説明

樹脂製グレージング積層体

【課題】構造部材に固定するために必要な優れた接着性を有し、良好な意匠性を達成できる樹脂製グレージング積層体を提供すること。
【解決手段】以下の(A)層の少なくとも一方の表面に、以下の(B)層、(C)層、(D)層および(E)層を積層したグレージング積層体であって、
積層体の厚み方向に沿った断面を見たとき、(A)層−(B)層−(C)層−(D)層の順で積層された積層構造1と、(A)層−(B)層−(E)層の順で積層された積層構造2、および(A)層−(E)層の順で積層された積層構造3とがあり、積層構造1と3の間に積層構造2が介在することを特徴とするグレージング積層体。
(A)層:ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層。
(B)層:アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層。
(C)層:ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー組成物から形成されてなる接着用プライマー層。
(D)層:ウレタン接着剤からなる接着層。
(E)層:ハードコート層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材に固定するために必要な優れた接着性を有し、良好な意匠性を達成できる樹脂製グレージング積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からガラス製グレージングを透明な熱可塑性樹脂製グレージングに代替する試みは、軽量化、安全性の向上、およびガラスでは不可能な態様での利用を達成するために盛んに行なわれてきた。自動車に代表される輸送機の分野においては、特にガラス製グレージングから耐衝撃性の良好なポリカーボネート樹脂製グレージングへの代替の試みが盛んである。輸送機の分野において、その軽量化は必須かつ緊急の課題となっている。そのためかかるガラス代替の試みには更に拍車がかかっている。しかしながら数多くの提案がある一方で、特に自動車分野におけるその代替はあまり進んでいない。軽量化の強い要求がある中で代替が進まない主因の1つは、樹脂製グレージングのコスト高にある。
【0003】
本出願人は既に、車体の如き構造部材に取付ける枠材を樹脂窓と一体化した部材を多色成形法により製造する方法であって、該枠材がポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる樹脂組成物である製造方法を提案した(特許文献1参照)。かかる方法は生産性に優れる一方、多色成形用の金型を必要とする。該金型製造の初期投資額は大きい。よって、かかる方法は、大量生産には適するが、少量生産にはあまり適していない。
【0004】
近年、環境意識の高まりから、例えば電気自動車に代表されるような比較的少量生産の、もしくは台数限定の車においても、軽量化を目的として樹脂製グレージングの利用が望まれる傾向にある。したがって少量生産にも対応できる樹脂製グレージング積層体が求められている。尚、樹脂製グレージングの場合、その耐擦傷性の改良のためのハードコート層、並びにウレタン接着剤層を保護および隠ぺい等するためのインキ層(黒色の場合ブラックアウト層と称することがある)が必要とされる。
【0005】
積層体の構成としては、樹脂基材上にハードコート層を設けた後、該層上にブラックアウト層を設ける構成(本説明において“構成−A”と称する)が提案されている(特許文献2、3参照)。しかしながら、曲面形状を有するグレージングの場合、構成−Aでは、所定の曲面を形成した後に、ハードコート層とブラックアウト層を設けることになるため、曲面部に意匠性および精度の高いブラックアウト層の形成は困難であるという問題があった。
【0006】
また、樹脂基材上にブラックアウト層を設けた後、該層上にハードコート層を設ける構成(本説明において“構成−B”と称する)が提案されている(特許文献4〜6参照)。構成−Bでは、シート成形品にブラックアウト層を設けた後、熱曲げ加工を行うことが可能であり、ブラックアウト層の意匠性および精度は良好となる。構成−Bを用いる特許文献4および特許文献6では、ハードコート液耐性を有する特定の着色用インキが提案され、特許文献5においては、ブラックアウト層との密着性の良好な特定のハードコート組成物が提案されている。しかしながら、構造部材に固定するために接着層を設ける場合、ハードコート層上に接着層を設けることになり、良好な接着性を得ようとすると、ハードコート剤が限定されたり、他方、ハードコート性能を高めた場合に接着性が低下することがあるなどの二律背反の問題があった。
【0007】
一方、インキ層に直接接着層を設けることが可能な積層体として、樹脂基材にハードコート層を設けた後、接着部以外をマスキングした状態でブラスト処理を行い、ハードコート層を除去した後、該除去部分にインキ層を設ける手法が提案されている(特許文献7参照)。しかしながら、該方法では、ブラスト処理は工数増を招くという問題や、一般的な無機系のブラスト剤ではブラスト処理面が白化し意匠性に優れた積層体を得ることが困難であるという問題があった。
その為、構造部材に固定するために必要な優れた接着性を有し、良好な意匠性を達成できる樹脂製グレージング積層体は未だ提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−359220号公報
【特許文献2】特開平01−159246号公報
【特許文献3】特開2006−289932号公報
【特許文献4】特公平07−025910号公報
【特許文献5】特開2006−255928号公報
【特許文献6】特表2006−523157号公報
【特許文献7】実開昭61−078628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、構造部材に固定するために必要な優れた接着性を有し、良好な意匠性を達成できる樹脂製グレージング積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、樹脂基材上の少なくとも一部にアクリルポリウレタンからなるインキ層、ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有する接着用プライマー層、ウレタン接着剤からなる接着層がこの順で形成された部分と、樹脂基材上に特定のハードコート層がこの順で形成された部分との間に、樹脂基材上にアクリルポリウレタンからなるインキ層と特定のハードコート層が形成された部分を介在する構成をとることで、所定の構造部材に固定するために必要な優れた接着性を有し、良好な意匠性を達成できる樹脂製グレージング積層体が得られることを究明し本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の通りである。
1.以下の(A)層の少なくとも一方の表面に、以下の(B)層、(C)層、(D)層および(E)層を積層したグレージング積層体であって、
積層体の厚み方向に沿った断面を見たとき、(A)層−(B)層−(C)層−(D)層の順で積層された積層構造1と、(A)層−(B)層−(E)層の順で積層された積層構造2、および(A)層−(E)層の順で積層された積層構造3とがあり、積層構造1と3の間に積層構造2が介在することを特徴とするグレージング積層体。
(A)層:ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層。
(B)層:アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層。
(C)層:ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー組成物から形成されてなる接着用プライマー層。
(D)層:ウレタン接着剤からなる接着層。
(E)層:ハードコート層。
2.上記(B)層の厚みが3μmから60μmである上記1記載のグレージング積層体。
3.上記アクリルポリウレタンが、アクリルポリオール樹脂、アクリルポリオール樹脂以外の数平均分子量100〜2,000のポリオール、およびヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または該イソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物が反応してなる2液硬化性インキ層である上記1〜2いずれかに記載のグレージング積層体。
4.上記アクリルポリオール樹脂以外のポリオールがポリエーテルポリオールである上記3記載のグレージング積層体。
5.上記(E)層が、有機溶媒にハードコート層用原料を溶解または/および分散させたコーティング液から形成され、少なくとも(A)層および(B)層上に直接塗工されるコーティング液の有機溶媒は、その相溶性パラメータ(SP値)が18.5〜22(MPa)0.5の範囲にある上記1〜4いずれかに記載のグレージング積層体。
6.上記(A)層および(B)層に直接塗工されるコーティング液の有機溶媒は、アルコール類およびケトン類からなる群から選択される少なくとも1種である上記5記載のグレージング積層体。
7.(E)層が、少なくとも(E1)層と(E2)層の2層からなり、ここで(E1)層は(A)層および(B)層と直接積層されるアクリル系樹脂からなるプライマー層であり、(E2)層は(E1)層の(A)層または(B)層と接していない表面に積層されるシリコーン系樹脂からなるトップ層である上記1〜6いずれかに記載のグレージング積層体。
8.上記(A)層が、射出圧縮成形により成形された上記1〜7のいずれかに記載のグレージング積層体。
9.下記工程(i)〜(iv)を含んでなるグレージング積層体の製造方法。
(i)下記(A)層の少なくとも一方の表面の一部に下記(B)層を形成する工程(工程(i))、
(ii)工程(i)で得られた、一部に(B)層が形成された光透過性基材の側において、(B)層の形成されていない(A)層の表面から(B)層の表面の一部にわたり連続した下記(E)層を形成する工程(工程(ii))、
(iii)工程(ii)で得られた(E)層が形成されていない(B)層の表面の少なくとも一部に下記(C)層を形成する工程(工程(iii))、および
(iv)工程(iii)で得られた(C)層の表面に下記(D)層を形成する工程(工程(iv))。
(A)層:ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層。
(B)層:アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層。
(C)層:ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー組成物からなる接着用プライマー層。
(D)層:ウレタン接着剤からなる接着層。
(E)層:ハードコート層。
10.上記工程(i)で、(A)層上に(B)層を形成した後、加熱変形させてから、上記工程(ii)を行なう上記9記載の製造方法。
11.上記1〜8記載のグレージング積層体が(D)層により直接に、もしくは(C)層と同一または異なる接着用プライマー層を介して、構造部材に結合された樹脂製グレージング結合体。
12.上記工程(iv)の後に、下記工程(v)を含んでなる樹脂製グレージング結合体の製造方法。
(v)上記工程(i)〜(iv)で得られたグレージング積層体を、(D)層により直接に、もしくは(C)層と同一または異なる接着用プライマー層を介して、構造部材に結合する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂製グレージング積層体は、樹脂基材上の少なくとも一方の表面の一部にアクリルポリウレタンからなるインキ層、ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有する接着用プライマー層、ウレタン接着剤からなる接着層がこの順で形成された部分と、樹脂基材上に特定のハードコート層がこの順で形成された部分との間に、樹脂基材上にアクリルポリウレタンからなるインキ層と特定のハードコート層が形成された部分を介在する構成をとることで、構造部材に固定するために必要な優れた接着性を有し、良好な意匠性を得ることが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】成形サイクルの開始時点の状態を示す型締装置の縦断面図である。
【図2】射出圧縮成形する開始前の状態を示す型締装置の縦断面図である。
【図3】射出圧縮成形をしている状態を示す型締装置の縦断面図である。
【図4】インキ層、ハードコート層、および接着層の構成の一例を示す図である。
【図5】実施例で作成されたシート−αの形状を示す図である。
【図6】実施例で作成されたシート−βの形状を示す図である。
【図7】印刷、熱曲げ、およびハードコート処理後のシート成形品を示す概要図である(ゲート部分は図示しない)。
【図8】トリミング工程後に得られたグレージング成形品を示す概要図である(図は左側リアクォターウインドウを示す)。
【図9】グレージング成形品の車体取り付け状態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
<積層体>
(I)基材層((A)層)
本発明にかかる(A)層は、ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層である。なお、光透過性基材層を形成するポリカーボネート樹脂を以下樹脂材料−Aと称することがある。また、樹脂材料−Aから成形された基材層を以下成形品−Aと称することがある。なお、成形品Aは光を通した際の透視像が明瞭に観察されない光拡散性であってもよいが、透視像が観察可能な透明性を有することがより好ましい。したがって、成形品−Aの全光線透過率は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。全光線透過率の上限は、成形品の厚みにもよるが、グレージングとして汎用される厚みを考慮すると好ましくは92%である。ここで成形品−Aの全光線透過率はJIS K7105に準拠する方法で測定される値をいう。また成形品−Aのヘーズは好ましくは0.1〜20%の範囲である。ヘーズの上限はより好ましくは10%、更に好ましくは5%である。尚、樹脂材料−Aの詳細は後述する。
【0015】
成形品−Aは、その厚みが好ましくは1〜9mmである。かかる厚みの下限は、より好ましくは2mm、更に好ましくは3mmである。かかる厚みの上限は、より好ましくは7mm、更に好ましくは6mmである。尚、ここでいう厚みの好ましい範囲はグレージングとして利用される主たる透光面の厚みをいい、グレージングを補強、固定、および位置決めするなどの目的で設けられた、段差や孔などは含まれないものとする。また、かかる厚みは均一である必要はなく、連続的に厚みが変化する形状、急峻な厚み変化を有する形状、および規則的に厚みが変化する形状なども取ることができる。規則的に厚みが変化する形状としては、例えば、レンズやプリズムの形状が規則的に配列した形状などが例示される。実用上好適であるのは、ほぼ均一の厚みを有する態様である。かかる均一の厚みの場合、その厚み差は1mm以内、より好ましくは0.6mm以内であることが好ましい。また、成形品−Aの最大投影面積は、好ましくは200〜60,000cm、より好ましくは1,000〜40,000cmである。
【0016】
成形品−Aの成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形および回転成形などが例示されるが、特に射出成形が好ましく、中でも射出圧縮成形が好ましい。射出圧縮成形の詳細は後述する。またかかる成形品−Aは、成形後に曲げ加工、トリム加工、および穿孔などの2次加工がなされ形状が定められたものであってもよい。二次加工の詳細は後述する。
【0017】
本発明の成形品−Aのより好ましい態様は、成形品中で透視像を視認する面において下記の条件を満足するものである。すなわち、成形品−Aの両面において、表面粗さ(Ra):0.06μm以下、表面うねり成分の平均振幅y:0.5μm以下、かつ表面うねり成分の平均波長xが検出される場合、yは下記式(1)を満足することが好ましい。
y ≦ 0.0004x+0.0002x (1)
(式(1)において、yはシートのJIS B0610に規定するろ波うねり曲線の平均振幅Waを表し、その単位はμmであり、xはシートのろ波うねり曲線の平均波長WSmを表し、その単位はmmである。)
【0018】
ここで、Raとは、JIS B0610に従って測定された算術平均粗さのことである。上記において、好ましくはRa:0.05μm以下およびy:0.4μm以下であり、より好ましくはRa:0.03μm以下およびy:0.3μm以下であり、に好ましくはRa:0.02μm以下およびy:0.2μm以下である。一方、製造コスト低減と現状求められる表面性状との両立の観点からは、Raの下限は好ましくは0.001μm、より好ましくは0.002μm、更に好ましくは0.005μmであり、yの下限は、好ましくは0.05μm、より好ましくは0.1μmである。かかる面性状の成形品を製造するには、同様の性状を満足する金型を用いて、射出成形(射出圧縮成形を含む)ことが好ましい。かかる面性状の詳細は、特開2002−128909号公報に記載され、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0019】
(I−i)樹脂材料−Aの詳細について
樹脂材料−Aに使用されるポリカーボネート樹脂はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が好ましいが、ビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールで重合された、各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二価の脂肪族または脂環式アルコールを重合または共重合させたポリカーボネートまたは共重合ポリカーボネートであってもよい。脂環式アルコールとしてはイソソルビドが好適に利用される。更には、ポリオルガノシロキサン単位、ポリアルキレン単位、およびポリフェニレン単位などポリカーボネート以外の単位が共重合された共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000〜40,000の範囲であると、幅広い分野に適用可能となる。粘度平均分子量が20,000以上であると強度に優れ、車両用樹脂窓に好適となる。本発明のポリカーボネート樹脂においては、粘度平均分子量の下限はより好ましくは22,000、更に好ましくは23,000である。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の上限は、汎用性の点からより好ましくは35,000、更に好ましくは30,000である。尚、かかる粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。
【0021】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。ポリカーボネート樹脂の詳細については、例えば、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0022】
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、上記の透明性を損なわない範囲において従来公知の各種の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、離型剤、摺動剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、強化充填材、衝撃改質剤、光触媒系防汚剤、酸抑制剤、加水分解安定剤、およびフォトクロミック剤などが例示される。尚、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、および離型剤などは、従来ポリカーボネート樹脂における公知の適正量を配合できる。かかる量が樹脂の透明性を阻害することが稀であるからである。
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、上記の中でも特に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および赤外線吸収剤などを含有することが好ましい。
【0023】
(熱安定剤)
熱安定剤としては、リン系安定剤が好適に例示される。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン安定剤のうちホスファイトの具体例としては、(a-1)トリス(イソデシル)ホスファイトの如きトリアルキルホスファイト、(a-2)フェニルジイソデシルホスファイトの如きアリールジアルキルホスファイト、(a-3)ジフェニルモノ(イソデシル)ホスファイトの如きジアリールモノアルキルホスファイト、(a-4)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの如きトリアリールホスファイト、(b)ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトなどのペンタエリスリトール型ホスファイト、並びに(c)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトの如き二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイトなどが好適に例示される。リン安定剤のうちホスフェートの具体例としては、トリメチルホスフェートおよびトリフェニルホスフェートなどが好適に例示される。ホスホナイト化合物の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトなどが好適に例示される。第3級ホスフィンの具体例としては、トリフェニルホスフィンが好適に例示される。
【0024】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物が好適に例示される。例えばテトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好適に利用される。
【0025】
他の熱安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤、およびラクトン系安定剤などが例示される。
【0026】
上記熱安定剤および酸化防止剤の配合量は、樹脂材料−Aの重量を基準として0.0001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%である。但しラクトン系安定剤は、その上限を0.03重量%とするのがよい。
【0027】
(紫外線吸収剤)
本発明における紫外線吸収剤としては、公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびマロン酸エステル化合物などが例示される。より具体的には、例えばベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、および2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]などが好適に例示される。例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、および2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好適に例示される。例えば、環状イミノエステル系化合物としては2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適に例示される。更に例えば、シアノアクリレート系化合物としては1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンが、マロン酸エステル化合物としては、テトラエチル−2,2‘−(1,4−フェニレンジメチリジン)ビスマロネートが好適に例示される。
【0028】
更に上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0029】
上記の中でも良好な熱安定性を有する点から、より好適な紫外線吸収剤として環状イミノエステル系化合物が挙げられる。その他化合物においても比較的高分子量である方が良好な耐熱性が得られ、例えば、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、および1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンが好適に例示される。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂材料−Aの重量を基準として、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0030】
また本発明の樹脂材料−Aおよび後述するE層は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。ヒンダードアミン系光安定剤と上記紫外線吸収剤との併用が耐候性を効果的に向上させる。かかる併用では両者の重量比(光安定剤/紫外線吸収剤)は95/5〜5/95の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲が更に好ましい。光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。光安定剤の含有量は樹脂材料−Aの重量を基準として、好ましくは0.0005〜3重量%、より好ましくは0.01〜2重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0031】
(赤外線吸収剤)
車両のエアコンデイショナーの効率を高めるため、本発明における樹脂材料−A中には、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより本発明で製造される樹脂製グレージングは、殊に車両用樹脂窓に適用された場合には、その軽量化による効果のみならず、エアコンデイショナー効率の向上により、更なる二酸化炭素削減に代表される環境負荷の低減を達成できる。本発明の赤外線吸収剤としては、金属酸化物、金属ホウ化物、および金属窒化物などの無機近赤外線吸収剤、フタロシアニン系近赤外線吸収剤の如き有機近赤外線吸収剤、並びに炭素フィラーが好適に例示される。
【0032】
無機近赤外線吸収剤は、透明性と近赤外線吸収性との両立、樹脂中への分散適性などの点から、その平均粒子径が好ましくは1〜200nm、より好ましくは2〜80nm、更に好ましくは3〜60nmである。無機材料としては、本発明の効果を奏する範囲であれば、材料自体に制限はなく、金属酸化物、金属ホウ化物、金属窒化物などが挙げられる。
【0033】
無機近赤外線吸収剤における金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどが挙げられる。金属ホウ(硼)化物としては、多ホウ化金属化合物が好ましく、具体的には、ホウ化ランタン(LaB)、ホウ化プラセオジウム(PrB)、ホウ化ネオジウム(NdB)、ホウ化セリウム(CeB)、ホウ化イットリウム(YB)、ホウ化チタン(TiB)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化ハフニウム(HfB)、ホウ化バナジウム(VB)、ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB、CrB)、ホウ化モリブデン(MoB、Mo、MoB)、ホウ化タングステン(W)などが挙げられる。また金属窒化物としては、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウムなどが挙げられる。
【0034】
これらの中で、近赤外線の吸収率が高く、かつ可視光線の透過率が高いことから、酸化タングステン系化合物が好ましく、特には下記一般式(α)で示される酸化タングステン系化合物が好ましい。
MxWyOz ・・・(α)
ここで、M元素はCs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、FeおよびSnからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Wはタングステンを示し、Oは酸素を示す。上記一般式(α)で示される酸化タングステン系化合物のうち、特にM元素がCsで表わされるセシウム含有酸化タングステンが、近赤外線吸収能が高いことから好適である。
【0035】
また、上記一般式(α)において、添加されるM元素の添加量はタングステンの含有量を基準としたx/yの値として、0.001≦x/y≦1.1の関係を満足することが好ましく、特にx/yが0.33付近であることが、好適な近赤外線吸収能を示す点で好ましい。また、x/yが0.33付近であると、六方晶の結晶構造をとりやすく、該結晶構造をとることによって、耐久性の点でも好適である。また、上記一般式(α)における酸素の含有量は、タングステンの含有量を基準としたz/yの値として、2.2≦z/y≦3.0の関係を満足することが好ましい。より具体的には、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができる。上記無機近赤外線吸収剤は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。
【0036】
有機近赤外線吸収剤としては、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、メルカプトナフトール系化合物、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジアリルメタン系化合物、トリアリルメタン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、およびフタロシアニン系化合物などが例示される。これらの中でも、フタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物を好適な例示として挙げることができる。
炭素フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなど例示され、特にカーボンブラックが好ましい。
【0037】
上記、金属酸化物系近赤外線吸収剤の含有量は、重量割合で樹脂材料−A:100重量%中好ましくは10〜2,000ppm、より好ましくは50〜1,000ppm、更に好ましくは100〜700ppmである。金属ホウ化物系近赤外線吸収剤の含有量はそれぞれ、樹脂材料−A:100重量%中、重量割合で好ましくは、1〜200ppm、より好ましくは5〜100ppmである。
【0038】
(II)インキ層((B)層)
本発明にかかる(B)層は、アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層である。このアクリルポリウレタンは、アクリルポリオール樹脂以外のポリオールをさらに共重合したものでもよい。
【0039】
(II−i)アクリルポリオール樹脂成分(以下(b−1)成分と称する)
本発明にかかる(b−1)成分は、メチルメタクリレートを主成分とする単量体を重合して得られるヒドロキシル基を含有する共重合体が、インキの耐熱性および耐候性の両立の点から好ましい。共重合体は、ヒドロキシル基を含有する単量体と、主成分がメチルメタクリレートからなるヒドロキシル基を含有しない単量体とからなるものがヒドロキシル基量の制御が容易な点からより好ましい。
【0040】
メチルメタクリレート以外のヒドロキシル基を含有しない単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびイソペンタニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはいずれも単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。尚、ここで(メタ)アクリレートの表記は、アクリレートおよびメタクリレートのいずれもが含まれることを意味する。
【0041】
本発明における(B)層は、適度な柔軟性を有することが好ましく、適度な柔軟性を有することで、基材A層との間の膨張差を吸収し良好な密着性を保つことができる。更に、曲げ加工への追従性に優れるので、(B)層を形成後に曲げ加工を行うことも容易となる。これらの特性は、最終的にグレージング積層体を構造部材に接着した後の、高温もしくは低温の使用時における良好な接着性に大きく寄与する。かかる適度な柔軟性を付与する点から、上記のメチルメタクリレート以外の単量体として、アルコール残基の炭素数が4以上である(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。中でもn−ブチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、特にn−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
一方、ヒドロキシル基を含有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのβ−メチル−γ−バレロラクトン付加物、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、およびグリセロールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、並びにアリルアルコール、グリセロールモノアリルエーテル、およびグリセロールジアリルエーテルなどのアリル化合物類などが例示される。これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が入手容易で反応性に優れている点から好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0043】
アクリルポリオール樹脂のOH基含有量は、全重量を基準として好ましくは0.5〜7.4重量%、より好ましく1〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%である。また、OH基当量(OH基1個当たりの分子量)は、好ましくは230〜3,400、より好ましく340〜1,700、更に好ましくは570〜1,700である。またメチルメタクリレートの割合は、(b−1)全体重量に対して25〜85重量%が好ましい。
【0044】
また、アクリルポリオール樹脂の数平均分子量は、好ましくは230〜30,000、より好ましくは、500〜10,000、更に好ましくは1,000〜7,000である。かかる数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーによって測定される、スチレン換算の数平均分子量である。
【0045】
(II−ii)(b−1)成分以外のポリオール成分(以下(b−2)成分と称する)
上記の如く、本発明においてはインキ層が適度な柔軟性を有することが好ましいが、かかる柔軟性や形状追従性をより高めるため、本発明では、上記(b−1)成分以外のポリオール成分を含有することが好ましい。後述する柔軟かつ長鎖の成分を含んで架橋構造を形成することにより、柔軟性や形状追従性を高めることができる。
【0046】
(b−2)成分のポリオールは、2以上のヒドロキシル基を有するものであり、好ましくは1分子中に2もしくは3のヒドロキシル基を有するものである。かかるヒドロキシル基は、分子中のいずれの箇所に結合してもよいが、より好ましくは、分子の末端に2つのヒドロキシル基を有するものである。(b−2)成分のポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、およびシリコーンポリオールなどを用いることができる。かかるポリオールの数平均分子量は、100〜2,000の範囲であり、好ましくは100〜1,000、更に好ましくは150〜600である。(b−2)成分としてはポリエーテルポリオールが耐熱性と柔軟性との両立の点から最も好適に利用できる。
【0047】
ポリエーテルポリオールとしては、環状エーテルを開環重合して得られるもの、および多価アルコールと環状エーテル化合物との反応生成物などが好適に例示される。かかる多価アルコールとしては、低分子量ジオール、トリメチロールプロパンおよびグリセリンなどのトリオール、並びにキシリトールおよびソルビトールなどの3価を超える多糖類などが例示される。低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、およびシクロヘキサンジメタノールなどが例示される。環状エーテル化合物としては、エチレンオキサイド、およびプロピレンオキサイドが好適に例示される。
【0048】
ポリエーテルポリオールとしては、より具体的には、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールなどを用いることができる。ポリエチレングリコールとしては、たとえば、2量体であるジエチレングリコール、3量体であるトリエチレングリコール、および5量体であるペンタエチレングリコールなどが例示される。ポリエーテルポリオールとしては、より好ましくは2〜10量体の範囲、更に好ましくは3〜5量体、特に好ましくは3量体である。
【0049】
ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸またはその無水物と低分子量ジオールとの重縮合によって得られるものを用いることができる。かかるジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびフタル酸などが例示される。また低分子量ジオールとしては、上記ポリエーテルポリオールの例示化合物が同様に利用できる。更には、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコールなども含まれる。ポリエステルポリオールとしては、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケートなどを用いることができ、また、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトンなどを用いることができる。
【0050】
ポリエーテル・エステルポリオールとしてはポリエステルグリコールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルグリコールとジカルボン酸とを重縮合したもの、例えば、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートなどを用いることができる。
【0051】
ポリカーボネートポリオールとしては、低分子量ジオールとアルキレンカーボネートまたはジアルキルカーボネートとから脱グリコールまたは脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネートなどを用いることができる。
【0052】
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを用いることができ、シリコーンポリオールとしては、ポリジメチルシロキサンポリオールなどを用いることができる。
【0053】
(II−iii)ポリイソシアネート化合物(以下(b−3)成分と称する)
本発明にかかる(b−3)成分は、2以上のイソシアネート基を有するものをいう。例えば、ジイソシアネート化合物としては、
(1)トリレンジイソシアネート(通常“TDI”と略称される。2,4−TDI、および2,6−TDIを含む)、ジフェニルメタンジイソシアネート(“MDI”と略称され、4,4’−MDI、2,4’−MDI、および2,2’−MDIを含む)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(“XDI”と略称され、o−XDI、m−XDI、およびp−XDIを含む)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(“TMXDI”と略称される)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、および3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;
(2)テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(“HDI”と略称される)、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、およびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(“TMDI”と略称され、2,2,4−TMDI、および2,4,4−TMDIを含む)などの脂肪族ジイソシアネート;
(3)イソホロンジイソシアネート(“IPDI”と略称される)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(“H12MDI”と略称される)、水素添加キシリレンジイソシアネート(“HXDI”と略称される)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート
などが例示され、トリイソシアネート化合物としては、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、およびトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートなどが例示される。
【0054】
これらは単独の使用および2種以上の併用のいずれも可能である。これらの中でも、グレージング製品に必要な耐光性の観点から、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートなどの芳香環を含まないポリイソシアネート化合物が好ましく、特にHDIが好適である。
【0055】
(b−3)成分のポリイソシアネート化合物は、更に上記ポリイソシアネート化合物が、ウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体、およびカルボジイミド変性体などの変性体となったものを含む。
【0056】
かかる変性体の具体例としては、TDIとトリメチルロールプロパンとのアダクト変性体、TDIのイソシアヌレート変性体、TDIとHDIとのイソシアヌレート変性体、HDIとトリメチルロールプロパンとのアダクト変性体、HDIのウレトジオン変性体、HDIのビウレット変性体、HDIのイソシアヌレート変性体、およびIPDIのイソシアヌレート変性体が例示され、中でもHDIのビウレット変性体が好適である。またポリイソシアネート化合物のNCO含有量は15〜25重量%の範囲が反応効率に優れ好ましい。
【0057】
ポリイソシアネート化合物は、必要に応じてブロック化されていてもよい。かかるブロック化ポリイソシアネートのブロック化剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびイソブタノールなどのアルコール;フェノール、クレゾール、キシレノール、p−ニトロフェノール、およびアルキルフェノールなどのフェノール類;マロン酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、およびアセチルアセトンなどの活性メチレン化合物;アセトアミド、アクリルアミド、およびアセトアニリドなどの酸アミド類;コハク酸イミド、およびマレイン酸イミドなどの酸イミド;2−エチルイミダゾール、および2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;2−ピロリドン、およびε−カプロラクタムなどのラクタム類;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、およびアセトアルドキシムなどのケトンまたはアルデヒドのオキシム類;その他エチレンイミン、および重亜硫酸塩などが挙げられる。ヒドロキシル基(OH基)に対するイソシアネート基(NCO基)の当量比(NCO基/OH基)は、1/5〜5/1の範囲が好ましく、より好ましくは1/3〜3/1、更に好ましく1/2〜2/1の範囲、特に好ましくは1/1〜2/1の範囲である。
【0058】
上記(b−1)成分および(b−3)成分、並びに必要に応じて(b−2)成分はそれ自体で、好ましくはこれらを溶剤に溶解した態様でインキとされ、A層上に該インキを積層し、乾燥および硬化させてB層である2液硬化性インキ層が形成される。かかるインキにおける溶剤としては、酢酸ブチル、酢酸エチル、2−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、およびブチルジエチレングリコールアセテートなどのエステル類、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、およびソルベッソ150などの芳香族炭化水素系溶剤、並びにヘキサンの如き脂肪族炭化水素系溶剤が好適に例示される。本発明では、A層のポリカーボネートを必要以上に劣化させず、かつ良好な密着性を得るため、B層を形成するためのインキは、そのインキの状態において、芳香族炭化水素系溶剤を主成分とし、副成分として上記のエステル類を含有する溶剤であることが好ましい。より具体的にはインキの溶剤成分100重量%中、50~97重量%の芳香族炭化水素系溶剤と、3〜50重量%のエステル類を含有する構成であることが好ましい。
【0059】
上記(b−1)成分および(b−3)成分、並びに(b−2)成分を含み、かかる各成分の好適な態様を満足する2液硬化性インキの代表例としては、帝国インキ製造(株)製のPOSスクリーンインキが例示される。
【0060】
(II−iv)インキに配合可能なその他の成分
本発明の(B)層を形成するインキには、硬化促進用触媒、顔料、レベリング剤、消泡剤、レオロジー調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、各種機能性粒子、可塑剤、および分散剤などの当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することができる。硬化促進用触媒の例としては、ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリル酸ジ−n−オクチル錫、2−エチルヘキサン酸錫、2−エチルヘキサン酸亜鉛、およびコバルト塩などの金属塩、並びにトリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ペンタメチルジエチレントリアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびN,N’−ジメチルピペラジンなどの3級アミン類があげられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。かかる触媒は、インキ固形分100重量%あたり、金属塩では、0.01〜1重量%の範囲、3級アミン類では0.1〜5重量%の範囲が好ましい。
【0061】
顔料としては、印刷インキに使用される各種の染料および顔料を利用でき、顔料は無機顔料および有機顔料のいずれも利用できる。かかる有機顔料にはレーキ顔料およびトナー顔料のいずれも利用でき、レーキ顔料の体質顔料には水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、および酸化チタンなどを利用することができる。無機顔料としては、例えば、(i)二酸化チタン(白色顔料の他、チタンイエローおよびチタンブラックを含む)、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、鉄黒、およびコバルトブルーなどの金属酸化物、(ii)アルミナ白、酸化鉄黄、およびビリジアンなどの金属水酸化物、(iii)黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、およびストロンチウムクロメートなどのクロム酸塩、(iv)ホワイトカーボン、クレー、タルク、および群青などの珪酸塩、(v)沈降性硫酸バリウム、およびバライト粉などの硫酸塩、(vi)炭酸カルシウムの如き炭酸塩、(vii)その他の無機顔料としてフェロシアン化物(紺青)、燐酸塩(マンガンバイオレット)、および炭素(カーボンブラック)などが例示される。
【0062】
また有機顔料としては、ローダミンレーキおよびメチルバイオレットレーキなどの塩基性染料、キノリンイエローレーキの如き酸性染料、マラカイトグリーンレーキの如き建染染料、アリザニンレーキの如き媒染染料、各種のアゾ系顔料(カーミン6Bおよびパーマネント2Bなどの溶性アゾ系顔料、ジアゾ系およびモノアゾ系の如き不溶性アゾ系顔料を含む)、フタロシアニンブルーの如きフタロシアニン顔料、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、およびキナクリドンレッドなどの縮合多環顔料、並びにその他ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、BASF社製ルモゲン(登録商標)の如き蛍光顔料、根本特殊化学(株)製ルミノーバの如き畜光顔料、およびアニリンブラックなどを例示することができる。
【0063】
本発明のグレージング積層体は、その好適な態様において車両用グレージングに利用され、その接着部の遮蔽および保護のためのブラックアウト処理は、通常文字通り黒色でなされるが、黒色以外の着色でもよい。黒色の場合、顔料の主成分としてカーボンブラックが好適に利用できる。カーボンブラックの吸油量は特に制限されない。遮蔽性の点では吸油量が高く、ストラクチャーの発達したものが好ましいが、インキが増粘しやすくなることから、かかる点を勘案して調整することができる。
【0064】
本発明におけるインキには単に着色機能を有する顔料だけでなく、他の機能を付与する成分を含むことにより、インキ層に種々の機能を付与することもできる。かかる機能としては、例えば、導電機能(発熱、電磁波吸収、および帯電防止などの機能)、撥水・撥油機能、親水機能、紫外線吸収機能、赤外線吸収機能、自己治癒機能、並びに割れ防止機能などが例示される。例えば、着色目的のインキ層を形成した後、その上にまたはそれとは別の部分に、かかる機能を有するインキ層を形成する態様が例示される。本発明のグレージング積層体には、殊に導電機能、紫外線吸収機能、および赤外線吸収機能などを、透明性を大きく損なうことなく付与することが求められることがある。インキ層にこれらの機能を有する粒子を配合することにより、かかる機能を向上させることができる。
【0065】
かかる導電機能を得るのに利用される配合成分としては、金属粒子の如き導電性粒子が好適に例示される。かかる導電性粒子としては、例えば銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、およびニッケル(Ni)の群から選ばれた元素を含む金属または合金、あるいは酸化物などの微粒子が挙げられる。これらの導電性粒子は、単独でも2種類以上を混合して使用してもよい。かかる金属粒子の平均粒径は、0.001μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.001μm〜2μmである。特に好適には、金属ナノ粒子が好適であり、その平均粒径は、0.001〜0.01μmが好ましい。金属ナノ粒子は、金属被膜を容易に創製できる点で好ましい。
【0066】
上記紫外線吸収機能を得るのに利用される配合成分としては、後述する“シリコーン樹脂系トップ層”において説明される各種の紫外線吸収剤を利用することができる。より好適には各種の金属酸化物が利用でき、特に酸化チタン、酸化亜鉛、および酸化セリウムが好適である。上記赤外線吸収機能を得るのに利用される配合成分としては、樹脂材料−A中に配合可能な成分として説明される各種の赤外線吸収剤を利用することができる。
【0067】
尚、上記顔料や機能性粒子などのインキ中の分散質は、そのインキ中での分散性を高めるため、各種の分散剤と併用または複合されることが好ましい。かかる分散剤としては、界面活性剤、および高分子分散剤などを使用することができる。かかる界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルメチルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などを挙げることができる。更に界面活性剤のうち、ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、およびグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0068】
高分子分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、およびでんぷん誘導体などが例示される。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、およびリグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も挙げられる。上記の分散剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0069】
(II−v)印刷方法およびインキ層の厚み
本発明における2液硬化性インキ層の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法で、平板のもしくは湾曲した成形品表面に形成でき、特に印刷法が好適である。印刷法としては、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷などの方法が例示される。これらの中でも本発明においては、スクリーン印刷が最も好ましく適用できる。スクリーン印刷では以下の利点を有するからである。かかる利点は、第1に生産性に優れ、かつ大型の印刷対象にも対応しやすいこと。第2に多層塗りが容易故に印刷層の厚みの許容範囲が広いこと。第3に曲面への対応も比較的容易なことである。
【0070】
本発明においては2液硬化性インキ層層の厚みは、好ましくは3〜60μmの範囲、より好ましくは5〜40μmの範囲、最も好ましくは6〜35μmである。上記範囲では、樹脂製グレージングと固定されるべき剛体である構造部材との接着性能が良好になるだけではなく、遮光性の如き印刷層の所期の目的と、作業効率や印刷外観との両立が可能である。更に、印刷は1層塗りだけでなく2層以上の多層塗りも可能である。多層塗りにおいては、各層6〜12μmの厚みで重ねるのが好ましく、風乾のみを行い多層塗りを重ね、すべての塗りが終了した後に焼付工程を行う方法が好ましい。印刷のスクリーン板は、綿、ナイロン、およびポリエステルなどの繊維からなる版、および電鋳版のいずれも利用できるが、特にナイロン繊維もしくはポリエステル繊維からなる版が好適である。これらの繊維はカーボンで表面処理された糸を含んでもよい。繊維は、モノフィラメントおよびマルチフィラメントのいずれも利用できるが、モノフィラメントが好ましい。また糸のタイプは、S、TおよびHDのいずれも利用できる。更に、これらの版はインキの良好な版離れや、目詰まりの防止、それらの結果として平滑な印刷面の形成を目的として、撥水・撥油性の高い繊維や、かかる性質の表面処理剤で処理した繊維からなる版を利用することもできる。
【0071】
(III)接着用プライマー層((C)層)
本発明における(C)層は、ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー用組成物から形成されてなる。かかるプライマー組成物には、更に、通常配合される充填剤、触媒、乾燥剤、樹脂成分、および任意にその他の化合物を含有することができる。
【0072】
(III−i)(C)層に用いるポリイソシアネート化合物(以下(c−1)成分と称する)
本発明における(C)層に用いるポリイソシアネート化合物としては、上述の“(II−iii)ポリイソシアネート化合物”の項において例示したものと同様のものを使用することができるが、より好適には芳香環を含有するポリイソシアネートを主成分とするものである。かかるポリイソシアネートは反応性に優れる。より好適には、MDI、TDI、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、およびトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートからなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を、(c−1)成分として使用されるポリイソシアネート化合物100モル%中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは55〜90モル%とする。
【0073】
(c−1)成分には、脂肪族ポリイソシアネート化合物、および脂環式ポリイソシアネート化合物などの他のポリイソシアネート化合物を併用することもできる。他の併用する化合物としては、TDIとHDIとのイソシアヌレート変性体、HDIとトリメチルロールプロパンとのアダクト変性体、HDIのイソシアヌレート変性体、およびIPDIのイソシアヌレート変性体が例示され、中でもTDIとHDIとのイソシアヌレート変性体が反応性の調整が容易なため好適である。
【0074】
特に好適には、MDI、トリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェート、およびTDIとHDIとのイソシアヌレート変性体からなる組合せが挙げられ、特にトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートをかかる3者の合計100モル%中、50〜70モル%の範囲とすることが好ましい。かかる構成とすることで、反応活性とプライマーの製品寿命との両立に優れ、良好な接着性と製造時の工数削減とが得られる。
【0075】
(III−ii)(C)層に用いる溶剤(以下(c−2)成分と称する)
本発明における(C)層に用いる溶剤は、酢酸エステルを主成分とする。その他の成分としては、イソシアネート基に対して不活性なものであれば公知の各種の溶剤がいずれも利用可能である。かかる酢酸エステルは、好ましくは酢酸エチルおよび酢酸ブチルであり、これらがプライマー組成物中の溶剤100重量%中、70重量%以上、さらには80重量%以上含有されることが好ましい。その他の成分としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、およびトルエンが好適に例示されるが、更にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、およびドデカンなどの炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物を併用することもできる。かかる併用時の炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物の割合は、溶剤100重量%中1〜15重量%とするのが好ましい。
【0076】
プライマー組成物における溶剤の添加量は、イソシアネート化合物の種類などによって適宜決定されるものであり、特に限定はないが、通常、イソシアネート成分100重量部に対して100〜1,000重量部程度、より好ましくは200〜700重量部である。
【0077】
イソシアネート基の反応を促進する触媒としては、“(II−iv)インキに配合可能なその他の成分”の項で硬化促進用触媒として例示した、錫塩の如き金属塩、およびアミン系触媒が例示され、中でも金属塩としてはジラウリル酸ジブチル錫、およびアミン系触媒としては、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好適である。プライマー組成物では、ジラウリル酸ジブチル錫をの如き錫塩を必須として、必要に応じてアミン系触媒を併用することが好ましい。かかる触媒の添加量はイソシアネート化合物の種類などによって適宜決定されるものであり、特に限定はないが、通常、イソシアネート成分100重量部に対して0.1〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0078】
(III−iii)(C)層に用いるその他の成分(以下(c−3)成分と称する)
本発明における(C)層に用いるその他の成分としては、良好な作業性を得るためにポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、およびアクリルポリウレタン樹脂などのウレタン樹脂、並びにポリエステル樹脂などを併用することができる。かかる樹脂は、いずれも溶剤溶解性を示す熱可塑性ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂が好適に利用される。より好ましくは熱可塑性ポリウレタン樹脂であり、中でもポリエステルポリウレタン樹脂が好ましい。かかる樹脂の数平均分子量は、好ましくは5,000〜100,000の範囲、より好ましくは、15,000〜50,000の範囲である。尚、かかる樹脂の添加量は、通常、イソシアネート成分100重量部に対して10〜30重量部程度であり12〜25重量部がより好ましい。
【0079】
更に、プライマー組成物の安定性を確保するために、合成ゼオライトの如きイソシアネート基に対して不活性な脱水剤が併用できる。また充填剤が、接着性の改善、遮光性の付与、および後述するウレタン接着剤層の接着剤に含有する可塑剤の移行防止などの目的で、プライマー組成物中に好適に配合される。かかる充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、クレー、ガラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン、プラスチックバルーン、タルク、酸化チタン、生石灰、ゼオライト、および珪藻土などが挙げられる。特にカーボンブラックが好ましく、その含有量をプライマー組成物中、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは5〜15重量%である。この範囲であると、貯蔵安定性やプライマー塗膜の柔軟性に優れる。カーボンブラックは紫外線や可視光線を遮へいし、または吸収するため、樹脂製グレージング積層体の耐候性向上に寄与する。カーボンブラックは、特に限定されず、例えばASTM規格で規定される、N110、N220、N330、N550、およびN770など各種が例示される。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また充填剤の割合は、接着用プライマーの固形分100重量%中、10〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%である。更にプライマー組成物には、基材との接着性を改良するためトリポリリン酸に水素アルミニウムの如きリン酸塩を配合することができる。
【0080】
(III−iv)(C)層の組成物の製造方法
本発明における(C)層を形成する組成物の製造方法は、各成分を十分に混合できる各種の公知の方法がいずれも適用可能であるが、例えば、ボールミルによる混合が好適に例示される。
【0081】
(C)層は、各種のアプリケータを用いてプライマー組成物を塗工し、通常常温にて乾燥させて形成される。塗工方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、およびロールコーティング法などを用いて塗工できる。接着用プライマー層の厚みは、好ましくは2〜40μmの範囲、より好ましくは3〜30μm、より好ましくは5~20μmの範囲である。上記範囲では、プライマー中溶剤の(A)層のポリカーボネート樹脂への悪影響を抑制すると共に、良好な接着が可能となる。更に、プライマーは1層塗りだけでなく2層以上の多層塗りも可能である。プライマーは十分に乾燥され、しかしその活性成分が消失しない時間のうちに後述するウレタン接着剤が塗工される。かかる時間は、2分以上24時間以内が好ましく、より好ましくは5分以上30分以内である。尚、多層塗りの場合、かかる時間は最終層の塗工からの時間である。
上記、プライマー組成物の好適な態様の代表例としては、横浜ゴム(株)製のボディ用プライマーであるRC−50E、およびRC−50KEなどが例示される。
【0082】
(IV) ウレタン接着剤層(以下(D)層と称する)
本発明におけるウレタン系接着剤は、湿気硬化型一液性ウレタン接着剤、および二液性ウレタン接着剤のいずれも使用可能であるが、特に湿気硬化型一液性ウレタン接着剤が生産効率に優れているので好ましい。湿気硬化型1液性ウレタン接着剤は、通常イソシアネート基含有化合物、とりわけイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、NCO末端プレポリマーと称す)を主成分とし、これに対して可塑剤、充填剤、触媒、および任意にその他の化合物が配合されてなる。その他の化合物は、該組成物に所望の特性を付与することなどを目的とするものであって、例えばシランカップリング剤などの密着剤、耐熱接着性を付与するための(メタ)アクリレート系共重合体、並びに軽量性・制振性・防音性を付与するための発泡剤やマイクロバルーンなどを包含する。ここで、プレポリマーの含有量は、通常、ウレタン接着剤組成物全量中好ましくは15〜50重量%であり、より好ましくは20〜45重量%、更に好ましくは30〜45重量%の範囲で選択される。ウレタン接着剤組成物の好適な態様の代表例としては、横浜ゴム(株)製のWS−222、およびサンスター技研(株)製の#560などダイレクトグレージング用の各種の接着剤が例示される。
【0083】
(IV−i)イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下(d−1)成分と称する)
本発明における(D)層のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、上記湿気硬化型一液性ウレタン接着剤において主成分として好適に用いられ、種々のポリオールに対して過剰量のポリイソシアネート化合物を、常法により反応させることによって製造され得る。上記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、主鎖がC−C結合よりなるポリオール、低分子ポリオール、並びにその他のポリオールが含まれる。かかるウレタンプレポリマーの数平均分子量は、好ましくは1,000〜30,000、より好ましくは2,000〜10,000の範囲である。イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを製造する際使用される、ポリオールとポリイソシアネート化合物との量比は、OH基に対するNCO基の比率(NCO基/OH基(当量比))において、1.2〜4が好ましく、かかる範囲の下限は1.5がより好ましく、かかる範囲の上限は2.5がより好ましく、2.2が更に好ましい。
【0084】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびペンタエリスリトールなどの多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよびポリオキシテトラメチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド類を付加させて得られるポリオールが例示される。特に、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどの3官能以上の多価アルコールに、アルキレンオキサイド類を付加させて得られる3官能以上のポリオールを含有することが接着剤の強度に優れ、汎用された原材料により容易に製造できる点で好ましい。3官能以上のポリオールとしては、特にポリオキシプロピレントリオールの如きポリオキシアルキレントリオールが安価かつ接着剤強度の点で好ましい。また、かかる3官能以上のポリオールに、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどの2官能のポリオールを併用することが、接着剤に必要な強度を容易に調整できる点で好ましい。3官能以上のポリオールと2官能のポリオールとの比率は、両者の合計100重量%中、3官能ポリオールが好ましく30~80重量%、より好ましくは50〜70重量%の範囲である。尚、かかる比率は、いずれのポリオールにおいても同様である。
【0085】
ポリエステルポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートジオールなどが含まれる。主鎖がC−C結合よりなるポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、水添ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、およびケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが含まれる。低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、およびヘキサンジオールなどが含まれる。更にその他のポリオールとしては、難燃化用ポリオール、含リンポリオール、および含ハロゲンポリオールなどが例示される。
【0086】
上記、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに使用されるポリオールは、単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記ポリオールの中でも特にポリプロピレングリコールが好ましく、かかるポリプロピレングリコールにおいても分子量の異なる2種以上を併用することもできる。
【0087】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに使用されるイソシアネート化合物としては、上述の“(II−iii)ポリイソシアネート化合物”の項において例示したものと同様のものを使用することができるが、より好適には芳香環を含有するポリイソシアネートを主成分とするものであり、MDI、およびTDIが好ましく、特に強度および汎用性の点でMDIが好ましい。尚、かかるイソシアネート化合物は、単独でも2種以上を組み合わせて使用することもでき、また末端構造は、ビウレット変性体であってもよい。
【0088】
(IV−ii)その他の成分
本発明における(D)層のその他の成分としては、可塑剤、充填剤、および触媒等が挙げられる。
可塑剤としては、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、トリオクチルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、アルキルベンゼン、エポキシ化大豆油などが例示される。可塑剤の配合量は、通常、ウレタン接着剤組成物全量中好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%の範囲で選定され得る。
【0089】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、クレー、ガラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン、プラスチックバルーン、タルク、酸化チタン、生石灰、ゼオライト、珪藻土などが例示される。カーボンブラックと他の充填剤との併用が好ましく、他の充填剤としては特に、カオリンおよびモンモリロナイトなどのクレーおよび炭酸カルシウムが好適である。充填剤の配合量は、通常、ウレタン接着剤組成物全量中好ましくは30〜65重量%の範囲であり、より好ましくは40〜60重量%の範囲で、更に好ましくは40〜50重量%の範囲で選定され得る。中でもカーボンブラックは、ウレタン接着剤組成物全量中10〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%の範囲で選定され得る。
【0090】
触媒としては、有機錫化合物(ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ジブチル錫ジマレエートなど);2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ジ(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル;カルボン酸ビスマス(2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなど);カルボン酸(安息香酸、フタル酸、2−エチルヘキサン酸、オクチル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸など);トリエチレンジアミンとその塩;N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7とその塩(フェノール塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、など);イミダゾール系化合物(2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、など)などが例示される。触媒の配合量は、通常、ウレタン接着剤組成物全量中組成物全量中0.005〜0.5重量%の範囲で選定され得る。
【0091】
さらに必要に応じて、密着剤[前記ポリイソシアネート化合物の内分子量1000未満のもの、シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシランなど)、またはかかるポリイソシアネート化合物とシランカップリング剤との反応生成物];ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン変性体など);チタネート系カップリング剤;溶剤(キシレン、トルエンなど);その他、上記以外の老化防止剤、酸化防止剤、発泡剤、紫外線吸収剤、および顔料などを適量加えてもよい。
【0092】
(IV−iii)(D)層の厚み
本発明における(D)層の厚みは、Adhesives and Sealants : General Knowledge, Application Techniques, New Curing Techniques (Elsevier Science Ltd,2006)の385頁Figure27のPlastic/Steelの領域で決定するのが好ましい。但し、かかる図は比較的安全サイドでの領域設定となっていることから、各種の形状や使用条件を鑑みて、かかる領域を区分する線よりも2mm未満、好ましくは1.5mm未満の範囲でウレタン接着剤の厚みを薄くすることも可能である。特に成形品の長尺が1m未満の場合は、Δα=12×10−6Kのラインを外挿するライン上で厚みの設計をすることが可能である。
【0093】
(V)ハードコート層(以下(E)層と称する)
本発明における(E)層は、有機溶媒にハードコート層用原料を溶解または/および分散させたコーティング液から形成され、1層のみから構成されても、2層以上の積層から構成されてもよい。かかるコーティング液は、通常実質的に層を形成する固形分と有機溶媒とからなり、更に水を含有する場合もある。上記(E)層を形成するコーティング液の有機溶媒のSP値(solubility parameter 値)は、18.5〜22(MPa)0.5であることが好ましく、19.5〜21.5(MPa)0.5であることが更に好ましい。かかる範囲では、有機溶媒のポリカーボネート樹脂への悪影響の低下と、固形分への溶解性の向上とを両立することができる。本発明における有機溶媒のSP値は、原崎勇次著;「コーティングの基礎科学」p.51(1977)槙書店の化学組成からの計算に則って計算される。好ましい有機溶媒としては、アルコール類やケトン類が挙げられる。
【0094】
1層のみからなる(E)層においては、従来コーティングに用いられる各種の有機ポリマーが利用できる。中でも本発明においては、多官能アクリル系ポリマーを主成分とする硬化型ポリマー、並びに有機ポリマーと金属酸化物微粒子とからなる有機−無機複合体が好適に例示される。かかる(E)層を形成する多官能アクリル系ポリマーとしては、メチルメタクリレートから誘導させる構成単位を主成分とし、各種の官能基により自己架橋および他の架橋成分との反応による架橋構造を形成するポリマーが好適に例示される。かかる架橋構造の形成に寄与する官能基は、従来公知の各種の官能基が利用でき、例えば二重結合、水酸基(例えば、メチルロールメラミンやポリイソシアネートとの反応による架橋)、並びに、カルボキシル基(例えば、ポリエポキシとの反応による架橋)などが例示される。一方、(E)層を形成する有機−無機複合体としては、(i)有機ポリマーと該ポリマー中に分散可能な表面処理がなされた金属酸化物との混合型複合体、(ii)有機ポリマーと、該ポリマーに反応可能な官能基を有する表面処理剤で表面処理された金属酸化物とが反応により結合した複合体、並びに(iii)官能基を有する表面処理剤で表面処理された金属酸化物において、かかる官能基同士の反応により、もしくはかかる官能基に対して他の反応性モノマーやポリマーとの反応によりポリマーマトリックスを形成した複合体などが例示され、更にこれらの組合せからなってもよい。
【0095】
2層以上の積層からなる(E)層としては、少なくともプライマー層((E1)層)およびトップ層((E2)層)の2層以上の構成が代表的に例示される。概して(E1)層は、上記(A)層と(E2)層とを強力に結合すると共に、高濃度の紫外線吸収剤を含有することで、(E1)層と(E2)層との結合における、および(A)層における耐候性を向上させる。更に(E2)層と(A)層との熱膨張差を緩和して、(E2)層のクラックなどを防止する役割を有する。かかる(E1)層の機能をより高めるべく、(E1)層と(E2)層との中間に、更に密着性の向上と熱膨張差の緩和を可能とする層を含有した3層以上の構成も可能である。
【0096】
本発明の(E)層は、後述するように(E1)層としてアクリル系樹脂からなるプライマー層、および(E2)層としてシリコーン系樹脂からなるトップ層よりなる積層構成が好適であり、該構成はポリカーボネート製樹脂グレージング分野、殊に輸送機器のグレージング分野において広く知られている。本発明においても従来公知の各種の構成を取ることができる。
【0097】
2層以上の積層ハードコート層は、概して各層が異なる化学構造または機能を有する層から構成されることにより、密着性、硬度、および耐候性などを高い水準で併有でき、本発明においてより好ましい態様である。(E)層を形成する各層は、各々、熱硬化型、および紫外線硬化型の如き活性エネルギー線硬化型のいずれも選択でき、また2層以上の場合、各層ごとに順次硬化させる方法、および積層の後硬化させる方法のいずれも選択できる。
【0098】
1層の場合は(E)層を形成するコーティング液が、2層以上の場合には(E1)層を形成するコーティング液が、(A)層および必要に応じて(B)層の一部に直接塗工されることになる。
【0099】
本発明における(B)層は、溶媒に対して、特に前述のSP値の溶媒に対して良好な耐性を有しており、光透過性基材層に利用可能な(E)層のコーティング液をそのまま使用できる利点を有する。かかる特徴により、(B)層の一部に(E)層のコーティング液が塗工される構成にも問題を生ずることがない。したがって、本発明においては、(C)層および(D)層が積層されていない(B)層上に(E)層を形成することができ、更に好ましくは(C)層および(D)層が積層されていない(B)層上に(E)層、または(E1)層と(E2)層とを含む2層以上の層を形成することができる。
【0100】
(V−i)ハードコート層におけるプライマー層((E1)層)
本発明のハードコート層におけるより好適な(E1)層は、紫外線吸収基および/または光安定性基を有する単量体とアルキル(メタ)アクリレート単量体とを共重合することにより形成されるものである。
【0101】
(V−i−1)プライマー層に用いるアクリル共重合体
上記好適なハードコート層におけるプライマー層は、下記式(A−1)単位、(A−3単位)および(A−4)単位を必須とするアクリル共重合体であって、かかる3つの単位と(A−2)単位との合計が、アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、少なくとも70モル%以上であることを満足し、かつ(A−1)単位〜(A−4)単位が下記の割合を満足するものである。即ち、アクリル共重合体の全繰り返し単位のモル数を基準としたとき、
i) (A−1)単位と(A−2)単位との合計は40〜90モル%の範囲であり、
ii) (A−3)単位は1〜30モル%の範囲であり、
iii) (A−4)単位は5〜30モル%の範囲であり、かつ
iv) (A−1)単位と(A−2)単位との合計のモル数を基準としたとき、(A−1)単位は30モル%以上であることが好ましい。
【0102】
【化1】

(上記式(A−1)中、Rはメチル基またはエチル基を表す。)
【0103】
【化2】

(上記式(A−2)中、Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基を表わす。)
【0104】
【化3】

(上記式(A−3)中、Xは水素原子またはメチル基を表わし、Wは、トリアジン構造、ベンゾトリアゾール構造、およびベンゾフェノン構造からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収性基、または環状ヒンダードアミン構造を有する光安定性基を表わす。)
【0105】
【化4】

(上記式(A−4)中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を表わし、Xは水素原子またはメチル基を表わし、Zはヒドロキシ基、アルコキシシリル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わす。)
【0106】
より好ましくは、(A−1)単位〜(A−4)単位の割合は、アクリル共重合体の全繰り返し単位のモル数を基準としたとき、
i) (A−1)単位と(A−2)単位との合計は好ましくは50〜90モル%、より好ましくは55〜87モル%の範囲であり、
ii) (A−3)単位は好ましくは3〜25モル%、より好ましくは4〜20モル%の範囲であり、
iii) (A−4)単位は好ましくは7〜28モル%の範囲であり、かつ
iv) (A−1)単位と(A−2)単位との合計100モル%中、(A−1)単位は好ましくは40モル%以上、より好ましくは40〜90モル%である。
【0107】
上記(A−1)単位を誘導するモノマーとしては、メチルメタクリレートまたはエチルメタクリレートが挙げられ、単独でまたは両者を混合して使用できる。上記(A−2)単位は、分子内に少なくとも1つのシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートであれば特に制限はない。シクロアルキル基の炭素数は5〜12であることが好ましい。かかる(A−2)単位を誘導するモノマーとしては、シクロヘキシルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、および4−t−ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの化合物が例示される。これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもシクロヘキシルメタクリレートが最も好ましく採用される。
【0108】
上記(A−3)単位のうち、ベンゾトリアゾール構造を含有する単位を誘導するモノマーとしては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロキシメチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2−(メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(2−(メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、および2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(8−(メタ)アクリロキシオクチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。
【0109】
上記(A−3)単位のうち、ベンゾフェノン構造を含有する単位を誘導するモノマーとしては、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(4−(メタ)アクリロキシブトキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−4’−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシ−4’−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、および2−ヒドロキシ−4−(3−(メタ)アクリロキシ−1−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0110】
上記(A−3)単位のうち、トリアジン構造を含有する単位を誘導するモノマーとしては、下記式(A−3−i)または式(A−3−ii)で表されるアクリルモノマーが好ましく使用される。
【0111】
【化5】

(上記式(A−3−i)中、Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R、Rは同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0112】
【化6】

(上記式(A−3−ii)中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R10、R11は同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0113】
具体的には、2−アクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル、2−メタクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル、2−アクリロキシ−1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロパン、および2−メタクリロキシー1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロパンなどが挙げられる。
【0114】
上記(A−3)単位のうち、環状ヒンダードアミン構造を含有する単位を誘導するモノマーとしては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−エチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−シクロヘキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−(4−メチルシクロヘキシル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−オクチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−デシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−ドデシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−(4−メチルシクロヘキシロキシ)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−デシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、および1−ドデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用してよい。
【0115】
上記式(A−4)に対応する官能基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、および2−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシ基を有するモノマー、3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート、および3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートなどのアルコキシシリル基を有するモノマー、3−グリシドキシプロピルアクリレート、および3−グリシドキシプロピルメタクリレートなどのグリシジルオキシ基を有するモノマーが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもヒドロキシ基を有するモノマーが好ましく、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0116】
上記アクリル共重合体の分子量は、標準ポリスチレン換算によるGPC測定から算出される重量平均分子量で2万以上が好ましく、5万以上がより好ましい。また、重量平均分子量で1000万以下のものが好ましく使用される。よって、アクリル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5万〜1000万、より好ましくは5万〜100万、さらに好ましくは5万〜50万である。かかる分子量範囲のアクリル共重合体は、第1層としての密着性や強度などの性能が十分に発揮され好ましい。
【0117】
(V−i−2)(E1)層を形成する他の成分について
上記の(E1)層を形成するアクリル樹脂組成物中には、ブロック化されたポリイソシアネート化合物を含有することが好ましい。ブロック化されたポリイソシアネート化合物とは、イソシアネート基にブロック化剤を反応させ遊離のイソシアネート基をほとんどなくして、常温での反応性を抑制したもので、加熱によりブロック化剤が分離してイソシアネート基となり、反応性を持つに至る化合物を意味する。
【0118】
ブロック化されたポリイソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、アセトオキシムおよびメチルエチルケトオキシムなどのオキシム類、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、およびアセチルアセトンなどの活性メチレン化合物、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、および2−エチル−1−ヘキサノールなどのアルコール類、フェノール、クレゾール、およびエチルフェノールなどのフェノール類に代表されるブロック化剤を付加させて得られるブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
【0119】
ブロック化剤を付加させるポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート、ポリイソシアネートと多価アルコールとのアダクト変性体、ポリイソシアネート同士のイソシアヌレート変性体、およびイソシアネート・ビュレット体などが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、上述の“(II−iii)ポリイソシアネート化合物”に例示の化合物が利用できる。
【0120】
このブロック化されたポリイソシアネート化合物は単独もしくは2種類以上を混合して使用できる。ブロック化された脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート化合物は特に耐候性に優れ好ましい。ブロック化された脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート化合物としては、(i)2〜4個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ化合物と脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート化合物を反応させることにより得られる、アダクト型ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたアダクト型ポリイソシアネート化合物、(ii)脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート化合物から誘導された、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物が好ましい。その中でも、脂肪族ジイソシアネート化合物および/または脂環式ジイソシアネート化合物の炭素数が4〜20のものが好ましく、炭素数4〜15のものがより好ましい。イソシアネート化合物の炭素数をかかる範囲にすることで、耐久性に優れた塗膜が形成される。
【0121】
ブロック化されたポリイソシアネート化合物は、好ましくは5.5〜50重量%、より好ましくは6.0〜40重量%、更に好ましくは6.5〜30重量%の換算イソシアネート基率を有する。換算イソシアネート基率とは、(B)成分を加熱しブロック化剤を分離した場合に、生成するイソシアネート基の重量を(B)成分の重量に対する百分率で表した値である。イソシアネート基率が上記好適な範囲であると、基材への密着性と、(E2)層のクラック防止とを良好に両立できる。換算イソシアネート基率(重量%)は、イソシアネート基を既知量のアミンで尿素化し、過剰のアミンを酸で滴定する方法により求められる。更に、ブロック化されたポリイソシアネート化合物の含有量は、上記アクリル共重合体中に存在するイソシアネートとの反応性基1当量に対してイソシアネート基が0.8〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.3当量、最も好ましくは0.9〜1.2当量となる量である。より好適には、イソシアネートとの反応性基として、上記(A−4)単位のZがヒドロキシ基である単位を含有し、かかるヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が0.8〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.3当量、最も好ましくは0.9〜1.2当量となる量である。
【0122】
更に、上記(E1)層を形成するアクリル樹脂組成物は、ブロック化されたポリイソシアネート化合物のブロック化剤の解離および再生したイソシアネート基とアクリル共重合体のヒドロキシ基とのウレタン化反応を促進させるため、硬化触媒を含有することが好ましい。かかる硬化触媒としては、有機錫化合物、4級アンモニウム塩化合物、3級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられ、これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用される。これらの硬化触媒のなかでも有機錫化合物が好ましく使用される。かかる硬化触媒の詳細は特開2008−231304号公報に記載されている。
【0123】
更に、上記(E1)層を形成するアクリル樹脂組成物は、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、および光安定剤などを含有することができる。これらの剤の詳細も特開2008−231304号公報に記載されている。かかる剤の配合量は、アクリル樹脂組成物100重量%中、シランカップリング剤においては0.2〜8重量%、紫外線吸収剤においては0.2〜20重量%、並びに光安定剤においては0.05〜10重量%が好ましい。紫外線吸収剤および光安定剤は、相乗効果を有することから、上記(A−1)単位〜(A−4)単位にいずれか片方が含まれない場合、それらを相互補完するように含有されることが好ましい。また紫外線吸収剤の場合にも、種類により吸収波長が異なることから、異なる種類の紫外線吸収剤を効果の補完を目的として配合することができる。かかる異なる種類の紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤のいずれも利用できる。無機系紫外線吸収剤としては、後述の(E2)層に含有される単一もしくは複合の酸化物微粒子が好適に例示され、特に酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛が好ましい。かかる無機系紫外線吸収剤の使用においては、印刷インキにおける分散剤と同様に、各種の分散剤を使用してハードコート層中の良好な分散を保つことが好ましい。かかる分散剤としては、高分子系として変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、変性ポリエステル、ポリカルボン酸系、リン酸エステル系、アルキレンオキシド系、およびシリコーン系などが利用でき、かかる分散剤の極性は、アニオン系、カチオン系、およびノニオン系のいずれであってもよい。本発明のハードコート層、殊にプライマー層に好適な分散剤の一例としては、アミノ基を有する分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤が例示され、特にアルキルアミンのアルキレンオキシド変性物で分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤が挙げられる。かかる高分子系分散剤は、ブロックまたはグラフト共重合体の形態であってもよい。更には、かかる分散剤の処理の後、更に変性ポリアクリレートの如き他の分散剤で処理することも可能である。変性ポリアクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びに必要に応じてスチレンの如き他のビニル系モノマーとの共重合体などが例示される。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1〜35のアルキル基、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの如き単環の飽和脂環基を有する(メタ)アクリレート、およびイソボルニル(メタ)アクリレートの如き2以上の環を有する飽和脂環基を有する(メタ)アクリレートなどが含まれる。かかる分散剤の使用量は、上記無機系紫外線吸収剤との合計100重量%中好ましくは3〜80重量%、より好ましくは3〜30重量%が適当である。
【0124】
(V−i−3)(E1)層の膜厚
上記アクリル樹脂組成物を熱硬化させてなる、本発明の好適なプライマー層の膜厚は1〜15μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。膜厚が1μm未満であると、紫外線の透過率が高くなり、ポリカーボネート基材の黄変やシリコーン樹脂系トップ層との密着性の低下が生ずるため、耐候性が乏しくなる。膜厚が15μmを超えると、内部応力の増大のため、また熱硬化時に架橋反応が十分進行しないため、耐久性に乏しい塗膜層になる。また、アクリル樹脂組成物を溶解するために使用する溶剤の揮発が不十分となり、溶剤が塗膜中に残存し、耐熱水性、耐候性を損ねることになる。
【0125】
(V−i−4)(E1)層の形成方法
上記アクリル樹脂組成物からなる(E1)層を形成する方法としては、基材に反応せず且つ該基材を溶解しない揮発性の溶媒に、かかるアクリル樹脂組成物を溶解して、このアクリル樹脂塗料を基材表面に塗布し、次いで該溶媒を加熱などにより除去し、さらに加熱してヒドロキシ基と加熱により生成するイソシアネート基とを反応させ架橋させることにより形成される。かかる溶媒としては、好適には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、および1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、エチルアセテート、ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびエトキシエチルアセテートなどのアセテート類、並びにメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール(プロビレングリコールモノメチルエーテル)、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、および2−ブトキシエタノールなどのアルコール類が利用でき、更に、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、および灯油などの炭化水素類、アセトニトリル、ニトロメタン、並びに水などが挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を混合して使用することもでき、好適には上記SP値の範囲を満足するように混合割合を調整する。かかるアクリル樹脂塗料において、アクリル樹脂組成物(固型分)の濃度は1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。
【0126】
アクリル樹脂塗料が塗布された基材は、通常常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒の乾燥、除去が行われ、加熱硬化する。熱硬化は好ましくは80〜160℃の範囲、より好ましくは100〜140℃の範囲、最も好ましくは110〜130℃の範囲で、好ましくは10分間〜3時間、より好ましくは20分間〜2時間間加熱して架橋性基を架橋させ、第1層として上記アクリル樹脂層を積層した成形品が得られる。熱硬化時間が10分より短いと架橋反応が十分に進行せず、高温環境下での耐久性、耐候性に乏しい塗膜層になることがある。また、塗膜の性能上熱硬化時間は3時間以内で十分である。
【0127】
(V−ii)ハードコート層におけるシリコーン樹脂系トップ層((E2)層)
本発明の(E2)層は、コロイダルシリカおよびアルコキシシランの加水分解縮合物を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物を熱硬化してなる塗膜層が好ましい。好適には上記コロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とからなるオルガノシロキサン樹脂固形分、酸、硬化触媒、および溶媒からなるコーティング用塗料を用いて形成される。シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものとしては、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)および/または2官能シロキサン単位に相当する化合物を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが例示される。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためレベリング剤を添加できる。かかるコロイダルシリカ、アルコキシシラン、酸、硬化触媒、および溶媒の具体的態様、配合量、並びに調整条件の詳細に関してもまた特開2008−231304号公報に記載されている。耐候性をより重視する場合には、金属酸化物に代表される無機系紫外線吸収剤、および有機系紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、無機系のものとしては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、アンチモン含有酸化スズ、およびスズ含有酸化インジウムなどの単一もしくはこれらの複合金属酸化物微粒子、およびこれらの混合物が例示される。中でも酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛が好ましく、特に酸化セリウムが好ましい。かかる併用は、ハードコートの硬度、透明性、および耐候性を全て向上させる。かかる微粒子の粒径は好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmである。
【0128】
その他の紫外線吸収剤としては、チタン、亜鉛、およびジルコニウムなどの金属キレート化合物、並びにこれらの(部分)加水分解縮合物、また有機系のものとしては、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、もしくはトリアジン系である化合物誘導体、並びに側鎖にこれら紫外線吸収剤を含有するビニルポリマーの如き重合体もしくは共重合体などを挙げることができる。
【0129】
上記(E2)層は、上記オルガノシロキサン樹脂組成物を溶媒に溶解して得られたコーティング用塗料を、透明プラスチック基材上に形成された上記(E1)層上に塗布し、次いで加熱硬化することにより形成される。溶媒の使用量は、コロイダルシリカおよびアルコキシシランの加水分解縮合物の合計100重量部に対して、好ましくは50〜1900重量部、より好ましくは150〜900重量部である。固形分の濃度は好ましくは5〜70重量%、より好ましくは7〜40重量%である。コーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料は、酸および硬化触媒の含有量を調節することによりpHを好ましくは3.0〜6.0、より好ましくは4.0〜5.5に調製することが望ましい。この範囲でpHを調製することにより、常温でのオルガノシロキサン樹脂塗料のゲル化を防止し、保存安定性を増すことができる。該オルガノシロキサン樹脂塗料は、通常数時間から数日間更に熟成させることにより安定な塗料になる。
【0130】
上記(E2)層の形成は、上記(E1)層の形成に引き続き連続して行うことが好ましい。オルガノシロキサン樹脂組成物が塗布された基材は、通常、常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒を乾燥、除去した後、加熱硬化する。熱硬化は基材の耐熱性に問題がない範囲で高い温度で行う方がより早く硬化を完了することができ好ましい。なお、常温では、熱硬化が進まず、硬化被膜を得ることができない。これは、コーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料中のオルガノシロキサン樹脂組成物が部分的に縮合したものであることを意味する。かかる熱硬化の過程で、残留するSi−OHが縮合反応を起こしてSi−O−Si結合を形成し、耐摩耗性に優れたコート層となる。熱硬化温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。熱硬化時間は、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間である。
【0131】
上記(E2)層の厚みは、好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜8μmである。塗膜層の厚みがかかる範囲であると、熱硬化時に発生する応力のために塗膜層にクラックが発生したり、(E2)層と(E1)層との密着性が低下したりすることがなく、本発明の目的とする十分な耐摩耗性を有する塗膜層が得られることとなる。
【0132】
(V−iii)ハードコート層の積層方法
本発明におけるハードコート層の積層方法は特に限定されるものではなく、ディップコート法、フローコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、スクイズコート法、トランスファーロールコート法、グラビヤロールコート法、エアースプレーコート法、静電スプレーコート法、およびスピンコート法などを用いることができる。これらの中でもディップコート法およびフローコート法が好ましい。ハードコート層が単層の場合、通常塗工後風乾処理がなされ、その後硬化反応に供される。2層以上の場合には、各層ごとに風乾および硬化処理をする方法が好適であるが、風乾のみで次層用のコーティング液を塗工し、2層以上を1度に硬化させる方法を取ることもできる。
【0133】
コート成分の塗布以外の方法としては転写法が挙げられる。かかる方法では、離型層上に、ハードコート層および該層と成形品とを接着する層を設けたラミネート用シートを準備し、かかるシートと成形品とをラミネートすることにより、成形品上にハードコート層を設けることができる。更に、他の方法として、フィルムおよび薄肉シート上に積層されたハードコート層が、該フィルムおよびシートのインサート成形、熱ラミネーション、および各種接着剤で成形品−Aに結合されることにより、結果として成形品−Aのハードコート層となる構成を取ることもできる。
【0134】
後述のようにトリム工程がある場合、トリム工程の前にハードコート積層の工程を設けると、ハードコート膜厚のムラや、製品端部でのハードコート液の溜まりを解消しやすくなる利点を有する。
【0135】
更に、本発明では上記以外の方法でハードコート層が設けられてもよい。かかる他の方法としては、例えば蒸着法および溶射法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。溶射法としては大気圧プラズマ溶射法、および減圧プラズマ溶射法などが例示される。上記方法によりダイヤモンドライクカーボンなどの硬質被膜を形成することが可能である。
【0136】
(VI)積層構成
本発明のグレージング積層構成は、以下の(A)層の少なくとも一方の表面に、以下の(B)層、(C)層、(D)層および(E)層を積層した構成であって、積層体の厚み方向に沿った断面を見たとき、(A)層−(B)層−(C)層−(D)層の順で積層された積層構造1と、(A)層−(B)層−(E)層の順で積層された積層構造2、および(A)層−(E)層の順で積層された積層構造3とがあり、積層構造1と3の間に積層構造2が介在することを特徴とする。
(A)層:ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層。
(B)層:アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層。
(C)層:ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー組成物から形成されてなる接着用プライマー層。
(D)層:ウレタン接着剤からなる接着層。
(E)層:ハードコート層。
【0137】
上記(E)層は、(A)層の光透過部分および(A)層上に積層された(B)層上に積層される。かかる(B)層上へ(E)層の積層の態様としては、接着層が設けられないブラックアウト処理部分への積層、並びに透明性を大きく低下させることなく付与された導電機能層、紫外線吸収機能層、および赤外線吸収機能層など各種機能層上への積層などが例示される。(E)層を(B)層上にも形成することで意匠性に優れるため好ましい。(E)層は、接着固定される以前に積層されることが好ましい。
【0138】
本発明のグレージング積層体の製造方法は、下記工程(i)〜(iv)を含んでなる。
(i)上記(A)層の少なくとも一方の表面の一部に上記(B)層を形成する工程(工程(i))、
(ii)工程(i)で得られた、一部に(B)層が形成された光透過性基材の側において、(B)層の形成されていない(A)層の表面から(B)層の表面の一部にわたり連続した上記(E)層を形成する工程(工程(ii))、
(iii)工程(ii)で得られた(E)層が形成されていない(B)層の表面の少なくとも一部に上記(C)層を形成する工程(工程(iii))、
(iv)工程(iii)で得られた(C)層の表面に上記(D)層を形成する工程(工程(iv))。
本発明において、上記工程(i)で、(A)層上に(B)層が形成した後、加熱変形させてから、上記工程(ii)を行なうことが好ましい。
【0139】
かかる積層構成について図4に模式的に示す。順に[1−a]、[1−b]、および[1−c]と進む工程(工程−1)は、接着部分も含めてハードコート層を設けた後、接着部分のみを除去する工程である。かかる方法は、ハードコート層と印刷層との密着性が比較的低い場合に適用できる。例えば、かかるハードコート層の除去は、所定の位置に強粘着のテープを貼り、該テープを剥離させる方法などにより実施できる。順に[2−a]、[2−b]、および[2−c]と進む工程(工程−2)は、接着部を予めマスキング材で覆い、その上にハードコート層を設け、その後マスキング材を除去して、インキ層上にプライマーおよび接着剤の塗工を可能とする工程である。ハードコート処理は複数回のコートと焼き付けがなされる場合があるので、かかるマスキング材はその焼き付け時に大きな変形をすることなく良好なハードコート処理を可能とすること、並びにマスキング除去後に糊残りが極力少ないことが求められる。かかる特性を満足するマスキング材は、好ましくはポリオレフィンを基材とし、粘着力を1〜6N/10mmの範囲とするものが好ましい。かかる粘着力はより、好ましくは1〜3N/10mmの範囲である。かかる好ましいマスキング材の具体例としては、例えば、テサテープ(株)製見切り用マスキングテープ 品番4240および4241が例示され、特に4241が好ましい。順に[3−a]、および[3−c]と進む工程は、接着部を避けてハードコート液を塗布しハードコート層を設ける工程(工程−3)である。上記工程−1〜工程−3は、互いに組み合わせて使用することができる。上記の中でも、工程−2を含む方法が幅広い構成に適用可能であるため好ましい。尚、図4では、接着部の遮蔽および保護を主体とし、インキ層が一部に被覆された構成を図示するが、本発明のグレージング構成体では、上述のとおり透光性を有する機能性インキなどが透光部分の一部または全部に印刷され、その上にハードコート層が設けられた構成も有することができる。
【0140】
<成形品−Aの成形方法および二次加工>
本発明における成形品−Aの成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形および回転成形などが例示されるが、特に射出成形が好ましく、中でも射出圧縮成形が好ましい。またかかる成形品−Aは、成形後に曲げ加工、トリム加工、および穿孔などの2次加工がなされ形状が定められたものであってもよい。積層体の最終的な形状は、成形体−Aの製造時に確定されても、積層後の曲げ加工および/またはトリムの工程を経て確定されてもよい。未だウレタン接着剤が塗工されていない部材には、必要に応じて更なる周辺部材を取付けることができる。かかる周辺部材を取付けることで、樹脂製グレージング積層体のための最終部品が形成される。周辺部材の目的は、例えば、接着固定に際しての位置決めや、接着剤が完全硬化するまでの仮止めなどがある。かかる周辺部材としては、枠、ピン、ネジ、ファスナー、緩衝材、シール材、ヒンジ、およびロック機構などが例示される。かかる周辺部材は、接着、粘着、ネジ止め、溶着、嵌め合い、超音波溶着、およびレーザー溶接などの固定化手段を用いて、好ましくはハードコート層および最終形状を有する印刷成形体に取付けられ、最終部品とされる。かかる周辺部材を取付けた、もしくは取付けていない最終部品は接着により、車体の如き剛体からなる構造部材に固定化される。
【0141】
構造部材とは、構造体(structure)もしくは建造物の構成部品であり、他の物体もしくは部分の荷重を担う支持材をいい、例えば、輸送機器のボディ、かかるボディに固定されパネルモジュール、およびかかるボディに配設される各種の窓枠などが例示される。かかる輸送機器には、自動車、トラック、列車、航空機、船舶、自動二輪車、自転車、および車イス、並びに建設機器、およびトラクターなどを含む。構造部材としての建造物には、例えばビルディング、屋外競技場、体育館、アーケード、カーポート、温室、および家屋などの建築物、防音壁、防風壁、および防雪柵などの道路施設、標識、看板および屋外用大型モニターなどの表示設備、並びに太陽光発電装置の如き発電装置などが含まれる。本発明でいうグレージング結合体とは、本発明のグレージング構成体が上記構造部材に結合して一体となったものをいう。構造部材としては、金属、ガラス、セラミック、セラミックコンポジット、繊維強化プラスチック、繊維強化コンポジット(ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維および炭素繊維等からなるFRP、SMC、およびRTMなどの複合材料)、並びに木材など形成された部材が例示される。金属部材としては、鋼材(鋼板)、並びにアルミニウム合金、マグネシウム合金、およびチタン合金などから形成された部材が例示される。尚、トリム工程については後述する。
【0142】
(VII)成形品−Aの射出圧縮成形
本発明にかかる射出圧縮成形とは、いわゆる射出プレス成形と、狭義の射出圧縮成形とを含む。ここで、射出プレス成形とは、少なくともその供給完了時において目的とする成形品容量よりも大なる容量の金型キャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂を供給し、その供給完了後に金型キャビティ容量を目的とする成形品容量まで減少し、金型キャビティ内の成形品をその取り出しが可能な温度以下まで冷却後成形品を取り出す成形方法を指す。尚、金型キャビティ容量の減少開始は、樹脂の供給完了前後のいずれであってもよいが、該供給完了前の開始が好ましい。すなわちキャビティ容量を減少する工程と樹脂の充填工程がオーバーラップする態様が好ましい。一方、狭義の射出圧縮成形とは、そのキャビティ容量の拡大が、溶融した熱可塑性樹脂の体積にほぼ等しいレベルにあり、溶融した熱可塑性樹脂が冷却されて収縮する体積分程度を圧縮する成形法を指す。本発明においては、大型の成形品においても歪が少なく金型転写性に優れる射出プレス成形が好ましい。
【0143】
更に、本発明においては、固定側金型と可動側金型との金型間の平行度を維持する射出圧縮成形が好ましい。平行度を維持する方法としては、従来公知のものが使用可能であるが、本発明の好適な態様は、方法−1a:金型固定板に配設された複数の型締め機構の伸縮を調整することにより平行度を制御する射出圧縮成形方法、または方法−1b:型締め機構による型締め力に対抗して矯正力を金型の取付け面に対して付与する複数の矯正力付与機構の伸縮を調整することにより平行度を制御する射出圧縮成形方法である。方法−1aの平行度制御手段はより精密な平行度が維持可能であり、大型の成形品においても十分に対応可能であることから、方法−1aが本発明においてより好適である。方法−1bの平行度制御手段は既存の射出成形機に簡便に付属することでその機能を発揮させることが可能であり、その結果、方法−1bは設備投資コストを抑制できる点において有利である。
【0144】
方法−1aの詳細について以下に説明する。上記方法−1aの好適な態様の1つは、金型固定板の角部4箇所の型締め機構で固定側金型と可動側金型との間の平行度を調整することにより金型間の平行度を維持する射出圧縮成形方法である。
【0145】
かかる平行度の維持に必要なパラメータの検出、演算、および制御の方法において、本発明の好適な態様として以下の2点が挙げられる。
第1の好適な態様は、金型固定板の角部4箇所の型締め機構で可動金型が固定金型に対して平行移動するときに、検出された可動板と固定板との相対位置の検出値から可動金型と固定金型との間の平均距離を演算し、各型締め機構への指令値に各型締め機構の検出値と平均距離との差を補正量として加減算するとともに差の積分値をフィードバックして制御することにより金型間の平行度を維持する射出圧縮成形方法である。
【0146】
第2の好適な態様は、金型固定板の角部4箇所の型締め機構で可動金型が固定金型に対して平行移動するときに、上記角部4箇所の型締め機構における型締力を検出してそれら検出型締力の平均値を演算し、各型締め機構への指令値にあらかじめ設定した型締め機構の目標型締力と上記検出型締力の平均値との差を補正量として加減算するとともに差の積分値をフィードバックして制御することで金型間の平行度を維持する射出圧縮成形方法である。
【0147】
成形品−Aのゲートから流動末端までの流動長は、好ましくは15〜300cm、より好ましくは30〜250cmである。更に成形品−Aは、平坦であることが好ましいが、シート製造工程の段階で既に所定の曲面を形成することで、全工程を総合的にみれば効率的でコスト低減ができる場合には、曲面形状を有することもできる。同様に、成形品−Aの厚みは一定であることが最も汎用性に優れ好ましいが、厚み分布がある方が有利な場合には、厚み分布を有することもできる。
射出圧縮成形の更なる詳細について図を用いて説明する。
【0148】
(VII−i)成形機の構成
図1は成形サイクルの開始時点の状態を示す型締装置の縦断面図、図2は成形品を射出圧縮成形する開始前の状態を示す型締装置の縦断面図、および図3は成形品を射出圧縮成形している状態を示す型締装置の縦断面図である。
型締装置10は、第1射出装置11とともに射出成形機を構成する。製造されるシート−は必要に応じて多層シートであってもよいが、好ましく単層シートである。以下、単層シートを製造するに際しての詳細を説明する。
【0149】
型締装置10は、(a)固定金型13を取付ける金型固定板である固定板21、(b)可動金型14を取付ける固定板21と対向する金型固定板である可動板22、(c)可動板22の角部である四隅近傍に設けられ圧締室27と開放室28を備えた油圧シリンダ装置等からなる型締め機構16、(d)型締め機構16の油圧シリンダ装置のロッドが延長されて形成されるタイバ23、(e)タイバ23の延長上にある固定板21の四隅に設けられタイバ23の固定板21側端部を遊貫する貫通孔の開口部に設けられた係合装置20、(f)固定板21の上下面又は表裏側面に一対で設けられ可動板22を固定板21に対し接近・離隔させる油圧シリンダ装置またはサーボモータとボールネジ機構等からなる型開閉装置18、および(g)固定板21と支持板26との間に固設されたガイド25上を摺動する位置センサー24から構成される。
【0150】
位置センサー24は、可動板22の各型締め機構16の近傍にそれぞれ取付けられており、各角部における固定板21に対する可動板22の距離が検出可能となっている。なお型締め機構16は、固定板21、可動板22のいずれの金型固定板に設けられたものであってもよい。また、固定金型13及び可動金型14により金型装置15が構成されるが、上記固定金型13および可動金型14の4箇所に位置センサー24を取付けたものであってもよい。
【0151】
尚、上述のとおり、適宜第2射出装置を備える場合には、その配置方式として、例えば2つの射出装置を水平に並列に配置する方法、一方の射出装置を垂直に立てて他方を水平に配置する方法、および2つの射出装置を水平でかつ直交に配置する方法等が挙げられる。いずれも各々の射出装置において独立した成形条件の設定により成形をすることが可能である。
【0152】
金型内の樹脂流路の構成としては、射出装置から樹脂を射出し、ホットランナーマニホールドとゲートを通じてキャビティに充填する方法の他、コールドランナーとゲートを通じてキャビティに充填する方法も使用することができる。ランナーおよびゲートは単一であっても、複数であってもよいが、より好ましいのは、単一ゲートでキャビティ内に充填する方法である。特に単一のホットランナーマニホールドとゲートを通じてキャビティに充填する方法が好ましい。
【0153】
複数のゲートの場合にも複数のホットランナーマニホールドとゲートを通じてキャビティに充填する方法が好ましい。かかる場合、シーケンシャル・バルブ・ゲーティング法(SVG法)によるカスケード成形方式により金型キャビティ内に充填する方法が好ましい。かかる方法では、通常最初に樹脂を通過させたゲートを除き、以後の各ゲートでは、前のゲートから流動してきた溶融樹脂が通過した後に、ゲートを開放しその溶融樹脂の流動に乗せてかかるゲートからの樹脂が充填される。かかる動作を各ゲートで段階的に行い溶融樹脂を供給する。これにより複数のゲートでありながら、ウエルドラインを極力抑制することが可能である。
【0154】
かかる方法は、1つのホットランナーからの溶融樹脂量を低減できることから、樹脂の剪断発熱およびホットランナー部の蓄熱を抑制できる点において好ましい。したがって、樹脂材料−Aの熱安定性がやや劣る場合に好適な方法である。一方で、やはり単一のランナーおよびゲートの場合に比較すると、キャビティ内部の樹脂流動は複雑化するため、シートにおける樹脂の祖密や配向などの不均質さは生じやすく、シートの品位においては単一ゲートがより有利である。
【0155】
ホットランナーによるゲートシステムとしては、内部加熱方式、外部加熱方式等のいずれを使用してもよく、更に外部加熱方式の場合、オープンゲート方式、ホットエッジゲート方式、およびバルブゲート方式等のいずれも使用することができるが、より広い成形条件幅が得られる点からバルブゲート方式が好ましい。またバルブゲート方式によるホットランナーを使用する場合、バルブゲートの摺動部から溶融熱可塑性樹脂が漏れ出ることを防ぐためにパッキング部材が用いられる。ここでパッキング部材を構成する材料として、具体的には、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、およびフッ素系樹脂を例示することができるが、耐熱性に優れている点からシリコーンゴム、およびフッ素系樹脂が好ましい。
【0156】
(VII−ii)成形用のキャビティ形成
次に、成形品の成形例を、図1〜図3を参照しながら工程順に説明する。図1においては、成形サイクルの開始時点の状態にある。図2においては、型開閉装置18により型閉がなされ固定板21に設けられたロック装置によりタイバ23と固定板21が結合されることにより、可動金型14は、射出工程内において中間型締め状態と最終型締め状態との差である圧縮ストローク分だけ余分に開かれた中間型締め状態にあり、成形サイクルの開始時点である。ここで射出工程とは、溶融樹脂が製品に相当する金型キャビティ内へ充填されてから、該キャビティへの充填される樹脂の供給が完了するまでの工程をいう。
【0157】
中間型締め状態における圧縮ストロークの幅は、中間型締め状態におけるキャビティ容量が最終型締め状態におけるキャビティ容量の好ましくは1.05〜10倍の範囲、より好ましくは1.1〜5倍の範囲、さらに好ましくは1.2〜2倍の範囲となるように設定する。中間型締め状態の圧縮ストロークの幅が、上記のように広げられているため、射出率を低下させることができ、成形品の歪み等が良好にでき、射出装置11も高速高圧射出タイプのコストの高い射出装置を使用しないでも済む。そして上記中間型締め状態におけるキャビティ容量が最終型締め状態におけるキャビティ容量の1.05倍未満では射出工程において樹脂がキャビティ内に充填される際に高圧力がゲート付近の樹脂に集中してかかるため、成形品の歪みや厚みのばらつきがおこりやすくなり、10.0倍を越えるとジェッティングの如き成形不良が生じやすくなる。
【0158】
なお中間型締め状態における可動金型14の停止位置は、成形品の厚みが一定以上の厚みである場合、圧縮ストローク分だけ余分に開いた中間型締め状態とすることなく、最終型締め工程まで可動金型14を前進させた位置としてもよい。そして射出工程で射出圧を受けて可動金型14が後退して、キャビティの容積が拡大することによりその後の圧縮ストロークが確保されることにより射出圧縮成形を行うことが可能となる。
【0159】
(VII−iii)射出工程ならびに圧縮工程
図3においては、図2で形成されたキャビティへ射出装置11から溶融樹脂を射出する。この工程が射出工程であり、継続した工程、または射出工程の後半と一部が並行して継続した工程として次に圧縮工程が行われる。尚、圧縮動作と樹脂の射出供給とが同時に行われている期間(t(秒))は、通常オーバーラップ時間と称される。射出工程の後半に圧縮工程を並行して開始する場合は、スクリュ前進位置を検出して、スクリュ前進位置が設定位置となったら型締め機構による圧縮を開始する。圧縮工程は、射出工程で射出された溶融材料を各型締め機構16によりキャビティの容積を縮小させるように圧縮し、溶融材料をキャビティ内で展延させることでキャビティを充填して行われる。そして、成形品31が成形される。オーバーラップ時間(t)は好ましくは2秒以下、より好ましくは1秒以下である。またtは、好ましくは0.05秒以上、より好ましくは0.1秒以上として、オーバーラップ時間を設けることが好ましい。更にオーバーラップする際の圧縮開始時期は、全樹脂充填量当たりの樹脂充填割合が、体積割合で好ましくは90〜99.9%、より好ましくは95〜99.5%、更に好ましくは97〜99%の範囲であることが、本発明において好ましい。
【0160】
(VII−iv)射出工程における溶融樹脂の射出率
上記射出工程において、図2で形成されたキャビティへ射出装置11から溶融樹脂を充填する射出率は、50〜2,000cm/秒が好ましく、100〜1,800cm/秒がより好ましく、150〜1,500cm/秒が更に好ましい。射出率が50cm/秒に満たない場合、キャビティ内へ溶融樹脂を充填する時間が長くなり、射出工程から圧縮工程に移行するまでに樹脂温度が低下して溶融粘度が高くなりすぎるため、圧縮工程においてショートショットやフローマークなどの外観不良、また厚みや寸法の精度不良の発生につながりやすい。また、射出率が2,000cm/秒を超えると、得られる成形品に歪みが残りやすくなるうえに、エアの巻き込みによるシルバーストリークなどの外観不良が起こりやすくなる。なお、ここでいう射出率とは、金型キャビティに射出する樹脂容量を射出開始から射出終了までに要した時間で除したものであり、必ずしも一定速度である必要はない。
【0161】
(VII−v)圧縮工程における金型間の平行制御
上記圧縮工程では、金型固定板の角部4箇所の型締め機構で固定金型と可動金型との平行度を調整することにより金型間の平行度が維持される。位置センサー24によって検出された可動板22と固定板21との相対位置の検出値から可動金型14と固定金型13との間の平均距離を演算し、各型締め機構16への指令値に各型締め機構の検出値と平均距離との差を補正量として加減算するとともに差の積分値をフィードバックして制御することで、可動金型14と固定金型13との間の平行度が維持する方法を用いることが好ましい。その結果、溶融材料がキャビティ内を高速かつ均一に流動するので、成形品31は圧縮成形の効果として低歪みとなるとともに、平行制御の効果として板厚が均一かつ高精度となる。
【0162】
また、上記圧縮工程において、位置センサー24による可動板22と固定板21との相対位置の検出値をもとに金型間の平行度を維持するのではなく、各型締め機構16で可動金型14が固定金型13に対して平行移動するときに、各型締め機構16における型締力を検出してそれら検出型締力の平均値を演算し、各型締め機構16への指令値にあらかじめ設定した型締め機構の目標型締力と上記検出型締力の平均値との差を補正量として加減算するとともに差の積分値をフィードバックして制御することで金型間の平行度を維持する方法を用いることも好ましい。さらに、金型間の平行度をさらに精度よく制御するために両者を併用することも好ましい。位置制御と型締力制御(圧力制御)の両者の併用を行う場合は、中間型締め位置から可動金型14と固定金型13との間の平均距離が所定の距離まで前進するまで、或いは検出型締力の平均値が所定の圧力となるまでは、上記の位置制御による平行制御を行い、所定の距離または所定の圧力検出後は、上記の圧力制御を行うようにしてもよい。また位置制御による平行制御を行った後、位置制御と圧力制御を同時に併用するようにしてもよい。位置制御と圧力制御を同時に用いる場合は、位置制御をフィードバック制御のみに用い、圧力制御はフィードバック制御とフィードフォーワード制御の少なくとも一方を行うようにする。
【0163】
そしてまた位置制御のみを行う場合についても、位置センサー24によって検出された可動板22と固定板21との相対位置の検出値から可動金型14と固定金型13との間の平均距離を演算し、各型締め機構16への指令値に各型締め機構の検出値と平均距離との差を補正量として加減算するとともに差の積分値をフィードバックして制御することに加えて、各型締め機構16へ、フィードフォーワード制御を加え、可動金型14と固定金型13との間の平行度を維持しつつ、速度も重視して型締めを行うようにしてもよい。
【0164】
なお、上記圧縮工程において、金型固定板の角部4箇所の型締め機構で固定金型と可動金型との平行度を調整することにより金型間の平行度を維持するために、角部1箇所の型締め機構をマスターとし、かつ残りをそのスレイブとするマスタースレイブ方式を用いることも好ましいが、特により精度の高い平行制御を求められる大型の成形品の場合はマスタースレイブ方式よりも上記2つの方法がより好ましい。
【0165】
本発明の圧縮工程においては、特に大型のシートを成形する際に、その中間型締め状態および中間型締め状態から最終型締め状態までに至る間の金型間の平行度を維持することが重要である。大型のシートを得るためには必然的に高重量の金型を可動板22と固定板21に装着して成形を行う場合が多くなり、金型重量の増加にともない成形機の各型締め機構16における平行度の維持も困難となる。また、樹脂充填時の圧力によって発生する偏荷重も成形品の厚み不均一性の原因となるが、大型のシートではこの影響が特に顕著にあらわれる。更に金型間の平行度の維持は、金型内の樹脂に対するより均一な圧力の負荷を達成する。これにより樹脂に負荷する圧力は全体として低い圧力を達成し、より歪みの少ない成形品の提供を可能とする。金型間の平行度が十分でない場合、成形中の成形品に負荷される圧力に局所的な差異が生じて歪み発生の要因のひとつになるとともに、シートの反りの要因ともなる。また、生産性の面からみても、平行度の狂いは金型のかじりなどを生じ製品の量産を困難にする。
【0166】
(VII−vi)圧縮工程における可動金型の移動速度
上記圧縮工程において、各型締め機構16によりキャビティの容積を縮小させるように圧縮し、溶融材料をキャビティ内で展延させることでキャビティを充填する際の可動金型の移動速度は、5mm/秒以上が好ましく、7.5mm/秒以上がより好ましく、10mm/秒以上が更に好ましい。L/Dの高い成形品ほど高い金型容量の拡大倍率が必要となり速い移動速度が求められる。成形品の歪みを低減するためにはキャビティ内の溶融樹脂の熱的分布が狭い間に所定の最終型締め状態までの圧縮工程を終了することが重要なためである。かかる移動速度がより速いほど大きい圧縮ストロークに対応できる。したがって移動速度は可能な限り高いことが好ましいが、現時点では事実上40mm/秒程度が装置上の限界となっている。35mm/秒のレベルであれば十分に精密な速度制御が可能である。尚、かかる移動速度は中間型締め状態から最終型締め状態までの圧縮ストロークを圧縮に要した時間で除したものであり、必ずしも一定速度である必要はない。また上記の如く圧縮ストロークが大きく、金型の移動速度が大きいほど金型のかじりは生じやすくなることから、ここでも金型間の平行度の維持は重要かつ必須の条件となる。
【0167】
(VII−vii)保圧工程
上記圧縮工程において、各型締め機構16によりキャビティの容積を縮小させるように圧縮し、溶融材料をキャビティ内で展延させることでキャビティを充填することにより、樹脂の反発力が急激に立ち上がる。この際に型締め機構16による制御を上記位置制御から上記圧力制御に切換えるようにしてもよい。そして圧力制御に切換えた際は、キャビティ内圧力(面圧)が7〜20MPaとなるように制御することが望ましい。通常は油圧シリンダまたはその配管の油圧力を検出し、型締力を成形品の投影面積で除算して面圧を求めるが、キャビティ内に樹脂圧センサを設けるようにしてもよい。
【0168】
かかる反発力に打ち勝つ適正な圧力を加えた状態で最終型締め状態のキャビティ容量を維持するために、圧縮工程に継続した工程、または圧縮工程の後半と一部が並行して継続した工程として保圧工程が行われる。この保圧工程により、目的とする成形品容量中に極めて適正な量の樹脂が均一な密度で射出装置11により充填され、成形品は形状精度に優れや歪みの極めて少ない好ましいものとなる。樹脂への圧力の付与(加圧)は、各型締め機構16により可動金型が前進する力によるものである。更にかかる圧力の伝達は通常これらの前進する部材と樹脂とが直接に接触することにより行われるが、流体等の圧力伝達媒体がこれらの間に介在して行われてもよい。
【0169】
上記圧力の適正な保持時間としては、成形品の厚みに依存し厚みが厚くなるほど適正な時間は長くなるが、大型成形品の場合は特にその傾向が顕著になる。本発明で意図する大型成形品の場合、成形品肉厚をt(mm)とした時のかかる保持時間X(秒)は、下記式(I)を満足する範囲内が適切である。例えば本発明において好適なシートの厚みである1mm〜9mmの範囲の中間値である5mmの厚みにおいては、160±30秒の範囲が好ましい。ただし、ヒート&クール成形法などに代表される金型温度を急速加熱冷却するシステムを併用した場合はこの限りでない。
X=(30×t+10)±30(秒) (I)
【0170】
尚、発明においては、かかる急速加熱冷却システムに代表されるキャビティ表面を部分的に高温化し、成形時の固化層の発達を遅らせる手法を併用することもできる。かかる併用により、成形サイクルの増加はあるものの金型表面の転写性をより向上し更に高品位の意匠面を形成することが可能になる。かかる手法としては、キャビティ表面に、耐熱樹脂、セラミック、およびガラスなどから形成される断熱層を設ける方法、並びに、ヒート&クール成形法などに代表されるは、高温の熱媒と低温の冷媒とを切り替え金型温度を制御する方法が好適に例示される。
【0171】
(VII−viii)冷却工程
上記保圧工程に続いて冷却工程を行う。キャビティ内の成形品は、キャビティ内から取り出し可能な温度となるまで冷却後、取り出される。取り出しのため型開きする際には、所定の中間位置まで上記の平行制御がなされる。かかる中間位置は通常上記の中間型締め位置である。樹脂板の自重によりたわみの発生を抑制するため、樹脂材料−Aの荷重たわみ温度以下、より好ましくはかかる荷重たわみ温度の30〜60℃低い温度まで冷却し、キャビティからの取出しを行う。例えばビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂の場合、75〜105℃の範囲が好適であり、80〜100℃の範囲が更に好ましい。かかる冷却工程中は、保圧工程の圧力を保持したままでもよいし、圧力を加えない状態でもよく、さらには冷却工程中に段階的に圧力を下げていってもよい。また冷却工程の間も型締め機構16により位置制御または圧力制御により制御がなされることで、成形品のヒケや厚みムラを防止することができる。
【0172】
ここで曲げ加工は、熱曲げ加工および冷間加工のいずれも含む。熱曲げ加工では、樹脂材料−Aの軟化温度以上、好ましくは樹脂材料−Aの主成分である樹脂のガラス転移温度以上に加工前の成形体が加熱され、その後曲げ加工が行われる。冷間加工では、かかる温度以下での曲げ加工がなされ、折り曲げ加工の他、絞り加工、およびプレス加工などが含まれる。またかかる曲げ加工は、成形品-Aが固定されるべき剛体の形状に合致させるため予め行う方法が好ましいが、強制的に剛体の形状に曲げて、固定される態様も取り得る。
【0173】
(VIII)成形品−Aの曲げ加工
(VIII−i)加熱工程
本発明における成形品−Aの熱曲げ加工は、熱曲げ加工が好適に利用できる。特に成形品−Aをシート形状とし、印刷工程の後、ハードコート処理およびトリム加工をする以前に、熱曲げ加工する製造方法が好ましく利用できる。熱曲げ加工では、樹脂材料−Aのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、[Tg+5]℃〜[Tg+70]℃の温度範囲で該成形品−Aが予備加熱し軟化させられ、熱成形に供される。金型キャビティから取出された成形品−Aは、好ましくは成形品の所定の検査を行い、通常、保管中や輸送中における表面保護のためマスキング処理がされ、次の工程に運ばれる。印刷工程の如き他の工程が先に行われる場合も概して同様である。熱成形における加熱工程に先立ち、かかるマスキングフィルムは除去されることが好ましい。
【0174】
加熱方法は、従来公知の各種の加熱方法が利用できる。例えば、空気強制循環式加熱炉、赤外線ヒーター、およびマイクロ波加熱などが例示される。これらのなかでも、シート成形品に代表される成形品−Aが大型の場合であっても全体が均一に加熱されやすく、かつ設備コスト上の負担も少ないことから、空気強制循環式加熱炉が好適である。尚、複数の加熱方法を順次および同時に併用することもできる。
【0175】
加熱温度は、上記のとおり樹脂材料−AのTg(℃)に対して、[Tg+5]℃〜[Tg+70]℃とする。空気強制循環式加熱炉においては、加熱炉の温度をかかる温度範囲に調整し、所定の時間処理を行い、成形品−Aを熱成形に適切な温度にする。尚、成形品−Aは必ずしも加熱炉の温度に到達する必要はない。上記温度範囲は、好ましくは[Tg+10]℃〜[Tg+55]℃、より好ましくは[Tg+15]℃〜[Tg+50]℃である。例えば、Tgが150℃であるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂材料の場合(1重量%程度の添加材を含む)、上記温度は155〜220℃であり、好ましくは160〜205℃、より好ましくは160〜200℃である。上記温度範囲の下限未満では、十分な軟化に至るまでに時間がかかりすぎて製造効率が低下するか、強制的な曲げ加工をすることによる成形品の歪みや寸法精度の低減などを招く。一方、上記温度範囲の上限を超える場合には、特にシート表面において分子鎖の緩和が急速に生じ、初期の高品位な表面性状を保てなくなる。一方で、成形品−A表面における樹脂流動に起因する分子鎖の乱れが少ない場合には、かかる緩和によっても表面性状への不具合は減少し、より高温の熱曲げ加工に供しやすくなる。高温での曲げ加工は、製造効率や曲げ加工後の精度の点で有利である。したがって、上記の温度範囲は、製造効率と、熱成形品の表面状態および寸法精度との両立に好適であり、また均一な樹脂流動から形成された成形品−Aは、より曲げ加工に適している。
【0176】
加熱時間は、あまりに長いと、面精度の大幅な低下や、自重による垂れ下がり変形が少なからず生ずる。更にシートの厚みが厚いほど、均一な加熱に時間を要することから、厚みが厚いほど上記のより好ましい温度範囲にすることが好ましい。加熱炉中の雰囲気温度と樹脂材料−AのTgとの差をx(℃)と、処理時間y(秒)との関係は、シート厚みをz(mm)としたとき、
y=[(0.28x−34x+1250)×(z/4.5)]±50
の範囲を目安とすることが好ましい。また加熱される際のシートは、横置きであっても垂直に吊られてもよい。尚、樹脂材料−Aのガラス転移温度(Tg(℃))は、JIS K7121に規定される方法にて測定されたものであり、DSCなどのチャートにおいて認識できるガラス転移温度をいう。
【0177】
(VIII−ii)曲げ加工による湾曲面の形成工程
本発明では、加熱により軟化したシートに代表される成形品−Aに各種の外力を作用させ、所定の湾曲面を形成することができる。尚、以下の説明では成形品−Aの代表的な形状である平板シートを仮定する。ここで、上記加熱工程では、成形品−Aの製造工程において得られた高品位な意匠面を維持した状態で加熱がなされ、かつこの湾曲面の形成工程では、かかる意匠面を損ねることなくシートが変形されることが好ましい。
【0178】
本発明における湾曲面の程度は、曲率半径(mm)で表わして、好ましくは500〜30,000mm、より好ましくは1,000〜25,000mm、より好ましくは1,500〜10,000mmの範囲である。かかる比較的緩やかな曲面において、本発明の製造方法における効果はより発揮される。
【0179】
湾曲面を形成する熱成形方法としては、真空成形、圧空成形、およびプレス成形が例示され、いずれも適用可能である。中でもシートの表面を損なうことなく、比較的厚みの厚いシートにも適用が可能であるプレス成形が好ましい。ここでプレス成形とは、加熱されたシートを変形するに際して、型もしくはフレームを用いて加圧し所定の形状を得る方法をいう。通常、機械的な駆動装置を用いて、型およびその他必要とされる機械装置を動かす。かかる駆動装置としては、圧空または油圧ピストン、圧空または油圧モータ、電気モータ、および超音波モータなどが利用できる。電気モータは通常のモータの他、モータ自体の位置制御が可能なサーボモータなども目的に応じて使用できる。モータの場合には、通常ボールネジおよびスクリュの組合せ等の変換機構を用いて、回転運動を直線運動に変換する。これらの中でも油圧ピストンが最も汎用され本発明においても好ましい。型は雄型のみであってもよいが、熱成形後の寸法精度を高めるためには、雌雄型をかみ合わせる構造であることが好ましい。即ち、雌雄両型間にシートを挟んでプレス成形を行うことが好ましい。ここで雌雄両型の表面性状は、“(I)基材層((A)層)”の項で説明した式(1)を満足しなくともよい。高品位のシート成形品を予め準備し、該シートの意匠面を可能な限り損なうことなく曲げ加工を行うことにより、面精度に優れたグレージングを得ることができる。かかる曲げ加工を行うためには、型を用いてシートを変形させるに際し意匠面部分における型面からの圧力が緩衝するようにプレス圧力を作用させることが好ましい。かかる成形方法としては、以下の(a)〜(e)が好適に例示される。
【0180】
(a)グリース成形に代表される方法;即ち、型をフェルトやフランネル等の液状物を含浸可能な弾褥可撓性シートで覆い、グリースの如き液状物を含浸させ、かかる液状物により型面からの圧力を緩衝する方法。
(b)特公平6−77961号に記載方法に代表される方法;即ち、上記(a)において液状物として、硬化型液状シリコーンゴムの如き、硬化性液状エラストマ成分を用いて、含浸硬化せしめた被覆層を有する型を用いる方法。
(c)型表面に直接エラストマの被覆層を有する型を用いる方法。
(d)尾根成形(ridge forming)と称される方法;即ち、少なくとも型面において中実の型ではなく、骨格フレームからなる型を用いて、非意匠面の部分にかかる骨格フレームを接触させ、非意匠面には型の接触がない方法。
(e)非意匠面部分に意匠面部分よりも高いプレス圧力を作用させることにより湾曲面を形成する方法。
【0181】
上記(a)の方法は形状の自由度が高い点で好ましい一方、成形後の洗浄工程が必要となる。上記(d)の方法は、形状の自由度が限られやすい。したがって、上記の中では、(b)、(c)および(e)の方法がより好適であり、特により簡便な(e)の方法がより好ましい。
【0182】
ここで、非意匠面部分に意匠面部分よりも高いプレス圧力を作用させることにより湾曲面を形成する方法としては、
(e−1):非意匠面部分に硬質な被覆層を設け、意匠面部分に軟質な被覆層を設ける方法、
(e−2):非意匠面部分に接触面積が高まる被覆層を設け、意匠面部分には表面を荒らすか、接触点を点在させるなどして接触面積が小さくなる被覆層を設ける方法、並びに
(e−3):非意匠面部分の被覆層の厚みを、意匠面部分の被覆層の厚みよりも大きくし、意匠面部分の圧力を低減する方法などが例示される。
【0183】
これらの中でも最も簡便な(e−3)の方法が好適である。被覆層としては、エラストマ層、および弾褥層などが例示され、殊に弾褥層が最も簡便に利用できる点から好ましい。弾褥層としては、天然繊維、合成繊維、および無機繊維等の編布、織布、および不織布からなる層、並びにかかる短繊維を植毛した層、更には多孔質発泡樹脂層が例示される。殊に、フランネルやフェルトからなる層が好適である。
【0184】
上記(e−3)の方法のより好適な方法は、プレス圧力の強弱を、少なくともいずれか一方の型表面に弾褥可撓性シートを貼着し、かつより高いプレス圧力を作用させる非意匠面部分の該弾褥可撓性シートの厚みを、意匠面部分の厚みよりも厚くした型を用いる方法である。シートの厚み差は、好ましくは0.1〜3mm、より好ましくは0.2〜2mm、更に好ましくは0.3〜1mmである。かかる方法において高いプレス圧力を作用させる部分のプレス圧力は、好ましくは0.05〜2MPaである。
【0185】
プレス成形に用いられる型は、木型、石膏型、樹脂型、および金属型のいずれであってもよく、概してかかる順に型寿命は長くなるが型の製造コストも高くなる。したがって、これらを勘案して型材を選択できる。木型は、単板、積層合板、およびハードボードのいずれも利用でき、型表面保護のための各種のワニスにより表面処理がなされていることが好ましい。樹脂型としては、熱硬化性樹脂が好ましく、補強剤を含む強化樹脂であっても、補強剤不含であってもよい。熱硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、およびポリウレタン樹脂が好適に利用できる。金属型としては切削性に優れるアルミ型が好適である。プレス成形時の型温度は、特に温度制御することなく、常温で利用できるが、適宜ヒーターおよび熱媒等を用いて温度制御することも可能である。
【0186】
またシートの型への位置決め方法について述べる。特に、シートに印刷が施された場合、かかるシートは型の所定の位置に正確に設置される必要がある。かかる位置決めの方法としては、シートのクランプへの取り付け位置と、型の位置とが予め搬送装置のプログラムに正確に入力され、シートをクランプへジグなどを用いて正確な取付けることにより達成される方法、並びに型にシートをセットする際に、シートの位置または印刷の位置をセンサーで読み取り、該位置をフィードバックしてクランプ位置を制御する方法が好適に例示される。本発明においてはいずれも利用可能であるが、装置全体の簡便さからは前者の方法が好ましい。
【0187】
(IX)成形品−Aのトリム工程
本発明における成形品−Aは、トリム工程においてトリム加工された後に最終的な形状が確定されてもよい。成形品−Aの曲げ加工を行なう場合は、トリム加工前に実施することが好ましい。一方で、かかるトリム工程は、カーポート、アーケード、太陽電池カバー、および遮音板などのように最大投影面積を有する投影面が矩形を主体とする用途であって、必要な大きさが合致する場合には、必ずしも必要とされない。かかるトリム工程は、1度に行う方法、および粗トリムおよび最終トリムのように2度以上に分けて行い、トリム工程の途中に印刷、熱曲げ、およびハードコート処理のいずれかが含まれる態様であってもよい。生産効率上、およびハードコートにおける自由度の拡大の観点から、最終製品形状に合わせたトリム加工を一度に行う方法が好ましい。
【0188】
かかるトリム工程においては、切削加工法、切断法、および打ち抜き法などの従来樹脂の加工方法として公知の方法が利用でき、これらを適宜組み合わせることもできる。切削加工法としては、ルーター、エンドミル、フライス、およびロータリーバイトなどの各種切削工具を用いて、NC旋盤、フライス盤、およびマシニングセンタなどにより切削加工を行う方法が例示される。切断法では、刃物による切断、砥粒による切断、せん断切断、加熱・溶融による切断、および放電切断などが利用できる。上記の中では機器が汎用されており、切削の精度および速度に優れる点で切削加工法が好ましい。また切削は、完全乾式切削、湿式切削、およびセミドライ式切削のいずれの方法において行ってもよい。
【0189】
かかるトリム工程における精度を確保するためには、予め印刷工程においてそのトリミング部位が明示されることが好ましい。トリミング部位が印刷で明示されていると、そのトリミング精度の可否を少なくとも目視の範囲で検査できる。したがって最終製品の意匠に影響を与えない範囲で、最終部材に対応する縁取り印刷を行い、かつかかる外縁よりも外側の部分をトリミングすることが好ましい。尚、意匠面内に孔や切り欠きを設ける場合にも同様に印刷によりその位置が明示される方法を利用することが好ましい。
【実施例】
【0190】
<材料の調整>
(I)ポリカーボネート樹脂からなる透明基材の製造
(I−1)ポリカーボネート樹脂−A1の製造
下記の原料表記に従い、ポリカーボネート樹脂−A1の製造方法について説明する。9.5重量部のPC、0.08重量部のVPG、0.02重量部のSA、0.03重量部のPEPQ、0.05重量部のIRGN、0.32重量部のUV1577、および1×10−4重量部のBLをスーパーミキサーで均一混合した。かかる混合物10.0001重量部に対して、90重量部のPCをV型ブレンダーで均一に混合し、押出機に供給するための予備混合物を得た。
得られた予備混合物を押出機に供給した。使用された押出機は、スクリュ径77mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX77CHT(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュ))であった。該押出機は、スクリュ根元から見てL/D約8〜11の部分に順に送りのニーディングディスクと逆送りのニーディングディスクとの組合せからなる混練ゾーンを有し、その後L/D約16〜17の部分に送りのニーディングディスクからなる混練ゾーンを有していた。更に該押出機は、後半の混練ゾーンの直後にL/D0.5長さの逆送りのフルフライトゾーンを有していた。ベント口はL/D約18.5〜20の部分に1箇所設けられた。押出条件は吐出量320kg/h、スクリュ回転数160rpm、およびベントの真空度3kPaであった。また押出温度は第1供給口230℃からダイス部分280℃まで段階的に上昇させる温度構成であった。
ダイスから押出されたストランドは、温水浴中で冷却され、ペレタイザーにより切断されペレット化された。切断された直後のペレットは、振動式篩部を10秒ほど通過することにより、切断の不十分な長いペレットおよびカット屑のうち除去可能なものが除去された。
【0191】
(I−2)ポリカーボネート樹脂−A2の製造
9.43重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.02重量部のSA、0.03重量部のPEPQ、0.05重量部のIRGN、0.3重量部のUV234、0.07重量部のIRA、および1×10−4重量部のBLをスーパーミキサーで均一混合した。かかる混合物10.0001重量部に対して、90重量部のPCをV型ブレンダーで均一に混合し、押出機に供給するための予備混合物を得た以外は、上記ポリカーボネート樹脂−A1の製造と同様にして、ペレット状のポリカーボネート樹脂−A2を得た。
【0192】
尚、上記使用原料は下記の通りである。
PC: ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量25,000のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WQ(商品名))
VPG:ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのフルエステル(コグニスジャパン(株)製:ロキシオールVPG861)
SA:脂肪酸部分エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
PEPQ:ホスホナイト系熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)
IRGN:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Irganox1076)
UV1577:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin1577)
UV234:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin234)
BL:ブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックス バイオレットB)
IRA:有機分散樹脂と無機赤外線吸収剤としてCs0.33WO(平均粒子径5nm)とからなり、無機赤外線吸収剤含有量が約23重量%からなる赤外線遮蔽剤(住友金属鉱山(株)製YMDS−874)
【0193】
(II)シート成形品の製造
(II−1)シート−αの製造
上記樹脂材料−A1または−A2のペレットをプラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、図5に示す厚み4.5mmで長さ×幅が1000mm×600mmのシート成形品を製造した。かかる図に示すとおり、成形は1点のホットランナーおよびゲートにおいて実施した。また金型は、板の表裏面のいずれにおいても同一レベルの表面性状とした。
かかる成形機は、樹脂原料を十分に乾燥可能なホッパードライヤー設備を付帯しており、かかる乾燥後のペレットが圧空輸送により成形機供給口に供給され成形に使用された。成形はシリンダ温度300℃、ホットランナー設定温度300℃、金型温度は固定側および可動側共に110℃、プレスストローク:1.5mm、加圧の保持時間:120秒、プレス圧力は17MPa、およびオーバーラップ時間は0.12秒とし、可動側金型パーティング面は最終の前進位置において固定側金型パーティング面に接触しないものとした。充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて溶融樹脂がゲートからシリンダへ逆流しない条件とした。かかる成形において型圧縮および型開きのいずれの工程においても、金型間の平行度は、4軸平行制御機構により、傾き量および捩れ量を表すtanθとして約0.000025以下で保持された。
【0194】
(II−2)シート−βの製造
図6に示すように、長辺側にホットランナー5点のゲートを取った金型に変更して、上記シート−αの場合と同様に成形した。5点のゲートは第1ホットランナーゲート、第2ホットランナーゲート、および第3ホットランナーゲートの順に、SVG法によるカスケード成形を行い、ウエルド部のないシートを成形した。
【0195】
(II−3)シート−γの製造
上記樹脂材料−A1または−A2を120℃で5時間熱風乾燥の後、特開2005−081757号公報の押出方法にしたがい、厚み4.5mmで1,200mm幅の押出シートを製造し、両端部100mmずつを切断して1,000mmの長辺とし、押出方向に600mmの長さで切断して、カットして厚み4.5mmで長さ×幅が1,000mm×600mmのシート成形品を製造した。
【0196】
(III)シートへの印刷
上記(II)で得られたシートに、図7に示すように、遮光機能を有する黒インキにより、2枚取りの窓枠の図柄をスクリーン印刷した。印刷は、清浄な空気を循環した23℃、相対湿度50%の雰囲気下で行われた。スクリーン版は200メッシュを用い、得られた印刷層の膜厚は約8μmであった。3層塗りの場合には、1層を印刷後かかる雰囲気下で90分風乾した後、次層の印刷を行う方法で実施した。多層塗りでの膜厚はほぼ層数に比例した、例えば3層塗りでは約24μm厚の膜厚が得られた。印刷は、スクリーン印刷でインキを載せた後、かかる雰囲気下で30分の風乾を行い、その後90℃で60分の処理によりインキ層を乾燥および固定した。多層層塗りの場合には、最終の印刷の後かかる処理を実施した。尚、かかる印刷で使用したインキは次のとおりである(以下はいずれも種別のみを示すが、全て黒インキである)。
【0197】
(インキ)
POS:メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したアクリルポリオールからなるアクリルポリオールと、トリエチレングリコールからなる他のポリオールとからなるポリオール成分を、HDIビウレット変性体からなる硬化剤で硬化させるウレタン樹脂をバインダーとする2液硬化性インキ(POSスクリーンインキ:100重量部、210硬化剤:5重量部、およびP−002溶剤:15重量部の均一混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)をインキとして使用)
TAS:ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン樹脂をバインダーとする2液性インキ(TASスクリーンインキ:100重量部、210硬化剤:5重量部、およびG−002溶剤:15重量部の均一混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)をインキとして使用)
MRX:ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン樹脂をバインダーとする2液性インキ(MRXスクリーンインキ:100重量部、210硬化剤:5重量部、およびG−002溶剤:15重量部の均一混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)をインキとして使用)
VK:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をバインダーとする1液性インキ(VKスクリーンインキ:100重量部とJ−002溶剤:15重量部(原料はいずれも帝国インキ(株)製)をインキとして使用)
ISX:ポリエステル系1液性インキ(ISXスクリーンインキ:100重量部とZ−705溶剤:10重量部(原料はいずれも帝国インキ(株)製)をインキとして使用))
上記インキのうちPOSが実施例のインキであり、TAS、MRX、VK、およびISXが比較例のインキである。
【0198】
(IV)印刷成形品の熱曲げ成形
上記印刷が終了した後、熱プレス成形機を用いて、木型からなる雌型および雄型の両表面に綿フランネルを接着剤により貼着した。この際、その熱成形後において、上記印刷枠の外縁部から5mm以上外側の部分には、かかる綿フランネルを2枚重ねて貼着し、印刷枠より内側の部分では型からのプレス圧力が緩衝できるようにした。1枚の綿フランネルの厚みは0.5mmであった。シートはジグを用いて正確な位置でクランプに取付けられた後、搬送装置により炉内温度170℃の空気強制循環式加熱炉に送られた。シートはかかる加熱炉内で10分間留まった後、連続する搬送装置により熱プレス成形工程に即座に送られ、上記両型間に狭持されてプレス成形された。型内に2分間とどめた後、搬送装置により型から取り出され、クランプから外して湾曲面を有するシートを得た。
尚、型に対するシートの位置決めは、シートのクランプへの取り付け位置と型の位置とを予め搬送装置のプログラムに正確に入力することにより行った。上記熱プレス成形は清浄な空気の循環する常温雰囲気下で行われ、木型は温度制御することなく使用した(連続成形により約45℃となった)。
【0199】
(V)熱曲げ成形品へのハードコート処理
上記の如く印刷および熱曲げ成形された成形品は、次のハードコート処理を実施し、最終的に車体への取り付けを想定して、ウレタン接着剤を用いてステンレス製の枠に固定し、樹脂製グレージング構成体を得た。ハードコート処理に先立ちイソプロピルアルコールを含浸されたベンコットワイパーを用いて印刷面も含めて表面を清浄にした。次にウレタン接着剤用プライマーを塗工する部分にマスキングテープ(テサテープ社製TESA4241)を用いて、マスキング処理を行った後、下記の第1層用アクリル樹脂塗料を液だまりができないようフローコート法によって該マスキング部も含めて両面塗布し、25℃および相対湿度50%のクリーンルーム内で20分間、吊下げ状態で静置して風乾した。その後、125℃の炉内温度で60分間空気強制循環式加熱炉内に保管して熱硬化させることにより、中央の透明部分において平均約5μmの膜厚の硬化膜を積層させた。次いでかかる硬化膜上に第2層用オルガノシロキサン樹脂塗料を両面塗布し、第1層と同様にして静置し125℃の炉内温度である空気強制循環式加熱炉で60分間保管して熱硬化させ、更に中央の透明部分において平均約4μmの膜厚の硬化膜を積層させた。
フローコートは、単一ノズルにより実施し、またアクリル樹脂塗料とその上のオルガノシロキサン樹脂塗料とは、液流が逆方向になるように塗布を行った。
【0200】
(VI)アクリル樹脂塗料およびオルガノシロキサン樹脂塗料の調製
(VI−1)アクリル樹脂塗料HP−1の調製
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと省略する)74.2重量部、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと省略する)33.6重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと省略する)13.0重量部、LA−82(旭電化工業(株)製ヒンダードアミン系光安定性基含有メタクリレート;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート12.0重量部、メチルイソブチルケトン(以下MIBKと省略する)132.8重量部および2−ブタノール(以下2−BuOHと省略する)66.4重量部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと省略する)0.33重量部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN:0.08重量部を加えて80℃に昇温し、3時間反応させ、不揮発分濃度が39.7重量%のアクリル共重合体溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で115,000であった。アクリル共重合体溶液100重量部に、MIBK:68.6重量部、2−BuOH:34.2重量部、1−メトキシ−2−プロパノール(以下PMAと省略する):133重量部を加えて混合し、チヌビン400(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製トリアジン系紫外線吸収剤)4.24重量部、およびチヌビン479(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製トリアジン系紫外線吸収剤)1.06重量部、アクリル共重合体溶液中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100(デグサ・ジャパン(株)製ブロック化されたポリイソシアネート化合物)10.1重量部を添加し、さらにジメチルチンジネオデカノエート:0.015重量部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂塗料(HP−1)を得た。
【0201】
(VI−2)オルガノシロキサン樹脂塗料HT−1の調製
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製 カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%)133重量部に1Mの塩酸:1.3重量部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン:162重量部を滴下して加えた。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、滴下開始から5分後に60℃まで温度上昇した後、冷却の効果で徐々に混合液温度が低下した。混合液の温度が30℃になった段階でこの温度を維持するようにして30℃で10時間攪拌し、これに、硬化触媒としてコリン濃度45重量%のメタノール溶液:0.8重量部、pH調整剤として酢酸5重量部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール:440重量部を混合し、オルガノシロキサン樹脂組成物塗料(HT−1)を得た。
【0202】
(VI−3)アクリル樹脂塗料HP−2の調製
還流冷却器及び撹拌装置を備えたフラスコ中にMIBK:443.4重量部、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製チヌビン405)350.3重量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート:93.1重量部を添加混合し80℃に加熱した。ついで、ジブチルチンジラウレート:0.1重量部を加え、同温度で30分間攪拌した。室温まで冷却後、得られた溶液を水中に移し、攪拌後、反応物をMIBKで抽出した。MIBKを留去し得られた油状物をメタノール中に滴下、攪拌し淡黄色粉末を得た。該粉末を乾燥し、2−メタクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル(以下、MOI−405と省略する)を得た。
次に、還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA:62.1重量部、CHMA:168.2重量部、HEMA:26.0重量部、上記MOI−T405:41.4重量部、LA−82:47.9重量部、MIBK:518.4重量部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN:0.66重量部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN:0.16重量部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、室温付近まで冷却後2−BuOH:259.2重量部を加え、不揮発分濃度が30.4重量%のアクリル共重合体溶液を得た。
更にかかるアクリル共重合体溶液100重量部に、MIBK:28.2重量部、2−BuOH:14.1重量部、PMA:97.8重量部を加えて混合し、該アクリル樹脂溶液中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANATB1358/100:6.0重量部を添加し、上記チヌビン479:0.53重量部、APZ−6633(東レ・ダウコーニング(株)製シランカップリング剤加水分解縮合物のエタノール溶液;固形分5重量%)7.0重量部、ジメチルチンジネオデカノエート:0.011重量部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂塗料(HP−2)を得た。
【0203】
(VI−4)オルガノシロキサン樹脂塗料HT−2の調製
上記カタロイドSN−30:133重量部に1Mの塩酸1.3重量部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン216重量部を滴下して加えた。メチルトリメトキシシラン滴下終了後、30℃で10時間攪拌した後、硬化触媒としてコリンメタノール溶液(コリン45重量%含有)1.1重量部、酢酸:6.7重量部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール:550重量部を混合し、さらに710T(テイカ(株)製IPA分散型酸化チタン分散液)3.4重量部を加えて、オルガノシロキサン樹脂塗料HT−2を得た。
【0204】
(VII)不要部のトリミング
上記(V)のハードコート処理がされた成形品を、NCエンドミルを用いて切削加工し、図8の如き周囲をブラックアウト印刷されたグレージング成形品を得た。かかるトリミングに先立ち、接着用プライマーの塗工のため貼着されたマスキングテープを除去した。
<評価>
(I−1)参考例1〜11(表1、2)
(製造されたシートの外観目視評価)
製造されたシート(表1および表2において“前”と表示。下記(I−2)において同じ)および熱成形後のシート(表1および表2において“後”と表示。下記(I−2)において同じ)において、成形品を通して観察される透視像や反射像の不均質さに基づく、外観の観察を行った。評価の基準は以下のA〜Dのとおりとした。結果を表1および表2に示す。
A:面に対して約10〜20度のきつい角度で観察しても不良が認められないレベル。
B:面に対して約10〜20度のきつい角度で観察するとわずかに不良が認められる。例えば、担当業務者以外の者は、不良箇所を指摘されても容易に欠点を判別できない、または晴天日中の直射日光の投影像で薄い影が確認できるレベル。
C:面に対して約10〜20度のきつい角度で観察すると不良が認められる。例えば、担当業務者以外の者は、不良箇所を指摘されれば欠点を判別できる、または晴天日中の直射日光の投影像で比較的濃い影が確認できるレベル。
D:面に対して約30度以上での比較的緩い角度で観察しても不良が認められる。例えば、先入観のない担当業務者以外の者が不良箇所を指摘されなくとも観察して欠点を判別できる、または晴天日中の直射日光の投影像で濃い影が確認できるレベル。
(尚、上記の投影像の影の濃さは、上記外観性状の異なるサンプルを同一条件において比較した場合の相対的な程度を表わす)。
【0205】
(I−2)参考例1〜5(表1)
(射出圧縮成形して製造されたシートおよび熱成形後のシートにおける表面性状の評価)
以下のとおり、射出圧縮成形して製造されたシート、および熱成形後のシートの表面を測定した。即ち、JIS B0610に従い表面粗さ形状測定器((株)東京精密製サーフコム1400A)を用いて、各シートの任意の3箇所ずつ(両面で計6個所)について測定を行い、表面粗さRaを算出した。更に上記式(1)におけるろ波うねり曲線のうねり振幅Waおよびうねり波長WSmも同様の測定器を用いて、基準長さLを90mm、表面凹凸形状からカットオフ波長を2.5mm、カットオフ種別を2CR(位相非補償)、傾斜補正を最小二乗曲線補正として、ろ波うねり曲線を抽出して算出した。かかるWaおよびWSmも同様にすることによりシートの任意の3箇所ずつ(両面で計6個所)について測定を行った。結果を表1に示す。
【0206】
(I−3)実施例1〜7、比較例1〜4(表3)
((E1)層を形成するコーティング液に対する耐性評価)
(E1)層を形成するコーティング液に使用されるアクリル樹脂塗料を、印刷および熱曲げ加工された成形品(図8に示す成形品)のブラックアウト印刷部にフローコートし、室温で30分間風乾した後の表面外観を観察した。変化がないものを“○”、光沢の変化や表面の荒れ等の変化が生じたものを“×”とした。アクリル樹脂塗料には、後述するHP−1およびHP−2、並びにSDCテクノロジーズ社製CP710の3種を使用した。HP−1およびHP−2のSP値は約20.2(MPa)0.5であり、CP710は、ジアセトンアルコールと1−メトキシ−2−プロパノールとの混合溶剤からなり、そのSP値は約21.5(MPa)0.5である。結果を表3に示す。
【0207】
(I−4)実施例1〜7、比較例1〜4(表3)
(酢酸エステル溶剤を主成分とする接着用プライマーに対する耐性評価)
酢酸エステル溶剤を主成分とする接着用プライマー(横浜ゴム(株)製RC−50E)を印刷および熱曲げ加工された成形品(図8に示す成形品)のブラックアウト印刷部に塗工し、10分間風乾した後の表面外観を観察した。変化がないものを“○”、印刷部分の膨れや荒れ等の変化が生じたものを“×”とした。接着用プライマーは、次のように実施した。イソプロピルアルコールを含浸されたベンコットワイパーを用いて、印刷部の表面を清浄にした後、プライマー溶液を十分に含浸させた後軽く絞ったベンコットワイパーを約1cm/秒の速度で掃引してプライマーを塗工した。(E1)層の厚みは約5μmであった。結果を表3に示す。
【0208】
(I−5)実施例1〜7、比較例3(表4)
(ウレタン接着剤に対する耐性および接着性評価)
ブラックアウト印刷され、熱曲げ加工された成形品の印刷部分から、長さ110mm×幅30mmの短冊上試験片を3個切出し、評価用試験片として使用した。該試験片の印刷部分にプライマー塗工をし、その約5分後にかかるプライマー上に直径5mmφのウレタン接着剤のビードを塗工した。その後、該ビード上に離型紙を載せ、3mm厚みのスペーサを用いて、その厚みが3mmになるようにビードを押しつぶしてウレタン接着剤を試験片に接着した。プライマーの塗工は、上記評価(I−4)と同様の方法で実施した。
かかる接着の後23℃、相対湿度50%の雰囲気で1週間の養生処理を行い、ウレタン接着剤の湿気硬化を進めた。かかる養生処理終了後の試験片は、以下の2種の促進処理を実施した。即ち、
(i):炉内温度90℃のオーブン中に336時間保管の促進処理、および
(ii):水につけた後絞ることにより、水滴のたれ落ちはないが、十分に湿った綿布で成形品を覆い、かかる状態で密閉容器に入れて、70℃で168時間保管する促進処理
である。(ii)の促進処理は、いわゆるCataplasma試験に準ずる。
かかる処理の後、その外観を確認すると共に、試験片に結合したウレタン接着剤の接着性を引き剥がし試験により評価した。尚、かかる引き剥がし試験では、ウレタン接着剤が凝集破壊(Cohesive Failure)し、所定量の接着破壊がないことが一般的に求められる。したがって、引き剥がし試験における破壊が全て凝集破壊の場合を表3中“CF−100”と表記する。かかる結果が最もよい結果である。結果を表4に示す。
尚、かかる評価(I−5)は、上記評価(I−4)の評価で良好な結果であったもののみ実施した。
【0209】
(I−6)実施例8〜15(表5)
(CFRP製車体枠への接着および評価)
上記トリミング後のグレージング成形品を図9に示す車体取付を想定したエポキシ樹脂含浸の炭素繊維織物プリフレグより作成したCFRP製車体枠材に、湿気硬化型一液性ウレタン接着剤であるハマタイトWS222(横浜ゴム(株)製)を用いて接着した。接着に際して、グレージング成形品の接着部(マスキングテープにより保護された印刷部分)およびCFRP製枠材の接着部は共に、イソプロピルアルコールを含浸させたベンコットワイパーで拭き取り表面を清浄にした。その後、グレージング成形品の接着部分(最終的にウレタン接着剤ビードが押し広げられるよりもやや広い範囲)、およびCFRP製枠材の接着部分のいずれにもボディ用プライマーRC−50E(横浜ゴム(株)製)を塗工した。かかる塗工は、プライマー溶液を十分に含浸させた後、軽く絞ったベンコットワイパーを用いて実施した。プライマーの厚みは約8μmであった。かかるプライマーの塗工から3分以内に、幅8mmおよび高さ12mmの三角形のウレタンビードを塗工した。かかる塗工は成形品の外縁から10mm以内の領域にビードが乗らないよう1周させて実施した。成形品側に取付けられた6mm厚みのスペーサにより、ウレタン接着剤厚みが6mmになるようにして、成形品をステンレス製の枠に固定した。23℃で50%RHの条件で1週間養生処理した後、枠ごと90℃の熱風乾燥炉に入れ、1,000時間の処理を実施したが、いずれも接着剤が全く外れることなく固定していた(表5中“○”で示す)。また、得られたハードコート層はいずれの試験片においても、ポリカーボネート樹脂面およびブラックアウト印刷面ともに沸水3hr処理後のセロテープ剥離試験において、剥離は認められなかった。
【0210】
【表1】

【0211】
【表2】

【0212】
【表3】

【0213】
【表4】

【0214】
【表5】

【0215】
上記、表3、表4および表5に示されるように、本発明の2液硬化性インキ層は、(i)ハードコート液に対する耐性を有することから、該インキ層にハードコート液が接触する場合にも良好な樹脂製グレージング構成体が得られ、(ii)酢酸エステル系溶剤を主成分とするプライマーに対する耐性を有することから該プライマーの塗工を可能とし、かつポリカーボネート樹脂との良好な密着性を有することから、良好な接着性を有する樹脂製グレージング構成体が得られ、並びに(iii)該インキそれ自体の耐熱性に優れることから、接着部の耐熱性および長期特性に優れた樹脂製グレージング構成体が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
自動車の如き輸送機のグレージング部材に求められる良好な意匠性および構造部材の優れた接着性を発揮し、その製造方法は該構成体を、効率的に、低コストで製造できる方法である。したがって、上述のとおり、これらの特性が求められる車輌用グレージング材、例えばバックドアウインドウ、サンルーフ、ルーフパネル、デタッチャブルトップ、ウインドーリフレクター、ウインカーランプレンズ(カバーを含む)、ルームランプレンズ(カバーを含む)、およびディスプレー表示用前面板などにおいて好適に利用することができる。更に車輌用グレージング材以外にも、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、大型ミラー、眼鏡、ゴーグル、防音壁、バイクの風防、銘板、照明カバー、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネル、並びに遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などの幅広い用途に使用可能である。したがって本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
【符号の説明】
【0217】
10 締装置
11 第1射出装置
13 固定金型
14 可動金型
15 金型装置
16 型締め機構
18 型開閉装置
20 係合装置
21 固定板
22 可動板
23 タイバ
24 位置センサー
25 ガイド
26 支持板
27 圧締室
28 開放室
31 成形で得られた成形品
41 シート基材
42 ハードコート層(反対面は図示しない場合がある)
43 印刷層(反対面は図示しない場合がある)
44 接着剤用プライマー層
45 ウレタン接着剤
46 マスキング剤
51 シート−α(ゲート部分を除く大きさは、長さ1,000mm×幅600mm×厚み4.5mm)
52 ゲート(シート外縁部における幅120mm、ホットランナーゲート中心からのシート外縁部までの距離100mm、厚み4.5mm)
53 ホットランナーゲート
61 シート−β(ゲート部分を除く大きさは、長さ1,000mm×幅600mm×厚み4.5mm)
62 ゲート(厚み4.5mm)
63 第1ホットランナーゲート
64 第2ホットランナーゲート
65 第3ホットランナーゲート
71 印刷、熱曲げ、およびハードコート処理後のシート成形品
72 シート成形品本体
73 ブラックアウト印刷された窓枠部(印刷は本図の裏面になされている)
81 トリミング後のグレージング成形品本体(車体左側クォーターウインドウである)
82 窓透光部
91 81のグレージング成形品が取付けられる車体の左側リアフェンダー
92 81のグレージング成形品が取付けられる車体の左側リアフェンダー
93 81のグレージング成形品が取付けられる車体の左側リアコンビネーションランプ
94 81のグレージング成形品が取付けられる車体の開閉可能なバックドアウインドウ
95 81のグレージング成形品が取付けられる車体のパノラマウインドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)層の少なくとも一方の表面に、以下の(B)層、(C)層、(D)層および(E)層を積層したグレージング積層体であって、
積層体の厚み方向に沿った断面を見たとき、(A)層−(B)層−(C)層−(D)層の順で積層された積層構造1と、(A)層−(B)層−(E)層の順で積層された積層構造2、および(A)層−(E)層の順で積層された積層構造3とがあり、積層構造1と3の間に積層構造2が介在することを特徴とするグレージング積層体。
(A)層:ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層。
(B)層:アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層。
(C)層:ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー組成物から形成されてなる接着用プライマー層。
(D)層:ウレタン接着剤からなる接着層。
(E)層:ハードコート層。
【請求項2】
上記(B)層の厚みが3μmから60μmである請求項1記載のグレージング積層体。
【請求項3】
上記アクリルポリウレタンが、アクリルポリオール樹脂、アクリルポリオール樹脂以外の数平均分子量100〜2,000のポリオール、およびヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または該イソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物が反応してなる2液硬化性インキ層である請求項1〜2いずれかに記載のグレージング積層体。
【請求項4】
上記アクリルポリオール樹脂以外のポリオールがポリエーテルポリオールである請求項3記載のグレージング積層体。
【請求項5】
上記(E)層が、有機溶媒にハードコート層用原料を溶解または/および分散させたコーティング液から形成され、少なくとも(A)層および(B)層上に直接塗工されるコーティング液の有機溶媒は、その相溶性パラメータ(SP値)が18.5〜22(MPa)0.5の範囲にある請求項1〜4いずれかに記載のグレージング積層体。
【請求項6】
上記(A)層および(B)層に直接塗工されるコーティング液の有機溶媒は、アルコール類およびケトン類からなる群から選択される少なくとも1種である請求項5記載のグレージング積層体。
【請求項7】
(E)層が、少なくとも(E1)層と(E2)層の2層からなり、ここで(E1)層は(A)層および(B)層と直接積層されるアクリル系樹脂からなるプライマー層であり、(E2)層は(E1)層の(A)層または(B)層と接していない表面に積層されるシリコーン系樹脂からなるトップ層である請求項1〜6いずれかに記載のグレージング積層体。
【請求項8】
上記(A)層が、射出圧縮成形により成形された請求項1〜7のいずれかに記載のグレージング積層体。
【請求項9】
下記工程(i)〜(iv)を含んでなるグレージング積層体の製造方法。
(i)下記(A)層の少なくとも一方の表面の一部に下記(B)層を形成する工程(工程(i))、
(ii)工程(i)で得られた、一部に(B)層が形成された光透過性基材の側において、(B)層の形成されていない(A)層の表面から(B)層の表面の一部にわたり連続した下記(E)層を形成する工程(工程(ii))、
(iii)工程(ii)で得られた(E)層が形成されていない(B)層の表面の少なくとも一部に下記(C)層を形成する工程(工程(iii))、および
(iv)工程(iii)で得られた(C)層の表面に下記(D)層を形成する工程(工程(iv))。
(A)層:ポリカーボネート樹脂からなる光透過性基材層。
(B)層:アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応してなるアクリルポリウレタンからなる2液硬化性インキ層。
(C)層:ポリイソシアネート化合物と酢酸エステル系溶剤とを含有するプライマー組成物からなる接着用プライマー層。
(D)層:ウレタン接着剤からなる接着層。
(E)層:ハードコート層。
【請求項10】
上記工程(i)で、(A)層上に(B)層を形成した後、加熱変形させてから、上記工程(ii)を行なう請求項9記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−35614(P2012−35614A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254862(P2010−254862)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】