説明

機器の配管へのスケール付着抑制方法

【課題】スケールの付着を抑制し、スケール除去のために運転を停止する必要がなくメンテナンスの負担も小さい、機器の配管へのスケール付着抑制方法を提供する。
【解決手段】配管及び該配管内に液体を流すための搬送手段を備えた機器の前記搬送手段を駆動して通常の運転を行っている状態で、前記配管内を流れる液体に、空気の微細気泡を混入させることにより、前記配管内に炭酸カルシウムを主成分とするスケールが付着するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を備えた機器の前記配管内にスケールが付着するのを抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に備えた配管に水道水や地下水を流す機器においては、配管内に水道水や地下水に溶解している炭酸カルシウムを主成分とするスケールが付着する。
【0003】
配管内にスケールが付着すると、流路が狭小となって流量が低下したり、ポンプ圧やポンプの消費電力の増大を招いたり、熱交換部の配管の場合には熱交換の効率が低下してしまうため、定期的にスケールを除去する必要があった。
【0004】
そこで従来では、機器の配管内に掻取金具を挿入して、掻取金具にて配管内に付着したスケールを掻き取ったりしていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−240133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の方法では、スケールを除去するためには機器の運転を停止しなければならず、機器の稼働率が低下してしまうと共に、スケールの除去のためのメンテナンスに要する時間、費用がかさんでしまうものであった。更に、機器の配管の内面が掻取金具により掻かれて損傷してしまうと共に、掻取金具も摩耗して交換する必要があり、また、掻取金具が入らない奥や曲がった部分等に付着しているスケールを掻き取ることができず、取り残しが多いものであった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スケールの付着を抑制し、配管内面が損傷せず、スケールの取り残しが少なく、スケール除去のために運転を停止する必要がなくメンテナンスの負担も小さい、機器の配管へのスケール付着抑制方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0009】
請求項1に係る機器の配管へのスケール付着抑制方法にあっては、配管及び該配管内に液体を流すための搬送手段を備えた機器の前記搬送手段を駆動して通常の運転を行っている状態で、前記配管内を流れる液体に、空気の微細気泡を混入させることにより、前記配管内に炭酸カルシウムを主成分とするスケールが付着するのを抑制することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記微細気泡のうち95%の気泡径が200マイクロメーター以下で、且つ、気泡径の分布の最頻値が60乃至80マイクロメーターであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記微細気泡の総体積の比率が0.015以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、機器を運転をしながらスケールの付着を抑制することができ、付着したスケールを除去するために機器の運転を停止する必要がなく、スケールの除去のためのメンテナンスに要する時間、費用もかさまないものであり、更に、熱交換器の配管内面を損傷することもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】微細気泡発生装置の構成図である。
【図2】各実験におけるスケールの付着量(g)を示す図である。
【図3】各実験における粒子径−頻度の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。本発明の機器の配管へのスケール付着抑制方法は、配管及び該配管内に液体を流すための搬送手段を備えた機器が適用対象となっており、前記のような機器であれば特に機器は限定されない。搬送手段としては主にポンプが用いられるが、特に限定されない。
【0015】
機器の配管には、少なくともカルシウムイオンが溶解されている液体が流されるもので、液体としては例えば水道水や地下水が好適に挙げられるが特に限定されない。水道水や地下水は、炭酸カルシウムをはじめ、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムといったミネラル成分が溶解している。これらは、結晶化してスケールとして配管内に付着してしまうものである。
【0016】
本発明は、配管内を流れる液体に、空気の微細気泡を混入させることに特徴を有するものである。
【0017】
微細気泡の発生手段は、図1に示すように、配管の流路1の途中に絞り部2を設け、絞り部2に空気の吸入管3を接続する。更に、絞り部2の下流側には、徐々に径が絞り部2の上流側の流路の径にまで拡大する拡径部4を設けてあり、下流端のノズル(図示せず)から吐出されるようになっている。絞り部2における減圧効果、拡径部4における加圧効果により、混入された気泡が剪断されて微細気泡が発生する。
【0018】
発生する微細気泡は、その95%の気泡径が200マイクロメーター以下で、且つ、気泡径の分布の最頻値が60乃至80マイクロメーターとなるようにするもので、これにあたっては、微細気泡発生手段の絞り部2の径や長さ、拡径部4の径の変化率や長さ、配管の流路1の径、等により適宜設計される。
【0019】
なお、微細気泡の発生手段は、図1に示される上述したものだけでなく、混入した気体を加圧して溶解させた後、減圧して析出させるもの等であってもよく、特に限定されない。
【0020】
このような微細気泡は、表面が負に帯電されるため、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等の正に帯電されるイオンを引き寄せる作用がある。これにより、カルシウムイオン等の正に帯電されるイオンが、配管の内面に付着し難くなり、結晶化してスケールが形成され難くなるものである。
【0021】
また、微細なスケールが形成されたとしても、微細気泡が収縮して消滅する「圧壊」を起こす際に断熱圧縮されて高温高圧となり、この時の衝撃圧によりスケールを除去するため、スケールの成長が抑制される。
【0022】
以下、微細気泡を混入させた液体を流した場合と、微細気泡を混入させていない液体を流した場合の比較実験について説明する。
【0023】
スケール形成溶液として、塩化カルシウム2水和物1.3g/L、炭酸水素ナトリウム1.5g/Lの水溶液を使用した。
【0024】
配管として、内径φ14mmの銅管を4本使用した。
【0025】
通水条件としては、スケール形成溶液の流量は20L/min、線速度は約0.5m/secとした。
【0026】
まず、微細気泡を混入させていない液体を流す場合の実験として、(0)スケール形成溶液を配管内に充填し、上記通水条件で5時間通水し、5時間経過後に銅管1本の中央部を80℃に加温して10分間維持し、これを3日間繰り返した。なお、前記(0)は実験番号を示す。
【0027】
次に、微細気泡を混入させた液体を流す場合として、スケール形成溶液を配管内に充填し、上記通水条件で5時間通水しながら各微細気泡発生条件にて微細気泡を発生させ、5時間経過後に銅管1本の中央部を80℃に加温して10分間維持し、これを3日繰り返した。微細気泡発生条件は、(1)100ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合、(2)300ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合、(3)10ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合、(4)10ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を1つ設けた場合、の4通りである。なお、前記(1)〜(4)は実験番号を示す。
【0028】
実験の評価は、図2に示すように、銅管50cm当たりのスケールの付着量(g)で行った。
【0029】
この結果より、微細気泡を混入させた場合(1)〜(4)はいずれも、微細気泡を混入させていない場合(0)よりもスケールの付着量が少ないことが分かった。特に、(3)10ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合が最もスケールの付着量が少ないことが分かった。
【0030】
また、(4)10ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を1つ設けた場合でも、(3)10ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合に次ぐ効果がみられた。
【0031】
また、微細気泡を混入させた場合について、レーザー回折散乱光を測定することにより、微細気泡の粒子径を計測し、各粒子径−頻度の相関を得たので図3に示す。図3の横軸は微細気泡の粒子径(μm)の対数軸であり、縦軸は相対頻度を示す。
【0032】
これより、(3)10ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合、微細気泡のうち概ね95%の気泡径が200μm以下で、且つ、気泡径の分布の最頻値が60〜80μmの範囲にあることが分かり、この範囲で微細気泡による効果が高いことが分かった。
【0033】
また、この時のスケール形成溶液に対する微細気泡が占める容積の比は、10ccm(=0.01L/min)及び流量20L/minの条件より、0.01÷20=0.0005となり、この条件が好ましいことが分かる。また、図2の結果からスケール付着量が0.4g以下となる(2)300ccmで空気を混入させる微細気泡発生手段を4つ設けた場合には、スケール形成溶液に対する微細気泡が占める容積の比は、300ccm(=0.3L/min)及び流量20L/minの条件より、0.3÷20=0.015となり、この条件でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 流路
2 絞り部
3 吸入管
4 拡径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管及び該配管内に液体を流すための搬送手段を備えた機器の前記搬送手段を駆動して通常の運転を行っている状態で、前記配管内を流れる液体に、空気の微細気泡を混入させることにより、前記配管内に炭酸カルシウムを主成分とするスケールが付着するのを抑制することを特徴とする機器の配管へのスケール付着抑制方法。
【請求項2】
前記微細気泡のうち95%の気泡径が200マイクロメーター以下で、且つ、気泡径の分布の最頻値が60乃至80マイクロメーターであることを特徴とする請求項1記載の機器の配管へのスケール付着抑制方法。
【請求項3】
前記微細気泡の総体積の比率が0.015以下であることを特徴とする請求項1記載の機器の配管へのスケール付着抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−81370(P2012−81370A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226952(P2010−226952)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】