説明

機器認証制御方法、機器認証制御装置および船舶

【課題】船舶に搭載されたネットワークに接続機器を接続する際に、特定の接続機器を認証除外扱いできるようにする。
【解決手段】ネットワークに接続機器が接続された際に、接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定する(ステップS3)。接続機器が認証除外機器に該当しない場合、この接続機器に対する認証動作を行う(ステップS4〜S8)。接続機器が認証除外機器に該当する場合、この接続機器に対する認証動作を免除する(ステップS8)。これにより、接続機器が認証除外機器に該当しない場合は認証動作が行われるのに対して、接続機器が認証除外機器に該当する場合は認証動作が免除される。その結果、特定の接続機器(認証除外機器)を認証除外扱いとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載されたネットワークに接続機器を接続する際に適用するに好適な機器認証制御方法、機器認証制御装置および船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のネットワークに接続機器が接続された際には、この接続機器がネットワークN上で正常に動作できるようにするため、この接続機器に関する認証動作を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−252823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これでは、接続機器の製造業者(メーカー)やデバイス・クラスなどを問わず一律に認証動作が行われるため、特定の接続機器を認証除外扱いとすることができないという課題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、特定の接続機器を認証除外扱いとすることが可能な機器認証制御方法、機器認証制御装置および船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、船舶に搭載されたネットワークに接続機器が接続された際に、前記接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定する認証除外判定を行った後、前記接続機器が認証除外機器に該当しない場合に、当該接続機器に対する認証動作を行い、前記接続機器が認証除外機器に該当する場合に、当該接続機器に対する認証動作を免除する機器認証制御方法としたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記認証除外判定において、前記接続機器の製造業者を示すマニュファクチャラー・コードに基づいて当該接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、船舶に搭載されたネットワークに接続機器が接続された際に、前記接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定する機器判定手段と、前記接続機器が認証除外機器に該当しない場合に、当該接続機器に対する認証動作を行う認証実行手段と、前記接続機器が認証除外機器に該当する場合に、当該接続機器に対する認証動作を免除する認証免除手段とを備えている機器認証制御装置としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記機器判定手段は、前記接続機器の製造業者を示すマニュファクチャラー・コードに基づいて当該接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の機器認証制御装置を備えている船舶としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、接続機器がネットワークに接続されると、この接続機器が認証除外機器に該当しない場合は認証動作が行われるのに対して、この接続機器が認証除外機器に該当する場合は認証動作が免除される。その結果、特定の接続機器(認証除外機器)を認証除外扱いとすることが可能となる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、認証除外判定がマニュファクチャラー・コードに基づいて行われるので、接続機器が特定の製造業者によって製造されたものである場合に、その接続機器が認証除外扱いとなる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明によれば、接続機器がネットワークに接続された際に、この接続機器が認証除外機器に該当しない場合に認証動作を行い、この接続機器が認証除外機器に該当する場合に認証動作を免除することができる。したがって、特定の接続機器(認証除外機器)を認証除外扱いとすることが可能となる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば、認証除外判定をマニュファクチャラー・コードに基づいて行うことができるので、接続機器が特定の製造業者によって製造されたものである場合に、その接続機器を認証除外扱いとすることができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項3、4に記載の発明と同じ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0016】
図1乃至図4には、本発明の実施の形態1を示す。
【0017】
まず、構成を説明する。船舶1は、図1に示すように、船体2を有している。船体2の後部(船尾)には船外機6が着脱自在に取り付けられており、船外機6にはエンジンECU(機器認証制御装置)10が内蔵されている。また、船体2には3つのハブ3が設置されており、各種の接続機器、つまりゲージ4、ゲートウェイ5、リモコン7、イモビライザー8、多機能センサー9は、これらのハブ3を介してネットワークNに接続可能となっている。さらに、船外機6とリモコン7とは、メカケーブル20による接続方式で接続されている。
【0018】
また、エンジンECU10は、図2に示すように、CPU(認証免除手段)11を有しており、CPU11には、判定部(機器判定手段)12、認証実行部(認証実行手段)13、データ通信部14およびプログラムメモリ15が接続されている。さらに、プログラムメモリ15には、図3に示す機器認証制御プログラムPRGが読み出し自在に格納されている。
【0019】
次に、作用について説明する。
【0020】
船舶1は以上のような構成を有するので、ネットワークNにゲージ4が接続されると、エンジンECU10のCPU11は、図3に示す機器認証制御プログラムPRGをプログラムメモリ15から読み出し、この機器認証制御プログラムPRGに基づき、機器認証制御動作を以下のとおり実行する。
【0021】
まず、CPU11は、データ通信部14に対して、ゲージ4に対するアドレス申請メッセージMの送信要求を指令する。これを受けてデータ通信部14は、ネットワークN経由で、ゲージ4に対してアドレス申請メッセージMの送信を要求する(機器認証制御プログラムPRGのステップS1)。
【0022】
このアドレス申請メッセージMは、図4に示すように、識別フィールドF1およびデータフィールドF2から構成されている。そして、識別フィールドF1には、P(プライオリティー)、PGN(通信ID)、DA(デスティネーション・アドレス)、SA(ソース・アドレス)などの識別情報が格納されている。また、データフィールドF2には、マニュファクチャラー・コード、デバイス・クラス、デバイス・ファンクションなど各種の機器情報が格納されている。ここで、マニュファクチャラー・コードとは、ゲージ4の製造業者を示す固有の番号(例えば、「1862」など)である。
【0023】
すると、ゲージ4は、この要求に応えるべく、アドレス申請メッセージMをネットワークN経由でデータ通信部14に送信する。そこで、データ通信部14は、アドレス申請メッセージMの受信チェックを行う(機器認証制御プログラムPRGのステップS2)。
【0024】
そして、データ通信部14は、アドレス申請メッセージMを受信したところで、その旨の信号をCPU11に出力する。すると、CPU11は、判定部12に対して、このゲージ4に関する認証除外判定を指令する。これを受けて判定部12は、アドレス申請メッセージM中のマニュファクチャラー・コードに基づき、ゲージ4が認証除外機器に該当するか否かの判定、つまり認証除外判定を行う(機器認証制御プログラムPRGのステップS3)。ここで、認証除外機器とは、特定の製造業者が製造した接続機器を意味する。
【0025】
すなわち、アドレス申請メッセージM中のマニュファクチャラー・コードが特定の番号に合致すれば、このゲージ4は、この特定の番号に対応する製造業者が製造したものであるため、認証除外機器に該当すると判定する。逆に、アドレス申請メッセージM中のマニュファクチャラー・コードが特定の番号に合致しなければ、このゲージ4は、この特定の番号に対応する製造業者が製造したものでないため、認証除外機器に該当しないと判定する。
【0026】
そして、判定部12は、このゲージ4が認証除外機器に該当しないと判定した場合、その旨の信号をCPU11に出力する。すると、CPU11は、認証実行部13に対して、ゲージ4に関する認証動作を指令する。これを受けて認証実行部13は、ゲージ4に関する認証動作を行う。
【0027】
すなわち、認証実行部13は、ネットワークN経由で、ゲージ4にシードを送信し(機器認証制御プログラムPRGのステップS4)、キーの受信チェックを行う(機器認証制御プログラムPRGのステップS5)。そして、認証実行部13は、キーを受信したところで、このキーが正しいか否か(先程のシードに対応しているか否か)を判定する(機器認証制御プログラムPRGのステップS6)。
【0028】
その結果、キーが正しいと判定された場合、認証実行部13は、その旨の信号をCPU11に出力する。すると、CPU11は、ゲージ4が認証に成功したと認識し、ゲージ4とのデータ通信を全面的に許可する(機器認証制御プログラムPRGのステップS8)。その結果、このゲージ4はネットワークN上で正常に動作できるようになる。また、このキーが正しくないと判定された場合、認証実行部13は、その旨の信号をCPU11に出力する。すると、CPU11は、ゲージ4が認証に失敗したと認識し、ゲージ4の認証異常を示す警告ランプ(図示せず)を点灯させるとともに、ゲージ4とのデータ通信を禁止する(機器認証制御プログラムPRGのステップS7)。その結果、このゲージ4はネットワークN上で正常に動作することができない。
【0029】
他方、先程の認証除外判定(機器認証制御プログラムPRGのステップS3)において、このゲージ4が認証除外機器に該当すると判定された場合、判定部12は、その旨の信号をCPU11に出力する。すると、CPU11は、このゲージ4に対する認証動作(機器認証制御プログラムPRGのステップS4〜S6)を免除し、ゲージ4とのデータ通信を全面的に許可する(機器認証制御プログラムPRGのステップS8)。その結果、このゲージ4は、たとえ認証準拠機器(認証を行うプロトコル(通信規約)に準拠した接続機器)でなくても、ネットワークN上で正常に動作できるようになる。
【0030】
ここで、機器認証制御プログラムPRGに基づく機器認証制御動作が終了する。
【0031】
なお、ここでは、ネットワークNに接続機器としてゲージ4が接続される場合を例にとって説明したが、ゲージ4以外の接続機器(ゲートウェイ5、リモコン7、イモビライザー8または多機能センサー9)が接続される場合についても、機器認証制御プログラムPRGに基づく機器認証制御動作が同様に行われる。
【0032】
このように、ゲージ4などの接続機器がネットワークNに接続されると、この接続機器が認証除外機器に該当しない場合は認証動作が行われるのに対して、この接続機器が認証除外機器に該当する場合は認証動作が免除される。その結果、特定の接続機器(認証除外機器)を認証除外扱いとすることが可能となる。
【0033】
また、認証除外判定は、アドレス申請メッセージM中のマニュファクチャラー・コードに基づいて行われるので、ゲージ4などの接続機器が特定の製造業者によって製造されたものである場合に、その接続機器を認証除外扱いとすることができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0034】
なお、上述した実施の形態1では、認証除外機器を「特定の製造業者が製造した接続機器」と定義した上で、アドレス申請メッセージM中のマニュファクチャラー・コードに基づいて認証除外判定を行う場合について説明した。しかし、認証除外機器の定義はこれに限るわけではなく、例えば、認証除外機器を「特定のデバイス・クラスに属する接続機器」と定義した上で、アドレス申請メッセージM中のデバイス・クラスに基づいて認証除外判定を行うこともできる。
【0035】
また、上述した実施の形態1では、船外機6とリモコン7とがメカケーブル20による接続方式で接続された船舶1について説明したが、その他の接続方式を採用した船舶1、例えばエンジンECU10とリモコン7のECUとがLAN(Local Area Network)経由で電気的に接続されたDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)方式の船舶1に本発明を適用することも勿論できる。特にDBW方式を採用している船舶1においては、エンジンECU10の代わりにリモコン7のECUが機器認証制御動作を実行することも可能である。
【0036】
さらに、上述した実施の形態1では、船体2に船外機6が取り付けられた船舶1について説明したが、船外機6以外の船舶推進装置(例えば、船内外機など)が船体2に取り付けられた船舶1に本発明を適用することも勿論できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、プレジャーボート、小型滑走艇、水上オートバイなど各種の船舶に幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1に係る船舶を示す模式図である。
【図2】同実施の形態1に係るエンジンECUのブロック図である。
【図3】同実施の形態1に係る機器認証制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】同実施の形態1に係るアドレス申請メッセージを例示する模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1……船舶
2……船体
3……ハブ
4……ゲージ(接続機器)
5……ゲートウェイ(接続機器)
6……船外機
7……リモコン(接続機器)
8……イモビライザー(接続機器)
9……多機能センサー(接続機器)
10……エンジンECU(機器認証制御装置)
11……CPU(認証免除手段)
12……判定部(機器判定手段)
13……認証実行部(認証実行手段)
14……データ通信部
15……プログラムメモリ
20……メカケーブル
F1……識別フィールド
F2……データフィールド
M……アドレス申請メッセージ
N……ネットワーク
PRG……機器認証制御プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載されたネットワークに接続機器が接続された際に、
前記接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定する認証除外判定を行った後、
前記接続機器が認証除外機器に該当しない場合に、当該接続機器に対する認証動作を行い、
前記接続機器が認証除外機器に該当する場合に、当該接続機器に対する認証動作を免除することを特徴とする機器認証制御方法。
【請求項2】
前記認証除外判定において、前記接続機器の製造業者を示すマニュファクチャラー・コードに基づいて当該接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の機器認証制御方法。
【請求項3】
船舶に搭載されたネットワークに接続機器が接続された際に、
前記接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定する機器判定手段と、
前記接続機器が認証除外機器に該当しない場合に、当該接続機器に対する認証動作を行う認証実行手段と、
前記接続機器が認証除外機器に該当する場合に、当該接続機器に対する認証動作を免除する認証免除手段とを備えていることを特徴とする機器認証制御装置。
【請求項4】
前記機器判定手段は、前記接続機器の製造業者を示すマニュファクチャラー・コードに基づいて当該接続機器が認証除外機器に該当するか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の機器認証制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の機器認証制御装置を備えていることを特徴とする船舶。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−43168(P2009−43168A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209940(P2007−209940)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】