説明

機器ケースの開閉部分の防水構造

【課題】携帯電話機やデジタルカメラなどの機器におけるコネクタカバー部やバッテリカバー部などのような開閉部分の防水を図るための構造において、優れた防水性を確保する。
【解決手段】機器ケース2の開口部21にパッキンを介してカバー1が開閉可能に嵌め込まれ、これら開口部21及びカバー1の双方のパッキン嵌合面21a,13aが、平面部Aと湾曲面部Bを有する互いに略相似の形状をなすものにおいて、開口部21のパッキン嵌合面21aとカバー1のパッキン嵌合面13aとの対向方向の隙間を、平面部Aより湾曲面部Bで小さく(h>h)した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やデジタルカメラなどの機器のケースにおけるコネクタカバー部やバッテリカバー部などのような開閉部分の防水を図るための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの小型電子機器には、充電やデータ入出力のためのコネクタ接続部や、バッテリ挿入部を備えるものがあり、これらコネクタ接続部やバッテリ挿入部として機器ケースに開設された開口部はカバーによって開閉可能に覆われている。そして、このようなケース開口部とカバーとの隙間は、従来Oリングによって密封され、防水が図られている(下記の特許文献参照)。
【特許文献1】特開2000−41722号公報
【特許文献2】特開2001−250629号公報
【0003】
ところが、ケース開口部及びこれに開閉可能に嵌め込まれるカバーが、例えば特許文献2のような長円形状など、平面部と湾曲面部を有する形状である場合は、良好な防水性が得られにくい問題が指摘される。これについて、図6〜図9を参照して説明する。図6は、平面部と湾曲面部を有する形状の一例として長円形のカバーを示す説明図、図7は、平面部と湾曲面部を有する形状の一例として方形の角を丸めた形状のカバーを示す説明図、図8は、従来の技術を示す説明図、図9は、図8における平面部及び湾曲面部の断面図である。
【0004】
図6又は図7に示されるカバー100は、図8又は図9に示されるケース200の開口部200aに挿入される挿入部101と、この挿入部101の外端部から張出し形成されて機器ケース200の外側面と対向される鍔部102を有する。前記挿入部101の外周面は平面部Aと湾曲面部Bを周方向交互に有するものであって、周方向へ連続した溝103が形成されており、この溝103にはゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるOリング104が装着されている。すなわちこのカバー100は、図9に示されるように、挿入部101が、機器ケース200の開口部200aの内周にOリング104を介して圧入嵌着されることによって、開口部200aを密閉状態に閉塞して防水を図るものである。
【0005】
したがって、機器ケース200の開口部200aも、その開口形状はカバー100の挿入方向の投影形状とほぼ相似の形状に形成されている。詳しくは図8に示されるように、湾曲面部Bにおけるカバー100の溝103の底面と機器ケース200の開口部200aの内面は、その曲率半径R,Rの中心Cが同一であり、平面部Aにおける溝103の底面と開口部200aの内面との間の隙間の大きさh、湾曲面部Bにおける溝103の底面と開口部200aの内面との間の隙間の大きさh、及び平面部Aと湾曲面部Bの境界部分における溝103の底面と開口部200aの内面との間の隙間の大きさhは同一であり、未装着状態でのOリング104の断面径より適宜小さい。このためOリング104は、カバー100の溝103の底面と機器ケース200の開口部200aの内面との間で適当に圧縮された状態で挟み込まれるようになっている。
【0006】
しかしOリング104は、適当に伸長させた状態でカバー100の溝103に装着されるため、未装着状態に比較して全体的に断面径が減少し、しかも張力によって湾曲面部BでOリング104が細り、すなわち図9に示されるように、湾曲面部Bでの断面径φが平面部Aでの断面径φより小さくなる。このため、湾曲面部Bでは平面部AよりもOリング104のつぶし代が小さくなって密封性が低下し、良好な防水性が得られにくくなるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、携帯電話機やデジタルカメラなどの機器のケースにおけるコネクタカバー部やバッテリカバー部などのような開閉部分の防水を図るための構造において、特に開口部及びこれに開閉可能に嵌め込まれるカバーが平面部と湾曲面部を有する形状である場合でも優れた防水性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る機器の開閉部分の防水構造は、機器ケースの開口部にパッキンを介してカバーが開閉可能に嵌め込まれ、これら開口部及びカバーの双方のパッキン嵌合面が、平面部と湾曲面部を有する互いに略相似の形状をなすものにおいて、前記開口部のパッキン嵌合面と前記カバーのパッキン嵌合面との対向方向の隙間を、前記平面部より前記湾曲面部で小さくしたものである。
【0009】
また、開口部のパッキン嵌合面とカバーのパッキン嵌合面との対向方向の隙間が、平面部と湾曲面部の間で連続して変化するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る機器の開閉部分の防水構造によれば、カバーのパッキン嵌合面が平面部と湾曲面部を有する形状である場合に、パッキンが適当に伸長された状態でカバーの外周面に装着されることによって湾曲面部でパッキンの断面径が細っても、前記開口部のパッキン嵌合面と前記カバーのパッキン嵌合面との対向方向の隙間を、前記平面部より前記湾曲面部で小さくすることによって、前記湾曲面部で断面径が細ったパッキンに対して、前記平面部と略同率のつぶし代を確保できるので、良好な防水性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る機器の開閉部分の防水構造を、図面を参照しながら説明する。まず図1は第一の形態として、機器ケースの開口部にパッキンを介してカバーが開閉可能に嵌め込まれた状態を機器ケースの内側から見た図、図2は、第一の形態を示す概略構成説明図、図3は、図2における平面部及び湾曲面部の断面図である。
【0012】
図1において、参照符号1はカバー、参照符号2は携帯電話機などの機器ケースであって、この機器ケース2には、例えばコネクタの接続あるいはバッテリの装着のための開口部21が開設されており、カバー1は、この開口部21にOリング3を介して開閉可能に嵌め込まれるものである。
【0013】
カバー1は、図3にも示されるように、機器ケース2の開口部21に挿入される挿入部11と、この挿入部11の外端部から張出し形成されて機器ケース2の外側面と対向される鍔部12を有する。前記挿入部11の外周面は、挿入方向に対する投影形状が方形の角を丸めた形状を呈し、すなわち平面部と湾曲面部を周方向交互に有するものであって、周方向へ連続した溝13が形成されている。なお、溝13の底面13a(以下、溝底面13aという)は、請求項1に記載された「カバーのパッキン嵌合面」に相当する。
【0014】
Oリング3は、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるものであって、カバー1の挿入部11の外周面に形成された溝13に半嵌合状態に装着されている。なお、Oリング3は請求項1に記載された「パッキン」に相当する。
【0015】
機器ケース2に開設された開口部21は、開口形状がカバー1の挿入部11の外周面と略相似、すなわち方形の角を丸めた形状を呈するものであって、カバー1の挿入部11よりも一回り大きく、したがってこの開口部21の内周面21a(以下、開口部内周面21aという)も、平面部と湾曲面部を周方向交互に有する。なお、開口部内周面21aは、請求項1に記載された「開口部のパッキン嵌合面」に相当する。
【0016】
詳しくは図2に示されるように、溝底面13a及び開口部内周面21aの湾曲面部Bにおいて、機器ケース2の開口部内周面21aの曲率半径R21は、当然ながらカバー1の溝底面13aの曲率半径R13より大きく(R21>R13)、溝底面13aの曲率半径R13の中心C13は、開口部内周面21aの曲率半径R21の中心C21より外周側に位置し、溝底面13aにおける平面部と湾曲面部の境界点S13と、開口部内周面21aにおける平面部と湾曲面部の境界点S21は、溝底面13aの曲率半径R13の中心C13から見て同位相上に位置している。
【0017】
このため、平面部Aと湾曲面部Bとの境界部分における溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhは、平面部Aにおける溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhと同一であるが、前記湾曲面部Bでは、溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhは、溝底面13a及び開口部内周面21aの平面部Aから離れるほど小さくなり、すなわちh=h>hとなっている。また、平面部Aにおける隙間の大きさhは、未装着状態でのOリング3の断面径より適宜小さい。
【0018】
ここで、Oリング3は、適当に伸長させた状態でカバー1の溝13に装着されるため、とくに、湾曲面部Bでの断面径φが平面部Aでの断面径φより小さくなる。具体的には、未装着状態での断面径が0.7mmのOリングの場合、湾曲面部の断面径が平面部に比較して0.02〜0.05mm程度細ることが確認されている。したがって、隙間h,hは、湾曲面部BでのOリング3のつぶし率(φ−h)/φが平面部AでのOリング3のつぶし率(φ−h)/φと略同等となるようにR13,R21,C13,C21等を設定し、具体的には、湾曲面部Bの隙間hの最小値(湾曲面部Bの周方向中央部分でのhの大きさ)が、平面部Aにおける隙間の大きさhの94〜98%となるように設定することが好ましい。
【0019】
以上の構成によれば、カバー1は、その挿入部11が、機器ケース2の開口部21にOリング3を介して圧入嵌着され、Oリング3が、溝底面13aと開口部内周面21aとの間で適当に圧縮された状態で挟み込まれることによって、開口部21を密閉状態に閉塞して防水を図るものである。
【0020】
そして先に説明したように、Oリング3は、湾曲面部Bでの断面径φが平面部Aでの断面径φより小さくなるが、本発明の構成によれば、機器ケース2の開口部内周面21aとカバー1の溝底面13aとの対向方向の隙間の大きさを、平面部Aより湾曲面部Bで小さくすることによって(h>h)、上述のように湾曲面部Bで断面径が細ったOリング3に対して、平面部Aと略同等のつぶし代を確保して、良好な防水性を得ることができる。
【0021】
次に図4は、本発明の第二の形態を示す概略構成説明図、図5は、図4における平面部、湾曲面部及び平面部と湾曲面部の境界部分の断面図である。
【0022】
この第二の形態において、先に説明した第一の形態と異なるところは、機器ケース2の開口部内周面21aとカバー1の溝底面13aとの対向方向の隙間の大きさが、平面部Aと湾曲面部Bの間で連続して変化していることにある。その他の部分は、第一の形態と同様に構成することができる。
【0023】
詳しくは、湾曲面部Bにおける機器ケース2の開口部内周面21aの曲率半径R21はカバー1の溝底面13aの曲率半径R13より大きく(R21>R13)、溝底面13aの曲率半径R13の中心C13は、開口部内周面21aの曲率半径R21の中心C21より外周側に位置し、溝底面13aにおける平面部と湾曲面部の境界点S13は、溝底面13aの曲率半径R13の中心C13を通って溝底面13aの平面部と直交する直線上に位置し、開口部内周面21aにおける平面部と湾曲面部の境界点S21は、開口部内周面21aの曲率半径R21の中心C21を通って開口部内周面21aの平面部と直交する直線上に位置し、すなわち境界点S13,S21はC13又はC21から見て互いに異なる位相上にある。
【0024】
このため、開口部内周面21aの平面部は開口部内周面21aの湾曲面部に対する接線方向に延びていて、すなわち平面部と湾曲面部の境界点S21で滑らかに連続しており、同様に、溝底面13aの平面部は溝底面13aの湾曲面部に対する接線方向に延びていて、すなわち平面部と湾曲面部の境界点S13で滑らかに連続している。
【0025】
したがって、境界点S21の位置での溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhS2は、平面部Aにおける溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhと同一であるが、境界点S13の位置での溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhS1は、hS2より僅かに小さく、湾曲面部Bでは、溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間の大きさhは、溝底面13a及び開口部内周面21aの平面部Aから離れるほど小さくなっている。すなわち溝底面13aと開口部内周面21aとの間の隙間は、hからhへ連続して変化している(h=hS2>hS1>h)。また、平面部Aにおける隙間の大きさhは、未装着状態でのOリング3の断面径より適宜小さい。
【0026】
そしてこのような構成とすることによって、平面部AにおけるOリング3の断面径φより境界点S13付近で僅かに小さくなる断面径φに開口部内周面21aと溝底面13aとの対向方向の隙間が追随して、この部分でのつぶし率(φ−hS1)/φも、平面部AでのOリング3のつぶし率(φ−h)/φと略同等とすることができ、すなわち開口部内周面21aと溝底面13aとの対向方向の隙間の変化が、平面部Aと湾曲面部Bの間でのOリング3の断面径の変化に一層良く対応するので、良好な防水性を得ることができる。
【0027】
なお、図示の形態では、溝底面13a及び開口部内周面21aが方形の角を丸めた形状を呈するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば先に説明した図6のような長円形状などのものにも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る機器の開閉部分の防水構造の第一の形態として、機器ケースの開口部にパッキンを介してカバーが開閉可能に嵌め込まれた状態を機器ケースの内側から見た図である。
【図2】本発明の第一の形態を示す概略構成説明図である。
【図3】図2における平面部及び湾曲面部の断面図である。
【図4】本発明の第二の形態を示す概略構成説明図である。
【図5】図4における平面部、湾曲面部及び平面部と湾曲面部の境界部分の断面図である。
【図6】長円形のカバーを示す説明図である。
【図7】方形の角を丸めた形状のカバーを示す説明図である。
【図8】従来の技術を示す説明図である。
【図9】図8における平面部及び湾曲面部の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 カバー
13 溝
13a 溝底面(カバーのパッキン嵌合面)
2 機器ケース
21 開口部
21a 開口部内周面(開口部のパッキン嵌合面)
3 Oリング(パッキン)
A 平面部
B 湾曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケースの開口部にパッキンを介してカバーが開閉可能に嵌め込まれ、これら開口部及びカバーの双方のパッキン嵌合面が、平面部と湾曲面部を有する互いに略相似の形状をなすものにおいて、前記開口部のパッキン嵌合面と前記カバーのパッキン嵌合面との対向方向の隙間を、前記平面部より前記湾曲面部で小さくしたことを特徴とする機器ケースの開閉部分の防水構造。
【請求項2】
開口部のパッキン嵌合面とカバーのパッキン嵌合面との対向方向の隙間が、平面部と湾曲面部の間で連続して変化することを特徴とする請求項1に記載の機器ケースの開閉部分の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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