開平8−1858号公報
【特許文献6】特許第3214228号公報
【特許文献7】特開平10−29266号公報
【特許文献8】特開平10−52881号公報
【特許文献9】特開平11−244778号公報
【0004】
特許文献1には、平均粒径が1.3μm以下の潤滑剤微粒子を5〜25体積%含有し、膜厚が0.7〜10μmの水溶性高分子皮膜が最表面に形成された自動車パネル用表面処理Al又はAl合金材が記載されている。このAl又はAl合金材では、潤滑剤微粒子の平均粒径を1.3μm以下に制限することにより粒子が表面に比較的多く分布するようになるので加工性は良好となるが、耐摩耗性が確保できなくなる。また、平均粒径のみが規定され、粒径分布が規定されていないことからも、良好な耐摩耗性を得ることは困難である。
【0005】
特許文献2には、平均粒径0.01〜0.2μmのポリエチレンワックスを含有する金属材料用水系表面処理剤が示されている。この文献では、摺動性の観点からポリエチレンワックスの粒径を0.2μm以下にするとしているが、これをもってしても十分な摺動性は得られていない。
【0006】
特許文献3には、樹脂被覆アルミニウム板においてワックスの平均粒径を10μm以下とし、かつ、樹脂層の乾燥膜厚の1〜10倍の範囲とすることが示されている。この文献では、プレス加工時の潤滑性の観点からワックスの平均粒径を上記のように規定しているが、これをもってしても十分な潤滑性は得られていない。
【0007】
特許文献4には、潤滑樹脂処理鋼板として、大粒径ポリオレフィンワックス(平均粒径3〜5μm、粒径範囲1〜7μm)と小粒径ポリオレフィンワックス(平均粒径1μm以下、最大粒径3μm以下)とを5:95〜95:5(重量比)の比率で配合したワックスを含有する樹脂を被覆した鋼板が示されている。しかしながら、上記の大粒径ワックスでは粒径が大き過ぎてワックス粒の数が少なくなり、結果として耐摩耗性が却って低下するという難点があった。更に、大粒径と小粒径との2種類のワックスの配合比において一方を5%以上としているが、配合比が5%に近い範囲では、その一方のワックスの効果が十分に発揮されず、良好な成形性や耐摩耗性が得られない。
【0008】
特許文献5には、有機樹脂皮膜を形成した表面処理鋼板として、有機樹脂皮膜が固形潤滑剤3〜40重量%を含有し、当該固形潤滑剤は大粒径(有機樹脂皮膜の膜厚の50〜110%)の潤滑剤3〜50重量%と小粒径(有機樹脂皮膜の膜厚の5%以上で50%未満)の潤滑剤97〜50重量%との混合物であるとしたものが記載されている。しかしながら、このように樹脂皮膜の膜厚を基準に潤滑剤の粒径を規定した場合、潤滑剤粒子が必ずしも所望の均一な分布を示すとは限らず、潤滑性と耐摩耗性を十分に得ることはできない。
【0009】
特許文献7、8には、樹脂皮膜上に固体潤滑剤が固着され、該固体潤滑剤が平面視において占める面積率や樹脂皮膜表面からの突出高さを所定範囲とした樹脂被覆金属板が記載されている。しかしながら、これらの樹脂被覆金属板では、樹脂被覆表面における潤滑剤の分散状態のみが規定され、樹脂被覆内部の潤滑剤の分散状態が考慮されていないため、変形量の大きなプレス加工において十分な成形加工性が得られず、また、樹脂被覆層の耐摩耗性にも劣るという問題があった。
【0010】
特許文献9には、金属帯板にワックスを含有する塗料を塗布し、焼付けを行う缶蓋用アルミニウム塗装板の製造方法において、焼付けを行う際に、金属帯板の温度を焼付け開始5秒後で110℃以下、10秒後で180℃以下となるように制御することが記載されている。しかしながら、焼付け条件において添加するワックスの組成が考慮されていないため、樹脂被覆層内にワックスが適正に分布せず、アルミニウム塗装板の成形加工性や耐摩耗性が十分に得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上に鑑み、本発明は、高速プレス機で連続成形するような場合にも耐えうる十分な成形性と、良好な耐摩耗性とを兼ね備えた樹脂被覆金属板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は請求項1において、
ワックスとベース樹脂とを含む塗料が金属板の少なくとも片面に被覆されて樹脂被覆層を形成してなる樹脂被覆金属板において、
前記樹脂被覆層の表面に現われるワックス粒の表面占有率が20〜90%であり、
前記樹脂被覆層の厚さ方向に沿った任意の断面に現われるワックス粒の断面占有率が0.5%以上で10%未満であり、かつ、前記任意の断面における任意の500μm長さの範囲に一個以上のワックス粒が存在することを特徴とする樹脂被覆金属板とした。
【0013】
本発明は請求項2において、
粒状ワックスとベース樹脂とを含む塗料を金属板の少なくとも片面に被覆して樹脂被覆層を形成する樹脂被覆金属板の製造方法であって、
前記ベース樹脂の重量をWとし、
前記ワックスの総重量をWとし、粒径1.5μm以下であって平均粒径0.3〜1.0μmの小粒径ワックスの重量をWとし、粒径2.0〜5.0μmであって平均粒径2.5〜3.0μmの大粒径ワックスの重量をWとしたときに、0.006≦W/W≦0.2、(W+W)/W≧0.98、0.1≦W/W≦0.9となるように、前記ベース樹脂に対してワックスを配合するようにした樹脂被覆金属板の製造方法とした。
【0014】
本発明は請求項3において、
ワックスとベース樹脂とを含む塗料を金属板の少なくとも片面に被覆して焼付けることにより、樹脂被覆層を形成する樹脂被覆金属板の製造方法であって、
前記ワックスが表面エネルギーの互いに異なる少なくとも2種類のワックスからなるものであって、前記ベース樹脂の重量、表面エネルギー値及び焼付温度を、W、E及びTとし、前記ワックスの総重量をWとし、前記少なくとも2種類のワックスのうち表面エネルギーが最小のもの及び最大のものの表面エネルギー値をE及びEとしたときに、E−E≧3mJ/m、E≧E+12mJ/m、220℃≦T≦300℃であり、0.006≦W/W≦0.2、となるように前記ベース樹脂に対してワックスを配合し、
焼付け開始から前記金属板の温度が100℃及び200℃に到達するまでの時間をt100及びt200としたときに、2秒≦t100≦20秒、5秒≦t200≦60秒となるように焼付けを行なうことを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法とした。
【0015】
本発明は請求項4において、
少なくともポリエチレンワックスを含むワックスとベース樹脂とを含む塗料を金属板の少なくとも片面に被覆して焼付けることにより、樹脂被覆層を形成する樹脂被覆金属板の製造方法であって、
前記ワックスが表面エネルギーの互いに異なる少なくとも2種類のワックスからなるものであって、前記ベース樹脂の重量、表面エネルギー値及び焼付温度を、W、E及びTとし、前記ワックスの総重量をWとし、前記少なくとも2種類のワックスのうち表面エネルギーが最小のもの及び最大のものの表面エネルギー値をE及びEとしたときに、E−E≧3mJ/m、E≧E+12mJ/m、220℃≦T≦300℃であり、0.006≦W/W≦0.2、となるように前記ベース樹脂に対してワックスを配合し、
焼付け開始から前記金属板の温度が100℃及び200℃に到達するまでの時間をt100及びt200としたときに、5秒≦t100≦20秒、10秒≦t200≦60秒となるように焼付けを行なうことを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂被覆層の表面と内部におけるワックスの分散状態をバランスよく制御することにより、良好なワックス堆積性や耐磨耗性を保持しつつ優れた成形加工性を示す樹脂被覆金属板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の特徴は、粒状のワックスを配合したベース樹脂を含む塗料が少なくとも片面に被覆されて樹脂被覆層を形成してなる樹脂被服金属板において、ワックス粒を樹脂被覆層の表面と内部にバランスよく分散させることにより、優れた成形性と耐摩耗性を共に備えた樹脂被覆金属板が得られることにある。
【0018】
A.金属板
本発明で用いる金属板としては、アルミニウム板、アルミニウム合金板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼鈑、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼鈑、ステンレス鋼鈑等が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
B.樹脂被覆層
本発明では、金属板の少なくとも片面に樹脂被覆層が形成される。樹脂被覆層は、ベース樹脂とワックスを配合して溶媒である有機溶剤や水等に溶解又は分散した塗料を金属板表面に塗布し、乾燥後に焼付けすることによって形成される。
【0020】
B−1.ベース樹脂
樹脂被覆層のベース樹脂としては、アクリル変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−ユリア樹脂、エポキシ−フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
なお、金属板に樹脂を被覆する前に金属板の表面に下地処理を施して下地皮膜を形成することにより、樹脂被覆層の密着性が良好となり成形加工性の向上に寄与する。下地処理としては、リン酸ジルコニウム処理やリン酸チタニウム処理などのノンクロメート処理、リン酸クロメート処理などのクロメート処理を用いることによって、下地皮膜が形成される。更に、下地処理の前に、金属板をアルカリ脱脂処理するのが好ましい。
【0021】
B−2.ワックス
本発明において用いるワックスは、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン等の粒状であり、これらを単独或いは2種類以上組み合わせて用いられる。
【0022】
B−3.ワックス粒の表面占有率
本発明において、樹脂被覆金属板の優れた成形性と耐磨耗性を達成するには、樹脂被覆層表面に現われるワックス粒の表面占有率を20〜90%とする必要がある。ワックス粒の表面占有率が20%未満では、ワックス粒による十分な潤滑性が得られず成形加工性が低下する。また、表面占有率が90%を超えると、成形加工時に金型にワックス粒が堆積する不具合が生じ易くなる。表面占有率は、より好ましくは40〜80%である。
【0023】
樹脂被覆表面におけるワックス粒の表面占有率とは、樹脂被覆層を上から平面として見たときに、樹脂被覆層の全表面積に対する樹脂被覆層表面に現われているワックス粒の占める面積の割合として規定される。ワックス粒の表面占有率は、樹脂被覆層表面に金などの導電性を付与する物質を蒸着又はスパッタリングなどによりコーティングし、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した像を画像解析することにより求めることができる。例えば、500〜2000倍の観察倍率で、100μm×100μm以上の視野を5か所以上計測してその平均値を占有率とする。
【0024】
B−4.ワックス粒の断面占有率
樹脂被覆金属板の優れた成形性と耐磨耗性を達成するには、本発明において更に、樹脂被覆層の厚さ方向に沿った任意の断面に現われるワックス粒の断面占有率を0.5%以上10%未満とする必要がある。この断面占有率が0.5%未満では、樹脂被覆層の十分な耐摩耗性が得られない。また、10%を超えると、金属板と樹脂被覆層との密着性が低下し、樹脂被覆金属板の成形加工性や耐食性の悪化を招く。断面占有率は、より好ましくは1〜5%である。
【0025】
樹脂被覆層内部に存在するワックスの断面占有率とは、樹脂被覆層の被覆面に垂直な任意の断面を見たとき、この断面において現われるワックス粒が占める面積の全断面積に対する割合として規定される。断面に現われるワックス粒とは、樹脂被覆層内部において連続せずに独立して存在する複数のワックス粒子である。この断面占有率は、樹脂被覆層を断面に平行な厚さ100nm程度の超薄片に加工し、ルテニウム酸などの染色剤を用いて染色し、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察した像を画像解析することにより求めることができる。例えば、10000倍の観察倍率で長さ100μm以上の視野を5か所以上計測してその平均値を断面占有率とする。
【0026】
B−5.ワックス粒の存在数
樹脂被覆金属板の優れた成形性と耐磨耗性を達成するには、本発明において更に、樹脂被覆層の厚さ方向の任意断面における任意の500μm長さの範囲に、1個以上のワックス粒が存在する必要がある。これにより、樹脂被覆金属板の優れた成形性と耐摩耗性が達成される。樹脂被覆層断面における任意の500μm長さの範囲に1個以上のワックス粒が存在していなければ、ワックス粒の分散均一性が不足し、樹脂被覆層の十分な耐摩耗性が得られない。このようなワックス粒の個数は、TEMで観察した像を画像解析することにより求めることができる。例えば、10000倍の観察倍率で長さ500μmの視野を10か所以上計測して、各視野に存在するワックス粒の個数を求めた。
【0027】
C.ワックス粒の分散状態を達成するための第1の製造条件
C−1.ベース樹脂に対するワックス粒の配合比
樹脂被覆層における上述のワックス粒の表面占有率、断面占有率及び存在数は、以下に示す第1の製造条件を満たすことにより達成される。すなわち、大きな粒径を有するワックス粒(大粒径ワックス)と小さな粒径を有するワックス粒(小粒径ワックス)とを所定の比率で配合し、かつ、総ワックスのベース樹脂に対する配合比を0.6〜20重量%とすることで達成される。前記配合比が0.6重量%未満では、ワックスの量が不足して樹脂被覆金属板の成形性や耐摩耗性が得られない。1重量%以上とすることが特に効果的である。5重量%を超えると、添加量の割には効果の増大は鈍くなるが一定の効果は得られる。一方、20重量%を超えると、プレス成形加工時に金型にワックスが堆積して正常なプレス成形ができなくなり、汚れが付着する等の弊害も生じるので、20重量%以下とする必要がある。
【0028】
C−2.粒状ワックスの粒径分布
大粒径ワックスと小粒径ワックスの粒径分布は、小粒径ワックスでは1.5μm以下、大粒径ワックスでは2.0〜5.0μmとする必要がある。また、小粒径ワックスの平均粒径を0.3〜1.0μmとし、大粒径ワックスの平均粒径を2.5〜3.0μmとする必要がある。
【0029】
ベース樹脂とワックス粒との配合比やワックスの粒径を上記のように規定する理由は、次の通りである。本発明者らは、小粒径ワックスを添加した被覆層の表面エネルギーを測定したところ、ワックスを添加しない被覆層や大粒径ワックスのみを添加した被覆層に比べて表面エネルギーが小さいことを見出し、小粒径ワックスは被覆層の表面に多く存在し易い傾向があることが判明した。これは、被覆層の焼付け時に、粒径の小さいワックス粒ほど表面に浮き出易いことによるため考えられる。表面に存在するワックス粒は、樹脂被覆金属板の成形加工性に寄与することができる。
【0030】
このように被覆層表面に浮き出易い性質を発揮するためには、小粒径ワックスの粒径を1.5μm以下とする必要がある。1.5μmを超えると、ワックス粒の被覆層表面への分布量が不十分となり、樹脂被覆金属板の成形性が悪化するためである。また、小粒径ワックスの平均粒径は、0.3〜1.0μmとする必要がある。平均粒径が0.3μm未満では、小粒径ワックスの必要個数が多くなり過ぎて製造上好ましくなく、1.0μmを超えるような平均粒径では、ワックス粒の被覆層表面への分布量が不十分となり、樹脂被覆金属板の成形性が悪化するためである。
【0031】
また、本発明者らは、上記の小粒径ワックスを添加した被覆層の表面エネルギーについての知見から、大粒径ワックスを添加した被覆層においては被覆層の表面エネルギーが高くなり、ワックス粒は表面に浮き出るよりは被覆層内部に留まる傾向があることの知見を得た。ワックス粒が被覆層内部に多く存在するため、被覆層が摩耗しても被覆層中から適度にワックスが露出するので、常に摩擦係数の低く摩耗し難い状態を保持することが可能となる。このためには、大粒径ワックスは2.0μm以上の粒径である必要がある。但し、ワックス粒径が5.0μmを超えると、ワックス粒が大き過ぎて必然的に存在個数が少なくなるため、被覆層が摩耗してもワックスが露出する確率が小さくなり却って耐摩耗性が悪くなる。
また、大粒径ワックスの平均粒径は、2.5〜3.0μmとする必要がある。平均粒径が2.5μm未満又は3.0μmを超えると、ワックス粒が被覆層内部に留まる効果が十分に発揮されないからである。
【0032】
C−3.大小粒状ワックスの重量比
上述のような大粒径ワックスと小粒径ワックスの作用を共に発揮させて本発明の効果を得るためには、ワックスの配合比を次のように規定する必要がある。即ち、ワックス粒の総重量Wに対し、小粒径ワックス粒の重量をW、大粒径ワックス粒の重量をWとしたときに、(W+W)/W≧0.98、かつ、0.1≦W/W≦0.9であるものとする。これらの範囲外では、両方のワックスの作用を共に発揮させることができず、成形性や耐摩耗性のいずれか又は両方が十分に得られないことになる。より好ましくは、0.2≦W/W≦0.6である。なお、(W+W)/W=1.0の場合には、W:W=10:90〜90:10となる。
なお、大粒径ワックスと小粒径ワックスの種類は、同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
D.ワックス粒の分散状態を達成するための第2の製造条件
樹脂被覆層における上述のワックス粒の表面占有率、断面占有率及び存在数は、上記第1の製造条件に代えて以下に示す第2の製造条件を満たすことによっても達成される。すなわち、
・総ワックス粒のベース樹脂に対する配合比を0.6〜20重量%とし、
・表面エネルギーが互いに異なる少なくとも2種類のワックス粒を使用し、上記少なくとも2種類のワックス粒は、ベース樹脂の表面エネルギー値をEとし、少なくとも2種類のワックス粒のうち表面エネルギーが最小のもの及び最大のものの表面エネルギー値をそれぞれE及びEとした場合に、E−E≧3mJ/m、E≧E+12mJ/mであり、かつ、前記ベース樹脂の焼付温度(板到達温度「PMT」)が220〜300℃であり、
・焼付け開始から金属板の温度が100℃に到達するまでの時間が2〜20秒、かつ、焼付け開始から金属板の温度が200℃に到達するまでの時間が5〜60秒である、という製造条件を採用するものである。
【0034】
D−1.ベース樹脂に対するワックス粒の配合比
ベース樹脂に対するワックス粒の配合比は上記C−1に示すとおりである。
D−2.表面エネルギー
ワックスの表面エネルギーがベース樹脂の表面エネルギーよりも低いほど、ワックスが樹脂被覆層の表面に露出し易い。ワックスの最大表面エネルギーからベース樹脂の表面エネルギーを差し引いた値が12mJ/m未満では、ワックスが樹脂被覆層表面に露出し難く、樹脂被覆層におけるワックスの表面占有率が20%未満となり、潤滑性が低下して十分な成形加工性が得られない。
また、少なくとも2種類のワックスの表面エネルギー差(表面エネルギーが最大のものと最小のものとの差)が3mJ/m未満では、ワックスが樹脂被覆層の表面と内部にバランスよく分布せず、成形加工性と耐摩耗性の両方を満足することができない。
【0035】
なお、表面エネルギーは、接触角計を用いて対水接触角と対ヨウ化メチレン接触角を測定し、下記式により算出される。
γ=6.281cosθ+1.132cosθ−0.1541、ここで、γは表面エネルギー(mJ/m)、θは対水接触角(rad)、θは対ヨウ化メチレン接触角(rad)である。
【0036】
D−3.焼付け条件
焼付け条件については、以下のようにすることが必要である。焼付け開始から金属板の温度が100℃に到達するまでの時間t100を2〜20秒とし、かつ、同じく200℃に到達するまでの時間t200を5〜60秒とするものである。焼付け開始から2秒未満で金属板の温度が100℃に到達したり、又は5秒未満で200℃に到達すると、ワックスが樹脂被覆層表面に露出し難く、ワックスを樹脂被覆層表面と内部にバランスよく分布させることができず、成形加工性と耐摩耗性の両方を満足することができないためである。
【0037】
ワックスに少なくともポリエチレンワックスが含有される場合には、焼付け開始から金属板の温度が100℃に到達するまでの時間t100を5〜20秒とし、かつ、同じく200℃に到達するまでの時間t200を10〜60秒とする。これは、ポリエチレンワックスは樹脂被覆層表面に露出し難いため、昇温速度を遅くする必要があるからである。焼付け開始から5秒未満で金属板の温度が100℃に到達したり、又は10秒未満で200℃に到達したのでは、ワックスが樹脂被覆層表面に露出し難く、ワックスを樹脂被覆層表面と内部にバランスよく分布させることができず、成形加工性と耐摩耗性の両方を満足することができないからである。
【0038】
なお、金属板の温度が100℃又は200℃に到達する時間が上記で規定した下限の時間以上であればワックスをバランスよく樹脂被覆層内に分布させることができる。しかしながら、それ以上時間をかけても効果は飽和してしまうため、実用的には100℃に到達する時間は20秒以内、200℃に到達する時間は60秒以内とするのがよい。また、総焼付け時間は100秒以内に設定するのが好ましい。
【0039】
E.樹脂被覆量
樹脂被覆層は、その被覆量が0.5〜20g/mのときに成形加工性や他の特性も良好となる。0.5g/m未満では、ワックス分布状態を前記したように規定しても成形加工性が低下し耐食性にも劣る。被覆量が20g/mを超えると、樹脂被覆層の密着性の低下により成形加工性が低下し、更にコスト高になるので経済的ではない。樹脂被覆量は、好ましくは1〜15g/mである。なお、樹脂被覆層の被覆量は硫酸脱膜による皮膜質量試験法を用いて測定される。
【実施例】
【0040】
実施例1〜23及び比較例1〜25
金属板として、板厚0.8mmのアルミニウム合金板(JIS A5182−O)を用いた。上記合金板の両面を市販のアルカリ脱脂液((株)日本ペイント社製、サーフクリーナー420N−2)を用いて脱脂した後、下地処理として市販のリン酸クロメート液((株)日本ペイント社製、アルアサーフ45/405)を用いて付着量としてCr量換算で20mg/mの化成処理を施した。次いで、ワックスと、ベース樹脂であるエポキシ樹脂とを溶媒である水と有機溶剤との混合溶液に分散したエポキシ系塗料を、連続塗装ラインにおいてロールコーターによって合金板の両面に塗布し、焼付け時間60秒、焼付け温度260℃で焼付け処理を施して樹脂被覆層を形成し、樹脂被覆金属板を作製した。ワックスには、小粒径と大粒径のポリエチレンワックスを混合して用いた。樹脂被覆量は50g/mであった。樹脂被覆量は、硫酸脱膜による皮膜質量試験法により測定した。すなわち、100mm×100mmの樹脂被覆板を濃硫酸に浸漬し樹脂被服層を溶解し、その前後の重量を測定することにより樹脂被覆量を求めた。
【0041】
大小ワックスの粒径及び平均粒径、ワックスの総重量に対する小径ワックスの重量比、小径ワックスと大径ワックスの重量比、ベース樹脂に対する総ワックス量の重量比、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率、ワックスの存在個数、ならびに、作製した樹脂被覆金属板の性能評価(成形加工性、耐磨耗性、ワックス堆積性)を、実施例1〜23について表1に、比較例1〜25について表2にそれぞれ示す。なお、ワックスは小径ワックスと大径ワックスのみを含有するので、(W+W)/W=1である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
ワックスの粒径及び平均粒径の測定、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率、ワックス粒の存在個数、ならびに、作製した樹脂被覆金属板の性能評価(成形加工性、耐磨耗性、ワックス堆積性)は、下記のようして行なった。
【0045】
粒径分布と平均粒径
ワックス粒の粒径の分布は、(株)堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて測定した。また、ワックス粒の平均粒径は、体積基準による算術平均により算出した。
【0046】
ワックスの表面占有率
作製した樹脂被覆金属板の樹脂被覆層表面に金を蒸着してコーティングし、SEM(走査型電子顕微鏡)によって、コーティング面における100μm×100μm以上の視野を観察倍率1000倍で5か所以上観察した。その観察像を画像解析することにより、各視野において、観察部分の全面積に対するワックス占有面積部分の比率を求め、その平均値としてワックス表面占有率を算出した。
【0047】
ワックスの断面占有率
作製した樹脂被覆金属板の樹脂被覆層を厚さ方向に沿った平行な断面によって切り取られる厚さ100nm程度の超薄片に加工し、ルテニウム酸によって染色した。TEM(透過型電子顕微鏡)によって、この超薄片の断面における100μm以上の視野を観察倍率10000倍で5か所以上観察した。その観察像を画像解析することにより、各視野において、観察部分の全面積に対するワックスの占有面積部分の比率を求め、その平均値としてワックス断面占有率を算出した。
【0048】
ワックスの存在範囲
作製した樹脂被覆金属板の樹脂被覆層を厚さ方向に沿った断面を、TEMにより観察した。その観察像を画像解析することにより、断面における任意の500μm長さの範囲に存在するワックス粒の個数を求めた。
【0049】
成形加工性
成形性の評価として、成形試験機にて円筒深絞りを行い、成形破断高さを測定して評価した。成形条件は、パンチ径:φ40mm、肩R4.5mm、絞りダイ:φ42.5mm、肩R8.0mm、ブランク径:φ84mm、しわ押さえ力:2.0tonf、成形速度:20mm/秒であった。成形破断高さが7mm以上の場合、実使用における加工性が非常に優れるので◎とし、成形破断高さが5mm以上で7mm未満の場合、実使用における加工性は問題ないので○とし、成形破断高さが5mm未満の場合、実使用において割れなどが発生し正常にプレス成形できないので×とした。◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
【0050】
耐摩耗性
耐磨耗性評価はヘイドン式摩擦磨耗試験機で行った。同一の場所を接触子で繰り返し摺動し、摩擦係数が0.2を超えるまでの摺動回数を測定した。摺動条件は、接触子:φ3mm超硬ボール、摺動幅:10mm、荷重:500gf、摺動速度:10mm/秒であった。摺動回数が500回以上の場合、実使用における耐摩耗性が非常に優れることから◎とし、摺動回数が200回以上500回未満の場合、実使用における耐摩耗性は問題ないので○とし、摺動回数が200回未満の場合、実使用における耐摩耗性が不足し、塗膜の一部が削れ耐食性や意匠性が悪化するので×とした。◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
【0051】
ワックス堆積性
ワックス堆積性は、成形加工性に使用した金型を用いて、1万枚の連続プレス加工を行った後に金型に付着しているワックス量を測定して評価した。付着量が3mg未満を◎とし、3mg以上で7mg未満を○とし、7mg以上を×とした。◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
【0052】
表1に示すように、実施例1〜23では、請求項2に規定する要件を全て満たしているので、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率及びワックス粒の存在個数のいずれもが請求項1に規定する要件を満たすこととなり、その結果、作製した樹脂被覆金属板の性能としての成形加工性、耐磨耗性及びワックス堆積性のいずれの評価項目も合格であった。
【0053】
表2に示すように、比較例1〜4では、ワックスの総重量に対する小径ワックスの重量比が所定の要件を満たしていなかった。比較例5、6、10、11、15、16では、大径ワックスの粒径及び平均粒径が所定の要件を満たしていなかった。比較例7、8、13、18では、小径ワックスの粒径及び平均粒径が所定の要件を満たしておらず、比較例9、14、19では、大小径ワックスの粒径及び平均粒径が所定の要件を満たしていなかった。比較例20〜23では、ワックスの総重量に対する小径ワックスの重量比、ならびに、小径ワックスと大径ワックスの重量比が所定の要件を満たしていなかった。比較例24、25では、ベース樹脂に対する総ワックス量の重量比が所定の要件を満たしていなかった。
このように、比較例1〜25では、請求項2に規定する要件を全て満たしていないので、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率及びワックス粒の存在個数のいずれかが請求項1に規定する要件を満たさず、その結果、作製した樹脂被覆金属板の性能としての成形加工性、耐磨耗性及びワックス堆積性のいずれかの評価項目が不合格であった。
【0054】
実施例24〜33及び比較例26〜36
金属板として、板厚0.25mmのアルミニウム合金板(JIS A5182−H19)を用いた以外は実施例1と同様にして、合金板の両面をアルカリ脱脂及び下地処理を行った。次いで、ワックスと、ベース樹脂であるエポキシ樹脂とを溶媒である水と有機溶剤の混合溶液に分散したエポキシ系塗料を、連続塗装ラインにおいてロールコーターによって合金板の両面に塗布し、焼付け時間60秒、焼付け温度260℃で焼付け処理を施して樹脂被覆層を形成し、樹脂被覆金属板を作製した。焼付け条件として、総焼付け時間、100℃到達時間及び200℃到達時間を種々に設定した。ワックスには、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、ラノリンワックス、パラフィンワックスからなる4種類のものを1種又は2種以上混合して用いた。
【0055】
このようにして作製した樹脂被覆金属板における、ワックス性状(種類、表面エネルギー、ベース樹脂に対するワックス量の重量比、ワックスの最大表面エネルギーと最小表面エネルギーの差、ワックスの最小表面エネルギーとベース樹脂の表面エネルギーの差)、焼付け条件、樹脂被覆量、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率、ワックスの存在個数、性能評価(成形加工性、耐磨耗性、ワックス堆積製、樹脂被覆層の密着性)を、実施例24〜33について表3に、比較例26〜36ついて表4にそれぞれ示す。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
樹脂被覆量、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率、ワックスの存在個数、ならびに、性能評価(成形加工性、耐磨耗性、ワックス堆積製、樹脂被覆層の密着性)は、以下のようにして測定した。
【0059】
樹脂被覆量
樹脂被覆層の被覆量は実施例1と同様に、上述の硫酸脱膜による皮膜質量試験法により測定した。
【0060】
ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率、ワックスの存在個数
これらは、実施例1と同様にして測定した。
【0061】
成形加工性
実施例1と同様にして成形破断高さを測定した。測定条件は、パンチ径:φ33mm、肩R4.5mm、絞りダイ:φ33.6mm、肩R4.0mm、ブランク径:φ68mm、しわ押さえ力:1.0tonf、成形速度:20mm/秒であった。なお、評価は、成形破断高さが7mm以上の場合を◎とし、5mm以上で7mm未満の場合を○とし、5mm未満の場合を×とした。◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
【0062】
耐摩耗性
実施例1と同様にして、摺動回数を測定して耐摩耗性を評価した。
【0063】
ワックス堆積性
実施例1と同様にして、ワックス量を測定して評価した。
【0064】
樹脂被覆層の密着性
樹脂被覆層の密着性を、下記(a)、(b)の各方法によって一次密着性と二次密着性により評価した。
(a)一次密着性:JIS K 5400−8−5−2に記載された方法に準じてカッターナイフを用いて、樹脂被覆層表面に1mm間隔で100マスの碁盤目状の切り傷を付け、テープ剥離試験を行った。
(b)二次密着性:沸騰水中に30分間浸漬し、取出して1時間放置した後、一次密着性と同様に試験を行った。
一次、二次とも、JIS K 5400−8−5−2に準じて評価を行った。全く剥離が認められない場合を評価点数10の◎とし、欠損部の面積が全正方形面積の5%未満の場合を評価点数8の○とし、欠損部の面積が全正方形面積の5%以上の場合を評価点数6以下の×とした。◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
【0065】
表3に示すように、実施例24〜33では、請求項3に規定する要件を全て満たしているので、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率及びワックス粒の存在個数のいずれもが請求項1に規定する要件を満たすこととなり、その結果、作製した樹脂被覆金属板の性能としての成形加工性、耐磨耗性、ワックス堆積性及び密着性のいずれの評価項目も合格であった。
【0066】
表4に示すように、比較例26〜28では、1種類のワックスしか用いていないのでワックスの最大表面エネルギーと最小表面エネルギーの差がゼロとなり、表面エネルギー差が所定の要件を満たしていなかった。更に、比較例27では、ワックスの最小表面エネルギーとベース樹脂の表面エネルギーの差に関する所定要件も満たしていなかった。比較例29では、ワックスの最大表面エネルギーと最小表面エネルギーの差に関する所定要件を満たしていなかった。比較例30、32では、ベース樹脂に対する総ワックス量の重量比が所定の要件を満たしていなかった。比較例31では、ワックスの最小表面エネルギーとベース樹脂の表面エネルギーの差に関する所定要件を満たしていなかった。比較例33は請求項3の比較例を示すものであって、焼付け条件における100℃到達時間と200℃到達時間が所定の要件を満たしていなかった。比較例34〜36は請求項4の比較例を示すものである。比較例34では、焼付け条件における100℃到達時間が所定の要件を満たしていなかった。比較例35では、焼付け条件における200℃到達時間が所定の要件を満たしていなかった。比較例36では、焼付け条件における100℃到達時間と200℃到達時間が所定の要件を満たしていなかった
このように、比較例26〜36では、請求項3又は4に規定する要件を全て満たしていないので、ワックスの表面占有率、ワックスの断面占有率及びワックス粒の存在個数のいずれかが請求項1に規定する要件を満たさず、その結果、作製した樹脂被覆金属板の性能としての成形加工性、耐磨耗性、ワックス堆積性及び密着性のいずれかの評価項目が不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
樹脂被覆層におけるワックス粒の表面占有率、断面占有率及び断面におけるワックス粒の存在数を所定範囲に設定することにより、高速プレス機での連続成形にも耐えうる十分な成形性と、良好な耐摩耗性とを備えた樹脂被覆金属板を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスとベース樹脂とを含む塗料が金属板の少なくとも片面に被覆されて樹脂被覆層を形成してなる樹脂被覆金属板において、
前記樹脂被覆層の表面に現われるワックス粒の表面占有率が20〜90%であり、
前記樹脂被覆層の厚さ方向に沿った任意の断面に現われるワックス粒の断面占有率が0.5%以上で10%未満であり、かつ、前記任意の断面における任意の500μm長さの範囲に一個以上のワックス粒が存在することを特徴とする樹脂被覆金属板。
【請求項2】
粒状ワックスとベース樹脂とを含む塗料を金属板の少なくとも片面に被覆して樹脂被覆層を形成する樹脂被覆金属板の製造方法であって、
前記ベース樹脂の重量をWとし、
前記ワックスの総重量をWとし、粒径1.5μm以下であって平均粒径0.3〜1.0μmの小粒径ワックスの重量をWとし、粒径2.0〜5.0μmであって平均粒径2.5〜3.0μmの大粒径ワックスの重量をWとしたときに、0.006≦W/W≦0.2、(W+W)/W≧0.98、0.1≦W/W≦0.9となるように、前記ベース樹脂に対してワックスを配合することを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法。
【請求項3】
ワックスとベース樹脂とを含む塗料を金属板の少なくとも片面に被覆して焼付けることにより、樹脂被覆層を形成する樹脂被覆金属板の製造方法であって、
前記ワックスが表面エネルギーの互いに異なる少なくとも2種類のワックスからなるものであって、前記ベース樹脂の重量、表面エネルギー値及び焼付温度を、W、E及びTとし、前記ワックスの総重量をWとし、前記少なくとも2種類のワックスのうち表面エネルギーが最小のもの及び最大のものの表面エネルギー値をE及びEとしたときに、E−E≧3mJ/m、E≧E+12mJ/m、220℃≦T≦300℃であり、0.006≦W/W≦0.2、となるように前記ベース樹脂に対してワックスを配合し、
焼付け開始から前記金属板の温度が100℃及び200℃に到達するまでの時間をt100及びt200としたときに、2秒≦t100≦20秒、5秒≦t200≦60秒となるように焼付けを行なうことを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法。
【請求項4】
少なくともポリエチレンワックスを含むワックスとベース樹脂とを含む塗料を金属板の少なくとも片面に被覆して焼付けることにより、樹脂被覆層を形成する樹脂被覆金属板の製造方法であって、
前記ワックスが表面エネルギーの互いに異なる少なくとも2種類のワックスからなるものであって、前記ベース樹脂の重量、表面エネルギー値及び焼付温度を、W、E及びTとし、前記ワックスの総重量をWとし、前記少なくとも2種類のワックスのうち表面エネルギーが最小のもの及び最大のものの表面エネルギー値をE及びEとしたときに、E−E≧3mJ/m、E≧E+12mJ/m、220℃≦T≦300℃であり、0.006≦W/W≦0.2、となるように前記ベース樹脂に対してワックスを配合し、
焼付け開始から前記金属板の温度が100℃及び200℃に到達するまでの時間をt100及びt200としたときに、5秒≦t100≦20秒、10秒≦t200≦60秒となるように焼付けを行なうことを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法。

【公開番号】特開2007−245536(P2007−245536A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72378(P2006−72378)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】