説明

樹脂部材

【課題】意匠性を損ねることなく取付時の浮き上がりを防止できる樹脂部材を提供すること。
【解決手段】樹脂部材20は、アウタ樹脂30とインナ樹脂40とをヒンジ50を境に重なり合う格好となるように折り曲げると、その両取付部32、42が所定の隙Fを隔てた状態となるように構成されている。そして、被取付部材10の略L字状の角部16にアウタ樹脂30とインナ樹脂40の両略L字部位を対応させた状態でアウタ樹脂30の取付部32からインナ樹脂40の取付部42を介して被取付部材10に係止部材Bを差し込んで係止させると、アウタ樹脂30とインナ樹脂40との両取付部32、42の間の所定の隙がF詰められ、アウタ樹脂30のヒンジ50側がインナ樹脂40のヒンジ50側に引き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材に関し、詳しくは、被取付部材に形成されている断面略L字状の角部を覆うように取り付け可能な樹脂部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方側と他方側とに断面が略L字状となるように形成され、この一方側を車両ボデー(被取付部材)の縁に沿ってビス止めすることで、車両ボデーの縁を覆うように取り付けることができるモール(樹脂部材)が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、樹脂部材の他方側の先端を車両ボデー方向に向けてテンションを掛けた状態で、車両ボデーの縁を覆うように取り付けることができる樹脂部材(特許文献1において、サイドスプラッシュガード)が開示されている。これにより、走行時の振動、粉塵の蓄積および気温変化による樹脂部材自体の伸縮等が発生しても、樹脂部材の他方側の先端が車両ボデーから浮き上がり車両ボデーに対して繰り返し接触することを防止できるため、車両ボデーの表面に塗られている塗装が剥げ落ちることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−58370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、樹脂部材の他方側の内面(車両ボデーと向かい合う面)に係合片を形成しておき、この形成した係合片を車両ボデーの表面に形成されているブラケットに引っ掛けることで、樹脂部材の他方側の先端が車両ボデーから浮き上がることを防止している。そのため、係合片を形成するにあたって、意匠面となっている樹脂部材の他方側の外面にヒケが発生することがあり、意匠性を損ねることがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、意匠性を損ねることなく取付時の浮き上がりを防止できる樹脂部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、被取付部材に形成されている断面略L字状の角部を覆うように取り付け可能な樹脂部材であって、被取付部材の角部を覆う格好となるように形成され、この被取付部材に取り付けるための取付部と一体的に断面略L字状に形成されているアウタ樹脂と、アウタ樹脂の長手方向または周方向の縁にヒンジを介して結合され、被取付部材に取り付けるための取付部と一体的に断面略L字状に形成されているインナ樹脂と、を備え、これらアウタ樹脂とインナ樹脂とをヒンジを境に重なり合う格好となるように折り曲げると、その両取付部が所定の隙を隔てた状態となるように構成されており、被取付部材の略L字状の角部にアウタ樹脂とインナ樹脂の両略L字部位を対応させた状態でアウタ樹脂の取付部からインナ樹脂の取付部を介して被取付部材に係止部材を差し込んで係止させると、アウタ樹脂とインナ樹脂との両取付部の間の所定の隙が詰められ、アウタ樹脂のヒンジ側がインナ樹脂のヒンジ側に引き込まれることを特徴とする構成である。
この構成によれば、樹脂部材を被取付部材に形成されている断面略L字状の角部を覆うように取り付けることができる。このとき、アウタ樹脂は、従来技術で説明したように、係合片を車両ボデーのブラケットに引っ掛けることなく、その先端側(ヒンジ側の先端)が被取付部材に押し付けられた状態となる。そのため、意匠面にヒケを生じさせることなく、すなわち、意匠性を損なうことなく、取付時の浮き上がりを防止できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂部材であって、アウタ樹脂のヒンジ側には、その長手方向または周方向に沿ってクッションが設けられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、取り付けた樹脂部材のヒンジ側が被取付部材と直に接触することを防止できる。そのため、例えば、被取付部材の表面に塗られている塗装がこのヒンジ側からの衝撃によって剥げ落ちることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るモールをビスによってタイヤハウスの縁に取り付ける構造を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の取り付け後の状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1のモールを内側から見た全体斜視図である。
【図4】図4は、図1の取り付け構造を示す縦断面図である。
【図5】図5は、図4の取り付け後の状態を示す縦断面図である。
【図6】図6は、図4において、モールをクリップによって取り付ける構造を示す縦断面図である。
【図7】図7は、図4において、モールをツリークリップによって取り付ける構造を示す縦断面図である。
【図8】図8は、図4において、モールをツーピースクリップによって取り付ける構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜5を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、被取付部材に形成されている断面略L字状の角部を覆うように取り付け可能な樹脂部材の例として、乗用車の車両ボデー10におけるタイヤハウス12の縁を覆うように取り付け可能なモール20を説明することとする。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両ボデー10を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0010】
まず、タイヤハウス12と、このタイヤハウス12に取り付け可能なモール20とを個別に説明する。はじめに、タイヤハウス12から説明する。図1〜2に示すように、このタイヤハウス12は、車両に設けられている、例えば、4本のタイヤ(図示しない)を収納可能に乗用車の車両ボデー10の左前、右前、左後、右後にそれぞれ形成されている収納空間である。
【0011】
このタイヤハウス12の縁は、その収納空間に収納されるタイヤの半径より大きな半径を成す略半円弧状に形成されている。このタイヤハウス12の縁には、内側(タイヤの収納空間側)に向けてフランジ14が折り曲げ成形されている。このフランジ14には、後述するモール20を取り付けるためにビスBを差し込み可能な取付孔14aが適宜の間隔で複数(この例では、6個)形成されている。なお、4箇所のタイヤハウス12、12、12、12は、そのいずれもが、略同様に構成されている。タイヤハウス12は、このように構成されている。
【0012】
次に、図3を参照して、モール20を説明する。モール20は、主として、アウタモール30と、このアウタモール30にヒンジ50を介して結合されている6個のインナモール40とから構成されている。これらアウタモール30とインナモール40とが、特許請求の範囲に記載の「アウタ樹脂とインナ樹脂」に相当する。
【0013】
アウタモール30は、タイヤハウス12のフランジ14の折り曲げの角部16を覆う格好となるように略アーチ状に形成されている。このアーチ状の記載が、特許請求の範囲に記載の「周方向」に相当する。このアウタモール30は、短片と長片とから断面が略L字状となるように形成されている。そして、このアウタモール30は、その短片側が、上述したフランジ14にアウタモール30を取り付ける取付部32を成し、その長片側が、意匠面を有する縦壁部34を成すように形成されている。
【0014】
この縦壁部34のヒンジ50側の縁には、その周方向に沿ってクッション60(例えば、エラストマ等の軟性を有するゴム部材)が設けられている。なお、この縦壁部34の外面が意匠面となる。
【0015】
一方、インナモール40も、アウタモール30と同様に、短片と長片とから断面が略L字状となるように形成されている。そして、このインナモール40は、その短片側が、上述したフランジ14にインナモール40を取り付ける取付部42を成し、その長片側が、縦壁部44を成すように形成されている。このインナモール40は、アウタモール30の周方向における外側の縁にヒンジ50を介して結合されている。
【0016】
また、アウタモール30の取付部32とインナモール40の取付部42には、ビスBを差し込み可能な取付孔32a、42aが形成されている。そして、これら取付孔32a、42aは、アウタモール30とインナモール40とをヒンジ50を境に重なり合う格好となるように折り曲げたとき、上述したフランジ14の取付孔14aに対応するように形成されている。
【0017】
また、インナモール40の取付部42における取付孔42aの内側周縁には、後述するビスBを止める(ビスBを受ける)ためのボス42bが形成されている。また、このインナモール40は、アウタモール30の周方向において、適宜の箇所(この例では、6箇所)に結合されている。
【0018】
そして、モール20は、アウタモール30とインナモール40とをヒンジ50を境に重なり合う格好となるように折り曲げると、その両取付部32、42が所定の隙Fを隔てた状態となるように構成されている。この所定の隙Fとは、例えば、0.3〜0.5mmの隙である。そのため、モール20は、その両取付孔32a、42aにビスBを差し込んでボス42bに止めると、アウタモール30の取付部32がインナモール40の取付部42に押し付けられるように構成されている。なお、これらアウタモール30とインナモール40およびヒンジ50とは、剛性を有する合成樹脂によって、一体的に形成されている。モール20は、このように構成されている。
【0019】
続いて、図4〜5を参照して、上述したアウタモール30とインナモール40とから構成されているモール20をタイヤハウス12の縁を覆うように取り付ける手順を説明する。このタイヤハウス12の例として、4箇所のタイヤハウス12、12、12、12のうち、左前のタイヤハウス12を説明することとする。
【0020】
まず、アウタモール30とインナモール40とをヒンジ50を境に重なり合う格好となるようにモール20を折り曲げる。次に、タイヤハウス12のフランジ14の折り曲げの角部16に、この折り曲げたモール20の両略L字部位(アウタモール30の略L字部位とインナモール40の略L字部位)を対応させた状態で、アウタモール30の取付孔32aからインナモール40の取付孔42aを介してフランジ14の取付孔14aにビスBを差し込んでインナモール40のボス42bに止めていく(図4参照)。このとき、クッション60は、車両ボデー10の表面に接する状態となっている。
【0021】
すると、アウタモール30の取付部32はインナモール40の取付部42に押し付けられる。このとき、アウタモール30の縦壁部34の先端側はインナモール40の縦壁部34の先端側とヒンジ50を介して結合されているため、アウタモール30の縦壁部34の先端側はインナモール40の縦壁部44の先端側に引き込まれる。これにより、アウタモール30の縦壁部34は、その先端側が車両ボデー10に押し付けられる。そして、ビスBの差し込みが完了すると、モール20の取り付けが完了する(図5参照)。このとき、クッション60は、押し付けられた縦壁部34の先端によって押し潰された状態となっている。このようにして、モール20をタイヤハウス12の縁を覆うように取り付けることができる。
【0022】
本発明の実施例に係るモール20は、上述したように構成されている。この構成によれば、モール20をタイヤハウス12の縁を覆うように取り付けることができる。このとき、アウタモール30の縦壁部34は、従来技術で説明したように、係合片を車両ボデーのブラケットに引っ掛けることなく、その先端側(ヒンジ50側)が車両ボデー10に押し付けられた状態(テンションが掛けられた状態)となる。そのため、取り付けたモール20の意匠面にヒケを生じさせることなく、すなわち、意匠性を損なうことなく、取付時の浮き上がりを防止できる。
【0023】
また、この構成によれば、アウタモール30の縦壁部34のヒンジ50側の縁には、その周方向に沿ってクッション60が設けられている。そのため、取り付けたモール20のヒンジ50側が車両ボデー10と直に接触することを防止できる。したがって、車両ボデー10の表面に塗られている塗装がこのヒンジ50側からの衝撃によって剥げ落ちることを防止できる。
【0024】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、樹脂部材がモールである例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、各種の樹脂製品(オーバフェンダ、スポイラ等)であっても構わない。
【0025】
また、実施例では、モール20が略アーチ状に形成されている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば、直線状であっても構わない。
【0026】
また、実施例では、係止部材の例として、ビスBを説明した。しかし、これに限定されるものでなく、汎用のクリップK1であっても構わない(図6参照)。また、汎用のツリークリップK2であっても構わない(図7参照)。また、汎用のツーピースクリップK3であっても構わない(図8参照)。
【符号の説明】
【0027】
10 車両ボデー(被取付部材)
16 角部
20 モール(樹脂部材)
30 アウタモール
32 取付部
40 インナモール
42 取付部
50 ヒンジ
B ビス(係止部材)
60 クッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に形成されている断面略L字状の角部を覆うように取り付け可能な樹脂部材であって、
被取付部材の角部を覆う格好となるように形成され、この被取付部材に取り付けるための取付部と一体的に断面略L字状に形成されているアウタ樹脂と、
アウタ樹脂の長手方向または周方向の縁にヒンジを介して結合され、被取付部材に取り付けるための取付部と一体的に断面略L字状に形成されているインナ樹脂と、を備え、
これらアウタ樹脂とインナ樹脂とをヒンジを境に重なり合う格好となるように折り曲げると、その両取付部が所定の隙を隔てた状態となるように構成されており、
被取付部材の略L字状の角部にアウタ樹脂とインナ樹脂の両略L字部位を対応させた状態でアウタ樹脂の取付部からインナ樹脂の取付部を介して被取付部材に係止部材を差し込んで係止させると、アウタ樹脂とインナ樹脂との両取付部の間の所定の隙が詰められ、アウタ樹脂のヒンジ側がインナ樹脂のヒンジ側に引き込まれることを特徴とする樹脂部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂部材であって、
アウタ樹脂のヒンジ側には、その長手方向または周方向に沿ってクッションが設けられていることを特徴とする樹脂部材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−163375(P2011−163375A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23868(P2010−23868)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(308031108)内浜化成株式会社 (18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】