説明

橋梁の張出し架設工法とこれに用いる仮斜材の定着構造

【課題】 仮支柱と仮斜材を用いた橋梁の張出し架設工法において、仮斜材がそのコンクリートとの定着部において、仮斜材に作用する左右の張力差によって滑らず、かつ、コストアップとなる定着体を必要としない構造とする。
【解決手段】 橋脚2の柱頭部2aに仮支柱3を立設し、仮支柱3に支持した仮斜材4により橋脚2から左右に張り出す先端の橋体ブロックを片持ち支持する橋梁の張出し架設工法において、仮支柱3の柱頭部10に予めPC鋼材からなる仮斜材4を配置したうえ、仮斜材4の周りにコンクリート13を打設することにより、該コンクリート13との付着力により仮斜材4をコンクリート13に定着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の張出し架設工法とこれに用いる仮斜材の定着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の張出し架設を行なう場合、柱頭部から左右にバランスをとりながら橋体ブロックを張り出して行くが、この場合、既設の橋体ブロックを橋脚によって片持ち保持する必要があり、その片持ち手段として(1)片持ちPC鋼材の仮設しプレストレスを導入する工法と、(2)仮斜材を用いるピロン工法とがある。(1)の片持ち工法の場合は、完成形のプレストレス導入用のPC鋼材の配置と違う片持ち用のPC鋼材の配置、そしてプレストレスの導入の多数工程が必要になる。すなわち、上床版の内またはその近傍へのPC鋼材の配置が必要となる。特開2004−68332号に開示の技術などは、上床版に配置した例である。
【0003】
また、(2)のピロン工法は、図4に示すように、橋梁1の張り出し施工中に橋脚1上または橋台等にピロン支柱と呼ばれる仮支柱3を設置し、仮支柱3の両側にPC鋼材からなる斜め吊材(仮斜材という)4を設置して、斜材5や上床版6や下床版7からなる橋体ブロック8を順次張り出しながら橋梁を架設していく方法である。橋体ブロックは箱桁で構成する場合もある。
【0004】
このピロン工法において、仮支柱3の柱頭部10に仮斜材4を定着する方法として、図5に示す交差定着方式と、図6に示す偏向管を用いたサドル方式がある。図5の交差定着方式では、橋脚2の柱頭部ブロック9から立設した仮支柱3の頂部に支保工11を組み、その支持床版12の上に型枠を組んでコンクリート13を打設し、このコンクリート13に鋼管(シース)14を斜めに交差して埋設すると共に、その端部に定着体15を設け、架設先端の橋体ブロックに端部を固着した仮斜材(PC鋼材)4の端部を鋼管14に挿入した上、その先端部を定着体15にナット16などで定着するものである。
【0005】
また、図6の偏向管を用いたサドル方式は、前記と同じ仮支柱3の頂部に構築した支保工11における支持床版12の上に型枠を組み、かつ、中央でベンドされた偏向管17をセットしてコンクリート13を打設し、コンクリート13が硬化した後、前記偏向管17に仮斜
材(PC鋼材)4の中間部を挿入し、偏向管17から引き出した仮斜材(PC鋼材)4の両端は、橋脚から両側に張り出し施工される左右の架設先端の橋体ブロックに固着されるものである。
【特許文献1】特開2004−68332号公報
【特許文献2】特開2001−348815号公報
【特許文献3】特開2002−4225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
橋脚に立設した仮支柱にPC鋼材を用いた仮斜材で架設先端の橋体ブロックを片持ち支持する橋梁の張出し架設工法において、(1)の交差定着方式では、橋の中央部に仮斜材(PC鋼材)のための定着具が必要であり、コストアップにつながるという問題がある。また、(2)のサドル方式では、偏向管の中に仮斜材(PC鋼材)を挿通しているので架設中や大地震時に発生する左右の仮斜材の張力差によって生じる水平力により、サドル頂部で仮斜材が滑り、片持ち機能が失われる可能性がある。
【0007】
本発明は、橋脚の両側に張出し架設する橋体ブロックを片持ち支持する仮斜材が、該仮斜材に作用する左右の張力差によって滑らず、かつ、仮斜材の定着部において、コストアップとなる定着体を必要としない仮支柱と仮斜材を用いた橋梁の張出し架設工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、次のように構成する。
【0009】
第1の発明は、橋梁の張出し架設工法に用いられる仮斜材の定着構造において、橋脚の柱頭部に仮支柱を設置すると共に、仮斜材を左右に張り出す橋体ブロックと前記仮支柱の頂部に渡って配置し、仮斜材の頂部の周りにコンクリートを打設することを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1に発明において、仮斜材が仮支柱頂部のコンクリート内で山形に配置され、コンクリートの付着力により仮斜材をコンクリートに定着するすることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、橋梁の張出し架設工法において、橋脚の柱頭部に仮支柱を設置し、PC鋼材で該柱頭部に固定すると共に、仮支柱を左右に張り出す橋体ブロックと前記仮支柱の頂部に渡って配置し、型枠を組む、仮斜材の頂部の周りに付着を補償する大きさのコンクリートを打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、仮斜材の定着構造として、支柱頂部に予め、前記仮斜材を配置し、周りにコンクリートを打設することにより、仮斜材がコンクリートとの付着力により該コンクリートに定着一体化しているので、(1)従来の交差定着方式で使用する仮支柱(ピロン支柱)側の定着が不要となり、この点でコスト削減となる。(2)従来のサドル方式で使用する偏向管の材料が不要となり、この点でもコスト削減となる。(3)従来のサドル方式の場合、仮設中や大地震時に発生する左右の仮斜材の張力差によって生じる水平力により、サドル頂部でPC鋼材が滑る可能性があるが、本発明によりその滑りを防止することが可能になり、仮斜材の滑りによる片持ち機能喪失の危険性を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る橋梁の張出し架設工法を実施するための仮支柱と仮斜材の正面図と側面図である。
【0015】
各図において、橋脚2の柱頭部2aにおける橋梁1から仮支柱(ピロン支柱)3が立ち上がっている。仮支柱3は、支柱脚部18を柱頭部2aの上面に設置し、支柱脚部18から上方に鋼管をトラスを組んで所定の高さに立ち上げて構成する。仮支柱3の支柱頂部10には支保工11が設置される。支保工11は、高さ調整ジャッキ19と、該高さ調整ジャッキ19によって高さ調整自在に支持される支持床版12と、該支持床版12上に設置される定盤20と該定盤20を取囲むように設置される側板型枠(図示を省略する)とから構成される。
【0016】
図において、定盤20上には矩形体のコンクリート13が構築されており、該矩形体のコンクリート13に、PC鋼材からなる仮斜材4を埋設することにより、仮斜材4が矩形体のコンクリート13に定着されている。すなわち、仮斜材4は、正面から見て中間が山頂部21となった山形をなすように埋設されていて、仮斜材4は、この山頂部21の両側から下り傾斜して橋軸方向に伸び、コンクリート13の橋軸側の両側面22から外部に引き出されたうえ、既設の橋体ブロックの先端ブロックに向けて伸長している。なお、図1では、斜材5の上下にプレキャストコンクリート等の上床版6と下床版7を設置してなる橋体ブロックを張出しながら橋梁1を構築している例を示している。
【0017】
仮支柱3の柱頭部10において、仮斜材4とコンクリート13は、コンクリート躯体内部に埋設した仮斜材4からコンクリートを破壊するような応力を受けるので、該コンクリート13は、仮斜材4のコンクリート躯体への付着破壊を補償する大きさを有した構造とするものである。さらに、コンクリート13と支持床版12を貫通して固定用PC鋼材23を垂下し、その下端部24を橋脚2の柱頭部ブロック9に定着し、固定用PC鋼材23も上端部材は、コンクリート13の上面において定着ナット25で該コンクリート13に定着している。
【0018】
仮斜材(PC鋼材)4には、PC鋼より線に高密度ポリエチレン被覆が施された高付着タイプのPC鋼材が用いられる。
【0019】
本発明の仮支柱を用いた斜吊り工法における支柱頂部の仮斜材4の定着構造の施工手順を説明する。
【0020】
1.橋脚2の柱頭部2aに仮支柱3を設置し、その柱頭部10に支保工11を施工する。
2.定盤20上に補強鉄筋(PC鋼材)を組み立てる(図示省略)。
3.前記補強鉄筋を介して、PC鋼材からなる仮斜材4を側面が山形になるように配置する。仮斜材4は、中心から橋桁幅方向の左右に3本づつのPC鋼材を配置し、PC鋼材の両端部は所定の長さ橋軸方向に延長しておく。なお、支保工11は、支持床版12の上に構築したコンクリート13に定着の仮斜材(PC鋼材)4の押し下げ力を受けて仮支柱3の柱頭部10に固定される。
4.支持床版12の上面において補強鉄筋を取囲むように型枠(図示省略)を立込み、かつ仮斜材4を型枠を貫通して外方に引き出す。
5.型枠内にコンクリート13を打設する。
6.コンクリート13が硬化することで、PC鋼材からなる仮斜材4はコンクリート13に定着するので、その後、型枠を離型する。
7.コンクリート13を上下に貫通して固定用PC鋼材23を設け、該固定用PC鋼材23の上端に設けたネジ部をコンクリート13の上面に突出させ、該ネジ部に定着ナット25を螺合して定着する。固定用PC鋼材23は、コンクリート13と支持床版12を貫通して垂下し、その下端部22を橋脚2の柱頭部ブロック9に定着して施工は完了する。
【0021】
所定本数のPC鋼材からなる仮斜材4を仮支柱3の柱頭部10に定着した後、各仮斜材4により張り出し施工中の先端の橋体ブロックを片持ち支持する。なお、橋脚2の側から上下床版6、7を斜材5で連結してなる橋体ブロックの第1ブロック〜第4ブロックまでは架設ケーブル(上床版内に配置)を配置緊張しながら張出し施工を行ない、その後、第5、第6、第7ブロック・・は、仮支柱3の柱頭部10に立てられた支保工11のコンクリート13に定着されたPC鋼材からなる仮斜材4で片持ち支持しながら張り出し施工を行なう。
【0022】
また、PC鋼材からなる仮斜材4をコンクリート13の打設の前に所定角度の山形部となるように設置する際、左右に張出して行く橋桁のセンターとなる位置に仮斜材4の山頂部21を持っていき、第5、第6、第7の各橋体ブロックの定着位置・・に向うようにPC鋼材(仮斜材4)の角度を決め、該仮斜材4がコンクリート13と一体となるように裸のまま位置決めされてコンクリート打設する。
【0023】
また、ワーゲンを使って橋体ブロックを張り出して行き、仮斜材4で支持する一番手前のブロック(つまり、上の説明における第5ブロック)の下端に突起を設け、仮斜材4をその突起部分(図示省略)に配置し床版コンクリートを打設する。第5ブロックの床版コンクリートを打設した後、床版内にPC鋼材を挿通して緊張し、次の橋体ブロックの構築に移る。床版内に挿通するPC鋼材の緊張は、橋脚2の左右の張り出し先端を同時に行なう。
【0024】
以上のように、本実施形態によると、仮支柱と仮斜材を用いた橋梁の張出し架設工法において、仮支柱3の柱頭部10のコンクリート13とPC鋼材からなる仮斜材4とが定着一体化しているので、仮設中や大地震時に発生する左右の仮斜材4の張力差によって生じる水平力によっても、山頂部21で仮斜材(PC鋼材)4が滑るのを防止することが可能となる。加えて、従来の交差定着方式で使用する仮支柱(ピロン支柱)側の定着が不要となり、この点でコスト削減となり、また、サドル方式で使用する偏向管の材料が不要となり、この点でもコスト削減となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る仮支柱と仮斜材を用いた橋梁の張出し架設工法を実施している形態を示す側面図である。
【図2】(a)は、図1における仮支柱とその柱頭部における仮斜材の定着構造を示す正面図、(b)は、図1(a)のA部の詳細図である。
【図3】図1(a)の側面図である。
【図4】従来の仮支柱と仮斜材を用いた橋梁の張出し架設工法を実施している形態を示す正面図である。
【図5】(a)は、図4における仮支柱とその柱頭部における仮斜材の定着構造の第1従来例を示す正面図、(b)は、図5(a)のB部の詳細図である。
【図6】(a)は、図4における仮支柱とその柱頭部における仮斜材の定着構造の第1従来例を示す正面図、(b)は、図6(a)のC部の詳細図である。
【符号の説明】
【0026】
1 橋梁
2 橋脚
2a 柱頭部
3 仮支柱
4 仮斜材
5 斜材
6 上床版
7 下床版
8 橋体ブロック
9 柱頭部ブロック
10 柱頭部
11 支保工
12 支持床版
13 コンクリート
14 鋼管
15 定着体
16 ナット
17 偏向管
18 支柱脚部
19 高さ調整ジャッキ
20 定盤
21 山頂部
22 コンクリートの両側面
23 固定用PC鋼材
24 PC鋼材の下端
25 定着ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の張出し架設工法に用いられる仮斜材の定着構造において、橋脚の柱頭部に仮支柱を設置すると共に、仮斜材を左右に張り出す橋体ブロックと前記仮支柱の頂部に渡って配置し、仮斜材の頂部の周りにコンクリートを打設することを特徴とする橋梁の張出し架設工法における仮斜材の定着構造。
【請求項2】
仮斜材が仮支柱頂部のコンクリート内で山形に配置され、コンクリートの付着力により仮斜材をコンクリートに定着する請求項1記載の仮斜材の定着構造。
【請求項3】
橋梁の張出し架設工法において、橋脚の柱頭部に仮支柱を設置し、PC鋼材で該柱頭部に固定すると共に、仮支柱を左右に張り出す橋体ブロックと前記仮支柱の頂部に渡って山形に配置し、型枠を組む、仮斜材の頂部の周りに付着を補償する大きさのコンクリートを打設することを特徴とする橋梁の張出し架設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−52573(P2006−52573A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234369(P2004−234369)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】