説明

橋梁の洗掘判定装置とその洗掘判定プログラム及び橋梁の洗掘判定表

【課題】洗掘災害の発生する危険性のある橋梁を効率的に簡易に抽出することができる橋梁の洗掘判定装置とその洗掘判定プログラム及び橋梁の洗掘判定表を提供する。
【解決手段】洗掘判定装置1は、洗掘の危険性のある橋梁を判定する装置である。判定項目/点数記憶部2は、洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目とこの判定項目毎の点数とを記憶する。合計点演算部5は、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について各判定項目の点数を加算して合計点を演算する。判定部7は、合計点演算部5が演算した合計点に基づいて、判定の対象となる橋梁の安全性を判定する。判定部7は、合計点演算部5が演算した合計点と、しきい値記憶部6が記憶するしきい値とを比較し、合計点がしきい値を下回るときには洗掘の危険性があると判定し、合計点がしきい値を上回るときには健全であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗掘の危険性のある橋梁を判定する橋梁の洗掘判定装置とその洗掘判定プログラム、及び洗掘の危険性のある橋梁を判定するときに使用される橋梁の洗掘判定表に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、河川橋梁における洗掘災害を防ぐために、橋梁の状態を確認するための定期的な検査を行うとともに、必要な箇所への対策工の施工や運転規制を実施している。ここで、洗掘とは、川底を流れる水によって橋梁の橋脚の上流側の川底が掘られる現象をいう。一般に、橋梁検査は、目視による外観検査(全般検査)と、この外観検査から抽出した橋梁について行う詳細な検査(個別検査)とに分けられる。個別検査では、洗掘の危険性のある橋梁に対して対策の要否など必要な措置の検討も行う。ここで、洗掘災害を防止するためには、全般検査の段階で「洗掘を受けやすい橋梁」を精度良く抽出する手法が必要となる。しかし、従来の橋梁検査では、現場技術者の経験と判断に委ねられているため、抽出されるべき橋梁が詳細検査の対象とならず、洗掘の危険性のある橋梁を的確に抽出することが困難である問題点があった。このような目視による全般検査や個別検査の手間を省くために、橋梁の橋脚周囲における河床洗掘現象を監視する橋脚洗掘監視装置が提案されている。
【0003】
従来の橋脚洗掘監視装置は、河床土に下端部が埋設される検知本体と、この検知本体の長さ方向に間隔をあけて、河床土中に埋設される位置に配置されるセンサホルダと、このセンサホルダ内に支持される感応板と、この感応板の内側に取り付けられたAEセンサなどを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の橋脚洗掘監視装置では、洗掘が進行するに従ってAEセンサが順次露出してAEセンサの出力信号が変化するため、このAEセンサの出力信号の変化に基づいて洗掘の状態を判定している。
【0004】
【特許文献1】特開平11-351867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の橋脚洗掘監視装置では、橋梁の全ての橋脚に設置する必要があり、設置作業に手間がかかりコストが高くなる問題がある。また、従来の橋脚洗掘監視装置では、河川が増水したようなときに検知本体などに土砂や岩などが衝突して破損するおそれがあり、定期的にメンテナンス作業などを実施しなければならない問題点がある。さらに、従来の橋脚洗掘装置では、洗掘の危険性のある橋梁であるか否かを事前に判断してから設置する必要があり、洗掘の危険性が低いにも関わらず誤った判断がされた場合には、設置が無駄になってしまう問題点がある。
【0006】
この発明の課題は、洗掘災害の発生する危険性のある橋梁を効率的に簡易に抽出することができる橋梁の洗掘判定装置とその洗掘判定プログラム及び橋梁の洗掘判定表を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、洗掘の危険性のある橋梁を判定する橋梁の洗掘判定装置であって、洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目の点数を、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について加算して合計点を演算する演算手段(5)と、前記演算手段が演算した合計点に基づいて、前記判定の対象となる橋梁の安全性を判定する判定手段(7)とを備える橋梁の洗掘判定装置(1)である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の橋梁の洗掘判定装置において、前記演算手段は、河川の環境条件、前記橋梁の構造条件及び前記橋梁の防護条件が前記判定項目であるときに、前記判定の対象となる橋梁に該当する各判定項目の点数を加算することを特徴とする橋梁の洗掘判定装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の橋梁の洗掘判定装置において、前記判定手段は、前記判定の対象となる橋梁が橋脚を有するときにこの橋脚の安全性を判定することを特徴とする橋梁の洗掘判定装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の橋梁の洗掘判定装置において、前記判定項目とこの判定項目毎の点数とを記憶する記憶手段(8)を備えることを特徴とする橋梁の洗掘判定装置である。
【0011】
請求項5の発明は、洗掘の危険性のある橋梁を判定するための橋梁の洗掘判定プログラムであって、洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目の点数を、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について加算して合計点を演算する演算手順(S150)と、前記演算手順において演算した合計点に基づいて、前記判定の対象となる橋梁の安全性を判定する判定手順(S170)とをコンピュータ(13)に実行させる橋梁の洗掘判定プログラムである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の橋梁の洗掘判定プログラムにおいて、前記演算手順は、河川の環境条件、前記橋梁の構造条件及び前記橋梁の防護条件が前記判定項目であるときに、前記判定の対象となる橋梁に該当する各判定項目の点数を加算する手順を含むことを特徴とする橋梁の洗掘判定プログラムである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載の橋梁の洗掘判定プログラムにおいて、前記判定手順は、前記判定の対象となる橋梁が橋脚を有するときにこの橋脚の安全性を判定する手順を含むことを特徴とする橋梁の洗掘判定プログラムである。
【0014】
請求項8の発明は、洗掘の危険性のある橋梁を判定するときに使用される橋梁の洗掘判定表であって、洗掘の危険性を判定する際に基準となる判定項目とこの判定項目毎の点数とを表示する判定項目/点数表示部(14b)を備えることを特徴とする橋梁の洗掘判定表(14)である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の橋梁の洗掘判定表において、前記各判定項目の点数の合計点から判定の対象となる橋梁の安全性を判定するために、この安全性の判定の基準となるしきい値を表示するしきい値表示部(14c)を備えることを特徴とする橋梁の洗掘判定表である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の橋梁の洗掘判定表において、前記判定項目/点数表示部は、河川の環境条件、前記橋梁の構造条件及び前記橋梁の防護条件を前記判定項目として表示することを特徴とする橋梁の洗掘判定表である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、洗掘災害の発生する危険性のある橋梁を効率的に簡易に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の構成図である。
図1に示す洗掘判定装置1は、洗掘の危険性のある橋梁を判定する装置である。洗掘判定装置1は、洗掘の危険性を判定する際に基準となる判定項目を画面上に表示し、これらの判定項目のうち判定の対象となる橋梁に該当する判定項目を利用者に選択させ、各判定項目の点数を集計してこの判定の対象となる橋梁の安全性を自動的に判定する。洗掘判定装置1は、橋梁が存在する現場に利用者が簡便に持ち運び利用可能なように携帯可能な構造である。洗掘判定装置1は、図1に示すように、判定項目/点数記憶部2と、判定項目表示部3と、判定項目選択部4と、合計点演算部5と、しきい値記憶部6と、判定部7と、判定結果記憶部8と、判定結果通知部9と、プログラム記憶部10と、電源部11と、情報入出力部12と、制御部13などを備えている。
【0019】
図2は、この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の判定項目/点数記憶部のデータ構造を一例として示す模式図である。
判定項目/点数記憶部2は、洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目とこの判定項目毎の点数とを記憶する手段である。判定項目/点数記憶部2は、図2に示すように、河川の環境条件、橋梁の構造条件及び橋梁の防護条件を判定項目情報として記憶するとともに、各判定項目の点数を点数情報として記憶するメモリである。判定項目/点数記憶部2は、洗掘災害を受けた橋梁の過去の災害事例から被災橋梁と河川の特徴とを整理し、洗掘に関係の大きい要因を分析して、河川の環境条件、橋梁の構造条件及び橋梁の防護条件の3つの分類を判定項目情報として記憶している。判定項目/点数記憶部2は、洗掘災害との関係の強さや作業性を考慮して定めた判定項目と、この判定項目毎に経験的に配点した点数とを、現地での試行により適宜修正して判定項目情報及び点数情報として記憶している。
【0020】
図2に示す河川の環境条件は、河川特有のものであって橋脚毎には変わらない条件であり、地形、河川幅の狭窄、河床材料、河床全体の低下などを要因として抽出している。橋梁(橋脚)の構造条件は、河川の湾曲に対する橋脚の位置、河川敷に対する橋脚の位置、下流方の落差、根入比、岩着などを要因として抽出している。橋梁の防護条件は、防護工の有無、かご工、ブロック工、はかま工、シートパイル工などを要因として抽出している。なお、判定項目には、河床の勾配や河床材料の粒径については、これらと相関があると思われる周辺地形や河床材料で間接的に代表させることとし、橋脚幅のように基本的に不変なものを除外している。
【0021】
図1に示す判定項目表示部3は、判定項目/点数記憶部2が記憶する判定項目を表示する手段である。判定項目表示部3は、図2に示すような判定項目を画面上に表示する表示装置である。判定項目表示部3は、判定の対象となる橋梁に該当する各要素を利用者が選択可能なように、画面上に各要素を列挙して順次表示する。
【0022】
判定項目選択部4は、判定項目/点数記憶部2が記憶する判定項目から判定の対象となる橋梁に該当する判定項目を選択する手段である。判定項目選択部4は、判定項目表示部3が表示する判定項目から判定の対象となる橋梁に該当する任意の判定項目を利用者が選択するときに操作されるタッチパネル式の操作装置などである。
【0023】
合計点演算部5は、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について各判定項目の点数を加算して合計点を演算する手段である。合計点演算部5は、該当する各判定項目の点数を加算して、この演算結果を合計点情報として制御部13に出力する。
【0024】
しきい値記憶部6は、各判定項目の点数の合計点から判定の対象となる橋梁の安全性を判定するために、この安全性の判定の基準となるしきい値を記憶する手段である。しきい値記憶部6は、洗掘に対するより詳細な調査が必要な橋梁(橋脚)と健全な橋梁(橋脚)とを分離する際に基準となるしきい値(基準値)をしきい値情報として記憶するメモリである。
【0025】
判定部7は、合計点演算部5が演算した合計点に基づいて、判定の対象となる橋梁の安全性を判定する手段である。判定部7は、判定の対象となる橋梁が橋脚を有するときにこの橋脚の安全性を判定する。判定部7は、合計点演算部5が演算した合計点と、しきい値記憶部6が記憶するしきい値とを比較し、合計点がしきい値を下回るときには判定の対象となる橋梁(橋脚)に洗掘の危険性があると判定し、合計点がしきい値を上回るときには判定の対象となる橋梁(橋脚)が健全であると判定する。判定部7は、例えば、図2に示す点数◆に該当する判定項目を利用者が選択したときには、この判定項目に該当する橋梁については合計点に関わらず要注意橋梁と判定する。判定部7は、これらの判定結果を判定結果情報として制御部13に出力する。
【0026】
判定結果記憶部8は、判定部7の判定結果を記憶する手段である。判定結果記憶部8は、判定の対象となる橋梁毎の判定結果を記憶するメモリなどである。判定結果記憶部8は、例えば、判定の対象となる橋梁毎の判定結果とともに、判定項目の選択を行った利用者及び判定日時などに関する情報を記憶する。
【0027】
判定結果通知部9は、判定部7の判定結果を通知する手段である。判定結果通知部9は、判定結果を画面上に表示する表示装置又は判定結果を音声で告知する音声発生装置などである。
【0028】
プログラム記憶部10は、洗掘の危険性のある橋梁を判定するための橋梁の洗掘判定プログラムを記憶する手段である。プログラム記憶部10は、情報記録媒体から読み取った洗掘判定プログラムや、電気通信回線を通じて取り込まれた洗掘判定プログラムなどを記憶するメモリである。
【0029】
電源部11は、洗掘判定装置1に電力を供給する手段である。電源部11は、例えば、洗掘判定装置1に着脱自在に装着され交換可能な電池などであり、図示しない電源スイッチを利用者がON操作することによって洗掘判定装置1に電力の供給を開始する。
【0030】
情報入出力部12は、外部装置との間で種々の情報を入出力させる手段である。情報入出力部12は、洗掘判定装置1側と外部装置側との間で種々の情報を入出力させるインタフェース(I/O)回路などである。情報入出力部12は、情報記録媒体、電気通信回線、キーボード及びスイッチによって判定項目情報、点数情報及びしきい値情報などの種々の情報を洗掘判定装置1側に入力させたり、判定結果情報などの種々の情報を外部装置側に出力させたりする。
【0031】
制御部13は、洗掘判定装置1の種々の動作を制御する手段(中央処理部(CPU))である。制御部13は、判定項目表示部3に判定項目の表示を指令したり、合計点演算部5に合計点の演算を指令したり、判定の対象となる橋梁の安全性の判定を判定部7に指令したり、判定結果記憶部8に判定結果の記憶を指令したり、判定結果通知部9に判定結果の通知を指令したりする。制御部13には、判定項目/点数記憶部2、判定項目表示部3、判定項目選択部4、合計点演算部5、しきい値記憶部6、判定部7、判定結果記憶部8、判定結果通知部9、プログラム記憶部10、電源部11及び情報入出力部12が相互に通信可能なように接続されている。
【0032】
図3は、この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の合計点演算部による合計点の頻度分布を一例として示すグラフである。
図3に示す横軸は点数であり、縦軸は橋脚数である。図3に示すグラフは、図2に示す判定項目及び点数によって実際の77橋脚を採点したときの合計点(評価点)の頻度分布である。ここで、図3に示す「要注意橋脚」とは、橋脚の洗掘災害に関する専門家が図2に示す判定項目及び点数を使用せずに、「洗掘に対するより詳細な調査が必要な箇所」と判断したものである。その結果、図3に示すように、より詳細な調査が必要と思われる橋梁(橋脚)と健全な橋梁(橋脚)とを概ね110点をしきい値として分離することが可能であることが確認された。また、合計点が少ない橋梁(橋脚)ほど洗掘に対する要注意橋梁(橋脚)であると判断可能であることが確認された。
【0033】
次に、この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の動作を説明する。
図4は、この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。以下では、制御部13の動作を中心として説明する。
ステップ(以下、Sという)100において、電源がONしたか否かを制御部13が判断する。図示しない電源スイッチを利用者がON操作したか否かを制御部13が判断し、電源がONしたときにはS110に進み、電源がONしていないときには電源がONするまで判断を繰り返す。
【0034】
S110において、洗掘判定プログラムをプログラム記憶部10から制御部13が読み出す。電源がON操作されると洗掘判定装置1に電源部11が電力を供給し、洗掘判定プログラムをプログラム記憶部10から制御部13が読み出して一連の処理を開始する。
【0035】
S120において、判定項目情報及び点数情報を判定項目/点数記憶部2から制御部13が読み出す。その結果、判定項目情報を判定項目表示部3に制御部13が出力するとともに、点数情報を合計点演算部5に制御部13が出力する。
【0036】
S130において、判定項目の表示を判定項目表示部3に制御部13が指令する。その結果、例えば、図2に示すような各判定項目を判定項目表示部3が画面上に順次表示し、各判定項目を利用者が選択するか否かに関わらず所定の時間を経過すると次の判定項目を表示する。
【0037】
S140において、判定項目選択部4によって判定項目が利用者に選択された否かを制御部13が判断する。判定項目表示部3が表示する判定項目のうち判定の対象となる橋梁に該当する判定項目を判定項目選択部4によって利用者が選択したか否かを制御部13が判断する。例えば、図2に示すような全ての判定項目の表示を判定項目表示部3が終了し、利用者によって任意の判定項目が選択されたときにはS150に進み、判定項目が一つも選択されなかったときには一連の処理を終了する。
【0038】
S150において、合計点演算部5に合計点の演算を制御部13が指令する。その結果、判定項目選択部4によって選択された判定項目に対応する点数を合計点演算部5が集計して、合計点演算部5が制御部13に合計点情報を出力し、この合計点情報を制御部13が判定部7に出力する。
【0039】
S160において、しきい値情報をしきい値記憶部6から制御部13が読み出す。しきい値情報をしきい値記憶部6から制御部13が読み出すと、このしきい値情報が制御部13によって判定部7に出力される。
【0040】
S170において、判定の対象となる橋梁の安全性の評価を判定部7に制御部13が指令する。その結果、合計点としきい値とを判定部7が比較して合計点がしきい値を上回るか否かを判定し、判定結果情報を制御部13に出力する。
【0041】
S180において、判定結果の通知を判定結果通知部9に制御部13が指令する。判定結果情報を制御部13が判定結果通知部9に出力しこの判定結果の通知を指令すると、判定結果通知部9が画面上に判定結果を表示したり音声で告知したりする。
【0042】
S190において、判定結果の記録を判定結果記憶部8に制御部13が指令する。判定結果情報を制御部13が判定結果記憶部8に出力するとともに、この判定結果情報の記録を判定結果記憶部8に指令すると、判定の対象となる橋梁毎の判定結果を判定結果記憶部8が記録する。
【0043】
この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目の点数を、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について合計点演算部5が加算して合計点を演算し、この合計点に基づいて判定の対象となる橋梁の安全性を判定部7が判定する。このため、現場での簡易な調査や検査履歴データを用いることによって、洗掘災害の発生する危険性のある橋梁を効率的に簡易に抽出することができる。また、高度な専門的知識を必要とせずに、全般検査での要注意橋梁の抽出精度を向上させることができる。
【0044】
(2) この第1実施形態では、河川の環境条件、橋梁の構造条件及び橋梁の防護条件が判定項目であるときに、判定の対象となる橋梁に該当する各判定項目の点数を合計点演算部5が加算する。このため、過去の被災例や洗掘に関係が強いと考えられる条件に基づいて、洗掘の危険性が高い橋梁を効率的に抽出することができる。
【0045】
(3) この第1実施形態では、判定の対象となる橋梁が橋脚を有するときにこの橋脚の安全性を判定部7が判定する。このため、河川の増水時における橋脚基礎の安全性を簡易に評価することができる。
【0046】
(4) この第1実施形態では、判定項目とこの判定項目毎の点数とを判定項目/点数記憶部2が記憶する。このため、判定項目の点数の重み付けを簡単に変更することができるとともに、判定項目を簡単に追加したり削除したりすることができる。
【0047】
(第2実施形態)
図5は、この発明の第2実施形態に係る橋梁の洗掘判定表の外観図である。
図5に示す洗掘判定表14は、洗掘の危険性のある橋梁を判定するときに使用される表である。洗掘判定表14は、判定の対象となる橋梁の洗掘の危険性を利用者が判定するときに、この判定の対象となる橋梁に該当する判定項目の点数を加算して合計点を演算するために使用される。洗掘判定表14には、着目する判定項目が列挙されているとともに、各判定項目の重み付けを考慮した配点がされている。洗掘判定表14は、該当する判定項目の点数を合計して要注意橋梁(橋脚)を抽出するチェックシート方式と採点表方式を併用した印刷物である。洗掘判定表14は、図5に示すように、橋梁特定部14aと、判定項目/点数表示部14bと、しきい値表示部14cと、判定結果記載部14dなどを備えている。
【0048】
橋梁特定部14aは、判定の対象となる橋梁を特定する部分であり、この判定の対象となる橋梁の名称又は識別番号などを利用者が記載する欄である。判定項目/点数表示部14bは、洗掘の危険性を判定する際に基準となる判定項目とこの判定項目毎の点数とを表示する部分であり、河川の環境条件、橋梁の構造条件及び橋梁の防護条件を判定項目として表示している。判定項目/点数表示部14bは、予め印刷用紙に印刷されており、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目を利用者がチェックするためのチェック欄が表示されている。しきい値表示部14cは、各判定項目の点数の合計点から判定の対象となる橋梁の安全性を判定するために、この安全性の判定の基準となるしきい値を表示する部分であり、判定項目/点数表示部14bと同様に予め印刷用紙に印刷されている。判定結果記載部14dは、判定の対象となる橋梁の安全性の有無を記載する部分であり、「安全」又は「危険」などの文字を利用者が記載する欄である。
【0049】
次に、この発明の第2実施形態に係る橋梁の洗掘判定表の使用方法を説明する。
先ず、判定の対象となる橋梁(橋脚)の名称又は識別番号などを橋梁特定部14aに記載する。次に、判定項目/点数表示部14bを参照して、判定の対象となる橋梁(橋脚)に該当する判定項目のチェック欄にチェックを入れて、このチェック欄にチェックを付した判定項目の点数を集計して合計点を算出する。次に、しきい値表示部14cに表示されたしきい値と合計点とを比較し、しきい値よりも合計点が上回るときには、判定結果記載部14dに「安全」と記入し、しきい値よりも合計点が下回るときには、判定結果記載部14dに「危険」と記入する。なお、判定項目/点数表示部14bの◆に対応するチェック欄にチェックを記入したときには、合計点に関わらず判定結果記載部14dに「危険」と記入する。
【0050】
この発明の第2実施形態に係る橋梁の洗掘判定表には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、洗掘の危険性を判定する際に基準となる判定項目とこの判定項目毎の点数とを判定項目/点数表示部14bが表示する。このため、洗掘の危険性を判断する際の判定項目を判定の対象となる橋梁が満たしているか否かを簡単なチェック作業によって確認することができる。
【0051】
(2) この第2実施形態では、各判定項目の点数の合計点から判定の対象となる橋梁の安全性を判定するために、この安全性の判定の基準となるしきい値をしきい値表示部14cが表示する。このため、高度な専門知識を必要とせずに洗掘の危険性のある橋梁を簡単に抽出することができる。
【0052】
(3) この第2実施形態では、河川の環境条件、橋梁の構造条件及び橋梁の防護条件を判定項目として判定項目/点数表示部14bが表示する。その結果、過去の被災事例などを分析して判定項目や点数を選定することによって、洗掘の危険性のある橋梁を精度良く抽出することができる。
【0053】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
例えば、しきい値が110点である場合を例に挙げて説明したが、洗掘の危険性のある橋梁の評価を厳しくしたい場合には、このしきい値を高く設定することもできる。また、この実施形態では、表示装置や音声発生装置によって判定結果を通知する場合を例に挙げて説明したが、青色発光部(安全)と赤色発光部(危険)とによって判定結果を通知することもできる。また、この実施形態では、判定項目、要因及び点数を例に挙げて説明したが、これらの評価項目、要因及び点数を一部見直して微修正して使用することもできる。さらに、この第2実施形態では、洗掘判定表14がしきい値表示部14cを備える場合を例に挙げて説明したが、しきい値表示部14cを省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の構成図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の判定項目/点数記憶部のデータ構造を一例として示す模式図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の合計点演算部による合計点の頻度分布を一例として示すグラフである。
【図4】この発明の第1実施形態に係る橋梁の洗掘判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の第2実施形態に係る橋梁の洗掘判定表の外観図である。
【符号の説明】
【0055】
1 洗掘判定装置
2 判定項目/点数記憶部
3 合計点演算部
4 判定項目選択部
5 合計点演算部
6 しきい値記憶部
7 判定部
8 判定結果記憶部
9 判定結果通知部
10 プログラム記憶部
11 電源部
12 情報入力部
13 制御部
14 洗掘判定表
14a 橋梁特定部
14b 判定項目/点数表示部
14c しきい値表示部
14d 判定結果記載部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗掘の危険性のある橋梁を判定する橋梁の洗掘判定装置であって、
洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目の点数を、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について加算して合計点を演算する演算手段と、
前記演算手段が演算した合計点に基づいて、前記判定の対象となる橋梁の安全性を判定する判定手段と、
を備える橋梁の洗掘判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁の洗掘判定装置において、
前記演算手段は、河川の環境条件、前記橋梁の構造条件及び前記橋梁の防護条件が前記判定項目であるときに、前記判定の対象となる橋梁に該当する各判定項目の点数を加算すること、
を特徴とする橋梁の洗掘判定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の橋梁の洗掘判定装置において、
前記判定手段は、前記判定の対象となる橋梁が橋脚を有するときにこの橋脚の安全性を判定すること、
を特徴とする橋梁の洗掘判定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の橋梁の洗掘判定装置において、
前記判定項目とこの判定項目毎の点数とを記憶する記憶手段を備えること、
を特徴とする橋梁の洗掘判定装置。
【請求項5】
洗掘の危険性のある橋梁を判定するための橋梁の洗掘判定プログラムであって、
洗掘の危険性を判定する際に基準となる各判定項目の点数を、判定の対象となる橋梁に該当する判定項目について加算して合計点を演算する演算手順と、
前記演算手順において演算した合計点に基づいて、前記判定の対象となる橋梁の安全性を判定する判定手順と、
をコンピュータに実行させる橋梁の洗掘判定プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の橋梁の洗掘判定プログラムにおいて、
前記演算手順は、河川の環境条件、前記橋梁の構造条件及び前記橋梁の防護条件が前記判定項目であるときに、前記判定の対象となる橋梁に該当する各判定項目の点数を加算する手順を含むこと、
を特徴とする橋梁の洗掘判定プログラム。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の橋梁の洗掘判定プログラムにおいて、
前記判定手順は、前記判定の対象となる橋梁が橋脚を有するときにこの橋脚の安全性を判定する手順を含むこと、
を特徴とする橋梁の洗掘判定プログラム。
【請求項8】
洗掘の危険性のある橋梁を判定するときに使用される橋梁の洗掘判定表であって、
洗掘の危険性を判定する際に基準となる判定項目とこの判定項目毎の点数とを表示する判定項目/点数表示部を備えること、
を特徴とする橋梁の洗掘判定表。
【請求項9】
請求項8に記載の橋梁の洗掘判定表において、
前記各判定項目の点数の合計点から判定の対象となる橋梁の安全性を判定するために、この安全性の判定の基準となるしきい値を表示するしきい値表示部を備えること、
を特徴とする橋梁の洗掘判定表。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の橋梁の洗掘判定表において、
前記判定項目/点数表示部は、河川の環境条件、前記橋梁の構造条件及び前記橋梁の防護条件を前記判定項目として表示すること、
を特徴とする橋梁の洗掘判定表。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−217944(P2007−217944A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38979(P2006−38979)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月7日〜9日 社団法人土木学会主催の「第60回年次学術講演会」において文書をもって発表
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】