説明

橋梁一括撤去工法

【課題】 河川等に架かる橋梁を撤去する際に、河川等内や堤防等にクレーンを設置する必要もなく、橋梁上から上部工や下部工を順次撤去可能とし、通年に亘っての工事を可能とする橋梁一括撤去工法を提供することである。
【解決手段】 上部工10および下部工竪壁11を跨いで第一フーチング上に起立する第一門型ジャッキ3と、上部工上に起立する第二門型ジャッキ4と第三門型ジャッキ5を備えて撤去スパン20と積み込みスパン21とを形成する六本脚の門型昇降手段1を介して、撤去スパン内の上部工および下部工をせり上げて撤去し積み込みスパンに搬送し、積み込みスパン上の搬出車輌9により搬出した後で、前記門型昇降手段を走行桁50を介して一体的に移動して新たな撤去スパンと積み込みスパンを形成して、順次撤去する橋梁一括撤去工法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等に架かる橋梁を撤去する工法に関し、特に、橋梁上からの作業で橋梁を構成する上部工と下部工を順次撤去可能な橋梁一括撤去工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川等に架かる橋梁を撤去する従来工法では、大型ブレーカー等により順次破砕しながら分割撤去する工法、もしくは、河川等内に構台を設けて設置するクレーンや河川等に浮かべた台船に設置するクレーンを操作して、該クレーンの吊り能力に応じた大きさに分割した上部工や下部工を順次撤去する工法が採用されている。
【0003】
そのために、河川等の流水量に応じて工期に制限を受けることがあり、特に、梅雨や台風により流水量が増大する出水期(6〜10月)には、河川等内の工事に制限を受けるため、通年に亘っての橋梁撤去工事は困難である。
【0004】
また、橋梁を解体する際に、床版上に、主桁の上面に沿って切断するけがき線を描き、床版を順次分割しながらクレーンで吊り降ろして、落橋事故の危険性を排除し河川等の汚濁を防止するとした旧橋解体工事における床版の解体方法が既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−348814号公報(第1−5頁、第16図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
橋梁を破砕しながら撤去する工法では、コンクリート破片が河川等に落下飛散して、河川等を汚濁したり汚染するという問題がある。また、クレーンを用いて順次分割しながら撤去する工法では、出水期の工事が困難であり、通年に亘る工期は設定できない。
【0006】
また、クレーンを設置する構台を構築したり、クレーンを備える台船を準備する必要があった。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決するために、河川等に架かる橋梁を撤去する際に、河川等内や堤防等にクレーンを設置する必要もなく、橋梁上から上部工や下部工を順次撤去可能とし、通年に亘っての工事を可能とする橋梁一括撤去工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、所定の径間毎に複数配設される下部工フーチング上にそれぞれ設置された下部工竪壁と、前記下部工竪壁上に載置される上部工とを備え、河川等に架かる橋梁を撤去する橋梁一括撤去工法であって、前記上部工および前記下部工竪壁を跨いで第一の前記フーチング上に起立する第一門型ジャッキと、次の第二フーチング上に位置する前記上部工に起立する第二門型ジャッキと、さらに次の第三フーチング上に位置する前記上部工に起立する第三門型ジャッキを備え、それぞれの門型ジャッキの上部を連結する縦ビームを介して一体構成される六本脚の門型昇降手段を設置する準備工程と、前記第一門型ジャッキと前記第二門型ジャッキ間を撤去スパンとし、前記第二門型ジャッキと前記第三門型ジャッキ間を積み込みスパンとし、それぞれの門型ジャッキが備える横ビームに掛け渡されて装着されるトロリガーダに沿って橋軸方向に走行移動するトロリと、前記トロリガーダを橋軸直角方向に横行する移動手段を介して、前記撤去スパンの上部工を橋軸方向に複数分割して順次せり上げて、前記積み込みスパンまで移載して撤去する上部工撤去工程と、上部工が撤去された第一下部工竪壁をワイヤーソー等でフーチングから切断後、前記トロリが第一竪壁をせり上げて前記積み込みスパンの上部工上まで移載して撤去する下部工撤去工程と、前記門型昇降手段を、前記上部工の面上を橋軸方向に移動自在な走行桁が支持して一体的に移動する門型昇降手段移動工程とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、橋梁の上部工を跨ぐジャッキ部を備える門型昇降手段を用いて、上部工や下部工竪壁を順次撤去することができる。また、そのために、橋梁の上での作業となり、河川等内に構台を設ける必要もなく、クレーンを有する台船を準備する必要もない。
【0010】
請求項2に係る発明は、所定の径間毎に複数配設される下部工フーチング上にそれぞれ設置された下部工竪壁と、前記下部工竪壁上に載置される上部工とを備え、河川等に架かる橋梁を撤去する橋梁一括撤去工法であって、前記上部工および前記下部工竪壁を跨いで第一の前記フーチング外側の河床地盤又は支持層に起立する第一門型ジャッキと、次の第二フーチング上に位置する前記上部工に起立する第二門型ジャッキと、さらに次の第三フーチング上に位置する前記上部工に起立する第三門型ジャッキを備え、それぞれの門型ジャッキの上部を連結する縦ビームを介して一体構成される六本脚の門型昇降手段を設置する準備工程と、前記第一門型ジャッキと前記第二門型ジャッキ間を撤去スパンとし、前記第二門型ジャッキと前記第三門型ジャッキ間を積み込みスパンとし、それぞれの門型ジャッキが備える横ビームに掛け渡されて装着されるトロリガーダに沿って橋軸方向に走行移動するトロリと、前記トロリガーダを橋軸直角方向に横行する移動手段を介して、前記撤去スパンの上部工を橋軸方向に複数分割して順次せり上げて、前記積み込みスパンまで移載して撤去する上部工撤去工程と、上部工が撤去された第一下部工竪壁をワイヤーソー等でフーチングから切断後、前記トロリが前記第一下部工竪壁をせり上げて、もしくは前記第一下部工竪壁と前記フーチングと基礎杭とを順次せり上げて、前記積み込みスパンの上部工上まで移載して撤去する下部工撤去工程と、前記門型昇降手段を、前記上部工の面上を橋軸方向に移動自在な走行桁が支持して一体的に移動する門型昇降手段移動工程とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、橋梁の上部工やフーチングを跨ぐジャッキ部を備える門型昇降手段を用いて、橋梁の上での作業のみで上部工や下部工竪壁を順次撤去することができる。また、フーチングや基礎杭の撤去も可能となるので、通常、流水上の障害とならないため残置される場合が多い下部工フーチングや基礎杭等であっても、流水断面の増加が必要等の理由から河床掘削を行う場合には、容易に対応することができる工法となる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記上部工撤去工程が、撤去する大きさに上部工を切断する上部工切断工程と、上部工を前記トロリに固定して、固定された上部工を前記門型昇降装置のジャッキを伸張してせり上げて、前記積み込みスパンまで移載する上部工移載工程と、前記積み込みスパンの上部工の面上で待機する搬出車輌に積み込んで搬出する上部工搬出工程とを備えることを特徴としている。
【0013】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、橋梁上を移動する搬出車輌により、分割した上部工を順次搬出するので、橋梁上のみの作業で撤去工事を行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記下部工撤去工程が、下部工竪壁を前記トロリに固定して前記フーチングから切り離す下部工切り離し工程と、切り離された前記下部工を前記門型昇降手段のジャッキを伸張してせり上げて、前記積み込みスパンまで移載する下部工移載工程と、前記積み込みスパンの上部工の面上で待機する搬出車輌に積み込んで搬出する下部工搬出工程とを備えることを特徴としている。
【0015】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、下部工の撤去作業も橋梁上のみの作業で行うことができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記走行桁が、三組の走行台車を備えていると共に、前記三組の走行台車が、連続する三箇所の下部工上に対応する間隔で設けられていることを特徴としている。
【0017】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、大きなスパン間隔で走行桁の荷重を下部工が受けるので、上部工に負荷を掛けずに走行桁を移動することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記門型昇降手段移動工程が、前記三組の走行台車を、前記第二門型ジャッキの下部に位置する第二下部工と、前記第三門型ジャッキの下部に位置する第三下部工と、その次の第四下部工との三箇所に対応する位置の上部工上に移動した後、前記支持台車が前記門型昇降手段を支持した状態で、六本脚のジャッキを縮めて前記門型昇降手段を一括して支持して走行桁上を移動する工程であることを特徴としている。
【0019】
上記の構成を有する請求項6に係る発明によれば、門型昇降手段を1スパン移動する際に、その荷重を走行桁が受け、さらに走行台車を介して下部工が受けるので、上部工に負荷を掛けずに1スパン移動し、新たな撤去作業を続行することができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、前記走行桁を前記門型昇降手段の左右別々に設ける分割型とし、それぞれの走行桁に前記走行台車をそれぞれ三組設けていることを特徴としている。
【0021】
上記の構成を有する請求項7に係る発明によれば、左右それぞれの走行桁の設置工程が容易となり、門型昇降手段移動工程の所要時間を短縮することができる。
【0022】
請求項8に係る発明は、前記走行台車がそれぞれ四輪を備えた台車であることを特徴としている。
【0023】
上記の構成を有する請求項8に係る発明によれば、左右それぞれに設置する構成の走行桁であっても、それぞれの走行桁を安定して移動することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上部工および下部工を跨ぐ門型ジャッキを備えて撤去スパンと積み込みスパンとを形成する六本脚の門型昇降手段を介して、撤去スパン内の上部工を撤去し積み込みスパンに搬出した後で、前記昇降手段を一体的に移動する構成としたので、スパン毎に順次分割して撤去可能な橋梁一括撤去工法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る橋梁一括撤去工法の実施の形態について、図1から図4に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明に係る六本脚の門型昇降手段を用いて上部工を撤去する概略説明図であり、(a)は撤去する上部工をせり上げるところを示す正面図、側面図およびA−A矢視図であり、(b)は上部工をせり下げて搬出車輌に載置するところを示す正面図、側面図およびB−B矢視図である。図2は本発明に係る六本脚の門型昇降手段を用いて下部工を撤去する概略説明図であり、(a)は撤去する下部工をせり上げるところを示す正面図、側面図およびC−C矢視図であり、(b)は下部工をせり下げて搬出車輌に載置するところを示す正面図、側面図およびD−D矢視図である。図3は本発明に係る六本脚の門型昇降手段を移動する概略説明図であり、(a)は本発明に係る走行桁を設置しているところを示す正面図、側面図およびE−E矢視図であり、(b)は門型昇降手段を1スパン移動したところを示す正面図、側面図およびF−F矢視図である。図4は本発明に係る橋梁一括撤去工法の流れを示すフローチャートである。
【0027】
本発明に係る橋梁一括撤去工法は、河川等に架かる橋梁を別に設置するクレーン等を用いずに、橋梁上から順次撤去可能とする撤去工法である。
【0028】
河川等に架かる橋梁は、図1に示すように、上部工10と下部工竪壁11と下部工フーチング12とをそれぞれ複数備えている。そのために、橋梁を撤去する際には、先ず上部工10を分割して順次撤去し、その後で竪壁11を撤去していく。フーチング12は、河床以深に埋設されているので、通常は敢えて撤去する必要はない。
【0029】
まず、第一に本発明に係る六本脚の門型昇降手段1を用いて上部工を撤去する工法について図1より説明する。
【0030】
図1(a)に示すように、門型昇降手段1は、第一門型ジャッキ3と第二門型ジャッキ4と第三門型ジャッキ5とそれらを連結する縦ビーム2Aとを備えた六本脚の門型昇降手段である。また、それぞれの門型ジャッキは、横ビーム2Bと該横ビームの両側から垂下した二本のジャッキ部をそれぞれ備えており、例えば、第一門型ジャッキ3は横ビーム2Bとジャッキ部3A、3Bを備え、第二門型ジャッキ4は横ビーム2Bとジャッキ部4A、4Bを備え、第三門型ジャッキ5は横ビーム2Bとジャッキ部5A、5Bとを備えている。またそれぞれの横ビーム2Bを連結して橋軸方向に延設するトロリガーダ6とトロリ7とを備えている。
【0031】
前記第一門型ジャッキ3は、ジャッキ部3Aと3Bとの間隔を広げて、上部工10と竪壁11を跨いでフーチング12上に起立可能とされており、前記第二門型ジャッキ4と前記第三門型ジャッキ5は、それぞれのジャッキ部間の間隔が広くなく、上部工10に起立する程度とされている。そのために、前記門型昇降手段1を、撤去する橋梁に設置する際には、まず、第二門型ジャッキ4を次の第二フーチング12B上に位置する上部工10Bに起立させ、第三門型ジャッキ5を第三フーチング12C上の上部工に起立させた後で、第一門型ジャッキ3を、上部工10と下部工竪壁11Aを跨ぐようにして第一フーチング12A上に起立させる。30は切断線であり、撤去する前に上部工を切断しておくようにしている。この切断はワイヤーソー等により切断する従来工法により行うことができる。
【0032】
横ビーム2Bには橋軸方向にトロリガーダ6が装着されており、吊具8を備えるトロリ7が橋軸方向(図中の矢印6b方向)に移動自在となっている。また、前記トロリガーダ6を橋軸直角方向(図中の矢印6a方向)に移動する移動手段(不図示)を備えている。
【0033】
31も切断線であって、トロリ7によりせり上げて撤去可能なサイズの上部工10aに予め切断しておく構成としている。この切断も従来工法と同様にフラットソー等により行うことができる。
【0034】
また、六本脚の門型昇降手段1としているので、第一門型ジャッキ3と第二門型ジャッキ4間の第一スパンと、第二門型ジャッキ4と第三門型ジャッキ5間の第二スパンを形成することができる。そのために本実施の形態では、前記第一スパンを撤去スパン20とし、前記第二スパンを積み込みスパン21とした。
【0035】
上記のような構成としているので、前記六本脚の門型昇降手段1をそれぞれのフーチング上に設置し、撤去スパン20内の上部工10Aを、予め撤去可能なサイズの上部工10aに切断する。その後で、トロリ7を用いて上部工10aを順次せり上げて、図中の矢印6b方向に移動して積み込みスパン21に搬出する。積み込みスパン21には、搬出車輌9が待機しており、搬出してきた上部工10aを車台9Aに順次積み込んでいく。
【0036】
図1(b)には、撤去スパン20の上部工を全て撤去したところを示しているが、上部工撤去工程時の上部工のせり上げと降下は、門型昇降手段1のジャッキ部を同時に伸縮して行うことができる。つまり、吊具8を上部工10aに固定した後で図1(a)に示す上向きの矢印40方向にジャッキ部を伸ばして撤去する上部工10aをせり上げる。それからトロリ7を矢印6b方向に移動して、積み込みスパン21に至り、図1(b)の下向きの矢印41方向にジャッキ部を縮めて車台9A上に移載する。
【0037】
その際に、せり上げる上部工の荷重や天板2やトロリガーダ6の荷重等はすべてそれぞれのジャッキ部から、全てフーチング12が支持することになり、上部工を損傷することはない。例えば、第一ジャッキ部3に掛かる荷重は第一フーチング12Aが支持し、第二ジャッキ部4に掛かる荷重は上部工10、下部工竪壁11を介して第二フーチング12Bが支持し、第三ジャッキ部5に掛かる荷重は上部工10、下部工竪壁11を介して第三フーチング12Cが支持する構成である。
【0038】
次に、下部工を撤去する工法について図2より説明する。
【0039】
図2(a)には、上部工が撤去された第一下部工竪壁11Aを、トロリ7がせり上げているところを示している。この時に、前記下部工竪壁11Aと第一フーチング12Aとを切り離しておくことは明らかである。この第一下部工竪壁11Aの固定とせり上げは、前述した上部工撤去工法で説明した固定とせり上げと同等であり、ここでは詳述しない。
【0040】
トロリ7および六本脚のジャッキ部を介してせり上げた第一下部工竪壁11Aを、図2(b)に示すように、前記積み込みスパン21の上部工10Bまで移載する。この時に、巻上げた下部工をそのままの姿勢で搬送しそのまま搬出車輛に移載してもよいが、搬出車輛の車台9Aのサイズに合わせて、図に示すように90°方向を換えて移載することも可能である。
【0041】
積み込みスパン21まで搬送された第一下部工竪壁11Aは、門型昇降手段1のジャッキ部を同時に矢印41方向に縮めることで、搬出車輛9に移載することは前述した通りである。またこの下部工撤去工程時にも、せり上げる下部工の荷重や門型昇降手段の荷重等は六脚のジャッキ部から、全てフーチング12が支持することになり、上部工等の橋梁を損傷することはない。
【0042】
次に、本発明に係る六本脚の門型昇降手段1を移動する工法について図3より説明する。第一の上部工10Aと第一下部工竪壁11Aを撤去した後で、門型昇降手段1を、上部工10B及び10Cの所定位置に設置する走行桁50を介して、一体的に移動する。
【0043】
走行桁50は、第一走行桁50Aと第二走行桁50Bからなっており、それぞれの走行桁はそれぞれ走行台車51A、51Bを備えている。また、これらの走行桁を連接して一体型の走行桁50としてもよい。
【0044】
門型昇降手段のジャッキ部にはブラケット52を介して支持台車53を取付けることが可能であり、第一走行桁50Aには片側のジャッキ部(例えばジャッキ部4A、5A)を支持する支持台車53Aが上載され、第二走行桁50Bには反対側のジャッキ部(例えばジャッキ部4B、5B)を支持する支持台車53Bが上載される。
【0045】
この際に、支持台車53はブラケット52を介してジャッキ部に取付ける方法以外に、横ビーム2Bに直接取付けることも可能である。
【0046】
また、前記走行桁50は橋梁の2スパン分の長さであり、それぞれの下部工のピッチに応じた位置に走行台車51(51A、51B)を三箇所に設けている。例えば、前記走行台車51Aは、第二下部工竪壁11Bの真上に位置する走行台車51Aaと、第三下部工竪壁11Cの真上に位置する走行台車51Abと、第四下部工竪壁11Dの真上に位置する走行台車51Acとを備えている。
【0047】
そのために、図3(a)に示す橋梁上の作業位置に走行桁50を設置すると、その荷重は全て、フーチング12B、12C、12Dが支持する構成となる。
【0048】
この状態で、支持台車53A、53Bによりそれぞれのジャッキ部の中間部分を支持する。その後で、それぞれのジャッキ部を図中の矢印40方向に縮めると、E−E矢視図に示すように、それぞれのジャッキ部が上部工10やフーチング12Aから離反し宙に浮く。つまり、走行桁50A上の支持台車53Aaが第二ジャッキ部4を支持し、支持台車53Abが第三ジャッキ部5を支持してこれらの両側計4本のジャッキ部を介して、走行桁50が門型昇降手段1の全荷重を支持することになる。また、第一ジャッキ部3は支持されていないが、トロリ7を積み込みスパン21側に移動させておくことで、オーバーハング状の撤去スパン20よりも支持されている積み込みスパン21の方が重くなり重量のバランスが取れて、第一ジャッキ部3が第一のフーチング基礎12Aから浮き上がるオーバーハング状であっても、安定して支持することができる。
【0049】
この際に、重量バランスが取れない場合は、トロリ7に前工程で撤去した構造物の一部を固定することにより、カウンターウエイトとして利用することも可能である。
【0050】
上記のような構成としているので、第二ジャッキ部4と第三ジャッキ部5に取付けた支持台車53を走行桁50が支持して、走行桁50の上面に沿って橋軸方向に移動することで、門型昇降手段1を一体的に、橋軸方向に移動することができる。
【0051】
この門型昇降手段1の移動の際にも、その荷重は走行桁50の走行台車51Aa、51Ab、51Acから下部工竪壁11B、11C、11Dを介して、フーチング12B、12C、12Dが支持している。そのために、上部工を損傷することなく、門型昇降手段1を一体的にスパン送りすることができる。
【0052】
また、前記走行台車がそれぞれ四輪を備えた台車であれば、左右それぞれ分割された走行桁50A、50Bからなる走行桁であっても、安定して走行することができ好適である。
【0053】
図3(b)に、門型昇降手段1を1スパン移動した状態を示すが、それぞれのジャッキ部を縮めた状態でスパン送りした後で、第一ジャッキ部3を矢印41方向に伸ばして第二フーチング12Bに当接し、第二ジャッキ部4の最下部を矢印41方向に伸ばして上部工10Bに当接し、第三ジャッキ部5の最下部を矢印41方向に伸ばして上部工10Bに当接する。六本脚の全てのジャッキ部をフーチング12もしくは上部工10に当接させて支持した後で、全ての支持台車53(53A、53B)をそれぞれのジャッキ部から取り外す。
【0054】
その後で、走行桁50を、一体的に上部工10B上を移動させ、1スパン移動して新たな撤去スパン20Aと積み込みスパン21Aを形成する位置に門型昇降手段1を設置する構成としている。
【0055】
新たな位置に設置した後で、新たな撤去スパン20Aの上部工10Bと下部工竪壁11Bを順次撤去していく。
【0056】
上記したように、本発明に係わる橋梁一括撤去工法は、撤去する橋梁上から撤去作業を行うことができ、大きな作業スペースを必要としない。また、上部工は分割しながら、下部工は1脚ずつ順次撤去していくので、河川等に架かる橋梁だけでなく、陸上の橋梁であっても、橋梁上空の作業が制限され大型のクレーンが使用できない場合にも対応可能となり、高架下や鉄橋下やトンネル内の工事にも適用可能となる。
【0057】
上記で説明した橋梁撤去工事の一連の工程について図4に示すフローチャートにより説明する。まず、門型昇降手段を設置する準備工程S1により撤去する橋梁上に門型昇降手段1を設置して、撤去スパンと積み込みスパンを形成する。その後、撤去スパン内の上部工を撤去する大きさに切断する上部工切断工程S2、撤去スパン内の上部工を順次せり上げて積み込みスパン上の搬出車輌に移載する上部工移載工程S3、積み込みスパンから上部工を搬出する上部工搬出工程S4からなる上部工撤去工程を行う。それから、上部工が撤去された下部工竪壁をトロリに固定してフーチングから切り離す下部工切り離し工程S5と、切り離された前記下部工竪壁を前記門型昇降手段1のジャッキを伸張してせり上げて、前記積み込みスパンまで移載する下部工移載工程S6と、前記積み込みスパンの上部工の面上で待機する搬出車輌に積み込んで搬出する下部工搬出工程S7を有する下部工撤去工程を行う。このようにして、最初に設定した撤去スパン内の上部工と下部工竪壁の撤去完了後に、前記門型昇降手段を1スパン移動して新たな撤去スパンと積み込みスパンを形成する門型昇降手段移動工程S8を経て新たな撤去スパンと新たな積み込みスパンを形成する。
【0058】
その後で、新たな撤去スパン内の上部工切断工程S2から次の新しい撤去作業を進めて順次繰り返していき、所定スパン数の上部工と下部工竪壁を順次撤去し搬出して、撤去工事が完了する。
【0059】
また、下部工竪壁に加えて、下部工フーチングや基礎杭などを撤去する際には、第一門型ジャッキ3を第一フーチング12A外側の河床地盤又は支持層に起立する構成として、上述したフローチャートに示す工程を順次実行していき、下部工撤去工程として、フーチング撤去工程や基礎杭撤去工程を順次組み込んだ橋梁一括撤去工法とすればよい。この撤去工法であれば、橋梁上からの作業で、フーチングや基礎杭などを撤去可能であり、流水断面の増加が必要で河床掘削を行う場合等であっても、容易に対応でき好適である。
【0060】
本発明に係わる橋梁一括撤去工法によれば、上部工および下部工を跨ぐジャッキ部を備えると共に撤去スパンと積み込みスパンとを形成する六本脚の門型昇降手段を介して、撤去スパン内の上部工を撤去し積み込みスパンに搬出した後で、前記昇降手段を一体的に移動する構成としたので、スパン毎に順次分割して撤去可能な橋梁一括撤去工法とすることができる。
【0061】
この際に、作業工程中に生じる荷重負荷は、全て下部工が支持する構成としているので、作業中に上部工を損傷することなく、橋梁を構成している上部工と下部工を順次撤去することができる。
【0062】
また、撤去する上部工や下部工を所定大きさのまま撤去するので、小さく解体する工程はなく、周辺環境に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0063】
つまり、本発明に係わる橋梁一括撤去工法は、周辺に悪影響を与えず、短い工期で工事が可能で低コストな橋梁一括撤去工法とすることができる。
【0064】
さらに、河川等に架かる橋梁を撤去する際に、河川等内や堤防等にクレーンを設置する必要もなく、橋梁上から上部工や下部工を順次撤去可能としているので、出水期であっても工事可能となり、通年に亘っての工事を可能とする橋梁一括撤去工法となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る六本脚の門型昇降手段を用いて上部工を撤去する概略説明図であり、(a)は撤去する上部工をせり上げるところを示し、(b)は上部工を降下させて搬出車輌に載置するところを示す。
【図2】本発明に係る六本脚の門型昇降手段を用いて下部工を撤去する概略説明図であり、(a)は撤去する下部工をせり上げるところを示し、(b)は下部工を降下させて搬出車輌に載置するところを示す。
【図3】本発明に係る六本脚の門型昇降手段を移動する概略説明図であり、(a)は本発明に係る走行桁を設置したところを示し、(b)は門型昇降手段を1スパン移動したところを示している。
【図4】本発明に係る橋梁一括撤去工法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 門型昇降手段
2A 縦ビーム
2B 横ビーム
3 第一門型ジャッキ
3A、3B ジャッキ部
4 第二門型ジャッキ
5 第三門型ジャッキ
6 トロリガーダ
7 トロリ
9 搬出車輌
10 上部工
11 下部工竪壁
12 下部工フーチング
20 撤去スパン
21 積み込みスパン
50 走行桁
51 走行台車
52 ブラケット
53 支持台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の径間毎に複数配設される下部工フーチング上にそれぞれ設置された下部工竪壁と、前記下部工竪壁上に載置される上部工とを備え、河川等に架かる橋梁を撤去する橋梁一括撤去工法であって、
前記上部工および前記下部工竪壁を跨いで第一の前記フーチング上に起立する第一門型ジャッキと、次の第二フーチング上に位置する前記上部工に起立する第二門型ジャッキと、さらに次の第三フーチング上に位置する前記上部工に起立する第三門型ジャッキを備え、それぞれの門型ジャッキの上部を連結する縦ビームを介して一体構成される六本脚の門型昇降手段を設置する準備工程と、
前記第一門型ジャッキと前記第二門型ジャッキ間を撤去スパンとし、前記第二門型ジャッキと前記第三門型ジャッキ間を積み込みスパンとし、それぞれの門型ジャッキが備える横ビームに掛け渡されて装着されるトロリガーダに沿って橋軸方向に走行移動するトロリと、前記トロリガーダを橋軸直角方向に横行する移動手段を介して、前記撤去スパンの上部工を橋軸方向に複数分割して順次せり上げて、前記積み込みスパンまで移載して撤去する上部工撤去工程と、
上部工が撤去された第一下部工竪壁をワイヤーソー等で前記フーチングから切断後、前記トロリが前記第一下部工竪壁をせり上げて前記積み込みスパンの上部工上まで移載して撤去する下部工撤去工程と、
前記門型昇降手段を、前記上部工の面上を橋軸方向に移動自在な走行桁が支持して一体的に移動する門型昇降手段移動工程とを備えていることを特徴とする橋梁一括撤去工法。
【請求項2】
所定の径間毎に複数配設される下部工フーチング上にそれぞれ設置された下部工竪壁と、前記下部工竪壁上に載置される上部工とを備え、河川等に架かる橋梁を撤去する橋梁一括撤去工法であって、
前記上部工および前記下部工竪壁を跨いで第一の前記フーチング外側の河床地盤又は支持層に起立する第一門型ジャッキと、次の第二フーチング上に位置する前記上部工に起立する第二門型ジャッキと、さらに次の第三フーチング上に位置する前記上部工に起立する第三門型ジャッキを備え、それぞれの門型ジャッキの上部を連結する縦ビームを介して一体構成される六本脚の門型昇降手段を設置する準備工程と、
前記第一門型ジャッキと前記第二門型ジャッキ間を撤去スパンとし、前記第二門型ジャッキと前記第三門型ジャッキ間を積み込みスパンとし、それぞれの門型ジャッキが備える横ビームに掛け渡されて装着されるトロリガーダに沿って橋軸方向に走行移動するトロリと、前記トロリガーダを橋軸直角方向に横行する移動手段を介して、前記撤去スパンの上部工を橋軸方向に複数分割して順次せり上げて、前記積み込みスパンまで移載して撤去する上部工撤去工程と、
上部工が撤去された第一下部工竪壁をワイヤーソー等でフーチングから切断後、前記トロリが前記第一下部工竪壁をせり上げて、もしくは前記第一下部工竪壁と前記フーチングと基礎杭とを順次せり上げて、前記積み込みスパンの上部工上まで移載して撤去する下部工撤去工程と、
前記門型昇降手段を、前記上部工の面上を橋軸方向に移動自在な走行桁が支持して一体的に移動する門型昇降手段移動工程とを備えていることを特徴とする橋梁一括撤去工法。
【請求項3】
前記上部工撤去工程が、撤去する大きさに上部工を切断する上部工切断工程と、上部工を前記トロリに固定して、固定された上部工を前記門型昇降手段のジャッキを伸張してせり上げて、前記積み込みスパンまで移載する上部工移載工程と、前記積み込みスパンの上部工の面上で待機する搬出車輌に積み込んで搬出する上部工搬出工程とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁一括撤去工法。
【請求項4】
前記下部工撤去工程が、下部工竪壁を前記トロリに固定して前記フーチングから切り離す下部工切り離し工程と、切り離された前記下部工を前記門型昇降手段のジャッキを伸張してせり上げて、前記積み込みスパンまで移載する下部工移載工程と、前記積み込みスパンの上部工の面上で待機する搬出車輌に積み込んで搬出する下部工搬出工程とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の橋梁一括撤去工法。
【請求項5】
前記走行桁が、三組の走行台車を備えていると共に、前記三組の走行台車が、連続する三箇所の下部工上に対応する間隔で設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の橋梁一括撤去工法。
【請求項6】
前記門型昇降手段移動工程が、前記三組の走行台車を、前記第二門型ジャッキの下部に位置する第二下部工と、前記第三門型ジャッキの下部に位置する第三下部工と、その次の第四下部工との三箇所に対応する位置の上部工上に移動した後、前記支持台車が前記門型昇降手段を支持した状態で、六本脚のジャッキを縮めて前記門型昇降手段を一括して支持して走行桁上を移動する工程であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の橋梁一括撤去工法。
【請求項7】
前記走行桁を前記門型昇降手段の左右別々に設ける分割型とし、それぞれの走行桁に前記走行台車をそれぞれ三組設けていることを特徴とする請求項6に記載の橋梁一括撤去工法。
【請求項8】
前記走行台車がそれぞれ四輪を備えた台車であることを特徴とする請求項7に記載の橋梁一括撤去工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−239313(P2007−239313A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63532(P2006−63532)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591165919)株式会社新井組 (13)
【出願人】(393008360)株式会社タダノエンジニアリング (15)
【出願人】(592178598)株式会社野田自動車工業所 (4)
【Fターム(参考)】