説明

樹脂被覆金属粒子およびその製造方法

【課題】 金属粒子を核とし、所望の量の樹脂で被覆されているとともに、凝集もしていない樹脂被覆金属粒子を効率よく得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる樹脂被覆金属粒子の製造方法は、金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子を製造する方法であって、前記金属粒子として、トリアジンチオール化合物で表面処理された金属粒子と重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物とを反応させて得られた表面に重合性反応基を有する金属粒子を用い、前記表面に重合性反応基を有する金属粒子と重合性単量体との重合によって樹脂被覆を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核となる金属粒子の表面を樹脂層で被覆してなる樹脂被覆金属粒子と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粒子の表面を樹脂層で被覆してなる樹脂被覆金属粒子は、樹脂層の被覆によってもたらされる絶縁性や帯電性等の特性を利用し、例えば、電子写真法による電極パターン形成に用いられる銅等の金属トナーや、導電性接着剤に用いる導電性フィラーなどとして用いられており、光学材料関連分野や電子材料関連分野の用途における需要が高まっている。
従来、粒子の表面を樹脂層で被覆して樹脂被覆粒子を得る方法としては、例えば、i)静電気的あるいはイオン的な引き合いで母粒子(核粒子)表面に樹脂の子粒子を付着させた後、物理的(機械的)あるいは熱的エネルギーを与えて子粒子を融着させ、母粒子表面が樹脂層で被覆された粒子を製造する、いわゆるメカノケミカル法やヘテロ凝集法、ii)モノマー溶液と核粒子の混合物を懸濁し核粒子を含むモノマー液滴を生成させ、生成した液滴を重合することにより、核粒子表面が樹脂層で被覆された粒子を製造する、いわゆる懸濁重合法、iii)樹脂溶液と核粒子の混合物をスプレーし、核粒子を含む樹脂液滴を生成させ、該液滴から溶媒を蒸発させることで、核粒子表面が樹脂層で被覆された粒子を製造する、いわゆるスプレードライ法、等の方法が知られている。しかし、これら従来の方法は、粒子径が数μm以上の比較的大きな核粒子を被覆する場合には有効であるが、粒子径の小さい(例えば、1μm以下程度)核粒子を被覆する場合には、粒子同士の凝集等のため、複数の核粒子が樹脂層で被覆された被覆粒子が生じてしまうという問題があった。しかも、これら従来の方法では、被覆する樹脂の種類が制限されることが多く、また、被覆する樹脂層の厚み(被覆樹脂厚)を制御することも難しいという問題もあった。
【0003】
そこで、このような問題を解決しつつ微粒子の表面を樹脂層で被覆する方法として、金属酸化物微粒子または珪素酸化物微粒子の表面を、これら微粒子と反応しうる置換基および被覆樹脂層を形成する単量体と反応しうるビニル基を有するカップリング剤(具体的には、シランカップリング剤)で処理しておき、これを前記単量体と反応しうるビニル基を有する界面活性剤の存在下で前記単量体と重合反応させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−252916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1で開示された技術は、金属酸化物微粒子または珪素酸化物微粒子を樹脂層で被覆する方法であり、該技術を例えば銅のような金属粒子に対する樹脂層の被覆に適用しようとした場合、カップリング剤と核となる粒子との結合が生じにくく、カップリング剤により核粒子に導入されるビニル基の量が不充分となることにより、粒子を被覆する樹脂の量(樹脂層の厚み)が所望のレベルに到達せず、その結果、絶縁性や帯電性等の樹脂層で被覆することによる効果を充分に発揮できないものになるという問題や、重合中に生じた樹脂被覆粒子に凝集が生じてしまい、その結果、使用に耐えないものになるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、金属粒子を核とし、所望の量の樹脂で被覆されているとともに、凝集もしていない樹脂被覆金属粒子と、該樹脂被覆金属粒子を効率よく得ることができる製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、核となる金属粒子の表面に重合性反応基を導入し、該重合性反応基と重合性単量体との重合によって樹脂被覆を行うこととし、かつ、核となる金属粒子の表面に重合性反応基を導入するにあたり、まず、金属原子と結合しやすいチオール基を有するトリアジンチオール化合物で核となる金属粒子を表面処理しておき、このトリアジンチオール化合物で表面処理された金属粒子と重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物とを反応させるようにすることで、前記課題を一挙に解決しうることを見出した。さらに、このようにして得られた樹脂被覆金属粒子は、チオール基の還元能によって、防錆効果を発現することをも見出した。本発明は、これら知見により完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明にかかる樹脂被覆金属粒子は、金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子であって、前記金属粒子と樹脂層は、トリアジンチオール化合物由来の構造を介して結合されていることを特徴とする。
本発明にかかる樹脂被覆金属粒子の製造方法は、金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子を製造する方法であって、前記金属粒子として、トリアジンチオール化合物で表面処理された金属粒子と重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物とを反応させて得られた表面に重合性反応基を有する金属粒子を用い、前記表面に重合性反応基を有する金属粒子と重合性単量体との重合によって樹脂被覆を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる樹脂被覆金属粒子の製造方法は、前記本発明の樹脂被覆金属粒子を水媒体中で合成するものである。
なお、本明細書において、「金属粒子」とは、粒子表面が金属で形成されている粒子を意味するものであり、金属からなる粒子(狭義の金属粒子)のみならず、いわゆる金属メッキ粒子をも含む概念である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属粒子を核とし、所望の量の樹脂で被覆されているとともに、凝集もしていない樹脂被覆金属粒子と、該樹脂被覆金属粒子を効率よく得ることができる製造方法とを提供することができる。しかも、本発明によれば、被覆する樹脂の種類が制限されることがなく、被覆する樹脂層の厚み(被覆厚)の制御も容易であるので、これらを適宜選択・設定することにより、用途に応じて様々な表面特性を付与した樹脂被覆金属粒子を提供することができる。また、本発明にかかる樹脂被覆金属粒子は、チオール基の還元能によって、防錆効果を発現しうるものでもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる樹脂被覆金属粒子およびその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔樹脂被覆金属粒子の製造方法〕
本発明の樹脂被覆金属粒子の製造方法は、金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子を製造する方法であり、前記金属粒子として、トリアジンチオール化合物で表面処理された金属粒子(以下、「トリアジンチオール処理金属粒子」と称する。)と重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物とを反応させて得られた表面に重合性反応基を有する金属粒子(以下、「重合性反応基導入金属粒子」と称する。)を用い、前記重合性反応基導入金属粒子と重合性単量体との重合によって樹脂被覆を行うものである。
【0011】
本発明において核とする金属粒子としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、ルテニウム、ロジウム、オスミウムおよびイリジウム等の貴金属、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、アンチモンおよびタングステン等の卑金属、あるいは、前記貴金属と卑金属との合金などの粒子(狭義の金属粒子);各種樹脂粒子、無機粒子および金属粒子等の表面に、金、銀、白金、銅、クロムおよびニッケル等の金属によるメッキを施した粒子(いわゆる、金属メッキ粒子);などが挙げられる。なお、これら金属粒子の表面は、あらかじめ水ガラス(SiOH)等の層を形成して被覆されていてもよい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記核とする金属粒子の粒子径には限定はなく、得られる樹脂被覆金属粒子の用途を考慮して適宜設定すればよい。本発明においては、例えば、1nm〜1000μm、好ましくは5nm〜500μm、より好ましくは10nm〜100μmという広範囲な粒子径の粒子を被覆対象とすることができ、特に、粒子径1μm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下の微粒子であっても、粒子同士の凝集のため複数の核粒子が樹脂層で被覆されてしまうという問題を招くことなく、所望の単核の樹脂被覆金属粒子を得ることができる。
前記トリアジンチオール処理金属粒子は、前記核とする金属粒子をトリアジンチオール化合物で表面処理したものである。詳しくは、このトリアジンチオール処理金属粒子は、前記核とする金属粒子の表面にトリアジンチオール化合物が有するチオール基が結合することで金属粒子にトリアジンチオール化合物が付加し、その表面にトリアジンチオール化合物が有する残りのチオール基を有するものとなる。
【0013】
前記トリアジンチオール化合物は、トリアジン骨格を有し分子内にチオール基を2個以上有する化合物であれば、限定されないが、例えば、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(トリアジントリチオール)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム等や、下記一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
(式(1)中、Rは、チオール基、アニリノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジラウリルアミノ基、オレイルアミノ基、フェニルアミノ基、またはステアリルアミノ基を表し、MおよびMは、それぞれ独立して、水素原子、Li、Na、K、1/2Mg、または1/2Caを表す。)
で示されるトリアジンチオール誘導体(具体的には、例えば、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンなど)等が挙げられる。これらの中でも特に、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(トリアジントリチオール)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記核とする金属粒子をトリアジンチオール化合物で表面処理する際の処理方法としては、例えば、トリアジンチオール化合物を水または有機溶剤に溶解もしくは分散させ、その中に核とする金属粒子を加えて常温下または温調下で攪拌するといった方法等を採用することができる。
前記核とする金属粒子をトリアジンチオール化合物で表面処理する際には、前記核とする金属粒子とトリアジンチオール化合物との使用割合は、限定されないが、例えば、トリアジンチオール化合物が金属粒子に対して0.1〜20重量%となるようにすることが好ましい。トリアジンチオール化合物が多すぎると、未反応のトリアジンチオール化合物が多く残存し、これを除くための洗浄等に手間がかかることになり、一方、少なすぎると、チオール基の導入量が不充分となるおそれがある。
【0017】
前記重合性反応基導入金属粒子は、前記トリアジンチオール処理金属粒子と、重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物(以下、「特定有機化合物」と称することもある。)とを反応させて得られるものである。詳しくは、この重合性反応基導入金属粒子は、トリアジンチオール処理金属粒子が有するチオール基に前記特定有機化合物が結合することで金属粒子にトリアジンチオール化合物由来の構造を介して前記有機化合物が付加し、その表面に前記有機化合物が有する重合性反応基を有するものとなる。
前記特定有機化合物としては、重合性反応基として、例えば、ビニル基等を有するものであることが好ましく、トリアジンチオール化合物と反応し得るための官能基として、例えば、エポキシ基等を有するものであることが好ましい。具体的には、重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記トリアジンチオール処理金属粒子と前記特定有機化合物とを反応させる際の反応方法としては、例えば、特定有機化合物を水または有機溶剤に溶解もしくは分散させ、その中にトリアジンチオール処理金属粒子を加えて常温または温調下で攪拌するといった方法等を採用することができる。
前記トリアジンチオール処理金属粒子と前記特定有機化合物とを反応させる際には、前記トリアジンチオール処理金属粒子と前記特定有機化合物との使用割合は、限定されないが、例えば、トリアジンチオール処理金属粒子を得る際に用いたトリアジンチオール化合物と前記特定有機化合物とがほぼ等モルとなるようにすることが好ましく、等モルとなるようにすることがより好ましい。
【0019】
本発明の製造方法においては、前記重合性反応基導入金属粒子と重合性単量体との重合によって樹脂被覆を行う。詳しくは、前記重合には、溶媒中に前記重合性反応基導入金属粒子が分散するとともに重合性単量体も存在する状態で重合開始剤を用いて重合させる方法を採用することが好ましい。以下、この方法について詳しく説明するが、その実施に際しては、一般的な重合法における公知の製造方法や条件等を適宜選択し採用することができる。前記重合法としては、ラジカル重合法が特に好ましい。
本発明の製造方法において用い得る重合性単量体は、限定はされず、用途に応じて、所望の被覆樹脂を生成させうる単量体を適宜選択すればよい。具体的には、各種疎水性モノマー(疎水性の重合性単量体)や親水性モノマー(親水性の重合性単量体)を単独で使用したり併用したりすることができるが、重合性単量体のみからなるポリマー粒子の生成を抑制することができる点では、疎水性モノマーを用いることが好ましい。本発明の製造方法においては、重合に供する重合性反応基導入金属粒子は表面に重合性反応基を有しており、その表面は疎水性の高い状態となっているので、重合性単量体として疎水性モノマーを用いた場合、添加した重合性単量体が重合性反応基導入金属粒子の表面に集まりやすくなり、該表面でのポリマー合成を優先的に進行させることができるのである。一方、親水性モノマーを適宜若干量用いるようにすると、全く用いない場合に比べ、例えば、重合反応の進行を全体として早め、重合率を高めるのに時間短縮でき、生産性を向上させ得る効果が期待できる。前記重合性単量体として親水性モノマーと疎水性モノマーを併用する場合には、両者の割合は、限定はされないが、全重合性単量体に占める疎水性モノマーの含有量が、60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは65重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であるのがよい。
【0020】
前記疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルスチレン、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリフルオロプロピルアクリレート、トリフルオロプロピルメタクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記親水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、アリルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、アリル酢酸、アリルアルコール、アリルクロライド、アリルアミド、アリルイソシアネート、メチルビニルメチルケトン、酢酸ビニル、ビニルクロイド、ビニルエチルエステル、ビニルピロリドン、ビニルエチルケトン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記重合に用い得る溶媒としては、限定はされないが、水を主成分とする溶媒(水媒体)が好ましく、具体的には、水(水のみからなる溶媒)、もしくは、水の含有量が70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である水と親水性の有機溶剤との混合溶媒がよい。水を主成分とすることで、粒子同士の凝集や融着生じにくいなど製造時の安全性が高く、生産コストの面で工業化に有効なプロセスにすることができる。また、水を主成分としつつも親水性の有機溶剤を所定の範囲で併用することで、溶媒全体の効果として粒子を単分散させその状態を保持する効果が得られるため、その分、界面活性剤等の分散安定剤の使用量を少なくすることができ、結果として、重合性単量体のみからなるポリマー粒子の生成を抑制することができる。以上のことから、後述する本発明の樹脂被覆金属粒子を水媒体中で合成する方法を、もう1つの本発明の樹脂被覆金属粒子の製造方法とする。なお、勿論、前記溶媒としては、水(水のみからなる溶媒)もしくは水と親水性の有機溶剤との混合溶媒のほかに、他の溶剤(例えば、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミニルサクワレン、石油エーテル、テルペン、ヒマシ油、大豆油、パラフィン、ケロニンなど)を併用することもできる。
【0022】
前記親水性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;などが好ましく挙げられる。これらの中でも特に、使用する重合性単量体は溶解し得るが該重合性単量体から合成されたポリマーは溶解し得ない溶剤がより好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記重合において、前記溶媒中に前記重合性反応基導入金属粒子を分散させるに際しては、溶媒中に存在させておく前記重合性反応基導入金属粒子の濃度は、核とする金属粒子の粒子径や、形成しようとする樹脂被覆層の特性(厚み等)や、得られる樹脂被覆金属粒子の用途などを考慮して適宜設定すればよく、限定はされないが、例えば、前記溶媒と前記重合性反応基導入金属粒子との合計量に対し、5〜60重量%とすることが好ましく、より好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは15〜60重量%であるのがよい。前記重合性反応基導入金属粒子の濃度が、5重量%未満であると、生産性が低下するおそれがあり、一方、60重量%を超えると、重合反応の途中で粒子どうしが凝集し、複数の核粒子が樹脂層で被覆された被覆粒子が生じてしまうおそれがある。
【0024】
前記重合において、前記溶媒中に前記重合性反応基導入金属粒子を分散させる方法は、公知の分散方法を適宜選択し採用すればよく、限定はされないが、例えば、超音波による分散方法、メディアミルを用いて分散する方法、超高速撹拌による顔料粒子の摩擦による方法などの方法が挙げられる。なかでも、工業的に優れているという点で、メディアミルを用いて分散する方法が好ましい。
前記重合において、前記溶媒中に前記重合性反応基導入金属粒子を分散させるに際しては、前記溶媒中での前記重合性反応基導入金属粒子の分散状態を安定して維持する目的で、界面活性剤等の分散安定剤を用いることもできる。
【0025】
前記分散安定剤としては、限定はされないが、例えば、公知の各種界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性海面活性剤など)や水溶性高分子などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩;などが挙げられる。
【0026】
前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩;などが挙げられる。
前記両性イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどが挙げられる。
前記ノニオン性海面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン;グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー;などが挙げられる。
【0027】
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記分散安定剤を用いる場合、その使用量は、核とする金属粒子の粒子径等により異なるが、溶媒中の分散安定剤の濃度が、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%となるようにするのがよい。分散安定剤の濃度が5重量%より多いと、樹脂のみからなる粒子が生成するおそれがあり、一方、分散安定剤の濃度が0.01重量%よりも少ないと、粒子が凝集するおそれがある。
【0028】
前記重合においては、前記溶媒中の前記重合性単量体の濃度(すなわち、重合中の溶媒の全使用量に対する全重合性単量体の割合)は、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜8重量%、特に好ましくは1〜5重量%であるのがよい。前記重合性単量体の濃度が10重量%を超えると、重合性反応基導入金属粒子の表面以外(すなわち溶媒中)でポリマー単独の粒子が過剰に合成されてしまうおそれがある。ただし、前記重合性単量体の濃度が低すぎると、重合反応がスムーズに進行せず、全体の重合率自体が低くなるおそれがある。なお、前記重合性単量体の全使用量とは、重合反応が終了するまでに溶媒中に加えた重合性単量体の全量であるとし、初期仕込み量に限定するなど添加方法には依存しない。
【0029】
前記重合において、重合性単量体は、重合反応を開始するまでに一括添加する方法で溶媒中に存在させておいてもよいし、重合反応を行いながら逐次添加(連続添加または分割添加(間欠添加))する方法で溶媒中に存在させるようにしてもよく、限定はされないが、逐次添加(連続添加または分割添加(間欠添加))する方法を採用することが、最適なモノマー濃度を維持し、重合反応を安定に保つために有効であるほか、重合率を高めることができる等の点で好ましく、後述するように重合開始剤を溶媒中に一括添加する方法で用いるとともに、前記逐次添加(連続添加または分割添加(間欠添加))する方法を採用することがより好ましい。
【0030】
前記重合に用い得る重合開始剤は、限定はされないが、例えば、ラジカル重合の場合には、水溶性の重合開始剤であることが好ましい。水溶性の重合開始剤を用いることで、効率良く樹脂被覆粒子を得ることができる。好ましくは、パーオキサイド系重合開始剤を用いると、金属粒子が酸化されやすくなるので、アゾ系重合開始剤を選択するのがよい。さらに好ましくは、アゾ系重合開始剤の中でも、硫酸塩や塩酸塩等を含むものは、金属粒子と反応して硫酸金属塩や塩化金属塩等を生じさせるおそれがあるので、これらの塩を含まないものがよい。
前記水溶性の重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、過酸化水素などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記重合開始剤の使用量は、限定はされないが、例えば、重合性単量体の全使用量に対して、0.01〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%であるのがよい。
前記重合開始剤は、溶媒中に一括添加する方法で用いるようにしてもよいし、重合反応を行いながら溶媒中に逐次添加(連続添加または分割添加(間欠添加))する方法で用いるようにしてもよく、限定はされないが、一括添加する方法を採用することが、粒子同士の凝集を生じさせることなく、重合反応を安定して行うことができる等の点で好ましい。
前記重合を行う際の反応温度は、限定はされないが、例えば、40〜90℃とすることが好ましく、より好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは50〜80℃である。また、反応時間も、限定はされないが、例えば、1〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは3〜12時間、さらに好ましくは3〜8時間である。なお、前記重合は、撹拌下で行うようにすることが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法において、前記重合後、得られた樹脂被覆金属粒子を回収する方法としては、限定はされないが、例えば、得られた重合反応液を遠心分離処理し、上澄み液と沈降物に分け、この沈降物を回収して乾燥する方法等が挙げられる。回収した沈降物は、必要に応じ、所定の溶剤に再度分散させ、遠心分離処理および沈降物の回収する操作を繰り返し行ってから乾燥するようにする。あるいは、フラッシング法等を採用することにより、乾燥工程を経ずに直接溶媒置換することもできる。
〔樹脂被覆金属粒子〕
本発明の樹脂被覆金属粒子は、金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子であって、前記金属粒子と樹脂層はトリアジンチオール化合物由来の構造を介して結合されているものである。このような本発明の樹脂被覆金属粒子は、金属粒子を核とし、所望の量の樹脂で被覆されているとともに、凝集もしていない樹脂被覆金属粒子であり、例えば前述した本発明の樹脂被覆金属粒子の製造方法によって効率よく容易に得られるものである。
【0033】
本発明の樹脂被覆金属粒子において、核となる金属粒子およびトリアジンチオール化合物については、〔樹脂被覆金属粒子の製造方法〕の項で前述した通りである。また、本発明の樹脂被覆金属粒子における樹脂層は、〔樹脂被覆金属粒子の製造方法〕の項で前述した重合により形成されるものである。
本発明の樹脂被覆金属粒子において、金属粒子と樹脂層がトリアジンチオール化合物由来の構造を介して結合されているとは、詳しくは、〔樹脂被覆金属粒子の製造方法〕の項で前述したトリアジンチオール処理金属粒子の表面に樹脂層が被覆されていることであり、好ましくは、トリアジンチオール処理金属粒子の表面に、〔樹脂被覆金属粒子の製造方法〕の項で前述した特定有機化合物由来の構造をさらに介して樹脂層が形成されていることである。なお、前記金属粒子と樹脂層がトリアジンチオール化合物由来の構造を介して結合されているか否かは、例えば、樹脂層を溶解しうる溶媒で粒子表面の樹脂層を除いたのち、その表面を分析(例えば、顕微鏡観察やX線光電子分光分析等)することにより判断することができる。
【0034】
本発明の樹脂被覆金属粒子において、核となる金属粒子を被覆する樹脂の量(被覆樹脂量)は、樹脂被覆金属粒子全体に対して1〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは2〜30重量%であるのがよい。被覆する樹脂の量が多すぎると、配線等のような最終的には金属のみが必要な用途において、樹脂を焼きはずす等を行っても金属同士が接触せず導通が生じないなどのおそれがあり、一方、少なすぎると、例えばトナーとして用いた場合に帯電不良となるおそれがある。
本発明の樹脂被覆金属粒子において、樹脂層の厚みは、核とする金属粒子の粒径や所望の用途などを考慮し、重合性単量体の使用量を調整するなどして適宜設定すればよく、限定はされないが、例えば、1nm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜80μm、さらに好ましくは1nm〜50μmである。樹脂層の厚みが1nm未満であると、絶縁性や帯電性等の樹脂層の被覆による効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方、100μmを超える場合は、重合反応による樹脂層の形成途中に被覆粒子どうしが凝集してしまい、使用に耐えないものとなるおそれがある。
【0035】
本発明の樹脂被覆金属粒子の粒子径は、所望の用途などを考慮し、核とする金属粒子の粒子径の選定や重合性単量体の使用量の調整等により適宜設定すればよく、限定はされないが、例えば、体積平均粒子径が5nm〜1100μmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜600μm、さらに好ましくは10nm〜200μmであるのがよい。前記平均粒子径が5nm未満であると、核とする金属粒子そのものの物性が強く発現されすぎて樹脂層による被覆効果が低減されるおそれがあり、一方、1100μmを超える場合は、重合反応による樹脂層の形成途中に被覆粒子どうしが凝集してしまい、使用に耐えないものとなるおそれがある。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、特に断りのない限り、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を単に「%」と記すものとする。
実施例における特定有機化合物付加量の測定方法を以下に示す。
<特定有機化合物付加量の測定>
特定有機化合物付加量は、特定有機化合物を反応させる前の粒子(トリアジンチオール化合物で表面処理された粒子)の真比重(A)と、特定有機化合物を反応させた後の粒子(表面に重合性反応基を有する粒子)の真比重(B)とを、比重計(ユアサ・アイオニクス(株)製、製品名:ULTRAPYCNOMETER1000)で測定し、測定値から下記式にて求められる特定有機化合物の割合(%)をもとに算出した。なお、下記式では、特定有機化合物の真比重は1.0とするものとした。
【0037】
特定有機化合物の割合(%)=〔(真比重(A)−真比重(B))/(真比重(A)−特定有機化合物の真比重)〕×100
〔実施例1〕
撹拌羽根を備えた100mLの丸底セパラブルフラスコに、エタノール30g、銅粒子(三井金属社製、製品名:1100Y、平均粒子径:1.0μm)120g、および、トリアジンチオール化合物として2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン12gを仕込み、フラスコを50℃の超音波浴槽(ヤマト科学(株)製、製品名:BRANSONIC5510)に入れ、内容物に対し2時間分散(超音波分散)処理を行った。該分散処理後、フラスコ内の内容物の全量を遠心沈降管に入れ、3,000Gで15分間遠心分離し、上澄み液と沈降物(トリアジンチオール化合物で表面処理された銅粒子)とに分けて回収した。次いで、得られた沈降物をメチルエチルケトン100gに再分散させ、3,000Gで15分間遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを回収した。この再分散、遠心分離および沈降物のみの回収の操作をさらに2回繰り返した後、最終的に回収した沈降物を100℃の乾燥機内で5時間乾燥し、トリアジンチオール化合物で表面処理された銅粒子(11a)を得た。該銅粒子(11a)は、水をはじくようになったことから、表面にトリアジンチオール化合物がコーティングされていることが判った。
【0038】
次に、前記丸底セパラブルフラスコに、得られたトリアジンチオール化合物で表面処理された銅粒子(11a)の全量と、メチルエチルケトン30gと、特定有機化合物としてグリシジルメタクリレート15gとを仕込み、フラスコを50℃の前記超音波浴槽に入れ、内容物に対し2時間分散(超音波分散)処理を行った。該分散処理後、フラスコ内の内容物の全量を遠心沈降管に入れ、3,000Gで15分間遠心分離し、上澄み液と沈降物(表面に重合性反応基を有する銅粒子)とに分けて回収した。次いで、得られた沈降物をメチルエチルケトン100gに再分散させ、3,000Gで15分間遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを回収した。この再分散、遠心分離および沈降物のみの回収の操作をさらに2回繰り返した後、最終的に回収した沈降物を100℃の乾燥機内で5時間乾燥し、表面に重合性反応基を有する銅粒子(11b)を得た。銅粒子(11b)の特定有機物化合物付加量を、前述した方法により測定し、該粒子全体に対する割合を求めたところ0.856%であった。
【0039】
次に、撹拌羽根を備えた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、銅粒子(11b)30gおよび0.7%アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、製品名:ハイテノールN−08)水溶液28gを仕込み、フラスコを50℃の前記超音波浴槽に入れ、内容物に対し1.5時間分散(超音波分散)処理を行った。該分散処理後、フラスコを浴槽から取り出し、その後、フラスコ内の内容物を撹拌しながら、窒素ガスを導入して窒素雰囲気にし、続いて予め調製しておいたシクロヘキシルメタクリレート7.2gおよび2−エチルヘキシルアクリレート4.8gからなる重合性単量体の1/10量を添加し、内容物を昇温して70℃に達した時点で10%過硫酸アンモニウム水溶液6gを添加し、重合反応を開始させた。同温度を保持したまま、重合開始後10分経過毎に前記重合性単量体の1/10量を一括添加し(計9回)、重合反応を進行させた。重合性単量体の全量の添加終了後、さらに同温度で1.5時間保持し、熟成反応を行った。重合反応液を光学顕微鏡で観察したところ、凝集粒子はほとんど無いことが確認された。
【0040】
次に、重合反応液の全量を遠心沈降管に入れ、5,000Gで15分間遠心分離し、上澄み液と沈降物(樹脂被覆銅粒子)とに分けて回収した。ここで得られた上澄み液をガスクロマトグラフィーで分析(定量)したのち、120℃で2時間乾燥してその固形分量を測定したところ、上澄み液中に含まれる残存モノマー量は0.6gであり、固形分量は3.2gであった。固形分量が、溶媒中の樹脂量、すなわち前記重合反応において生成した銅粒子の被覆にあずからない樹脂量(重合性単量体のみからなる粒子量)である。このことから、前記重合反応において生成した銅粒子の表面に被覆に供されたモノマー量(すなわち、被覆樹脂量)は8.2gであることが判った。
【0041】
次いで、得られた沈降物をメチルエチルケトン200gに再分散させ、5,000Gで15分間遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを回収した。この再分散、遠心分離および沈降物のみの回収の操作をさらに3回繰り返した後、最終的に回収した沈降物を80℃で24時間乾燥して、樹脂被覆金属粒子(12)を得た。
樹脂被覆金属粒子(12)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、そのTEM像をEDXスペクトル分析したところ、銅粒子表面に樹脂層が形成されていることが確認できた。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察からも、処理前の銅粒子と比較して角がとれた形状をしており、樹脂で被覆されていることが確認できた。
【0042】
〔実施例2〕
撹拌羽根を備えた100mLの丸底セパラブルフラスコに、トリアジンチオール化合物としての2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン0.3gをメチルエチルケトン30gに溶解させた溶液と、銅粒子(三井金属社製、製品名:1300Y、平均粒子径:3.0μm)120gとを仕込み、フラスコを50℃の超音波浴槽(ヤマト科学(株)製、製品名:BRANSONIC5510)に入れ、内容物に対し250rpmで攪拌しながら2時間分散(超音波分散)処理を行った。該分散処理後、フラスコ内の内容物の全量を濾過(濾紙としてアドバテック社製「5C」を使用)したのち、メチルエチルケトン50gで洗浄、濾過する操作をさらに2回繰り返し、トリアジンチオール化合物で表面処理された銅粒子(21a)を得た。該銅粒子(21a)は、水をはじくようになったことから、表面にトリアジンチオール化合物がコーティングされていることが判った。
【0043】
次に、前記丸底セパラブルフラスコに、得られたトリアジンチオール化合物で表面処理された銅粒子(21a)の全量と、メチルエチルケトン30gと、特定有機化合物としてグリシジルメタクリレート0.48gとを仕込み、フラスコを50℃の前記超音波浴槽に入れ、内容物に対し250rpmで攪拌しながら2時間分散(超音波分散)処理を行った。該分散処理後、フラスコ内の内容物の全量を濾過(濾紙としてアドバテック社製「5C」を使用)したのち、メチルエチルケトン50gで洗浄、濾過する操作をさらに2回繰り返し、得られた濾過残渣を40℃の乾燥機内で4時間乾燥し、表面に重合性反応基を有する銅粒子(21b)を得た。
【0044】
次に、撹拌羽根を備えた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、銅粒子(21b)30gおよび20%アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、製品名:ハイテノールLA−10)水溶液1.25g、イオン交換水27gを仕込み、フラスコを50℃の前記超音波浴槽に入れ、内容物に対し250rpmで攪拌しながら1.5時間分散(超音波分散)処理を行った。該分散処理後、フラスコを浴槽から取り出し、その後、フラスコ内の内容物を撹拌しながら、窒素ガスを導入して窒素雰囲気にし、続いてスチレン4.2gからなる重合性単量体の1/10量を添加し、内容物を昇温して70℃に達した時点で10%過硫酸アンモニウム水溶液6gを添加し、重合反応を開始させた。同温度を保持したまま、重合開始後10分経過毎に前記重合性単量体の1/10量を一括添加し(計9回)、重合反応を進行させた。重合性単量体の全量の添加終了後、さらに同温度で1.5時間保持し、熟成反応を行った。重合反応液を光学顕微鏡で観察したところ、凝集粒子はほとんど無いことが確認された。
【0045】
次に、重合反応液の全量を冷却して、濾過(濾紙としてアドバテック社製「5C」を使用)したのち、イオン交換水50gで洗浄、濾過して、濾液と濾過残渣(樹脂被覆銅粒子)とに分けて回収した。ここで得られた濾液をガスクロマトグラフィーで分析(定量)したのち、150℃で15分間乾燥してその固形分量を測定したところ、濾液中に含まれる残存スチレン量は0.21gであり、固形分量は0.89gであった。このことから、前記重合反応において生成した銅粒子の表面に被覆に供されたスチレン量は3.1gであることが判った。また、前記濾液は、淡青色を呈していたことから、硫酸銅が生成していることが判った。
【0046】
次いで、得られた濾過残渣を40℃で4時間乾燥して、樹脂被覆金属粒子(22)を得た。
樹脂被覆金属粒子(22)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、そのTEM像をEDXスペクトル分析したところ、銅粒子表面に樹脂層が形成されていることが確認できた。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察からも、処理前の銅粒子と比較して角がとれた形状をしており、樹脂で被覆されていることが確認できた。
〔実施例3〕
実施例2と同様にして得られた表面に重合性反応基を有する銅粒子(21b)を用い、10%過硫酸アンモニウム水溶液を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬社製、製品名:V−50)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、重合反応を行った。得られた重合反応液を光学顕微鏡で観察したところ、凝集粒子はほとんど無いことが確認された。
【0047】
次に、実施例2と同様にして、重合反応液を濾液と濾過残渣(樹脂被覆銅粒子)とに分けて回収した。ここで得られた濾液は、濃青色を呈していたことから、塩酸銅が生成していることが判った。
次いで、得られた濾過残渣を40℃で4時間乾燥して、樹脂被覆金属粒子(32)を得た。
樹脂被覆金属粒子(32)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、そのTEM像をEDXスペクトル分析したところ、銅粒子表面に樹脂層が形成されており、凝集もしていないことが確認できた。
【0048】
〔実施例4〕
実施例2と同様にして得られた表面に重合性反応基を有する銅粒子(21b)を用い、10%過硫酸アンモニウム水溶液を2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシルエチル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬社製、製品名:VA−057)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、重合反応を行った。得られた重合反応液を光学顕微鏡で観察したところ、凝集粒子はほとんど無いことが確認された。
次に、実施例2と同様にして、重合反応液を濾液と濾過残渣(樹脂被覆銅粒子)とに分けて回収した。ここで得られた濾液は、白色を呈していたことから、銅粒子は侵されていないことが判った。
【0049】
次いで、得られた濾過残渣を40℃で4時間乾燥して、樹脂被覆金属粒子(42)を得た。
樹脂被覆金属粒子(42)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、そのTEM像をEDXスペクトル分析したところ、銅粒子表面に樹脂層が形成されており、凝集もしていないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明にかかる樹脂被覆金属粒子およびその製造方法は、例えば、電子写真法による電極パターン形成に用いられる銅等の金属トナーや、導電性接着剤に用いる導電性フィラーなど、光学材料関連分野や電子材料関連分野において用いられる樹脂被覆金属粒子およびその製造に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子であって、
前記金属粒子と樹脂層は、トリアジンチオール化合物由来の構造を介して結合されていることを特徴とする、樹脂被覆金属粒子。
【請求項2】
前記トリアジンチオール化合物は、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂被覆金属粒子。
【請求項3】
前記金属粒子と樹脂層が、重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物由来の構造をさらに介して結合されている、請求項1または2に記載の樹脂被覆金属粒子。
【請求項4】
前記重合性反応基を有する有機化合物は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3までのいずれかに記載の樹脂被覆金属粒子。
【請求項5】
金属粒子の表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属粒子を製造する方法であって、
前記金属粒子として、トリアジンチオール化合物で表面処理された金属粒子と重合性反応基を有し且つトリアジンチオール化合物と反応し得る有機化合物とを反応させて得られた表面に重合性反応基を有する金属粒子を用い、
前記表面に重合性反応基を有する金属粒子と重合性単量体との重合によって樹脂被覆を行う
ことを特徴とする、樹脂被覆金属粒子の製造方法。
【請求項6】
前記トリアジンチオール化合物は、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンから選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の樹脂被覆金属粒子の製造方法。
【請求項7】
前記重合性反応基を有する有機化合物は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項5または6に記載の樹脂被覆金属粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4までのいずれかに記載の樹脂被覆金属粒子を水媒体中で合成する、樹脂被覆金属粒子の製造方法。

【公開番号】特開2006−22384(P2006−22384A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202647(P2004−202647)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】