説明

樹脂

【課題】相溶化剤として有用な樹脂を提供する。
【解決手段】式(1)で表される樹脂。(式(1)中、Pは、ポリオレフィン。Xは、−NH−又は−O−。Aは、炭素数1〜6のアルキレン基。複数のQのうち少なくとも1つは不飽和カルボン酸無水物に由来するセグメントを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂に関し、さらに詳しくはポリオレフィンセグメントと不飽和カルボン酸無水物に由来するセグメントから得られる樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、工業材料等として幅広く使用されている。しかしながら、ポリオレフィンは非極性ポリマーであり、金属等の極性物質との親和性に乏しい。このように、親和性に乏しい材料同士の親和性を改善する方法として、相溶化剤を添加する方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】高分子論文集 32,645(1975)
【非特許文献2】高分子論文集 33,122(1976)
【非特許文献3】日本接着学会誌 33,39(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新たな相溶化剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]式(1)で表される樹脂。

(式(1)中、Pは、ポリオレフィンセグメントを表す。
は、水素原子又はメチル基を表す。
は、−NH−又は−O−を表す。
は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
mは、1以上の整数を表す。
nは、1以上の整数を表す。
m及びnが1である場合、Qは、不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントを表す。
m及び/又はnが2以上である場合、複数のQは、それぞれ独立に、水素原子又は不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントを表し、複数のQのうち少なくとも1つは不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントを表す。)
【0006】
[2] Pが、主鎖に炭素数2〜20のオレフィンに由来する単位を有するセグメントである[1]記載の樹脂。
【0007】
[3] Pが、主鎖にエチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する単位を有するセグメントである[1]又は[2]記載の樹脂。
【0008】
[4] 不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントが、無水マレイン酸に由来する単位を有するセグメントである[1]〜[3]のいずれかの項記載の樹脂。
【0009】
[5] ポリオレフィンと、式(2)で表される化合物とを反応させて反応物を得て、得られた反応物と不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有する重合体とを反応させて樹脂を得ることを特徴とする樹脂の製造方法。

(式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、−NH−又は−O−を表す。
は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【0010】
[6] [1]〜[4]のいずれかの項記載の樹脂と、前記樹脂とは異なるその他の樹脂とを含む組成物。
【0011】
[7] [1]〜[4]のいずれかの項記載の樹脂を含む相溶化剤。
【0012】
[8] [1]〜[4]のいずれかの項記載の樹脂を含む、熱可塑性樹脂とフィラーとを相溶化させる相溶化剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂は、相溶化剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂は、式(1)で表される。以下、本発明の樹脂について説明する。
【0015】
<P
は、主鎖にオレフィンに由来する単位を有するセグメントであることが好ましく、炭素数2〜20のオレフィンに由来する単位を有するセグメントであることがより好ましい。
【0016】
炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、直鎖状又は分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエンなどが挙げられる。
【0017】
直鎖状のα-オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のα-オレフィンが挙げられ、より好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテンが挙げられる。分岐状のα-オレフィンとしては、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどが挙げられる。
【0018】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数3〜20のものが挙げられる。
【0019】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノアルキルスチレン又はポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0020】
共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10のものが挙げられる
【0021】
非共役ポリエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10のものが挙げられる。
【0022】
は、好ましくは、2種以上のオレフィンに由来する単位を有するセグメントであり、より好ましくは、主鎖にエチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する単位を有するセグメントである。
【0023】
の重量平均分子量(Mw)は、通常500〜10,000,000の範囲、好ましくは1,000〜5,000,000の範囲、より好ましくは5,000〜1,000,000の範囲である。
【0024】
<Q
は、上記式(1)でm及びnが1である場合、不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントであり、m及び/又はnが2以上である場合、複数のQは、それぞれ独立に、水素原子又は不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントであり、複数のQのうち少なくとも1つは不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントである。
【0025】
不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、等が挙げられるが無水マレイン酸が好ましい。
【0026】
は不飽和カルボン酸無水物以外にα,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸エステル、芳香族ビニル系モノマーに由来する単位を含んでいてもよい。
【0027】
の重量平均分子量は、通常100〜500,000、好ましくは100〜200,000の範囲である。
【0028】
<A
は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
アルキレン基は、直鎖又は分岐状アルキレン基である。このようなアルキレン基は、通常、対応するアルキル基から一個の水素を除いた基として表される。
炭素数1〜6のアルキレン基に対応するアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基等が挙げられる。
【0029】
mは1以上の整数であり、好ましくは1〜3000の整数である。
nは1以上の整数であり、好ましくは1〜3000の整数である。
また、mとnとの積(m×n)は、1以上の整数であり、好ましくは1〜1500の整数である。mとnとの積が1500以下であると、樹脂の溶解性の点から好ましい。
【0030】
<樹脂の製造方法>
本発明の樹脂の製造方法は、ポリオレフィンと、式(2)で表される化合物とを反応させて反応物を得て、得られた反応物と不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有する重合体とを反応させて樹脂を得る方法である。
【0031】
(ポリオレフィンの製造方法)
ポリオレフィンは、<P>の説明で挙げられたオレフィンの混合物を、公知のチーグラー・ナッタ型触媒又は公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)を用いて重合させることにより製造することができる。触媒としては、樹脂の耐熱性を高める観点から、公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)が好ましい。
シングルサイト触媒としては、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒、特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開平11−71420号公報等に記載の非メタロセン系の錯体触媒が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、好ましくはメタロセン触媒であり、より好ましくはシクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対掌構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体である。また、メタロセン触媒を用いた製造方法としては、欧州特許公開第1211287号明細書の方法が挙げられる。
【0032】
(不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有する重合体(以下、「重合体」という場合がある)の製造方法)
重合体は、<Q>の説明で挙げられたモノマーの混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下に公知の溶液重合又は塊状重合させることにより製造することができる。具体的には、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素系の化合物を溶媒として用い、該溶媒にモノマーの一部又は全部を混合させ、通常110℃〜160℃、好ましくは120℃〜160℃、にてラジカル開始剤等の重合開始剤及び残りのモノマーを混合させ、通常、1〜24時間程度攪拌する方法などが挙げられる。また、反応を制御するために、重合開始剤及び残りのモノマーを有機溶媒に溶解したのち混合させてもよい。
【0033】
ラジカル開始剤の添加量は、前記モノマー100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜20重量部である。添加量が0.1重量部以上であると重合体の重量平均分子量が大きくなり揮発性の点で好ましく、添加量が30重量部以下であると得られる重合体とポリオレフィンとの相溶性の点で好ましい。
【0034】
ラジカル開始剤は、通常、有機過酸化物であり、好ましくは半減期が1時間となる分解温度が110〜160℃である有機過酸化物である。分解温度が110℃以上であると重合体の重量平均分子量が増加する傾向があることから好ましく、分解温度が160℃以下であると生成した重合体の分解が低減される傾向があることから好ましい。
【0035】
有機過酸化物としては公知の有機過酸化物が挙げられ、好ましくはジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物、アルキルパーエステル化合物である。有機過酸化物の添加量は、前記モノマーの混合物100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜20重量部である。
【0036】
重合体に含まれる不飽和カルボン酸無水物に由来する単位は、酸無水物基が閉環したものであっても、開環したものであってもよく、閉環したものと開環したものがいずれも含有されていてもよい。
【0037】
(式(2)で表される化合物)
アルキレン基は、直鎖又は分岐状アルキレン基である。このようなアルキレン基は、通常、対応するアルキル基から一個の水素を除いた基として表される。
炭素数1〜6のアルキレン基に対応するアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基等が挙げられる。
【0038】
式(2)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシペンチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、1−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノブチルアクリレート、アミノペンチルアクリレート、アミノヘキシルアクリレート、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、アミノブチルメタクリレート、アミノペンチルメタクリレート、アミノヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
【0039】
ポリオレフィンと式(2)で表される化合物とを反応させる方法としては、公知の方法が挙げられる。
方法としては、ポリオレフィンとラジカル開始剤と式(2)で表される化合物とを押出機などで加熱溶融混合し、グラフト重合させる第1の方法、ポリオレフィンと式(2)で表される化合物との混合物に放射線を照射し、グラフト重合させる第2の方法、ポリオレフィンと式(2)で表される化合物とをキシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素系の溶媒中に溶解し、ラジカル開始剤の存在下にグラフト重合させる第3の方法、等が挙げられる。
ポリオレフィンに対する式(2)で表される化合物のグラフト量は、ポリオレフィン100重量部に対して、通常0.01〜20重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。グラフト量は赤外吸収スペクトル、H−NMRなどにより導出する。
【0040】
第3の方法における、溶媒の使用量は、ポリオレフィンを溶解若しくは懸濁できる量であればよい。通常重合体ポリオレフィン1重量部に対して、溶媒0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0041】
第1の方法及び第3の方法における、ラジカル開始剤の添加量は、ポリオレフィン100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。添加量が0.1重量部以上であるとポリオレフィンへのグラフト量が増加して低粘度となり取り扱いが容易になり、添加量が10重量部以下であると樹脂中における未反応のラジカル開始剤が低減される傾向があることから好ましい。
【0042】
ラジカル開始剤としては、上記重合体の製造方法の説明で挙げられたものと同じものが挙げられる。
半減期が1時間となる分解温度が110〜160℃である有機過酸化物であると、グラフト量が向上するため好ましい。
有機過酸化物の中で好ましいのはジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物、アルキルパーエステル化合物である。有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。
【0043】
ポリオレフィンと、式(2)で表される化合物とを反応させて得られた反応物(以下、「反応物」という場合がある。)と重合体とを反応させる方法としては、公知の方法が挙げられる。
方法としては、触媒の存在下又は非存在下で反応物と重合体とをバンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸の押出機等の従来公知の混練手段などで加熱溶融混合する第1の方法、触媒の存在下又は非存在下で反応物と重合体とをキシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素系の溶媒中に溶解し、攪拌して反応させる第2の方法、等が挙げられる。
反応温度はいずれの方法においても、通常0℃〜400℃、好ましくは100〜200℃であり、反応時間はいずれの方法においても、通常は1分〜24時間、好ましくは5分〜10時間である。
反応物と重合体とを反応させることにより、本発明の樹脂が得られる。また、副生成物として、ポリオレフィンと重合体と式(2)で表される化合物とが互いに結合して環を形成している樹脂や、複数のポリオレフィンが式(2)で表される化合物に由来する連結基を介して1つの重合体に結合した樹脂が得られる場合がある。
【0044】
本発明の樹脂における、PとQとの重量割合(P/Q)は、好ましくは99.9/0.1〜5/95であり、より好ましくは99/1〜30/70である。該範囲では、樹脂の相溶解性が向上する。
【0045】
本発明の樹脂の酸価は通常1〜200mgKOH/g、好ましくは1〜150mgKOH/gである。本発明の酸価は試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのにようする水酸化カリウムのミリグラム数(mg)であり、単位はmgKOH/gで表す。酸価は試料500mgをキシレン50gを加えて溶解し、1mLの水を加えて140℃で1時間還流した後室温に戻し、過剰の水酸化カリウムエタノール溶液を加えて中和した後、塩酸で逆滴定を行って求める。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂含む。本発明樹脂組成物は、本発明の樹脂と本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂を含むことが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、フィラー、上記反応物と重合体との反応で得られた副生成物、その他の添加剤等を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−αオレフィン三元共重合体などのポリプロピレン系樹脂、たとえば高密度ポリエチレン(HD−PE)、低密度ポリエチレン(LD−PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−MMA共重合体などのポリエチレン系樹脂、メチルペンテンポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン三元共重合体、ハイインパクトポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0048】
上記熱可塑樹脂は不飽和カルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート、アクリレートなどにより変性されていてもよい。
本発明の樹脂と異なる他の樹脂は、1種類で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0049】
本発明の樹脂組成物が本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂、必要によりフィラー、上記反応物と重合体との反応で得られた副生成物、その他の添加剤等を含む場合、組成物中の本発明の樹脂の含有量は、該組成物100重量部に対して、相溶性及び工業上の観点から通常0.05〜50重量部、好ましくは1〜40重量部である。本発明の樹脂の含有量が組成物100重量部に対し1重量部以上である場合には、加工性が向上する傾向があり、本発明の樹脂の含有量が組成物100重量部に対し50重量部以下である場合には、加工性と経済性の面から好ましい。
【0050】
フィラーとしては、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の補強材、導電性カーボン、タルク、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム(ギブサイト、ベーマイト、バイアーライト、ダイアスポア)、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、塩基性ケイ酸マグネシウム(タルク、合成塩基性ケイ酸マグネシウム)、ハイドロタルサイト、アルミノケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム等の充填剤が挙げられるが、水酸化マグネシウムが好ましい。これらの充填剤の粒子は、アミノシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤などのシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤などのカップリング剤、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸等の表面処理剤により表面処理されていてもよい。
これらのフィラーは、単独でも2種以上の組み合わせでも用いることがで
きる。
【0051】
その他の添加剤としては、フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤;揺変剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、耐候剤、顔料、顔料分散剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料などの添加剤;酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラック等の顔料;等が挙げられる。
【0052】
(用途)
本発明の樹脂及び本発明の樹脂組成物は、相溶化剤、接着剤、粘着剤、接着剤の改質剤、ヒートシール剤、塗料、塗料用プライマー、フィルム、シート、構造材料、建築材料、自動車部品、電気・電子製品、包装材料などに好適に用いることができる。中でも相溶化剤として好適に用いられる。
【0053】
(2種類以上の本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂の相溶化剤)
本発明の樹脂は、2種類以上の本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂の相溶化剤として好適に用いることができる。本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては上記と同じものが挙げられる。本発明の樹脂を本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂の相溶化剤として用いる場合、別々に混合してもよいし、1種類以上の本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂に本発明の樹脂を混合しておき、それに1種類以上の本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂を混合してもよい。
【0054】
本発明の樹脂組成物が2種類以上の本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂を含む場合、本発明の樹脂と本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂との合計量100重量部に対する本発明の樹脂の含有量は、相溶性及び工業上の観点から通常0.05〜50重量部、好ましくは1〜40重量部である。本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂との合計量100重量部に対し1重量部以上である場合には、加工性が向上する傾向があり、また、本発明の樹脂の含有量が本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂との合計量100重量部に対して50重量部以下である場合には、加工性と経済性の面から好ましい。
【0055】
(本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂とフィラーとの相溶化剤)
また、本発明の樹脂は本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂とフィラーとの相溶化剤として好適に用いられる。本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては上記と同じものが挙げられる。また、フィラーとしては上記と同じものが挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物が本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂及びフィラーを含む場合、本発明の樹脂と本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂とフィラーとの合計量100重量部に対する本発明の樹脂の含有量は、相溶性及び工業上の観点から通常0.05〜50重量部、好ましくは1〜40重量部である。本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂とフィラーとの合計量100重量部に対し1重量部以上である場合には、加工性が向上する傾向があり、また、本発明の樹脂の含有量が本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂とフィラーとの合計量100重量部に対して50重量部以下である場合には、加工性と経済性の面から好ましい。
【0057】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、本発明の樹脂、本発明の樹脂とは異なるその他の樹脂、必要により上記フィラー及び上記その他の添加剤等とをドライブレンドした後、溶融混練装置{バッチ混練機(反応槽等)、連続混練機〔FCM[商品名、Farrel(株)製]、LCM[商品名、(株)神戸製鋼所製]、CIM[商品名、(株)日本製鋼所製]等〕、単軸押出機、二軸押出機等}を使用して混練する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。例中の部及び%は、特に断らないかぎり重量基準を意味する。
【0059】
以下の実施例において、物性測定は以下の方法で行った。
(1)単位含有率
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、下記条件にて測定した1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。 具体的には、13C−NMRスペクトルにおいて、プロピレンに由来する単位のメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテンに由来する単位のメチル炭素のスペクトル強度との比からプロピレンに由来する単位と1−ブテンに由来する単位の組成比を算出し、次に、1H−NMRスペクトルにおいて、メチン単位とメチレン単位由来の水素のスペクトル強度とメチル単位由来の水素のスペクトル強度との比から、エチレンに由来する単位とプロピレンに由来する単位と1−ブテンに由来する単位との組成比を算出した。
13C−NMR(Hデカップリング)
13C周波数:150.9MHz
パルス幅:6.00μ秒
パルス繰り返し時間:4.0秒
積算回数:256回
測定温度:137℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン−d4(濃度 約20%)
【0060】
(2)重合体(1)の分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定を行った。
装置:東ソー HLC−8220GPC
カラム:TSKgel MultiporeHXL−M×3本、
TSKguardcolumn
溶媒:テトラヒドロフラン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:2mg/ml
測定注入量:100μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0061】
(3)重合体(1)以外の試料の分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定を行った。
装置:東ソー社製 HLC−8121GPC/HT
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−H(S)HT 4本
温度:145℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:300μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0062】
(3)グラフト量
グラフト量は核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製 商品名JNM−ECA400)を用いて、下記条件にて測定した1H−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。
H−NMR
共鳴周波数:400MHz
パルス幅:11.4μ秒
パルス繰り返し時間:2.2秒
積算回数:256回
測定温度:130℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン−d4(濃度 約5%)
【0063】
(4)酸価
酸価は試料500mgにキシレン50gを加えて溶解し、1mLの水を加えて140℃で1時間還流した後室温に戻し、過剰の水酸化カリウムエタノール溶液を加えた後、塩酸で逆滴定を行って求めた。
【0064】
<ポリオレフィン(1)の製造例>
容量2lのセパラブルフラスコに、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流冷却管をつけてフラスコ内を減圧した後、窒素で置換した。フラスコ内に乾燥したトルエン1lを重合溶媒として導入した。ここにプロピレン8NL/min、1−ブテン0.5NL/minを常圧にて連続フィードし、溶媒温度を30℃とした。トリイソブチルアルミニウム1.25mmolを添加した後、重合触媒としてジメチルシリル(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド0.005mmolを添加した。その後トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.025mmolを添加した。30分間経過後、プロピレン含有量が96mol%のプロピレン−1−ブテン共重合体[ポリオレフィン(1)]155.8gが得られた。ポリオレフィン(1)のMwは445108、Mnは192001であった。
【0065】
<反応物(1)の製造例>
容量1lのセパラブルフラスコに、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流冷却管をつけて、フラスコ内を窒素で置換した。ここに溶媒としてキシレン387部、ポリオレフィン(1)100部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下「HEMA」という場合がある。)25部を添加し140℃に加熱、撹拌し、溶解させた後、ジ−tert−ブチルパーオキサイド2部を添加し、5時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、アセトン1000部中に投じ、沈殿した白色固体を濾取した。該固体をアセトンで洗浄後、減圧乾燥した結果、HEMAをポリオレフィンにグラフト重合してなる重合体[反応物(1)]を得た。反応物(1)のMwは280585、Mnは151562、H−NMRで測定したHEMAグラフト量は0.8%であった。
【0066】
<重合体(1)の製造例>
容量1lのセパラブルフラスコに、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流冷却管をつけてフラスコ内を窒素で置換した。ここにキシレン100部、無水マレイン酸50部を添加し140℃に加熱、撹拌し、溶解させた後、ジ−tert−ブチルパーオキサイド10部を2時間かけて滴下し、5時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却すると淡黄色の重合物が沈澱した。上ずみのキシレンを分離した後、減圧乾燥した結果、無水マレイン酸重合体[重合体(1)]を得た。重合体(1)のMwは658、Mnは506であった。
【0067】
<実施例1:本発明の樹脂(1)の製造例>
容量500mlのセパラブルフラスコに、攪拌器、温度計、還流冷却管をつけて、フラスコ内を窒素で置換した。ここに溶媒としてキシレン616部、反応物(1)100部、重合体(1)50部を添加し140℃に加熱、撹拌し、溶解させた後、オクチル酸スズ0.2部を加えて8時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、アセトン1000部に投じ、沈殿した固体を濾取した。該固体をアセトンで洗浄後、減圧乾燥した結果、樹脂[本発明の樹脂(1)]を得た。本発明の樹脂(1)のMwは376052、Mnは130678、酸価は24mgKOH/gであった。
【0068】
<実施例2:本発明の樹脂(2)の製造例>
重合体(1)の仕込み量を50部から5部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、樹脂[本発明の樹脂(2)]を得た。本発明の樹脂(2)のMwは348658、Mnは162761、酸価は15mgKOH/gであった。
【0069】
<実施例3〜4>
表1に示す成分を示された量で混合し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で200℃、5分間溶融混練したのち、成形して樹脂組成物を得る。
【0070】
なお、表中の略号の意味は以下の通りである。
プロピレンBP:プロピレン−エチレンブロックコポリマー
【0071】
樹脂組成物について、引張強さを、JASO(日本自動車技術会)D 611に準拠して測定することが出来る。加工性は、ラボプラストミルのトルクにより評価することができる。得られた樹脂組成物は機械物性が良好であることが確認できる。
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の樹脂は、相溶化剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される樹脂。

(式(1)中、Pは、ポリオレフィンセグメントを表す。
は、水素原子又はメチル基を表す。
は、−NH−又は−O−を表す。
は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
mは、1以上の整数を表す。
nは、1以上の整数を表す。
m及びnが1である場合、Qは、不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントを表す。
m及び/又はnが2以上である場合、複数のQは、それぞれ独立に、水素原子又は不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントを表し、複数のQのうち少なくとも1つは不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントを表す。)
【請求項2】
が、主鎖に炭素数2〜20のオレフィンに由来する単位を有するセグメントである請求項1記載の樹脂。
【請求項3】
が、主鎖にエチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する単位を有するセグメントである請求項1又は2記載の樹脂。
【請求項4】
不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有するセグメントが、無水マレイン酸に由来する単位を有するセグメントである請求項1〜3のいずれかの請求項記載の樹脂。
【請求項5】
ポリオレフィンと、式(2)で表される化合物とを反応させて反応物を得て、得られた反応物と不飽和カルボン酸無水物に由来する単位を有する重合体とを反応させて樹脂を得ることを特徴とする樹脂の製造方法。

(式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、−NH−又は−O−を表す。
は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの請求項記載の樹脂と、前記樹脂とは異なるその他の樹脂とを含む組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの請求項記載の樹脂を含む相溶化剤。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかの請求項記載の樹脂を含む、熱可塑性樹脂とフィラーとを相溶化させる相溶化剤。

【公開番号】特開2013−95771(P2013−95771A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236837(P2011−236837)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】