説明

樹脂製パレット

【課題】パレットを構成する中空二重壁構造体に積載物による荷重が加わって湾曲状に変形歪みが生じても、そのために互いの溶着面であるパーティングラインにおいて剥離を起こすことがなく、長期間にわたって使用することができる樹脂製パッレットを提供する。
【解決手段】樹脂製パレット1は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られるものである。パレットを構成する中空二重壁構造体2は、中空部となる間隔をおいて対向する一方の壁である上面壁4と他方の壁である下面壁5およブロー成形時において中空二重壁構造体2の一方の半体および他方の半体の互いの溶着面となるパーティングライン7が形成されるとともに、パーティングライン7に沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条8を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造の樹脂製パレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造の樹脂製パレットは、特開2003−1790941号公報または実開平6−3834号公報に記載されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−170941号公報
【特許文献2】実開平6−3834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1に記載されている樹脂製パレットは、上部形成部分と下部形成部分とを合わせて一体化したもので、上部形成部分と下部形成部分とをつなぐ側壁部分には互いの接合面が溶着された接着部(パーティングライン)が形成されている。
また、特許文献2に記載されている樹脂パレットも、パレットを成す2枚の中空成形体を対向させて互いに溶着一体化したもので、2枚の中空成形体が溶着された部分にはパーティングラインが形成されている。
【0005】
このような2つの中空成部分や2枚の中空成形体を溶着一体化した従来のパレットにあっては、種々の補強構造が施されていても基本的に中空体であるから、パレット上に積載物による荷重が加わると湾曲状に変形歪みが生じ、そのため互いの溶着面であるパーティングラインにおいて剥離を起こして早期に使用不能となってしまう欠点があった。
すなわち、図6および7図に示すように、パレットaは中空二重壁構造体の一方の半体bおよび他方の半体cを合わせて一体化した構成であるから、パレットaに積載物dの荷重による変形歪みが生じるとその繰り返しに起因して互いの溶着面であるパーティングラインeに剥離が生じやすいのである。
【0006】
そこで、本発明の目的は、パレットを構成する中空二重壁構造体の周囲壁に、ブロー成形時において中空二重壁構造体の一方の半体および他方の半体の互いの溶着面となるパーティングラインに沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条を形成することにより、パレットを構成する中空二重壁構造体に積載物による荷重が加わって湾曲状に変形歪みが生じても、そのために互いの溶着面であるパーティングラインにおいて剥離を起こすことがなく、長期間にわたって使用することができる樹脂製パッレットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の樹脂製パレットは、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造の樹脂製パレットであって、パレットを構成する中空二重壁構造体は、中空部となる間隔をおいて対向する一方の壁である上面壁と他方の壁である下面壁およびその両壁の周端を一体につなぐ周囲壁を有し、前記周囲壁には、ブロー成形時において中空二重壁構造体の一方の半体および他方の半体の互いの溶着面となるパーティングラインが形成されるとともに、前記パーティングラインに沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条を形成してあることを特徴とするものである。
【0008】
そして、本発明による樹脂製パレットにあっては、パレットを構成する中空二重壁構造体の周囲壁に形成されたフォークリフトのフォークを挿入するためのフォーク挿入孔の開口端をその周囲を外方に向けた凸条により囲まれた縁取り部を形成して補強してあること、およびフォーク挿入孔に隣接して上面壁および下面壁を一体につなぐリブを形成してあることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パレットを構成する中空二重壁構造体に積載物による荷重が加わって湾曲状に変形歪みが生じても、そのために互いの溶着面であるパーティングラインにおいて剥離を起こすことがなくなり、併せてフォークリフトの爪がフォーク挿入孔以外と接触した場合であっても割れ等の破損を防止して、長期間にわたって使用することができる樹脂製パッレットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る樹脂製パレットの実施の形態を示すの全体斜視図である。
【図2】図1のA−A拡大部分断面図である。
【図3】図1のB−B拡大部分断面図である。
【図4】図1のC−C拡大部分断面図である。
【図5】図1のフォークリフト挿入孔部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の課題に関して従来例を示す部分断面図である。
【図7】同上作用を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1ないし図5において、1は樹脂製パレットである。この樹脂製パレット1は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体2から成るものである。パレットを構成する中空二重壁構造体2は平面視が方形状で、中空部3となる間隔をおいて対向する一方の壁である上面壁4と他方の壁である下面壁5およびその両壁の周端を一体につなぐ周囲壁6を有している。前記周囲壁6には、ブロー成形時において中空二重壁構造体2の一方の半体および他方の半体の互いの溶着面となるパーティングライン7が形成されるとともに、前記パーティングライン7に沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条8を形成してある。
周囲壁6には、その各四面にフォークリフトのフォークを挿入するためのフォーク挿入孔9が形成されている。周囲壁6のパーティングライン7は、ブロー成形時に型締めされた部分に形成されてバリ(図示せず)を生じるので、パーティングライン7に沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条8はバリを所要の突出長さ分を残して切除することにより形成される。
パレットを構成する中空二重壁構造体2には、フォーク挿入孔9に隣接して上面壁4および下面壁5を一体につなぐリブ10を複数形成してある。このリブ10は上面壁4側および下面壁5側からそれぞれ中空部3の方向に突出させて互いに溶着一体化しているが、上面壁4側または下面壁5側からそれぞれ突出させて対向する壁と溶着一体化した態様とすることもできる。リブ10はフォーク挿入孔9に隣接して形成するほか、中空二重壁構造体2の中央部にも複数形成して全体の補強と剛性を向上させている。
また、前記フォーク挿入孔9の開口端はその周囲を外方に向けた凸条により囲まれた縁取り部11を形成して補強されている。この縁取り部11を形成する凸条はパーティングライン7に沿って形成された凸条8と同高であるが、必ずしもそうでなくても構わない。
【0012】
図示した実施の形態において、パレットを構成する中空二重壁構造体2の平均肉厚は2〜8mm、中空部3の高さは90〜200mm、パーティングライン7に沿って形成される凸条8の突出幅は1.0〜7.0mm、凸条8の厚さは1.0〜5.0mmである。凸条8はバリを所要の突出長さ分を残して切除したままの形状でもよいが、外観を考慮すれば突出方向にやや先細りの形状にしたり丸みを帯びた形状にするのが好ましい。
【0013】
本発明に係る樹脂製パレット1を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタート樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂あるいはこれらのブレンド物など、剛性にすぐれたブロー成形可能な熱可塑性樹脂である。
【0014】
本発明に係る樹脂製パレット1においては、パレットを構成する中空二重壁構造体2の周囲壁6に、ブロー成形時において中空二重壁構造体の一方の半体である上面壁4および他方の半体である下面壁5の互いの溶着面となるパーティングライン7に沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条8を形成しているので、パレットを構成する中空二重壁構造体2に積載物による荷重により湾曲状に変形歪みが生じても、そのために互いの溶着面であるパーティングライン7において剥離を起こすことがなく、特にフォーク挿入孔9には開口端の周囲を外方に向けた凸条により囲んでなる縁取り部11により補強されているので、重量物を積載した樹脂製パレット1をフォークリフトにより持ち上げた状態においてフォークを挿入したフォーク挿入孔9の上辺に集中する荷重にも耐える強度を確保することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 樹脂製パレット
2 中空二重壁構造体
3 中空部
4 上面壁
5 下面壁
6 周囲壁
7 パーティングライン
8 凸条
9 フォーク挿入孔
10 リブ
11 縁取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造の樹脂製パレットであって、
パレットを構成する中空二重壁構造体は、中空部となる間隔をおいて対向する一方の壁である上面壁と他方の壁である下面壁およびその両壁の周端を一体につなぐ周囲壁を有し、
前記周囲壁には、ブロー成形時において中空二重壁構造体の一方の半体および他方の半体の互いの溶着面となるパーティングラインが形成されるとともに、前記パーティングラインに沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条を形成してある
ことを特徴とする樹脂製パレット。
【請求項2】
パレットを構成する中空二重壁構造体の周囲壁には、フォークリフトのフォークを挿入するためのフォーク挿入孔が形成されていて、前記フォーク挿入孔の開口端はその周囲を外方に向けた凸条により囲まれた縁取り部を形成して補強してあることを特徴とする請求項1記載の樹脂製パレット。
【請求項3】
パレットを構成する中空二重壁構造体には、フォーク挿入孔に隣接して上面壁および下面壁を一体につなぐリブを形成してあることを特徴とする請求項2記載の樹脂製パレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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