説明

機器押出し構造および機器収納装置

【課題】航空機等の移動体に配設された座席端末装置などにおいて操作機器を使用する場合に、機器収納装置からの操作機器の脱却を行うための操作機器押出し機構を有し、簡易な構成でゴムなどの傷つけ防止部材が容易に脱却せず、品質および操作性、作業性に優れた機器押出し構造、および機器収納装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プッシュラバー603の挿入部603d側から、プッシュピン602に挿入し、そのまま押し込めば、プッシュピン602の係合部602aと係合爪603bとが係合し、この状態では、プッシュラバー603がプッシュピン602の先端から飛び出している部分は半球面603aのみであるため、指などでは摘みにくく、従って容易に取り外されることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能な情報端末装置等の機器を収納保持するための機器に設けられる機器押出し構造、および機器収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機等の移動体内にAV(Audio Visual)コンテンツ配信システムを搭載し、乗客用の各座席に設置された座席端末装置に対して映画や音楽を配信するサービスを行う事例が普及している。
【0003】
このシステムでは、通常、乗客が各座席に配設された携帯型の操作機器により座席端末装置の操作を行うことができる。また、この操作機器は、航空機内で無線が使えないという技術的な理由や、紛失あるいは乗客が間違って持ち帰ることを防止するために各座席の肘掛部などに設けられた機器収納装置に収納され、コード(有線)で接続されているのが一般的である。
【0004】
収納された操作機器は、機器収納装置に設置された押出しボタン等により操作機器の一部が押し出され、突き出た部分を人の手により把持して機器収納装置から完全に引き出す構造となっている。
【0005】
このような機器収納装置が備えるべき条件としては、機器収納装置に、極力操作機器に傷を付けずに持ち上げる機構を有し、且つ安定した操作機器の機器収納装置からの取り出しを可能にすることが要求される。
【0006】
このような操作機器の押出し機構としては、リフト部材とコイルばねを本体に装着後係合され、装置を押し出す機構が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3144639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記提案される構成では、操作機器への傷付き防止のためにリフト部材の操作機器接触側に、ゴムなどの弾性材料からなる緩衝シートを、貼り付けもしくは取り付ける必要があるが、その際に広い面積が必要であり、構成上多くのスペースを必要とする。また、組立て時の工数が増えるだけでなく、作業時間に関しても多くの時間を費やす。更に、剥き出しとなる傷つけ防止部材は、使用者により剥がされる危険性が高い。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、航空機等の移動体に配設された座席端末装置などにおいて操作機器を使用する場合に、機器収納装置からの操作機器の脱却を行うための操作機器押出し機構を有し、簡易な構成でゴムなどの傷つけ防止部材が容易に脱却せず、品質および操作性、作業性に優れた機器押出し構造、および機器収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような目的を達成するために、本発明の機器押出し構造は、押出し対象機器を保持する保持面を有する押出し対象機器保持部と、押出し対象機器に当接する面が略半球状に形成された半球部と、半球部と同じ直径で連接する円柱部と、円柱部の途中から半球部の反対側まで直径に対し所定の幅で切り欠かれた挿入部と、前記挿入部の円周面から突出させた係合爪とを有するプッシュラバーと、プッシュラバーの半球部が露出するように前記挿入部が挿入され、前記係合爪が係合する係合部と、前記挿入部が挿入される反対側に形成された円筒部と、押出し対象機器保持部から脱落防止のための抜け止め部とを有し、前記保持面より所定長突出して押出し対象機器を押し上げるプッシュピンと、押出し対象機器保持部に固定され、プッシュピンを可動に保持する筒状のプッシュピンガイド部と、一端がプッシュピンの円筒部の円筒内に挿入される圧縮バネと、押出し対象機器保持部に固定され、圧縮バネの他の一端を保持するバネ保持部と、から構成されることを特徴とする。
【0011】
また、プッシュラバーの半球面の球先端のみが前記プッシュピンから露出するように前記挿入部が挿入されることを特徴とする。
【0012】
また、機器押出し構造を有する機器収納装置は、押出し対象機器を収納すべく押出し対象機器の形状に合わせた収納部と、押出し対象機器を掛止する掛止爪と、掛止爪を可動し、掛止を解除するための掛止解除部と、で構成されることを特徴とする。
【0013】
また、押出し対象機器を収納する収納部の深さは、押出し対象機器の厚み方向の寸法と略同一であることを特徴とする。
【0014】
このような構成により、プッシュラバーの先端を指等で摘み難くし、プッシュラバーがプッシュピンより抜けなくすることを可能とする。
【0015】
また、構成する部品が少なく、操作機器押出し機構のサイズを小さくできるだけでなく、組立性が簡易であり、品質も向上することができる。更に、取り付けが簡易であるため、プッシュラバーの部品交換も容易でありサービス性が良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明による機器押出し構造、および機器収納装置によれば、航空機等の移動体内の座席に配設される操作機器を取り出す際に、操作機器を傷つけず取り出す事が出来るだけでなく、使用者が故意に押出し機構を破壊することを防ぐことができる。また、押出し機構を簡易に構成する事ができ、スペース的にも優位である。更に、弾性体を外部から挿入することができ、組立性も簡易な上、部品交換時の作業も容易であるなど、品質に優れた機器押出し構造、および機器収納装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】機器押出し構造を有する機器収納装置が使用される航空機内の平面図
【図2】同航空機内の客室の側面図
【図3】座席における座席端末装置の使用事例の概要を示す説明図
【図4】座席における操作機器の配設事例を示す説明図
【図5】同操作機器の配設方法の概略を示す斜視図
【図6】本発明の実施例における機器収納装置の主要な構成を示す断面図
【図7】同機器収納装置と機器押出し構造の構成を示す説明図
【図8】同機器押出し構造の詳細構成図
【図9】同プッシュラバーの外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、移動体の一つである航空機内の客室において、各座席に配設された座席端末装置の操作機器収納装置に登載された操作機器押出し構造を例に説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、本発明の実施例1における機器押出し構造を有する機器収納装置が使用されるAVコンテンツ配信システム1(以下、本システム1と略記する)について、図1〜図4により説明する。
【0020】
図1(a)は航空機内全体の平面図、図1(b)は客室部分の平面図、図2は客室の側面図である。図1および図2に示すように、航空機の客室100は、前後にギャレイ等の仕切り部103a、103b等が配置され、通路101により2つの座席列に区画されている。また、通路101を挟んで両側にそれぞれ3つの座席を1つのユニットとして前後方向にN列(座席1M、2M、3M、・・・、NM)、左右方向にM行(座席1N、2N、3N、・・・、MN)の座席が配置される。
【0021】
各座席の乗客は前の座席の背面に配設された座席端末装置102の表示部および自座席のヘッドホン104を利用して映画などのAVコンテンツを視聴する。先頭の座席では座席端末装置102は保持仕切り壁105(図1では、保持仕切り壁105a、105b)に配設される。座席端末装置102は床下に敷設されたネットワークC1に接続され、ネットワークC1を経由してAVコンテンツ配信用のサーバ装置(図示せず)から配信されたAVコンテンツを受信する。
【0022】
各座席の肘掛部にはハンドセットなどの操作機器(図示せず)が着脱可能に収納されており、乗客はこの操作機器を用いて、座席端末装置102の電源操作、視聴したいコンテンツの選択、あるいはヘッドホン104に出力する音声の音量等の調整を行う。また、この操作機器により座席端末装置102の操作以外にも、客席照明の調整や座席のリクライニングの調整等も行うことができる。
【0023】
つぎに、各座席における座席端末装置の配設に係わる概略の構成について、図3から図5により説明する。
【0024】
図3は座席における座席端末装置の使用事例の概要を示す説明図、図4は座席における操作機器の配設事例を示す説明図で、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図、図5は操作機器の配設方法の概略を示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、座席302の利用者(乗客)301は、本システム1の座席端末装置102を利用することができる。利用者301は座席302の腰掛部302aに着席して前の座席の背もたれ部302dの背面に配設された座席端末装置102の表示部102aに表示される画面を視聴しながら、肘掛部302bからコード102cにより座席端末装置102と接続された操作機器102bを引き出して、座席端末装置102の操作を行うことができる。
【0026】
図4は、座席302における利用者301と座席302および操作機器102bとの関係を示しており、操作機器102bは座席302の肘掛部302bに配設された操作機器収納装置303に収納され、利用者301が座席端末装置102を使用する場合には、操作機器102bを操作機器収納装置303から引き出すことができる。図5は肘掛部302bにおける操作機器102bの配設方法を示し、利用者301が操作機器102bを使用する場合、操作機器収納装置303から取り出してコード102cを肘掛部302bから導出する。操作機器102bの使用が終了した場合には、ラッチ機構により操作機器102bを操作機器収納装置303に容易に収納することができる。なお、操作機器102bは、操作ボタン102dを押すことにより、座席端末装置102に対して使用上の指示を行うことができる。
【0027】
つぎに、本実施例の操作機器収納装置303に係わる詳細な構成および機能・効果について、図6〜図8により説明する。図6は本実施例における機器収納装置の主要な構成を示す断面図、図7は操作機器収納装置と操作機器押出し機構の説明図で、図7(a)は平面図、図7(b)は断面斜視図、図8は操作機器押出し機構の詳細構成図で、図8(a)は平面図、図8(b)はX−X方向、図8(c)はY−Y方向の断面図、また、図9はプッシュラバーの外観斜視図である。
【0028】
図6に示すように、押出し対象機器である操作機器102bは、図5で説明したコード102cにより操作機器収納装置303と接続され、その内側に装着されている。操作機器102bは、操作機器収納装置303に配置されたイジェクトボタン304を押すことにより、操作機器102bの凹部にかけられていた操作機器収納装置303に配置されたラッチ305が奥に退き、図のように、操作機器102bが操作機器押出し機構601によって押出される。
【0029】
なお、図6は、操作機器102bが操作機器押出し機構601により押し上げられた状態を示しているが、操作機器102bが収納された状態では、操作機器102bの上面が操作機器収納装置303の上面303aとほぼ同一面またはそれ以下となるように収納される。これにより、操作機器102bが外部から衝撃などの影響を受けにくくなる。
【0030】
図7(b)は操作機器押出し機構601の構成を示す断面図、図8はその詳細断面図を表している。以下、操作機器押出し機構601について説明する。操作機器押出し機構601は、操作機器102bに当接する面が半球状に構成された半球面603aと、プッシュピン602に外部から挿入し係合可能とするために係合爪603bとを有する弾性を有したプッシュラバー603と、プッシュラバー603の半球面603aの球先端のみ露出させるようにプッシュラバー603との係合部602aを構成し、操作機器収納装置303の保持面303bから一定長さ突出して操作機器102bを押し上げる円筒状の本体部602b、およびプッシュピン602が操作機器収納装置303から脱落しないように、抜け止めのためのフランジ部602cを設けた可動のプッシュピン602と、一端をプッシュピン602の円筒内に挿入される圧縮バネ604と、プッシュピン602に挿入した圧縮バネ604の片端を保持する筒状部605aと、自身を操作機器収納装置303本体に締結するための締結部605bを有するホルダー605と、プッシュピン602を可動に保持するガイドリング606とから構成される。
【0031】
また、操作機器収納装置303は、操作機器102bを収納すべく操作機器102bの形状に合わせた窪みを有し、窪みの底面である保持面303bにはホルダー605を介してこれら一連の部材を保持する結合部を設け、且つ、バネ力に反して操作機器102bの凹部を保持するラッチ305と、それを解除するためのイジェクトボタン304で構成される。
【0032】
ここで、プッシュラバー603について詳述すれば、図8および図9に示すように、半球面603aと同じ直径で隣接するように円柱部603cが形成され、円柱部603cの途中から半球面603aの反対側まで、直径に対し所定の幅で切り欠いた挿入部603dと、切り欠いていない円柱部603cの円周面から突出させた係合爪603bとを有している。
【0033】
プッシュラバー603をプッシュピン602に装着するには、プッシュラバー603の挿入部603d側から、プッシュピン602に挿入し、そのまま押し込めば、プッシュピン602の係合部602aとプッシュラバー603の係合爪603bとが係合する。
【0034】
この状態では、プッシュラバー603がプッシュピン602の先端から飛び出している部分は半球面603aのみであるため、指などでは摘みにくく、従って容易に取り外されることはない。
【0035】
また、プッシュラバー603を故意に摘んで引っ張った際の半球面603a保持のための摩擦力よりプッシュラバー603自身が伸びて発生する弾性力が勝り、且つこの弾性力よりプッシュラバー603の係合爪603bの保持力が勝るよう、プッシュラバー603の飛び出し量を設定する事により、手が滑って保持できなくなりプッシュラバー603がプッシュピン602より外れなくすることができる。
【0036】
また、プッシュラバー603の半球面603aを故意に摘んでプッシュラバー603が伸びた際でも、プッシュラバー603の半球面603aに隣接する円柱部603cがよりつまみ易い位置まで伸びないよう、プッシュラバー603の弾性率を設定することにより、プッシュラバー603がプッシュピン602より外れなくすることができる。
【0037】
なお、本実施例では、操作機器収納装置303から脱落しないように、プッシュピン602にフランジ部602cを設けたが、これを抜け止めピンなどに変えてもよい。
【0038】
なお、本実施例では押出し対象機器として、航空機のAVコンテンツ配信システムに使用する操作装置を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、電話などの情報端末装置であってもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の機器押出し構造および機器収納装置は、航空機のような移動体内で利用される操作機器収納装置に限らず、操作機器を押出すような機能を備えた装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100 客室
101 通路
102 座席端末装置
102a 表示部
102b 操作機器
102c コード
103a、103b 仕切り部(ギャレイ)
104 ヘッドホン
105、105a、105b 保持仕切り壁
301 利用者
302、1M、2M、3M、4M、5M、6M、NM、1N、2N、3N、MN 座席
302a 腰掛部
302b、302c 肘掛部
302d 背もたれ部
303 操作機器収納装置
303a 上面
303b 保持面
304 イジェクトボタン
305 ラッチ
601 操作機器押出し機構
602 プッシュピン
602a 係合部
602b 本体部
602c フランジ部
603 プッシュラバー
603a 半球面
603b 係合爪
603c 円柱部
603d 挿入部
604 バネ
605 ホルダー
605a 筒状部
605b 締結部
606 ガイドリング
C1 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し対象機器を保持する保持面を有する押出し対象機器保持部と、
前記押出し対象機器に当接する面が略半球状に形成された半球部と、前記半球部と同じ直径で連接する円柱部と、前記円柱部の途中から前記半球部の反対側まで前記直径に対し所定の幅で切り欠かれた挿入部と、前記挿入部の円周面から突出させた係合爪とを有するプッシュラバーと、
前記プッシュラバーの半球部が露出するように前記挿入部が挿入され、前記係合爪が係合する係合部と、前記挿入部が挿入される反対側に形成された円筒部と、前記押出し対象機器保持部から脱落防止のための抜け止め部とを有し、前記保持面より所定長突出して前記押出し対象機器を押し上げるプッシュピンと、
前記押出し対象機器保持部に固定され、前記プッシュピンを可動に保持する筒状のプッシュピンガイド部と、
一端が前記プッシュピンの前記円筒部の円筒内に挿入されるバネと、
前記押出し対象機器保持部に固定され、前記バネの他の一端を保持するバネ保持部と、
から構成されることを特徴とする機器押出し構造。
【請求項2】
前記プッシュラバーの半球部の球先端のみが前記プッシュピンから露出するように前記円柱部が挿入されることを特徴とする請求項1記載の機器押出し構造。
【請求項3】
前記プッシュラバーは弾性を有することを特徴とする請求項1記載の機器押出し構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の機器押出し構造を有し、
前記押出し対象機器を収納すべく前記押出し対象機器の形状に合わせた収納部と、
前記押出し対象機器を掛止する掛止爪と、
前記掛止爪を可動し、掛止を解除するための掛止解除部と、で構成されたことを特徴とする機器収納装置。
【請求項5】
前記押出し対象機器を収納する収納部の深さは、前記押出し対象機器の厚み方向の寸法と略同一またはそれ以上であることを特徴とする請求項4記載の機器収納装置。
【請求項6】
座席の肘掛部に配設されることを特徴とする請求項5記載の機器収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260382(P2010−260382A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110530(P2009−110530)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】