説明

橋梁架替工法

【課題】 列車や車両の運行を休止させる期間を短縮し、しかも作業の煩雑化を低減する。
【解決手段】 既設の橋桁3は、仮設の橋脚22に支持させた状態で残しておき、橋脚の部分だけを先に新しく構築する(符号12参照)。そして、橋梁幅方向Yに沿って横取り用ガイド装置30を延設配置し、該ガイド装置30に沿って既設橋桁3を一体的に移動させて撤去し、予め別の場所で構築しておいた新設橋桁13を移動させてきて、設置する。この方法によれば、既設橋桁3の撤去と、新設橋桁13の設置とを比較的短時間で行うことができ、列車等の運行への支障を低減できる。また、運行休止の回数を少なくして、運行休止時及び運行再開時に必要な作業を軽減し、作業の煩雑化を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設橋脚と既設橋桁とからなる既設橋梁を、新設橋脚と新設橋桁とからなる新設橋梁に架け替えるための橋梁架替工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道や道路においては、古くなった既設の橋梁(本明細書において“既設橋梁”と称する)を新しい橋梁(本明細書において“新設橋梁”とする)に架け替えるための橋梁架替工事を行う必要があり、そのための種々の工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、鉄道における、従来の橋梁架替工法の一例について図6及び図7に沿って説明する。ここで、図6(a)は、既設橋梁101を支持するように仮設橋梁121を構築した状態を示す断面図であり、同図(b)は、既設橋桁103に縦孔103aを穿設した状態を示す断面図であり、同図(c)は、枕木104を支持するように第2上部橋脚125等を配置した状態を示す断面図である。また、図7(a)は、撤去しようとする既設橋梁101を斜線で示した断面図であり、同図(b)は、該既設橋梁101を撤去した状態を示す断面図であり、同図(c)は、新設橋梁111を構築した状態を示す断面図である。
【0004】
図6(a)中の符号101は、既設橋脚102と既設橋桁103とからなる既設橋梁を示す。また、符号104は枕木を示し、符号105はレールを示し、符号106は鉄道の車両限界を示す。さらに、符号121は、工事の期間だけ構築される仮設橋梁を示す。なお、符号122に示す部分を下部橋脚と称し、符号124で示す部分を第1上部橋脚と称し、符号123で示す部分を仮設橋桁と称することとする。この図に示す段階では、第1上部橋脚124は既設橋桁103を支持した状態となっている。
【0005】
次に、図6(b)に示すように、各枕木104の端部に一致するように、既設橋桁103に縦孔103aを穿設する。そして、図6(c)に示すように、各枕木104の両端を挟み込むように断面I型の工事桁130を配置し、各工事桁130と前記仮設橋桁123との間には、鉛直に第2上部橋脚125をそれぞれ配置する。この状態では、第2上部橋脚125、仮設橋桁123及び下部橋脚122が、レール105や枕木104を支持するための橋桁(仮設橋桁)を構成する。既設橋梁101(図7(a)の斜線部分)及び第1上部橋脚124は不要となるので、それらを撤去する(図7(a)及び(b)参照)。
【0006】
次に、同図(c)に示すように、新設橋梁111を構築する。なお、仮設橋梁121はその後撤去する。
【特許文献1】特開2002−97608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来工法では、既設橋桁103をその設置場所で順次解体し、一方では、列車の運行を確保するための仮設橋桁を構築しているが、それらの作業の間は列車の運行を休止しなければならず、列車の運行に少なからず支障を与えてしまうという問題があった。
【0008】
また、一般に、列車や車両の運行を休止させる場合(特に、列車の場合)には、運行休止時や運行再開時に様々な作業(例えば、列車の運行の安全を確認するための作業など)を必要とする。上述した従来工法の場合には、既設橋桁の解体作業、及び仮設橋桁の構築作業(図6(b)に示すように縦孔103aを既設橋桁103に穿設する作業や、工事桁130の設置作業や、第2上部橋脚125の設置作業等)のために何度も運行の休止及び再開を繰り返さなければならず、作業が煩雑化するという問題があった。
【0009】
本発明は、列車等の運行を休止する期間を短縮すると共に、運行休止回数を少なくして作業の煩雑化を防止する橋梁架替工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、既設橋脚(図1(a)及び(b)の符号2参照)と既設橋桁(同図の符号3参照)とからなる既設橋梁(同図の符号1参照)を、新設橋脚(図5(a)の符号12参照)と新設橋桁(同図の符号13参照)とからなる新設橋梁(同図の符号11参照)に架け替えるための橋梁架替工法において、
各既設橋脚(2)の近傍に仮設橋脚(22)を構築する工程(図1(a)(b)(c)参照)と、
該構築した仮設橋脚(22)に前記既設橋桁(3)を支持させる工程(図1(b)参照)と、
前記仮設橋脚(22)に支持された部分(Z)よりも下方(Z)にて前記既設橋脚(2)を切断する工程(図2(a)(b)参照)と、
該切断された部分(Z)より下側の既設橋脚(2)を撤去する工程(図3(a)(b)参照)と、
前記既設橋桁(3)の下方の空間(S)に新設橋脚(12)を構築する工程(図4(a)(b)参照)と、
前記既設橋桁(3)の下方の空間(S)を橋梁幅方向(Y)に通り抜けるように横取り用ガイド装置(30)を延設配置する工程(図5(a)(b)参照)と、
前記既設橋桁(3)を該横取り用ガイド装置(30)で支持した形で一体的に移動させることにより撤去する工程(図5(b)の符号A参照)と、
前記新設橋桁(13)を、前記横取り用ガイド装置(30)で支持した形で移動させて前記新設橋脚(12)の上方に設置する工程(図5(b)の符号A参照)と、
を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、図1(c)に例示するように、請求項1に係る発明において、前記仮設橋脚(22)を、橋梁幅方向(Y)に沿って少なくとも2本(例えば、22a,22b参照)、前記既設橋脚(2)が設置されている最大幅(ΔY)よりも広い離間距離(ΔY)で配置し、
これら2本の仮設橋脚(例えば、22a,22b)に中間フレーム(40)を架渡し、
該中間フレーム(40)に前記既設橋桁(3)を支持させる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記仮設橋脚(22)を、橋梁長手方向(X)に沿って複数本配置し(例えば、22a,22c,22e,22g)、これら複数本の仮設橋脚(例えば、22a,22c,22e,22g)に前記中間フレーム(40)を架渡した、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の発明において、図5(b) に例示するように、前記既設橋桁(3)の撤去のための移動は、前記中間フレーム(40)を該既設橋桁(3)に連結させた状態で行う、ことを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、既設橋桁の撤去作業を開始する直前までは、列車や車両の通行を休止しなくても作業を進めることができる。既設橋桁の撤去作業の開始から新設橋桁の設置作業の完了までは列車や車両の通行を休止させる必要があるものの、通行を休止させなければならない時間は従来工法の場合に比べて短くすることができ、列車等の運行への支障を低減することができる。ところで、一般に、列車の運行を休止させる場合には、運行休止時や運行再開時に様々な作業(例えば、列車の運行の安全を確認するための作業など)を必要とする。設置されている状態の既設橋桁を順次解体していくような従来工法の場合には、列車の運行の休止及び再開を繰り返して行う必要があるので作業が繁雑となってしまうが、本発明によれば、既設橋桁の解体は撤去後に別の場所(橋梁を設置する場所以外の場所)で行うことができるので列車の運行を休止させる回数を少なくでき、その分、作業の煩雑化を軽減できる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、既設橋脚を切断した状態では、橋脚切断部より上方の部分(特に、既設橋桁)は中間フレームにより補強された状態となるので、該橋脚切断後も列車や車両を安全に通行させることが可能となる。また、中間フレームの採用により、前記既設橋脚が設置されている最大幅よりも広い離間距離を取るように2本の仮設橋脚を配置できるため、既設橋桁の下方にて、既設橋脚の撤去作業、新設橋脚を設置するためのスペースを十分に確保することができる。同時に、中間フレーム及び既設橋桁を広いスパンの仮設橋脚により安定的に支持することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、橋梁幅方向に沿って配置された複数本の仮設橋脚と、橋梁長手方向に沿って配置された複数本の仮設橋脚とにより中間フレームが支持されることとなるため、複数本の仮設橋脚と中間フレームとにより堅固な支持構造を構成でき、既設橋桁をより安定的に支持することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前記既設橋桁の撤去のための移動は、前記中間フレームを該既設橋桁に連結させた状態で行われるため、中間フレームにより既設橋桁が補強された状態となるので、橋梁長手方向に長い橋桁であっても、撤去作業を安定的に行うことが出来る。そして、長い橋桁を一度で撤去できるため、複数回に分けて撤去する場合に比べ、撤去作業時間を短縮でき、列車や車両の通行を休止する時間も短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1乃至図5に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
図1(a)は、既設橋梁の近傍に仮設橋脚や中間フレームを配置した状態の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図であり、同図(c)は、(a)のC−C断面図である。図2(a)は、既設橋脚2の切断箇所等の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。図3(a)は、既設橋脚の切断後の様子の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。図4(a)は、新設橋脚12を構築した状態の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。図5(a)は、新設橋桁を設置する様子の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。
【0021】
本明細書においては、車両や列車が橋梁を通行する方向(図示X方向)を“橋梁長手方向”と称し、該方向と直交する水平な方向(図示Y方向)を“橋梁幅方向”と称するものとする。
【0022】
本発明に係る橋梁架替工法は、既設橋脚2と既設橋桁3とからなる既設橋梁1(図1(b)参照)を、新設橋脚12と新設橋桁13とからなる新設橋梁11(図5(a)参照)に架け替えるための工法であって、
(1) 各既設橋脚2の近傍に仮設橋脚22を構築する工程(図1(a)(b)(c)参照)と、
(2) 該構築した仮設橋脚22に前記既設橋桁3を支持させる工程(図1(b)参照)と、
(3) 前記仮設橋脚22に支持された部分Zよりも下方Zにて前記既設橋脚2を切断する工程(図2(a)(b)参照)と、
(4) 該切断された部分Zより下側の既設橋脚2を撤去する工程(図3(a)(b)参照)と、
(5) 前記既設橋桁3の下方の空間(図3(b)の符号S参照)に新設橋脚12を構築する工程(図4(a)(b)参照)と、
(6) 前記既設橋桁3の下方の空間Sを橋梁幅方向Yに通り抜けるように横取り用ガイド装置30を延設配置する工程(図5(a)(b)参照)と、
(7) 前記既設橋桁3を前記横取り用ガイド装置30で支持した形で一体的に移動させることにより撤去する工程(図5(b)の符号A参照)と、
(8) 前記新設橋桁13を、前記横取り用ガイド装置30で支持した形で移動させて前記新設橋脚12の上方に設置する工程(図5(b)の符号A参照)と、
により構成される。なお、(1)仮設橋脚22の構築、(2)既設橋桁3の支持、(3)既設橋脚2の切断、(4)既設橋脚2の撤去、(5)新設橋脚12の構築、(7)既設橋桁3の撤去、(8)新設橋桁13の設置はその順序で実施すると良い。(6)横取り用ガイド装置30の設置は、(7)既設橋桁3の撤去までに実施すれば良いが、早い段階で横取り用ガイド装置30を設置してしまうと他の作業の邪魔となるおそれもあるので、作業の効率性の点からは、仮設橋脚22の構築、既設橋脚2の切断及び撤去、並びに新設橋脚12の構築が完了するまでは、この横取り用ガイド装置30の設置を行わない方が好ましい。
【0023】
本発明に係る工法によれば、既設橋桁3は一体的に移動させて撤去できるので、従来工法のように、その設置場所で順次解体してから撤去する必要は無く、撤去作業時間を短縮化でき、列車等の運行を休止させなければならない時間も短縮化できる。また、従来工法のように、列車等の運行を確保するための仮設橋桁を構築する必要が無く、仮設橋桁の構築に伴う列車等の休止も回避することができる。つまり、既設橋桁3の撤去作業を開始する直前までは、列車や車両の通行を休止しなくても作業(仮設橋脚22の構築作業や、既設橋脚2の切断作業及び撤去作業や、新設橋脚12の構築作業等)を進めることができるので、列車等の運行への支障を低減することができる。さらに、従来工法のように、橋梁の設置箇所において既設橋桁の解体や仮設橋桁の構築を行う場合には列車等の運行の休止及び再開を繰り返して行う必要があるので作業(運行休止時や運行再開時に必要な作業)が煩雑となってしまうが、本発明の場合には、既設橋桁の解体は橋桁撤去後に別の場所で行うことができ、また、仮設橋桁の構築の必要が無いことから、列車等の運行を休止させる回数を少なくでき、その分、作業の煩雑化を軽減できる。
【0024】
ところで、仮設橋脚22により既設橋桁3を支持する方法としては、図1(b)に示すように、現場打ち鉄筋コンクリートから構築された中間フレーム40をそれらの間に介装させておいて、該フレーム40を介して既設橋桁3を支持する方法がある。例えば、中間フレーム40を仮設橋脚22と既設橋脚2(好ましくは、既設橋脚2の上端部分2a)とにそれぞれ連結すると良い。このような中間フレーム40を使用する場合、既設橋脚2を切断した状態では、橋脚切断部Zより上方の部分(特に、既設橋桁3)は、この中間フレーム40により補強された状態となるので(つまり、元々強度がある既設橋桁3をさらに補強する状態となるので)、該橋脚切断後も列車や車両を安全に通行させることが可能となる。
【0025】
なお、仮設橋脚22は、橋梁幅方向Yに沿って少なくとも2本配置すると良い(例えば、図1(c)にて符号22a,22bを付した2本の仮設橋脚、或いは符号22c,22dを付した2本の仮設橋脚、或いは符号22e,22fを付した2本の仮設橋脚、或いは符号22g,22hを付した2本の仮設橋脚を参照)。そして、それら2本の仮設橋脚(例えば、22a,22b)は、前記既設橋脚2が設置されている最大幅(既設橋脚2が図1(b)(c)に示すように、橋梁幅方向Yに2本配置されているような場合には、符号ΔYで示すように、一方の既設橋脚2の外側面と他方の既設橋脚2の外側面との間の距離を言い、例えば図5に符号12で示すように、2本では無くて1本だけ配置されているような場合にはその1本の両外側面の間の距離を言う)よりも広い離間距離(符号ΔYで示すような、2本の仮設橋脚の離間距離)で配置し、これら2本の仮設橋脚(例えば、22a,22b)に中間フレーム40を架渡し、該中間フレーム40に前記既設橋桁3を支持させるようにすると良い。このような仮設橋脚に中間フレーム40を支持させるためには、中間フレーム40は、図1(c)に符号40Yで示すように、前記仮設橋脚の離間距離ΔYより長く橋梁幅方向Yに延設されている部分を有している必要がある。上述のように、仮設橋脚の離間距離ΔYを前記最大幅ΔYよりも広くした場合には、既設橋桁3の下方にて、既設橋脚2の撤去作業、新設橋脚12を設置するためのスペースを十分に確保することができる(図1(b)の符号S参照)。また、中間フレーム40及び既設橋桁3を広いスパン(図1(c)の符号ΔY参照)の仮設橋脚により安定的に支持することができる。なお、図1(c)の例では、橋梁幅方向Yに沿って配置された2本の仮設橋脚が、橋梁長手方向Xに沿って4組配置されていて、それら8本の仮設橋脚22a,…に1つの中間フレーム40が架渡されているが、各2本の仮設橋脚(例えば、符号22a,22bを付した2本の仮設橋脚、或いは符号22c,22dを付した2本の仮設橋脚、或いは符号22e,22fを付した2本の仮設橋脚、或いは符号22g,22hを付した2本の仮設橋脚)にそれぞれ別々の中間フレームを架渡すようにしても良い。
【0026】
図1(c)中に符号22a,22c,22e,22g、及び符号22b,22d,22f,22hで例示するように、橋梁幅方向Yに沿ってだけでなく橋梁長手方向Xにも沿うように仮設橋脚を複数本配置し、これら複数本の仮設橋脚(例えば、22a,22c,22e,22g)に前記中間フレーム40を架渡すようにしても良い。そのようにした場合には、2次元的に配置された複数本の仮設橋脚22と中間フレーム40とにより堅固な支持構造を構成でき、既設橋桁3をより安定的に支持することができる。
【0027】
かかる場合、中間フレーム40は、孔部を有する形状(例えば、図1(c)に示すように、符号40X及び40Yを付した部分以外を孔部とした井桁形状)にすると良い。その場合には、既設橋桁3の安定的な支持を確保しつつ、中間フレーム40を軽量化できる。なお、そのような孔部を有さない平板状の形状を、本発明の権利範囲から除外する趣旨では無い。また、この中間フレーム40と既設橋桁3との間に補強用の支柱を介装しても良い。
【0028】
なお、中間フレームが上述のように井桁形状である場合、該中間フレーム40と既設橋脚2との接続は公知の“PC・井桁締結方式”により行うと良い。この方式は、中間フレーム40における一対の梁部分(図1(c)の場合には符号40x,40xで示す梁部分)を各既設橋脚2を挟み込むように構築配置し、これら一対の梁部分40x,40xの間にPC鋼棒40a,…を緊張した状態で架渡すことによって各梁部分40xから各既設橋脚2の接触面に圧縮応力を作用させ、その圧縮応力によって中間フレーム40と既設橋脚2との接続を行う方式である。なお、かかる方式以外の方式で中間フレーム40と既設橋脚2とを接続するようにしても良い。
【0029】
図1(b)では、中間フレーム40は、既設橋脚2の上部2aに接続されているが、該既設橋脚上部2aではなく既設橋桁3に直接接続しても良い。
【0030】
なお、上述のような種々の効果が得られる点で中間フレームを使用することが好ましいが、中間フレームを使用しない実施態様、すなわち、
・ 中間フレームを介さずに、仮設橋脚22と既設橋脚2とを直接連結する方法
・ 中間フレームを介さずに、仮設橋脚22と既設橋桁3とを直接連結する方法
を本発明(請求項1に係る発明)の権利範囲から除外する趣旨では無い。
【0031】
一方、既設橋脚2の切断、既設橋脚2の撤去、及び新設橋脚12の構築は、種々の公知の方法で行えば良い。
【0032】
ところで、上述した横取り用ガイド装置30は、既設橋桁3及び新設橋桁13を移動させることができるものであれば、どのような構造であっても良い。最適なものとしては、図5(b)に示すように、既設橋桁3や新設橋桁13を摺動させるための天板部材31と、該天板部材31を支持する多数の脚部32と、により構成されたものを挙げることができる。
【0033】
横取り用ガイド装置30は、既設橋桁3や新設橋桁13を摺動させるように構成されているので、駆動手段としては、それらの橋桁3,13に対して水平方向に駆動力を加えることができるようなもの(例えば、ジャッキ)を用いれば良く(図5(b)の符号34参照)、クレーン等により橋桁3,13を吊り下げたり持ち上げたりする必要は無い。それに伴って種々の効果を得ることができる。以下、その効果について説明する。
【0034】
橋桁3,13を吊り下げたり持ち上げたりする場合には大きな駆動力が必要となり、駆動手段が大型化して、広い設置スペースも必要となる。上述のように橋桁3,13を摺動させるようにした場合には、駆動力も小さくて済み、駆動手段も小型のもので良く、設置スペースも広くなくて良い。例えば、天板部材31にステンレス鋼を使用し、該天板部材31と橋桁3又は13との間に低摩擦部材(例えば、テフロン(登録商標)加工されたもの)33を介装させた場合、駆動力は、被牽引物の重量の0.1%程度で済む。橋桁3,13を吊り下げたり持ち上げたりする場合には、大きな駆動力が必要となり、1回に移動させることのできる橋桁の長さも制限を受けやすいが、本発明によれば、駆動力は小さくて済むので、そのような制限も受けにくい。
【0035】
ところで、図5(b)に示す例では、既設橋桁3の撤去に際しては、低摩擦部材33は、既設橋脚2aの下面(切断面)と天板部材31との間に配置されているが、中間フレーム40’と天板部材31との間に配置しても良い。その場合の低摩擦部材33,33は、橋梁幅方向Yに出来るだけ離して配置すると、既設橋桁3を安定した状態で移動させることができる。
【0036】
既設橋桁3の撤去のための移動は、図5(b)に例示するように、該既設橋桁3に中間フレーム40を連結させた状態で行うと良い。その場合、中間フレーム40により既設橋桁3が補強された状態となるので、橋梁長手方向に長い橋桁3であっても、撤去作業を安定的に行うことが出来る。そして、長い橋桁3を一度で撤去できるため、複数回に分けて撤去する場合に比べ、撤去作業時間を短縮でき、列車や車両の通行を休止する時間も短縮することができる。
【0037】
なお、既設橋桁3を移動させる前に該橋桁3から中間フレーム40を取り外すようにしても良いが、その取り外し作業中は列車や車両の運行を休止させる必要が生じる場合もある。中間フレーム40の取り外しを既設橋桁3の移動後に行うようにした場合には、列車や車両の通行を休止する時間を短縮することができる。
【0038】
ところで、本発明における既設橋桁3は、撤去される直前までは列車や車両を通行させなければならないことから移動不可能な状態で定位置に固定されている必要があり、撤去される時は上述のように横取り用ガイド装置30に沿って移動可能な状態にされている必要がある。以下、そのための工法の一例について詳述する。
【0039】
上述した仮設橋脚22のそれぞれの上面には高さ調整用ジャッキ25を配置しておき、上述した井桁状の中間フレーム40がそれらのジャッキ25により持ち上げられた状態で仮設橋脚22に載置されるようにしておく。この状態では、既設橋桁3は自らの重量で仮設橋脚22にしっかりと(移動不可能な状態に)載置されることとなり、列車等を通行させることが可能となる。一方、上述のように横取り用ガイド装置30を延設配置した後に該既設橋桁3を移動させるには、高さ調整用ジャッキ25により既設橋桁3を持ち上げ、既設橋脚(符号2aに示す部分)の下面と天板部材31との間、或いは中間フレーム40と天板部材31との間に上述した低摩擦部材33を配置し、高さ調整用ジャッキ25を操作して既設橋桁3を下げて既設橋桁3及び中間フレーム40の重量が該低摩擦部材33によりガイド装置30に支持されて前記仮設橋脚22によっては支持されないような状態にする。その後、ジャッキ(横取り用のジャッキ)34を駆動して既設橋桁3等を水平方向に移動させる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、鉄道や道路の橋梁を架け替える用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1(a)は、既設橋梁の近傍に仮設橋脚や中間フレームを配置した状態の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図であり、同図(c)は、(a)のC−C断面図である。
【図2】図2(a)は、既設橋脚2の切断箇所等の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。
【図3】図3(a)は、既設橋脚の切断後の様子の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。
【図4】図4(a)は、新設橋脚12を構築した状態の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。
【図5】図5(a)は、新設橋桁を設置する様子の一例を示す正面図であり、同図(b)は、そのB矢視図である。
【図6】図6(a)は、既設橋梁101を支持するように仮設橋梁121を構築した状態を示す断面図であり、同図(b)は、既設橋桁103に縦孔103aを穿設した状態を示す断面図であり、同図(c)は、枕木104を支持するように第2上部橋脚125等を配置した状態を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、撤去しようとする既設橋梁101を斜線で示した断面図であり、同図(b)は、該既設橋梁101を撤去した状態を示す断面図であり、同図(c)は、新設橋梁111を構築した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 既設橋梁
2 既設橋脚
3 既設橋桁
11 新設橋梁
12 新設橋脚
13 新設橋桁
22 仮設橋脚
40 中間フレーム
S 空間
X 橋梁長手方向
Y 橋梁幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設橋脚と既設橋桁とからなる既設橋梁を、新設橋脚と新設橋桁とからなる新設橋梁に架け替えるための橋梁架替工法において、
各既設橋脚の近傍に仮設橋脚を構築する工程と、
該構築した仮設橋脚に前記既設橋桁を支持させる工程と、
前記仮設橋脚に支持された部分よりも下方にて前記既設橋脚を切断する工程と、
該切断された部分より下側の既設橋脚を撤去する工程と、
前記既設橋桁の下方の空間に新設橋脚を構築する工程と、
前記既設橋桁の下方の空間を橋梁幅方向に通り抜けるように横取り用ガイド装置を延設配置する工程と、
前記既設橋桁を該横取り用ガイド装置で支持した形で一体的に移動させることにより撤去する工程と、
前記新設橋桁を、前記横取り用ガイド装置で支持した形で移動させて前記新設橋脚の上方に設置する工程と、
を有することを特徴とする橋梁架替工法。
【請求項2】
前記仮設橋脚を、橋梁幅方向に沿って少なくとも2本、前記既設橋脚が設置されている最大幅よりも広い離間距離で配置し、
これら2本の仮設橋脚に中間フレームを架渡し、
該中間フレームに前記既設橋桁を支持させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁架替工法。
【請求項3】
前記仮設橋脚を、橋梁長手方向に沿って複数本配置し、
これら複数本の仮設橋脚に前記中間フレームを架渡した、
ことを特徴とする請求項2に記載の橋梁架替工法。
【請求項4】
前記既設橋桁の撤去のための移動は、前記中間フレームを該既設橋桁に連結させた状態で行う、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の橋梁架替工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−193978(P2006−193978A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6784(P2005−6784)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】