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樹脂複合体
説明

樹脂複合体

【課題】酸性雰囲気下での使用においても物性の低下が少ないメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体を提供する。
【解決手段】単糸繊度が特定範囲であり、繊維中に残存する溶媒の含有量が特定値以下である全芳香族ポリアミド繊維を用いて、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合体に関する。さらに詳しくは、酸性雰囲気での物性の低下が抑制されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属で作られていた歯車、ギアー等の成型品の軽量化を目指して、種々のプラスチック成形品が検討されている。そして、これまで、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアセタール(POM)等の耐熱性樹脂成形物等が既に検討されている。しかしながら、これらの樹脂単独では、従来の金属品に比べて、強度や耐摩耗性等が不足しており、その結果、寿命が短いものとなっていた。
【0003】
上記欠点を解消する目的で、各種プラスチックと比較的比重値の似通った有機繊維材料による補強材が検討されている。なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドに代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(「メタアラミド」と称されることもある)短繊維は、破断強度等の機械的特性、耐疲労性、耐熱性、および化学的性質が優れているため、樹脂補強用繊維として好ましく用いることができる。例えば、特許文献1においては、自動車エンジン周辺に用いられる樹脂ギアー等の樹脂成形品として、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を補強材とした複合体が提案されている。
【0004】
しかしながら、近年、自動車エンジンの燃費の効率化に伴い、燃料であるガソリンやアルコール/ガソリン混合燃料等の使用環境が、より高温側へと変化している。そして、高温環境下においては、燃料のガソリン等が酸化して有機過酸化物を含む酸性のサワーガソリンへと変化することが知られており、生成したサワーガソリンはエンジン回りに用いられている樹脂成形品に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の劣化を促進させ、ひいては破損に至るという問題が生じていた。
このため、酸性雰囲気での物性の低下が抑制された耐酸性のメタ型全芳香族ポリアミド繊維含有樹脂複合体の出現が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−113788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、酸性雰囲気下での使用においても物性の低下が少ないメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、単糸繊度が特定範囲であり、残存する溶媒の含有量が特定値以下である全芳香族ポリアミド繊維を用いれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体であって、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、単糸繊度が10.0〜50.0dtexであり、残存溶媒量が繊維全体質量に対して1.0質量%以下である樹脂複合体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体は、公知のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いた樹脂複合体と比べて、酸性雰囲気下での使用においても物性の低下が少なく、より過酷な高温酸性雰囲気において使用に耐えうるものとなり、例えば、自動車部品用途に用いられる樹脂歯車等として、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維>
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、以下の特定の物性を備える。本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性、構成、および、製造方法等について以下に説明する。
【0010】
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性]
〔単繊維の繊度(単糸繊度)〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、単繊維の繊度(単糸繊度)が10.0〜50.0dtexの太繊度の繊維である。単繊維の繊度が10.0dtex未満である場合には、得られる樹脂複合体の耐酸性効果が不十分となるため好ましくない。一方で、50.0dtex以上となるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることが困難であり、現実的でない。
【0011】
〔残存溶媒量〕
メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、通常、ポリマーをアミド系溶媒に溶解した紡糸原液から製造されるため、必然的に該繊維に溶媒が残存する。しかしながら、本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、繊維中に残存する溶媒の量が、繊維質量に対して1.0質量%以下である。1.0質量%以下であることが必須であり、0.5質量%以下であることがより好ましい。特に好ましくは、0.01〜0.1質量%である。
繊維質量に対して1.0質量%を超えて溶媒が繊維中に残存している場合には、200℃を超えるような高温雰囲気下での加工や使用の際に黄変しやすくなり、また、著しい強度の低下が生じるため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維中の残存溶媒量を1.0質量%以下にするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有さず緻密な凝固形態をとるように特定の凝固浴を用いて湿式紡糸するとともに、特定範囲内の紡糸ドラフトで凝固糸を引き上げて繊維を得る。
【0012】
なお、本発明における「繊維中に残存する溶媒量」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(残存溶媒量の測定方法)
洗浄工程の出側にて繊維をサンプリングし、該繊維を遠心分離機(回転数5000rpm)に10分かけ、このときの繊維質量(M1)を測定する。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出する。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2時間乾燥し、乾燥後の繊維重量(P)を測定する。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求める。
繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記式により算出する。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
【0013】
〔破断強度〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、破断強度が5.0〜6.5cN/dtexの範囲であることが好ましい。5.5〜6.5cN/dtexの範囲であることがさらに好ましく、5.8〜6.5cN/dtexの範囲であることが最も好ましい。
破断強度が5.0cN/dtex未満である場合には、樹脂補強効果が得られ難く好ましくない。一方、6.5cN/dtexを超える場合には、伸度が大幅に低下し、捲縮、カット、紡績等の後加工工程における工程通過性が低下するため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、「破断強度」を上記範囲内にするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有さず緻密な凝固形態をとるように特定の凝固浴を用いて湿式紡糸するとともに、特定範囲内の紡糸ドラフトで凝固糸を引き上げ、特定倍率の範囲内で可塑延伸を行って繊維を得る。
【0014】
なお、本発明における「破断強度」とは、JIS L1015に基づき、測定機器としてインストロン社製、型番5565を用いて、以下の条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
【0015】
〔断面形状〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、円形、楕円形、その他任意の形状であってよく、多数の紡糸孔を有する紡糸口金を用いた湿式紡糸により得られる断面形状であればよい。
【0016】
〔破断伸度〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、破断伸度が15%以上であることが好ましく、18%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。破断伸度が15%未満である場合には、捲縮、カット、紡績等の後加工工程における工程通過性が低下するため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の「破断伸度」は、後記する製造方法における凝固工程において、スキンコアを有さず緻密な凝固形態をとるように特定の凝固浴を用いて湿式紡糸することにより制御できる。15%以上とするためには、凝固液として、アミド系溶媒、例えばDMAc(N、N−ジメチルアセトアミド)の濃度を50〜60質量%とした水溶液を用い、浴液の温度を10〜30℃とすればよい。
なお、ここでいう「破断伸度」とは、JIS L1015に基づき、上記した「破断強度」の測定条件で測定して得られる値をいう。
【0017】
〔強度保持率(耐酸性)〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の耐酸性としては、25℃で20質量%硫酸水溶液中に600時間浸漬した後の強度保持率が70%以上であることが好ましい。75%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
強度保持率が70%未満である場合には、当該メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂成形品を長期間にわたって酸性雰囲気で使用すると、繊維の機械的強度の低下により劣化が起こり、ひいては破損してしまう。
強度保持率を70%以上とするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を調節し、かつ、洗浄工程を経た後に特定温度で乾熱処理を実施して繊維を得る。
【0018】
なお、本発明における「25℃で20質量%硫酸水溶液中に600時間浸漬した後の強度保持率」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(強度保持率(耐酸性)の測定方法)
セパラブルフラスコへ20質量%の硫酸水溶液を入れ、繊維51mmを浸漬する。続いて、セパラブルフラスコを恒温水槽中に浸漬し、温度25℃に維持し、繊維を600時間浸漬する。浸漬前後の繊維につき、それぞれ、破断強度の測定を実施し、浸漬後の繊維の強度保持率を求める。
【0019】
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の表面処理]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、表面処理剤によって表面処理が施されたものであってもよい。表面処理することにより、例えば繊維をカットして短繊維とする際のカット性を確保することができ、また、カット後の繊維を樹脂に配合する際に、分散初期における収束性を維持することができる。表面処理剤としては、特に限定されるものではなく、用いる樹脂に適合するように公知の剤を使用することができ、例えば、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。
【0020】
[カット長]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維が短繊維である場合には、繊維のカット長は0.3〜10.0mmの範囲とすることが好ましい。0.3mm未満では繊維による補強効果が得られ難く、一方で、10.0mmを超える場合には、繊維同士のからみが生じるため分散不良となる。
【0021】
[アスペクト比]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維が短繊維である場合には、アスペクト比(繊維長さ/繊維直径)を10〜100の範囲とすることが好ましい。アスペクト比が100を超える場合には、分散が不良となり、樹脂中に偏在してしまう。一方、アスペクト比が10未満の場合には、カット作業が困難となる。
【0022】
<メタ型全芳香族ポリアミド>
[メタ型全芳香族ポリアミドの構成]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の材料となるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とを原料として用い、これらを反応せしめることにより得ることができる。また、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明においては、力学特性に優れ、高温雰囲気下での使用に耐えうる耐熱性、難燃性を有することから、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドであることが好ましい。さらには、全繰り返し単位の好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%がメタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドであることが望ましい。
【0023】
〔メタ型全芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
【0024】
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロルイソフタル酸クロライド、3−メトキシイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドのみ、または、イソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
【0025】
(共重合成分)
上記のメタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分以外で使用しうる共重合成分としては、例えば、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。一方、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいため、ポリアミドの全ジアミン成分および全酸成分を基準として、それぞれ15モル%以下とすることが好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、上記した通り、全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好ましい。
【0026】
[メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法]
メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
なお、本発明に用いられる繊維を形成するメタ型全芳香族ポリアミドの分子量は、繊維を形成し得る程度であれば特に限定されるものではない。一般に、十分な物性の繊維を得るには、濃硫酸中、ポリマー濃度100mg/100mL硫酸で30℃において測定した固有粘度(I.V.)が、1.0〜3.0の範囲となる分子量を有するポリマーが適当であり、1.2〜2.0の範囲となるポリマーが特に好ましい。
【0027】
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、例えば上記の製造方法によって得られた芳香族ポリアミドを用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、乾熱処理工程、熱延伸工程を経て製造することができる。
【0028】
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取り扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミド等のメタ型全芳香族ポリアミドで、溶媒がNMP等のアミド系溶媒である場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
【0029】
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させて凝固糸を得る。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1,000〜20,000個、紡糸孔径が0.07〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が適当である。
【0030】
本発明に用いられる繊維を得るためには、特定の凝固浴を用いることが重要であり、凝固浴として、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒が50〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜30℃の範囲として用いる。アミド系溶媒の濃度が50〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜30℃の範囲として用いることが必須であり、アミド系溶媒の濃度を53〜60質量%、浴液の温度を10〜25℃とすることが好ましい。さらには、アミド系溶媒の濃度を55〜60質量%、浴液の温度を10〜20℃とすることが特に好ましい。
アミド系溶媒の濃度が50質量%未満では、得られる凝固糸表面に形成されるスキンが厚い構造となってしまい、後の洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。一方、アミド系溶媒の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。
【0031】
また、本発明に用いられる繊維を得るためには、特定の凝固浴を用いるとともに、特定範囲の紡糸ドラフトで凝固糸を引き上げることが必須であり、紡糸ドラフトは0.1〜0.5の範囲とする。0.1〜0.4の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.3の範囲とすることがさらに好ましい。
紡糸ドラフトが0.1未満の場合には、凝固糸の張力が低すぎるため隣接する単糸同士が接触してしまい、工程調子が不調となり、凝固糸を引き上げることが困難となる。一方、紡糸ドラフトが0.5を超える場合には、凝固液による液抵抗が大きくなるため凝固糸表層部分の脱溶媒が進行し、スキン層を形成してしまう。その結果、均一な繊維構造が得られないため繊維の物性が低下するばかりでなく、後の洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
【0032】
ここで、実質的に無機塩を含まない凝固液とは、実質的にアミド系溶媒と水だけで構成される凝固液を意味する。しかしながら、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の無機塩類がポリマー溶液中から抽出されてくるため、実際には、凝固液にはこれらの塩類が少量含まれる。工業的な実施における塩類の好適濃度は、凝固液全体に対して0.3質量%〜10%質量の範囲である。無機塩濃度を0.3質量%未満とするためには、凝固液の回収プロセスにおける精製のための回収コストが著しく高くなるため適切ではない。一方で、無機塩濃度が10質量%を超える場合には、凝固速度が遅くなることから、紡糸口金から吐出された直後の繊維に融着が発生しやすくなり、また、凝固時間が長時間となるため凝固設備を大型化せざるを得なくなり好ましくない。
凝固浴の条件および紡糸ドラフトを上記の通りに設定することにより、繊維表面に形成されるスキンを薄くし、繊維内部まで均一な構造にすることができ、さらに、得られる繊維の破断伸度を向上させることができる。
かかる紡糸・凝固工程により、凝固浴中で多孔質のメタ型全芳香族ポリアミドの凝固糸からなる繊維(トウ)が形成され、その後、凝固浴から空気中へ引き出される。
【0033】
[可塑延伸浴延伸工程]
可塑延伸浴延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。
可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。例えば、アミド系溶媒の水溶液からなり、塩類が実質的に含まれない水溶液を用いることができ、工業的には、上記凝固浴に用いたものと同じ種類の溶媒を用いることが特に好ましい。すなわち、重合体溶液、凝固浴および可塑延伸浴に用いるアミド系溶媒は同種であることが好ましい。同種のアミド系溶媒を用いることによって、回収工程を統合・簡略化することができ、経済的に有益となる。
可塑延伸浴の温度と組成とはそれぞれ密接な関係にあるが、アミド系溶媒の質量濃度が20〜70質量%、かつ、温度が20〜70℃の範囲であれば、好適に用いることができる。この範囲より低い領域では、多孔質繊維状物の可塑化が十分に進まず、可塑延伸において十分な延伸倍率をとることが困難となる。一方で、これの範囲より高い領域では、多孔質繊維の表面が溶解して融着するため、良好な製糸が困難となる。
【0034】
本発明に用いられる繊維を得るためには、可塑延伸浴中の延伸倍率を、3.5〜10.0倍の範囲とする必要があり、さらに好ましくは4.0〜6.5倍の範囲とする。可塑延伸浴中の延伸を当該倍率の範囲で行い、延伸による分子鎖配向を上げることにより、最終的に得られる繊維の破断強度を確保することができる。
可塑延伸浴中での延伸倍率が3.5倍未満である場合には、5.0cN/dtex以上の破断強度を有する繊維を得ることが困難となる。一方で、延伸倍率が10.0倍を超える場合には、単糸切れが発生するため、生産安定性が悪くなる。
可塑延伸浴の温度は、20〜90℃の範囲が好ましい。温度が20〜90℃の範囲にある場合には、工程調子が良いため好ましい。上記温度は、さらに好ましくは20〜60℃である。
【0035】
[洗浄工程]
洗浄工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
【0036】
温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば特に限定されるものではないが、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
繊維中に溶媒が残っている場合には、高温下での繊維の着色または変色(特に黄変)を抑制することができず、また、物性低下や収縮、限界酸素指数(LOI)の低下等を生じさせる。このため、本発明に用いられる繊維に含まれる溶媒量は、1.0質量%以下とする必要があり、0.5質量%以下とすることがより好ましい。特に好ましくは、0.01〜0.1質量%の範囲である。
【0037】
[乾熱処理工程]
本発明に用いられる繊維を得るためには、上記洗浄工程を経た繊維に対して、好ましくは、乾熱処理工程を実施する。乾熱処理工程においては、上記洗浄工程により洗浄が実施された繊維を、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは100〜200℃の範囲で、乾燥熱処理する。ここで、乾熱処理は、特に限定されないが、定長下が好ましい。
洗浄工程の後、乾燥熱処理を引き続いて施すと、ポリマーの流動性を適度に向上させ、配向が進む一方で結晶化を抑制し、繊維の緻密化を促進することができる。なお、上記の乾熱処理の温度は、熱板、加熱ローラー等の繊維加熱手段の設定温度をいう。
【0038】
[熱延伸工程]
続いて、上記乾熱処理工程を経た繊維に対して、熱延伸工程を施す。熱延伸工程においては、310〜335℃で熱処理を加えながら、1.2〜1.8倍の延伸を実施することが好ましい。熱延伸工程における熱処理温度が335℃を超える高温の場合には、糸が着色し、また、激しく劣化して、破断強度が低下するばかりか、場合によっては断糸することがある。一方、310℃を下回る温度では、繊維の十分な結晶化を達成することができず、所望の繊維物性、すなわち破断強度等の力学的特性および熱的特性を発現することが困難となる。
【0039】
熱延伸工程における処理温度と得られる繊維の密度とには、密接な関係がある。特に良好な繊維密度の製品を得るためには、熱延伸工程における熱処理温度を、310〜335℃の範囲とすることが好ましい。なお、熱処理は、乾熱処理とすることが特に好ましく、熱延伸工程における熱処理温度は、熱板、加熱ローラー等の繊維加熱手段の設定温度をいう。
また、熱延伸工程における延伸倍率は、得られる繊維の強度および弾性率の発現に密接な関係がある。本発明に用いられる繊維を得るためには、通常、1.2〜1.8倍、好ましくは1.2〜1.5倍の範囲に設定することが好ましく、当該範囲とすることで、良好な熱延伸性を保持しつつ、必要となる強度および弾性率を発現させることができる。
【0040】
[表面処理工程]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の適用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型全芳香族ポリアミド長繊維の束を、処理剤によって処理し、乾燥、熱処理する方法が挙げられる。
用いる処理剤および処理方法は特に限定されるものではなく、例えば、メタ型全芳香族ポリアミド長繊維束を塩化メチレン等の溶剤に溶けたポリエーテルスルフォン樹脂溶液に浸責し、圧接ローラーによって付着量を制御した後、170〜250℃の温度で乾燥、熱処理する方法が挙げられる。
【0041】
[カット工程]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、短繊維であってもよい。さらには、表面処理された短繊維であってもよい。カット方法としては特に制限されるものではなく、例えば、ギロチンカッター、ロータリーカッター等の一般的なカッターを用いたカット方法を採用することができる。
【0042】
<樹脂複合体>
本発明の樹脂複合体は、上記のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む複合体である。
【0043】
[樹脂の種類]
本発明で用いる樹脂の種類としては、特に限定されるものではなく、用途によって適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂の場合には、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、PES(ポリエーテルスルフォン)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等を挙げることができる。
熱硬化性樹脂の場合には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、CPレジン(架橋ポリエステルアミド、架橋ポリアミノアミド)等が挙げられる。
【0044】
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の含有量]
本発明の樹脂複合体に含まれるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の配合量は、樹脂100質量部に対して1.0〜50.0質量部が好ましい。5.0〜30.0質量部であることがさらに好ましい。1.0質量部未満では、得られる樹脂複合体の繊維補強の効果が小さいため、曲げ強度が不十分となる。また、50.0質量部を超える場合には、分散に斑が生じ、得られる樹脂複合体の曲げ強度が低下するため好ましくない。
【0045】
[樹脂複合体の物性]
〔曲げ強度保持率(耐酸性)〕
本発明の樹脂複合体の耐酸性としては、25℃で20質量%硫酸水溶液中に600時間浸漬した後の曲げ強度保持率が60%以上であることが好ましい。65%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
曲げ強度保持率が60%未満である場合には、当該メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体を長期間にわたって酸性雰囲気で使用すると、機械的強度の低下により劣化が起こり、ひいては破損してしまう。
曲げ強度保持率を60%以上とするためには、上記で記載したメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて樹脂複合体を得る。
【0046】
なお、本発明における「25℃で20質量%硫酸水溶液中に600時間浸漬した後の曲げ強度保持率」は、以下の測定方法で測定して得られる値をいう。
(曲げ強度保持率(耐酸性)の測定方法)
繊維を含有した樹脂複合体から、JIS K 7139に準拠した多目的試験片A型を作製し、20質量%の硫酸水溶液を入れたセパラブルフラスコへ該試験片を浸漬固定し、続いて、セパラブルフラスコを恒温水槽中に浸漬し、温度25℃に維持して、サンプルを600時間浸漬する。600時間経過後に取り出し、表面に付着した余分な水溶液を3分以内に拭き取り、室温に4時間以上放置する。浸漬前後の試験片それぞれにつき、以下に記載する曲げ強度試験を実施し、得られた最大荷重から曲げ強度保持率を測定する。
(曲げ強度試験)
JIS−K7171に従い、以下の測定条件にて常温3点曲げ試験を実施する。試験は、試験片が破損するまでの最大荷重で評価し、これを3点曲げ強度とする。
(測定条件)
試験片寸法(mm):長さ(L)80x幅(b)10x厚さ(h)4
支点間距離 :64mm
試験速度 :2mm/分
【実施例】
【0047】
以下、実施例等をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって何等限定されるものではない。
【0048】
<測定方法>
実施例および比較例における各物性値は、以下の方法により測定した。
【0049】
[固有粘度(IV)]
重合体溶液から芳香族ポリアミドポリマーを単離して乾燥した後、濃硫酸中、ポリマー濃度100mg/100mL硫酸で30℃において測定した。
【0050】
[単糸繊度]
JIS L1015に準じ、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛け繊度にて表記した。
【0051】
[破断強度、破断伸度、初期弾性率]
引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS L1015に基づき、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
【0052】
[繊維中に残存する溶媒量(残存溶媒量)N(%)]
洗浄工程の出側にて繊維をサンプリングし、該繊維を遠心分離機(回転数5,000rpm)に10分かけ、このときの繊維質量(M1)を測定した。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出した。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2時間乾燥し、乾燥後の繊維質量(P)を測定した。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求めた。
繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記式により算出した。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
【0053】
[繊維の強度保持率(耐酸性)]
セパラブルフラスコへ20質量%の硫酸水溶液を入れ、表面処理していないサンプル糸50mmを浸漬固定した。続いて、セパラブルフラスコを恒温水槽中に浸漬し、温度25℃に維持し、サンプル糸を600時間浸漬した。浸漬前後のサンプル糸につきそれぞれ、上記の測定方法によって破断強度の測定を実施し、浸漬後の繊維の強度保持率を求めた。
【0054】
[樹脂複合体の曲げ強度保持率(耐酸性)]
得られた繊維樹脂複合体から、JIS K 7139に準拠した多目的試験片A型を作製し、20質量%の硫酸水溶液を入れたセパラブルフラスコへ該試験片を浸漬固定し、続いて、セパラブルフラスコを恒温水槽中に浸漬し、温度25℃に維持して、サンプルを600時間浸漬する。600時間経過後に取り出し、表面に付着した余分な水溶液を3分以内に拭き取り、室温に4時間以上放置する。浸漬前後の試験片それぞれにつき、以下に記載する曲げ強度試験を実施し、得られた最大荷重から曲げ強度保持率を測定した。
(曲げ強度試験)
JIS−K7171に従い、以下の測定条件にて常温3点曲げ試験を実施した。試験は、試験片が破損するまでの最大荷重で評価し、これを3点曲げ強度とした。
(測定条件)
試験片寸法(mm):長さ(L)80x幅(b)10x厚さ(h)4
支点間距離 :64mm
試験速度 :2mm/分
【0055】
<実施例1>
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
〔紡糸原液(紡糸用ドープ)調整工程〕
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した、固有粘度(IV)が1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末20.0質量部を、−10℃に冷却したN、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)80.0質量部中に懸濁させ、スラリー状にした。引き続き、懸濁液を60℃まで昇温してポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末を溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。
〔紡糸・凝固工程〕
得られたポリマー溶液を紡糸原液として、孔径0.11mm、孔数1500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc(質量比)=45/55であり、凝固浴中に糸速7m/分、紡糸ドラフト0.20で吐出して紡糸した。
〔可塑延伸工程〕
引き続き、温度40℃の水/DMAc(質量比)=40/60の組成の可塑延伸浴中にて5.0倍の延伸倍率で延伸を行った。
〔洗浄工程〕
可塑延伸の後、20℃の水/DMAc(質量比)=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)、60℃の温水浴(浸漬長5.4m)、さらに、80℃の温水浴(7.2m)に順次通して十分に洗浄を行った。
〔乾燥熱処理工程〕
洗浄後の繊維について、引き続き、表面温度150℃の熱ローラーにて定張下で乾燥熱処理を行った。
〔熱延伸工程〕
引き続き、表面温度330℃の熱ローラーにて、熱処理を加えながら1.3倍に延伸する熱延伸工程を実施し、最終的にメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
〔繊維の物性〕
得られた繊維(トウ)に対し、各種の測定評価を実施した。結果を表1に示す。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体の製造]
〔繊維の表面処理およびカット〕
(ポリエーテルスルフォン樹脂溶液の調製)
ポリエーテルスルフォン樹脂(三井化学株式会社製、品番:5003P)と塩化メチレン溶液とを、重量比で60/190部の割合で混合溶解した。続いて、当該溶液を攪拌しつつ、N−メチルーピロリドン溶液を250部添加し、攪拌混合することにより、ポリエーテルスルフォン樹脂溶液を得た。
(ポリエーテルスルフォン樹脂の被覆・カット)
得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を1〜90万デニールの太さに引きそろえ、調製したポリエーテルスルフォン溶液に浸漬し、付着量が繊維質量に対して1質量%になるように絞った後、240℃で熱処理を行った。熱処理後の繊維束をギロチンカッターでカットし、繊維長3mmのメタ型全芳香族ポリアミド短繊維を得た。
[樹脂複合体の製造]
得られたメタ型全芳香族ポリアミド短繊維を、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)ペレット(商品名:ビクトレックス、ICI株式会社製、三井化学株式会社製)に30容量部混合し、プラストミルを用いて溶融混合させた。引き続き、モールドに射出して厚さ4mmの樹脂複合体を作成した。
[樹脂複合体の評価]
得られた樹脂複合体の曲げ強度保持率を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
<実施例2>
〔紡糸原液(紡糸用ドープ)調製工程〕
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解させ、0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に攪拌しながら添加し、重合反応を行った。粘度変化が止まった後、40分攪拌を継続し、重合反応を完了させた。
次に、平均粒径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間攪拌して、透明なポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ、1.25であった。また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は、20%であった。
〔紡糸・凝固工程〕
得られたポリマー溶液を紡糸原液として、孔径0.15mm、孔数1500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc(量比)=45/55であり、凝固浴中に糸速5m/分、紡糸ドラフト0.16で吐出して紡糸した。
〔可塑延伸工程〕
引き続き、温度40℃の水/DMAc(量比)=40/60の組成の可塑延伸浴中にて6.0倍の延伸倍率で延伸を行った。
〔洗浄工程〕
可塑延伸の後、20℃の水/DMAc(量比)=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)、60℃の温水浴(浸漬長5.4m)、さらに、80℃の温水浴(7.2m)に順次通して十分に洗浄を行った。
〔乾燥熱処理工程〕
洗浄後の繊維について、引き続き、表面温度150℃の熱ローラーにて定張下で乾燥熱処理を行った。
〔熱延伸工程〕
引き続き、表面温度330℃の熱ローラーにて、熱処理を加えながら1.2倍に延伸する熱延伸工程を実施し、最終的にポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
〔繊維の物性〕
得られた繊維(トウ)に対し、各種の測定評価を実施した。結果を表1に示す。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体の製造]
続いて、得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて、実施例1と同様にして樹脂複合体を製造した。得られた樹脂複合体の物性を、表1に示す。
【0057】
<比較例1>
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
紡糸工程において、用いた口金を孔径0.07mmへ変更し、紡糸ドラフトを0.63とした以外は、実施例1と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を表1に示す。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体の製造]
続いて、得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて、実施例1と同様にして樹脂複合体を製造した。得られた樹脂複合体品の物性を、表1に示す。
【0058】
<比較例2>
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
紡糸工程において、用いた口金を孔径0.11mmへ変更し、紡糸ドラフトを0.06とした以外は、実施例1と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を表1に示す。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体の製造]
続いて、得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて、実施例1と同様にして樹脂複合体を製造した。得られた樹脂複合体品の物性を、表1に示す。
【0059】
<比較例3>
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
紡糸原液(紡糸用ドープ)調製工程において、用いる溶媒をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に変更してポリマー溶液を製造し、紡糸工程において、用いた口金を孔径0.26mm、孔数1500へ変更し、紡糸ドラフトを1.13とした以外は、実施例1と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を表1に示す。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体の製造]
続いて、得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて、実施例1と同様にして樹脂複合体を製造した。得られた樹脂複合体品の物性を、表1に示す。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の樹脂複合体は、酸性雰囲気下での使用においても物性の低下が少ない樹脂複合体となる。したがって、本発明の樹脂複合体は、例えば、耐熱樹脂歯車、ギアー等、より過酷な高温酸性雰囲気における使用にも耐えうるものとなり、従来のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いた樹脂複合体では使用できなかった分野においても使用可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂複合体であって、
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、単糸繊度が10.0〜50.0dtexであり、残存溶媒量が繊維全体質量に対して1.0質量%以下である樹脂複合体。
【請求項2】
25℃の20質量%硫酸水溶液に600時間浸漬した後の曲げ強度保持率が、60%以上である請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項3】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度が、5.0〜6.5cN/dtexである請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項4】
樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1〜3いずれか記載の樹脂複合体。
【請求項5】
樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1〜3いずれか記載の樹脂複合体。

【公開番号】特開2013−112779(P2013−112779A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261964(P2011−261964)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】