説明

機敏さのためのオレガノ抽出物

オレガノ抽出物は刺激薬として機能し得るにもかかわらず、カフェインなどの多くの刺激薬のように睡眠パターンを妨げず、または神経過敏を誘発しない。それはまた、改善された警戒を促進し、注意力と課題に集中する能力を改善し、全体的な機敏さを改善する利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、刺激薬(カフェインなど)を摂取した際に一般に経験される神経過敏または興奮を伴わずに、集中力、機敏さ、および警戒を保つ人の能力を増大させるオレガノ抽出物とその活性成分の使用に関する。
【0002】
[背景技術]
西洋社会の人々がより長い寿命を経験するにつれて、独立性を維持する必要性は増大し続ける。晩年に独立性を維持し健康な生き方を確実にするために、人々は肉体と精神の双方において健康を保たねばならない。
【0003】
年を取るにつれて、人々は注意力、情報処理速度、順応性、および短期記憶の低下を経験することが多い。しかし非高齢者に区分される集団でさえも、新しい仕事を始める、手に負えない仕事の締め切り、学校での競争、または消耗し骨の折れる社会的交流などの人生経験に起因するストレスや情報過多に直面した場合には、同様の記憶問題を経験することが多い。
【0004】
天然成分は、人々が疲労感と自然に戦い、注意力および警戒を高めるのを助けることができる。これらの天然成分の中では、コーヒーは一番良く摂取されるものの1つである。コーヒーは、覚醒と運動活性を増大させ、機敏さと注意力を改善することが示されており、それは精神および作業能力を改善し得る。しかしコーヒーはまた、消費者とコーヒー摂取量次第で副作用も有する。一度に2、3杯を超えるコーヒーを摂取する敏感な飲用者は、不眠症、易刺激性、手の振戦、情動不安、神経過敏、頭痛、余計な心拍動を経験するかもしれず、集中するのが困難になる。その他の副作用としては、血圧、呼吸数、および代謝の一時的上昇が挙げられる。
【0005】
したがってコーヒーの有益な刺激効果を有するが、有害な副作用のない天然成分を同定することが望ましいであろう。
【0006】
[発明の詳細な説明]
本発明に従って、そしてEEGおよび誘発電位試験に基づいて、オレガノ抽出物および/またはその活性成分の投与は、警戒、すなわち覚醒、機敏さ、集中能力と組み合わさったリラクセーション状態をもたらし、および/または促進することが分かった。
【0007】
本発明の一態様は、対象において警戒、すなわち覚醒、機敏さ、および集中力を強化するオレガノ抽出物および/またはその活性成分の使用である。本発明の別の態様は、有効量のオレガノ抽出物および/またはその活性成分を含む、警戒、すなわち覚醒、機敏さ、および集中能力を強化する食品、栄養補助食品、または医薬組成物である。別の態様は、有効量のオレガノを対象に投与して、強化された警戒を観察するステップを含む、警戒を強化する方法である。
【0008】
したがって本発明の一実施態様は、α1およびβ1波を増大させるのに十分な量のオレガノ抽出物を摂取するステップを含む、警戒、すなわち覚醒、機敏さ、および集中力を保ちながら、リラックス状態を達成する方法である。
【0009】
本発明の別の態様は、オレガノ抽出物またはその活性成分を投与するステップを含む、P300ピーク振幅を増大させる方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、摂取後に人がリラックスして、なおも機敏さ、警戒、集中力、および注意力を保つような、食品成分または健康補助食品(food supplement)としてのオレガノ抽出物の使用である。
【0011】
本発明の別の態様は、オレガノ抽出物を投与して、強化された警戒を観察するステップを含む、警戒を改善する方法である。
【0012】
本発明の別の態様は、覚醒を誘発し得て、なおも睡眠パターンを妨げない、オレガノ抽出物またはその活性成分栄養補給剤を含む、栄養補助食品、医薬品または食品または食品である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プラセボと比較した、120mgのオレガノ抽出物の絶対エネルギーα1およびβ1波の薬物−EEG間−動態マップを示す。1時間後のα1およびβ1波に顕著な変化が見られる。オレガノ抽出物に向けた顕著な正の変化の範囲をグレースケールで示す。
【図2】プラセボと比較して、30mg用量のオレガノ抽出物摂取の2〜6時間後のP300振幅の顕著な正の変化(p<0.01)、および60mg用量のオレガノ抽出物摂取の2時間後の振幅の顕著な正の変化(p<0.01)を示す、統合P300応答のS300マッピングである(統計的に有意なマップ)。
【図3】頂点電極(頭上の中央電極)における、摂取前(ベースライン)と比較したオレガノ抽出物およびプラセボのP300ピーク振幅(%単位)を示す。60mgのオレガノ抽出物に、プラセボと比較して、またベースラインと比較して、摂取の2時間後にP300振幅の顕著な増大が見られる(アスタリスクで示される)。
【図4】オレガノ抽出物対プラセボのP300ピーク遅延変化(ミリ秒単位)を示す。摂取の1時間後に、オレガノ抽出物がP300ピーク遅延を低下させる傾向(10msの低下)が観察し得る。
【図5−1】睡眠プロフィールパラメーターのグラフを示す。いずれのパラメーターも顕著に変化しなかった。
【図5−2】睡眠プロフィールパラメーターのグラフを示す。いずれのパラメーターも顕著に変化しなかった。
【0014】
「オレガノ抽出物および/またはその活性成分」という用語は、抽出可能化合物の完全な混合物だけでなく、単独採取された植物の揮発性構成成分のみ、またはあらゆる相互組み合わせを含むことが意図される。本発明に従ったオレガノ抽出物の最も重要な揮発性構成成分は、カルバクロール、チモール、チモキノン、およびチモキノールである。したがって「オレガノ抽出物および/またはその活性成分」は、オレガノ抽出物、カルバクロール、チモール、チモキノン、チモキノール、または前述の構成成分の2つ以上の混合物が存在してもよいことを意味する。
【0015】
茶は微量の揮発物しか含有しないので、本発明の「オレガノ抽出物」という表現は、オレガノ種の新鮮なまたは乾燥させた葉、またはあらゆるその他の部分からできた茶または熱水抽出物を包含しない。
【0016】
しかし水蒸気蒸留によって得られる抽出物は、本発明の範囲内である。このような抽出物は一般に、容易に分解されない揮発性化合物を含有する。チモキノンおよびその他の揮発物は水蒸気蒸留中により迅速に分解するので、蒸留された油はそれらをほとんど含有しない。しかし蒸留油は、多量のカルバクロールを含有し得る。それらの安定性のために(密閉容器内で最高5年)、SFC0抽出物(超臨界流体二酸化炭素)が特に好ましい。
【0017】
「警戒」という用語は、以下の形質の1つ以上を包含する。覚醒、機敏さ、注意、集中力および専念。具体的には、状況に関係のない周囲のシグナルを無視する能力と共に、集中力を増しおよび/または保つ人の能力が強化される。
【0018】
「強化された警戒を観察する」という用語は、観察者が活性成分を摂取した当事者、または別の観察者のどちらであってもよいことを意味する。観察は自己査定であってもよく、客観的測定可能基準に基づいてもよい。
【0019】
[警戒のアセスメント]
認知機能および警戒は、いくつかの方法で試験し得る。空間的学習(認知発達)または記憶などの認知力の異なる側面を測定する、いくつかの認知試験が開発され検証されている。しかしこれらの試験は、改善された認知力の結果を記述するが神経生物学的活動には注目しない。さらにそれらは、認知能力の小さな変化を同定できないことが多い。実例として、軽度認知機能障害で起きる小さな変化を測定することは困難である。さらに警戒、目覚め、機敏さ、および注意力などの質の評価を対象とした質問表は、一般にこれらの状態の正確で堅固な測定とは見なされない。それらは民族的/文化的バイアス解釈を受けることが多く、または教育のレベルまたは質によって影響され得る。
【0020】
ニューロン造影技術はバイアスのより少ない技術の1タイプであり、それは、いくつかの刺激または状態に対する異なる脳領域の応答としてのニューロン活動を直接調べる機会を与え得る。異なるレベルの全脳活性化を評価するためには、同期皮質ニューロンマス活動の時間空間的パターンを反映し、また十分な時間分解能でニューロン活性を直接測定する唯一の非侵襲的方法であることから、脳波図(EEG)および事象関連電位(ERP)が好ましい方法である。
【0021】
EEGは脳内ニューロンによって発生する進行中の電気的活動を測定し、異なる周波数の脳波が得られる。これらの波は、いくつかの周波数帯域、特にδ(0.5〜3.5Hz)、θ(4〜7.5Hz)、α(8〜12.5Hz)、およびβ(13〜32Hz)に分割し得る。これらの波は、記録のその瞬間に人が経験している脳機能の状態を反映する。
δ波は、常態では深い睡眠中に生じる。
θ波は、直感、白昼夢、および空想との関連で見られ、したがって覚醒と睡眠との間の状態を反映する。
α波は、リラクセーションと機敏さの状態を反映し、学習および情報の利用と関連付けられる最も重要な脳波である。
β波は、精神活動、機敏さ、問題解決、判断、決断、および情報処理と関連付けられており、これらは全て「警戒」の構成要素である。
【0022】
ERPの1つの測定は、「P300」ピークである。このピークは「認知性」または「事象関連応答」と称される、(例えば視覚または音響刺激による)誘発電位であり、大きな正の電圧ピークと共に300ms遅延領域で起きる。注意力および覚醒状態が、P300応答を引き起こす2つの最も重要な要素である。P300振幅および遅延は、アルツハイマー病、パーキンソン病、および認知症患者を評価するのに臨床的に使用される。これらの神経変性障害がある患者は、長引くP300遅延を有する傾向があり、神経伝達物質の変化に関係があると考えられている。P300遅延は、認知機能の低下と共に(振幅は減少しながら)増大することが示されている。
【0023】
本発明に従ってオレガノ抽出物とその活性成分は、安静状態でのα1およびβ1 EEGパラメーターを顕著に増大できることが分かった。
【0024】
α活動の増大は、リラクセーション、創造性の増大、ストレス下の能力増大、および学習および集中力の改善、ならびに不安低下と関連付けられている(Eschenauerら 2006年 Am J Syst Pharm63:26〜30頁;Boutcherら 1988年 Physcophysiology 25:696〜702頁)。β活動の増大は、より高い皮質活性化(Kubitzら 1996年 Res Q Exerc Sport 67:91〜96頁)、機敏さの増大(Porjeszら 2002年BiolPhychol 61:229〜48頁)、および認知過程(Karraschら 2004年 Neurosci Lett 366:18〜23頁)に関係している。
【0025】
このように、本発明に従って、オレガノ抽出物またはその活性成分はα1波を増大させるので、リラクセーションを改善し、創造性を増大させ、ストレス下の能力を増大させ、集中力を改善し、および不安を低下させ得る。オレガノ抽出物またはその活性成分は、β1波を増大させることで、機敏さ、集中力を増大し得て、ひいては警戒を増大させる。
【0026】
また本発明に従って、オレガノ抽出物とその活性成分が、頂点電極上の表面P300ピーク振幅(S300)ならびにP300ピーク振幅を顕著に増大し得ることも示されている。オレガノ抽出物はまた、P300ピーク遅延も低下させる。
【0027】
P300ピーク振幅の増大が、より高い選択的注意力と関係があるのに対し(van Nunenら 1994年 Acta Phychiatr Belg 94:96〜97頁)、より短いP300ピーク遅延は、刺激の判別、参照、および評価のより迅速な処理時間によって、優れた認知能力と関係がある(van Nunen 前出;Hansenne 2000年 Neurophysiol Clin 30:191〜210頁;Emmersonら 1989年 Exp.Aging Res15:151〜9頁)。
【0028】
本発明の別の態様は、例えば昼食(正午)前後における注意力、覚醒、および機敏さ(警戒)の24時間周期の低下を補償する、オレガノ抽出物の使用である。本発明に従ってオレガノ抽出物を投与された被験者は、多くの人々が頻繁に感じる正午前後の注意力低下を経験しなかったこともまた分かった。我々の実験によれば、プラセボ群は、昼食時間に向けて頂点電極上のP300ピーク振幅の低下によって測定されるように、彼らに与えられた課題において、選択的注意力、機敏さ、覚醒、および集中力の低下を経験した。しかしオレガノ抽出物を投与された群では、これは観察されなかった。オレガノ抽出物を投与された被験者は、早朝の注意力と比較して7%増大した注意力を示した。
【0029】
正午に向けた24時間周期低下注意力は、Kirkcaldy 1984年 Eur J Appl Physiol Occup Physiol 52:375〜9頁でも示されている。Kirkcaldyの研究では、被験者は、正午前後(11:00AMから約2:00PMの間)に、活動性の低下と機敏さの低下を覚えると報告した。したがって本発明の別の態様は、11:00AMから2:00PMの間、または昼食後1時間以内に、有効量のオレガノ抽出物を投与することで、正午の注意力および/または機敏さの低下を回避する方法である。
【0030】
したがってこれらの結果は、オレガノ抽出物が、覚醒、機敏さ、および集中力と組み合わさった、リラクセーション状態を支持することを示唆する。
【0031】
[投与量]
平均体重成人のための投与量は、1日あたり25〜200mgのオレガノ抽出物またはその活性成分、好ましくは1日あたり約30〜180mgの範囲である。投与量は必要ならば調節し得る。栄養補給のためには、製剤は、カプセル、錠剤、小袋、または当該技術分野で知られているあらゆるその他の従来の剤形であってもよい。
【0032】
最適警戒および機敏さのためには、成人は単回60mgの投与量を朝に摂取することが推奨される。好都合には、剤形はカプセルの形態であってもよい。2つめの60mgカプセル(または錠剤などのその他の剤形)を昼食時またはその直後に摂取して、昼食後の低下を予防し得る。代案としては、1つの120mgカプセルを1日1回、好ましくは朝に摂取し得る。代案の実施態様では、もしも覚醒を晩まで持ち越したいのならば、30mg用量を日に3回、すなわち朝、昼、および夕方前に摂取し得る。この利用は、夜にいかなる不眠も引き起こさない。
【0033】
代案としては、剤形は、オレガノ抽出物が飲料をはじめとする様々な食材に添加される、機能性食品の形態であってもよい。
【0034】
適切なオレガノ抽出物は市販されている。1つの好ましい抽出物は、ドイツ国レーリング(Rehlingen,Germany)のFlavex Gmbhから入手できるSFCO抽出物である
【0035】
本発明をより良く例証するために、以下の非限定的な例を提供する。
【0036】
[実施例1]
[ヒト臨床試験において定量的な覚醒および睡眠EEGおよび覚醒ERPによって、オレガノ抽出物のニューロン機能に対する影響を評価する]
20人の健康な若年男性ボランティアに対する、単一施設、無作為化、プラセボ対照、交叉ヒト臨床試験において、定量的脳波図(qEEG)および事象関連電位(ERP)法を用いて、プラセボと比較して、3つの異なる用量(30mg/60mg/120mg)のオレガノ抽出物(ドイツ国レーリングのFlavex Gmbhから購入した)の覚醒時脳活動に対する影響を試験した。これに加えて30mg、60mgまたは120mgのオレガノ抽出物を追加投与した後のオレガノ抽出物の睡眠に対する影響を試験するために、20人のボランティアにおいて睡眠ポリグラフの記録、および終夜睡眠EEGスペクトル分析を実施した。
【0037】
[方法]
4回の連続アセスメント期間は、互いに少なくとも5日間隔てられた(洗い出し期間)。これらの期間中、各被験者は単回アセスメントとして、試験された3用量(30mg、60mgまたは120mg)またはプラセボの1つを投与された。3人の被験者は、全研究期間を終了しなかった。
【0038】
各期間の各調査日において、用量投与後にqEEGを記録した。具体的には、耳に接続した参照電極ならびに4アーチファクトチャネル(眼球運動、筋肉活動、およびその他のアーチファクトの可能な原因の検出)を使用して、28個のEEG電極を記録した。最初の3分間の警戒対照記録(VC)条件(対象は記録状態で2つのつまみを押すように要請された)と、それに続く3分間の安静時(R)記録条件(被験者は目を閉じてリラックスするよう要請された)下でEEGを記録した。
【0039】
投与の1および0.5時間前に、二回のベースラインを実施した。第1のベースラインは練習セッションとして、分析では第2のベースラインのみを使用した。投与の1、2、4、および6時間後に、追加的なqEEG測定を実施した。個々のスペクトルについて、δ(0.5〜3.5Hz)、θ(4〜7.5Hz)、α(8〜12.5Hz)、およびβ(13〜32Hz)の標準周波数EEG帯域に分解して、パラメーター抽出を実施した。αおよびβ帯域はまた、それぞれα1(8〜9.5Hz)およびα2(10〜12.5Hz)、そしてβ1(13〜17.5Hz)、β2(18〜20.5Hz)、およびβ3(21〜32Hz)に分割される。
【0040】
さらにERP測定を実施した。このERPは、標準聴覚P300「odd−ball」パラダイムに基づいた。各被験者は頻繁な音として周波数500Hzの音、希な音または標的音として周波数2000Hzの音の一連の2つの音を聴いた。被験者は、希な音を数えるように要請された。この計数によって、約300ms後にEEGにピークが出現した。このピークから、P300振幅、Cz(中央)電極上の遅延、ならびに全電極のS300(P300波形下の領域)を測定し得る。聴覚P300の測定点は、qEEGと同一であった。
【0041】
各実験日の晩に、ボランティア被験者にオレガノ抽出物(30mg/60mg/120mg)またはプラセボの2回目の投与を行って、2時間後から終夜(8時間)睡眠ポリグラフ記録(睡眠EEG)を実施した。各処置の夜に馴化の夜が先行したが、これは第1夜の効果の問題、すなわち健康な被験者が、通常とは異なる設定において最初の記録される夜の間に一般に経験する、睡眠を開始しおよび/または保つことの困難さのために分析されなかった。睡眠段階は、段階0(起きている)、段階1、段階2、段階3、段階4、段階5(急速眼球運動[REM]睡眠)または段階6(運動時間)のいずれかにある、30秒間隔の完全な記録期間(11:00p.m.から7:00a.m.)について視覚的に評点した。異なる視覚的睡眠パラメーターは、Hypnosソフトウェアを使用して記録の視覚的評点から算出した。
【0042】
[結果]
[EEG]
定量化EEG記録および分析に、化合物誘発効果を探し求める系統立った評価法が続いた。これらの分析は、覚醒qEEGでは、α1aおよびβ1 EEGパラメーターの安静状態における絶対パワーの一過性の顕著な増大(p<0.05)が120mgの用量で起き、1時間を超えて継続した(図1)ことを明らかにした。また120mg用量のオレガノ抽出物の摂取2時間後には、もはや統計的に有意ではなかったが(p<0.1)プラセボと比較してα1波が増大した。
【0043】
[ERP]
P300ピーク遅延および頂点電極の振幅の分析は、プラセボと比較して、オレガノ抽出物によるいくつかの顕著な変化を示した。最も明白なのは、プラセボと比較したP300振幅マップにおける増大であり、30mgのオレガノ抽出物用量では左前中央頭皮領域にわたり、最も顕著には60mgのオレガノ抽出物の用量で頭皮前半に及んだ。これらの変化はオレガノ抽出物摂取の1〜2時間後に起こり始め、30mg用量の場合は6時間、60mg用量では2〜3時間持続した(図2)。さらにP300ピーク遅延は、60mgおよび120mg用量のオレガノ抽出物摂取の1時間後に、プラセボと比較して低下した(統計的に有意ではないが、傾向が観察される)(図3)。
【0044】
頂点電極(頭皮上の中央電極)上のP300ピーク振幅だけを見ると、60mgオレガノ抽出物は摂取2時間後に、P300振幅をベースラインと比較して7.4%、プラセボと比較して21.2%、顕著に増大させた(図4)。
【0045】
30mgの用量は摂取4時間後に、P300振幅をベースラインと比較して最高8%、プラセボと比較して15%増大させたが、これは統計的に有意でなかった。興味深いことに、プラセボ群中の振幅はプラセボ摂取の2時間後に低下し、これは24時間周期(昼食前後)の注意力低下に似ている。60mgのオレガノ抽出物(そしてある程度までは30mgでも)は、この低下を軽減でき、P300振幅をベースラインよりも高いレベルに増大することさえした。
【0046】
したがってオレガノ抽出物で得られた結果は、オレガノ抽出物が注意力を促進して、通常正午に経験される日周性の注意力低下を軽減するのを助けることを示唆する。
【0047】
[睡眠EEG]
オレガノ抽出物が睡眠継続性または睡眠構築に影響するかどうかを試験するために、睡眠ポリグラフ記録を実施した。睡眠ポリグラフデータ記録は、調査日に試験化合物を2回目に摂取した2時間後に開始した。全被験者の睡眠パラメーターデータの全集合を分析した後、睡眠継続性または睡眠構築に対する悪影響は観察されなかった(図5)。
【0048】
本発明に従って、オレガノ抽出物とその活性成分は、120mg用量で最高2時間まで、α1およびβ1 EEGパラメーターの安静状態において、α1およびβ1EEGパラメーター(絶対エネルギー)を顕著に増大できることが分かった。またP300表面ピーク振幅(S300)は、30および60mg用量で顕著に増大し、1時間後に起きて6時間後にベースラインレベルに戻った。さらに頂点電極上のP300ピーク振幅は、60mgのオレガノ抽出物投与後2時間にわたり、プラセボと比較して顕著に増大した(+22%)。またベースラインと比較して、60mgの用量は、2時間後に頂点電極上でP300振幅を顕著に増大させた(+7%)。さらにP300ピーク遅延は、60mgおよび120mgのオレガノ抽出物用量の摂取1時間後に、プラセボと比較して低下する傾向を示した(−10ms)。
【0049】
α活動の増大は、リラクセーション、創造性増大、ストレス下の能力増大、および学習および集中力改善、ならびに不安低下と関連付けられている。β活動の増大は、より高い皮質の活性化、機敏さ、および認知処理の増大と関連づけられる。
【0050】
[実施例2]
[液体カプセル(LiCaps)の調製]
以下の成分を含む液体カプセル(LiCaps)を調製してもよい。
【0051】
【表1】


参考文献:
1.Davis,M.& Whalen,PJ.The amygdala:vigilance and emotion.Mol Psychiatry 6,13〜34頁(2001年).
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のオレガノ抽出物またはその活性成分を摂取するステップを含む、α1および/またはβ1脳波活動を増大させる方法。
【請求項2】
前記活性成分が、カルバクロール、チモール、チモキノン、チモキノール、および前述の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
覚醒、機敏、警戒または集中力を保ったままで、リラックス状態を達成することにより、前記α1および/または脳波活動が観察される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有効量のオレガノ抽出物またはその活性成分を摂取するステップを含む、睡眠パターンを妨害せずに注意力または警戒を改善する方法。
【請求項5】
有効量のオレガノ抽出物またはその活性成分を対象に投与するステップを含む、誘発電位P300ピーク振幅を増大させる方法。
【請求項6】
前記活性成分が、カルバクロール、チモール、チモキノン、チモキノール、および前述の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記P300ピーク振幅が、覚醒、機敏、警戒または集中力を保ったままで、対象にリラックス状態達成をもたらす、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
その活性の前記オレガノ抽出物が11:00AMから2:00PMの間に摂取される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
α1および/またはβ1脳波活動を増大させる、オレガノ抽出物またはその活性成分の使用。
【請求項10】
前記活性成分が、カルバクロール、チモール、チモキノン、チモキノール、および前述の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項に9記載の使用。
【請求項11】
覚醒、機敏、警戒または集中力を保ったまま、リラックス状態を達成することによって、前記α1および/または脳波活動が観察される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
睡眠パターンを妨害せずに注意力または警戒を改善する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
誘発電位P300ピーク振幅を増大させる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記P300ピーク振幅が、覚醒、機敏、警戒または集中力を保ったままで、前記対象にリラックス状態達成をもたらす、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記使用が11:00AMから2:00PMの間である、請求項9〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
摂取されると人において警戒を促進するオレガノ抽出物またはその活性成分を含む、栄養補助食品、食物、または健康補助食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−518618(P2012−518618A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550575(P2011−550575)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052115
【国際公開番号】WO2010/094761
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】