説明

樹脂製一体型塗装マスキング治具及びその製造方法

【課題】本発明は、塗装工程における高温雰囲気下での、最適な塗装マスキング材の選定と塗装マスキング治具10の射出成形時の成形収縮率の設定、および被塗装成形品20と前記塗装マスキング治具10の線膨張係数の差異による影響度を予測し、前記塗装マスキング治具10を早期量産することを課題とする。
【解決手段】被塗装成形品20のCADデータの活用による、図1のステップ1の設計仕様の決定、ステップ 2の意匠設計の早期着手、ステップ 3の機能設計における射出成形材の流動解析、ステップ 4の前述ステップ 3のデータに基づく製品設計、ステップ 5の成形収縮率を考慮した金型設計、ステップ 6のCAMデータに基づく金型加工、ステップ 7の生産試作における形状評価の過程を経て製造する高精度の塗装マスキング治具10と熱可塑性液晶ポリエステル樹脂による耐熱性に優れた前記塗装マスキング治具10を含むことを特徴とする製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製一体型塗装マスキング治具及びその製造方法に関する。
特に、被塗装成形品に用いる樹脂製一体型塗装マスキング治具の製品設計、金型設計および金型製作において、被塗装成形品の形状CADデータを有効活用することにより、製品設計、金型設計および金型製作の早期着手化を可能にし、ひいては樹脂製一体型塗装マスキング治具の早期量産化を可能とする。また、被塗装成形品の形状CADデータを有効活用して製作された高精度の射出成形用金型によって成形される樹脂製一体型塗装マスキング治具は、特に、三次元的複雑形状の被塗装成形品に対する高精度のマスキング要求性能を実現することが出来、被塗装成形品の塗装工程におけるマスキング不良の大幅な削減と塗装マスキング治具を一体型にすることにより、被塗装成形品のマスキング作業の高効率化を達成することができる。また、樹脂製一体型塗装マスキング治具の材料に、スーパーエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を使用することにより、耐熱性(高温連続使用温度(170±10℃))、高強度・高弾性率、成形性、振動吸収性、耐薬品性(塗料用溶剤等)、機械的強度(ねじり剛性等)および導通性等において、塗装マスキング治具としての最適な設計要求条件を満たす塗装マスキング治具の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の筐体の塗装工程で用いられている金属製一体型塗装マスキング治具の製造においては、筐体にあたる被塗装成形品の現物合わせによる製造のため、金属製一体型塗装マスキング治具の製造着手時期が大幅に遅れ、受注からエンドユーザーへの一次サンプル提出までのリード・タイムが長期間を要するのが現状である。
【0003】
また、一般的に、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の筐体にあたる被塗装成形品に用いられている塗装マスキング材としては、単一型塗装マスキング材においては、耐熱性マスキングテープ、或いは耐熱性マスキングシールが主流であり、被塗装成形品の導通性等を必要とする塗装されるべきでない所定部位へのマスキングは、技術を習得した人間がピンセット等を用いて手作業によって行なわれている。また、一体型塗装マスキング材は、ゴム系、エラストマー系、汎用樹脂系および金属系の材料が挙げられるが、ゴム系、エラストマー系および汎用樹脂系の一体型塗装マスキング治具は、塗装工程における塗装後の塗装焼付ラインの過酷な高温(170±10℃)雰囲気下での連続使用温度条件を満たす適当な塗装マスキング材を見つけることが困難である。また、金属系の材料を用いた一体型塗装マスキング治具は被塗装成形品の現物合わせによる板金加工品の重ね合わせで製造されるため、一般的には被塗装成形品の形状に対するマスキング精度が低く、特に三次元的複雑形状の被塗装成形品に適する塗装マスキング治具の製造が難しいのが現状である。また、後継機種等の類似被塗装成形品において、塗装工程で用いられる塗装ハンガーの共用化を図ることが難しいのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来の塗装マスキング治具の製造方法および一般的に使用される各種の塗装マスキング材において、次のような課題が存在している。
すなわち、現在、金属製一体型塗装マスキング治具の製造においては、被塗装成形品の現物合わせによる板金加工品の重ね合わせで製造されるため、一体型塗装マスキング治具の製造着手時期が大幅に遅れる。また、金属製一体型塗装マスキング治具は、マスキング精度が低いため試作回数が多く、コストもリード・タイムも多く必要となり、ひいては受注からエンドユーザーへの一次サンプル提出までのリード・タイムが長期間を要するのが現状である。故に、一体型塗装マスキング治具の製品設計、金型設計、金型製作などの早期着手化、試作過程におけるリード・タイムの短縮化および早期量産化に対する改善が求められている。
【0005】
また、現在、工業的に用いられている塗装マスキング材の耐熱性マスキングテープ、或いは耐熱性マスキングシールによる被塗装成形品の導通性等を必要とする塗装されるべきでない所定部位へのマスキング作業は、技術を習得した人間がピンセット等を用いて手作業によって行なわれているため、マスキング箇所が多数ある場合には、マスクの貼り付け及び塗装工程における塗装焼付後のマスク剥し作業に長時間を要し、塗装マスキング作業における作業効率性に対しての改善が求められている。
【0006】
また、ゴム系、エラストマー系および汎用樹脂系の塗装マスキング材は、被塗装成形品の塗装工程における塗装焼付ラインの連続高温雰囲気下(170±10℃)での耐熱強度性に問題があり、最適な塗装マスキング材としての改善が求められている。
【0007】
また、金属系塗装マスキング治具は被塗装成形品の現物合わせによる板金加工品の重ね合わせで製造されるため、特に、三次元的複雑形状の被塗装成形品に対するマスク形状の自由度に制約があり、被塗装成形品の導通性等を必要とする塗装を必要としない所定部位に対する不要な塗装吹込みを完全に防ぐことは困難である。
【0008】
また、金属系塗装マスキング治具は、被塗装成形品の塗装工程における塗装後の塗装焼付ラインでの連続高温雰囲気下(170±10℃)において、被塗装成形品との線膨張係数の物性値の差異により、被塗装成形品の変形等の課題が存在している。故に、現在、工業的に用いられている塗装マスキング材以外の新材料による、新たな塗装マスキング治具の製造方法の創出が期待されている。
【0009】
また、塗装工程で用いられる塗装ハンガーへの被塗装成形品の装着において、特に、後継機種等の類似被塗装成形品に対する塗装ハンガーの共用化に対する改善が求められている。
【0010】
本発明は、このような従来の塗装マスキング治具が有していた問題を解決しようとするものであり、塗装マスキング材料に耐熱性と導通性を有するスーパープラスチックエンジニアリングに属する熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を用い、また、被塗装成形品の形状CADデータを有効活用することで、塗装マスキング治具の早期量産化と高精度化および塗装ハンガーの共用化を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は上記目的を達成するための最も主要な特徴について、以下に述べる。
請求項1に記載の発明は、被塗装成形品の金型設計と同時並行で、被塗装成形品の形状CADデータを活用して、被塗装成形品のマスキングを必要とする裏面の形状CADデータを反転形状に変換したCADデータを基に、一体型塗装マスキング治具の意匠設計、CAE解析(成形シミュレーション)による機能設計、線膨張係数を考慮した製品設計、成形収縮率を考慮した金型設計、CAMデータによる金型加工、および生産試作における形状評価のプロセスを経て製造することを特徴とする。このように構成したので、一体型塗装マスキング治具の製品設計、金型設計、金型製作などの早期着手、試作過程におけるリード・タイムの短縮、ひいては一体型塗装マスキング治具の早期量産という効果がある。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、デジタルカメラ等の筐体の一部をマスキングするための塗装マスキング材料に、スーパーエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を使用することにより、塗装マスキング治具の最適な設計要求条件である耐熱性(高温連続使用温度 170±10℃)、高強度・高弾性率、成形性、振動吸収性、耐薬品性(塗料用溶剤等)、機械的強度(ねじり剛性等)および導通性を満たすことを特徴とする。このように構成したので、被塗装成形品の塗装工程における塗装焼付ラインの連続高温雰囲気下での、一体型塗装マスキング治具の変形によるマスキング不良が減少する効果がある。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、樹脂製一体型塗装マスキング治具において、静電塗装ライン等の塗装ハンガーへ装着するために、一定間隔のラグを一体射出成形により形成したことを特徴とする。このように構成したので、特に、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等における後継機種等の類似被塗装成形品に対して、塗装ハンガーの共用を可能としたことで、該ハンガーの製作コストを大幅に削減できる効果がある。
【発明の効果】
【0014】
従来の塗装マスキング治具の製造方法及び塗装マスキング材の諸問題が、被塗装成形品の形状CADデータの有効活用と公知の樹脂材料である熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を成形材料に用いることで改善又は解決ができる。
以下に本発明の効果の一例を示す。
すなわち、本発明の樹脂製一体型塗装マスキング治具の製造方法では、被塗装成形品の形状CADデータを有効活用することにより、樹脂製一体型塗装マスキング治具の製品設計、金型設計及び金型製作の早期着手化と試作過程におけるリード・タイムの短縮化および樹脂製一体型塗装マスキング治具の早期量産化を可能にすることができる。
【0015】
また、被塗装成形品の形状CADデータを有効活用することにより、樹脂製一体型塗装マスキング治具の製品基本設計および金型基本設計に対するCAE解析ソフトによる射出成形時の成形シミュレーションの解析が容易にでき、樹脂製一体型塗装マスキング治具の射出成形時の成形収縮の影響について考察することにより、成形収縮の影響度を最小限にすることが可能である。ひいては被塗装成形品の形状にフィットした樹脂製一体型塗装マスキング治具の提供ができる。
【0016】
また、CAE解析ソフトにて得たデータと成形収縮係数に関する過去の集積データ等を樹脂製一体型塗装マスキング治具の製品設計および金型設計に活用することにより、マスキングの要求設計仕様を満足する最適な塗装マスキング用射出成形金型を提供することができる。
【0017】
また、マスキング用射出成形金型の製作において、CAMデータ(切削加工用NCプログラム)を介して切削加工することにより、高精度のマスキング用射出成形金型を短納期にて製作することができる。
【0018】
また、金型設計のCADデータと金型製作においるCAMデータ(切削加工用NCプログラム)を活用することにより、三次元的複雑形状の被塗装成形品に対する高マスキング性能を目的とするマスキング用射出成形金型の微修正においても、被塗装成形品の現物合わせにて製造する金属製一体型塗装マスキング治具のように、塗装テストの試行過程における微修正を多く繰り返す必要がなく、短時間にかつ容易に高精度の樹脂製一体型塗装マスキング治具を提供することができる。
【0019】
また、従来の耐熱性マスキングテープ、或いは耐熱性マスキングシールによる塗装マスキング作業は、マスキング箇所が多数ある場合には、作業の効率性に対する問題があったが、一体型の塗装マスキング治具にすることにより前述の問題を解決する。
【0020】
また、従来のゴム系、エラストマー系および汎用樹脂系塗装マスキング材は、特に、導通性を必要とする一体型塗装マスキング治具において、塗装マスキング治具の設計要求条件にあたる導通性にて問題があったが、導通性を有する熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を成形材料として用い、樹脂成形することで塗装マスキング治具の最適な設計要求条件を満たすことにより前述の問題を解決する。
【0021】
また、従来の金属系塗装マスキング治具は、被塗装成形品の形状に対するマスキング精度が低く、特に、三次元的複雑形状の被塗装成形品に対するマスク形状の自由度に制約があり、被塗装成形品の塗装を必要としない所定部位に対する不要な塗装吹込みの問題があったが、本発明の樹脂製一体型塗装マスキング治具は被塗装成形品の形状CADデータの有効活用により製作された塗装マスキング用射出成形金型による樹脂成形品のため、被塗装成形品の形状にフィットした高精度のマスキング性能を得ることにより前述の問題を解決する。
【0022】
また、マスキング性能が安定することにより、塗装成形品の外観品質検査における負荷の軽減および外観品質検査時間の短縮を達成し、ひいてはマスキング不良の流出防止ができる。
【0023】
また、従来の金属系塗装マスキング治具は、被塗装成形品の塗装工程における塗装焼付ラインの連続高温雰囲気下において、被塗装成形品との線膨張係数における物性値の差異から生ずる被塗装成形品の変形等の問題があったが、熱可塑性液晶ポリエステル樹脂の高弾性率を有する特性を特徴とする成形材料を使用することにより前述の問題を解決する。
【0024】
また、一般的に塗装工程で用いられる塗装ハンガーへの被塗装成形品の装着には、塗装マスキング治具本体に装着するためのラグを必要とする。本発明の樹脂製一体型塗装マスキング治具の製造方法では、成形材料として熱可塑性液晶ポリエステル樹脂の導通性を有する樹脂材料を用いることにより、樹脂製一体型塗装マスキング治具の樹脂成形時に、装着するためのラグを一体成形することが可能である。これにより装着するためのラグの間隔の寸法を一定にすれば、特に、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の後継機種等の類似被塗装成形品に対する塗装ハンガーの共用化が可能となり、塗装ハンガーの製作コストを大幅に削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一体型塗装マスキング治具の製造基本フローチャートである。
【図2】一体型塗装マスキング治具を示す概略平面図である。
【図3】図2の概略側面図である。
【図4】被塗装成形品の概略平面図である。
【図5】図4の概略A−A断面図である。
【図6】図4の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、被塗装成形品20の形状CADデータを有効活用することにより、塗装マスキング治具10の製品設計、金型設計及び金型製作の早期着手化を図り、ひいては塗装マスキング治具10の早期量産化を可能とすることを目的とする。
【0027】
また、本発明は、被塗装成形品20に用いる塗装マスキング治具10の材料に樹脂を用い、射出成形によって形成することにより高精度のマスキング性能が達成し、被塗装成形品20の塗装工程におけるマスキング不良を大幅に削減させ、かつ、一体型の塗装マスキング治具10により塗装マスキング作業時間を大幅に短縮させることを目的とする。
【0028】
また、本発明は、成形材料として熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を用い、射出成形金型により射出成形によって製造され、被塗装成形品20の塗装工程における塗装後の塗装焼付ラインの連続高温雰囲気下(170±10℃)での繰り返しの使用を可能にさせ、かつ、後継機種等の類似被塗装成形品に対して、塗装ハンガーの共用を可能とすることを目的とする。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
まず、図1に示す製造基本フローチャートについて説明する。
【0030】
図1のステップ 1の設計仕様の決定においては、被塗装成形品20の使用材質、静電塗装或いは粉体塗装等の塗装方法と既存の塗装ハンガーの装着間寸法、塗装焼付温度と時間、マスキング部位、被塗装成形品20の生産ピーク時の月産生産数量に対する塗装マスキング治具10の必要製造数およびエンドユーザーへの一次サンプル提出期限などの塗装マスキング治具10に関する設計仕様の設定を行なう。また、設計仕様に伴い、被塗装成形品20に用いる塗装マスキング治具10の最適な樹脂材料の選定を行なう。
【0031】
また、図1のステップ2の意匠設計(製品基本設計および金型基本設計)においては、被塗装成形品20の形状CADデータを基に、CADシステムを介して反転形状のCADデータに変換し、最適な塗装マスキング治具10の製品基本設計(3次元形状モデル)と金型基本設計を行なう。
【0032】
また、図1のステップ3の機能設計においては、前述のステップ 2の意匠設計のCADデータと樹脂材料の物性値と過去の射出成形条件値に関する累積データ等を活用し、CAE解析(成形シミュレーション)を行ない、射出成形における樹脂材料の流れ、応力や温度分布又は成形品の引けや皺、変形や歪み、寸法変化などを正確に予測する。
【0033】
また、図1のステップ4の製品設計においては、CAE解析による正確な予測データを基に、塗装マスキング治具10の製品形状の最適化や軽量化などの検討を行ない、樹脂成形コストおよび樹脂材料の調達コストの削減を図る。
【0034】
また、図1のステップ5の金型設計においては、CAE解析による樹脂材料の流動方向および直角方向などの予測流れを基に、成形収縮率に関する過去の集積データ等を活用し、金型キャビティ部の彫り込み寸法を設定する。また、CADシステムを介して、金型構成部品の専門メーカーで広く市販されている上下金型セット(モールドベース)と各種金型部品を構成とする金型構造設計および金型設計を行なう。同時に金型キャビティ部分だけを簡単に交換できる構造としたカセット金型の検討を行ない、モールドベースの共用化による金型コストの削減を図る。
【0035】
また、図1のステップ6の金型加工においては、金型キャビティ部のCADデータをCAMデータ(切削加工用NCプログラム)に変換し、NC化された工作機械にて金型の自動加工を行なう。
【0036】
また、図1のステップ7の生産試作においては、射出成形による塗装マスキング治具10の生産試作または量産の立ち上げ過程において、前述のステップ 4の製品設計CADデータと塗装マスキング治具10の寸法実測値を入力データとして、CAT(コンピュータ支援検査)システムを介して塗装マスキング治具10の形状評価を行なう。
【0037】
また、図1のステップ8においては、射出成形による樹脂製一体型塗装マスキング治具の生産を開始する。
【0038】
また、図2 〜図6に基づいては、製造する塗装マスキング治具10の具体例について説明する。
尚、図2 〜図3は、本発明による塗装マスキング治具10を示し、図4 〜図6は、被塗装成形品20を示している。
【0039】
ここでは、例えば、デジタルカメラの筐体にあたる被塗装成形品20の静電塗装工程において、塗装ライン(室温)および塗装焼付ライン(温度170±10℃、時間30分)の操業条件にて施されることを前提に、被塗装成形品20の導通性等を必要とする塗装されるべきでない所定部位40(図4 〜図6において、・・・・で示す。)への塗装マスキングとして、塗装ハンガーへの装着するためのラグ30を備えた、塗装マスキング治具10が装着されるものとする。
【0040】
以下、上記塗装マスキング治具10の製造の過程について説明する。
まず、図1のステップ1においては、塗装マスキング治具10の設計仕様の設定と最適な樹脂材料の選定を行なう。ここでは、樹脂材料として、スーパーエンジニアリングプラスチックに属する耐熱性と導通性を有する熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を用いる。尚、塗装マスキング治具10の要求設計仕様の条件次第では、汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックに属する他の熱可塑性樹脂を用いることも可能である。
【0041】
また、図1のステップ2においては、デジタルカメラの筐体にあたる被塗装成形品20の塗装マスキングを必要とする裏面の形状CADデータを反転形状のCADデータに変換し、塗装マスキング治具10の意匠設計(製品基本設計および金型基本設計)を行なう。また、塗装工程で用いられている塗装ハンガーの共用を可能にする、該塗装ハンガーへの装着するためのラグ30を意匠設計に盛り込む。
【0042】
また、図1のステップ3の機能設計においては、前述の塗装マスキング治具10の意匠設計のCADデータと樹脂材料の物性値と過去の射出成形条件値に関する累積データ等を基に、CAE解析(成形シミュレーション)を行ない、射出成形における樹脂材料の流れ、応力や温度分布又は成形品の引けや皺、変形や歪み、寸法変化などを正確に予測する。
【0043】
また、図1のステップ4の塗装マスキング治具10の製品設計においては、前述のCAE解析データを基に、塗装マスキング治具10の製品形状の最適性と軽量化等の検討を行ない、前述の塗装マスキング治具10の意匠設計(製品基本設計)のCADデータを補正する。
【0044】
また、図1のステップ5の金型設計においては、前述のCAE解析にて得た、樹脂材料の流動方向および直角方向などの予測流れのデータを基に、成形収縮率に関する過去の集積データ等を活用し、金型キャビティ部の彫り込み寸法の設定を行ない、前述の塗装マスキング治具10の意匠設計(金型基本設計)のCADデータを補正する。
【0045】
また、図1のステップ6の金型加工においては、前述の金型キャビティ部のCADデータをCAMデータ(切削加工用NCプログラム)に変換し、NC化された工作機械にて金型の自動加工を行なう。
【0046】
また、図1のステップ7の生産試作においては、射出成形による塗装マスキング治具10の生産試作および量産の立ち上げ過程において、前述のステップ 4の製品設計CADデータと射出成形にて形成された塗装マスキング治具10の寸法実測値を入力データとして、CAT(コンピュータ支援検査)システムを介して塗装マスキング治具10の形状評価を行なう。
【0047】
また、図1のステップ8においては、デジタルカメラの筐体にあたる被塗装成形品20の塗装工程で用いられている塗装ハンガーの共用を可能とした、樹脂製一体型塗装マスキング治具の生産を開始する。
【0048】
また、射出成形にて製造された樹脂製一体型塗装マスキング治具は、樹脂成形体であるため射出成形時に生ずる内部残留応力が存在する。故に、被塗装成形品20の塗装工程における塗装後の塗装焼付ラインの連続高温雰囲気下において、樹脂成形体すなわち塗装マスキング治具10は熱影響による変形が懸念される。故に、塗装マスキング治具10の射出成形時に生ずる内部残留応力を除去することを目的としたアニーリング処理を施すことにより、熱影響による変形を最小限にすることで、繰返し使用される樹脂製一体型塗装マスキング治具のマスキング精度の維持を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の筐体と構成部品および車両関連(自動車・バイク等)に使用される部品等への適用が可能である。また、あらゆる被塗装成形品の単一型および一体型の塗装マスキング材としての適用も可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 塗装マスキング治具
20 被塗装成形品
30 装着用ラグ
40 マスキングを必要とする所定部位を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装成形品20の形状CADデータを活用して、前記被塗装成形品20の塗装マスキングを必要とする裏面の形状CADデータを反転形状に変換したCADデータに基づいて、塗装マスキング治具10の設計仕様のステップ1と前記ステップ1にて決定した設計仕様に基づくステップ2の意匠設計と前記ステップ2にて決定した意匠設計に基づくステップ3の機能設計と前記ステップ3にて決定した機能設計に基づくステップ4の製品設計と前記ステップ4にて決定した製品設計に基づくステップ5の金型設計と前記ステップ5にて決定した金型設計に基づくステップ6の金型加工と前記ステップ6にて製作した射出成形金型に基づくステップ7の生産試作と前記ステップ7にて生産試作した前記塗装マスキング治具10の形状評価に基づくステップ8の生産開始のプロセスを経て製造することを特徴とする樹脂製一体型塗装マスキング治具の製造方法。
【請求項2】
デジタルカメラ等の筐体の一部をマスキングするための塗装マスキング材料として、スーパーエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性液晶ポリエステル樹脂を使用することを特徴とする樹脂製一体型塗装マスキング治具。
【請求項3】
静電塗装ライン等の塗装ハンガーへ装着するために、一定間隔のラグ30を一体射出成形により形成したことを特徴とする樹脂製一体型塗装マスキング治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131538(P2011−131538A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294729(P2009−294729)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(309039602)タイキ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】