説明

樹脂複合材料の製造方法

【課題】樹脂材料が有する剛性及び耐熱性の改善が望まれており、このような樹脂複合材料を製造するための方法の開発が期待されている。
【解決手段】(A)ビニル基を有するモノマー、(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物、(C)シランカップリング剤、及び、(D)重合開始剤を混合して得られる混合物を加熱又は光照射して重合反応を起こさせる工程を含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合材料の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
有機高分子からなる樹脂材料は、表面光沢性、耐候性等に優れているため、例えば、照明器具、自動車用部品、看板、建材等の各種用途に幅広く利用されている。
一方で、有機高分子からなる樹脂材料は、剛性及び耐熱性が必ずしも充分ではなく、使用状況・場面等によっては使用制限を受けたり、更には使用できないことがあった。このため、有機高分子からなる樹脂材料が有する前記両特性を向上させることが望まれていた。
従来、有機高分子からなる樹脂材料が有する剛性及び耐熱性を改善する目的で、当該樹脂材料に対して、例えば、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、例えば、粘土鉱物、雲母等の無機質材料等の無機化合物を添加・混合することが種々検討されている。
また、例えば、(1)ビニル系高分子化合物を含む樹脂と、該樹脂中に分子状に分散した層状の粘土鉱物とからなる複合材料であって、当該粘土鉱物が特定の物性を示すもの(例えば、特許文献1参照)や、(2)塊状・懸濁重合させることにより得られる、層状粘土が均一に分散したビニル系高分子化合物のナノ複合材料(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3075709号公報
【特許文献2】特許第3040993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種用途により幅広く利用可能とするために、樹脂材料が有する剛性及び耐熱性の改善が望まれており、このような樹脂複合材料を製造するための方法の開発が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.(A)ビニル基を有するモノマー、(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物、(C)シランカップリング剤、及び、(D)重合開始剤を混合して得られる混合物を加熱又は光照射して重合反応を起こさせる工程を含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある);
2.前記混合物中における、炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有するアルキル基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物の含有量が、シランカップリング剤100重量部に対し、1重量部〜50重量部の範囲内であることを特徴とする前項1記載の樹脂複合材料の製造方法;
3.前記脂肪族炭化水素基が、アルキル基であることを特徴とする前項2記載の樹脂複合材料の製造方法;
4.前記炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩が、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム塩又はメチルトリ−n−オクチルアンモニウム塩であることを特徴とする前項3記載の樹脂複合材料の製造方法;
5.前記シランカップリング剤が、式(1)
3-n Men Si−R−Y (1)
(式中、Meはメチル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を表し、Xは加水分解基を表し、Yは有機官能基を表し、nは0又は1を表す。)
で示される化合物であることを特徴とする前項1乃至4記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
6.加水分解基が、メトキシ基(CH3O−)、エトキシ基(CH3CH2O−)又は2−メトキシエトキシ基(CH3OCH2CH2O−)であり、有機官能基が、アミノ基(−NH2)、ビニル基(-CH=CH2)、アクリル基(−OOCCH=CH2)、メタクリル基(−OOCC(CH3)=CH2)、イソシアネート基(−N=C=O)、メルカプト基(−SH)、硫黄原子(−S−)、ウレイド基(−NHCONH2)又はエポキシ基(−C−(−O−)−C−)であることを特徴とする前項5記載の樹脂複合材料の製造方法;
7.前記有機官能基が、アクリル基(−OOCCH=CH2)又はメタクリル基(−OOCC(CH3)=CH2)であることを特徴とする前項5又は6記載の樹脂複合材料の製造方法;
8.前記シランカップリング剤が、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項1乃至4記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
9.前記混合物が、前記成分(A)から成分(D)までの4成分以外に、金属酸化物粒子を含む混合物であることを特徴とする前項1乃至8記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
10.前記金属酸化物粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種である金属酸化物の粒子であることを特徴とする前項1乃至9記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
11.前記金属酸化物粒子が、シリカの粒子であることを特徴とする前項1乃至9記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
12.前記金属酸化物粒子の粒子径が、1nm〜150nmの範囲内であることを特徴とする前項1乃至11記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
13.前記重合開始剤が、ラジカル重合剤であることを特徴とする前項1乃至12記載のいずれかの前項記載の樹脂複合材料の製造方法;
14.前記ラジカル重合剤が、有機過酸化物又はジアゾ化合物であることを特徴とする前項13記載の樹脂複合材料の製造方法;
15.下記の各成分由来の構成要素を含む樹脂組成物を加工成形して得られる樹脂複合成形体であり、樹脂複合成形体に含まれた層状粘土鉱物が実質的に二次凝集することなく略均一に分散しており、且つ、当該層状粘土鉱物の層間距離が30オングストローム以上であることを特徴とする樹脂複合成形体(以下、本発明樹脂複合成形体ということもある。);
(A)ビニル基を有するモノマー
(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物
(C)シランカップリング剤、及び、
(D)重合開始剤
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた剛性及び耐熱性を有する樹脂複合材料を製造するための方法等を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明製造方法は、(A)ビニル基を有するモノマー、(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物、(C)シランカップリング剤、及び、(D)重合開始剤を混合して得られる混合物を加熱又は光照射して重合反応を起こさせる工程を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1−へキセン、シクロヘキセン等のオレフィン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−スチレンスルホン酸、m−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスチレン化合物;アクリル酸、アルリル酸メチル、アルリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso −プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso −ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチレングリコール、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル等のアクリル酸化合物;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸iso −プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso −ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチレングリコール、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル等のメタクリル酸化合物;ジメタクリル酸、ジメタクリル酸等のジ(メタ)メタクリル酸化合物;アクロレイン;ジアリルフタレート等のアリル基を2つ有する化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、等のN−ビニル化合物;1−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン化合物;アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、n−プロピルアクリルアミド、iso−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリド等の(メタ)アクリルアミド化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル化合物;ビニルイソブチルエーテル、メチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、フェニルビニルスルフィド等のビニルケトン化合物;ジビニルベンゼン;ビニルアルコール;ノルボルナジエン;シアン化ビニリデン;等を挙げることができる。好ましくは、例えば、スチレン、アクリル酸、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチル、アクリロニトリル等を挙げることができる。より好ましくは、例えば、メタアクリル酸メチル等を挙げることができる。
これらのモノマーのうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用することにより、ビニル系高分子化合物を含む樹脂、即ち、ビニル系高分子化合物自体又はビニル系高分子化合物とそれ以外の高分子化合物との混合物(尚、混合重合体の他、グラフト重合体、共重合体、ブロック重合体等を含む)からなる樹脂を提供することができる。
これら樹脂は、例えば、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等のスチレン系複合材料や、例えば、ポリメチルメタクリル酸等のアクリル系複合材料の分野に応用することができる。
更にまた、前記ビニル系高分子化合物は、前記「ビニル基を有するモノマー」以外の共重合のための単位構造成分を含んでいてもよく、例えば、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、無水マレイン酸等の単位構造成分を挙げることができる。
【0009】
次いで、「ビニル基を有するモノマー」がメタクリル酸メチルである場合についてより詳細に説明する。当該モノマーは、メタクリル酸メチル単独であってもよいし、又はメタクリル酸メチルとこれ以外の「ビニル基を有するモノマー」(上記の例示参照のこと)との混合物であってもよく、通常、ビニル系高分子化合物を含む樹脂中のメタクリル酸メチルの含有量としては、例えば、50重量%以上を挙げることができる。好ましくは、70重量%以上が挙げられる。
【0010】
本発明製造方法で用いられる「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」において、前記炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩としては、例えば、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム塩等を好ましく挙げることができる。
【0011】
本発明製造方法で用いられる「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」において、前記層状粘土鉱物としては、例えば、リーザダイト、バーチェリン、アメサイト、クロンステダイト、ネポーアイト、ケリアイト、フレンポナイト、ブリンドリアイト、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、オーディナイト等の蛇紋石−カオリン族層状珪酸塩;タルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト、フェリパイロフィライト等のラルク−パイロフィライト族層状珪酸塩;サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロライト、ボルコンスコアイト、合成スメクタイト等のスメクタイト族層状珪酸塩;3八面体型バーミュライト、2八面体型バーミュライト等のバーミュライト族層状珪酸塩;黒雲母、金雲母、鉄雲母、イーストナイト、シデロフィライトテトラフェリ鉄雲母、鱗雲母、ポリリシオナイト、白雲母、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミナセラドン石、アルミナセラドン石、ソーダ雲母等の雲母族層状珪酸塩;等を挙げることができる。好ましくは、例えば、スメクタイト族層状珪酸塩等を挙げることができる、より好ましくは、例えば、合成スメクタイト等を挙げることができる。尚、前記層状粘土鉱物は、天然由来の鉱物であっても人工的に合成された鉱物であってもよい。
【0012】
前記層状粘土鉱物が有するカチオン交換容量としては、例えば、50ミリ当量/100g〜200ミリ当量/100gの範囲内のもの等を好ましく挙げることができる。
【0013】
前記層状粘土鉱物の使用量としては、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、0.5重量部〜40重量部の範囲内の量等を挙げることができる。
【0014】
炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物を調製するには、例えば、大量の水中に予め浸漬又は分散しておいた層状粘土鉱物に、前記第4級アンモニウム塩(好ましくは、水溶液又は分散液の形態)を添加し、混合攪拌することにより、前記層状粘土鉱物に含まれるアルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等)等のカチオンを、前記第4級アンモニウム塩にイオン交換させればよい。この場合、添加される前記第4級アンモニウム塩の量としては、例えば、当該第4級アンモニウム塩が有するカチオン交換容量に対して、例えば、0.1%〜200%の範囲内の割合となる量を挙げることができる。
尚、前記層状粘土鉱物は、大量の水中にできるだけ均一に分散するように、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル等を用いて粉砕し、予め所望の形状・大きさのものとしておくことが好ましい。
イオン交換後に得られた「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」を濾過操作により回収し、回収された前記「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」を純水により数回洗浄することにより、未イオン交換のアンモニウム塩のカチオン界面活性剤を除去する。次いで、得られた前記「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」を凍結乾燥することにより、「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」を得ることができる。
【0015】
本発明製造方法で用いられる「シランカップリング剤」としては、例えば、式(1)
3-n Men Si−R−Y (1)
(式中、Meはメチル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を表し、Xは加水分解基を表し、Yは有機官能基を表し、nは0、1又は2を表す。)
で示される化合物等を挙げることができる。
ここで、式(1)において「加水分解基」としては、例えば、メトキシ基(CH3O−)、エトキシ基(CH3CH2O−)又は2−メトキシエトキシ基(CH3OCH2CH2O−)であり、有機官能基が、アミノ基(−NH2)、ビニル基(-CH=CH2)、アクリル基(−OOCCH=CH2)、メタクリル基(−OOCC(CH3)=CH2)、イソシアネート基(−N=C=O)、メルカプト基(−SH)、硫黄原子(−S−)、ウレイド基(−NHCONH2)又はエポキシ基(−C−(−O−)−C−)等を挙げることができる。
また、式(1)において「有機官能基」としては、例えば、アクリル基(−OOCCH=CH2)又はメタクリル基(−OOCC(CH3)=CH2)等を挙げることができる。
【0016】
前記シランカップリング剤としては、具体的には例えば、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、例えば、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのシランカップリング剤のうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
シランカップリング剤の使用量としては、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、0.05重両部〜100重両部の範囲内の割合となる量を挙げることができる。
【0018】
本発明製造方法で用いられる「重合開始剤」としては、例えば、ラジカル重合剤等を挙げることができる。ここで「ラジカル重合剤」としては、例えば、パーオキサイド系化合物、パーオキシエステル系化合物、パーカーボネート系化合物、パーオキシケタール系化合物等の有機過酸化物、ジアゾ化合物等を好ましく挙げることができる。
尚、前記のラジカル重合剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)等のパーオキサイド系化合物;t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート等のパーオキシエステル系化合物;t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等のパーカーボネート系化合物;1,1’−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール系化合物;1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のジアゾ化合物;等が挙げられる。
これらの重合開始剤のうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
重合開始剤の使用量としては、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、0.05重量部〜5重量部の範囲内の量等を挙げることができる。好ましくは、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、0.1重量部〜3重量部の範囲内の量等を挙げることができる。
【0020】
本発明製造方法において、前記混合物が、前記成分(A)から成分(D)までの4成分以外に、金属酸化物粒子を含む混合物であってもよい。
ここで用いられる「金属酸化物粒子」としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種である金属酸化物の粒子等を挙げることができる。好ましくは、例えば、シリカの粒子、アルミナの粒子等を挙げることができる。より好ましくは、例えば、シリカ等の粒子等を挙げることができる。
これらの金属酸化物粒子のうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
前記金属酸化物粒子としては、固体状のものを用いてもよいし、水又は有機溶媒中に分散したゾル状のものを用いてもよい。尚、前記金属酸化物粒子の市販品の例としては、ゾル状のシリカの場合には、日産化学工業(株)から販売されている「オルガノシリカゾル IPA−ST−UP」、「オルガノシリカゾル MIBK−ST」等を挙げることができる。また、ゾル状のアルミナの場合には、日産化学工業(株)から販売されている「アルミナゾル−100」、「アルミナゾル−200」等を挙げることができる。
【0022】
前記金属酸化物粒子の粒子径としては、例えば、1nm〜150nmの範囲内のものを挙げることができる。好ましくは、例えば、1nm〜100nmの範囲内のものを挙げることができる。尚、前記金属酸化物粒子の粒子径は、動的光散乱法により測定すればよい。
【0023】
金属酸化物粒子の使用量としては、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、5重量部〜100重量部の範囲内の量等を挙げることができる。好ましくは、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、10重量部〜100重量部の範囲内の量等を挙げることができる。
【0024】
次に、本発明製造方法の工程について説明する。
本発明製造方法の工程は、(A)ビニル基を有するモノマー、(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物、(C)シランカップリング剤、及び、(D)重合開始剤を混合する第一工程(混合工程)と、前記第一工程(混合工程)により得られた混合物を加熱又は光照射して重合反応を起こさせる第二工程(重合工程)との2つの工程に分けることができる。
【0025】
前記第一工程(混合工程)では、(A)ビニル基を有するモノマー、(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物、(C)シランカップリング剤、及び、(D)重合開始剤を、例えば、自動乳鉢や振動ミル等を用いて機械的に混合する。
尚、各成分を混合させる際には、無溶媒でもよいが、通常、溶媒中で混合することにより実施される。
このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒等を挙げることができる。
尚、これらの溶媒のうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
前記第二工程(重合工程)では、前記第一工程(混合工程)により得られた混合物を加熱又は光照射して重合反応を起こさせる。ここで、重合反応としては、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合、重縮合重合等を挙げることができる。この場合、重合開始剤は、前記各々の重合形式に適したものを用いればよい。
【0027】
尚、重合反応させる際には、前記混合物そのままで実施してもよいが、当該混合物を、例えば、極性溶媒等の溶媒の中で分散させて実施してもよい。
このような溶媒としては、例えば、水、石油エーテル、二硫化炭素、四塩化炭素、グリセリン、トルエン、アニリン、ベンゼン、クロロホルム、N,N’−ジメチルホルムアミド、フェノール、テトラヒドロフラン、アセトン、プロピレンカーボネート、酢酸、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、ピリジン、ベンゾニトリル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン、ニトロメタン等を挙げることができる。
尚、これらの溶媒のうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
溶媒の使用量としては、例えば、本発明製造方法で用いられる「ビニル基を有するモノマー」100重量部に対して、例えば、10重量部〜300重量部の範囲内の量等を挙げることができる。
【0029】
重合反応がラジカル重合である場合には、前記重合開始剤としてはラジカル重合剤を使用すればよい。
ラジカル重合の反応温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲内の温度等を挙げることができる。好ましくは、例えば、40℃〜120℃の範囲内の温度等を挙げることができる。
ラジカル重合の反応時間としては、反応温度によっても異なるが、例えば、0.5時間〜72時間の範囲内の時間等を挙げることができる。好ましくは、0.5時間〜24時間の範囲内の時間等を挙げることができる。
【0030】
重合反応の終了後、例えば、得られた重合反応マスを、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の貧溶媒と混合することにより、本発明製造方法により製造される樹脂複合材料を析出させることができる。析出した樹脂複合材料を濾過操作により回収し、回収された前記樹脂複合材料をメタノールにより数回洗浄することにより、未反応物や不純物を除去する。次いで、得られた前記樹脂複合材料を凍結乾燥することにより、樹脂複合材料を得ることができる。
このようにして得られた樹脂複合材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料等の添加剤を含むことができる。
【0031】
本発明製造方法により製造される樹脂複合材料は、優れた剛性及び耐熱性を有する樹脂複合材料である。このような樹脂複合材料は、引っ張り強度や弾性率等の機械的性質や軟化温度や高温強度等の耐熱特性が向上しており、電気電子、情報科学、自動車、航空機、建築等の各分野の部品・部材製造に広く応用される。
【0032】
本発明樹脂複合成形体は、下記の各成分由来の構成要素を含む樹脂組成物を加工成形して得られる樹脂複合成形体であり、樹脂複合成形体に含まれた層状粘土鉱物が実質的に二次凝集することなく略均一に分散しており、且つ、当該層状粘土鉱物の層間距離が30オングストローム以上であることを特徴とする樹脂複合成形体である。
(A)ビニル基を有するモノマー
(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物
(C)シランカップリング剤、及び、
(D)重合開始剤
【0033】
本発明樹脂複合成形体において「実質的に二次凝集することなく」とは、電子顕微鏡による観察において、その視野内に、粒径200nm〜2μmの層状粘土鉱物の凝集体の存在が、当該凝集体と粒径100nm未満の層状粘土鉱物の一次粒子との数量分布において前記凝集体の数量が5%未満である状態を意味する。
【0034】
本発明樹脂複合成形体は、下記の各成分由来の構成要素を含む樹脂組成物(即ち、本発明製造方法により製造される樹脂複合材料に相当する樹脂組成物)を、必要に応じて、予め他の有機高分子と所定の混合割合で混合した後、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形及びシート加工後の真空成形、圧縮成形等の樹脂成形加工分野において通常の用いられる方法を用いて成形加工することにより、得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
【0036】
実施例1 (炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物の調製)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、合成スメクタイト(層状珪酸塩、コープケミカル(株)製) 20.0gと、水1000mLとを60℃で1時間撹拌した後、水500mLに、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド11.4gを分散した分散液を加えた。得られた混合液を、60℃で1時間撹拌した。
次いで、沈殿物を濾過操作により回収し、回収された沈殿物を水500mLで3回洗浄した。得られた洗浄物を凍結乾燥により、乾燥した「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」を得た。得られた「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」の分析結果は以下のとおりであった。
TG−DTAより算出された「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩」の含有量は、31.4%であった。
【0037】
実施例2 (本発明製造方法による樹脂複合材料の製造)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、実施例1で得られた「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」24.0gと、N,N−ジメチルホルムアミド171.6mLとを室温で1時間撹拌した後、メタクリル酸メチル128.4mLと、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.25gと、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2gとを室温で混合し、更に、60℃で8時間撹拌した。
次いで、得られた反応マスをメタノールに滴下しながら混合することにより、不溶物を析出させた。析出された不溶物(即ち、樹脂複合材料)を濾過操作により回収した。回収された不溶物をメタノール1000mLで1回洗浄した。得られた洗浄物を、60℃で10時間減圧乾燥することにより、乾燥した樹脂複合材料126.5gを得た。得られた樹脂複合材料の分析結果は以下のとおりであった。
TG−DTAより算出された樹脂複合材料に含まれるメタクリル酸メチル由来の構造要素と前記第4級アンモニウム塩由来の構造要素との合計の含有量は、88.0%であった。
【0038】
実施例3 (本発明樹脂複合成形体の製造)
実施例2により得られた樹脂複合材料をラボプラストミル(Brabender製)に供給した後、当該樹脂複合材料を当該装置内で回転数30rpm、220℃、10分間で溶融混練した。得られた混練物を、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度210℃、成形圧力150kgf/cm(成形時間:4〜5分間)でプレス成形することにより、厚さ約3mmの本発明樹脂複合成形体を得た。得られた本発明樹脂複合成形体を後述する光透過試験、熱分析、曲げ試験を供した。結果を表1に示す。
次いで、得られた本発明樹脂複合成形体を電子顕微鏡により観察したところ、樹脂複合成形体に含まれた層状粘土鉱物が実質的に二次凝集することなく略均一に分散していた。また、前記層状粘土鉱物の層間距離をX線回折分析法により測定したところ、30オングストローム以上であった。
【0039】
実施例4 (本発明製造方法による樹脂複合材料の製造)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、実施例1で得られた「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」22.0gと、N,N−ジメチルホルムアミド105.9mLとを室温で1時間撹拌した後、メタクリル酸メチル117.7mLと、コロイダルシリカ(日産化学(株)製 MEK-ST、固形分30〜31%)73.4gと、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.22gと、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1gとを室温で混合し、更に、60℃で8時間撹拌した。
次いで、得られた反応マスをメタノールに滴下しながら混合することにより、不溶物を析出させた。析出された不溶物(即ち、樹脂複合材料)を濾過操作により回収した。回収された不溶物をメタノール1000mLで1回洗浄した。得られた洗浄物を、60℃で10時間減圧乾燥することにより、乾燥した樹脂複合材料135.1gを得た。得られた樹脂複合材料の分析結果は以下のとおりであった。
TG−DTAより算出された樹脂複合材料に含まれるメタクリル酸メチル由来の構造要素と前記第4級アンモニウム塩由来の構造要素との合計の含有量は、72.7%であった。
【0040】
実施例5 (本発明樹脂複合成形体の製造)
実施例4により得られた樹脂複合材料をラボプラストミル(Brabender製)に供給した後、当該樹脂複合材料を当該装置内で回転数30rpm、220℃、10分間で溶融混練した。得られた混練物を、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度210℃、成形圧力150kgf/cm(成形時間:4〜5分間)でプレス成形することにより、厚さ約3mmの本発明樹脂複合成形体を得た。得られた本発明樹脂複合成形体を後述する光透過試験、熱分析、曲げ試験を供した。結果を表1に示す。
次いで、得られた本発明樹脂複合成形体を電子顕微鏡により観察したところ、樹脂複合成形体に含まれた層状粘土鉱物が実質的に二次凝集することなく略均一に分散していた。また、前記層状粘土鉱物の層間距離をX線回折分析法により測定したところ、30オングストローム以上であった。
【0041】
実施例6 (本発明製造方法による樹脂複合材料の製造)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、実施例1で得られた「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」11.0gと、N,N−ジメチルホルムアミド80.2mLとを室温で1時間撹拌した後、メタクリル酸メチル117.7mLと、コロイダルシリカ(日産化学(株)製 MEK-ST、固形分30〜31%)110.1gと、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.22gと、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1gとを室温で混合し、更に、60℃で8時間撹拌した。
次いで、得られた反応マスをメタノールに滴下しながら混合することにより、不溶物を析出させた。析出された不溶物(即ち、樹脂複合材料)を濾過操作により回収した。回収された不溶物をメタノール1000mLで1回洗浄した。得られた洗浄物を、60℃で10時間減圧乾燥することにより、乾燥した樹脂複合材料133.7gを得た。得られた樹脂複合材料の分析結果は以下のとおりであった。
TG−DTAより算出された樹脂複合材料に含まれるメタクリル酸メチル由来の構造要素と前記第4級アンモニウム塩由来の構造要素との合計の含有量は、69.9%であった。
【0042】
実施例7 (本発明樹脂複合成形体の製造)
実施例6により得られた樹脂複合材料をラボプラストミル(Brabender製)に供給した後、当該樹脂複合材料を当該装置内で回転数30rpm、220℃、10分間で溶融混練した。得られた混練物を、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度210℃、成形圧力150kgf/cm(成形時間:4〜5分間)でプレス成形することにより、厚さ約3mmの本発明樹脂複合成形体を得た。得られた本発明樹脂複合成形体を後述する光透過試験、熱分析、曲げ試験を供した。結果を表1に示す。
次いで、得られた本発明樹脂複合成形体を電子顕微鏡により観察したところ、樹脂複合成形体に含まれた層状粘土鉱物が実質的に二次凝集することなく略均一に分散していた。また、前記層状粘土鉱物の層間距離をX線回折分析法により測定したところ、30オングストローム以上であった。
【0043】
参考比較例1 (参考比較用の樹脂複合材料及び樹脂複合成形体の製造)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、N,N−ジメチルホルムアミド157.3mLと、メチルメタクリル酸117.7mLと、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.22gと、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1gとを室温で混合し、更に、60℃で8時間撹拌した。
次いで、得られた反応マスをメタノールに滴下しながら混合することにより、不溶物を析出させた。析出された不溶物(即ち、樹脂複合材料)を濾過操作により回収した。回収された不溶物を水500mLで3回洗浄した。得られた洗浄物を、60℃で10時間減圧乾燥することにより、乾燥した樹脂複合材料108.0gを得た。
TG−DTAより算出された樹脂複合材料に含まれるメタクリル酸メチル由来の構造要素の含有量は、100%であった。
次に、このようにして得られた樹脂複合材料をラボプラストミル(Brabender製)に供給した後、当該樹脂複合材料を当該装置内で回転数30rpm、220℃、10分間で溶融混練した。得られた混練物を、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度210℃、成形圧力150kgf/cm(成形時間:4〜5分間)でプレス成形することにより、厚さ約3mmの本発明樹脂複合成形体を得た。得られた本発明樹脂複合成形体を後述する光透過試験、熱分析、曲げ試験を供した。結果を表1に示す。
【0044】
参考比較例2 (参考比較用の樹脂複合材料及び樹脂複合成形体の製造)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、実施例1で得られた「炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物」22.0gと、N,N−ジメチルホルムアミド157.3mLとを室温で1時間撹拌した後、メチルメタクリル酸117.7mLと、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1gとを室温で混合し、更に、60℃で8時間撹拌した。
次いで、得られた反応マスをメタノールに滴下しながら混合することにより、不溶物を析出させた。析出された不溶物(即ち、樹脂複合材料)を濾過操作により回収した。回収された不溶物を水500mLで3回洗浄した。得られた洗浄物を、60℃で10時間減圧乾燥することにより、乾燥した樹脂複合材料112.3gを得た。
TG−DTAより算出された樹脂複合材料に含まれるメタクリル酸メチル由来の構造要素と前記第4級アンモニウム塩由来の構造要素との合計の含有量は、89.3%であった。
次に、このようにして得られた樹脂複合材料をラボプラストミル(Brabender製)に供給した後、当該樹脂複合材料を当該装置内で回転数30rpm、220℃、10分間で溶融混練した。得られた混練物を、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度210℃、成形圧力150kgf/cm(成形時間:4〜5分間)でプレス成形することにより、厚さ約3mmの本発明樹脂複合成形体を得た。得られた本発明樹脂複合成形体を後述する光透過試験、熱分析、曲げ試験を供した。結果を表1に示す。
【0045】
参考比較例3 (参考比較用の樹脂複合材料及び樹脂複合成形体の製造)
冷却装置を取り付けた反応容器内で、N,N−ジメチルホルムアミド115.6mLと、メチルメタクリル酸128.4mLと、コロイダルシリカ(日産化学(株)製 MEK-ST、固形分30〜31%)80.1gと、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.25gと、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2gとを室温で混合し、更に、60℃で8時間撹拌した。
次いで、得られた反応マスをメタノールに滴下しながら混合することにより、不溶物を析出させた。析出された不溶物(即ち、樹脂複合材料)を濾過操作により回収した。回収された不溶物を水500mLで3回洗浄した。得られた洗浄物を、60℃で10時間減圧乾燥することにより、乾燥した樹脂複合材料142.2gを得た。
TG−DTAより算出された樹脂複合材料に含まれるメタクリル酸メチル由来の構造要素の含有量は、83.1%であった。
次に、このようにして得られた樹脂複合材料をラボプラストミル(Brabender製)に供給した後、当該樹脂複合材料を当該装置内で回転数30rpm、220℃、10分間で溶融混練した。得られた混練物を、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度210℃、成形圧力150kgf/cm(成形時間:4〜5分間)でプレス成形することにより、厚さ約3mmの本発明樹脂複合成形体を得た。得られた本発明樹脂複合成形体を後述する光透過試験、熱分析、曲げ試験を供した。結果を表1に示す。
【0046】
<HAZE測定>
・評価基準:
(Aランク)◎:10%未満
(Bランク)○:10%以上15%未満
(Cランク)△:15%以上30%未満
(Dランク)×:30%以上
【0047】
<光透過性試験>
・測定装置:村上色彩技術研究所(株)製 HR−1000
・測定条件:HazeJIS K7136、全光線透過率JIS K7161−1に準拠して測定。
・評価基準:
(Aランク)◎:90%以上
(Bランク)○:80%以上90%未満
(Cランク)△:70%以上80%未満
(Dランク)×:70%未満
【0048】
<熱分析>
・測定装置:TA Instruments(株)製 Q2000
・測定条件:N雰囲気下、昇温速度10℃/min
・評価基準:
(Aランク)◎:120℃以上
(Bランク)○:115℃以上120℃未満
(Cランク)△:110℃以上115℃未満
(Dランク)×:110℃未満
【0049】
<曲げ試験>
・測定装置:エー・アンド・ディ(株)製 全自動引張・曲げ複合試験機
・測定条件:JIS K7171に準拠して測定。
・評価基準:
(Aランク)◎:6000MPa以上
(Bランク)○:5000MPa以上6000MPa未満
(Cランク)△:4000MPa以上5000MPa未満
(Dランク)×:4000MPa未満
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、優れた剛性及び耐熱性を有する樹脂複合材料を製造するための方法等を提供することが可能になる。そして、本発明製造方法により製造される樹脂複合材料は、電気電子、情報科学、自動車、航空機、建築等の各分野の部品・部材製造に広く応用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル基を有するモノマー、(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物、(C)シランカップリング剤、及び、(D)重合開始剤を混合して得られる混合物を加熱又は光照射して重合反応を起こさせる工程を含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記混合物中における、炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有するアルキル基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物の含有量が、ビニル基を有するモノマー100重量部に対し、1重量部〜60重量部の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族炭化水素基が、アルキル基であることを特徴とする請求項2記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩が、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム塩又はメチルトリ−n−オクチルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項3記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が、式(1)
3-n Men Si−R−Y (1)
(式中、Meはメチル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を表し、Xは加水分解基を表し、Yは有機官能基を表し、nは0、1又は2を表す。)
で示される化合物であることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項6】
加水分解基が、メトキシ基(CH3O−)、エトキシ基(CH3CH2O−)又は2−メトキシエトキシ基(CH3OCH2CH2O−)であり、有機官能基が、アミノ基(−NH2)、ビニル基(-CH=CH2)、アクリル基(−OOCCH=CH2)、メタクリル基(−OOCC(CH3)=CH2)、イソシアネート基(−N=C=O)、メルカプト基(−SH)、硫黄原子(−S−)、ウレイド基(−NHCONH2)又はエポキシ基(−C−(−O−)−C−)であることを特徴とする請求項5記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記有機官能基が、アクリル基(−OOCCH=CH2)又はメタクリル基(−OOCC(CH3)=CH2)であることを特徴とする請求項5又は6記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記シランカップリング剤が、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記混合物が、前記成分(A)から成分(D)までの4成分以外に、金属酸化物粒子を含む混合物であることを特徴とする請求項1乃至8記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種である金属酸化物の粒子であることを特徴とする請求項1乃至9記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物粒子が、シリカの粒子であることを特徴とする請求項1乃至9記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物粒子の粒子径が、1nm〜150nmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至11記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記重合開始剤が、ラジカル重合剤であることを特徴とする請求項1乃至12記載のいずれかの請求項記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記ラジカル重合剤が、有機過酸化物又はジアゾ化合物であることを特徴とする請求項13記載の樹脂複合材料の製造方法。
【請求項15】
下記の各成分由来の構成要素を含む樹脂組成物を加工成形して得られる樹脂複合成形体であり、樹脂複合成形体に含まれた層状粘土鉱物が実質的に二次凝集することなく略均一に分散しており、且つ、当該層状粘土鉱物の層間距離が30オングストローム以上であることを特徴とする樹脂複合成形体。
(A)ビニル基を有するモノマー
(B)炭素原子数が12未満である脂肪族炭化水素基を4つ含有する第4級アンモニウム塩で有機修飾された層状粘土鉱物
(C)シランカップリング剤、及び、
(D)重合開始剤

【公開番号】特開2013−112764(P2013−112764A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261484(P2011−261484)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】