説明

樹脂製成形品の連結構造

【課題】 本発明の樹脂製成形品の連結構造は、樹脂製成形品を他部材に対して容易に、且つ確実に連結して固定することで、他部材に対する樹脂製成形品の浮き上がりや、外れを防止することにある。
【解決手段】 本発明の樹脂製成形品の連結構造は、金属製部材20に、爪掛け部11に当接する板金部23を形成すると共に、板金部23は、この板金部23と爪掛け部11との間に挿入されてこの爪掛け部11に係合される爪部5で、爪掛け部から離れる方向に弾性変形するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の内装品として用いられる樹脂製成形品を、自動車の他部材に連結して固定する樹脂製成形品の連結構造に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車には、車の常用品や書類等を収納するためのアシストボックス、コインケース等の樹脂製成形品(内装品)が多く装備されている。このアシストボックスは、例えば、自動車の助手席の前方に設けられ、自動車の樹脂製表面カバー等の他部材に連結して固定されるものである。
【0003】そして、樹脂製成形品を樹脂製表面カバー等の他部材に固定する連結構造としては、従来から図5および図6に示すようなものがある。先ず、図5において、樹脂製成形品100は、この外部に突出する軸部101外に嵌め込まれた金属製クリップ102を、弾性変形させて樹脂製表面カバー103に形成された連結角孔104に圧入していき、金属製クリップ102の小径部分102Aを樹脂製表面カバー103に引っ掛けることで、樹脂製表面カバー103等(他部材)に連結して固定されるものである。また、図6において、樹脂製成形品100は、この外部に突出する断面レ字形状の爪部105を、樹脂製表面カバー103に形成された爪掛け部106に係合することにより樹脂製表面カバー103に連結して固定されるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術の樹脂製成形品の連結構造では、図5に示す樹脂製成形品の連結構造においては、金属製クリップ102を別途に樹脂製成形品100の軸部101に組付ける作業が必要となると共に、樹脂製表面カバー103にも別途に金属製クリップ102を圧入する連結角孔104を形成する必要がある。また、樹脂製成形品100を、金属製クリップ102を介して間接的に樹脂製表面カバー103に連結して固定すると、金属製クリップ102と軸部101との間や、金属製クリップ102と連結角孔104との間等にガタが発生し易くなり、樹脂製成形品100が樹脂製表面カバー103から浮き上がる。
【0005】更に、図6に示す樹脂製成形品の連結構造においては、自動車のフロントガラス等から注がれる太陽等により樹脂製成形品100の爪部105や樹脂製表面カバー103の爪掛け部106が温度上昇に伴って変形、又は軟化する現象が発生し、爪部105と爪掛け部106との係合度合が低下し易くなる。従って、このような現象により、樹脂製成形品100が樹脂製表面カバー103から浮き上がったり、外れたりする不具合が発生していた。
【0006】本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、樹脂製成形品を他部材に対して容易に、且つ確実に連結して固定することで、他部材に対する樹脂製成形品の浮き上がりや、外れることを防止することのできる樹脂製成形品の連結構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため、本発明の樹脂製成形品の連結構造では、請求項1においては、外部に突出する爪部を有する樹脂製成形品と、前記爪部との係合で前記樹脂製成形品を連結して固定する爪掛け部を有する樹脂製固定部材と、前記樹脂製成形品の周囲に配置される金属製部材とを備えてなる樹脂製成形品の連結構造において、前記金属製部材には、前記爪掛け部に当接する板金部を形成するとともに、前記板金部は、この板金部と前記爪掛け部との間に挿入されて当該爪掛け部に係合される前記爪部で、前記爪掛け部から離れる方向に弾性変形されるものである。これにより、爪部と爪掛け部とは、相互に板金部の弾性変形による反発力で確実に係合されて、樹脂製成形品1を樹脂製固定部材に連結して固定することができる。また、樹脂製成形品の周囲に配置される既存の金属製部材を利用して板金部を形成するという簡単な構造で、且つ爪部を板金部と爪掛け部との間に挿入するという簡単な作業で、爪部と爪掛け部とを確実に係合することができる。
【0008】請求項2においては、請求項1のものに、前記爪部と前記爪掛け部とは、前記板金部と前記爪掛け部との間に挿入されていく前記爪部の挿入方向に向かって傾斜して、相互に係合する同一の傾斜面を有しているものである。これにより、爪掛け部と板金部との間に挿入される爪部は、爪部の傾斜面を爪掛け部の傾斜面で案内しつつ容易に挿入できる。
【0009】請求項3においては、請求項1又は請求項2のものに、前記板金部は、その先端側を前記爪掛け部から前記爪部の挿入されていくと反対側に飛び出させるような形状にされているものである。これにより、爪掛け部と板金部との間に挿入される爪部を、板金部の飛び出し部分で案内しながら確実に爪掛け部と板金部の間に導くことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の樹脂製成形品の連結構造について、図面を参照して説明する。図1は本発明における樹脂製成形品の連結構造を示す斜視図、図2は本発明における樹脂製成形品の連結構造を示す図1のA−A拡大断面図、図3は本発明における樹脂製成形品の連結構造を示す図1のA−A拡大断面図、図4は本発明における樹脂製成形品の連結経過を示す拡大図である。
【0011】本発明は、図1に示すように、樹脂製成形品1(例えば、アシストボックス)の周囲に配置される既存の取付金具20(金属製部材)を利用して、樹脂製成形品1を樹脂製表面カバー10(樹脂製固定部材)に確実に連結して固定することにより、樹脂製成形品1が自動車の樹脂製表面カバー10(樹脂製固定部材)から浮き上がったり、外れたりすることを防止するものである。
【0012】図1において、1は自動車Xの内装品として用いられる樹脂製成形品(アシストボックス)であって、所要容量を有する有底の樹脂ボックス2と、樹脂ボックス2を開閉する樹脂リッド3(蓋、又はカバー)と、この樹脂製形成品1の前面A側の中央部で樹脂リッド3を樹脂ボックス2に対してロック、又はロック解除するロック機構4とを有して構成されている。樹脂ボックス2には、樹脂製成形品1の前面A側の中央部(ロック機構4が設けられている下側)から底2aに向かうように外部に突出する連結用爪部5と、この連結用爪部5を境えにする両側から底2aに向かうように外部に突出する引掛用爪部6,6とが一体成形されている。
【0013】樹脂製成形品1は、樹脂製表面カバー10に取付金具20を介して取り付けられている。取付金具20は、樹脂製成形品1の前面A側を除いて配置された断面コ字形の枠部材21と、この枠部材21の両端にスポット溶接等で溶接されて樹脂ボックス2の前面A側で連結される連結部材22とで枠組体に形成されており、この枠部材21と連結部材22とが溶接されている各溶接部分等と樹脂ボックス2との複数箇所をボルトで締め付けることにより樹脂ボック2に取り付けられている。また、連結部材22は、樹脂ボックス2の前面A側の各引掛用爪部6,6に引っ掛けられる引掛22Aを有する断面L字形状にされており、この中央部には前記樹脂ボックス2の連結用爪部5に係合する板金部23が一体的に形成されている。そして、取付金具20は、樹脂ボック2を樹脂製表面カバー10内に埋設して、この連結部材22から突出する連結部22Bをボルトで締め付けることにより樹脂製表面カバー10に取り付けられている。樹脂製表面カバー10は、樹脂製成形品1を取り囲むように自動車Xに固定されており、樹脂ボックス2の連結用爪部5に係合する爪掛け部11が一体形成されている。
【0014】そして、樹脂製成形品1の連結構造を、図2R>2及び図3に基づいて具体的に説明する。
【0015】図2及び図3において、樹脂ボック2の連結用爪部5は、この先端部に樹脂製成形品1の前面A側に突出する爪部分5Aを有している。この爪部分5Aは樹脂製成形品1の前面A側に突出しつつ、連結用爪部5が爪掛け部11と板金部23との間に挿入される方向(挿入方向B)に向かって傾斜する連結用傾斜面30と、この傾斜面30に連続して樹脂ボックス2側に折れ曲がって樹脂ボックス2側に突出しつつ上記挿入方向Bに向かって傾斜する案内用傾斜面31とで断面三角形状にされている。また、特に、爪部分5Aの連結用傾斜面30は、上記挿入方向Bに対して、例えば45度程度の角度θを有して傾斜されている。
【0016】また、樹脂製表面カバー10の爪掛け部11は、図2及び図3に示すように、断面コ字形状にされており、この先端に連結用爪部5の連結用傾斜面30を当接可能とするように樹脂製表面カバー10から樹脂ボックス2側に向かって突出している。また、爪掛け部11の先端には、爪部分5Aの連結用傾斜面30と同一の傾斜を有する連結用傾斜面32が形成されている。
【0017】更に、取付金具20の板金部23は、図2に示すように、連結用爪部5の挿入前において、樹脂ボックス2と爪掛け部11との間に位置して連結用爪部5の先端側に向かって延びて、樹脂製表面カバー11の爪掛け部11の係合傾斜面32に当接している。また、板金部23の先端部23Aは、爪掛け部11の連結用傾斜面32に当接する部分から円弧を描きつつ、連結用爪部5の先端側(上記挿入方向Bと反対側)に向かって飛び出すような形状にされている。
【0018】次に、本発明の樹脂製成形品1の連結手順を、図2乃至図4に基づいて説明する。先ず、図2に示すように、取付金具20の板金部23が爪掛け部11の連結用傾斜面32に当接している状態から、樹脂製成形品1を樹脂製表面カバー10に連結して固定するためには、この連結用爪部5を爪掛け部11と板金部23の間に挿入する。このとき、連結用爪部5は、板金部23の先端部23Aに当接することにより確実に爪掛け部11と板金部23との間に位置されつつ、板金部23を爪掛け部11の連結用傾斜面32から離れる樹脂ボックス2側へ傾斜させるように弾性変形させて挿入される。尚、このような、連結用爪部5を挿入すると同時にして、樹脂製成形品1の各引掛用爪部6,6に取付金具20の連結部分22Aが引っ掛けられる。
【0019】連結用爪部5の挿入が、図4に示すような軌跡Cを有しつつ進んでいき、この爪部分5Aの頂点5a(断面三角形状の頂点5a)が爪掛け部11の連結用傾斜面32の上側端32aから離れる状態になると、これまで弾性変形された板金部23がその傾斜を解放しつつ爪掛け部11の連結用傾斜面32側に復元される。このとき、板金部23が連結用傾斜面32側に復元されると、この弾性変形による弾性力Fで、爪部分5Aの連結用傾斜面30を爪掛け部11の連結用傾斜面32に係合させて、以後、連結用爪部5は、この爪部分5Aの連結用傾斜面30が爪掛け部11の連結用傾斜面32を滑るように案内されながら容易に挿入されていくとこになる。
【0020】そして、遂には、図3に示すように、爪掛け部11の連結用傾斜面32の上側端32aが連結用爪部5に当接すると、連結用爪部5の連結用傾斜面30と爪掛け部11の連結用傾斜面32とが全面で係合すると共に、板金部23の弾性変形による弾性力Fで連結用爪部5の連結用傾斜面30を爪掛け部11の連結用傾斜面32に押し付ける状態として、樹脂製成形品1を樹脂製表面カバー10に確実に連結して固定する。これにより、各連結用傾斜面30,32の相互の係合と、板金部23の弾性力Fにより樹脂製成形品1が樹脂製表面カバー10から浮き出たり、外れたりすることが防止される。
【0021】この後、取付金具20をボルトで樹脂ボッス2に締め付け、更に、取付金具20の連結部22Bをボルトで締め付けることにより、自動車Xに対する樹脂製成形品1の装備が完了する。
【0022】樹脂製成形品1を樹脂製表面カバー10から取り外すには、上記ボルトを緩めて取付金具20を樹脂ボックス2と樹脂製表面カバー10から取り外すと共に、樹脂製成形品1を、図3に示す状態から挿入方向Bとは反対側に引っ張り出す。この引っ張りに際して、連結用爪部5は、図4に示すような軌跡Cを有しつつ、この爪部分5Aの連結用傾斜面30が爪掛け部11の連結用傾斜面32を滑るように案内されながら容易に引き抜かれていき、遂に、この連結用爪部5が板金部23と爪掛け部11との間から引き抜かれると、板金部23はこの弾性変形による弾性力Fで、図2に示すように、爪掛け部11の連結用傾斜面32に当接する。このように、樹脂製成形品1を樹脂製表面カバー10から取り外すに際しても、この樹脂製成形品1を挿入方向Bと反対側に引っ張るだけで、容易に取り外すととができる。
【0023】
【発明の効果】このように本発明の樹脂製成形品の連結構造によれば、請求項1では、爪部と爪掛け部との温度上昇に伴って変形、又は軟化する現象が発生しても、板金部の反発力で爪部と爪掛け部とを確実に係合させて、樹脂製成形品を樹脂製固定部材に連結して固定できる。また、樹脂製成形品の周囲に配置される既存の金属製部材を利用して板金部を形成するという簡単な構造で、且つ爪部を板金部と爪掛け部との間に挿入するという簡単な作業で、爪部と爪掛け部とを確実に係合することができる。この結果、樹脂製成形品と樹脂製固定部材とのガタの発生をなくしつつ、樹脂製成形品が樹脂製固定部材から浮き上がったり、外れたりする不具合を、容易な構造と作業により防止することが可能となる。
【0024】請求項2では、請求項1の効果に加えて、爪掛け部と板金部との間に挿入される爪部は、爪部の傾斜面を爪掛け部の傾斜面で案内しつつ容易に挿入できる。この結果、必要以上な挿入力を作用させることなく、爪部を板金部と爪掛け部との間に容易に挿入できるので、これらの各部の変形や破損等を防止できる。
【0025】請求項3では、請求項1又は請求項2の効果に加えて、爪掛け部と板金部との間に挿入される爪部を、板金部の飛び出し部分で案内しながら確実に爪掛け部と板金部の間に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における樹脂製成形品の連結構造を示す斜視図である。
【図2】本発明における樹脂製成形品の連結構造を示す、図1のA−A拡大断面図である。
【図3】本発明における樹脂製成形品の連結構造を示す、図1のA−A拡大断面図である。
【図4】本発明における樹脂製成形品の連結経過を示す拡大図である。
【図5】従来技術における樹脂製成形品の連結構造を示す拡大図である。
【図6】従来技術における樹脂製成形品の連結構造を示す拡大図である。
【符号の説明】
1 樹脂製成形品
5 連結用爪部
10 樹脂製表面カバー(樹脂製固定部材)
11 爪掛け部
20 取付金具(取付材)
23 板金部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外部に突出する爪部を有する樹脂製成形品と、前記爪部との係合で前記樹脂製成形品を連結して固定する爪掛け部を有する樹脂製固定部材と、前記樹脂製成形品の周囲に配置される金属製部材とを備えてなる樹脂製成形品の連結構造において、前記金属製部材には、前記爪掛け部に当接する板金部を形成するとともに、前記板金部は、この板金部と前記爪掛け部との間に挿入されて当該爪掛け部に係合される前記爪部で、前記爪掛け部から離れる方向に弾性変形されることを特徴とする樹脂製成形品の連結構造。
【請求項2】 前記爪部と前記爪掛け部とは、前記板金部と前記爪掛け部との間に挿入されていく前記爪部の挿入方向に向かって傾斜して、相互に係合する同一の傾斜面を有していることを特徴とする請求項1記載の樹脂製成形品の連結構造。
【請求項3】 前記板金部は、その先端側を前記爪掛け部から前記爪部の挿入されていくと反対側に飛び出させるような形状にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂製成形品の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開平9−207844
【公開日】平成9年(1997)8月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−37509
【出願日】平成8年(1996)1月30日
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)