説明

橋梁標高値特定装置及びその方法、並びに橋梁の標高値を特定するためのコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】 本発明は、橋梁の標高値を特定する装置及びその方法に関する。
【解決手段】地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出し、標高データ保存部を参照し、該対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、該対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定し、決定された該第1の勾配変化点の第1の標高値及び該第2の勾配変化点の第2の標高値を演算し、演算された該第1の標高値と該第2の標高値に基づいて、該橋梁上の標高値を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の標高値を特定する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経路探索を行うナビゲーション装置において、エネルギー消費量を考慮した経路探索技術への要求の高まりから、道路勾配データを用いて当該エネルギー消費量を計算する技術が提案されている。
このような技術として特許文献1では、リンクごとに記憶された道路勾配データに基づいて、各リンクにおける推定燃費を計算し、計算された推定燃費を利用して最適な経路探索を行う車両用経路探索装置等が提案されている。
上記道路勾配データは、一般にリンク上の所定ポイント(座標)の標高値に基づき定められる。そして、当該リンク上の所定ポイントの標高値は基準標高データ(例えば、10mメッシュ標高データ)に基づいて演算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3551634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、リンク上の所定ポイントの標高値は、メッシュ標高データに基づいて演算することにより特定されていた。ここで、メッシュ標高データとは、国土地理院より提供される標高データであり、ナビソフトと同様にCD−ROM等の記録媒体の形態で入手可能であり、全国の地図が、1辺の長さが50m又は10m程度の小さな正方形の領域に細かく区分され、地図データにおいて所定領域に含まれる任意の点はこの点を取り囲む4つの格子点の標高(メッシュ標高データ)に基づき一般的に線形補間の手法により定めることができる。すなわち、上記所定ポイントの標高値は、当該ポイントを取り囲む4つの格子点のメッシュ標高データに基づき特定される。
【0005】
しかしながら、上記メッシュ標高データは地表面の標高データを採用しているため、上記所定ポイントが地表面に存在する場合には、確からしい標高値を演算することができるものの、橋梁部分等のように地表面上に備えられていない所定ポイントについてはその標高値を正しく演算することができない。当該所定ポイントに対応する水面の標高値を演算してしまうからである。
一方、リンクに含まれる橋梁等のように地表面上に備えられていない部分についても、その標高値をより正確に求めたいという要望がある。
【0006】
図1は、橋梁等を含む一般的な道路リンクと、メッシュ標高データに基づき演算される標高値との関係を示す模式図である。
図1(A)に示すように、橋梁等を含むリンク(図中、符号L)は、一般に、橋梁部分(部分A)、橋梁部分の両端付近に備えられた堤防部分(部分B)、及び、堤防部分に接続する地表道路部分(部分C)とから構成される。
【0007】
図1(B)は、リンクLにおける10mメッシュ標高データを用いて得られた標高値H1を示す模式図である。
このように、10mメッシュ標高データに基づきリンクLの標高値を演算した場合には、部分Cにおける標高値は確からしく演算可能であるものの、堤防部分及び橋梁部分に相当する部分A及びBについては、その標高値を確からしく演算することができていないのが現状であった。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0008】
すなわち、10mメッシュ標高データが、地形図の等高線データ等を基にして作成された標高データであることに鑑みれば、橋梁部分Aは等高線に反映されないため、地表面に連続する水面の標高値を演算してしまうこととなる。また、堤防部分Bについては、地表面と連続しているため、その存在は等高線に反映されるものの、堤防周囲の面積における堤防部分の占める面積の割合が小さいことから、10mメッシュ標高データに基づき演算される標高値は周囲の標高値に均されてしまうこととなる。
【0009】
このような状況を解決すべく、近年標高データベースとして、一部の領域において5mメッシュ標高データ等が整備されてきている。この5mメッシュ標高データに基づく標高データベースには、航空レーザ測量によって取得された標高データに基づいて得られた標高値が格納されている。
【0010】
図1(C)は、リンクLにおける5mメッシュ標高データを用いた標高値H2を示す模式図である。
このように、当該5mメッシュ標高データは堤防部分Bを反映するため、当該部分Bの標高値を確からしく求めることが可能となる。しかしながら、5mメッシュ標高データベースは、計測した標高データから地表面を遮蔽する橋梁等の人工構造物をフィルタリング処理することにより除去されているため、図1(C)に示すように、橋梁部分Aにおいて適切な標高値を取得することができない、という課題があった。
【0011】
そこで、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた結果、橋梁付近における特徴的な標高形状に着目し、橋梁を含むリンクの両端ノードに隣接する勾配変化点を橋梁の始終点とみなし、夫々の勾配変化点に対応する標高値を繋ぐことにより、橋梁の標高値をより確からしく演算できることに想到した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出部と、
標高データ保存部を参照し、前記対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、前記対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する勾配変化点決定部と、
決定された前記第1の勾配変化点の第1の標高値及び前記第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する標高値演算部と、
演算された前記第1の標高値と前記第2の標高値に基づいて、前記橋梁上の標高値を特定する標高値特定部と、
を備える橋梁標高値特定装置。
【0013】
このように規定される第1の局面の橋梁標高値特定装置によれば、標高値の特定対象となる橋梁を含む対象リンクを抽出し、当該対象リンクの両端ノードに夫々隣接する第1の勾配変化点及び第2の勾配変化点(図1(C)に示す符号p及びq)を決定し、当該勾配変化点の標高値に基づいて、当該橋梁における標高値を特定する。このように、対象リンク上の勾配変化点を橋梁の始終点と擬制して橋梁の標高値を特定することにより、地表面から離れて位置する橋梁部分に関して、実際に即した、確からしい標高値を特定することが可能となる。
【0014】
ここで、「橋梁を含むリンク」とは、リンク内において、地表面から離れて存在する橋梁を含むリンクであって、リンクに付された橋梁を含む旨の属性に基づき、あるいは、オペレータの手動により特定される。当該橋梁を含むリンクとしては、1に限られず、隣接する2以上のリンクを対象リンクとすることができる。
「対象リンクの端点」とは、対象リンクと、当該対象リンクに接続するリンクとの接続点を示し、対象リンクとして1のリンクが抽出された場合には、当該対象リンクの両端ノードが当該端点となる。また、対象リンクとして第1のリンクと第2のリンクとが抽出された場合には、第1のリンクの一方のノードであって、第2のリンクと別のリンクとの接続点、同様に、第2のリンクの一方のノードであって、第1のリンクと別のリンクとの接続点が対象リンクの端点となる。
また、「勾配変化点」とは、リンクに付された勾配値の正負が切り替わる点を示す。
【0015】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の橋梁標高値特定装置において、前記第1の標高値と前記第1のノードの標高値との第1の標高差、及び、前記第2の標高値と前記第2のノードの標高値との第2の標高差を夫々算出し、前記第1の標高差及び/又は前記第2の標高差が所定閾値以上のとき前記標高値特定部を作動させる制御部、を備える。
このように規定される第2の局面に規定の橋梁標高値特定装置によれば、橋梁の始終点と擬制される勾配変化点における標高値が、地表道路におけるノードの標高値と所定閾値以上差があるとき、上記橋梁標高の特定処理を行うため、処理装置の負荷を低減できる。
【0016】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1又は第2の局面に規定の橋梁標高値特定装置において、前記対象リンク抽出部は、前記橋梁を含み、かつ、連続する第1のリンク及び第2のリンクを対象リンクとして抽出し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定するノード指定部と、
前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定するノード位置判定部と、
前記判定の結果、前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するとき、該第3のノードを除外するノード除外部と、を備える。
このように規定される第3の局面に規定の橋梁標高値特定装置によれば、2以上のリンクから構成される対象リンクが抽出され、当該2のリンクを接続するノードが第1の勾配変化点と第2の勾配変化点との間に存在するとき、当該ノードを除外する。当該ノードについてメッシュ標高データに基づき演算された標高値は、橋梁上の標高値を演算できていないため、橋梁標高値の特定に適さない。したがって、当該ノードを除外することで、橋梁部分についてより確からしい標高値を取得することが可能となる。
【0017】
また、この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出ステップと、
標高データ保存部を参照し、前記対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、前記対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する勾配変化点決定ステップと、
決定された前記第1の勾配変化点の第1の標高値及び前記第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する標高値演算ステップと、
演算された前記第1の標高値と前記第2の標高値に基づいて、前記橋梁上の標高値を特定する標高値特定ステップと、
を備える、橋梁標高値特定方法。
このように規定される第4の局面の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0018】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、
第4の局面に規定の橋梁標高値特定方法において、前記第1の標高値と前記第1のノードの標高値との第1の標高差、及び、前記第2の標高値と前記第2のノードの標高値との第2の標高差を夫々算出し、前記第1の標高差及び/又は前記第2の標高差が所定閾値以上のとき前記標高値特定ステップを作動させる制御ステップ、を備える。
このように規定される第5の局面の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0019】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
第4又は第5の局面に規定の橋梁標高値特定方法において、前記対象リンク抽出ステップは、前記橋梁を含み、かつ、連続する第1のリンク及び第2のリンクを対象リンクとして抽出し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定するノード指定ステップと、
前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定するノード位置判定ステップと、
前記判定の結果、前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するとき、該第3のノードを除外するノード除外ステップと、を備える。
このように規定される第6の局面の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0020】
更に、この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
橋梁の標高値を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出手段と、
標高データ保存部を参照し、前記対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、前記対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する勾配変化点決定手段と、
決定された前記第1の勾配変化点の第1の標高値及び前記第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する標高値演算手段と、
演算された前記第1の標高値と前記第2の標高値に基づいて、前記橋梁上の標高値を特定する標高値特定手段、
として機能させる、コンピュータプログラム。
このように規定される第7の局面の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0021】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記第1の標高値と前記第1のノードの標高値との第1の標高差、及び、前記第2の標高値と前記第2のノードの標高値との第2の標高差を夫々算出し、前記第1の標高差及び/又は前記第2の標高差が所定閾値以上のとき前記標高値特定手段を作動させる制御手段、として機能させる。
このように規定される第8の局面の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0022】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
第7又は第8の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記対象リンク抽出手段は、前記橋梁を含み、かつ、連続する第1のリンク及び第2のリンクを対象リンクとして抽出し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定するノード指定手段と、
前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定するノード位置判定手段と、
前記判定の結果、前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するとき、該第3のノードを除外するノード除外手段、として機能させる。
このように規定される第9の局面の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0023】
第7〜第9のいずれかの局面に規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第10の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は橋梁を含むリンクの一例を示す模式図であり、(B)は10mメッシュ標高データを用いて取得された標高値を示す模式図であり、(C)は5mメッシュ標高データを用いて取得された標高値を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態の橋梁標高値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の橋梁標高値特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施の形態の橋梁標高値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の橋梁標高値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態の標高値特定装置を構成するコンピュータプログラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態の橋梁標高値特定装置1を説明する。
図2に、橋梁標高値特定装置1の概略構成を示す。
図2に示すように、この橋梁標高値特定装置1は、地図データ保存部3、標高データ保存部4、対象リンク抽出部5、第1保存部6、勾配変化点決定部7、第2保存部8、標高値演算部9、第3保存部10、標高値特定部11及び第4保存部12を備えている。
【0026】
地図データ保存部3には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
標高データ保存部4には、標高データが地図データに関連付けられて保存されている。当該標高データは予め用意されたデータであっても良く、特には、所定サイズのメッシュに区切った領域単位で表され、地形の標高情報が付与されたデータであることが好ましい。このようなデータとして、例えば、メッシュ標高データを挙げることができ、特には、5mメッシュ標高データであることが好ましい。
【0027】
対象リンク抽出部5は、地図データ保存部3を参照し、標高値の特定対象となる、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する。当該抽出の方法は、特に限定されないが、例えば、当該地図データから任意に選択された領域内に存在するリンクを自動的に抽出することとできる。この場合、橋梁を含む旨のリンク属性に基づき、当該属性の付されたリンクを対象リンクとして抽出することとできる。また、別の方法として、オペレータの手動によるリンク抽出を許容するよう設計されていても良い。
【0028】
また、対象リンク抽出部5は、対象リンクの両端ノードを併せて抽出することとしても良い。抽出される対象リンクの数は、1に限られず、隣接する2以上のリンクを対象リンクとして抽出することとできる。対象リンク抽出部5において、対象リンクとして2以上のリンクが抽出された場合、後述する勾配変化点決定部7、標高値演算部9及び標高値特定部11は、当該2以上のリンクを一体として処理することとできる。抽出された当該対象リンクは、第1保存部6に保存される。
【0029】
勾配変化点決定部7は、標高データ保存部4及び第1保存部6を参照して、当該対象リンクにおける第1の勾配変化点及び第2の勾配変化点を決定する。すなわち、第1保存部6に保存された対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、当該対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する。当該勾配変化点の決定の方法は、精度良く勾配変化点を決定することができれば特に限定されず、例えば、リンクに付与された勾配情報に基づき、勾配変化量を演算し、正の勾配変化量と負の勾配変化量との境界点を勾配変化点として求めることとできる。同様にして、正の勾配値と負の勾配値との境界点を勾配変化点として求めても良い。また、他の方法としては、リンクに付与された標高データに基づいて勾配値を計算し、勾配変化点を求めることもできる。
【0030】
さらには、勾配変化点に替えて、対象リンク内標高値の頂点を決定することもできる。当該対象リンク内の標高頂点としては、例えば、標高データ保存部4を参照して、第1のノードに隣接する第1の標高頂点と、第2のノードに隣接する第2の標高頂点とを決定することができる。当該標高頂点は、第1のノード(あるいは第2のノード)に接続する正の勾配値を有する第1の曲線と当該第1の曲線に連続する負の勾配値を有する第2の曲線との交点とすることとしても良い。
決定された第1の勾配変化点及び第2の勾配変化点は、当該座標と関連付けて第2保存部8に保存される。
【0031】
標高値演算部9は、標高データ保存部4と第2保存部8を参照して、当該第1の勾配変化点の第1の標高値及び第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する。当該演算の方法としては、当該勾配変化点を取り囲む4つのメッシュ標高データに基づき線形補間の手法により定めることができる。演算された第1の標高値及び第2の標高値は、当該座標と関連付けて第3保存部10に保存される。
【0032】
標高値特定部11は、第3保存部10を参照して、橋梁部分の標高値を特定する。当該特定の方法としては、当該橋梁の標高値を確からしく特定できる方法であれば特に限定されず、例えば、演算された第1の標高値と第2の標高値を直線補間することにより特定することができる。特定された橋梁部分の標高値は、当該部分の座標と関連付けて第4保存部12に保存される。また、橋梁と堤防天端に設けられた道路とが立体交差する旨の情報が得られる場合には、標高値特定部11は、当該情報に基づき、標高値演算部9で演算された勾配変化点の標高値に所定値(例えば5m等)を足した値を橋梁部分の標高値と特定することができる。
【0033】
図3を用いて、図2に示す橋梁標高値特定装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、地図データ保存部3を参照し、標高値を特定する対象となる橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出し、保存する。
ステップ3では、標高データ保存部4及び第1保存部6を参照し、ステップ1で抽出された対象リンクの第1の勾配変化点及び第2の勾配変化点を決定し、保存する。
【0034】
ステップ5では、標高データ保存部4及び第2保存部8を参照し、ステップ3で決定された第1の勾配変化点の第1の標高値及び第2の勾配変化点の第2の標高値を演算し、保存する。
ステップ7では、第3保存部10を参照し、橋梁部分の標高値を特定し、保存する。当該標高値の特定は、ステップ5で演算された第1の標高値及び第2の標高値を直線補間することにより特定可能である。
【0035】
図4に、他の実施の形態の橋梁標高値特定装置21を示す。図4において、図2と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図4に示すのは、所定条件を満たしたとき橋梁標高値を特定可能な橋梁標高値特定装置21である。すなわち、当該装置21は、図2に示す橋梁標高値特定装置1において、制御部23を更に備えている。
制御部23は、標高差算出部25、比較部26及びトリガ部27を備え、所定条件を満たすとき、標高値特定部11を作動させるべく、信号を出力する。
【0036】
標高差算出部25は、標高データ保存部4、第1保存部6及び第3保存部10を参照して、第1の標高値と第1のノードの標高値との第1の標高差を算出する。同様にして、第2の標高値と第2のノードの標高値との第2の標高差を算出する。
比較部26は、算出された第1の標高差と予め設定された閾値とを比較する。同様にして、第2の標高差と当該閾値とを比較する。
トリガ部27は、比較部26の比較結果を参照し、当該第1の標高差及び/又は第2の標高差が当該閾値以上のとき、標高値特定部11を作動させるためのトリガ信号を出力する。
【0037】
上述の通り、この橋梁標高値特定装置21において、制御部23は、第1の標高値と第1のノードの標高値との標高差に基づき標高値特定部11を作動させるためのトリガ信号を出力するが、他の例として、第1の標高値に関連付けられた位置と第1のノードの位置との距離に基づき当該トリガ信号を出力することとしても良い。当該距離が大きいほど、第1の標高値と第1のノードの標高値との標高差も大きくなる可能性が高いからである。
【0038】
図5に、他の実施の形態の橋梁標高値特定装置31を示す。図5において、図2及び図4と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図5に示すのは、より確からしい橋梁標高値を特定すべく、標高値特定に適さないノードを除外して橋梁の標高値を特定する橋梁標高値特定装置31である。すなわち、当該装置31は、図2に示す橋梁標高値特定装置1において、ノード指定部33、ノード位置判定部35及びノード除外部37を更に備えている。
【0039】
ノード指定部33は、第1保存部6を参照して、対象リンク抽出部5において対象リンクとして抽出された、隣接する第1のリンクと第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定する。
ノード位置判定部35は、ノード指定部33及び第2保存部8を参照して、指定された当該第3のノードの位置を判定する。すなわち、ノード指定部33で指定された第3のノードが、第2保存部8に保存された第1の勾配変化点と第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定する。
ノード除外部37は、ノード位置判定部35の判定の結果、当該第3のノードが第1の勾配変化点と第2の勾配変化点との間に存在すると認められるとき、当該第3のノードを除外する。
【0040】
図6は橋梁標高値特定装置21のハード構成を示すブロック図である。
この装置21のハード構成は、一般的なコンピュータシステムと同様に中央制御装置221に対してシステムバス222を介して各種の要素が結合されたものである。
中央制御装置221は汎用的なCPU、メモリ制御装置、バス制御装置、割り込み制御装置更にはDMA(直接メモリアクセス)装置を含み、システムバス222もデータライン、アドレスライン、制御ラインを含む。システムバス222にはRAM(ランダムアクセスメモリ)223、不揮発メモリ(ROM224,CMOS−RAM225等)からなるメモリ回路が接続されている。RAM223に格納されるデータは中央制御装置221や他のハードウエア要素によって読み取られたり、書き換えられたりする。不揮発メモリのデータは読み取り専用であり、装置をオフとしたときにもそこのデータは喪失されない。このハードウエアを制御するシステムプログラムはハードディスク装置227に保存されており、また、RAM223に保存されており、ディスクドライブ制御装置226を介して適宜中央制御装置221に読みこまれて使用される。このハードディスク装置227には、汎用的な構成のコンピュータシステムを橋梁標高値特定装置21として動作させるためのコンピュータプログラムを保存する領域が確保される。
このハードディスク装置227の所定の領域が、標高値特定部11の結果を保存する保存部用に割り付けられる。
ハードディスク装置227の他の領域が地図データ保存部3及び標高データ保存部4用に割り付けられる。
【0041】
システムバス222には、フレキシブルディスク232に対してデータの読み込み及び書き込みを行うフレキシブルドライブ制御装置231、コンパクトディスク234に対してそれからデータの読み取りを行うCD/DVD制御装置233が接続されている。この例ではプリンタインターフェース237にプリンタ238を接続させている。
システムバス222にはキーボード・マウス制御装置241が接続され、キーボード242及びマウス243からのデータ入力を可能としている。モニタ245がモニタ制御装置244を介してシステムバス222に接続されている。モニタ245にはCRTタイプ、液晶タイプ、プラズマディスプレイタイプなどを利用することができる。
各種の要素(モデムなど)の増設を可能とするため空きのスロット251が準備されている。
【0042】
このコンピュータシステムからなる橋梁標高値特定装置21を稼動させるために必要なプログラム(OSプログラム、アプリケーションプログラム(本発明のものも含む))は、各種の記録媒体を介してシステムの中にインストールされる。例えば非書き込み記録媒体(CD−ROM、ROMカード等)、書き込み可能記録媒体(FD、DVD等)、更にはネットワークNを利用して通信媒体の形式でインストールすることも可能である。勿論、不揮発メモリ224、225やハードディスク装置227に予めこれらのプログラムを書きこんでおくこともできる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0044】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 21 31 橋梁標高値特定装置
3 地図データ保存部
4 標高データ保存部
5 対象リンク抽出部
7 勾配変化点決定部
9 標高値演算部
11 標高値特定部
23 制御部
33 ノード指定部
35 ノード位置判定部
37 ノード除外部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出部と、
標高データ保存部を参照し、前記対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、前記対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する勾配変化点決定部と、
決定された前記第1の勾配変化点の第1の標高値及び前記第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する標高値演算部と、
演算された前記第1の標高値と前記第2の標高値に基づいて、前記橋梁上の標高値を特定する標高値特定部と、
を備える、橋梁標高値特定装置。
【請求項2】
前記第1の標高値と前記第1のノードの標高値との第1の標高差、及び、前記第2の標高値と前記第2のノードの標高値との第2の標高差を夫々算出し、前記第1の標高差及び/又は前記第2の標高差が所定閾値以上のとき前記標高値特定部を作動させる制御部、
を備える、請求項1に記載の橋梁標高値特定装置。
【請求項3】
前記対象リンク抽出部は、前記橋梁を含み、かつ、連続する第1のリンク及び第2のリンクを対象リンクとして抽出し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定するノード指定部と、
前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定するノード位置判定部と、
前記判定の結果、前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するとき、該第3のノードを除外するノード除外部と、
を備える、請求項1又は2に記載の橋梁標高値特定装置。
【請求項4】
地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出ステップと、
標高データ保存部を参照し、前記対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、前記対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する勾配変化点決定ステップと、
決定された前記第1の勾配変化点の第1の標高値及び前記第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する標高値演算ステップと、
演算された前記第1の標高値と前記第2の標高値に基づいて、前記橋梁上の標高値を特定する標高値特定ステップと、
を備える、橋梁標高値特定方法。
【請求項5】
前記第1の標高値と前記第1のノードの標高値との第1の標高差、及び、前記第2の標高値と前記第2のノードの標高値との第2の標高差を夫々算出し、前記第1の標高差及び/又は前記第2の標高差が所定閾値以上のとき前記標高値特定ステップを作動させる制御ステップ、
を備える、請求項4に記載の橋梁標高値特定方法。
【請求項6】
前記対象リンク抽出ステップは、前記橋梁を含み、かつ、連続する第1のリンク及び第2のリンクを対象リンクとして抽出し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定するノード指定ステップと、
前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定するノード位置判定ステップと、
前記判定の結果、前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するとき、該第3のノードを除外するノード除外ステップと、
を備える、請求項4又は5に記載の橋梁標高値特定方法。
【請求項7】
橋梁の標高値を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図データ保存部から、橋梁を含むリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出手段と、
標高データ保存部を参照し、前記対象リンクの一方の端点に対応する第1のノードに隣接する第1の勾配変化点と、前記対象リンクの他方の端点に対応する第2のノードに隣接する第2の勾配変化点とを決定する勾配変化点決定手段と、
決定された前記第1の勾配変化点の第1の標高値及び前記第2の勾配変化点の第2の標高値を演算する標高値演算手段と、
演算された前記第1の標高値と前記第2の標高値に基づいて、前記橋梁上の標高値を特定する標高値特定手段、
として機能させる、コンピュータプログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、更に、
前記第1の標高値と前記第1のノードの標高値との第1の標高差、及び、前記第2の標高値と前記第2のノードの標高値との第2の標高差を夫々算出し、前記第1の標高差及び/又は前記第2の標高差が所定閾値以上のとき前記標高値特定手段を作動させる制御手段、
として機能させる、請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、更に、
前記対象リンク抽出手段は、前記橋梁を含み、かつ、連続する第1のリンク及び第2のリンクを対象リンクとして抽出し、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとの接続点に対応する第3のノードを指定するノード指定手段と、
前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するか否かを判定するノード位置判定手段と、
前記判定の結果、前記第3のノードが前記第1の勾配変化点と前記第2の勾配変化点との間に存在するとき、該第3のノードを除外するノード除外手段、
として機能させる、請求項7又は8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242737(P2012−242737A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114787(P2011−114787)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】