説明

橋桁支承取替え工法

【課題】 橋桁直下での仮受けを行うのに欠け落ちせん断耐力が足りないような場合でも、橋桁梁の補強が迅速・容易に行え、その結果、ブラケットの取付けを用いることなく、簡単かつ安価に施工が可能なものである。
【解決手段】 橋脚梁1上に設置した仮受けジャッキ3で桁扛上を行う橋桁支承取替え工法において、橋脚梁1の横断方向に端部に支圧板10を取付けた緊結用鋼材8を配設し、前記緊結用鋼材8を緊張しながら、橋脚梁1上に仮受けジャッキ3を設置して橋桁2を仮受けする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋桁支承取替え工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼製沓から免震ゴム沓への取り替えや、また、ゴム支承において、外気温や湿度の変化、日照熱、風雨、雪、氷などにより、ゴム体劣化を生じた免震ゴム沓同士の取り替えなどで橋桁支承を取替えるには、図6に示すように橋脚梁1上に仮受けジャッキ3を設置して橋桁2の桁扛上をこの仮受けジャッキ3で行い、その間に新設の橋桁支承4を配設し、その後、橋桁2の荷重を橋桁支承4に移行する。
【0003】このような橋桁2の仮受けを橋桁2の直下で行うには、仮受け荷重に対する橋脚梁1の欠け落ちが起こらないように欠け落ちせん断耐力を照査する必要があり、照査の結果、所定せん断耐力がないことが心配される場合は、その対策が必要となる。
【0004】従来技術では、その対策として図7に示すように橋桁2の両側面にブラケット5を取付け、このブラケット5で仮受け全荷重を2等分して支持することで、1仮受点当たりの作用荷重を軽減するブラケット方式が採用されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし前記ブラケット方式では、橋脚梁1上は狭隘で、クレーン等の重機の使用が困難であり、そのため、ブラケットの取付け、撤去は人力作業となるので多大な労力、時間、費用を要する。
【0006】また、橋桁2の側面(ウェブ)には、通信や信号用ケーブル、点検用歩廊、排水パイプなどが添架されており、ブラケット5の取付にはこれら添架物の撤去や復旧を要する。しかも、ブラケットの取付け孔(ボルト孔)を橋桁2にあける必要があり、橋桁2の強度低下が生じる。
【0007】さらに、橋脚梁1の端部の橋桁仮受時は、図8に示すように仮受ジャッキ受台6を橋脚梁1の端部に取付ける必要が生じてしまう。
【0008】本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、橋桁直下での仮受けを行うのに欠け落ちせん断耐力が足りないような場合でも、橋桁梁の補強が迅速・容易に行え、その結果、ブラケットの取付けを用いることなく、簡単かつ安価に施工できる橋桁支承取替え工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するため、第1に、橋脚梁上に設置した仮受けジャッキで桁扛上を行う橋桁支承取替え工法において、橋脚梁横断方向に端部に支圧板を取付けた緊結用鋼材を配設し、前記緊結用鋼材を緊張しながら、橋脚梁上に仮受けジャッキを設置して橋桁を仮受けすること、第2に、緊結用鋼材は橋脚梁横断方向に水平貫通孔を設けて挿入し、緊張後水平貫通孔の間隙を無収縮モルタルで充填すること、または、緊結用鋼材は橋脚梁横方向に途中までの孔を設けて挿入し、樹脂定着をさせることを要旨とするものである。
【0010】請求項1および請求項2記載の本発明によれば、緊結用鋼材が支圧板を介してのその締付け力で橋脚梁側面の変位を拘束して橋脚梁の欠け落ちせん断耐力を補強するので、橋桁直下での仮受けが可能となる。
【0011】請求項3記載の本発明によれば、前記作用に加えて、1つの橋脚梁に2支承線があり、両支承線とも順次に取り替える場合や、橋台や段差を有する橋脚梁など水平貫通孔の設置が不可能な場合でも、樹脂による定着力で変位を拘束する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の橋桁支承取替え工法の第1実施形態を示す縦断正面図、図2は同上要部の側面図で、図中1は橋脚梁、2は橋桁、16は桁補強材、3は橋脚梁1上に設置する仮受けジャッキ、4は新設の橋桁支承を示す。
【0013】本発明は、橋脚梁1の横断方向に水平貫通孔7を穿設し、その中にPC鋼棒等の緊結用鋼材8を挿入する。なお、緊結用鋼材8の両端部にはネジ切りを設けておき、ナット9等を螺合して締付けが可能となる構造とする。
【0014】鋼板による支圧板10を水平貫通孔7から出る緊結用鋼材8の両端に設置し、緊結用鋼材8をセンターホールジャッキなどで締付け、支圧板10をナット9等で固定する。なお、ナット9は緩みを防止するために、ダブルナットとしたり、割ピン付きを使用する。図中11は座金であるが、振動の大きい個所ではスプリングタイプの座金を使用する。
【0015】水平貫通孔7内の間隙には無収縮モルタル12を充填する。図2中、αは支圧板10の幅、βは高さである。
【0016】このようにして、緊結用鋼材8の端部に支圧板10を取付けて橋脚梁1側面の変位を拘束する。この補強の考え方は以下の通りである。
【0017】図5は左は補強なし、右は補強時(本発明)であるが 仮受け荷重を(P)、橋脚梁1の欠け落ちせん断耐力を(Sa )、変位を拘束するために導入するプレスト力を(Pr )とする。ここで、図6に示すように、P<(Sa+Pr)/√2となる。Prを導入することで、橋脚梁の全欠け落ちせん断耐力は増加し、補強ができる。
【0018】補強後に、橋脚梁1上に受台15および仮受けジャッキ3を設置して橋桁2を扛上して仮受けする。そして、古い橋桁支承を撤去し、新設の橋桁支承4を設置してこれに橋桁2の荷重を移行する。図中13は橋桁支承4設置のアンカーボルト、14は橋桁支承4のソールプレートである。
【0019】図3は本発明の第2実施形態を示すもので、橋脚梁1の穿設する横断方向の水平孔17は橋脚梁1の途中までの孔とし、この水平孔17に異形鋼棒アンカー等の緊結用鋼材18を挿入する。
【0020】緊結用鋼材18は水平孔17にエポキシ樹脂等の樹脂19を充填して樹脂定着をさせ、水平孔17から出る一方の端部には緊張後支圧板10をナット9等で固定する。
【0021】本実施形態は、1つの橋脚梁に2支承線があり、両支承線とも順次に取り替える場合や、橋台や段差を有する橋脚梁など水平貫通孔の設置が不可能な場合でも、樹脂19による定着力で緊結用鋼材18を緊張させ、橋脚梁1の側面の変位を拘束する。
【0022】
【発明の効果】以上述べたように本発明の橋桁支承取替え工法は、橋桁直下での仮受けを行うのに欠け落ちせん断耐力が足りないような場合でも、橋桁梁の補強が迅速・容易に行え、その結果、ブラケットの取付けを用いることなく、簡単かつ安価に施工が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の橋桁支承取替え工法の第1実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の橋桁支承取替え工法の第1実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明の橋桁支承取替え工法の第2実施形態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の橋桁支承取替え工法の第2実施形態の応用例を示す説明図である。
【図5】本発明と補強なしの場合の比較の説明図である。
【図6】橋桁支承取替え工法の概念説明図である。
【図7】従来例を示す側面図である。
【図8】他の従来例を示す側面図である。
【符号の説明】
1…橋脚梁 2…橋桁
3…仮受けジャッキ 4…橋桁支承
5…ブラケット 6…仮受ジャッキ受台
7…水平貫通孔 8…緊結用鋼材
9…ナット 10…支圧板
11…座金 12…無収縮モルタル
13…アンカーボルト 14…ソールプレート
15…受台 16…桁補強材
17…水平孔 18…緊結用鋼材
19…樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】 橋脚梁上に設置した仮受けジャッキで桁扛上を行う橋桁支承取替え工法において、橋脚梁横断方向に端部に支圧板を取付けた緊結用鋼材を配設し、前記緊結用鋼材を緊張しながら、橋脚梁上に仮受けジャッキを設置して橋桁を仮受けすることを特徴とした橋桁支承取替え工法。
【請求項2】 緊結用鋼材は橋脚梁横断方向に水平貫通孔を設けて挿入し、緊張後水平貫通孔の間隙を無収縮モルタルで充填する請求項1記載の橋桁支承取替え工法。
【請求項3】 緊結用鋼材は橋脚梁横方向に途中までの孔を設けて挿入し、樹脂定着をさせる請求項1記載の橋桁支承取替え工法。

【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−295222(P2001−295222A)
【公開日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−116413(P2000−116413)
【出願日】平成12年4月18日(2000.4.18)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】