説明

樹脂製溶接容器

【課題】本発明は、あまり高い溶接技術を必要としないとともに、液漏れを回避ことを課題とする。
【解決手段】半導体製造の際に使用される樹脂製溶接容器において、コーナー部が夫々カットされた樹脂製底板12と、この樹脂製底板12に突合せ溶接される断面形状がL字型の複数の樹脂製側板13a,13bと、前記底板12及び側板13a,13bに夫々突合せ溶接される樹脂製コーナー部材14を具備し、前記コーナー部材14は、断面形状がL字型の側壁部14aとこの側壁部14aのL字部分に当接するように位置する底部14bからなり、かつ側壁部14aと底部14bは一体成形されていることを特徴とする樹脂製溶接容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に半導体用ウェハ等を処理する際に使用される樹脂製溶接容器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、半導体ウェハ等を処理する際には、薬液等を入れる目的で樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂,PTFE)製の角形容器が用いられている。こうした角形容器は、一般に図3(A),(B)に示すような構成となっている。
【0003】
角形容器1は、PTFE製の底板2と、互いに対向するPTFE製の側板3,3と、互いに対向するPTFE製の側板4,4とから構成されている。ここで、底板2と側板3,4同士、及び隣り合う側板3,4同士は溶接により固定されている。なお、図中の符番5は溶接部を示す。
従来、底板や4枚の板状部材を用いた樹脂製の角形容器としては、例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開昭62−122983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図3のような角形容器1においては、底板2と側板3,4が交差するコーナー部では、高い溶接技術が要求される。また、PTFE製の底板や側板を用いた場合、溶接強度が出にくいので、容器が大型化しかつ温度が高くなると、底板2や側板3,4の材質であるPTFEの延び、変形により容器の四隅から液漏れが発生し易かった。
【0005】
本発明はこうした事情を考慮したもので、あまり高い溶接技術を必要としないとともに、液漏れを回避しえる樹脂製溶接容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂製溶接容器は、半導体製造の際に使用される樹脂製溶接容器において、コーナー部が夫々カットされた樹脂製底板と、この樹脂製底板に突合せ溶接される断面形状がL字型の複数の樹脂製側板と、前記底板及び側板に夫々突合せ溶接される樹脂製コーナー部材を具備し、前記コーナー部材は、断面形状がL字型の側壁部とこの側壁部のL字部分に当接するように位置する底部からなり、かつ側壁部と底部は一体成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、あまり高い溶接技術を必要としないとともに、液漏れを回避しえる樹脂製溶接容器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、樹脂製底板や樹脂製側板,樹脂製角部材の材料である樹脂としては、耐薬品性,耐熱性等に優れた四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が挙げられる。
本発明において、前記樹脂は四フッ化エチレン樹脂であり、底板と側板同士、底板と角部材、及び側板と角部材同士の接合は四フッ化エチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)により行われることが好ましい。
【0009】
また、本発明において、樹脂製底板のコーナー部は内側に向いて曲面状にカットされ、且つこの底板のコーナー部に溶接されるコーナー部材の底部は、コーナー部の曲面に沿うように外側に向いて曲面状に形成されていることが好ましい。こうした構成にすることにより、樹脂製底板のコーナー部とコーナー部材の底部同士を効率よく溶接することができる。なお、コーナー部材の底部の曲面形状は、円形、楕円形等種々の曲面形状にすることができる。
【0010】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)
図1(A),(B)及び図2(A),(B)を参照する。ここで、図1(A)は本実施例に係る溶接容器の平面図、図1(B)は図1(A)のX−X線に沿う断面図、図2(A)は溶接容器の一構成であるコーナー部材の斜視図、図2(B)は溶接容器の一構成である側板の斜視図を示す。
【0011】
図中の符番11はPTFE製の溶接容器である。この溶接容器11は、横長で上部が開口した箱形構造をしている。溶接容器11は、PTFE製の底板12と、図2(B)に示すようにPTFE製の断面形状がL字型の側板13a,13b(側板13aは便宜上図示せず)と、図2(A)に示すようにPTFE製の4つのコーナー部材14から構成されている。底板12の4つのコーナー部は、内側に例えば30Rに湾曲するように曲面状にカットされている。側板13aは側板13bより長く形成されているが、断面形状がL字型である点は同じであり、ともに一体成形により形成される。コーナー部材14は、溶接容器11のコーナー部に配置される。コーナー部材14は、図2(A)に示すように、断面形状がL字型の側壁部14aとこの側壁部14aのL字部分に位置する底部14bからなり、かつ側壁部14aと底部14bは一体成形されている。ここで、底部14bは、底板12のコーナー部の曲面に沿うように外側に向いて30Rに曲面状に形成されている。
【0012】
4つのコーナー部材14を底板12のコーナー部に配置した状態で、底板12と側板13a,13b同士、底板12とコーナー部材14、及び側板13a,13bとコーナー部材14同士は、PFA樹脂を用いた突合せ溶接により接合されている。なお、図1中の符番15はPFAによる溶接部を示す。また、符番16は溶接ラインを示す。コーナー部材14の底部14bと底板12と接する溶接ライン16は、溶接ビードが1本で通るように30Rに曲面状に形成されている。コーナー部材14の側壁部14aと底部14bとの付け根部分17は、3R〜5R程度に曲面状に形成されている。また、コーナー部材14の隣り合う側壁部14aの角部18は10R程度に湾曲している。ここで、側板13a,13b及びコーナー部材14は、冷間等方圧加圧法、切削加工、絞り加工等による一体成形によって一体物として形成される。
【0013】
上記実施例の溶接容器は、PTFE製底板12と、この底板12に突合せ溶接される断面形状がL字型の樹脂製側板13a,13bと、底板12及び側板13a,13bに夫々突合せ溶接される,4つのPTFE製コーナー部材14からなり、底板12と側板13a,13b同士、底板12とコーナー部材14、及び側板13a,13bとコーナー部材14同士が突合せ溶接により接合された構成となっている。
【0014】
こうした構成の溶接容器によれば、一体成形により形成された断面形状がL字型の側板13a,13bやコーナー部材14を用いて底板12と溶接するので、互いの構成部材同士の溶接ラインが従来の角部の場合と比べて内側寄りになり、従来のように容器のコーナー部に溶接ラインが集中することがないのでコーナー部の強度を向上することができる。従って、あまり高い溶接技術を必要とすることなく、底板12、側板13a,13b及びコーナー部材14同士を溶接することができるとともに、液漏れがしにくい溶接容器11が得られる。
【0015】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、コーナー部材の底部の曲面部の曲面(R)度合等は適宜な形状にすることが可能である。但し、曲面部の曲面度合は、溶接ビードが1本で通るように大きいR(30R以上)をつけることが好ましい。また、コーナー部材や側板の材質と溶接ための樹脂材質も、上記実施例で述べた材質に限定されない。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。更には、樹脂製溶接容器が大きくなる場合においては、底板,各側板が夫々複数の底板片や側板片を溶接により接続して構成する場合があり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る樹脂製溶接容器の説明図である。
【図2】図2は、図1の樹脂製溶接容器の一構成である、樹脂製側板及び樹脂製角部材の概略的な斜視図である。
【図3】図3は、従来の樹脂製溶接容器の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
11…溶接容器、12…底板、13a,13b…側板、14…コーナー部材、14a…側壁部、14b…底部、15…溶接部、16…溶接ライン、17…付け根部分、18…角部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造の際に使用される樹脂製溶接容器において、
コーナー部が夫々カットされた樹脂製底板と、この樹脂製底板に突合せ溶接される断面形状がL字型の複数の樹脂製側板と、前記底板及び側板に夫々突合せ溶接される樹脂製コーナー部材を具備し、
前記コーナー部材は、断面形状がL字型の側壁部とこの側壁部のL字部分に当接するように位置する底部からなり、かつ側壁部と底部は一体成形されていることを特徴とする樹脂製溶接容器。
【請求項2】
前記樹脂は四フッ化エチレン樹脂であり、底板と側板同士、底板と角部材、及び側板と角部材同士の接合は四フッ化エチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂により行われることを特徴とする請求項1記載の樹脂製溶接容器。
【請求項3】
前記樹脂製底板のコーナー部は内側に向いて曲面状にカットされ、且つこの底板のコーナー部に溶接されるコーナー部材の底部は、コーナー部の曲面に沿うように外側に向いて曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1若しくは2記載の樹脂製溶接容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−137600(P2009−137600A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313874(P2007−313874)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000211156)中興化成工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】