説明

橋脚建替方法および建替橋脚構造

【課題】騒音や排ガスの発生を抑制するとともに大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ること。
【解決手段】既設橋脚101から新設橋脚1に建て替える橋脚建替方法において、既設橋脚101の橋軸方向両側にて新設橋脚1を倒した形態で地組するとともに、各新設橋脚1をそれぞれ基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置する工程と、次に、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こし、既設橋脚101を橋軸方向で挟むように各新設橋脚1を各基礎部7に固定する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚を建て替える際の方法、および建て替えられる橋脚の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の橋脚の建て替え方法は、建て替え対象となる橋脚を挟み込むように、橋軸方向両側に新設橋脚を1つずつ建て、それらの新設橋脚によって橋脚の上部構造が支持される状態とした後、既設の橋脚を撤去するものである。
【0003】
また、従来、例えば、特許文献2に記載の高架橋の構築方法は、高架橋の施工区域の道路に設置された橋脚基礎部の近傍において、橋脚を道路の長手方向に倒した状態で橋脚を構築し、この橋脚の下端部を回転中心として橋脚基礎部に係合させて、この橋脚を起こして橋脚基礎部の上に立設させ、この立設された橋脚上に橋梁を持ち上げて新設架設するものである。
【0004】
また、橋梁の上部工であるが、従来、例えば、特許文献3に記載の橋梁の施工方法および橋梁の上部工は、橋脚上に架設すべき上部工を橋軸に交する方向に複数に分割するとともにこれら分割体を連結して互いに折り畳める構造としておき、上部工を、複数の分割体を折り畳んだ状態で橋脚上に設置し、続いて分割体を展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4369506号公報
【特許文献2】特開2006−45912号公報
【特許文献3】特許第3923033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の橋脚の建て替え方法は、既設橋脚を挟み込むように新設橋脚を1つずつ建てるにあたり、まず新設橋脚の脚柱を設置し、次に脚柱の上方へ新規梁を設置し、それらの支承を介して上部構造を新設橋脚に支持するようにしている。しかしながら、脚柱の設置および梁の設置の際には、大型の重機を頻繁に使用しなければならず、騒音や排ガスの発生が懸念されるとともに、大規模な交通規制を伴うことになる。しかも、新設橋脚を1つずつ建てるには、それぞれの設置に日数を要してしまうことから、さらなる工期の短縮化が切望される。
【0007】
また、上述した特許文献2に記載の高架橋の構築方法も、特許文献1と同様に、橋脚を起こす際に大型の重機を頻繁に使用しなければならず、騒音や排ガスの発生が懸念されるとともに、大規模な交通規制を伴う。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、騒音や排ガスの発生を抑制するとともに大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ることのできる橋脚建替方法および建替橋脚構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の橋梁の橋脚建替方法は、既設橋脚から新設橋脚に建て替える橋脚建替方法において、前記既設橋脚の橋軸方向両側にて新設橋脚を倒した形態で地組するとともに、各前記新設橋脚をそれぞれ基礎部に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置する工程と、次に、各前記新設橋脚を前記既設橋脚に支持して共に吊り上げて立て起こし、前記既設橋脚を橋軸方向で挟むように各前記新設橋脚を各前記基礎部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この橋脚建替方法によれば、各新設橋脚を既設橋脚に支持して共に吊り上げて立て起こすことから、新設橋脚を吊り上げる大型の重機を使用しない。このため、大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。しかも、各新設橋脚を共に立て起こすことから、工期の短縮化を図ることができる。さらに、各新設橋脚を既設橋脚に支持して共に吊り上げて立て起こすと、各新設橋脚の重量を、その間の既設橋脚でバランスよく支持することができ、既設橋脚に無理な力を加えることなく、新設橋脚を安定して、かつ安全に立て起こすことができる。
【0011】
また、本発明の橋脚建替方法は、前記新設橋脚を地組するときに当該新設橋脚の一部を折り畳み可能に構成しておき、各前記新設橋脚を立て起こす前、または各前記橋脚を立て起こした後に、各前記新設橋脚を展開することを特徴とする。
【0012】
この橋脚建替方法によれば、新設橋脚を地組するときに当該新設橋脚の一部を折り畳み可能に構成することで、地組において作業帯を占有する領域が少なくなることから、作業帯の領域を狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制を低減することができる。
【0013】
また、本発明の橋脚建替方法は、前記既設橋脚および前記新設橋脚が、主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材が立設され、各前記上段柱部材の上端に上段梁部材が架設されて、前記下段梁部材と前記上段梁部材とに橋梁上部工がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、前記既設橋脚の橋軸方向両側にて新設橋脚を倒した形態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材が連結された中間部を前記主柱部材に対して折り畳んで地組するとともに、前記主柱部材を前記基礎部に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置しておき、その後、各前記中間部を展開してから前記新設橋脚を立て起こすことを特徴とする。
【0014】
この橋脚建替方法によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ることができる。さらに、新設橋脚を安定して、かつ安全に立て起こすことができる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯の領域を狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制を低減することができる。
【0015】
また、本発明の橋脚建替方法は、前記主柱部材を前記基礎部に固定した後、前記上段梁部材を幅員方向にスライド移動させて各前記上段柱部材上に架設することを特徴とする。
【0016】
この橋脚建替方法によれば、上段梁部材を幅員方向にスライド移動させて各上段柱部材上に架設することにより、上段梁部材の架設に大型のクレーンを頻繁に使用することを防ぐことから、大型のクレーンを使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型のクレーンを使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。
【0017】
また、本発明の橋脚建替方法は、前記主柱部材を前記基礎部に固定した後、前記上段梁部材を前記上段柱部材側に支持して水平方向で回転移動させて各前記上段柱部材上に架設することを特徴とする。
【0018】
この橋脚建替方法によれば、上段梁部材を前記上段柱部材側に支持して水平方向で回転移動させて各上段柱部材上に架設することにより、上段梁部材の架設に大型のクレーンを頻繁に使用することを防ぐことから、大型のクレーンを使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型のクレーンを使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。
【0019】
また、本発明の橋脚建替方法は、前記既設橋脚および前記新設橋脚が、主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材を立設して各前記上段柱部材の上端が上段梁部材で連結され、前記下段梁部材と前記上段梁部材にそれぞれ橋梁上部工が支持されるラケット型に構成されており、前記既設橋脚の橋軸方向両側にて新設橋脚を倒した形態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材の一部が連結された各中間部を前記主柱部材に対して折り畳んで地組するとともに、前記主柱部材を前記基礎部に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置しておき、その後、各前記中間部を展開してから前記新設橋脚を立て起こすことを特徴とする。
【0020】
この橋脚建替方法によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ることができる。さらに、新設橋脚を安定して、かつ安全に立て起こすことができる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯の領域を狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制を低減することができる。特に、下段梁部材に上段柱部材の一部が連結された中間部として構成することで、中間部を折り畳んだ形態において、幅員方向がより小型化されるため、作業帯の領域をより狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制をより低減することができる。
【0021】
また、本発明の橋脚建替方法は、前記主柱部材を前記基礎部に固定した後、前記上段柱部材の残りの一部に前記上段梁部材の一部が連結された各中間梁部を各前記上段柱部材の一部に連結し、その後、前記下段梁部材に支持される下段の橋梁上部工から前記上段梁部材の残りの一部を揚上して各前記中間梁部間に架設することを特徴とする。
【0022】
この橋脚建替方法によれば、下段の橋梁上部工から上段梁部材の残りの一部を揚上することにより、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。
【0023】
また、本発明の橋脚建替方法は、他の基礎部に対して回動立て起こし可能に設けられるとともに前記新設橋脚の一部に取り付けられる回動部を備え、前記新設橋脚を立て起こすときに前記回動部によって前記新設橋脚の回動を補助することを特徴とする。
【0024】
この橋脚建替方法によれば、新設橋脚を立て起こすときに回動部によって新設橋脚の回動を補助することにより、新設橋脚の回動のバランスをより良くして、新設橋脚をより安定して、かつより安全に立て起こすことができる。
【0025】
上述の目的を達成するために、本発明の建替橋脚構造は、既設橋脚から建て替えられる建替橋脚構造であって、前記既設橋脚の橋軸方向両側にて倒した状態で一部を折り畳み可能に構成されて地組されることを特徴とする。
【0026】
この建替橋脚構造によれば、各部材を高く吊り上げるような大型の重機を必要とせず、比較的小型の重機を用いることから、大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯の領域を狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制を低減することができる。
【0027】
また、本発明の建替橋脚構造は、主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材が立設され、各前記上段柱部材の上端に上段梁部材が架設されて、前記下段梁部材と前記上段梁部材とに橋梁上部工がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、前記既設橋脚の橋軸方向両側にて倒した状態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材が連結された中間部が、前記主柱部材に対して折り畳んだ形態で連結されることを特徴とする。
【0028】
この建替橋脚構造によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯の領域を狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制を低減することができる。
【0029】
また、本発明の建替橋脚構造は、主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材が立設され、各前記上段柱部材の上端に上段梁部材が架設されて、前記下段梁部材と前記上段梁部材とに橋梁上部工がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、前記既設橋脚の橋軸方向両側にて倒した状態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材の一部が連結された各中間部が、前記主柱部材に対して折り畳んだ形態で連結されることを特徴とする。
【0030】
この建替橋脚構造によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することができる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯の領域を狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制を低減することができる。特に、下段梁部材に上段柱部材の一部が連結された中間部として構成することで、中間部を折り畳んだ形態において、幅員方向がより小型化されるため、作業帯の領域をより狭めることができ、作業帯の確保による大規模な交通規制をより低減することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、騒音や排ガスの発生を抑制するとともに大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、既設橋脚の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の側面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の平面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の平面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の平面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1に係る他の橋脚建替方法の正面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の側面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の平面図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の側面図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の平面図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図19】図19は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態2に係る橋脚建替方法の正面図である。
【図21】図21は、本発明の他の実施の形態に係る橋脚建替方法の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0034】
[実施の形態1]
図1は、既設橋脚の斜視図である。図1に示すように、本実施の形態において架け替えられる既設橋脚101は、いわゆるラケット型に構成されている。具体的に、既設橋脚101は、1つの主柱部材102の上端の幅員方向の両側に下段梁部材103が延在されている。下段梁部材103は、その延在端にそれぞれ上段柱部材104が立設されている。上段柱部材104は、上端が上段梁部材105で連結されている。この既設橋脚101は、下段梁部材103と上段梁部材105にそれぞれ橋梁上部工106が支持されている。橋梁上部工106は、橋軸方向に延在して設けられ、主に、主桁106aと床版106bとで構成されている。
【0035】
図2〜図10は、実施の形態1に係る橋脚建替方法を示す。本実施の形態の橋脚建替方法は、既設橋脚101から新設橋脚1に建て替えるものである。新設橋脚1は、既設橋脚101と同様のラケット型であり、図10に示すように、1つの主柱部材2と、各下段梁部材3と、各上段柱部材4と、上段梁部材5とを含み構成され、各下段梁部材3と上段梁部材5とにそれぞれ橋梁上部工106が支持される。なお、橋梁上部工106は、主桁106aの下端に支承106cが設けられ、当該支承106cを介して各下段梁部材3や上段梁部材5に支持される。また、本実施の形態における新設橋脚1は、既設橋脚101よりも下段梁部材3および上段梁部材5が幅員方向で大きく形成されており、例えば、将来橋梁上部工106を幅員方向に拡張することが可能に構成されている。
【0036】
既設橋脚101から新設橋脚1に建て替えるにあたり、まず、図2〜図4に示すように、既設橋脚101の橋軸方向両側にて各新設橋脚1が倒した形態で地組される。新設橋脚1の地組は、既設橋梁の下方の作業帯Wにおいて、図4に示すように、主柱部材2、各下段梁部材3、および各上段柱部材4が纏めて行われる。上段梁部材5の地組は、同様に作業帯Wにおいて、主柱部材2、各下段梁部材3、および上段柱部材4とは別に行われる。作業帯Wは、既設橋脚101の橋軸方向において、主柱部材2の間の領域、および下段梁部材103の下方の領域が用いられる。主柱部材2の間の領域は、既設橋梁の下方の道路の中央分離帯などに用いられている場合があり、下段梁部材103の下方の領域は、既設橋梁の下方の道路の一部(例えば数車線の道路の1車線)に用いられている場合がある。
【0037】
主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の地組は、図2および図3に示すように、地組用架台Pの上で行われ、図4に示すように、主柱部材2を下部Aとして組み上げるとともに、主柱部材2の幅員方向の両側の各下段梁部材3および各上段柱部材4を一体に接続した中間部Bとして組み上げる。そして、下部A(主柱部材2)に対して各中間部B(下段梁部材3および上段柱部材4)を、ヒンジ部材6を介して折り畳み可能に取り付ける。図4においては、主柱部材2の上端となる側で、各中間部B同士が幅員方向で近接するように折り畳み可能に取り付けられる。そして、この地組の段階では、各中間部Bが下部Aに対して折り畳んだ形態とする。また、主柱部材2は、既設橋脚101における主柱部材102の基端の橋軸方向両側に設けられた基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に、ヒンジ機構である回転支持部材8を介して取り付ける。
【0038】
次に、図5〜図7に示すように、上述のように既設橋脚101の橋軸方向の両側で地組された各新設橋脚1(主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4)を、下部A(主柱部材2)に対して各中間部B(下段梁部材3および上段柱部材4)を展開した状態で固定しておき、この新設橋脚1を、既設橋脚101を挟むように共に立て起こし、主柱部材2を基礎部7に固定する。なお、新設橋脚1を立て起こすときは、下段梁部材3との干渉を防ぐため、図5に示すように、下段の橋梁上部工106の支承106cを外しておき、主柱部材2を基礎部7に固定した後、下段梁部材3と、主桁106aとの間に支承106cを設置する。
【0039】
各新設橋脚1を、既設橋脚101を挟むように共に立て起こすため、本実施の形態では、既設橋脚101の各上段柱部材104の外側面に、それぞれワイヤジャッキ9およびシーブ10を取り付け、各ワイヤジャッキ9によって各シーブ10を介した各ワイヤ11を引き上げることで、当該各ワイヤ11によって回転支持部材8を回転支点として各新設橋脚1を同時に立て起こす。ワイヤジャッキ9は、既設橋脚101の各上段柱部材104の外側面に対してジャッキ取付金具9aによって取り付けられる。また、シーブ10は、既設橋脚101の各上段柱部材104の外側面に対してシーブ取付金具10aによって取り付けられる。また、ワイヤ11の引上端部は、それぞれの新設橋脚1の各上段柱部材104に対してワイヤ取付金具11aによって取り付けられる。各金具9a,10a,11aは、図2〜図4に示すように、上述の主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の地組のときに予め取り付けておくことができる。
【0040】
次に、各新設橋脚1の主柱部材2を基礎部7に固定した後、図8〜図10に示すように、上段梁部材5を各上段柱部材4上に架設し、当該上段梁部材5を各上段柱部材4に固定する。上段梁部材5は、上述の作業帯Wで地組する。この地組の際、上段梁部材5の長さ方向の一端に、当該長さ方向に延在する手延桁12を固定するとともに、長さ方向の他端側にカウンタウエイト13を設置する。そして、図8に示すように、地組した上段梁部材5を、既設橋脚101の幅員方向外側において橋軸方向に沿うように水平な形態でクレーン(図示せず)によって吊り上げた後、幅員方向に沿うように水平方向に回転させることで、橋梁上部工106と一方の上段柱部材4との間に挿入する。その後、図9に示すように、上段梁部材5の中程と手延桁12とをそれぞれ上段柱部材4に取り付けたスライドジャッキ14の上に置く。そして、上段梁部材5が各上段柱部材4上に架設される位置までスライドジャッキ14によって上段梁部材5を幅員方向で一端側にスライド移動させる。その後、図10に示すように、上段梁部材5の両端を各上段柱部材4に連結する。なお、スライドジャッキ14は、各上段柱部材4に対してスライドジャッキ取付金具14aによって取り付けられる。また、必要に応じて、スライドジャッキ14とスライドジャッキ取付金具14aとの間に高さ調整台14bを設ける。スライドジャッキ取付金具14aは、上述の主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の地組のときに予め取り付けておくことができる。
【0041】
このようにして新設橋脚1が設置される。その後、既設橋脚101は、主柱部材102のみを残して当該主柱部材102を新設橋脚1の主柱部材2と一体に連結する。その他、主柱部材102以外の部分や、既設橋脚101そのものを残して新設橋脚1を一体に連結してもよい。
【0042】
ところで、上述した橋脚建替方法では、上段梁部材5を各上段柱部材4上に架設する場合、上段梁部材5を幅員方向でスライド移動させるが、その他の方法によって上段梁部材5を各上段柱部材4上に架設することも可能である。図11は、本実施の形態に係る他の橋脚建替方法の正面図である。上段梁部材5は、上述の作業帯Wで地組する。この地組の際、図11に示すように、上段梁部材5の長さ方向の他端に、当該長さ方向に延在する腕部材18を固定するとともに、当該腕部材18の先端にカウンタウエイト19を設置する。そして、地組した上段梁部材5を、既設橋脚101の幅員方向外側において橋軸方向に沿うように水平な形態でクレーン(図示せず)によって吊り上げ、上段梁部材5の他端を回転装置20を介して一方の上段柱部材4に支持する。その後、回転装置20によって上段梁部材5を水平方向に回転移動させ、上段梁部材5を橋梁上部工106と上段柱部材4との間に挿入し、図11に示すように、上段梁部材5が各上段柱部材4上に架設される位置まで移動させる。その後、上段梁部材5の両端を各上段柱部材4に連結する。回転装置20は、上述の主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の地組のときに予め取り付けておくことができる。なお、回転装置20によって上段梁部材5を水平方向に回転移動させる方法においては、図11に一点鎖線で示すように、上段梁部材5を長さ方向の中間で半割し、分割した各上段梁部材5を各上段柱部材4に対して回転装置20で回転させ、その後各上段梁部材5を連結することで上段梁部材5を各上段柱部材4上に架設させてもよい。
【0043】
なお、上述した橋脚建替方法では、いわゆるラケット型の橋脚の建て替えについて説明したものであるが、橋脚の構造はラケット型に限定されるものではない。例えば、図には明示しないが、柱部材と、当該柱部材の上端の幅員方向両側に延在する梁部材とで構成されたT型の橋脚においても適用することが可能である。この場合、梁部材を柱部材に対して折り畳めるように構成してもよく、または折り畳めるように構成しなくてもよい。
【0044】
すなわち、本実施の形態の橋脚建替方法は、既設橋脚101から新設橋脚1に建て替える橋脚建替方法において、既設橋脚101の橋軸方向両側にて新設橋脚1を倒した形態で地組するとともに、各新設橋脚1をそれぞれ基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置する工程と、次に、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こし、既設橋脚101を橋軸方向で挟むように各新設橋脚1を各基礎部7に固定する工程と、を含む。
【0045】
この橋脚建替方法によれば、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こすことから、新設橋脚1を吊り上げる大型の重機を使用しない。このため、大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。なお、新設橋脚1の地組は、倒した形態で行われることから、各部材を高く吊り上げるような大型の重機を必要とせず、比較的小型の重機を用いることが可能である。しかも、各新設橋脚1を共に立て起こすことから、工期の短縮化を図ることが可能になる。さらに、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こすと、各新設橋脚1の重量を、その間の既設橋脚101でバランスよく支持することができ、既設橋脚に無理な力を加えることなく、新設橋脚1を安定して、かつ安全に立て起こすことが可能になる。
【0046】
また、上述した橋脚建替方法では、新設橋脚1を地組するときに当該新設橋脚1の一部(中間部B)を折り畳み可能に構成しておき、各新設橋脚1を立て起こす前に各新設橋脚1を展開している。
【0047】
この橋脚建替方法によれば、新設橋脚1を地組するときに当該新設橋脚1の一部を折り畳み可能に構成することで、地組において作業帯Wを占有する領域が少なくなることから、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。なお、新設橋脚1を地組するときに当該新設橋脚1の一部(中間部B)を折り畳み可能に構成しておき、各新設橋脚1を立て起こした後に各新設橋脚1を展開してもよく、この方法によっても、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0048】
また、本実施の形態の橋脚建替方法は、既設橋脚101および新設橋脚1が、主柱部材102,2の上端両側に延在する各下段梁部材103,3の延在端にそれぞれ上段柱部材104,4が立設され、各上段柱部材104,4の上端に上段梁部材105,5が架設されて、下段梁部材103,3と上段梁部材105,5とに橋梁上部工106がそれぞれ支持されるラケット型に構成されている。そして、既設橋脚101の橋軸方向両側にて新設橋脚1を倒した形態で、各下段梁部材3に各上段柱部材4が連結された中間部Bを、下部Aとしての主柱部材2に対して折り畳んで地組するとともに、主柱部材2を基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置しておき、その後、各中間部Bを展開してから新設橋脚1を立て起こす。
【0049】
この橋脚建替方法によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ることが可能になる。さらに、新設橋脚1を安定して、かつ安全に立て起こすことが可能になる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0050】
また、ラケット型の橋脚において、主柱部材2を基礎部7に固定した後、上段梁部材5を幅員方向にスライド移動させて各上段柱部材4上に架設することが好ましい。この橋脚建替方法によれば、上段梁部材5を幅員方向にスライド移動させて各上段柱部材4上に架設することにより、上段梁部材5の架設に大型のクレーンを頻繁に使用することを防ぐことから、上述したように大型のクレーンを使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型のクレーンを使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0051】
また、ラケット型の橋脚において、主柱部材2を基礎部7に固定した後、上段梁部材5を上段柱部材4側に支持して水平方向で回転移動させて各上段柱部材4上に架設するようにしてもよい。この橋脚建替方法によれば、上段梁部材5を上段柱部材4側に支持して水平方向で回転移動させて各上段柱部材4上に架設することにより、上段梁部材5の架設に大型のクレーンを頻繁に使用することを防ぐことから、大型のクレーンを使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型のクレーンを使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0052】
また、既設橋脚101から建て替えられる建替橋脚構造であって、新設橋脚1は、既設橋脚101の橋軸方向両側にて倒した状態で一部を折り畳み可能に構成されて地組される。
【0053】
この建替橋脚構造によれば、各部材を高く吊り上げるような大型の重機を必要とせず、比較的小型の重機を用いることから、大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0054】
また、本実施の形態の建替橋脚構造は、主柱部材2の上端両側に延在する各下段梁部材3の延在端にそれぞれ上段柱部材4が立設され、各上段柱部材4の上端に上段梁部材5が架設されて、下段梁部材3と上段梁部材5とに橋梁上部工106がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、既設橋脚101の橋軸方向両側にて倒した状態で、各下段梁部材3に各上段柱部材4が連結された中間部Bが、下部Aとしての主柱部材2に対して折り畳んだ形態で連結される。
【0055】
この建替橋脚構造によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0056】
[実施の形態2]
本実施の形態において架け替えられる既設橋脚101は、上述した実施の形態1と同様に、図1に示す、いわゆるラケット型に構成されている。
【0057】
図12〜図20は、実施の形態2に係る橋脚建替方法を示す。なお、本実施の形態において、上述した実施の形態1と同様の構成には、同一の符号を付して説明する。本実施の形態の橋脚建替方法は、既設橋脚101から新設橋脚1に建て替えるものである。新設橋脚1は、既設橋脚101と同様のラケット型であり、図20に示すように、1つの主柱部材2と、各下段梁部材3と、各上段柱部材4と、上段梁部材5とを含み構成され、各下段梁部材3と上段梁部材5とにそれぞれ橋梁上部工106が支持される。なお、橋梁上部工106は、主桁106aの下端に支承106cが設けられ、当該支承106cを介して各下段梁部材3や上段梁部材5に支持される。また、本実施の形態における新設橋脚1は、既設橋脚101よりも下段梁部材3および上段梁部材5が幅員方向で大きく形成されており、例えば、将来橋梁上部工106を幅員方向に拡張することが可能に構成されている。
【0058】
既設橋脚101から新設橋脚1に建て替えるにあたり、まず、図12〜図14に示すように、既設橋脚101の橋軸方向両側にて各新設橋脚1が倒した形態で地組される。新設橋脚1の地組は、既設橋梁の下方の作業帯Wにおいて、図14に示すように、主柱部材2、各下段梁部材3、および各上段柱部材4の一部(符号41で示す)が纏めて行われる。また、上段柱部材4の残りの一部(符号42で示す)、および上段梁部材5の一部(符号51で示す)が一体に地組され、別に上段梁部材5の残りの一部(符号52で示す)が地組される。これら上段柱部材4の残りの一部42、および上段梁部材5の一部51の地組や、上段梁部材5の残りの一部52の地組は、同様に作業帯Wにおいて、主柱部材2、各下段梁部材3、および上段柱部材4の一部とは別に行われる。作業帯Wは、既設橋脚101の橋軸方向において、主柱部材2の間の領域、および下段梁部材103の下方の領域が用いられる。主柱部材2の間の領域は、既設橋梁の下方の道路の中央分離帯などに用いられている場合があり、下段梁部材103の下方の領域は、既設橋梁の下方の道路の一部(例えば数車線の道路の1車線)に用いられている場合がある。
【0059】
主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の一部41の地組は、図12および図13に示すように、地組用架台Pの上で行われ、図14に示すように、主柱部材2を下部Aとして組み上げるとともに、主柱部材2の幅員方向の両側の各下段梁部材3および各上段柱部材4の一部41を一体に接続した中間部Bとして組み上げる。そして、下部A(主柱部材2)に対して各中間部B(下段梁部材3および上段柱部材4の一部41)を、ヒンジ部材6を介して折り畳み可能に取り付ける。図14においては、主柱部材2の上端となる側で、各中間部B同士が幅員方向で近接するように折り畳み可能に取り付けられる。そして、この地組の段階では、各中間部Bが下部Aに対して折り畳んだ形態とする。この各中間部Bが下部Aに対して折り畳んだ形態においては、各中間部B同士である各上段柱部材4の一部41同士の端面が突き合わされた形態となる。このため、本実施の形態では、折り畳まれた形態として、上述した実施の形態1と比較して幅員方向がより小型化されるため、作業帯Wの領域をより狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制をより低減することが可能になる。また、主柱部材2は、既設橋脚101における主柱部材102の基端の橋軸方向両側に設けられた基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に、ヒンジ機構である回転支持部材8を介して取り付ける。
【0060】
次に、図15〜図17に示すように、上述のように既設橋脚101の橋軸方向の両側で地組された各新設橋脚1(主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の一部41)を、下部A(主柱部材2)に対して各中間部B(下段梁部材3および上段柱部材4の一部41)を展開した状態で固定しておき、この新設橋脚1を、既設橋脚101を挟むように共に立て起こし、主柱部材2を基礎部7に固定する。なお、新設橋脚1を立て起こすときは、下段梁部材3との干渉を防ぐため、図15に示すように、下段の橋梁上部工106の支承106cを外しておき、主柱部材2を基礎部7に固定した後、下段梁部材3と、主桁106aとの間に支承106cを設置する。
【0061】
各新設橋脚1を、既設橋脚101を挟むように共に立て起こすため、本実施の形態では、既設橋脚101の各上段柱部材104の外側面に、それぞれワイヤジャッキ9およびシーブ10を取り付け、各ワイヤジャッキ9によって各シーブ10を介した各ワイヤ11を引き上げることで、当該各ワイヤ11によって回転支持部材8を回転支点として各新設橋脚1を同時に立て起こす。ワイヤジャッキ9は、既設橋脚101の各上段柱部材104の外側面に対してジャッキ取付金具9aによって取り付けられる。また、シーブ10は、既設橋脚101の各上段柱部材104の外側面に対してシーブ取付金具10aによって取り付けられる。また、ワイヤ11の引上端部は、それぞれの新設橋脚1の各上段柱部材104に対してワイヤ取付金具11aによって取り付けられる。各金具9a,10a,11aは、図12〜図14に示すように、上述の主柱部材2、下段梁部材3、および上段柱部材4の地組のときに予め取り付けておくことができる。
【0062】
次に、各新設橋脚1の主柱部材2を基礎部7に固定した後、図18〜図20に示すように、上段柱部材4の残りの一部42および上段梁部材5の一部51を、各上段柱部材4の一部41の上に架設し、上段梁部材5の残りの一部52を、各上段梁部材5の一部51の間に架設するように固定する。上段柱部材4の残りの一部42および上段梁部材5の一部51は、上述の作業帯Wで地組して連結して中間梁部Cとする。また、上段梁部材5の残りの一部52は、上述の作業帯Wまたは橋梁上部工106上の作業スペースで地組する。そして、図18に示すように、中間梁部C(上段柱部材4の残りの一部42および上段梁部材5の一部51)を、既設橋脚101の幅員方向外側においてクレーン(図示せず)によって吊り上げ、上段柱部材4の一部41の上端側に架設して当該上段柱部材4の一部41の上端に固定する。その後、図19に示すように、上段梁部材5の残りの一部52を、既設橋脚101の幅員方向外側においてクレーンまたは橋梁上部工106上の多軸台車(図示せず)によって、下段の橋梁上部工106に移送し、下段の橋梁上部工106に配置された揚上重機15によって各上段梁部材5の一部51の間に揚上して、図20に示すように各上段梁部材5の一部51に固定する。
【0063】
このようにして新設橋脚1が設置される。その後、既設橋脚101は、主柱部材102のみを残して当該主柱部材102を新設橋脚1の主柱部材2と一体に連結する。その他、主柱部材102以外の部分や、既設橋脚101そのものを残して新設橋脚1を一体に連結してもよい。
【0064】
なお、上述した橋脚建替方法では、いわゆるラケット型の橋脚の建て替えについて説明したものであるが、橋脚の構造はラケット型に限定されるものではない。例えば、図には明示しないが、柱部材と、当該柱部材の上端の幅員方向両側に延在する梁部材とで構成されたT型の橋脚においても適用することが可能である。この場合、梁部材を柱部材に対して折り畳めるように構成してもよく、または折り畳めるように構成しなくてもよい。
【0065】
すなわち、本実施の形態の橋脚建替方法は、既設橋脚101から新設橋脚1に建て替える橋脚建替方法において、既設橋脚101の橋軸方向両側にて新設橋脚1を倒した形態で地組するとともに、各新設橋脚1をそれぞれ基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置する工程と、次に、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こし、既設橋脚101を橋軸方向で挟むように各新設橋脚1を各基礎部7に固定する工程と、を含む。
【0066】
この橋脚建替方法によれば、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こすことから、新設橋脚1を吊り上げる大型の重機を使用しない。このため、大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。なお、新設橋脚1の地組は、倒した形態で行われることから、各部材を高く吊り上げるような大型の重機を必要とせず、比較的小型の重機を用いることが可能である。しかも、各新設橋脚1を共に立て起こすことから、工期の短縮化を図ることが可能になる。さらに、各新設橋脚1を既設橋脚101に支持して共に吊り上げて立て起こすと、各新設橋脚1の重量を、その間の既設橋脚101でバランスよく支持することができ、既設橋脚に無理な力を加えることなく、新設橋脚1を安定して、かつ安全に立て起こすことが可能になる。
【0067】
また、上述した橋脚建替方法では、新設橋脚1を地組するときに当該新設橋脚1の一部(中間部B)を折り畳み可能に構成しておき、各新設橋脚1を立て起こす前に各新設橋脚1を展開している。
【0068】
この橋脚建替方法によれば、新設橋脚1を地組するときに当該新設橋脚1の一部を折り畳み可能に構成することで、地組において作業帯Wを占有する領域が少なくなることから、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。なお、新設橋脚1を地組するときに当該新設橋脚1の一部(中間部B)を折り畳み可能に構成しておき、各新設橋脚1を立て起こした後に各新設橋脚1を展開してもよく、この方法によっても、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態の橋脚建替方法は、既設橋脚101および新設橋脚1が、主柱部材102,2の上端両側に延在する各下段梁部材103,3の延在端にそれぞれ上段柱部材104,4が立設され、各上段柱部材104,4の上端に上段梁部材105,5が架設されて、下段梁部材103,3と上段梁部材105,5とに橋梁上部工106がそれぞれ支持されるラケット型に構成されている。そして、既設橋脚101の橋軸方向両側にて新設橋脚1を倒した形態で、各下段梁部材3に各上段柱部材4の一部41が連結された各中間部Bを、下部Aとしての主柱部材2に対して折り畳んで地組するとともに、主柱部材2を基礎部7に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置しておき、その後、各中間部Bを展開してから新設橋脚1を立て起こす。
【0070】
この橋脚建替方法によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減し、かつ工期の短縮化を図ることが可能になる。さらに、新設橋脚1を安定して、かつ安全に立て起こすことが可能になる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0071】
また、ラケット型の橋脚において、主柱部材2を基礎部7に固定した後、上段柱部材4の残りの一部42に上段梁部材5の一部51が連結された各中間梁部Cを、各上段柱部材4の一部41に連結し、その後、下段梁部材3に支持される下段の橋梁上部工106から上段梁部材5の残りの一部52を揚上して各中間梁部C間に架設することが好ましい。この橋脚建替方法によれば、下段の橋梁上部工106から上段梁部材5の残りの一部52を揚上することにより、上段梁部材5の残りの一部52の架設に大型のクレーンを頻繁に使用することを防ぐことから、上述したように大型のクレーンを使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型のクレーンを使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0072】
また、既設橋脚101から建て替えられる建替橋脚構造であって、新設橋脚1は、既設橋脚101の橋軸方向両側にて倒した状態で一部を折り畳み可能に構成されて地組される。
【0073】
この建替橋脚構造によれば、各部材を高く吊り上げるような大型の重機を必要とせず、比較的小型の重機を用いることから、大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0074】
また、本実施の形態の建替橋脚構造は、主柱部材2の上端両側に延在する各下段梁部材3の延在端にそれぞれ上段柱部材4が立設され、各上段柱部材4の上端に上段梁部材5が架設されて、下段梁部材3と上段梁部材5とに橋梁上部工106がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、既設橋脚101の橋軸方向両側にて倒した状態で、各下段梁部材3に各上段柱部材4の一部41が連結された各中間部Bが、主柱部材2に対して折り畳んだ形態で連結される。
【0075】
この建替橋脚構造によれば、ラケット型の橋脚において、上述したように大型の重機を使用することによる騒音や排ガスの発生を抑制するとともに、大型の重機を使用することによる大規模な交通規制を低減することが可能になる。また、折り畳んだ形態の地組によって、作業帯Wの領域を狭めることができ、作業帯Wの確保による大規模な交通規制を低減することが可能になる。
【0076】
ところで、図21は、他の実施の形態に係る橋脚建替方法の平面図である。上述した実施の形態1,2において、新設橋脚1を吊り上げて立て起こす際、図21に示すように、基礎部7の幅員方向の両側(片側であってもよい)に設けられた他の基礎部16に対して回動立て起こし可能に設けられるとともに新設橋脚1の一部(図21では下段梁部材3)に取り付けられる回動部17を備えることが好ましい。そして、新設橋脚1を立て起こすときに回動部17によって新設橋脚1の回動の補助とねじれの防止をする。なお、図21では、回動部17を下段梁部材3に取り付けた形態で示しているが、主柱部材2に取り付けてもよい。また、図21では、回動部17は、橋軸方向に延在する構成で示しているが、橋軸方向に対して斜めに設けられていてもよい。また、図21では、実施の形態2の新設橋脚1に回動部17を取り付けた形態で示しているが、実施の形態1の新設橋脚1にも回動部17を適用できる。
【0077】
このように、上述した実施の形態1,2において、新設橋脚1を立て起こすときに回動部17によって新設橋脚1の回動の補助とねじれの防止をすることにより、新設橋脚1の回動のバランスをより良くして、新設橋脚1をより安定して、かつより安全に立て起こすことが可能になる。
【符号の説明】
【0078】
1 新設橋脚
2 主柱部材
3 下段梁部材
4(41,42) 上段柱部材
5(51,52) 上段梁部材
6 ヒンジ部材
7 基礎部
8 回転支持部材
9 ワイヤジャッキ
10 シーブ
11 ワイヤ
12 手延桁
13 カウンタウエイト
14 スライドジャッキ
15 揚上重機
16 基礎部
17 回動部
18 回転装置
101 既設橋脚
102 主柱部材
103 下段梁部材
104 上段柱部材
105 上段梁部材
106 橋梁上部工
A 下部
B 中間部
C 中間梁部
W 作業帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設橋脚から新設橋脚に建て替える橋脚建替方法において、
前記既設橋脚の橋軸方向両側にて新設橋脚を倒した形態で地組するとともに、各前記新設橋脚をそれぞれ基礎部に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置する工程と、
次に、各前記新設橋脚を前記既設橋脚に支持して共に吊り上げて立て起こし、前記既設橋脚を橋軸方向で挟むように各前記新設橋脚を各前記基礎部に固定する工程と、
を含むことを特徴とする橋脚建替方法。
【請求項2】
前記新設橋脚を地組するときに当該新設橋脚の一部を折り畳み可能に構成しておき、各前記新設橋脚を立て起こす前、または各前記橋脚を立て起こした後に、各前記新設橋脚を展開することを特徴とする請求項1に記載の橋脚建替方法。
【請求項3】
前記既設橋脚および前記新設橋脚が、主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材が立設され、各前記上段柱部材の上端に上段梁部材が架設されて、前記下段梁部材と前記上段梁部材とに橋梁上部工がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、
前記既設橋脚の橋軸方向両側にて新設橋脚を倒した形態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材が連結された中間部を前記主柱部材に対して折り畳んで地組するとともに、前記主柱部材を前記基礎部に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置しておき、その後、各前記中間部を展開してから前記新設橋脚を立て起こすことを特徴とする請求項1に記載の橋脚建替方法。
【請求項4】
前記主柱部材を前記基礎部に固定した後、前記上段梁部材を幅員方向にスライド移動させて各前記上段柱部材上に架設することを特徴とする請求項3に記載の橋脚建替方法。
【請求項5】
前記主柱部材を前記基礎部に固定した後、前記上段梁部材を前記上段柱部材側に支持して水平方向で回転移動させて各前記上段柱部材上に架設することを特徴とする請求項3に記載の橋脚建替方法。
【請求項6】
前記既設橋脚および前記新設橋脚が、主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材を立設して各前記上段柱部材の上端が上段梁部材で連結され、前記下段梁部材と前記上段梁部材にそれぞれ橋梁上部工が支持されるラケット型に構成されており、
前記既設橋脚の橋軸方向両側にて新設橋脚を倒した形態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材の一部が連結された各中間部を前記主柱部材に対して折り畳んで地組するとともに、前記主柱部材を前記基礎部に対して橋軸方向に回動立て起こし可能に配置しておき、その後、各前記中間部を展開してから前記新設橋脚を立て起こすことを特徴とする請求項1に記載の橋脚建替方法。
【請求項7】
前記主柱部材を前記基礎部に固定した後、前記上段柱部材の残りの一部に前記上段梁部材の一部が連結された各中間梁部を各前記上段柱部材の一部に連結し、その後、前記下段梁部材に支持される下段の橋梁上部工から前記上段梁部材の残りの一部を揚上して各前記中間梁部間に架設することを特徴とする請求項6に記載の橋脚建替方法。
【請求項8】
他の基礎部に対して回動立て起こし可能に設けられるとともに前記新設橋脚の一部に取り付けられる回動部を備え、前記新設橋脚を立て起こすときに前記回動部によって前記新設橋脚の回動を補助することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の橋脚建替方法。
【請求項9】
既設橋脚から建て替えられる建替橋脚構造であって、
前記既設橋脚の橋軸方向両側にて倒した状態で一部を折り畳み可能に構成されて地組されることを特徴とする建替橋脚構造。
【請求項10】
主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材が立設され、各前記上段柱部材の上端に上段梁部材が架設されて、前記下段梁部材と前記上段梁部材とに橋梁上部工がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、
前記既設橋脚の橋軸方向両側にて倒した状態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材が連結された中間部が、前記主柱部材に対して折り畳んだ形態で連結されることを特徴とする請求項9に記載の建替橋脚構造。
【請求項11】
主柱部材の上端両側に延在する各下段梁部材の延在端にそれぞれ上段柱部材が立設され、各前記上段柱部材の上端に上段梁部材が架設されて、前記下段梁部材と前記上段梁部材とに橋梁上部工がそれぞれ支持されるラケット型に構成されており、
前記既設橋脚の橋軸方向両側にて倒した状態で、各前記下段梁部材に各前記上段柱部材の一部が連結された各中間部が、前記主柱部材に対して折り畳んだ形態で連結されることを特徴とする請求項9に記載の建替橋脚構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−237176(P2012−237176A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108396(P2011−108396)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】