説明

橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法

【課題】 橋梁の主桁部材の連結工に、通し横桁を介した圧着連結方法を用い、その剛性を高める。
【解決手段】 斜張橋とアーチ橋において、橋梁型式特有の主桁軸力を利用し、横桁部材を橋軸横断方向に通し状とした通し横桁13を介して、主桁部材を橋軸縦断方向にブロック状とした主桁ブロック14をサンドイッチし圧着連結する。また、斜張橋の鋼板からなる通し横桁13には、角形鋼管からなる主桁ブロック14連結用のセン断対応突起具17と斜張ケーブル定着用のケーブル挿通孔18を設置しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の主桁部材の連結工と横桁部材の組立工における、通し横桁を介した圧着連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の橋梁の一般的な圧着連結方法は、プレストレストコンクリート橋おける主桁部材のコンクリートブロックが鋼材等の引張材を利用した圧着力で一体として働くようにしたものである。
【0003】
また、従来の橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法としては、主桁部材の木製ブロックが横桁部材の通し横桁を介して一体として働くようにしたものがあり、橋梁の単純桁型式に使用されているものである。
【0004】
橋梁の単純桁型式においては、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力を確保するために、主桁ブロックの内部を挿通する鋼材等の引張材が特別に必要とされていたものである。
【0005】
また、通し横桁と主桁ブロックとのセン断対応として、通し横桁が主桁ブロックの外周に当接するセン断対応具を具備したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−64619号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「道路橋示方書・同解説」(社)日本道路協会(平成14年3月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如く、従来技術に係る橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法の適用は、橋梁の単純桁型式に限られており、橋梁の長い支間の確保が難しい。
【0009】
また、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力に必要とされる引張材が主桁ブロック内部を挿通するため、主桁ブロックの内部構造を複雑にし、主桁ブロックの製作が困難になっている。
【0010】
さらに、通し横桁と主桁ブロックとのセン断対応に必要とされる主桁ブロック外周の具材が、主桁下空間を阻害し、また、主桁上部床版の障害になっている。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、通し横桁を介する橋梁の圧着連結方法を長い支間の橋梁型式に適用できるようにすること、また、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力に必要とされている主桁ブロック内部の引張材を省略し、主桁ブロックの製作を簡単にできるようにすること、および、通し横桁と主桁ブロックとのセン断対応に必要とされる主桁ブロック外周の具材が、主桁下空間確保や主桁上部床版設置の支障とならないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成する本発明の橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法は、斜張橋の斜張ケーブル吊部の主桁ブロック連結間に配した通し横桁を介する橋梁であって、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力に斜張ケーブル引張力の主桁軸分力を利用し、角形管状の主桁ブロックの角形管内隅に当接するセン断対応突起具を具備した板状の通し横桁を介することを特徴とする橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法。
【0013】
および、アーチ橋のアーチ主軸変曲部の主桁ブロック連結間に配した通し横桁を介する橋梁であって、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力にアーチ支点反力のアーチ軸力を利用し、角形管状の主桁ブロックの主軸変曲用座具と角形管内隅に当接するセン断対応突起具を具備した板状の通し横桁を介することを特徴とする橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法を、橋梁の斜張型式とアーチ型式に新規に適用できるようにしたので、これまでの橋梁の単純桁型式より格段に橋梁の支間を長くすることが可能となる。
【0015】
また、橋梁の斜張型式とアーチ型式にそれぞれ伴う特有の外力を、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力に工夫し利用できるようにしたので、これまでのような橋梁の単純桁型式の主桁ブロック内部の引張材を省略し、主桁ブロックの製作を簡単にできるようにするが可能となる。
【0016】
および、板状の通し横桁が具備する角形管状の主桁ブロックの角形管内隅に当接するセン断対応の具材が、主桁下空間確保や主桁上部床版設置の支障とならないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態の斜張橋に係る縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の斜張橋に係る平断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の斜張橋に係る横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の斜張橋に係るベクトル図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の鋼板からなる通し横桁の外観図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の鋼板からなる通し横桁の平断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の鋼板からなる通し横桁のセン断対応突起具の正面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の鋼板からなる通し横桁のセン断対応突起具の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のアーチ橋に係る縦断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態のアーチ橋に係る平断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のアーチ橋に係る横断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態のアーチ橋に係るベクトル図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の鋼板からなる通し横桁の外観図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の鋼板からなる通し横桁の平断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態の鋼板からなる通し横桁の主軸変曲用座具及びセン断対応突起具の正面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の鋼板からなる通し横桁の主軸変曲用座具及びセン断対応突起具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図8は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は斜張橋の縦断面図、図2は斜張橋の平断面図、図3は斜張橋の横断面図、図4は斜張橋のベクトル図、図5は鋼板からなる通し横桁の外観図、図6は鋼板からなる通し横桁の平断面図、図7は鋼板からなる通し横桁のセン断対応突起具の正面図、図8は鋼板からなる通し横桁のセン断対応突起具の断面図である。
【0019】
図1〜図4に示すように、本橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法は、斜張橋11の斜張ケーブル12を通し横桁13に定着し、斜張ケーブル引張力15の主桁軸分力16を圧着力として、通し横桁13間にサンドイッチ状に配置した主桁ブロック14を通し横桁13に圧着連結する橋梁である。
【0020】
さらに図5〜図8に示すように、鋼板からなる通し横桁13と、角形鋼管からなる主桁ブロック14とを上記のように圧着連結する。あらかじめ、鋼板からなる通し横桁13には角形鋼管からなる主桁ブロック14の内隅に当接する鋼製のセン断対応突起具17を溶接しておくとともに、斜張ケーブル12のケーブル挿通孔18を開けておく。
【0021】
なお、斜張橋11端部の鋼板からなる通し横桁13には、鋼製のセン断対応突起具17を鋼板からなる通し横桁13の片面だけに溶接しておく。
【0022】
図9〜図16は本発明の第2の実施の形態に係り、図9はアーチ橋の縦断面図、図10はアーチ橋の平断面図、図11はアーチ橋の横断面図、図12はアーチ橋のベクトル図、図13は鋼板からなる通し横桁の外観図、図14は鋼板からなる通し横桁の平断面図、図15は鋼板からなる通し横桁の主軸変曲用座具及びセン断対応突起具の正面図、図16は板状の通し横桁の主軸変曲用座具及びセン断対応突起具の断面図である。
【0023】
図9〜図12に示すように、本橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法は、アーチ橋21のアーチ支点22に通し横桁23の橋梁端部のものを定着し、アーチ支点反力25のアーチ軸力26を圧着力として、通し横桁13間にサンドイッチ状に配置した主桁ブロック24を通し横桁23に圧着連結する橋梁である。
【0024】
さらに図13〜図16に示すように、鋼板からなる通し横桁23と、角形鋼管からなる主桁ブロック24としたものとを上記のように圧着連結する。あらかじめ、鋼板からなる通し横桁23には角形鋼管からなる主桁ブロック24の鋼製の主軸変曲用座具28と角形鋼管からなる主桁ブロック24の内隅に当接する鋼製のセン断対応突起具27を溶接しておく。
【0025】
なお、アーチ橋21端部の鋼板からなる通し横桁23には、角形鋼管からなる主桁ブロック24のセン断対応突起具27を鋼板からなる通し横桁23の片面だけに溶接しておく。
【実施例1】
【0026】
本発明の第1の斜張橋11は、中央の1基の主塔から斜張ケーブル12を張る構成とし、長さを約60mとする。斜張ケーブル12は、主塔の左右計6個の通し横桁13を斜吊りする構成とし、ケーブルの仕様としてPC鋼より線の鋼材断面積2500mm2のものを使用する。
【0027】
通し横桁13は、端部のもの2個、中間部のもの5個で6縦列する主桁ブロック14をサンドイッチする構成とし、その仕様を幅8000mm×高さ1000mm×厚さ50mmの鋼板とする。主桁ブロック14は、6縦列と3横列の計18個のブロックがその小口を通し横桁13仕様の鋼板に面当てする構成とし、その仕様を厚さ32mm×辺1000mm×長さ10000mmの角形鋼管とする。
【0028】
セン断対応突起具17は、主桁ブロック14仕様の角形鋼管の内壁の4隅に当接するような配置で通し横桁13仕様の鋼板に具備される構成とし、その仕様は幅100mm×高さ100mm×厚さ100mmの鋼製の突起を通し横桁13仕様の鋼板に溶接されるものとする。ケーブル挿通孔18として、通し横桁13仕様の鋼板に径100mmの孔をあけておき、斜張ケーブル12の定着に利用する。
【実施例2】
【0029】
本発明の第2のアーチ橋21は、両端の地盤をアーチ支点22とする構成とし、長さを約60mとする。アーチ支点22は、端部の通し横桁23が固定される構成とし、その仕様は、幅8000mm×高さ2000mm×厚さ2000mmのコンクリート土台とする。
【0030】
通し横桁23は、端部のもの2個、中間部のもの5個で6縦列する主桁ブロック24をサンドイッチする構成とし、その仕様を幅8000mm×高さ1000mm×厚さ50mmの鋼板とする。主桁ブロック24は、6縦列と3横列の計18個のブロックがその小口を通し横桁23仕様の鋼板に面当てする構成とし、その仕様を厚さ32mm×辺1000mm×長さ10000mmの角形鋼管とする。
【0031】
主軸変曲用座具28は、中間部の5個の通し横桁23仕様の鋼板の両面に正方形4辺状に部材を配置する構成とし、その仕様は、上辺の部材が幅1000mm×高さ200mm×厚さ変化の鋼板、左右の辺の部材が幅200mm×高さ800mm×厚さ変化の鋼板、下辺の部材が幅600mm×高さ200mm×厚さ変化の鋼板を1組みとし通し横桁23仕様の鋼板に溶接する。
【0032】
セン断対応突起具27は、主桁ブロック24仕様の角形鋼管の内壁の4隅に当接するような配置で通し横桁23仕様の鋼板に具備される構成とし、その仕様は、幅100mm×高さ100mm×厚さ100mmの鋼製の突起を主軸変曲用座具28仕様の鋼板に溶接するものとする。なお、端部の通し横桁23仕様の鋼板については、直接溶接する。
【符号の説明】
【0033】
11 斜張橋
12 斜張ケーブル
13、23 通し横桁
14、24 主桁ブロック
15 斜張ケーブル引張力
16 主桁軸分力
17、27 セン断対応突起具
18 ケーブル挿通孔
21 アーチ橋
22 アーチ支点
25 アーチ支点反力
26 アーチ軸力
28 主軸変曲用座具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜張橋の斜張ケーブル吊部の主桁ブロック連結間に配した通し横桁を介する橋梁であって、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力に斜張ケーブル引張力の主桁軸分力を利用し、角形管状の主桁ブロックの角形管内隅に当接するセン断対応突起具を具備した板状の通し横桁を介することを特徴とする橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法。
【請求項2】
アーチ橋のアーチ主軸変曲部の主桁ブロック連結間に配した通し横桁を介する橋梁であって、通し横桁と主桁ブロックとの圧着連結の圧着力にアーチ支点反力のアーチ軸力を利用し、角形管状の主桁ブロックの主軸変曲用座具と角形管内隅に当接するセン断対応突起具を具備した板状の通し横桁を介することを特徴とする橋梁の通し横桁を介した圧着連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−261154(P2010−261154A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110504(P2009−110504)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500046704)
【Fターム(参考)】