説明

機器収納用キャビネット

【課題】 回転軸が必要なく更にネジ止め作業も必要ない、構造を簡素化したラッチ手段を備えた機器収納用キャビネットを提供する。
【解決手段】 蓋板2のラッチ部材3装着部に、折り曲げ部を挟むように蓋面2a及び枠部2bの双方に開口部を設け、折り曲げ部を棒状に残して連結軸7とし、ラッチ部材3は本体1に設けた係止枠17に係止する係止片14と、係止片14の係止状態を解除するための操作部3aと、蓋板2に回動可能に連結するための連結部11とを有し、これらが樹脂成形により一体に形成されて成り、連結部11を連結軸7を挿入して把持動作するよう断面略C字状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器等を収納するキャビネットに関し、特に機器を収容するキャビネット本体の開放された前面を蓋板で塞ぐ際に、キャビネット本体に係止するラッチ手段を蓋板に設けた機器収納用キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器等を収納する機器収納用キャビネットにおいて、キャビネット本体の開放された前面を閉塞する蓋板が開かないよう係止させる従来のラッチ構造としては、例えば特許文献1に記載された電気機器収納用箱のラッチ装置がある。これは、キャビネット本体に係止する係止片を備えた操作部をキャビネット本体に蝶着した蓋板の開放側に装着し、バネによる付勢力で係止片の係止動作を実施し、開ける際は操作部を回動して係止片の係止を解除させて蓋板を開放可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−90579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来のラッチ構造は、ラッチ装置全体を回動させるための回転軸となるピンや、係止片を係止方向へ付勢するバネが必要であったため、部品点数が多く複雑な形状であったし、蓋板に装着する際ネジを使用したため、ラッチ装置の取り付け自体も面倒であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、ピンやバネが必要なく更にネジ止め作業も必要ない、簡易な構造で容易に組み付けできるラッチ手段を備えた機器収納用キャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、機器を収納する空間を内部に備えて一面が開口された本体と、本体の開口面を閉塞する蓋板とを有し、蓋板の一方の側部に装着されたラッチ手段により閉塞状態が保持される機器収納用キャビネットにおいて、蓋板は、開口面を閉塞する蓋面と、蓋面の周囲を折り曲げて形成した枠部を有し、蓋面及び枠部を切り欠いて折り曲げ部を棒状に残して形成した連結軸を所定の側部に備える一方、ラッチ手段は、連結軸を把持して回動可能に連結するための連結部と、本体に係止する係止片と、係止片の係止状態を解除操作する操作部とを有し、これらが樹脂成形により一体に形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、別途回動軸を用意すること無くラッチ手段を蓋板に回動可能に装着できる。また連結部が連結軸を把持することで、ネジ等の固定手段を使用することなくラッチ手段を蓋板に装着することが可能となる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、ラッチ手段は、蓋面に係合して係止片を本体方向へ付勢する弾性片を有することを特徴とする。
この構成によれば、バネ等の弾性部材を別途組み付けることなく係止片は本体方向に付勢されるので、安定した係止状態を維持できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、連結部は断面C字状に形成されて連結軸を挿入する切り欠きを有し、連結軸は角度により見かけの太さが異なり、ラッチ手段の本体への係止を解除して特定の角度に回動した状態では、連結軸は切り欠きに対して同一或いは細くなって連結軸の挿脱が可能となり、ラッチ手段が前記本体に係止した蓋板閉塞状態では、連結軸は前記切り欠きに対して太くなって連結部からの脱却を規制することを特徴とする。
この構成によれば、ラッチ手段使用状態ではラッチ手段が蓋板から外れることがなく、所定の角度に回動すれば着脱操作できる。そのため容易に装着できるし、使用時は外れずネジ等の連結部材を使用すること無く堅牢な装着状態を維持できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、別途回動軸を用意すること無くラッチ手段を蓋板に回動可能に装着できる。また連結部が折り曲げ部に形成した連結軸を把持することで、ネジ等の固定手段を使用することなくラッチ手段を蓋板に装着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る機器収納用キャビネットの一例を示す外観図である。
【図2】図1の蓋板の斜視図であり、ラッチ部材を分離した状態を示している。
【図3】ラッチ部材の説明図であり、(a)は背面図、(b)蓋板に装着した状態のA−A線断面図を示している。
【図4】ラッチ部材の作用説明図であり、(a)は蓋板に装着する様子、(c)は本体に係止する途中の状態、(c)は本体に係止した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る機器収納用キャビネットの一例を示す外観図であり、機器を収納する内部空間を有する本体1と本体1の開口された一面を閉塞する蓋板2とで構成されている。蓋板2は閉じた状態を保持するために本体1に係止するラッチ部材3を一方の側部に備え、他方の側部は本体1に蝶着され、開閉操作可能に構成されている。
尚、この機器収納用キャビネットは、通常壁面に本体1を組み付けて蓋板2を前後に開閉操作して使用されるが、ここでは説明の都合上、ラッチ部材3装着面を正面、本体1の開口方向を上方として説明する。
【0012】
図2はラッチ部材3を分離した蓋板2を示し、要部を拡大した図を併せて示している。図2において、2aは本体1の開口面を閉塞する蓋面、2bは蓋面2aの周囲端部に蓋面2aから折り曲げて形成した枠部であり、ラッチ部材3はこの枠部2bを形成するための「折り曲げ」を利用して組み付けられる。
具体的に、ラッチ部材3を組み付ける蓋板2の開放側端部の前側の中央には、蓋面2aと枠部2bの双方に開口部5,6が近接して形成され、折り曲げ部7aが棒状に残されている。蓋面2a側の開口部5は折り曲げ部7aに沿って穿設された長方形状の孔であり、枠部2b側の開口部6は蓋面側開口部5と同一幅で形成され、本体1に面する端部から切り欠いて形成されている。こうして棒状に残された折り曲げ部7aが、ラッチ部材3を組み付ける連結軸7として使用される。
【0013】
次に、ラッチ部材3の構成及び作用を説明する。図3はラッチ部材3の説明図であり、(a)は背面図、(b)は蓋板2に装着した状態のA−A線断面図を示している。ラッチ部材3は、装着時に蓋板2の蓋面2aと平行に配置されるカバー部3aと、カバー部3aと直交して枠部2bに平行に配置される操作部3bとを有し、略L字状に形成され、合成樹脂成形により一体に形成されている。
【0014】
カバー部3aと操作部3bとで挟まれた角部には、蓋板2に連結するための連結部11が形成されている。連結部11は、蓋板2の連結軸7を挿入して把持する切り欠き11aを設けた略C字状の把持体であり、左右端部に一対形成されている。この切り欠き11aは、カバー部3aの上面に対して略45度の角度を設けて形成されている。
【0015】
そして、操作部3bの裏面には本体1に設けられた係止枠(図4に示す)17に係止する係止片14が突設され、上部に係止枠17に係合する係合溝14aが形成されている。また、カバー部3aの裏面には、蓋板2の蓋面2aに当接する舌片15が形成されている。舌片15は、連結部11に隣接して左右一対形成されると共に、連結部11近傍から後方斜め下に向けて突出形成され、当接する蓋板2の蓋面2aに対して弾性を有して当接するよう形成されている。
【0016】
更に、操作部3bの左右端部には、蓋板2の枠部側開口部7に係合する戻り防止リブ12が設けられている。この戻り防止リブ12は、前面側が操作部3aの縁部から横方向先端に向けて円弧状のカーブを設けて形成され、先端に向けて後方に傾斜させている。また、戻り防止リブ12の背面は、操作部3aの裏面と面一に平坦に形成されている。
【0017】
一方、蓋板2に形成された連結軸7は、図3(b)に示すように正面方向から見た太さT1(ラッチ部材3装着方向からみた太さ)と、この方向に対して上方に略45度傾けた方向となる斜め前方から見た太さT2が異なり、斜め前方から見た太さT2がT1より大きくなるよう形成されている。
そして、連結部11の切り欠き11aの開口幅Sと太さT1,T2は、T1≦S<T2の関係を満たすように形成されている。
【0018】
図4はラッチ部材3の作用を説明するための側面説明図を示し、(a)は蓋板2に装着する様子、(c)は係止する途中の状態、(c)は本体1に係止した状態を示している。
ラッチ部材3は、図4(a)に示すように操作部3bが蓋板2内に入り込む角度で蓋板2の側面方向から矢印B1の方向にスライドさせる。このとき、連結部11の切り欠き11aが連結軸7の方向を向き、且つ連結軸7の切り欠き11a方向の太さはT1であり、上述したようにT1≦Sであることから、連結部11に連結軸7が無理なく入り込む。こうしてラッチ部材3は装着される。
【0019】
挿入後は、上記図3(b)に示すように、矢印B2方向に回転して蓋板2内に隠れている操作部3aを前方に露出させる。こうすることで、連結部11の切り欠き11aの向きが太さT2の方向となり、ラッチ部材3は抜けなくなる。
【0020】
また、この回転操作で操作部3aに形成された戻り防止リブ12が蓋板2内から側方に露出し、枠部側開口部6の左右端部に前方から係合する。
戻り防止リブ12は、上述したように前面側はカーブを設けて形成されているため、枠部側開口部6と係合しても係合力が弱く、操作部3bは蓋板2内部から外部(前方)へ通過し易い。ところが、背面側は平坦に形成されているため係合力が強く、前方から蓋板2の内部へは通過し難い。そのため、操作部3bは外部から蓋板2内部へは通過し難く、外側に露出した操作部3aは舌片15の弾性力により蓋板2の内部方向に付勢されるが、再び蓋板2内に入り込むことがない。
【0021】
こうして装着後、操作部3aを露出させた後は、図3(b)に示す基本姿勢を維持する。そして、舌片15が蓋面2aに係合するため、操作部3aが蓋板2の枠部2bに平行な状態な状態が保持される。
そして、この状態で蓋板2を閉じると、図4(b)に示すようにラッチ部材3は舌片15の付勢に抗して回動し、その後図4(c)に示すように係止片14が枠部側開口部6に入り込み、係合溝14aが係止枠17に係合してラッチ部材3はラッチ動作し、閉じた状態が保持される。
また、蓋板2を開ける際は、操作部3bを前方に引き出すようラッチ部材3を回動操作すれば、係止片14の係止は解除されて図4(b)の状態になり、開けることが可能となる。
【0022】
このように、別途回動軸を用意すること無くラッチ部材3を蓋板2に回動可能に装着できる。また連結部11が蓋板の折り曲げ部7aを利用して形成した連結軸7を把持することで、ネジ等の固定手段を使用することなくラッチ部材3を蓋板2に装着することができる。
また、バネ等の弾性部材を別途組み付けることなく係止片14は係止方向に付勢されるので、安定した係止状態を維持できる。
更に、ラッチ部材3の使用状態では、連結部11に挿入された連結軸7は抜けることが無くラッチ部材3が蓋板2から外れることがないし、特定の角度に回動すれば容易に着脱操作できる。そのため容易に装着できるし、使用時は外れずネジ等の連結部材を使用すること無く堅牢な装着状態を維持できる。
【0023】
尚、上記実施形態では、連結部11をラッチ部材3の左右端部に一対設けているが、左右に亘り筒状に形成しても良い。この場合、舌辺15は位置をずらして形成すれば良い。
また、係止片は中央に1つとしているが、左右に一対配置しても良い。
また、連結部11の切り欠き11aの角度を45°としているが、本体1に係止した状態で連結軸7が抜けなければ良く、連結軸7の見かけの太さが細くなる角度に応じて変更されるものであり、カバー部3aの上面から見て浅く30°程度の角度であっても良いし、逆に深く60°であっても良い。
【符号の説明】
【0024】
1・・本体、2・・蓋板、2a・・蓋面、2b・・枠部、3・・ラッチ部材(ラッチ手段)、3b・・操作部、5・・蓋面側開口部、6・・枠部側開口部、7・・連結軸、11・・連結部、14・・係止片、15・・舌辺(弾性片)17・・係止枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を収納する空間を内部に備えて一面が開口された本体と、前記本体の開口面を閉塞する蓋板とを有し、前記蓋板の一方の側部に装着されたラッチ手段により閉塞状態が保持される機器収納用キャビネットにおいて、
前記蓋板は、前記開口面を閉塞する蓋面と、前記蓋面の周囲を折り曲げて形成した枠部を有し、蓋面及び枠部を切り欠いて折り曲げ部を棒状に残して形成した連結軸を所定の側部に備える一方、
前記ラッチ手段は、前記連結軸を把持して回動可能に連結するための連結部と、前記本体に係止する係止片と、前記係止片の係止状態を解除操作する操作部とを有し、これらが樹脂成形により一体に形成されて成ることを特徴とする機器収納用キャビネット。
【請求項2】
前記ラッチ手段は、前記蓋面に係合して前記係止片を本体方向へ付勢する弾性片を有することを特徴とする請求項1記載の機器収納用キャビネット。
【請求項3】
前記連結部は断面C字状に形成されて前記連結軸を挿入する切り欠きを有し、
前記連結軸は角度により見かけの太さが異なり、前記ラッチ手段の前記本体への係止を解除して特定の角度に回動した状態では、前記連結軸は前記切り欠きに対して同一或いは細くなって前記連結軸の挿脱が可能となり、
前記ラッチ手段が前記本体に係止した蓋板閉塞状態では、前記連結軸は前記切り欠きに対して太くなって前記連結部からの脱却を規制することを特徴とする請求項1又は2記載の機器収納用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−14913(P2013−14913A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147565(P2011−147565)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】