説明

樹脂補強用有機繊維、および繊維補強熱可塑性樹脂

【課題】混練工程による有機繊維の熱による物性劣化および物理的負荷によるアスペクト比の低下がなく、マトリックス樹脂と繊維の界面の接着/応力分散のバランスを整えることによって耐衝撃性、剛性の物性バランスが良好な繊維補強熱可塑性樹脂を提供すること。
【解決手段】有機繊維の表面に、(A)分子量2,000以下、かつエポキシ当量400以下のエポキシ化合物、(B)(B1)ポリウレタン樹脂、(B2)酸変性オレフィン系樹脂、および(B3)アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の皮膜形成用熱可塑性樹脂、ならびに(C)熱硬化性樹脂を含む皮膜が当該有機繊維に対し固形分換算で1〜20重量%付与されており、かつ各成分の固形分換算の重量割合が(A)20〜80重量%、(B)5〜50重量%、(C)5〜50重量%〔ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%〕の範囲である、樹脂補強用有機繊維、ならびに上記の(イ)樹脂補強用有機繊維と、(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂を主成分とし、(イ)と(ロ)との混合重量比が5/95〜70/30である繊維補強熱可塑性樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂補強用有機繊維、さらにこの樹脂補強用有機繊維を熱可塑性樹脂中に配合してなる繊維補強熱可塑性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維補強樹脂の力学物性、特に耐衝撃性を向上させるためには、混練工程による有機繊維の消耗(具体的には熱による物性劣化および物理的負荷によるアスペクト比の低下)、および、マトリックス樹脂と繊維の界面の接着/応力分散のバランスを整えることが重要である。
【0003】
特許文献1では、有機繊維の混練性を高める方法として、表面に重合脂肪酸系共重合ポリアミド樹脂を付与させる方法が提案されている。この方法では、混練性は良好であるが、繊維表面と樹脂との接着性が少なく、また表面複合膜に柔軟性がなく、十分な繊維補強樹脂の耐衝撃性を得ることができない。
一方で、繊維表面にエポキシ化合物を付与させることで、樹脂接着性が向上することはよく知られている。例えば、特許文献2〜3では、樹脂との接着性を高め、補強製品の耐久性向上提案がなされている。しかしながら、これらの先行技術では、繊維補強樹脂の耐衝撃性の言及はなされておらず、しかもエポキシ処理のみ〔特許文献2〕、あるいはエポキシ化合物および平滑剤の処理であり(特許文献3)、樹脂複合体としての十分な性能を得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−234076号公報(特許第3736260号公報)
【特許文献2】特開2001−348782号公報
【特許文献3】特許第3888704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みなされたもので、その目的は、混練工程による有機繊維の熱による物性劣化および物理的負荷によるアスペクト比の低下がなく、マトリックス樹脂と繊維の界面の接着/応力分散のバランスを整えることによって耐衝撃性、剛性の物性バランスが良好な繊維補強熱可塑性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有機繊維の表面に、(A)分子量2,000以下、かつエポキシ当量400以下のエポキシ化合物、(B)(B1)ポリウレタン樹脂、(B2)酸変性オレフィン系樹脂、および(B3)アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の皮膜形成用熱可塑性樹脂、ならびに(C)熱硬化性樹脂を含む皮膜が当該有機繊維に対し固形分換算で1〜20重量%付与されており、かつ各成分の固形分換算の重量割合が(A)20〜80重量%、(B)5〜50重量%、(C)5〜50重量%〔ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%〕の範囲である、樹脂補強用有機繊維に関する。
次に、本発明は、上記の(イ)樹脂補強用有機繊維と、(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂を主成分とし、(イ)と(ロ)との混合重量比が5/95〜70/30であることを特徴とする繊維補強熱可塑性樹脂に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、混練工程による有機繊維の熱による物性劣化および物理的負荷によるアスペクト比の低下がなく、マトリックス樹脂と繊維の界面の接着/応力分散のバランスを整えることによって耐衝撃性、剛性の物性バランスが良好な繊維補強熱可塑性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<樹脂補強用有機繊維>
本発明の樹脂補強用有機繊維は、有機繊維の表面に、(A)分子量2,000以下、かつエポキシ当量400以下のエポキシ化合物、(B)(B1)ポリウレタン樹脂、(B2)酸変性オレフィン系樹脂、および(B3)アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の皮膜形成用熱可塑性樹脂、ならびに(C)熱硬化性樹脂を含む皮膜が付与されてなるものである。
【0009】
〔有機繊維〕
有機繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維(ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド系繊維;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド系繊維;脂環族ポリアミド系繊維など)、ポリイミド系繊維(ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリアミノビスマレイミド繊維、ビスマレイミドトリアジン繊維など)、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレート、ポリC2−4アルキレンナフタレート、これらのコポリエステルなどの芳香族ポリエステル系繊維、ポリアリレート系繊維、液晶性ポリエステル繊維など)、ポリカーボネート系繊維(ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネート繊維、水添ビスフェノール型ポリカーボネート繊維など)、オレフィン系繊維[ポリエチレン繊維(低密度ポリエチレン繊維、高密度ポリエチレン繊維など)、ポリプロピレン繊維など]、アクリル系繊維(ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル繊維、ポリアクリロニトリルやアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体などのアクリロニトリル系繊維など)、ビニル系繊維(塩化ビニル系繊維、酢酸ビニル系繊維など)、ポリフェニレンオキシド系繊維[ポリフェニレンオキシド繊維、変性ポリフェニレンオキシド(ポリスチレンとのブレンドなど)繊維など]、ポリフェニレンスルフィド系繊維(ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリビフェニレンスルフィド繊維、ポリフェニレンスルフィドケトン繊維、ポリビフェニレンスルフィドスルホン繊維など)、ポリスルホン系繊維(ポリスルホン繊維、ポリエーテルスルホン繊維など)、ポリアセタール系繊維(ポリアセタール繊維など)、ポリエーテルケトン系繊維(ポリエーテルケトン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維など)、ポリベンゾオキサゾール系繊維(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール系繊維など)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0010】
これらの繊維のうち、機械的特性及び耐熱性の点から、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリロニトリル系繊維などのアクリル系繊維、レーヨン繊維などのセルロース系繊維、ポリベンズオキサゾール系繊維、全芳香族ポリアミド系繊維(アラミド繊維)、アリレート系繊維(全芳香族ポリエステル系繊維)、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール系繊維が好ましく、汎用性および処理剤とのなじみからポリエステル系繊維が望ましい。
【0011】
〔(A)エポキシ化合物〕
(A)エポキシ化合物とは、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するものであり、分子量2,000以下、エポキシ当量400以下のポリエポキシ化合物である。エポキシ当量が400を超えると、反応活性部位が少なくなり、繊維と樹脂の接着力が低下する。また、分子量が2,000を超えると、エポキシ化合物が繊維の非結晶部に入りにくいため、接着力低下の原因となり得る。この(A)エポキシ化合物としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ヘキサントリオール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物から得られるモノまたはジ以上のグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3’,4’−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート等の過酢酸等で不飽和結合部を酸化して得られるエポキシ化合物等があげられ、なかでも脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテルが好ましい。
これらエポキシ化合物は、公知の架橋剤によって硬化される。例えば、塩基であれば、水酸化ナトリウムやアンモニアのような無機塩基、モルホリン、ピペラジン、アミノアルコールなどの有機アミンを代表とする有機塩基が例として挙げられる。
【0012】
また、(A)エポキシ化合物の硬化剤として、ブロックドポリイソシアネート化合物などのブロックイソシアネートを用いることもできる。ブロックドポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加反応生成物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生ぜしめるものである。ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらのポリイソシアネートと活性水素原子を1個以上有する化合物としては、例えばフェノール、チオフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類、フタル酸イミド類、カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類及び酸性亜硫酸ソーダ等が例示される。
【0013】
〔(B)皮膜形成用熱可塑性樹脂〕
(B)皮膜形成用熱可塑性樹脂は、(B1)ポリウレタン樹脂、(B2)酸変性オレフィン系樹脂、および(B3)アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である。
【0014】
(B1)ポリウレタン樹脂:
表面処理剤として、ポリウレタン樹脂を用いても良い。本発明で用いるポリウレタン樹脂は、分子内に2個水酸基を有する化合物(以下、これを「ジオール成分」と記す)と、分子内に2個イソシアネート基を有する化合物(以下、これを「ジイソシアネート成分」と記す)とを、水を含まず、活性水素を有さない有機溶媒中で付加重合させることにより得ることができる。また、溶媒がない状態で原料を直接反応させることによっても目的物のポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0015】
ジオール成分として、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカ−ボネートジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリアセタ−ル、ポリシロキサン等のポリオール化合物、並びにエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール等の低分子量のグリコール類が挙げられる。本発明に使用されるポリウレタン樹脂は、低分子量グリコール成分を多く含むことが好ましい。
【0016】
また、ジイソシアネート成分としては、脂肪(脂環)族系ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族系ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなど);これらの変性体(カービジイミド、ウレチジオン、ビューレットおよびイソシアヌレート変性体);およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0017】
なお、本発明で使用されるポリウレタン樹脂は、マルチフィラメントでの表面に均一に付着して、単糸を収束させていることが好ましいが、ポリオレフィン樹脂などのマトリックス成分となる熱可塑性樹脂との混練工程では低いシェアで単糸を解離し、ポリオレフィン樹脂中に分散させる働きをなす必要がある。そのためには、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の抗張力やモジュラスが低い弾性体である必要がある。これより、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の抗張力は、好ましくは5〜60Mpa、より好ましくは10〜50Mpaである。ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の抗張力が5Mpa未満であると、該樹脂の皮膜がすぐに破壊して表面処理繊維に収束性を付与できない。一方、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の抗張力が60Mpaを超えると、混練工程で単糸が解離しにくくなり、表面処理繊維の分散斑が発生しやすくなる。
【0018】
また、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の伸度100%時モジュラスは、好ましくは0.1〜30Mpa、より好ましくは1〜20Mpaである。ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の伸度100%時モジュラスが0.1Mpa未満であると、該樹脂の皮膜がすぐに破壊して表面処理繊維(A)に収束性を付与できない。上記樹脂の乾燥皮膜の抗張力が30Mpaを超えると、混練工程で単糸が解離しにくくなり、表面処理繊維の分散斑が発生しやすくなる。
【0019】
ここで、抗張力や伸度100%時モジュラスの測定に用いられるポリウレタン樹脂の乾燥被膜の製造方法は下記のとおりである。
すなわち、ガラスシャーレーやテフロンシャーレー(ポリテトラフルオロエチレン製シャーレー)などを用いて、キャスト法によって揮発分を除去し、処理温度は室温〜120℃程度で試料に合わせて適宜、処理時間を設定することにより、良好な乾燥皮膜を得ることができる。膜厚は、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.5〜1.0mmである。この皮膜を測定に合わせて加工する。例えば、抗張力や伸度を測定する際にはダンベル状に試験片を打ち抜き、引張試験の試験片とした。
【0020】
また、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜のガラス転移温度は、好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜20℃である。上記樹脂の乾燥皮膜のガラス転移温度が0℃未満であると、樹脂皮膜に粘りが生じ、混練工程で単糸が解離しにくくなり、繊維の分散斑が発生しやすくなる。上記樹脂の乾燥皮膜のガラス転移温度が30℃を超えると樹脂皮膜が硬く、脆くになりすぎて成形品に衝撃が加わったときに容易にポリウレタン樹脂が破壊し、繊維で樹脂成分を補強するする効果が低くなる。
【0021】
さらに、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の伸度は、好ましくは100〜700%、より好ましくは130〜600%、である。ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜の伸度が100%未満であると、樹脂皮膜が硬く、脆くになりすぎて成形品に衝撃が加わったときに容易にポリウレタン樹脂が破壊し、繊維で樹脂成分を補強する効果が低くなる。逆に、700%を超えると、混練工程で単糸が解離しにくくなり、表面処理繊維の分散斑が発生しやすくなる。ここで、上記乾燥皮膜の伸度は、JIS K−7161に準拠して、25℃で測定された値である。
【0022】
(B2)酸変性オレフィン系樹脂:
皮膜形成用の成分として、酸変性オレフィン系樹脂を用いることができる。このような酸変性オレフィン樹脂は、オレフィン樹脂をクロルスルホン化した後にスルホン基に変換させるか、直接スルホン化するか、さらにはオレフィン樹脂の製造時に、オレフィンに重合性不飽和カルンボン酸化合物またはその誘導体を共重合させるか、さらにはオレフィン樹脂に、付加重合性不飽和カルボン酸化合物またはその誘導体をグラフト重合させるなどの方法で得ることができるものである。なかでも、酸変性オレフィン系樹脂としては、エチレンおよび/またはプロピレンを主たる樹脂構成単位とするオレフィン樹脂に、無水マレイン酸をグラフト重合したものであることが好ましい。このような酸変性オレフィン系樹脂を用いることにより繊維と、マトリックス成分である熱可塑性樹脂の間の高い接着性を得ることができる。
【0023】
ここで、オレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体および2種以上のオレフィンの共重合体から選ばれたものがいずれも使用可能であり、その具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
好ましい態様である酸性化として、スルホン化されたオレフィン系樹脂としては、上記の如きオレフィン樹脂に塩と二酸化イオウ、またはクロルスルホン酸を反応させクロルスルホン化し、これをスルホン基に変化させたもの、および直接スルホン化したオレフィン樹脂が挙げられる。最も好ましくはスルホン化ポリエチレンおよびスルホン化ポリプロピレンである。
【0024】
別の好ましい態様である不飽和カルボン酸化合物またはその誘導体で変性された酸変性オレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体または2種以上のオレフィンの共重合体、例えば、オレフィン樹脂として上記で例示した樹脂などに不飽和カルボン酸化合物またはその誘導体をグラフト重合したもの、オレフィンから選ばれた1種または2種以上の単量体と不飽和カルボン酸化合物またはその誘導体から選ばれた1種または2種以上をランダムまたはブロック共重合したもの、およびこれにさらに不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合したものが挙げられる。ここで、カルボン酸変性のために使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としてはこれらの酸の無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などがあり、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらの化合物のうちでフリーのカルボン酸基を有さないものは、重合後に加水分解などによりカルボン酸基を生成される。
【0025】
上記の不飽和カルボン酸化合物およびその誘導体のうち、最も好ましいのはアクリル酸およびメタクリル酸のグリシジルエステルおよび無水マレイン酸であり、これらにより変性された好ましい酸変/またはプロピレンを主たる樹脂構成単位とするオレフィン樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合することにより変性したもの、エチレンおよび/またはプロピレンを主体とするオレフィンと(メタ)アクリル酸グリシジルエステルまたは無水マレイン酸とを共重合することにより酸変性したものが挙げられる。
【0026】
繊維に付着させる酸変性オレフィン系樹脂は、その重量平均分子量が5,000以上であることが好ましく、より好ましい数平均分子量は10,000以上であり、重量平均分子量が15,000〜150,000であることが最も好ましい。重量均分子量が5,000未満では、繊維上での形成されるオレフィン樹脂の皮膜強度が低く満足のいく繊維の補強樹脂に対する相溶性、接着性能が得られにくい傾向にある。
【0027】
(B3)アクリル系樹脂:
アクリル系樹脂としては、その単独重合体のガラス転移温度が−90〜−5℃の範囲であり、好ましくは非架橋性であるようなモノマー、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどから選ばれた少なくとも1種類の軟質成分と、その単独重合体のガラス転移温度が50〜250℃の範囲であり、好ましくは非架橋性であるようなモノマー、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸などから選ばれた少なくとも1種類の硬質成分と、架橋構造を形成し得る単官能または多官能エチレン性不飽和モノマー単位、または、ポリマー鎖に導入されたエチレン製不飽和モノマー単位と反応して架橋構造を形成し得るような化合物、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどから選ばれた少なくとも1種類の架橋形成性成分からなるエチレン性不飽和モノマーを重合反応させて得た各種のアクリル系樹脂が挙げられる。
これらアクリル系樹脂は、取り扱いのしやすさから25〜70重量%の濃度で水分散していることが好ましい。また、成膜し易さから一次粒径(JIS
Z8825−1に準拠して測定)は、0.3μm以下であることが好ましい。
【0028】
〔(C)熱硬化性樹脂〕
(C)熱硬化性樹脂としては、RF樹脂あるいはこれにエチレン尿素化合物を含むものが好ましい。
RF樹脂は、アルカリ触媒下で得られたものが好ましく使用され、さらにRF樹脂は接着性向上のためにレゾルシンとホルマリンとのノボラック型縮合体やクロロフェノール化合物などの収着型接着剤を含有することが好ましい。
上記RF樹脂において、レゾルシンとホルマリン初期縮合物は、アルカリ触媒下で得られたもので、レゾルシンとホルマリンのモル比が1:0.3〜1:5、特に1:0.75〜1:2.0の範囲であることが好ましい。なお、上記RF樹脂において、レゾルシンとホルマリンのノボラック型縮合物を使用するに際しては、アルカリ触媒水溶液に溶解後、ホルマリンを添加し、レゾルシンとホルマリン初期縮合物と同様のモル比にするのが好ましい。
【0029】
(C)熱硬化性樹脂としては、このRF樹脂及びエチレン尿素化合物を含むことも好ましい。このエチレン尿素化合物とは、加熱によりエチレンイミン環が開環して反応し、接着性を向上させるもので、その代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族、脂肪族イソシアネートとエチレンイミンとの反応性生物が挙げられ、特にジフェニルメタンジエチレン尿素の芳香族エチレン尿素化合物が良好な結果を与える。
接着性向上のために添加されるエチレン尿素化合物の配合量は、RF樹脂に対して3〜30重量%、特に10〜20重量%の範囲が好ましい。ここで、エチレン尿素化合物の配合量が3重量%よりも少ないと接着性向上効果が小さく、一方30重量%より多く添加しても接着性向上が飽和状態となり、かえって硬化強力の低下などのマイナス要因を招くことになるため好ましくない。
【0030】
〔有機繊維表面への皮膜の形成〕
かくして、本発明の樹脂補強用有機繊維は、有機繊維表面に、上記の(A)分子量2,000以下、かつエポキシ当量400以下のエポキシ化合物、(B)(B1)ポリウレタン樹脂、(B2)酸変性オレフィン系樹脂、および(B3)アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の皮膜形成用熱可塑性樹脂、ならびに(C)熱硬化性樹脂を含む皮膜が当該有機繊維に対し固形分換算で1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%付与されている。皮膜の付着量が上記範囲より少ないと、繊維表層に均一な皮膜を形成できずマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との充分な接着が得られないばかりか、繊維と樹脂間の界面に欠陥を形成しまうため成型樹脂の物性低下を引き起こす。一方、上記範囲を超える場合は、繊維同士の膠着による分散不良を引き起こし、複合体として十分な特性をもたらすことが出来ない。
【0031】
また、皮膜を構成する(A)〜(C)成分の固形分重量割合は、(A)成分が20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、(B)成分が5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、(C)成分が5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%〔ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%〕である。
(A)成分が20重量%未満では、柔軟な接着界面が得られず耐衝撃性が低下しやすくなる傾向がある、一方80重量%を超えると非極性マトリックス樹脂に対する接着力が不充分となり成型樹脂の剛性等の力学物性に充分な繊維補強効果が得られない。また、(B)成分が5重量%未満では接着皮膜層の架橋が不充分なため成型樹脂が充分な耐衝撃性、耐久性を得ることができず、一方50重量%を超えると、接着皮膜が硬く衝撃エネルギーを分散できず界面破壊が起き易くなるため成型樹脂の耐衝撃性は低下する傾向である。さらに、(C)成分が5重量%未満では、繊維―熱可塑性樹脂間で相溶性を発揮するアクリル樹脂が接着皮膜層に少ないため充分な接着特性が発揮できず複合体として充分な特性をもたらすことができない、一方50重量%を超えると、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂の比率が相対的に低下するため接着皮膜層が脆くなり複合体として十分な耐衝撃性、耐久性をもたらすことが出来ない。
【0032】
これら皮膜を有機繊維表面形成させる方法は、特に限定されるものではない。
例えば、(A)エポキシ化合物と(B)皮膜形成用熱可塑性樹脂、(C)熱硬化性樹脂の3種を混合してこれに有機繊維をディッピングさせても良いし、あらかじめ有機繊維に(A)エポキシ化合物を塗布しておき、(B)皮膜形成用熱可塑性樹脂の水系エマルジョン(C)RF樹脂などの熱硬化性樹脂の水系エマルジョンの混合物をディッピングしても良い。
例えば、有機繊維への(A)〜(C)成分の付与は、(A)〜(C)成分を含む処理剤を、製糸工程あるいはディップ加工、スプレー、オイリングローラー等公知の方法によって、有機繊維へ付与、熱処理することによって得られる。熱処理温度としては有機繊維の物性を損なわない範囲であれば特に制約はないが、250℃以下かつ有機繊維の融点より20℃以上低い温度で熱セット、エージングを行う。
【0033】
有機繊維への(A)〜(C)成分を含む処理剤の付与は、通常、有機繊維がマルチフィラメント(あるいはトウ)の状態で行われるが、その後、用途に応じて、適宜の長さにカットされて、樹脂補強用として用いられる。
【0034】
<繊維補強熱可塑性樹脂>
本発明の繊維補強熱可塑性樹脂は、以上の(イ)樹脂補強用有機繊維をマトリックス成分である(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂に配合してなるものである。
【0035】
〔(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂繊維によって補強されるマトリックス用熱可塑性樹脂、すなわちマトリックス樹脂とは、上記皮膜形成用熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂であり、例えばポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の汎用樹脂や、ビニル重合によって得られるエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等、および、アミド系樹脂やポリカーボネート等、エステル系樹脂、Uポリマー、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアルキレンオキシド、ポリアセタール、エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
特に好ましいものはポリオレフィン樹脂であり、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン、ブテン、イソプレン、クロロプレン、イソブチレン、イソプレン等の単独重合体又は共重合体、あるいはノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン等が挙げられる。特に好ましいのは汎用性のあるポリプロピレン樹脂である。
【0036】
これらの熱可塑性樹脂は、慣用の添加剤、例えば、滑剤(オレフィン系ワックスなどのワックス類、脂質類など)、可塑剤又は軟化剤、着色剤、分散剤、離型剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、カップリング剤、充填剤(シリカやタルクなどの粒状充填剤や、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維状充填剤など)などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
本発明において、以上の(イ)樹脂補強用有機繊維と(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂の混合重量比は、5/95〜70/30、好ましくは10/90〜50/50である。(イ)樹脂補強用有機繊維の(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂に対する混合重量比が上記範囲未満の場合、補強すべき繊維量が少ないため熱可塑性樹脂の補強効果を得ることができない。一方、(イ)樹脂補強用有機繊維の(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂に対する混合重量比が上記範囲を超える場合、熱可塑性樹脂の混練、成型時に繊維の凝集、交絡が多発しやすく成型樹脂物性の著しい低下を招く。
【0038】
本発明の繊維補強熱可塑性樹脂は、公知の方法、例えば長繊維引抜成型、短繊維で混練したペレットを溶融射出成型する方法や、短繊維、織編物を用いたプレス成型、ブロー成型などによって樹脂成形品を得ることができる。
ここで、成型時の溶融温度はマトリックス樹脂組成物の融点、溶融粘度や成型設備にもよるが、通常、150〜250℃、好ましくは160〜240℃程度である。
得られた樹脂成型品は、車両、電機・電子機器、機械、建築・土木用の樹脂成形部品として好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0040】
実施例1〜5及び比較例1〜4
(A)エポキシ化合物として、ソルビトール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス社製、デナコールEX−614B)30重量部と、ブロックドイソシアネート化合物としてアセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート水分散体(明成化学工業社製 DM−6011、濃度33重量%)90重量部の混合物を調製した。この混合物を処理液1とする。
次に、(C)RF樹脂として、レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%であるRF初期縮合物(住友化学社製、スミカノール700S)20重量部のアルカリ水溶液に、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターボリマー(VP)ラテックス水分散体(日本A&L社製
ピラテックス、濃度41重量%)100重量部、次いで(B)アクリル系樹脂(DIC社製、ボンコート AN−678A−Eからなる濃度45重量%の水分散体)50重量部、さらにホルマリン5重量部、アセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート水分散体(明成化学工業社製
DM−6011、濃度33重量%)を20重量部添加したのちに20℃で48時間熟成して(B)+(C)の混合物を調製した。この混合物を処理液2とする。
ここで、(A)〜(C)成分の配合割合を表1に示す。
なお、処理液1において、ブロックドイソシアネート化合物であるアセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネートは、(A)エポキシ化合物に対し、固形分成分重量で3倍とした。また、処理液2において、VPラテックス、ホルマリン、アセトキシムブロックドジフェニルメタンジイソシアネートをそれぞれRF樹脂初期縮合物に対し、固形分成分重量で5倍、0.25倍、1倍とした。
【0041】
総繊度 1,670dtx、フィラメントカウント 250のポリエチレンナフタレート繊維(帝人ファイバー社製 テオネックスBHT 1670T250 Q904N)を、処理液1に浸漬して非接触型ヒーターにて130℃で1分間乾燥した後、230℃で1分間熱処理した。続いて、処理液2に浸漬して150℃で1分間乾燥した後、220℃で1分間熱処理した。
電子顕微鏡(日本電子(株)製、JSM6330F)のセクション写真によって、繊維表面に均一に皮膜が生成されていることを確認した。
ポリエチレンナフタレート繊維100重量部に対する処理剤固形分(皮膜)の付着量を計測した。結果を表1に示す。
得られた繊維を3mm幅でカットしたものを30重量部と、ポリプロピレン樹脂チップ〔(株)プライムポリマー プライムポリプロJ106〕70重量部とを、2軸押出成型機(テクノベル社製 KZW31-42MG-01R)で200℃で混練し、射出成型(東洋機械金属(株)PLASTAR Si-80IV)で幅 10mm 厚み 約4mmの繊維補強樹脂を得た。
ソックスレー抽出法(溶媒:キシレン)でサンプルより樹脂成分を除去して、繊維を回収し、繊維長を確認した。繊維長を表1に示す。
これをIzod衝撃試験 〔(株)東洋精機製作所 DIGITAL IMPACT TESTER〕を用いてJIS K7110に準拠して測定した(試験片の厚み:4mm、測定温度:23℃)。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例6
(B)成分として、ポリウレタン樹脂エマルジョン(DIC社製、ボンディック1980NE、固形分濃度45重量%の水系エマルジョン、乾燥皮膜の伸度:180%)を50重量部用いる以外、実施例1と同様にして、樹脂補強用PEN繊維、これを用いた繊維補強ポリプロピレン樹脂を得た。結果を表2に示す。
【0044】
実施例7
(B)成分として、酸変性オレフィン系樹脂(東邦化学工業社製、ハイテックスP−6000、固形分濃度30重量%の水系エマルジョン)を50重量部用いる以外、実施例1と同様にして、樹脂補強用PEN繊維、これを用いた繊維補強ポリプロピレン樹脂を得た。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の樹脂補強用有機繊維は、混練工程による有機繊維の熱による物性劣化および物理的負荷によるアスペクト比の低下がなく、マトリックス樹脂と繊維の界面の接着/応力分散のバランスがよいので、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂にブレンドすることにより、耐衝撃性の向上した繊維補強熱可塑性樹脂を提供することができ、例えば繊維補強されて耐衝撃性が改善された、ドアモジュール、バンパー等の自動車用樹脂材料、家電・OA等電気製品の筐体、建築・インテリア用樹脂材料、日用品樹脂材料などの用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維の表面に、(A)分子量2,000以下、かつエポキシ当量400以下のエポキシ化合物、(B)(B1)ポリウレタン樹脂、(B2)酸変性オレフィン系樹脂、および(B3)アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の皮膜形成用熱可塑性樹脂、ならびに(C)熱硬化性樹脂を含む皮膜が当該有機繊維に対し固形分換算で1〜20重量%付与されており、かつ各成分の固形分換算の重量割合が(A)20〜80重量%、(B)5〜50重量%、(C)5〜50重量%〔ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%〕の範囲である、樹脂補強用有機繊維。
【請求項2】
有機繊維が、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、ポリベンズオキサゾール系繊維、全芳香族ポリアミド系繊維(アラミド繊維)、アリレート系繊維(全芳香族ポリエステル系繊維)、およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール系繊維の群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1記載の樹脂補強用有機繊維。
【請求項3】
(A)エポキシ化合物が、脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテルである、請求項1または2記載の樹脂補強用有機繊維。
【請求項4】
(C)熱硬化性樹脂が、RF樹脂、またはRF樹脂およびエチレン尿素化合物を含有するものである、請求項1〜3いずれかに記載の樹脂補強用有機繊維。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の(イ)樹脂補強用有機繊維と、(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂を主成分とし、(イ)と(ロ)との混合重量比が5/95〜70/30であることを特徴とする繊維補強熱可塑性樹脂。
【請求項6】
(ロ)マトリックス用熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である、請求項5記載の繊維補強熱可塑性樹脂。
【請求項7】
請求項5または6記載の繊維補強熱可塑性樹脂を溶融、成形して得られることを特徴とする樹脂成形体。

【公開番号】特開2013−1831(P2013−1831A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135083(P2011−135083)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】