説明

樹脂量決定装置、および、当該樹脂量決定装置を備えた樹脂封止装置

【課題】個々の半導体チップのデータを予め記憶することなく、より簡易に且つ必要レベルの精度をもって樹脂の必要量を判断する。
【解決手段】半導体チップ積層体102を有する基板100を樹脂にて封止する樹脂封止装置1であって、積層体102が正常に積層された場合の当該積層体全体の体積Vaを予め記憶する記憶部10と、積層体102の積層高さHを検知するレーザセンサ40と、積層体102の正常時の積層数がnであるとき、積層体102の底面102Bから上面102Aの間にn−2以下の数の閾値eを設定することにより当該設定した閾値eの数+1だけの仮想領域を設定しておき、更に、仮想領域毎に、積層体全体の体積Vaの所定割合を対応させ、レーザセンサ40の検知結果に基づいていずれかの仮想領域を選択し、該選択した仮想領域に対応する所定割合に相当する樹脂を基準量に対して増加または減少させた上で当該増減後の樹脂を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが搭載された被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品は、そのままでは外部からの影響を受け易いため、基板に搭載された後に、熱硬化性樹脂等により樹脂封止が行われている。
【0003】
樹脂封止を行なう場合には、対向する樹脂封止金型で基板をクランプした状態で、当該金型を合わせてできるキャビティを利用して、該キャビティ内で半導体部品(半導体チップ)を封止するようにしている。
【0004】
近年、携帯電話のSRAM等の分野において、スタックドパッケージと呼ばれる半導体部品が用いられている。これは複数の半導体チップを積層化したもので、高度な機能を拡充させることができるため、需要が急拡大している。
【0005】
ただ、この種の半導体部品は、前工程(半導体積層工程など)の不良などにより部品の積層数が不揃いになってしまうことがある。この場合、半導体部品が予定された積層数(正常な積層数)に達していないということであるため、キャビティ内に充填すべき樹脂量(封止に必要とされる樹脂量)も設定値(基準量)から外れてしまうことになる。特に圧縮成形方法を用いた樹脂封止装置の場合、(トランスファ成形と異なって)キャビティが閉じており、圧縮の過程において樹脂量を増減することができないため、充填すべき樹脂量の決定の不適は、製品の不良に直結する。またトランスファ成形の場合であっても、積層不良により不足する可能性のある樹脂量を予め見越した上で樹脂を投入する必要があるため、必要以上に樹脂コストがかかる場合もある。
【0006】
特許文献1においては、このような問題に対する技術として、レーザ光を半導体チップに照射して得られる反射光の焦点距離を読み取ることにより該半導体チップの高さを計測し、この高さ計測値からチップ積層量を判定し、不足する半導体部品に補填する樹脂量若しくは補填しない樹脂量を算出する技術が提案されている。
【0007】
より具体的には、予め、積層される半導体チップ一枚一枚の情報(半導体チップの厚みデータ、半導体チップの体積データなど)を記憶しておく。その上で、半導体チップ厚みデータと高さ計測値とから何枚の半導体チップが積層されている(若しくは積層されていない)のかを判断し、更にその積層されている(若しくは積層されていない)半導体チップ毎の体積データを利用して、補填する(若しくは補填しない)樹脂の量を算出している。
【0008】
またその他にも、例えば、半導体チップの積層高さ方向からカメラにより撮像することで、半導体チップの有無を検知し供給する樹脂量を調整する手法も公知である。
【0009】
【特許文献1】特開2006−134917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、樹脂供給量の精度が高いというメリットはあるものの、予め記憶しておくべき(入力しておくべき)データの量が膨大となり、計算処理が煩雑となる。また、膨大なデータの入力等の際に、誤った値を入力する可能性も高い。誤った値が入力されると、せっかく高精度に積層高さを検知してもそれに見合った精度での樹脂封止は不可能である。更に見方を変えると、これらのデータが揃わない限り樹脂封止することができないことを意味する。例えば、積層されるチップの詳細なデータを保有する部門と封止作業を行う部門とが異なれば(通常はメーカーさえ異なると考えられる)、樹脂封止作業を開始するに当たり部門を越えての情報のやりとりが必要となる。
【0011】
また、半導体チップ一枚一枚のデータを加算した値と、実際に積層された際の値とが常に一致するとは限らない。例えば、半導体チップ同士を接着する接着層が存在すればそれにより実際の積層高さに誤差が生じ得る。また、個々の接着態様によっても実際の積層高さは変化し得る。これらの誤差が累積すれば、例えば、5枚しか積層されていない場合に6枚積層されていると判断する場合も想定され、却って最終的な樹脂供給量に大きな誤差を生む原因となる。また、何らかの理由により個々のチップのデータを再入力する必要がある等の場合に、事後的にそれら個々のデータを消失してしまっている場合は、装置を稼働させることが不可能となる。特にこれらの問題点は、今後想定される半導体チップ積層数の増大に比例してより顕在化し得ることが想定される。
【0012】
一方、一台のカメラにより半導体チップの有無を検知する手法では、半導体チップの有無は容易に検知できるものの、「何枚積層されているのか」までの判断をすることが困難であり、例えば、1枚のみ積層されている場合も5枚積層されている場合も検知結果としては同じ「有り」という結果となる。即ち、供給すべき樹脂量を精度よく判断することができない。この問題も、今後想定される半導体チップ積層数の増大に比例してより顕在化し得ることが想定される。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するべくなされたものであって、個々の半導体チップのデータを予め記憶することなく、より簡易に且つ必要レベルの精度をもって樹脂の必要量を判断することができる樹脂封止装置や樹脂量決定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、導体チップが積層された積層体を有する被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、前記積層体が正常に積層された場合の当該積層体全体の体積を予め記憶する手段と、前記積層体の積層高さを検知する積層高さ検知手段と、前記積層体の正常時の積層数がnであるとき、当該積層体の底面から上面の間にn−2以下の積層高さ方向の閾値を設定することにより当該設定した閾値の数+1だけの仮想領域を設定する手段と、該仮想領域毎に、前記積層体全体の体積の所定割合を対応させる手段と、前記検知手段の検知結果に基づいていずれかの前記仮想領域を選択する手段と、該選択した仮想領域に対応する前記所定割合に相当する樹脂を基準量に対して増加または減少させた上で当該増減後の樹脂を供給する手段と、を備えることにより上記課題を解決するものである。
【0015】
このような構成により、予め積層される半導体チップ一枚一枚の厚みや体積のデータを入力しておく必要がない。即ち、正常に積層された場合の積層体全体の体積の値を用意しておけば足り、多数のデータを入力するといった煩雑な作業は不要となる。また、積層高さ検知手段によって、半導体チップの積層高さがいずれの仮想領域内にあるかの選択が完了すれば、予め対応付けされた所定割合の樹脂量を基準量から増減するだけでよく、半導体チップ一枚一枚のデータを加算する等の処理は不要であり、処理すべきデータ量が軽減できる上に処理速度も向上する。更に、カメラによる有無の判別に比べ、段階的に供給すべき樹脂量を調整することができる。また樹脂量の精度は、例えば製品の性質や種類等に応じて設定する閾値の数を変化させることで容易に対応することが可能となっている。
【0016】
また、前記積層高さ検知手段を、積層高さ方向から前記被成形品を挟むように配置される1対のセンサで構成し、前記積層体の上面と、前記被成形品の前記積層体が積層されていない面とを前記センサで計測することにより検知してもよい。このようにすれば、例えば半導体チップが積層されている被成形品自体(例えば基板)に反りが生じていたり、検知の際に被成形品が振動している場合においても、本来の(正確な)積層高さを検知することが可能となる。
【0017】
また、前記被成形品が、マトリクス状に配置された複数の前記積層体を有している場合(所謂MAP封止の場合)には特に以下の効果が発揮される。
【0018】
現在の技術レベルでは、複数の積層体の内の殆どは正常に積層されたものであり、積層数が足りないものは極僅かである。かかる状況下では、半導体チップ一枚一枚のデータに基づいた詳細な管理が却ってあだとなる場合がある。即ち、データの入力ミスや積層の累積誤差などによって、大多数を占める正常な積層体を異常なものと判定し、その判定に基づいて樹脂の供給量を調整するという事態が生じ得る。しかし本発明のように、閾値の数をn−2以下とする(換言すれば大まかに閾値を設定する)ことで、多少の累積誤差があった場合でも、大多数の正常な積層体は本来通り「正常」と判定でき、上記不都合を排除することが可能となる。
【0019】
なお本発明は、半導体チップが積層された積層体を有する被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置に対して供給すべき樹脂量を決定する樹脂量決定装置であって、前記積層体が正常に積層された場合の当該積層体全体の体積を予め記憶する手段と、前記積層体の積層高さを検知する積層高さ検知手段と、前記積層体の正常時の積層数がnであるとき、当該積層体の底面から上面の間にn−2以下の積層高さ方向の閾値を設定することにより当該設定した閾値の数+1だけの仮想領域を設定する手段と、該仮想領域毎に、前記積層体全体の体積の所定割合を対応させる手段と、前記検知手段の検知結果に基づいていずれかの前記仮想領域を選択する手段と、該選択した仮想領域に対応する前記所定割合に相当する樹脂を基準量に対して増加または減少させた上で当該増減後の樹脂を供給する手段と、を備えることを特徴とする樹脂量決定装置として捉えることも可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明を適用することにより、個々の半導体チップのデータを予め記憶することなく、より簡易に且つ必要レベルの精度をもって樹脂の必要量を判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置1の概略構成図である。なお、本発明は、樹脂封止装置の一部分を構成する装置として適用されるが、樹脂封止装置自体の基本構成については、従来の構成と特に異なるところがないため、ここでは、本発明本来の「必要とする樹脂量の決定装置」の部分に焦点を当てて説明する。
【0023】
また、説明の都合上、基板における半導体チップが積層されている側の面を「表面」または「上面」とし、反対側を「裏面」または「底面」として説明する。但し、基板の両面に半導体チップが積層されている場合を除外する意図ではない。
【0024】
<樹脂量決定装置の構成>
この樹脂量決定装置2は、半導体チップ積層体102を有する基板(被成形品)100を積層高さ方向(図1において上下方向)から挟むように配置された一対の第1、第2レーザセンサ(積層高さ検知手段)40A、40Bを備えている。この第1、第2レーザセンサ40A、40Bは同期が取られており、所定のタイミングで図面手前−奥方向に移動可能とされている。一方基板100は、図示せぬ基板搬送機構によって把持されており、所定のタイミングで図面左右方向に移動可能とされている。
【0025】
なおこの実施形態においては、基板100の下面側に半導体チップ積層体102が複数配置されているが、上面側であっても何ら差し支えない。また、図面からは基板100の左右方向に5つの半導体チップ積層体102が配置されているのが見て取れるが、同様に図面手前−奥方向にも半導体チップ積層体102が配置されている。即ち、基板100にはマトリクス状に半導体チップ積層体102が配置されている。
【0026】
基板100の上方に配置されている第1レーザセンサ40Aは、自身から発射したレーザの反射を受けて、基板100の裏面の位置(高さ)を検知することが可能とされている。一方、基板100の下方に配置されている第2レーザセンサ40Aは、自身から発射したレーザの反射を受けて、半導体チップ102の上面102Aまたは/および基板100の表面の位置(高さ)を検知することが可能とされている。
【0027】
第1、第2のレーザセンサ40A、40Bは、演算部20と接続されており、検知結果を演算部20へとリアルタイムで送信することが可能とされている。またこの演算部20は、記憶部10および樹脂供給部30とも接続されている。
【0028】
記憶部10は、種々のデータを記憶しておくことが可能である。ここでは、半導体チップ積層体102が正常に積層された場合の当該積層体102全体の体積Va、閾値のデータe1、e2…、当該閾値に基づいて決定される仮想領域a、b…、この仮想領域に対応する樹脂量の割合など(詳細は後述する)が記憶されている。これらのデータは記憶部10に対して手作業で入力設定してもよいし、他の情報源(例えば前工程の装置情報)を利用して自動的にロードされるような構成であってもよい。また、演算部20から送られてくるデータを記憶しておくことも可能である。
【0029】
演算部20は、記憶部10に記憶されているデータを読み出すことが可能である。また、第1、第2レーザセンサ40A、40Bから送られてきたデータを取り込んで、他のデータと比較したり、所定の演算を行う。更に場合によっては、比較、演算後のデータを記憶部10に送信する。
【0030】
樹脂供給部30は、ホッパなどに貯蔵されている樹脂(例えば粉状樹脂、粒状樹脂、液状樹脂など)から必要量の樹脂を切り出して樹脂封止装置(若しくは樹脂を予備成形する場合には予備成形装置)へと供給する。樹脂供給装置30は、切り出されるべき樹脂量のデータを演算部20から受け取っている。
【0031】
なお、上記では、積層高さ検知手段として一対のレーザセンサ40A、40Bを利用しているが、半導体チップの積層高さHを検知できる限りにおいて他の構成を採用してもよい。例えば、接触式変位センサを利用すれば、センサ1つでも十分に機能させることができ、構造が簡単であり低コストで実現できる。また、一定の幅広のレーザ光を基板に対して所定の斜め方向から照射すると同時に、基板に対して例えば垂直方向にカメラを配置して検知手段としてもよい。このような構成とすれば、多数の積層体の積層高さを短時間に計測することができる。また、異なる方向に配置した複数台のカメラによって検知手段を構成してもよい。このような構成とすれば、面で計測できるため、一度に多数の積層体を計測することが可能となる。その他にも、レーザの焦点距離によって判断したり、干渉縞の強度をカメラで撮影することによって半導体チップ積層体の積層高さを検知することも可能である。
【0032】
<樹脂量決定装置の作用>
図示せぬストッカから運び出された基板100は、基板搬送機構によって金型へと順次搬送される。その搬送工程の途中において、樹脂量決定装置2が作用し、金型へ供給されるべき樹脂量が決定される。
【0033】
第1、第2レーザセンサ40A、40Bの間に基板100が搬送されてくると、第1、第2レーザセンサ40A、40Bからレーザが発射される。第1レーザセンサ40Aと第2レーザセンサ40Bとの距離Dは既知である。よって、第1レーザセンサ40Aにて計測される値d1と第2レーザセンサ40Bにて計測される値d2とを既知のDから差し引くことによって、半導体チップ積層体102の積層高さHおよび基板100の厚みTの合計値Xを算出することが可能となる。
【0034】
X=D−(d1+d2)…式(1)
【0035】
また、基板100自体の厚みTは、半導体チップ積層体102が積層されている位置以外の位置を当該第1、第2レーザセンサ40A、40Bにて計測することで同様に求めることができる。例えば同じ種類の基板であれば、最初のものだけを計測しておけば、その後の当該計測値を基板100の厚みTとして利用できる。勿論基板100の厚みTは、既知情報として予め入力した値を利用することも可能である。
【0036】
次に、合計値Xから基板自体の厚みTを差し引くことによって、半導体チップ積層体102の積層高さHを算出することが可能となる。
【0037】
H=X−T…式(2)
【0038】
これらの演算は、演算部20によって行われている。
【0039】
<閾値および仮想領域について>
図2の概念図にて示しているように(なお図2では上下方向を反転させて図示している)、記憶部10には、予め閾値e1およびe2が設定されている。この閾値の数は、供給する樹脂量の必要な精度に応じて変化させることが可能であるが、その数は半導体チップ積層体102の正常時の積層数(積層枚数)をnとした場合、n−2以下の数で設定する必要がある。これはn−1以上の数の場合、半導体チップ一枚一枚の厚みデータを予め入力しておくことに事実上等しくなり、本発明の効果である、「予め積層される半導体チップ一枚一枚の厚みや体積のデータを入力しておく必要がない」という効果が発揮できないからである。
【0040】
ここで説明する実施形態においては、正常に積層された場合の半導体チップ積層体102の積層数を6枚とした場合に、閾値が2つ(e1、e2)に設定されている。即ち、閾値の数は6−2以下の数に設定されている。具体的には、基板100側から数えて2枚目の半導体チップと3枚目の半導体チップとの境が閾値e1とされ、同様に、基板100側から数えて4枚目の半導体チップと5枚目の半導体チップとの境が閾値e2として設定されている。
【0041】
その結果、半導体チップ積層体102の上面102A〜閾値e2までが仮想領域a、閾値e2〜閾値e1までが仮想領域b、閾値e1〜半導体チップ積層体102の底面(即ち、基板100の表面)までが仮想領域cとして設定される。また、各仮想領域毎に、半導体チップ積層体102が正常に積層された場合の当該積層体全体の体積Vaに対する所定割合が対応付けされて設定されている。ここでは仮想領域aに対してVaの0%が、仮想領域bに対してVaの50%が、仮想領域cに対してVaの100%が対応付けされている。勿論、この割合自体は適宜最適な値に変更可能である。
【0042】
これらの仮想領域、閾値、樹脂量の割合の対応関係は、例えば図3に示しているようなテーブルとして記憶部10に記憶されている。
【0043】
演算部20によって、計測された半導体チップ積層体102の積層高さHが算出されると、当該Hの値がいずれの仮想領域に相当するかの判断がなされる。各仮想領域にはVaに対する所定割合が対応付けられているため、増減させる必要のある樹脂量σ(Vaに所定割合を乗じた量:以下単に「調整量」という場合がある)が求められる。
【0044】
演算部20によって算出された調整量σは、樹脂供給部30へと送信される。また樹脂供給部30は当該受け取ったデータに基づいて樹脂供給の際の基準量(基準切出し量)に増減を加え、当該調整後の樹脂が金型等へ供給される。なおここでは基準量(基準切出し量)は樹脂供給部30が持っているが、例えばこの基準量も記憶部10に予め記憶されており、演算部20によって当該基準量に調整量σが増減された値が樹脂供給部30に送信されるような構成を採用してもよい。
【0045】
なおこの調整量σは、基準量(基準切出し量)に対する増加関数にも減少関数にもなり得るものである。例えば、基準量(基準切出し量)が、全ての半導体チップ積層体が正常に積層されている場合の樹脂の必要量とされている場合には増加関数として機能する。一方、基準量(基準切出し量)が、全く半導体チップ積層体が積層されていない場合の樹脂の必要量とされている場合には減少関数として機能する。
【0046】
例えば、調整量σが増加関数であって、積層高さHが仮想領域bにある場合には、Vaの50%の量の樹脂が基準量に加えられる。
【0047】
なお、ここでは1つの半導体チップ積層体102を取り出して説明しているが、1枚の基板100上に複数の半導体チップ積層体102が配置されている場合には、基板単位で調整量σを合算して樹脂供給部30にデータが送信される。
【0048】
このように、樹脂量決定装置2では、予め積層される半導体チップ一枚一枚の厚みや体積のデータを入力しておく必要がない。即ち、正常に積層された場合の積層体102全体の体積Vaの値を用意しておけば足り、多数のデータを入力するといった煩雑な作業は不要である。また、レーザセンサ40A、40Bによって、半導体チップ積層体102の積層高さHがいずれの仮想領域内にあるかの選択が完了すれば、予め対応付けされた所定割合の樹脂量を基準量から増減するだけでよく、半導体チップ一枚一枚のデータを加算する等の構成は不要であり、処理すべきデータ量が軽減できる上に処理速度も向上する。更に、一台のカメラによる有無の判別に比べ、段階的に供給すべき樹脂量を調整することが可能とされている。また樹脂量の精度は、例えば製品の性質や種類等に応じて設定する閾値の数を変化させることで容易に対応することが可能である。
【0049】
また、本実施形態においては、第1、第2のレーザセンサ40A、40Bを、積層高さ方向から基板100を挟むように配置構成し、半導体チップ積層体の上面102Aと、基板100の裏面(半導体チップ積層体が積層されていない面)とをセンサで計測している。よって、例えば基板100自体に反りが生じていたり、検知の際に基板100が振動している場合においても、本来の(正確な)積層高さHを検知することが可能となっている。勿論、このように配置されていることが本発明の必須の構成要素ではない。
【0050】
また、本実施形態のように基板100にマトリクス状に複数の半導体チップ積層体102が配置されている場合(所謂MAP封止の場合)には、特に以下の点で有効となる。現在の技術レベルでは、複数の積層体の内の殆どは正常に積層されたものであり、積層数が足りないものは極僅かである。かかる状況下では、半導体チップ一枚一枚のデータに基づいた詳細な管理が却ってあだとなる場合がある。即ち、データの入力ミスや積層の累積誤差などによって、大多数を占める正常な積層体を異常なものと判定し、その判定に基づいて樹脂の供給量を調整するという事態が生じ得る。しかし本発明のように、閾値の数をn−2以下とする(換言すれば大まかに閾値を設定する)ことで、多少の累積誤差があった場合でも、大多数の正常な積層体は本来通り「正常」と判定でき、上記不都合を排除することが可能となる。
【0051】
なお、図4および図5において、他の実施形態として第2の検知例を示している。ここでは、半導体チップが正常に積層された場合の積層数を8とし、閾値の数を3(即ち8−2以下の数)としている。その結果仮想領域の数が4(3+1)となる。基本的な考え方は上述した第1の検知例と同様であるため具体的な説明は省略する。また本発明によれば、この例のように、閾値をチップとチップとの境界以外の位置にも自由に設定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、特に圧縮成形方法を用いた樹脂封止装置に適用すると、顕著な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置の概略構成図
【図2】半導体チップの積層高さの第1の検知例を示す概念図
【図3】第1の検知例にて使用される領域、閾値、樹脂量の関係を示したテーブル図
【図4】半導体チップの積層高さの第2の検知例
【図5】第2の検知例にて使用される領域、閾値、樹脂量の関係を示したテーブル図
【符号の説明】
【0054】
1…樹脂封止装置
2…樹脂量決定装置
10…記憶部
20…演算部
30…樹脂供給部
40…積層高さ検知手段
40A…第1レーザセンサ
40B…第2レーザセンサ
100…基板
102…半導体チップ積層体
102A…(半導体チップ積層体の)上面
102B…(半導体チップ積層体の)底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体チップが積層された積層体を有する被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、
前記積層体が正常に積層された場合の当該積層体全体の体積を予め記憶する手段と、
前記積層体の積層高さを検知する積層高さ検知手段と、
前記積層体の正常時の積層数がnであるとき、当該積層体の底面から上面の間にn−2以下の積層高さ方向の閾値を設定することにより当該設定した閾値の数+1だけの仮想領域を設定する手段と、
該仮想領域毎に、前記積層体全体の体積の所定割合を対応させる手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいていずれかの前記仮想領域を選択する手段と、
該選択した仮想領域に対応する前記所定割合に相当する樹脂を基準量に対して増加または減少させた上で当該増減後の樹脂を供給する手段と、を備える
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記積層高さ検知手段が、積層高さ方向から前記被成形品を挟むように配置される1対のセンサで構成され、
前記積層体の上面と、前記被成形品の前記積層体が積層されていない面とを前記センサで計測することにより検知する
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記被成形品が、マトリクス状に配置された複数の前記積層体を有している
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
導体チップが積層された積層体を有する被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置に対して供給すべき樹脂量を決定する樹脂量決定装置であって、
前記積層体が正常に積層された場合の当該積層体全体の体積を予め記憶する手段と、
前記積層体の積層高さを検知する積層高さ検知手段と、
前記積層体の正常時の積層数がnであるとき、当該積層体の底面から上面の間にn−2以下の積層高さ方向の閾値を設定することにより当該設定した閾値の数+1だけの仮想領域を設定する手段と、
該仮想領域毎に、前記積層体全体の体積の所定割合を対応させる手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいていずれかの前記仮想領域を選択する手段と、
該選択した仮想領域に対応する前記所定割合に相当する樹脂を基準量に対して増加または減少させた上で当該増減後の樹脂を供給する手段と、を備える
ことを特徴とする樹脂量決定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−253128(P2009−253128A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101083(P2008−101083)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】